【解決手段】パレット1における一対の脚部121L、121Rに検出光を照射することで複数の検出データを取得するデータ収集工程と、前記一対の脚部の各々における単一の起点データS、を設定する起点データ設定工程と、設定された各起点データを起点として、一対の脚部の各々で、前記起点データを含む前記複数の検出データの中から、搬送車との前記一対の脚部の対向面の最端部に位置する最端データ点Aを探索する最端データ探索工程と、一対の脚部の各々の前記最端データ点を用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くパレット位置導出工程と、導かれた前記一対の脚部の中心位置に合わせて搬送車2を移動させる搬送車移動工程と、を実施する。
荷台及び前記荷台を幅方向に間隔を空けて下方から支持する一対の脚部を有するパレットの前記荷台の下方に配置された状態で前記パレットを地面から浮かせつつ移動させる搬送車によるパレット搬送システムにおいて、
前記搬送車は、前記一対の脚部に検出光を照射する照射部と、前記検出光が前記一対の脚部に反射された反射光を受光する受光部と、を有し、
前記一対の脚部に前記照射部から前記検出光を照射して前記受光部で前記反射光を受光することで複数の検出データを取得するデータ収集工程と、
前記複数の検出データから、前記一対の脚部のうち一方側脚部と他方側脚部の各々における単一の起点データを設定する起点データ設定工程と、
設定された各起点データを起点として、前記一方側脚部と前記他方側脚部の各々で、前記起点データを含む前記複数の検出データの中から、前記搬送車に対する前記一対の脚部の対向面の最端部に位置する最端データ点を探索する最端データ探索工程と、
前記一方側脚部と前記他方側脚部の各々の前記最端データ点を用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くパレット位置導出工程と、
導かれた前記一対の脚部の中心位置に合わせて前記搬送車を移動させる搬送車移動工程と、を実施する、パレット搬送システム。
前記搬送車が前記パレットにおける前記荷台の下方に進入している途中において、前記一対の脚部のうち、前記パレットの奥行方向半ばに位置するものに対して、前記データ収集工程以降の各工程を実施する、請求項1または2に記載の、パレット搬送システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし前記方法では、例えば搬送車がパレットに対し、進入前に斜め向きに停車した場合に、柱部の内法部分がレーザ光の陰になってしまうと、前記対向した関係にあるデータ群が得られないことで、柱部の内法位置を検出できなくなり、その結果、パレットの両脚の方向と両脚の中心線の演算ができなくなる場面があった。
【0006】
そこで本発明は、パレットの位置の検出ができなくなる場面が生じることを低減したパレット搬送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、荷台及び前記荷台を幅方向に間隔を空けて下方から支持する一対の脚部を有するパレットの前記荷台の下方に配置された状態で前記パレットを地面から浮かせつつ移動させる搬送車によるパレット搬送システムにおいて、前記搬送車は、前記一対の脚部に検出光を照射する照射部と、前記検出光が前記一対の脚部に反射された反射光を受光する受光部と、を有し、前記一対の脚部に前記照射部から前記検出光を照射して前記受光部で前記反射光を受光することで複数の検出データを取得するデータ収集工程と、前記複数の検出データから、前記一対の脚部のうち一方側脚部と他方側脚部の各々における単一の起点データを設定する起点データ設定工程と、設定された各起点データを起点として、前記一方側脚部と前記他方側脚部の各々で、前記起点データを含む前記複数の検出データの中から、前記搬送車に対する前記一対の脚部の対向面の最端部に位置する最端データ点を探索する最端データ探索工程と、前記一方側脚部と前記他方側脚部の各々の前記最端データ点を用いて、前記一対の脚部の中心位置を導くパレット位置導出工程と、導かれた前記一対の脚部の中心位置に合わせて前記搬送車を移動させる搬送車移動工程と、を実施する、パレット搬送システムである。
【0008】
この構成によれば、従来のように対向した関係にあるデータ群を得ることで脚部の内法位置を検出することなしに、一対の脚部の中心位置を導いてその位置に搬送車を移動させることができる。
【0009】
そして、本発明は、前記最端データ探索工程における前記探索は、内側または外側へ順に前記複数の検出データの個々の検出位置を認識していくことにより行われ、前記認識は、前記データ収集工程における走査間隔に基づいて行われることができる。
