【解決手段】第1の方向に延びる複数の制御ラインと、前記第1の方向に交差する第2の方向に延びる複数のデータラインと、対応する前記制御ラインと対応する前記データラインとに電気的に接続され、光電変換素子を有する光電変換部と、複数の前記光電変換部の上に設けられたシンチレータと、複数の前記光電変換素子に電気的に接続されたバイアスラインと、前記バイアスラインに電気的に接続された電圧生成回路と、前記バイアスラインに電気的に接続され、放射線の入射開始時に生じる電圧の変化を検出する放射線入射判定回路と、を備えている。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、実施の形態について例示をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
本実施の形態に係る放射線検出器は、X線のほかにもγ線などの各種放射線に適用させることができる。ここでは、一例として、放射線の中の代表的なものとしてX線に係る場合を例にとり説明をする。したがって、以下の実施形態の「X線」を「他の放射線」に置き換えることにより、他の放射線にも適用させることができる。
また、X線検出器1は、例えば、一般医療などに用いることができる。ただし、X線検出器1の用途は一般医療などに限定されるわけではない。
【0011】
図1は、本実施の形態に係るX線検出器1を例示するための模式斜視図である。
図2は、アレイ基板2の回路図である。
図3は、X線検出器1のブロック図である。
図4は、画像データ100の読み出しを例示するためのシーケンス図である。
図5は、画像データ100の読み出しを例示するためのタイミングチャートである。
【0012】
図1〜
図3に示すように、X線検出器1には、X線検出モジュール10、および回路基板20を設けることができる。また、X線検出器1には、図示しない筐体を設けることができる。筐体の内部には、X線検出モジュール10、および回路基板20を設けることができる。例えば、筐体の内部に支持板を設け、支持板のX線の入射側の面にはX線検出モジュール10を設け、支持板のX線の入射側とは反対側の面には回路基板20を設けることができる。
【0013】
X線検出モジュール10には、アレイ基板2、およびシンチレータ3を設けることができる。
アレイ基板2には、基板2a、光電変換部2b、制御ライン(又はゲートライン)G、データライン(又はシグナルライン)S、配線パッド2d1、配線パッド2d2および保護層2fを設けることができる。なお、光電変換部2b、制御ラインG、およびデータラインSの数などは例示をしたものに限定されるわけではない。
【0014】
基板2aは、板状を呈し、無アルカリガラスなどのガラスから形成することができる。基板2aの平面形状は、四角形とすることができる。
光電変換部2bは、基板2aの一方の面側に複数設けることができる。光電変換部2bは、矩形状を呈し、制御ラインGとデータラインSとにより画された領域に設けることができる。複数の光電変換部2bは、マトリクス状に並べることができる。なお、1つの光電変換部2bは、例えば、X線画像の1つの画素(pixel)に対応する。
【0015】
複数の光電変換部2bのそれぞれには、光電変換素子2b1と、スイッチング素子である薄膜トランジスタ(TFT;Thin Film Transistor)2b2を設けることができる。また、光電変換素子2b1において変換した信号電荷を蓄積する蓄積キャパシタを設けることもできる。ただし、光電変換素子2b1の容量によっては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねることができる。以下においては、光電変換素子2b1が蓄積キャパシタを兼ねる場合を例示する。
【0016】
光電変換素子2b1は、例えば、フォトダイオードなどとすることができる。
薄膜トランジスタ2b2は、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1への電荷の蓄積および放出のスイッチングを行うことができる。薄膜トランジスタ2b2は、ゲート電極2b2a、ドレイン電極2b2b及びソース電極2b2cを有することができる。薄膜トランジスタ2b2のゲート電極2b2aは、対応する制御ラインGと電気的に接続することができる。薄膜トランジスタ2b2のドレイン電極2b2bは、対応するデータラインSと電気的に接続することができる。薄膜トランジスタ2b2のソース電極2b2cは、対応する光電変換素子2b1に電気的に接続することができる。また、光電変換素子2b1のアノード側は、バイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。
【0017】
制御ラインGは、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けることができる。複数の制御ラインGは、例えば、行方向(第1の方向の一例に相当する)に延び、行方向に交差する列方向(第2の方向の一例に相当する)に並べられている。1つの制御ラインGは、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d1のうちの1つと電気的に接続することができる。1つの配線パッド2d1には、フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線のうちの1つを電気的に接続することができる。フレキシブルプリント基板2e1に設けられた複数の配線の他端は、回路基板20に設けられたゲート駆動回路20aとそれぞれ電気的に接続することができる。
