【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0072】
(実施例1:ソーセージの作製)
以下の表1に示す組成にて、以下のソーセージの作製手順1に示す手順(1)〜(5)に従ってソーセージを作製した。
【0073】
(ソーセージの作製手順1)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして粗挽き肉を調製し、原料肉とした;
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードを投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合した後に、植物性油脂を投入し、フードカッターで均一になるまで混合してパティを得た;
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを85℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0074】
上記ソーセージの作製における手順(2)において、ラードは固体状で投入し、植物性油脂は液状(植物油)で投入した。本実施例では、10.0gのラード(動物性油脂)および10.0gのサフラワー油(ハイリノール)(植物性油脂)を油脂として用いた(ラード100重量部に対してサフラワー油100重量部)。
【0075】
本実施例では、表1に示すように、55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(ラードおよびサフラワー油を各18重量部)および0.1gの炭酸ナトリウム(0.18重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは0.5重量部であった。
【0076】
(実施例2:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの大豆油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して大豆油100重量部を用いた)。
【0077】
(実施例3:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのヒマワリ油(ハイオレイック)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してヒマワリ油100重量部を用いた)。
【0078】
(実施例4:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのゴマ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してゴマ油100重量部を用いた)。
【0079】
(実施例5:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの菜種油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して菜種油100重量部を用いた)。
【0080】
(実施例6:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの米油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して米油100重量部を用いた)。
【0081】
(実施例7:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのオリーブ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してオリーブ油100重量部を用いた)。
【0082】
(実施例8:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの亜麻仁油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して亜麻仁油100重量部を用いた)。
【0083】
(実施例9:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのヤシ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してヤシ油100重量部を用いた)。
【0084】
(実施例10:ソーセージの作製)
炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0085】
(比較例1:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、そして炭酸ナトリウムの代わりにピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)0.2g(原料肉100重量部に対して0.36重量部を用いた)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0086】
(比較例2:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、および炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0087】
【表1】
【0088】
(ソーセージの評価方法)
実施例1〜10および比較例1および2で得られたソーセージについて以下のようにして評価した。
【0089】
(歩留まり率の測定)
実施例1〜10および比較例1および2で得られたソーセージの重量(加熱後重量)を測定し、加熱前重量(表1に示す各実施例および比較例の合計(重量部)に相当する)を100とした場合の割合を百分率で算出し、これを歩留まり率(%)とした。得られた結果を表2に示す。
【0090】
(官能評価)
パネリスト10名にて、上記ソーセージの作製における手順(5)の冷却後のソーセージを喫食し、その食感を硬さおよび弾力感の観点から各自が評価し、協議して結論づけた。硬さおよび弾力感は、歯ごたえの程度に基づきそれらの有無、または強く感じられたかもしくは弱く感じられたかを判断した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
(結着性評価)
結着性評価について、歩留まり率と官能評価結果を総合して以下のように基準を設け、評価した。結着性不良なものは上記ソーセージの作製における手順(4)の加熱時に著しい離水が見られて歩留まり率が低く、結着性良好なものは保水性が高く、歩留まり率は高くなる傾向があることから、歩留まり率が90%未満のものもしくは官能評価において「硬さ、弾力感がない」と評価されたものは、「結着性が悪い」と判断した。歩留まり率が90%以上であるが、官能評価において「硬さ、弾力感が弱い」と評価されたものは、「結着性が弱い」と判断した。歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さが弱く、弾力感がやや弱い」と評価されたものは、「結着性がやや弱い」と判断し、歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さが弱く、弾力感がややある」と評価されたものは、「結着性がやや良好」と判断し、歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さ、弾力感がある」と評価されたものは、「結着性が良好」と判断した。得られた結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表1および表2に見られるように、ラードおよび植物性油脂を用いて作製したソーセージ(実施例1〜10)では、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。
