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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-126105(P2021-126105A)
(43)【公開日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】畜肉練り製品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A23L 13/40 20160101AFI20210806BHJP
   A23L 13/50 20160101ALI20210806BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20210806BHJP
【FI】
   A23L13/40
   A23L13/50
   A23L13/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【全頁数】40
(21)【出願番号】特願2020-68585(P2020-68585)
(22)【出願日】2020年4月6日
(31)【優先権主張番号】特願2019-76372(P2019-76372)
(32)【優先日】2019年4月12日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2019-128191(P2019-128191)
(32)【優先日】2019年7月10日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2020-29597(P2020-29597)
(32)【優先日】2020年2月25日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021028
【氏名又は名称】奥野製薬工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(74)【代理人】
【識別番号】100207136
【弁理士】
【氏名又は名称】藤原 有希
(72)【発明者】
【氏名】森川 彩
(72)【発明者】
【氏名】藤井 靖子
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太
(72)【発明者】
【氏名】近藤 克紀
【テーマコード(参考)】
4B042
【Fターム(参考)】
4B042AC05
4B042AD01
4B042AD03
4B042AG02
4B042AG03
4B042AH01
4B042AK01
4B042AK05
4B042AK06
4B042AK08
4B042AK11
4B042AP02
4B042AW04
(57)【要約】
【課題】リン酸塩不使用の場合であっても、ソーセージなどの畜肉練り製品に対して好ましい食感を付与することができる、畜肉練り製品の製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明の畜肉練り製品の製造方法は、原料肉、動物性油脂および植物性油脂を混合し、パティを作製する工程を含み、該動物性油脂が、豚由来油脂および牛由来油脂からなる群から選択される少なくとも1種の油脂である。本発明によれば、リン酸塩を含有させることなく、例えば弾力感に富む畜肉練り製品を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
畜肉練り製品の製造方法であって、
原料肉、動物性油脂および植物性油脂を混合し、パティを作製する工程、
を含み、
該動物性油脂が、豚由来油脂および牛由来油脂からなる群から選択される少なくとも1種の油脂である、方法。
【請求項2】
前記動物性油脂が豚由来油脂であり、該豚由来油脂が、ラードおよび背脂からなる群から選択される少なくとも1種の油脂である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記植物性油脂が、リノール酸およびリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸を含有する、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記植物性油脂が、前記リノール酸を該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として40%以上の割合で含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記植物性油脂が、前記リノレン酸を該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として10%以上の割合で含有する、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
前記植物性油脂が、サフラワー油、大豆油、菜種油、亜麻仁油および中鎖脂肪酸油脂からなる群から選択される少なくとも1種の食用油である、請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記動物性油脂100重量部に対して前記植物性油脂の量が10重量部〜900重量部である、請求項1から6のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記混合する工程において、前記原料肉を前記動物性油脂と混合した後に前記植物性油脂が混合される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記混合する工程において、前記原料肉に対し、前記動物性油脂および前記植物性油脂が一緒に混合される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記混合する工程において、前記原料肉を前記植物性油脂と混合した後に前記動物性油脂が混合される、請求項1から7のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記混合する工程においてアルカリ塩がさらに混合され、該アルカリ塩が、非リン酸系のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩である、請求項1から10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記アルカリ塩が、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、貝殻焼成カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1つの塩である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パティがリン酸塩を含まない、請求項1から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記パティがカゼインナトリウムを含まない、請求項1から13のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記パティを加熱する工程をさらに含む、請求項1から14のいずれかに記載の製造方法。
【請求項16】