【0010】
この構成によれば、最端データ探索工程における探索を、データ収集工程における走査間隔に基づいて行うことにより、関係のないノイズに影響された誤認識を抑制できる。
【0011】
そして、本発明は、前記搬送車が前記パレットにおける前記荷台の下方に進入している途中において、前記一対の脚部のうち、前記パレットの奥行方向半ばに位置するものに対して、前記データ収集工程以降の各工程を実施することができる。
【0012】
この構成によれば、搬送車がパレットにおける荷台の下方に進入している途中における進入精度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明では、従来のように脚部の内法位置を検出することなしに、一対の脚部の中心位置を導いてその位置に搬送車を移動させることができるため、例えば搬送車がパレットに対して斜め向きに停車した場合であっても、パレットの位置の検出ができなくなる場面が生じることを低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のパレット搬送システムにつき、一実施形態を取り上げて、図面とともに以下説明を行う。
【0016】
本実施形態のパレット搬送システムは、パレット1が有する荷台11の下方に配置された状態でパレット1を地面から浮かせつつ移動させる搬送車2によるシステムである。なお、搬送車2の制御を遠隔的に行う場合には、搬送車2から離れた位置に制御部(図示しない)が設けられる。
【0017】
まず、本実施形態のパレット搬送システムにおける適用対象物であるパレット1について説明する。パレット1は、
図1及び
図2に示すように、荷物を積載できる荷台11と、この荷台11を幅方向(
図2における左右方向)に間隔を空けて下方から支持する一対の脚部12とを有する。本実施形態における一対の脚部12は、
図2に示すように、左右に間隔を空けて対向している。一対の脚部12のそれぞれ(各脚部12)は、上下方向に延びる複数の柱部121と、複数の柱部121を下方で連結する脚底部122とを有する。本実施形態では各柱部121は鉛直方向(パレット置き場Yの地面に対して垂直方向)に延びており、荷台11と各脚部12とでラーメン構造を構成している。ただし、これに限られず、各柱部121が斜め方向に延びていてもよい。この場合は、ラーメン構造またはトラス構造となる。
図2に示すように、本実施形態のパレット1はいわゆる「門型」形状であって、荷台11の下方に空間11Sが形成される。
【0018】
搬送車2は、一般に「キャリアパレット車」と呼ばれ、パレット1における荷台11の下方に存在する空間11Sに入り込むように配置することのできる車高に形成されている(
図2に二点鎖線で示している)。そして、車高が伸長することで、パレット1を地面から浮かせつつ移動させることができるよう構成されている。この搬送車2は、前後両端に運転台を有していて有人走行も可能であるが、本実施形態のパレット搬送システムに用いられる場合には主に無人走行する。ただし、本実施形態のパレット搬送システムを、有人走行の際に補助的に適用してもよい。搬送車2は、向かい合う位置にあるパレット1(詳しくはパレット1における各脚部12)に向かって検出光を照射する照射部21と、照射された検出光がパレット1に反射された反射光を受光する受光部22と、を有する。照射部21及び受光部22としては、光線を発受光することで検知を行う種々のセンサ類を用いることができる。
図3に示した二点鎖線は、検出光及び反射光に相当する。少なくとも照射部21は、搬送車2が有する車体に対して上下に延びる軸線周りに回動(例えば方向Rに回動)して走査を行う。
【0019】
パレット1における一対の脚部12(詳しくは脚部12のうち柱部121)は、それぞれ、パレット1の手前側(
図1参照)に搬送車2が配置された場合において、この搬送車2に対向する対向面1211を有する。本実施形態の各脚部12における柱部121はH形鋼から形成されている。H形鋼の前側フランジにおける外面である平面が対向面1211となる。
【0020】
次に、本実施形態のパレット搬送システムにて行われる複数の工程について、
図5(フロー図)と共に説明する。まず、搬送車2は、予め設定された、パレット置き場Yの地図データと、パレット置き場Yにおいて搬送車2が走行した経路データ(走行経路の履歴データ)との照合により、前記パレット置き場Yに配置されたパレット1における一対の脚部12の手前側に停車する。この停車までの搬送車2の動きは、車上に設けられた制御部により自律的になされてもよいし、車外に設けられた制御部から例えば無線で指示を受けることでなされてもよい。