【0094】
ここで、表2において実施例1、実施例10、比較例1および比較例2との結果を対比した。実施例1および実施例10のソーセージは共に、ラードおよびサフラワー油を用いて作製した。実施例1のソーセージはさらにアルカリ塩である炭酸ナトリウムを含むのに対し、実施例10のソーセージはアルカリ塩を用いずに作製した。実施例10のソーセージは、植物性油脂を用いずに作製し、アルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性がより良好なものとなった。アルカリ塩を含む実施例1のソーセージは、アルカリ塩を含まないソーセージ(実施例10)と比べて、より優れた食感改良効果が観察された。さらに、実施例1のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0095】
(実施例11:ソーセージの作製)
油脂に6.0gのラードおよび14.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油233重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード10.8重量部およびサフラワー油25.2重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0096】
(実施例12:ソーセージの作製)
油脂に14.0gのラードおよび6.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油43重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード25.2重量部およびサフラワー油10.8重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0097】
(実施例13:ソーセージの作製)
油脂に18.0gのラードおよび2.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油11重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード32.4重量部およびサフラワー油3.6重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0098】
(比較例3:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0099】
実施例11〜13および比較例3で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、実施例1ならびに比較例1および2のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例11〜13および比較例3で作製したソーセージの組成を、実施例1ならびに比較例1および2で作製したソーセージの組成とともに表3に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表4に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表3および4から明らかなように、ラードとサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例1および実施例11〜13)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例1および実施例11〜13のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例1のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例3)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0103】
ここで、表4において実施例1と実施例11〜13の結果を対比すると、特にラード100重量部に対してサフラワー油を100重量部〜233重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0104】
(実施例14〜23:ソーセージの作製)
以下の表5に示す組成にて、以下のソーセージの作製手順2の手順(1)〜(5)にしたがって、ソーセージを作製した。作製手順2は、上記作製手順1の手順(2)を変更したこと以外は作製手順1と同様とした。
【0105】
(ソーセージの作製手順2)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして粗挽き肉を調製し、原料肉とした;
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードおよび植物性油脂を投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合してパティを得た;
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを85℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0106】
実施例14〜23のソーセージ原材料の組成はそれぞれ実施例1〜10に対応した。
【0107】
【表5】
【0108】
実施例14〜23で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、比較例1および2のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例14〜23で作製したソーセージの組成を、比較例1および2で作製したソーセージの組成とともに表5に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表6に示す。
【0109】
【表6】
【0110】
表5および表6に見られるように、ラードおよび植物性油脂を用いて作製したソーセージ(実施例14〜23)では、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。
【0111】
次に、表6において、実施例14、実施例23、比較例1および比較例2との結果を対比した。実施例14および実施例23のソーセージは共に、ラードおよびサフラワー油を用いて作製した。実施例14のソーセージはさらにアルカリ塩である炭酸ナトリウムを含むのに対し、実施例23のソーセージはアルカリ塩を用いずに作製した。実施例23のソーセージは、植物性油脂を用いずに作製し、アルカリ塩も含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性がより良好なものとなった。アルカリ塩を含む実施例14のソーセージは、アルカリ塩を含まないソーセージ(実施例23)と比べて、より優れた食感改良効果が観察された。さらに、実施例14のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0112】
さらに、実施例1〜10(表1および表2)と実施例14〜23(表5および表6)とを対比した。これらの間では、それぞれのソーセージ原材料の組成は同じであるが(表1と表5)、ソーセージ作製手順の手順(2)が異なった。油脂と他原材料との混合の際、先にラードと混合後に植物性油脂と混合して製造した実施例1〜9のソーセージ(表2)の方が、ラードおよび植物性油脂を同時に添加して混合して製造した実施例13〜21のソーセージ(表6)と比べて、相対的に高い食感改良効果を示していた。表6においても、例えば、サフラワー油を用いた場合のように、十分にソーセージの食感改良効果は示されていた。
【0113】
(実施例24〜26:ソーセージの作製)