前記畜肉練り製品がソーセージまたはプレスハムの形態を有する、請求項1から15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
プレスハムの形態を有する畜肉練り製品の製造方法であって、
原料肉および植物性油脂を混合し、パティを作製する工程、
該パティをケーシングに充填する工程、および
該パティを加熱する工程
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、畜肉練り製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リン酸塩は、保水性向上のため、または結着剤として、畜肉練り製品の製造の際に幅広く使用されている。
【0003】
畜肉練り製品などの肉製品の保水性および結着性は加塩操作によって発現する。結着性は保水性と密接に関連しており、保水性の向上と共に向上し得る。例えば、畜肉練り製品の1種であるソーセージの製造の際に塩漬すると、細切(カッティング)工程後の食肉は、保水性および結着性の発現により粘稠性が非常に高くなり、加熱すると弾力感のある肉塊が形成される。これには筋原線維に局在する塩溶性タンパク質であるミオシンが重要な役割を果たす。弾力感のある良質な畜肉練り製品を得るには、適正濃度として2.5重量%程度の食塩が必要とされる。しかし、日本人の嗜好から市販のソーセージ等の畜肉練り製品における食塩含有量は多くて食塩1.5重量%程度であり、この量の食塩の添加では、畜肉練り製品に良好な弾力感を付与する結着性を発現させることは難しい。
【0004】
良好な弾力感のある畜肉練り製品を得るために、上記のような高濃度の食塩の添加に代えて、畜肉練り製品の製造の際に重合リン酸塩のようなリン酸塩が添加されている。リン酸塩は、0.3重量%程度の低濃度での添加で十分な結着性を発現し、良好な弾力感のある畜肉練り製品を得ることができる。
【0005】
しかし、近年、リン酸塩の過剰摂取による腎臓への影響や、リン酸塩によるミネラル類の吸収阻害などが注目されている。このため、畜肉練り製品について、リン酸塩の量を削減するかまたはリン酸塩を使用しない代替技術が求められている。
【0006】
特に、ソーセージでは、リン酸塩がその物性および食感に大きく影響を及ぼすため、ソーセージをリン酸塩不使用で製造することは大変難しい。リン酸塩不使用ソーセージでは、従来のリン酸塩使用品よりも保水性、硬さ、弾力感、結着性が不十分であった。このため、リン酸塩不使用ソーセージの場合、本来の好ましい硬さや弾力を持つ食感(いわゆる「プリッと感」)が損なわれてしまう。
【0007】
例えば、リン酸塩不使用ソーセージの製造方法として、塩化ナトリウム、塩化カルシウムおよび塩化マグネシウムを用いる方法(特許文献1)、ならびにトランスグルタミナーゼを用いる方法(特許文献2)が報告されている。
【0008】
しかし、リン酸不使用であっても、リン酸塩使用品に匹敵するような食感を有するソーセージがなお求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−242674号公報
【特許文献2】国際公開第2012/060470号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、リン酸塩不使用の場合であっても、ソーセージなどの畜肉練り製品に対して好ましい食感を付与することができる、畜肉練り製品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、畜肉練り製品の製造方法を提供し、この方法は、
原料肉、動物性油脂および植物性油脂を混合し、パティを作製する工程、
を含み、
該動物性油脂が、豚由来油脂および牛由来油脂からなる群から選択される少なくとも1種の油脂である。
【0012】
1つの実施形態では、上記動物性油脂が豚由来油脂であり、該豚由来油脂が、ラードおよび背脂からなる群から選択される少なくとも1種の油脂である。
【0013】
1つの実施形態では、上記植物性油脂は、リノール酸およびリノレン酸からなる群から選択される少なくとも1種の脂肪酸を含有する。
【0014】
さらなる実施形態では、上記植物性油脂は、上記リノール酸を該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として40%以上の割合で含有する。
【0015】
さらなる実施形態では、上記植物性油脂は、上記リノレン酸を該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として10%以上の割合で含有する。
【0016】
1つの実施形態では、上記植物性油脂は、サフラワー油、大豆油、菜種油、亜麻仁油および中鎖脂肪酸油脂からなる群から選択される少なくとも1種の食用油である。
【0017】
1つの実施形態では、上記動物性油脂100重量部に対して上記植物性油脂の量は10重量部〜900重量部である。
【0018】
1つの実施形態では、上記混合する工程において、上記原料肉を上記動物性油脂と混合した後に上記植物性油脂が混合される。
【0019】
1つの実施形態では、上記混合する工程において、上記原料肉に対し、上記動物性油脂および上記植物性油脂が一緒に混合される。
【0020】
1つの実施形態では、上記混合する工程において、上記原料肉を上記植物性油脂と混合した後に上記動物性油脂が混合される。
【0021】
1つの実施形態では、上記混合する工程においてアルカリ塩がさらに混合され、該アルカリ塩は、非リン酸系のアルカリ金属塩およびアルカリ土類金属塩からなる群から選択される少なくとも1つの塩である。
【0022】
1つの実施形態では、上記アルカリ塩は、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、貝殻焼成カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウムからなる群より選択される少なくとも1つの塩である。
【0023】
1つの実施形態では、上記パティはリン酸塩を含まない。
【0024】
1つの実施形態では、上記パティはカゼインナトリウムを含まない。
【0025】
1つの実施形態では、本発明の製造方法は、上記パティを加熱する工程をさらに含む。
【0026】
1つの実施形態では、上記畜肉練り製品はソーセージまたはプレスハムの形態を有する。
【0027】
本発明はさらに、プレスハムの形態を有する畜肉練り製品の製造方法を提供し、この方法は、原料肉および植物性油脂を混合し、パティを作製する工程、上記パティをケーシングに充填する工程、および上記パティを加熱する工程を含む。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、リン酸塩不使用であっても、例えば、食感に影響する弾力感などの物性が良好または改善された畜肉練り肉製品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(用語の定義)
まず、本明細書に用いる用語について定義する。
【0030】
本明細書における用語「畜肉練り製品」とは、切断、削切、挽く等の物理的な分離操作が施された食用肉を原材料として含有する製品を包含していう。
【0031】