【0018】
データラインSは、所定の間隔をあけて互いに平行に複数設けることができる。データラインSは、例えば、列方向に延び、行方向に並べられている。1つのデータラインSは、基板2aの周縁近傍に設けられた複数の配線パッド2d2のうちの1つと電気的に接続することができる。1つの配線パッド2d2には、フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線のうちの1つを電気的に接続することができる。フレキシブルプリント基板2e2に設けられた複数の配線の他端は、回路基板20に設けられた信号検出回路20bとそれぞれ電気的に接続することができる。
制御ラインG、データラインS、およびバイアスラインVbiasは、例えば、アルミニウムやクロムなどの低抵抗金属を用いて形成することができる。
【0019】
保護層2fは、光電変換部2b、制御ラインG、データラインS、およびバイアスラインVbiasを覆うことができる。保護層2fは、絶縁性材料から形成することができる。
【0020】
シンチレータ3は、複数の光電変換部2bの上に設けることができる。シンチレータ3は、入射したX線を蛍光に変換することができる。シンチレータ3は、複数の光電変換部2bが設けられた領域(有効画素領域)を覆うように設けることができる。シンチレータ3は、例えば、ヨウ化セシウム(CsI):タリウム(Tl)、ヨウ化ナトリウム(NaI):タリウム(Tl)、あるいは臭化セシウム(CsBr):ユーロピウム(Eu)などを用いて形成することができる。シンチレータ3は、真空蒸着法を用いて形成することができる。真空蒸着法を用いてシンチレータ3を形成すれば、複数の柱状結晶の集合体からなるシンチレータ3が形成される。
【0021】
また、シンチレータ3は、例えば、テルビウム賦活硫酸化ガドリニウム(Gd
2O
2S/Tb、又はGOS)などを用いて形成することもできる。この場合、複数の光電変換部2bごとに四角柱状のシンチレータ3が設けられるように、マトリクス状の溝部を設けることができる。
【0022】
その他、シンチレータ3のX線の入射側に、反射層を設けることができる。反射層は、シンチレータ3において生じた蛍光のうち、光電変換部2bが設けられた側とは反対側に向かう光を反射させて、光電変換部2bに向かうようにする。
また、シンチレータ3および反射層を覆う防湿部を設けることができる。
【0023】
回路基板20は、アレイ基板2の、シンチレータ3が設けられる側とは反対側に設けることができる。回路基板20は、X線検出モジュール10(アレイ基板2)と電気的に接続することができる。
【0024】
図3に示すように、回路基板20には、ゲート駆動回路20a、信号検出回路20b、メモリ20c、画像構成回路20d、電圧生成回路20e、X線入射判定回路20f、およびコントローラ20gを設けることができる。なお、これらを1つの基板に設けることもできるし、これらを複数の基板に分けて設けることもできる。
【0025】
ゲート駆動回路20aは、薄膜トランジスタ2b2のオン状態とオフ状態を切り替えることができる。ゲート駆動回路20aは、複数のゲートドライバ20aaと行選択回路20abとを有することができる。
【0026】
行選択回路20abには、コントローラ20gから制御信号101を入力することができる。行選択回路20abは、X線画像のスキャン方向に従って、対応するゲートドライバ20aaに制御信号101を入力することができる。
ゲートドライバ20aaは、対応する制御ラインGに制御信号101を入力することができる。
【0027】
例えば、
図4および
図5に示すように、ゲート駆動回路20aは、フレキシブルプリント基板2e1を介して、制御信号101を制御ラインG1〜Gm毎に順次入力することができる。制御ラインGに入力された制御信号101により薄膜トランジスタ2b2がオン状態となり、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1から電荷(画像データ100)を読み出すことができるようになる。
【0028】
信号検出回路20bは、薄膜トランジスタ2b2がオン状態の時に、光電変換部2bから画像データ100を読み出すことができる。信号検出回路20bは、複数の積分アンプ20ba、複数の選択回路20bb、および複数のADコンバータ20bcを有することができる。
1つの積分アンプ20baは、1つのデータラインSと電気的に接続することができる。積分アンプ20baは、光電変換部2bからの画像データ100を順次受信することができる。そして、積分アンプ20baは、一定時間内に流れる電流を積分し、その積分値に対応した電圧を選択回路20bbへ出力することができる。この様にすれば、所定の時間内にデータラインSを流れる電流の値(電荷量)を電圧値に変換することができる。すなわち、積分アンプ20baは、シンチレータ3において発生した蛍光の強弱分布に対応した画像データ情報を、電位情報へと変換することができる。
【0029】
選択回路20bbは、読み出しを行う積分アンプ20baを選択し、電位情報へと変換された画像データ100を順次読み出すことができる。
ADコンバータ20bcは、読み出された画像データ100をデジタル信号に順次変換することができる。デジタル信号に変換された画像データ100は、メモリ20cに格納することができる。