ソーセージ原材料の組成をそれぞれ実施例11〜13と同じにして、上記ソーセージの作製手順2にしたがってソーセージを作製した(実施例24〜26)。
【0114】
実施例24〜26で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、実施例14、ならびに比較例1〜3のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例24〜26で作製したソーセージの組成を、実施例14ならびに比較例1〜3で作製したソーセージの組成とともに表7に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表8に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
表7および8から明らかなように、ラードとサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例14および実施例24〜26)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例14および実施例24〜26のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例1のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例3)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0118】
ここで、表8において実施例14と実施例24〜26の結果を対比すると、特にラード100重量部に対してサフラワー油を100重量部〜233重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0119】
さらに、同様に、ソーセージ原材料の組成は同じでソーセージ作製手順が異なる実施例1および11〜13(表3および表4)と実施例14および24〜26(表7および表8)とを対比した。先にラードと混合後に植物性油脂と混合して製造した実施例1および11〜13のソーセージ(表4)の方が、ラードおよび植物性油脂を同時に添加して混合して製造した実施例14および24〜26のソーセージ(表8)と比べて、相対的に高い食感改良効果を示していた。
【0120】
(実施例27〜32:ソーセージの作製)
以下の表9に示す原材料組成にて、ソーセージ原材料の混合工程を以下に示すように行った以外は、上記ソーセージの作製手順1および2と同様の手順でソーセージを作製した(実施例27〜32)。実施例27〜32では、動物性油脂としてラードまたは背脂を用いた。背脂は、豚背脂をミンサーで挽いて得られたミンチを用いた。
【0121】
実施例27では、上記ソーセージの作製手順1と同様に、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合し、得られた混合物にラードを投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合した後に、植物性油脂を投入し、フードカッターで均一になるまで(約40秒間)混合してパティを得た。
【0122】
実施例28では、上記ソーセージの作製手順2と同様に、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードおよび植物性油脂を投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合してパティを得た。
【0123】
実施例29では、上記ソーセージの作製手順1または2と異なり、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料の混合により得られた混合物に、植物性油脂を投入し、フードカッターで約60秒間均一になるまで混合した後に、ラードを投入し、フードカッターで均一になるまで(約40秒間)混合してパティを得た。
【0124】
実施例30〜32では、動物性油脂としてラードの代わりに背脂を用いたこと以外は、それぞれ実施例27〜29と同様にソーセージの原材料の混合工程を行った。
【0125】
実施例27〜32で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例27〜32で作製したソーセージの組成を表9に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表10に示す。
【0126】
【表9】
【0127】
【表10】
【0128】
表9にも示すように、実施例27〜29は、動物性油脂としてラードを使用して試験した。その結果、表10に示されるように、実施例27および28はそれぞれ同様の作製方法で作製した実施例1および14のソーセージと同様に、歩留まり率、官能評価および結着性において良好な結果を示した。実施例29は、上記のソーセージの作製方法1および2とは異なる混合手順であり、植物性油脂との混合後に動物性油脂のラードと混合した。この混合順序の場合は、植物性油脂と原料肉との混合時間を実施例27のラードとの混合時間と比べて長くすることで、実施例27および28と同じように、歩留まり率、官能評価および結着性がよいソーセージを作製することができた。
【0129】
また、表9にも示すように、実施例30〜32は、動物性油脂として背脂(豚背脂ミンチ)を使用して試験した。その結果、表10に示されるように、実施例30のように動物性油脂の背脂を先に混合した後に植物性油脂と混合する場合、および実施例31のように背脂および植物性油脂を同時に添加して混合する場合とも、ラードの場合と同様に、歩留まり率、官能評価および結着性において良好な結果を示した。植物性油脂との混合後に背脂と混合した実施例32においては、これらの結果から、ラードの場合と同様に、植物性油脂と原料肉との混合時間を実施例30の背脂との混合時間と比べて長くすることで、実施例30および31と同じように、歩留まり率、官能評価および結着性がよいソーセージを作製することができた。
【0130】
(実施例33:ソーセージの作製)
上記の実施例1〜32では、原料肉を含む全原料をフードカッターで混合して細挽きソーセージを作製したのに対し、本実施例では、以下の手順にて粗挽きソーセージを作製した。背脂を動物性油脂として用いた。
【0131】
(粗挽きソーセージの作製方法)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして、粗挽き肉を調製、原料肉とした。
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料を縦型ミキサーに入れ、ビーターを用いて約2分間混合した。得られた混合物に植物性油脂を投入し、ビーターを用いて15分間混合した後に、背脂(豚背脂ミンチ)を投入し、ビーターを用いて15分間混合したものをパティとした。
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを75℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0132】
本実施例では、15.0gの背脂(動物性油脂)および5.0gのサフラワー油(ハイリノール)(植物性油脂)を油脂として用いた(背脂100重量部に対してサフラワー油33重量部)。そして、55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂27重量部およびサフラワー油9重量部)および0.1gの炭酸ナトリウム(0.18重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは0.5重量部であった。
【0133】
実施例33で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例33で作製したソーセージの組成を表11に示し、かつこれらの評価結果を表12に示す。