本明細書における用語「加工」とは、切断、削切、挽く等の物理的な分離操作、および原料肉と他の原材料との混合操作を含み、そしてそれらと調味、塩漬、乾燥、くん煙、加熱、冷却などの操作とをさらに組み合わせたものも含む。用語「混合」とは、原料肉と、畜肉練り製品を構成する他の原材料(例えば、食塩、糖類、調味料、香辛料、発色剤、酸化防止剤など)とが接触して合わさる状態にすることをいう(「混練」ということもある)。他の原材料が調味料を含む場合、この他の原材料と原料肉との「混合」により「調味」を行うこともできる。用語「加工」はまた、食品工場、食品店舗(スーパーマーケットのバックヤードなどを含む)での食用肉を原材料とする肉製品の製造段階における処理に加えて、家庭および飲食店における調理も包含する。
【0032】
「畜肉練り肉製品」は、これを構成する原材料の合計重量(加熱前の全原材料の合計重量)に対して、例えば、少なくとも30重量%の食用肉(生肉を基準とする)を原料肉として含有する。
【0033】
畜肉練り製品の形態としては、例えば、ソーセージ、プレスハム、チキンナゲット、ハンバーグ、ミートボール、つくね、餃子の具などが挙げられる。これらの畜肉練り製品では、例えば、ミンサーにより細かくすり潰された挽き肉を原料肉として使用するため、原料肉の肉粒子同士の混合(例えば、挽き肉の練り合わせによる)によって、当該肉粒子同士の接合が生じ得る。このような肉粒子同士の接合を「結着」ともいう。
【0034】
本明細書における用語「畜肉練り製品」はまた、当該製品に施された加熱の程度(すなわち、その一連の加工工程における加工の程度)によって、「加熱畜肉練り製品」または「非加熱畜肉練り製品」のいずれかに分類される。本明細書における用語「加熱」とは、熱エネルギーの付加を通じて原材料の性状を不可逆的に変動させることを言い、例えば、嗜好性の目的に応じて、単に畜肉練り製品(例えば、「加熱畜肉練り製品」)の温度を上昇させる「加温」とは明確に区別される。
【0035】
本明細書における用語「加熱畜肉練り製品」は、すでに原料肉に加熱を含む加工が施されており、生肉の状態を保持しておらず、かつヒトがそのまま食することが可能なものをいい、これらを満たす限り、冷蔵品および冷凍品も包含する。このため、ある畜肉練り製品について、上記のようにヒトがそのまま食することができるように、すでに加熱が施されている場合は、加温の目的で電子レンジ、湯煎などで加温される前後に関わらず、当該製品は「加熱畜肉練り製品」に該当する。「加熱畜肉練り製品」は、ヒトが食するまでにさらなる加工が施されてもよい。
【0036】
本明細書における用語「非加熱畜肉練り製品」は、「畜肉練り製品」のうち、上記加熱畜肉練り製品以外の製品であって、原料肉に加工が施され、かつヒトが食するにはさらに加熱を必要とするものをいい、これらを満たす限り、冷蔵品および冷凍品も包含する。「非加熱畜肉練り製品」には、これを構成する原料肉が生肉の状態で含まれており、ヒトが食するには加熱を必要とする製品、およびこれを構成する原料肉がすでに施された加熱によって生肉の状態にはないが、ヒトが食するにはさらなる加熱を必要とする製品(半加熱品、半製品ともいう)を含む。例えば、上記「加温」以外の目的で、フライパン、フライヤー、電子レンジなどの手段を通じて加熱を施すことにより、はじめてヒトが食することが可能な状態となる(すなわち、加熱畜肉練り製品として完成する)場合、当該加熱を施す前の状態の製品は「非加熱畜肉練り製品」に該当する。
【0037】
本明細書における用語「畜肉練り製品の食感」とは、畜肉練り製品のうち、所定の加工および/または加熱を通じてヒトが食することが可能となった畜肉練り製品に対して、当該ヒトが口腔内で感知可能な味覚、触覚、嗅覚およびそれらの組合せから得ることができる感覚を包含していう。本発明において、畜肉練り製品の食感は、例えば、原料肉の保水性が関与し得る。例えば、畜肉練り製品の食感としては、硬さ、弾力感などが挙げられる。
【0038】
本明細書における用語「畜肉練り製品の食感改良」とは、本発明の製造方法において原料肉、植物性油脂および所定の動物性油脂の混合に代えて原料肉および当該所定の動物性油脂の混合を行って製造された畜肉練り製品のうち、所定の加工および/または加熱を通じてヒトが食することが可能となった畜肉練り製品をヒトが食した際に感覚する食感に対して異なる食感を得ることをいう。例えば、リン酸塩を含有しない従来の畜肉練り製品では、製造する際に、保水性が悪くなり結着性が低下する。保水性および結着性の低下した畜肉練り製品は、加熱時の離水が激しくなってパサつきあるボソボソした食感を生み、肉粒子同士の接合が緩いため、か弱く弾力のない食感となる。これに対し、本発明の製造方法を用いた場合、たとえリン酸塩を含有していない畜肉練り製品であってもその保水性と結着性とを向上させることができ、それによって適度な硬さと弾力感を付与することができる。結着性が高いほど良好な硬さを感じることができ、喫食時に弾力を感じることができる。このような喫食時の食感の変化を「畜肉練り製品の食感改良」の一例として説明することができる。
【0039】
本発明の1つの実施形態では、畜肉練り製品はソーセージまたはプレスハムの形態を有する。ソーセージは、例えば、食肉(例えば、豚肉、牛肉)を挽き肉にして練り合わされ、ケーシングチューブ(例えば、羊腸および豚腸のような動物の腸、あるいは人工ケーシング)に充填され、加熱されることにより得られる製品である。プレスハムは、例えば、小片の食肉(例えば、豚肉)の塊を塩せきし、つなぎとともにあるいはつなぎを加えずに練り合わせ、ケーシングに充填し、加熱されることにより得られる製品である。本明細書中の用語「プレスハム」は「チョプドハム」も包含していう。「チョプドハム」とは、例えば、プレスハムと比べてより小さな小片の食肉(例えば、豚肉)の塊を用い、より多くのつなぎとともに練り合わせ、ケーシングに充填され、加熱されることにより得られる製品である。
【0040】
ソーセージは、ケーシングの材料およびソーセージの太さによって、ウインナーソーセージ、フランクフルトソーセージおよびボロニアソーセージに分けられるが、本発明におけるソーセージはいずれのものであってもよい。ソーセージは、ケーシングに充填されずに成形されたものであってもよい。ソーセージは、構成される原料肉の肉片粒子の大きさによって、細挽きと粗挽きに分類することができる。例えば、肉挽機(例えば、ミンサー)のプレートの目が5mm以上で1回挽いた肉またはこれと同程度のものを原料肉としたソーセージは、「粗挽き」と表示することができる。「細挽き」は、例えば、肉挽機のプレートの目が5mm未満で挽いた肉またはこれと同程度のものを原料肉としたソーセージ、あるいは肉挽機プレートの目が5mm以上で1回挽いた肉またはこれと同程度のものであってもカッターなどで細切して、肉片粒子が残っていないような原料肉で構成されるソーセージに対して表示することができる。
【0041】
ソーセージまたはプレスハムのような畜肉練り製品の食感改良効果は、例えば、畜肉練り製品の食感(硬さ、弾力感など)の評価、保水性評価(例えば、歩留まり測定)、結着性評価などによって評価することができる。
【0042】
(畜肉練り製品の製造方法)
次に本発明の畜肉練り製品の製造方法について説明する。
【0043】
本発明の製造方法では、原料肉、動物性油脂および植物性油脂を混合し、パティが作製される。
【0044】