【0030】
例えば、信号検出回路20bは、フレキシブルプリント基板2e2を介して、画像データ100をデータラインS1〜Sn毎に順次読み出すことができる。
この様なX線画像の取得動作を内部等価回路で表すと、
図6のようになる。
【0031】
メモリ20cは、例えば、回路基板20に設けられた各回路を制御する制御プログラムを格納することができる。また、メモリ20cは、例えば、制御プログラムを実行する際に必要となる閾値などのデータを格納することができる。また、メモリ20cは、デジタル信号に変換された画像データ100を一時的に格納することができる。
【0032】
画像構成回路20dは、メモリ20cに格納されている画像データ100に基づいて、X線画像を構成することができる。なお、画像構成回路20dは、X線検出器1の外部に設けることもできる。画像構成回路20dがX線検出器1の外部に設けられる場合には、回路基板20と画像構成回路20dとの間のデータ通信を無線により行うこともできるし、配線などを介して行うこともできる。画像構成回路20dは、構成されたX線画像のデータを、X線検出器1の外部に設けられた表示装置やその他の機器に送信することができる。
【0033】
図2に示すように、電圧生成回路20eは、バイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。電圧生成回路20eは、例えば、バイアス電圧を生成する。電圧生成回路20eは、蓄積キャパシタとして機能する複数の光電変換素子2b1に所定の電荷を蓄積させる。電圧生成回路20eは、例えば、直流電源などとすることができる。X線がX線検出器1に入射すると、シンチレータ3において蛍光が発生し、発生した蛍光が光電変換素子2b1に入射する。蛍光が光電変換素子2b1に入射すると、光電効果によって電荷(電子およびホール)が発生し、発生した電荷と、蓄積されている電荷(異種電荷)とが結合して蓄積されている電荷が減少する。減少した後の電荷は、画像データ100として読み出すことができる。
【0034】
ここで、X線がX線検出器1に入射すると、光電変換素子2b1に蓄積されている電荷が減少するので、電荷を検出すればX線の入射開始を検出することができる。
X線入射判定回路20fは、バイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。X線入射判定回路20fは、光電変換素子2b1から電荷を読み出すことでX線の入射開始を判定することができる。X線入射判定回路20fは、X線の入射開始時に生じる電圧の変化を検出することができる。X線入射判定回路20fは、検出された電圧値が閾値よりも小さければX線の入射が開始されたと判定し、検出された電圧値が閾値を超えている場合にはX線の入射が開始されていないと判定することができる。X線入射判定回路20fは、X線の入射が開始されたと判定した場合には、X線の入射が開始された旨の信号をコントローラ20gに送信することができる。
【0035】
コントローラ20gは、メモリ20cに格納されている制御プログラムに基づいて、回路基板20に設けられた各回路を制御することができる。コントローラ20gは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などの演算素子を有するものとすることができる。
【0036】
次に、X線の入射開始の判定についてさらに説明する。
図7は、比較例に係るX線の入射開始の判定を例示するためのシーケンス図である。
図7に示すように、X線がX線検出器に入射すると、光電変換素子2b1において電流Ipdが発生する。また、光電変換素子2b1に蓄積されていた電荷が徐々に減少するので、光電変換素子2b1における電圧Vpdが徐々に低下する。そのため、光電変換素子2b1に蓄積されている電荷を画像データ100として読み出し、「比較画像」との差を求めれば、X線の入射開始を検出することができる。
【0037】
例えば、X線の入射前においては、蓄積されている電荷に変化がないので、読み出された「画像A」の画像データ100の値と、予め求められている「比較画像」の画像データ100の値との間の差が小さくなる。これに対して、X線の入射後においては、蓄積されている電荷に変化が生じるので、読み出された「画像B」の画像データ100の値と、「比較画像」の画像データ100の値との間の差が大きくなる。そのため、画像データ100の値の差に基づいて、X線の入射開始を検出することができる。
【0038】
ところが、X線の入射時期を予想することは困難であるため、判定の対象となるX線画像の画像データ100を継続的に取得および比較する必要がある。そのため、ゲート駆動回路20aおよび信号検出回路20bを常に動かしておく必要がある。その結果、X線が入射していない待機時においても消費電力が大きくなる。また、発熱による温度上昇が生じるので、高温環境でのX線検出器1の使用に制限が生じる場合がある。さらに、1枚分の「比較画像」のデータを保存する必要があるので、大容量の画像メモリが必要となる。
【0039】
本実施の形態に係るX線検出器1においては、X線入射判定回路20fは、バイアスラインVbiasに生じる電圧の変化を検出することでX線の入射開始を判定する。そのため、電力消費量が多いゲート駆動回路20aおよび信号検出回路20bを常に動かす必要がないので、X線の入射を検出する際の消費電力を抑制することができる。また、回路の温度が上昇するのを抑制することができるので、高温環境でのX線検出器の使用に制限が生じるのを抑制することができる。また、「比較画像」のデータを保存する画像メモリを設ける必要がない。