【0134】
【表11】
【0135】
【表12】
【0136】
粗挽きソーセージでは、表12に示されるように、原料肉等に植物性油脂を先に混合し、その後背脂を混合した場合に、歩留りおよび官能評価共によい評価となった。
【0137】
(実施例34〜37および比較例4〜6:ソーセージの作製)
動物性油脂の背脂と植物性油脂のサフラワー油との配合比率を変更して、粗挽きソーセージを作製した。以下の表13に示す原材料組成にて、粗挽きソーセージの作製を行った(実施例34〜37および比較例4〜6)。
【0138】
(実施例34:ソーセージの作製)
油脂に18.0gの背脂および2.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いて、実施例33と同様の粗挽きソーセージの作製方法の手順に従ってソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油11重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂32.4重量部およびサフラワー油3.6重量部)を用いた。
【0139】
(実施例35:ソーセージの作製)
油脂に15.0gの背脂および5.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油33重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂27重量部およびサフラワー油9重量部)を用いた。
【0140】
(実施例36:ソーセージの作製)
油脂に10.0gの背脂および10.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油100重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂18重量部およびサフラワー油18重量部)を用いた。
【0141】
(実施例37:ソーセージの作製)
油脂に6.0gの背脂および14.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油233重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂10.8重量部およびサフラワー油25.2重量部)を用いた。
【0142】
(比較例4:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、そして炭酸ナトリウムの代わりにピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)0.2g(原料肉100重量部に対して0.36重量部を用いた)を用いた
7
こと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0143】
(比較例5:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、および炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0144】
(比較例6:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0145】
実施例34〜37および比較例4〜6で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例34〜37および比較例4〜6で作製したソーセージの組成を表13に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表14に示す。
【0146】
【表13】
【0147】
【表14】
【0148】
表14に示したとおり、背脂とサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例34〜37)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例5)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例34〜37のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例4のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例6)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0149】
ここで、表14において実施例34〜37の結果を対比すると、特に背脂100重量部に対してサフラワー油を33重量部〜100重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0150】
(実施例38〜41および比較例7〜8:プレスハムの作製)
実施例38〜41では、以下の手順にてプレスハムを作製した。植物性油脂として、サフラワー油(実施例38)、大豆油(実施例39)、菜種油(実施例40)およびアマニ油(実施例41)のいずれかを用いた。動物性油脂として背脂を用いた。対照として、リン酸塩添加プレスハム(比較例7)およびリン酸塩無添加プレスハム(比較例8)をさらに作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。プレスハムの原材料の組成を以下の表15の(A)および(B)に示す。
【0151】
【表15】
【0152】
(プレスハムの作製方法)
・塩漬肉の作製(表15の(A))
(1)豚肉を10gの小片にカットする。
(2)カットした小片に塩漬剤を加えて真空パックし、一晩冷蔵庫にて塩漬する。
・つなぎの作製(表15の(B))
(3)塩漬肉の一部(12重量部)を取り、つなぎ原料を加えてフードカッターで均一になるまでよく混合する。
・プレスハムの作製
(4)作製したつなぎと塩漬肉を、縦型ミキサーにてよく混合する。
(5)ケーシングに充填。
(6)75℃で加熱調理する。
(7)冷却し、完成。
(8)完成したハムについて、約2mmの厚さにスライスし、官能評価した。
【0153】
実施例38〜41では、油脂として、2重量部の背脂(動物性油脂)に対して3重量部の植物性油脂を用いた(背脂100重量部に対して植物性油脂150重量部)。そして、12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)(背脂16.67重量部および植物性油脂25.00重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0154】
実施例38〜41ならびに比較例7および8で得られたプレスハムについて、以下のようにして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0155】
(歩留まり率の測定)
プレスハムの重量(加熱後重量)を測定し、加熱前重量(ケーシングに充填した量)を100とした場合の割合を百分率で算出し、これを歩留まり率(%)とした。
【0156】
(官能評価)
パネリスト10名にて、上記「プレスハムの作製方法」の工程(8)のスライス後のプレスハムを喫食し、その食感を歯ごたえの程度に基づき弾力感があったかどうかを各自が評価し、協議して結論づけた。
【0157】
(結着性評価)
歩留まり率と官能評価結果とを総合して以下のように基準を設け、評価した:
歩留まり率が90%未満のものもしくは官能評価において「弾力感がない」と評価されたものは、「結着性が悪い」と判断した;そして
歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「弾力感がある」と評価されたものは、「結着性が良好」と判断した。
【0158】
実施例38〜41ならびに比較例7および8のプレスハムについて、評価結果を表16に示す。