原料肉としては、例えば、食肉(例えば、豚肉、牛肉、鶏肉、羊肉、馬肉、山羊肉、猪肉、鴨肉など)、魚肉などの食用肉が挙げられる。1つの実施形態では、原料肉は豚肉である。原料肉の部位は特に限定されず、例えば、肩、ロース、肩ロース、ヒレ、モモ、外モモ、バラ、ムネ、ささみなどが挙げられる。これらの原料肉は、例えばミンサー等を用いて予め挽き肉の形態を有していることが好ましい。挽き肉は、食感改良の硬さまたは弾力感の程度、肉製品の種類、原料肉の種類などに依存して、挽目の細かさ(例えば、粗挽き、中挽きまたは細挽き)および挽く回数(例えば、一度挽きまたは二度挽き)を適宜選択し得る。挽き肉は、単独の食用肉からなるものであってもよく(例えば、豚挽き肉、牛挽き肉)、2種以上の食用肉の混合物(例えば、牛豚合挽き肉)であってもよい。
【0045】
原料肉の使用量は、目的の畜肉練り製品の種類、当該製品に含まれる原料肉の種類やその油脂含量、調味料やその他の原材料の種類および量等によって変動するため、特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0046】
本発明の製造方法に用いる動物性油脂および植物性油脂について、以下に説明する。本明細書においては、動物性油脂および植物性油脂をまとめて単に「油脂」ともいう。
【0047】
本発明の製造方法で用いる動物性油脂は、食品一般に使用される油脂であり、例えば、豚由来油脂(例えばラード)および牛由来油脂(例えばヘット)、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。本明細書において、本発明の製造方法で用いる動物性油脂(豚由来油脂および牛由来油脂、ならびにそれらの組み合わせ)を単に「動物性油脂」ともいう。本明細書において「豚由来油脂」とは、豚の脂肪組織(脂身)から得られた食用油脂をいい、常温(例えば、25℃)で固体の性状を示し、通常「豚脂」とも称される。このような豚由来油脂としては、例えば、ラードおよび背脂が挙げられる。本明細書において「ラード」は、豚の脂肪から精製された食用油脂をいう。ラードは、例えば、脂身(この一例として、背脂が挙げられる)を水中で加熱して肉の繊維から分離される液状物を濾過して得ることができ、さらに冷却すると固形状物として得られ、常温で白色の半流動体(クリーム状)である。本明細書において「背脂」は、豚の背中部(ロース肉の上側)にある脂身をいう。本発明の製造方法で用いる場合、「背脂」は、例えば、上記脂身をミンサーなどで細片化したミンチとして調製され、必要に応じて細片化の前および/または後に水中で固形状態が保持される程度で加熱してもよい。本明細書において「牛由来油脂」とは、牛の脂肪組織(脂身)から得られた食用油脂をいい、常温(例えば、25℃)で固体の性状を示し、牛脂とも称される。このような牛由来油脂としては、ヘットおよび脂身(脂身自体が「牛脂」と呼ばれることもある)が挙げられる。本明細書において「ヘット」は、牛の脂(脂身)から精製された食用油脂をいう。本明細書においては「ラード」および「ヘット」は、明記しない限り、その性状(例えば、固体または液体)は限定されない。種々の肉製品の原材料としても汎用されており、入手が容易であるとの理由から、動物性油脂としては豚由来油脂(例えば、ラードおよび/または背脂)を用いることが好ましい。
【0048】
本発明の製造方法で用いる植物性油脂は、食品一般に使用される油脂であり、好ましくは常温(例えば25℃)において液体の性状を示す油脂である。
【0049】
植物性油脂は、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にし、畜肉練り製品の食感を大きく変化させることができるとの理由から、好ましくはリノール酸および/またはリノレン酸を含有する油脂である。1つの実施形態では、本発明において、植物性油脂は、当該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として好ましくは40%以上、より好ましく50%以上、さらにより好ましくは70%以上の割合でリノール酸を含有する。リノール酸を上記範囲内で含む油脂であることにより、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にし、畜肉練り製品の食感を大きく変化させることができる。1つの実施形態では、本発明において、植物性油脂は、当該植物性油脂の脂肪酸組成を基準として好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらにより好ましくは40%以上の割合でリノレン酸を含有する。リノレン酸を上記範囲内で含む油脂であることにより、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にし、畜肉練り製品の食感を大きく変化させることができる。
【0050】
本発明の製造方法で用いる植物性油脂としては、例えば、サフラワー油、大豆油、菜種油、ヒマワリ油、ゴマ油、米油、オリーブ油、亜麻仁油、ヤシ油、および中鎖脂肪酸油脂(MCTオイル)ならびにそれらの組み合わせのような食用油が挙げられる。畜肉練り製品の食感を大きく変化させることができるとの理由から、サフラワー油、大豆油、亜麻仁油、菜種油、および中鎖脂肪酸油脂(MCTオイル)ならびにそれらの組み合わせのような食用油が好ましい。サフラワー油および大豆油はリノール酸を豊富に含む油脂として知られている。亜麻仁油はリノレン酸を豊富に含む油脂として知られている。中鎖脂肪酸油脂(MCTオイル)は、中鎖脂肪酸トリアシルグリセリドからなる油脂である。中鎖脂肪酸とは、例えば、炭素数8、10、および12の脂肪酸(カプリル酸(C8:0)、カプリン酸(C10:0)およびラウリン酸(C12:0))をいう。中鎖脂肪酸油脂は、同一種の中鎖脂肪酸であるか、あるいは異なる2種または3種の中鎖脂肪酸の組み合わせである3分子の脂肪酸が1分子のグリセロールにエステル結合している油脂である。中鎖脂肪酸油脂は、ココナッツ油、ヤシ油、ヤシ核油、パーム油などから製造することができる。または、中鎖脂肪酸油脂は、例えば、パームまたはヤシに由来する中鎖脂肪酸とグリセロールとのエステル結合を通じて製造することができる。
【0051】
本発明の製造方法で用いる動物性油脂の量および植物性油脂の量の関係について、目的の畜肉練り製品の種類、当該製品に含まれる原料肉の種類やその油脂含量、調味料やその他の原材料の種類および量等によって変動するが、例えば、動物性油脂100重量部に対して、植物性油脂が、好ましくは10重量部〜900重量部、より好ましくは、20重量部〜400重量部、さらにより好ましくは30重量部〜240重量部となるような含有量であればよい。植物性油脂に動物性油脂(例えばラード)を加熱下で両者が液状化した状態で合わせ、均一になるまで混合し、該植物性油脂に粘性を付与したものを「植物性油脂」として用いてもよく、この場合は、本発明の製造方法で用いられる動物性油脂の量は、植物性油脂に予め混合した動物性油脂の量と、原料肉等と別途混合される動物性油脂との合計となる。動物性油脂100重量部に対して植物性油脂の含有量が10重量部を下回ると、油脂と原料肉とを均一に混合することが難しくなり、畜肉練り製品の食感にあまり変化を感じることができないことがある。動物性油脂100重量部に対して植物性油脂の含有量が900重量部を上回ると、流動性が過剰に上昇して、油脂と原料肉とを均一に混合することが難しくなる。
【0052】