【0040】
なお、X線の入射が検出された後は、電圧生成回路20eにより、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1に電荷を再度蓄積すればよい。再度蓄積された電荷は、光電変換素子2b1により発生した電荷により減少し、画像データ100の読み出しが可能となる。
【0041】
図8は、他の実施形態に係るX線検出器1aのブロック図である。
図9は、X線入射判定回路21fを例示するための回路図である。
図8に示すように、X線検出器1aには、X線検出モジュール10、および回路基板21を設けることができる。回路基板21には、ゲート駆動回路20a、信号検出回路20b、メモリ20c、画像構成回路20d、電圧生成回路21e、X線入射判定回路21f、およびコントローラ20gを設けることができる。
【0042】
図8に示すように、電圧生成回路21eは、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1と、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2とを有することができる。
なお、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2は、供給電源線のインピーダンスを数十kΩレベルとなるよう非常に大きい値にしておくことが重要である。
第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1は、X線入射判定回路21fのスイッチ21f1を介してバイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1は、バイアスラインVbiasに、第1のバイアス電圧Vb1を印加する。第1のバイアス電圧Vb1は、X線画像の撮影の際に用いるバイアス電圧とすることができる。例えば、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1は、前述した電圧生成回路20eとしてもよい。
【0043】
第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2は、X線入射判定回路21fのスイッチ21f2を介してバイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2は、バイアスラインVbiasに、第1のバイアス電圧Vb1とは異なる第2のバイアス電圧Vb2を印加する。第2のバイアス電圧Vb2は、X線の入射開始を検出する際に用いるバイアス電圧とすることができる。例えば、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2の電位は、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1の電位よりも低く(第2のバイアス電圧Vb2は、第1のバイアス電圧Vb1よりも低く)することができる。例えば、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2の電位は、電源内部のインピーダンスに依存するが、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1の電位の約1.5倍低くなるように設定する。
【0044】
この場合、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1と、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2とを一体化してもよい。例えば、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1からの第1のバイアス電圧Vb1を抵抗などを用いて第2のバイアス電圧Vb2としてもよい。この場合、抵抗などが第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2となる。
【0045】
また、
図9に示すように、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、およびコンパレータ21f4に印加する閾値電圧Vshを生成する回路21e3、を有する電圧生成回路21e4を設けることもできる。
なお、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、および閾値電圧Vshを生成する回路21e3を個別に設けてもよいし、例えば、これらを集積回路として一体化してもよい。集積回路とすることについての詳細は、後述する。
【0046】
X線入射判定回路21fは、スイッチ21f1、スイッチ21f2、コンデンサ21f3、およびコンパレータ21f4を有することができる。
スイッチ21f1およびスイッチ21f2は、コントローラ20gからの信号に基づいてON/OFF動作を行うことができる。すなわち、コントローラ20gは、スイッチ21f1とスイッチ21f2を制御することができる。そのため、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1と第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2は、決められたタイミングで、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1とコンデンサ21f3に電荷を蓄積することができる。