【0159】
【表16】
【0160】
リン酸塩添加配合のプレスハム(比較例7)がリン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)では、弾力が無く、結着性が悪いため、スライスしたハムを折り曲げると、ひび割れが多数認められた。リン酸塩無添加であっても植物性油脂と動物性油脂とを添加した場合(実施例38〜41)、やや弾力があり、ひび割れの少ない結着性がやや良好なプレスハムを得ることができた(表16)。
【0161】
(実施例42〜45:プレスハムの作製)
実施例42〜45では、油脂として植物性油脂のみを用いたことを除いて上記の実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。植物性油脂として、サフラワー油(実施例42)、大豆油(実施例43)、菜種油(実施例44)およびアマニ油(実施例45)のいずれかを用いた。
【0162】
対照として、リン酸塩添加プレスハムと、リン酸塩無添加プレスハムとをそれぞれ比較例7および8と同様にして作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0163】
プレスハムの原材料の組成を以下の表17(A)および(B)に示す。
【0164】
【表17】
【0165】
実施例42〜45では、油脂として、5重量部の植物性油脂を用いた。12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0166】
実施例42〜45で得られたプレスハムについて、上記の実施例38〜41と同様の手順にて歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。得られた結果を以下の表18に示す。
【0167】
【表18】
【0168】
植物性油脂を配合したプレスハム(実施例42〜45)もまた、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)と比べて、歩留まり、弾力感および結着性の向上がみられた(表18)。プレスハムにおいては、動物性油脂を植物性油脂と併用しなくても、歩留まり、弾力感および結着性を向上させた(表17および表18)。
【0169】
(実施例46:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの中鎖脂肪酸油脂(スコレー64G、日清オイリオグループ株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して中鎖脂肪酸油脂100重量部を用いた)。
【0170】
対照として、リン酸塩添加ソーセージおよびリン酸塩無添加ソーセージをそれぞれ比較例1および2と同様に作製した(これらは動物性油脂(ラード)を含むが植物性油脂を含まないものであった)。
【0171】
実施例46、比較例1および比較例2で得られたソーセージについて、実施例1と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0172】
実施例46、比較例1および比較例2のソーセージの原材料の組成を以下の表19に示し、ソーセージの評価結果を表20に示す。
【0173】
【表19】
【0174】
【表20】
【0175】
表20に見られるように、植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いた場合(実施例46)も、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。また、実施例46のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0176】
(実施例47:プレスハムの作製)
植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いたことを除いて、実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。
【0177】
対照として、リン酸塩添加プレスハムおよびリン酸塩無添加プレスハムをそれぞれ比較例7および8と同様に作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0178】
実施例47、比較例7および比較例8で得られたプレスハムについて、実施例38〜41と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0179】
実施例47、比較例7および比較例8のプレスハムの原材料の組成を以下の表21の(A)および(B)に示す。
【0180】
【表21】
【0181】
実施例47では、油脂として、4重量部の背脂(動物性油脂)に対して1重量部の植物性油脂を用いた(背脂100重量部に対して植物性油脂25重量部)。そして、12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)(背脂33.33重量部および植物性油脂8.33重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0182】
実施例47、比較例7および比較例8のプレスハムの評価結果を以下の表22に示す。
【0183】
【表22】
【0184】
リン酸塩添加配合のプレスハム(比較例7)では、歩留まり率が高く、弾力感があり、結着性が良好であるのに対し、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)では、弾力が無く、結着性が悪いため、スライスしたハムを折り曲げると、ひび割れが多数認められた。植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いて動物性油脂と共に添加した場合(実施例47)、リン酸塩無添加であっても、やや弾力があり、ひび割れの少ない結着性がやや良好なプレスハムを得ることができた(表22)。
【0185】
(実施例48:プレスハムの作製)
実施例48では、動物性油脂を用いずに植物性油脂のみを用い、かつ植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いたことを除いて、実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。
【0186】
対照として、リン酸塩添加プレスハムおよびリン酸塩無添加プレスハムをそれぞれ比較例7および8と同様に作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0187】
実施例48、比較例7および8で得られたプレスハムについて、実施例38〜41と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0188】
実施例48、比較例7および8のプレスハムの原材料の組成を以下の表23(A)および(B)に示す。
【0189】
【表23】
【0190】
実施例48では、油脂として、5重量部の植物性油脂を用いた。12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0191】
実施例48、比較例7および比較例8のプレスハムの評価結果を以下の表24に示す。
【0192】
【表24】
【0193】
植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を配合したプレスハム(実施例48)もまた、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)と比べて、歩留まり、弾力感および結着性の向上がみられた(表24)。中鎖脂肪酸油脂を用いた場合であっても、プレスハムにおいては、植物性油脂のみでも歩留まり、弾力感および結着性を向上させた。