【0021】
本実施形態のパレット搬送システムでは、パレット1における荷台11の下方に搬送車2を進入させる前(一対の脚部12の手前側端部に搬送車2の前端がかかる前)の段階において、主に、目標エリア設定工程、データ収集工程、起点データ設定工程、検出位置認識工程、パレット位置導出工程、搬送車移動工程を順に実施する。なお、これらの工程に加え、補助的な他工程を実施することもできる。これらの工程は、車上に設けられた制御部により自律的に実施される。または、車外に設けられた制御部で実施され、車外の制御部から例えば無線で指示を受けることにより車上での動作がなされる。
【0022】
目標エリア設定工程では、予め設定された、パレット置き場Yの地図データと、置き場において搬送車2が走行した経路データ(走行経路の履歴データ)との照合により、パレット1における一対の脚部12が存在すると推定される目標エリアを各脚部12(本実施形態では、搬送車2から見た場合の左右の脚部12)について設定する(ステップS1)。なお、前記方法のほか、搬送車2に設けられたカメラを利用して、画像認識により目標エリアを設定することもできる。
【0023】
データ収集工程では、パレット1における一対の脚部12が存在すると推定される目標エリアに、搬送車2における照射部21から検出光を照射して、搬送車2における受光部22で反射光を受光する走査を行うことで複数の検出データ(検出データ群)を取得する(ステップS2)。なお、データ収集工程で取得された検出データにはノイズデータが混入していてもよい。このノイズデータは後の工程において排除される。
図3に複数の二点鎖線で示したように、データ収集工程における走査間隔(角度間隔)は、均等とされている。
図3及び
図4では、検出データ群を模式的に円形で示している。検出光としては、レーザ光が用いられている。ただし、検出光はレーザ光に限定されず、他の種類の光線であってもよい。
【0024】
起点データ設定工程では、データ収集工程で取得された検出データ群から、一対の脚部12のうち一方側脚部(例えば、搬送車2から見た場合の右脚部)121Rと他方側脚部(例えば、搬送車2から見た場合の左脚部)121Lの各々における単一の起点データ(データ点S、S’)を設定する。単一の起点データの設定については、各脚部12R、12Lにおいて、検出データ群から任意の検出データを一つ選択すればよい。この選択のため、例えば、照射部21及び受光部22(センサ)からの距離が所定範囲内にあることを基準とすることができる。
【0025】
本実施形態では、
図5に示すように、まず一方側脚部12Rに対して起点データ設定工程(ステップS3)と後述の最端データ探索工程(ステップS4〜S9)が実施され、その後、他方側脚部12Lに対して起点データ設定工程(ステップS10)と後述の最端データ探索工程(ステップS11〜S16)が実施される。
【0026】
最端データ探索工程では、起点データ設定工程で設定された各起点データの検出位置に係る各脚部12R、12L上のデータ点S、S’を起点として、一方側脚部12Rと他方側脚部12Lの各々で、起点データを含む複数の検出データの中から、各脚部12R、12Lにおける対向面1211の最端部に位置する最端データ点を探索する。具体的には、各脚部12R、12Lの対向方向での内側または外側へ順に検出データ群における個々の検出データの検出位置を認識していく探索をすることで、最内端部または最外端部に位置する最端データ点を得る。本実施形態では、
図4に矢印Tの方向で示すように、内側へ認識を行っていき、最内端部に位置する最端データ点を得る。この最端データ探索工程において、最端データ点の探索の際の、複数の検出データの検出位置の内側または外側へ順に行っていく認識は、データ収集工程における走査間隔に基づいて行われる。つまり、認識の間隔がデータ収集工程における走査間隔に一致する。これにより、関係のないノイズ、つまり、データ収集工程において現実に収集されておらずに混入したデータに影響された誤認識を抑制できる。
【0027】
本実施形態では、まず、起点データに係るデータ点近傍の、検出データの間隔値を算出する(ステップS4、S11)。そして、データ点の番号が1に設定される(ステップS5、S12)。これにより、各起点データの検出位置に係る各脚部12R、12L上の点が「第1データ点」となる。
【0028】