【0047】
コンデンサ21f3は、バイアスラインVbiasに電気的に接続することができる。コンデンサ21f3は、X線の入射開始を検出する際に、微小な電流変化を電圧として捉えるために設けることができる。コンデンサ21f3は、第1のバイアス電圧Vb1または第2のバイアス電圧Vb2を短時間保持することができる。光電変換素子2b1の容量によってはコンデンサ21f3を省くこともできるが、コンデンサ21f3が設けられていれば、X線の入射開始を精度良く検出することが容易となる。
【0048】
第2のバイアス電圧Vb2は、抵抗21f5を介して、コンデンサ21f3(コンパレータ21f4)に印加される。コンパレータ21f4は、コンデンサ21f3に電気的に接続することができる。コンパレータ21f4は、コンデンサ21f3における電圧と、閾値電圧Vshとを比較することができる。
【0049】
ここで、基板上において、ディスクリート半導体装置などの素子を組み合わせて、例えば、前述した第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、および閾値電圧Vshを生成する回路21e3、を構成すると、個々の部品の特性のばらつきや温度変動等によって電圧変動が発生する場合がある。また、個々の部品を電気的に接続するための配線パターンが必要となるが、配線パターンにはインピーダンスが有るので、他の回路や周囲環境によっては、誘導ノイズが大きくなるおそれがある。
【0050】
そのため、少なくとも、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、および第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、を集積回路として一体化することが好ましい。
また、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、および閾値電圧Vshを生成する回路21e3を集積回路として一体化することがさらに好ましい。例えば、
図9に示すように、第1のバイアス電圧Vb1を生成する回路21e1、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2、および閾値電圧Vshを生成する回路21e3、を集積回路121として一体化すれば、個々の部品の特性のばらつきを抑制することができ、配線も集積回路121内で完結させることができる。そのため、電圧変動や誘導ノイズを抑制することができる。また、抵抗定数等のパラメータも精度よくトリミングできる。また、集積回路121とすれば、同一パッケージ内に各回路が設けられるので、温度変動が各回路毎に異なるのを抑制することができる。そのため、特性を均一にすることができる。
【0051】
また、
図9に示すように、第2のバイアス電圧Vb2は、抵抗21f5を介してコンパレータ21f4に印加される。抵抗21f5は、コンパレータ21f4に直列接続されるので、流れる電流に比例して電圧が発生する。X線の入射開始の判定は、抵抗21f5に電気的に接続されたコンデンサ21f3における電圧を用いるので、抵抗21f5の抵抗値R_VIがばらつくと、コンデンサ21f3における電圧がばらついて、X線の入射開始の判定精度が低下するおそれがある。
また、コンパレータ21f4の特性も、入力電流に違いが出ると変化する。
そのため、抵抗21f5の抵抗値、コンパレータ21f4の入力電流値などを、略一定にすれば、X線の入射開始の判定精度を向上させることができる。
【0052】
この場合、第1のバイアス電圧Vb1を発生させる回路、第2のバイアス電圧Vb2を発生させる回路、および閾値電圧Vshを発生させる回路21e3、を集積回路121とすれば、抵抗21f5やコンパレータ21f4も集積回路121に設けられることになる。抵抗21f5を集積回路121に設ける際にトリミングを行えば、X線の入射開始の判定精度をさらに向上させることが可能となる。また、コンパレータ21f4を集積回路121に設ける際にコンパレータ21f4の特性を精密に制御できるため、X線の入射開始の判定精度をさらに向上させることが可能となる。
【0053】
図10は、X線の入射開始の判定を例示するためのシーケンス図である。
図11は、待機状態を例示するためのシーケンス図である。
まず、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1のバイアス電圧Vbiasを、X線の入射を検出する際に用いる第2のバイアス電圧Vb2となるようにする。例えば、スイッチ21f2をON状態にすることで、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2をバイアスラインVbiasに電気的に接続する。また、スイッチ21f1をOFF状態とし、第1のバイアス電圧を生成する回路21e1をバイアスラインVbiasから遮断する。第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2は、コンデンサ21f3を充電することができる。コンデンサ21f3の充電が完了するとスイッチ21f2をOFF状態にする。そのため、スイッチ21f2がON状態となるのは、短時間である。