あるいは、本発明の製造方法で用いる畜肉練り製品の原料肉の量と動物性油脂および植物性油脂のそれぞれの量との関係について、目的の畜肉練り製品の種類、当該製品に含まれる原料肉の種類やその油脂含量、調味料やその他の原材料の種類および量等によって変動するが、例えば、目的の畜肉練り製品の原料肉100重量部(混合工程における原料肉の重量を基準)に対して、動物性油脂については、好ましくは0.5重量部〜72.7重量部、より好ましくは2.5重量部〜56重量部、さらにより好ましくは4.4重量部〜38.5重量部であり、そして植物性油脂については、好ましくは0.5重量部〜72重量部、より好ましくは2.5重量部〜55.8重量部、さらにより好ましくは4.5重量部〜38.8重量部である。それぞれの油脂の量がこのような範囲内であることにより、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にし、畜肉練り製品の食感をより良好なものとすることができる。
【0053】
本発明の製造方法で用いる動物性油脂および植物性油脂の合計量として、目的の畜肉練り製品の製造に通常使用される油脂(例えば、畜肉練り製品がソーセージである場合のラード)の添加量を採用し、動物性油脂および植物性油脂の上記量に基づいてそれぞれの各量を決定してもよい。これにより、畜肉練り製品で用いる全体油脂量を過度に増大させることなく、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にし、畜肉練り製品の食感をより良好なものとすることができる。
【0054】
本発明の製造方法は、別の実施形態では、油脂として植物性油脂のみを用いることができる。例えば、プレスハムのような従来油脂を原材料に含まない畜肉練り製品に関して、このような製造方法を用いることができる。畜肉練り製品の原料肉と植物性油脂とが混合され、パティが作製される。この場合の植物性油脂の添加量として、上記の動物性油脂および植物性油脂の合計量を採用することができる。
【0055】
1つの実施形態では、本発明の製造方法において、アルカリ塩がさらに混合される。本発明の製造方法で用いるアルカリ塩は、非リン酸系のアルカリ化合物、好ましくは、非リン酸系のアルカリ金属塩および/または非リン酸系のアルカリ土類金属塩である。アルカリ金属塩としては、カリウム塩、ナトリウム塩などが挙げられる。アルカリ土類金属塩としては、カルシウム塩などが挙げられる。非リン酸系の化合物は、リン酸系化合物以外の化合物をいう。「リン酸系化合物」とは、リン原子を含むオキソ酸をベースとする化合物をいい、リン酸塩を包含する。本明細書において「リン酸塩」は、食品添加物として用いられるオルトリン酸塩(例えば、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウムおよびリン酸三カルシウム)、ならび重合リン酸塩(例えば、ピロリン酸、ポリリン酸、メタリン酸などの塩)を包含していう。非リン酸系の塩としては、非リン酸系化合物である有機酸および無機酸の塩が挙げられ、例えば、炭酸、塩酸、硫酸、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸などの塩が挙げられる。本発明の食感改良キットを構成するアルカリ塩としては、非リン酸系化合物である限り、食品に通常用いられるアルカリ金属塩またはアルカリ土類金属塩を用いることができる。アルカリ塩としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、貝殻焼成カルシウム、塩化カルシウム、クエン酸三ナトリウム、水酸化ナトリウムおよび水酸化カリウム、ならびにこれらの組み合わせが挙げられる。
【0056】
アルカリ塩の添加量は、目的の畜肉練り製品の種類、当該製品に含まれる原料肉の種類やその油脂含量、調味料やその他の原材料の種類および量等によって変動するが、例えば、目的の畜肉練り製品の原料肉100重量部(混合工程における原料肉の重量を基準)に対して、好ましくは0.01〜2重量部、より好ましくは0.1重量部〜0.6重量部となるような量である。アルカリ塩の添加量がこのような範囲内であることにより、畜肉練り製品の保水性の低下(離水)をより抑制することができる。
【0057】
また、本発明の製造方法で用いられるアルカリ塩の量は、例えば、油脂(すなわち、動物性油脂と植物性油脂とを合計した油脂重量)100重量部に対して、好ましくは0.025重量部〜5重量部、より好ましくは0.25重量部〜1.5重量部とすることができる。アルカリ塩と油脂との各含有量が上記範囲内であることにより、畜肉練り製品の保水性(例えば、歩留まり率)を高めて結着性をより良好なものとし、畜肉練り製品の食感をより良好なものとすることができる。
【0058】
本発明の製造方法では、原料肉、動物性油脂および植物性油脂、ならびにアルカリ塩(含む場合)の混合の順序は、目的の畜肉練り製品の種類に応じて、選択することができる。アルカリ塩を用いる場合、原料肉、アルカリ塩、動物性油脂および植物性油脂を一緒に(言い換えれば、略同じタイミングで(例えば、同時および数秒〜3分間程度の間隔をあけて、原料肉、アルカリ塩、動物性油脂および植物性油脂のうち少なくとも1つを他の成分と別に混合する場合も含む))に混合してもよく、順次に混合してもよい。例えば、畜肉練り製品がソーセージの形態を有する実施形態では、原料肉およびアルカリ塩を先に混合し、後で油脂と混合することができる。ハンバーグなどの場合は、原料肉、アルカリ塩および油脂を一緒に混合してもよい。油脂との混合にあたり、動物性油脂および植物性油脂を一緒に、あるいは順次に原料肉等と混合してもよい。原料肉等と動物性油脂および植物性油脂を一緒に混合するとは、原料肉等に動物性油脂および植物性油脂を個別に略同じタイミングで投入して混合すること、ならびに、動物性油脂および植物性油脂を予め混合して、この混合した油脂を原料肉等に投入して混合することを包含する。製造される畜肉練り製品の種類に応じて、油脂と原料肉との均一な混合をより容易にするために、1つの実施形態では、原料肉等と動物性油脂との混合を先に行った後に、植物性油脂との混合が行われ、別の実施形態では、原料肉等に対し、動物性油脂および植物性油脂が一緒に混合され、さらに別の実施形態では、原料肉等と植物性油脂との混合を先に行った後に、動物性油脂との混合が行われる。例えば、細挽きソーセージでは、好ましくは、原料肉等と動物性油脂との混合を先に行った後に、植物性油脂との混合を行うことができ、あるいは原料肉等に対し、動物性油脂および植物性油脂を一緒に混合してもよい。細挽きソーセージでは、原料肉等と植物性油脂とが均一に混合された場合、原料肉等と植物性油脂との混合を先に行った後に、動物性油脂と混合することもできる。粗挽きソーセージでは、好ましくは、原料肉等と植物性油脂との混合を先に行った後に、動物性油脂との混合が行われる。
【0059】
本発明の製造方法においては、アルカリ塩を用いる場合、原料肉およびアルカリ塩を混合する際に、原料肉以外の原材料もまた一緒に混合することができる。原料肉以外の原材料としては、例えば、食品一般に使用されるその他の成分および他の原材料、ならびにそれらの組み合わせが挙げられる。を含んでいてもよい。その他の成分としては、例えば食塩、糖類、香辛料、蛋白(例えば、卵白蛋白、大豆蛋白、または小麦蛋白などの食品の食感改良に通常用いられる蛋白)、酸化防止剤、発色剤などが挙げられる。このようなその他の成分の含有量は、畜肉練り製品の食感改良効果を阻害しない範囲にて当業者によって適宜設定され得る。他の原材料とは、例えば、粉砕、スライス、またはペースト化された野菜(例えば、ニンジン、ダイコン、ゴボウ、レンコン、タマネギ、白葱、キャベツ、白菜、レタス、ほうれん草、チンゲン菜、菊菜、ジャガイモ、サツマイモ、サトイモ、長芋等);薬味(例えばタマネギ、ネギ、ニラ、ダイコン、セリ、ミツバ、ショウガ、ニンニク、クレソン、パセリ、セロリ、コリアンダー、ミント、ケッパー、バジル、ルッコラ、レモングラス、ノリ、アオノリ、アオサ、唐辛子、コショウ、マスタード、山椒、クミン、パプリカ、八角、ナツメグ、ターメリック、シナモン、ローリア、レモン、ライム、ユズ、カボス、スダチ、シークヮーサー、ダイダイ、ゴマ、落花生、クルミ、松の実、乾し葡萄、削り節等);等が挙げられる。原料肉以外の原材料の使用量は、特に限定されず、当業者によって適切な量が選択され得る。