そして、第1データ点からパレット1の内側方向に前記間隔値分だけ隔たれた位置の近傍に検出データが有るか無いかを判断する(ステップS6、S13)。検出データが有る場合、その検出データに係るデータ点を第2データ点に設定する(ステップS7、S14)と共に、データ点の番号が2に設定される(ステップS8、S15)。パレット1の内側方向で検出データが無くなるまでこれが繰り返され、最後の検出データにおけるデータ点A、A’を最端データ点(最も内側のデータ点)として設定する(ステップS9、S16)。なお、最初に設定した起点データが最も内側のデータ点だと判断されると、起点データが最端データ点(最も内側のデータ点)として設定される。
【0029】
パレット位置導出工程では、最端データ探索工程で認識された複数の検出データの検出位置のうちで、探索結果の最端データに関する最内端(本実施形態におけるデータ点A、A’)または最外端である一対の検出位置を用いて、一対の脚部12の中心位置Cを導く(ステップS17)。前記「最内端または最外端」は、一方側脚部12Rと他方側脚部12Lの各々における、複数の検出データのうち略直線方向に並ぶものでの最内端または最外端である。また、前記「略直線方向」は、本実施形態では
図3に一点鎖線で示すラインLに沿う方向であって、対向面1211(H形鋼の前側フランジにおける外面)に沿う方向である。このように、パレット位置導出工程が各脚部12R、12Lにおける対向面1211に沿って行われることから、もし、搬送車2がパレット1に対し、進入前に斜め向きに停車した場合であっても、各脚部12R、12Lの対向面1211に沿って、複数の検出データの検出位置が必ず存在するため、一対の脚部12の中心位置Cを導くことが不可能になることはない。なお、前記最内端または最外端である一対の検出位置は、一点対一点の関係になる。このため、従来のように対向する関係(複数点対複数点)とはならない。
【0030】
本実施形態では、各脚部12において設定された最も内側のデータ点A、A’同士の中点をパレット1の中心位置Cとし、各データ点A、A’を結ぶ線分に直交する線分である中心線CLの方向を、パレット1の中心線の方向(つまり、搬送車2に対するパレット1の傾き)とする。
【0031】
搬送車移動工程では、パレット位置導出工程で得られた一対の脚部12の中心位置C及び中心線CLに合わせて搬送車2を移動させる。
【0032】
以上のように、パレット1に対して搬送車2を移動させるので、本実施形態によれば、従来のように脚部12の内法位置を検出することなしに、一対の脚部12の中心位置Cを導いてその位置に搬送車2を移動させることができる。
【0033】
本発明につき一実施形態を取り上げて説明してきたが、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0034】
例えば、搬送車2がパレット1における荷台11の下方に進入している途中において、パレット1における一対の脚部12のうち、パレット1の奥行方向半ばに位置するものに対して、前記データ収集工程以降の各工程を重ねて実施することもできる。こうすることにより、搬送車2の進入途中でも搬送車2を一対の脚部12の中心位置Cに合わせて移動させられるので、もし進入途中の段階で搬送車2が一対の脚部12の中心位置Cからずれていたとしても、そこで修正がされるため、進入途中で搬送車2が脚部12を擦るような事態が発生しない。よって、搬送車2がパレット1における荷台11の下方に進入している途中における進入精度を高めることができる。
【0035】
また、前記実施形態では、最端データ探索工程において、各脚部12R、12Lの内側へ順に検出データ群における個々の検出データの検出位置を認識していた。しかし、外側へ順に認識していくこともできる。この場合、
図3からも理解できるように、最も外側の検出データにおけるデータ点B、B’の近傍には、対向面1211以外の部分でデータ点が現れない。各脚部12R、12Lの外側部分(H形鋼のフランジ間)には、対向面1211により検出光が遮られて当たらないためである。このため、外側へ順に認識していくことにより、誤検出の可能性を低下させられる。
【0036】
更に、最端データ探索工程において、内側と外側の両側に認識を行い、得られた最も内側のデータ点の位置と最も外側のデータ点の位置との中間位置を導いた上で、この中間位置を用いてパレット位置導出工程を実施することもできる。
【0037】
また、前記実施形態のパレット1において、各脚部12における柱部121はH形鋼から形成されていた。しかし、これに限定されず、搬送車2に対向する対向面1211を有する材料であれば、種々の材料を用いることができる。このため、柱部121は例えば角型鋼管やチャンネル材、アングル材であってもよい。更には、柱部121に円形の鋼管を用い、搬送車2の照射部21から照射された検出光を受ける部分の側面に平板が取り付けられ、この平板の表面が対向面1211とされていてもよい。