【0054】
光電変換素子2b1には、光電変換素子2b1自身や薄膜トランジスタ2b2により漏れ電流Irが流れるため、コンデンサ21f3に蓄積されている電荷が徐々に放電し、電位が上昇する。そのため、待機時(X線の入射を待っている間)においては、
図11に示すように、コントローラ20gは、スイッチ21f1をOFF状態とし、スイッチ21f2のON状態と、OFF状態を周期的に繰り返す。スイッチ21f2のON状態と、OFF状態を周期的に繰り返すことで、コンデンサ21f3の再充電が繰り返し行われる。この場合、待機時に(光電流Ixが流れないときに)漏れ電流Irによる電圧上昇で、コンデンサ21f3における電圧が比較用の閾値電圧Vshを超えないように、スイッチ21f2をON状態とする周期を設定することができる。なお、漏れ電流Irは、光電変換素子2b1や薄膜トランジスタ2b2によって違いがある。そのため、漏れ電流Irの値に応じて、スイッチ21f2をON状態とする周期を変化させることができる。この様にすれば、アレイ基板2毎に漏れ電流Irの値が異なっていても対応が可能となる。
【0055】
図10に示すように、待機状態において、X線が入射すると、光電変換素子2b1に光電流Ixが流れるため、コンデンサ21f3が急速に放電される。そのため、電位が急激に上昇して、コンデンサ21f3における電圧が比較用の閾値電圧Vshを超えるので、コンパレータ21f4の出力V_DETがONとなる。その結果、X線の入射開始を検出することができる。閾値電圧Vshは、光電流による電圧上昇と薄膜トランジスタ2b2に流れる漏れ電流Irによる電圧上昇の比率によって決定されるが、
図10に示す例の場合、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2の電位が、第1のバイアス電圧を生成する回路21e1の電位の1.5倍低く設定しておき、
図10中の「B部」に示すように、漏れ電流Irによる電圧上昇値と比べ、閾値電圧Vshを2倍の電位差となるように設定すれば、漏れ電流Irでは検出されず、光電流による電圧の急激な変化によりX線の入射開始を精度良く検出することができる。
【0056】
以上に説明した様に、待機時においては、信号検出回路20b(ADコンバータ20bc)および画像構成回路20dを動作させる必要がないため、これらの電源をOFF状態にすることができる。そのため、X線の入射を検出する際の消費電力を抑制することができる。
【0057】
図12は、X線画像の撮影を例示するためのシーケンス図である。
図12に示すように、X線の入射が検出された場合には、蓄積キャパシタとして機能する光電変換素子2b1のバイアス電圧Vbiasを、X線画像の撮影の際に用いる第1のバイアス電圧Vb1に切り替える。例えば、スイッチ21f1をON状態にすることで、第1のバイアス電圧を生成する回路21e1をバイアスラインVbiasに電気的に接続する。また、スイッチ21f2をOFF状態とし、第2のバイアス電圧Vb2を生成する回路21e2をバイアスラインVbiasから遮断する。
その後、前述したX線検出器1の場合と同様にして、画像データ100の取得と、X線画像の構成を行うことができる。
【0058】
ここで、コンデンサ21f3における電圧は極めて小さいので、ノイズによる誤検出が生じる可能性がある。
そのため、X線入射判定回路21fは、構成されたX線画像と、比較画像とをさらに比較することもできる。比較画像は、例えば、X線が入射していないときの画像とすることができる。比較画像は、例えば、メモリ20cに格納することができる。
【0059】
図13は、撮影されたX線画像と比較画像との間に差があった場合のシーケンス図である。
撮影されたX線画像と比較画像との間に差があれば、X線が入射していることを確認することができる。その場合には、
図13に示すように、X線画像の撮影の際に用いる第1のバイアス電圧Vb1のまま、X線画像の撮影動作を続行する。例えば、X線入射判定回路21fは、撮影されたX線画像と比較画像とをさらに比較し、X線画像と比較画像との間に所定の差が有れば、スイッチ21f1をON状態とし、スイッチ21f2をOFF状態とする。
【0060】
図14は、撮影されたX線画像と比較画像との間に差が無かった場合のシーケンス図である。
撮影されたX線画像と比較画像との間に差が無ければ、X線が入射しておらず、誤検出であったと判定することができる。その場合には、
図14に示すように、X線の入射を検出する際に用いる第2のバイアス電圧Vb2に切り替えて、前述した検出動作を行うことができる。すなわち、誤検出と判定された場合には、速やかに、待機状態に戻ることができる。
例えば、X線入射判定回路21fは、撮影されたX線画像と比較画像とをさらに比較し、X線画像と比較画像との間に所定の差が無ければ、スイッチ21f1をOFF状態とし、スイッチ21f2のON状態と、OFF状態を周期的に繰り返す。
【0061】
以上、本発明のいくつかの実施形態を例示したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。これら実施形態やその変形例は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。また、前述の各実施形態は、相互に組み合わせて実施することができる。