【0060】
本発明の製造方法ではまた、必ずしもリン酸塩を併用することを要しない。すなわち、パティを作製するまでの間に、原料肉にリン酸塩が添加されてもよく、あるいは添加されなくてもよい。リン酸塩を含有しない畜肉練り製品のニーズが高まっている点を考慮すれば、本発明の製造方法では、リン酸塩を添加しないことが好ましい。
【0061】
さらに本発明の製造方法では、従来の畜肉練り製品の製造で多用される乳化剤の使用も特に必要とされない。このような乳化剤の例としてはカゼインナトリウムが挙げられる。
【0062】
上記混合の際の温度は、例えば目的の畜肉練り製品の製造において当業者が通常用いる温度を用いることができ、当業者によって適宜選択され得る。混合は、非加熱下でありかつ混合される各成分(原料肉、動物性油脂および植物性油脂、ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料)が凍結しない温度(例えば、1℃〜25℃)下で行われ得る。例えば、非加熱下で、固体状の動物性油脂および液体状の植物性油脂を混合することができる。1つの実施形態では、非加熱下で、固体状の動物性油脂を、原料肉ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料と均一になるまで混合し、そして液体状の植物性油脂を、この動物性油脂、原料肉ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料を含む混合物と均一になるまで混合する。別の実施形態では、非加熱下で、固体状の動物性油脂および液体状の植物性油脂を一緒に、原料肉ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料と均一になるまで混合する。さらに別の実施形態では、非加熱下で、液体状の植物性油脂を、原料肉ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料と均一になるまで混合し、そして固体状の動物性油脂を、この植物性油脂、原料肉ならびに必要に応じて用いられるアルカリ塩および原料肉以外の原材料を含む混合物と均一になるまで混合する。混合には、当該技術分野における畜肉練り製品の製造に使用される混合手段が使用され、このような混合手段としては、例えば、ミキサー、フードカッター、ボウルカッター、サイレントカッター、パドルミキサー、ミートミキサー、バキュームミキサーなどが挙げられる。混合時間は当業者によって適宜選択され得る。
【0063】
このようにして、原料肉、動物性油脂および植物性油脂、ならびにアルカリ塩(含む場合)を含むパティが作製される。作製されたパティは、必要に応じて所定の大きさに分けられ、当該技術分野において公知の成形機またはヒトの手によって所定の形状に成形されてもよい。
【0064】
本発明の製造方法においては、次いで、このパティが加熱される。非加熱畜肉練り製品において、これを構成する原料肉が生肉の状態で含まれている製品の場合は、パティの加熱工程を省略してもよい。
【0065】
パティの加熱は、パティに熱を加える方法である限り、特に限定されず、例えば、焼く、煮る、蒸す、炒める、揚げるなど、ならびにそれらの組合せが挙げられる。当該加熱は、例えば当該技術分野における畜肉練り製品の製造に使用される加熱手段を通じて行うことができる。このような加熱手段としては、例えばスチーマー、ニーダー、フライヤー、焙焼機、蒸気釜、電気釜、蒸気撹拌装置、蒸気調理機、乾燥機などが挙げられる。加熱のために採用される温度および時間は特に限定されず、製造する畜肉練り製品の種類、原料肉および/または原料肉以外の原材料の種類、所望される製品の状態(例えば、加熱畜肉練り製品を製造するか、半製品である非加熱畜肉練り製品を製造するのか)等によって当業者に最適な条件が選択され得る。本発明の畜肉練り製品の製造方法は、パティの加熱工程の後、必要に応じて当該分野において公知の手段を用いて冷却を行う工程をさらに含むこともできる。
【0066】
このようにして畜肉練り製品を製造することができる。
【0067】
本発明の製造方法により得られた畜肉練り製品は、加熱畜肉練り製品または非加熱畜肉練り製品のいずれであってもよい。こうして得られた畜肉練り製品が加熱畜肉練り製品である場合は、喫食にあたり、畜肉練り製品は、電子レンジ、湯煎などの周知の手法で加温されてもよく、あるいは当該加温が行われることなく、そのまま食されてもよい。得られた畜肉練り製品が非加熱畜肉練り製品である場合は、喫食にあたり、畜肉練り製品は、加熱畜肉練り製品となるまで調理等を通じてさらなる加熱が施される。
【0068】
なお、本発明において、畜肉練り製品がソーセージまたはプレスハムの形態を有する場合、当該畜肉練り製品は、例えば、原料肉の塩漬、混合、充填(ケーシングへの充填)または成形(ケーシングなしの場合)、加熱および冷却を通じて製造することができる。必要に応じて乾燥、くん煙などを行うこともできる。混合に関して、細挽きソーセージの場合は、例えば、カッターのような剪断力を付与することができる混合手段(例えばフードカッター)を用いて剪断力を加えながら混合が行われる。粗挽きソーセージの場合は、例えばミキサーのビーターを用いて、肉片粒子をつぶさないように混合が行われる。塩漬は、例えば混合の際に食塩および発色剤(硝酸ナトリウムなど)を含むことによって代替的に行ってもよい。上記混合によってパティが得られる。このようなソーセージまたはプレスハムは、原料肉、アルカリ塩、動物性油脂および植物性油脂以外に、ソーセージまたはプレスハムの製造に通常用いることができる他の成分(例えば、食塩、糖類、調味料、香辛料、蛋白(例えば、卵白蛋白、大豆蛋白、または小麦蛋白などの食品の食感改良に通常用いられる蛋白)、発色剤、酸化防止剤など)を含んでもよい。ソーセージまたはプレスハムの製造において、リン酸塩を添加しないことが好ましい。ソーセージまたはプレスハムの製造において、カゼインナトリウムを添加しないこともまた好ましい。
【0069】
こうして得られたパティは所定の温度で加熱される。これによりソーセージまたはプレスハムを製造することができる。
【0070】
本発明によれば、リン酸塩を用いない場合であっても、畜肉練り製品の保水性および結着性の低下が抑制され、そして肉製品に硬さおよび弾力感のような良好な食感を付与することができる。例えば、畜肉練り製品がソーセージの形態を有する場合は、本発明の製造方法によって、リン酸塩を用いて製造した場合とほぼ同等の食感(弾力感および結着性など)を有するソーセージを提供することができる。本発明によれば、畜肉練り製品の食感を改良する方法も提供され、この方法は、上記の畜肉練り製品の製造方法と同様の工程を包含する。
【実施例】
【0071】
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0072】
(実施例1:ソーセージの作製)
以下の表1に示す組成にて、以下のソーセージの作製手順1に示す手順(1)〜(5)に従ってソーセージを作製した。
【0073】
(ソーセージの作製手順1)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして粗挽き肉を調製し、原料肉とした;
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードを投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合した後に、植物性油脂を投入し、フードカッターで均一になるまで混合してパティを得た;
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを85℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0074】
上記ソーセージの作製における手順(2)において、ラードは固体状で投入し、植物性油脂は液状(植物油)で投入した。本実施例では、10.0gのラード(動物性油脂)および10.0gのサフラワー油(ハイリノール)(植物性油脂)を油脂として用いた(ラード100重量部に対してサフラワー油100重量部)。
【0075】
本実施例では、表1に示すように、55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(ラードおよびサフラワー油を各18重量部)および0.1gの炭酸ナトリウム(0.18重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは0.5重量部であった。
【0076】
(実施例2:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの大豆油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して大豆油100重量部を用いた)。
【0077】
(実施例3:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのヒマワリ油(ハイオレイック)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してヒマワリ油100重量部を用いた)。
【0078】
(実施例4:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのゴマ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してゴマ油100重量部を用いた)。
【0079】
(実施例5:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの菜種油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して菜種油100重量部を用いた)。
【0080】
(実施例6:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの米油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して米油100重量部を用いた)。
【0081】
(実施例7:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのオリーブ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してオリーブ油100重量部を用いた)。
【0082】
(実施例8:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの亜麻仁油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して亜麻仁油100重量部を用いた)。
【0083】
(実施例9:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gのヤシ油を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してヤシ油100重量部を用いた)。
【0084】
(実施例10:ソーセージの作製)
炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0085】
(比較例1:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、そして炭酸ナトリウムの代わりにピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)0.2g(原料肉100重量部に対して0.36重量部を用いた)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0086】
(比較例2:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、および炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0087】
【表1】
【0088】
(ソーセージの評価方法)
実施例1〜10および比較例1および2で得られたソーセージについて以下のようにして評価した。
【0089】
(歩留まり率の測定)
実施例1〜10および比較例1および2で得られたソーセージの重量(加熱後重量)を測定し、加熱前重量(表1に示す各実施例および比較例の合計(重量部)に相当する)を100とした場合の割合を百分率で算出し、これを歩留まり率(%)とした。得られた結果を表2に示す。
【0090】
(官能評価)
パネリスト10名にて、上記ソーセージの作製における手順(5)の冷却後のソーセージを喫食し、その食感を硬さおよび弾力感の観点から各自が評価し、協議して結論づけた。硬さおよび弾力感は、歯ごたえの程度に基づきそれらの有無、または強く感じられたかもしくは弱く感じられたかを判断した。得られた結果を表2に示す。
【0091】
(結着性評価)
結着性評価について、歩留まり率と官能評価結果を総合して以下のように基準を設け、評価した。結着性不良なものは上記ソーセージの作製における手順(4)の加熱時に著しい離水が見られて歩留まり率が低く、結着性良好なものは保水性が高く、歩留まり率は高くなる傾向があることから、歩留まり率が90%未満のものもしくは官能評価において「硬さ、弾力感がない」と評価されたものは、「結着性が悪い」と判断した。歩留まり率が90%以上であるが、官能評価において「硬さ、弾力感が弱い」と評価されたものは、「結着性が弱い」と判断した。歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さが弱く、弾力感がやや弱い」と評価されたものは、「結着性がやや弱い」と判断し、歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さが弱く、弾力感がややある」と評価されたものは、「結着性がやや良好」と判断し、歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「硬さ、弾力感がある」と評価されたものは、「結着性が良好」と判断した。得られた結果を表2に示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表1および表2に見られるように、ラードおよび植物性油脂を用いて作製したソーセージ(実施例1〜10)では、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。
【0094】
ここで、表2において実施例1、実施例10、比較例1および比較例2との結果を対比した。実施例1および実施例10のソーセージは共に、ラードおよびサフラワー油を用いて作製した。実施例1のソーセージはさらにアルカリ塩である炭酸ナトリウムを含むのに対し、実施例10のソーセージはアルカリ塩を用いずに作製した。実施例10のソーセージは、植物性油脂を用いずに作製し、アルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性がより良好なものとなった。アルカリ塩を含む実施例1のソーセージは、アルカリ塩を含まないソーセージ(実施例10)と比べて、より優れた食感改良効果が観察された。さらに、実施例1のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0095】
(実施例11:ソーセージの作製)
油脂に6.0gのラードおよび14.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油233重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード10.8重量部およびサフラワー油25.2重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0096】
(実施例12:ソーセージの作製)
油脂に14.0gのラードおよび6.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油43重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード25.2重量部およびサフラワー油10.8重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0097】
(実施例13:ソーセージの作製)
油脂に18.0gのラードおよび2.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対してサフラワー油11重量部を用いた)。原料肉100重量部に対し、油脂36重量部(ラード32.4重量部およびサフラワー油3.6重量部)および炭酸ナトリウム0.18重量部を混合した。
【0098】
(比較例3:ソーセージの作製)
油脂に20.0gのラード(固体状)(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した。
【0099】
実施例11〜13および比較例3で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、実施例1ならびに比較例1および2のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例11〜13および比較例3で作製したソーセージの組成を、実施例1ならびに比較例1および2で作製したソーセージの組成とともに表3に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表4に示す。
【0100】
【表3】
【0101】
【表4】
【0102】
表3および4から明らかなように、ラードとサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例1および実施例11〜13)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例1および実施例11〜13のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例1のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例3)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0103】
ここで、表4において実施例1と実施例11〜13の結果を対比すると、特にラード100重量部に対してサフラワー油を100重量部〜233重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0104】
(実施例14〜23:ソーセージの作製)
以下の表5に示す組成にて、以下のソーセージの作製手順2の手順(1)〜(5)にしたがって、ソーセージを作製した。作製手順2は、上記作製手順1の手順(2)を変更したこと以外は作製手順1と同様とした。
【0105】
(ソーセージの作製手順2)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして粗挽き肉を調製し、原料肉とした;
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードおよび植物性油脂を投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合してパティを得た;
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを85℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0106】
実施例14〜23のソーセージ原材料の組成はそれぞれ実施例1〜10に対応した。
【0107】
【表5】
【0108】
実施例14〜23で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、比較例1および2のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例14〜23で作製したソーセージの組成を、比較例1および2で作製したソーセージの組成とともに表5に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表6に示す。
【0109】
【表6】
【0110】
表5および表6に見られるように、ラードおよび植物性油脂を用いて作製したソーセージ(実施例14〜23)では、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。
【0111】
次に、表6において、実施例14、実施例23、比較例1および比較例2との結果を対比した。実施例14および実施例23のソーセージは共に、ラードおよびサフラワー油を用いて作製した。実施例14のソーセージはさらにアルカリ塩である炭酸ナトリウムを含むのに対し、実施例23のソーセージはアルカリ塩を用いずに作製した。実施例23のソーセージは、植物性油脂を用いずに作製し、アルカリ塩も含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性がより良好なものとなった。アルカリ塩を含む実施例14のソーセージは、アルカリ塩を含まないソーセージ(実施例23)と比べて、より優れた食感改良効果が観察された。さらに、実施例14のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0112】
さらに、実施例1〜10(表1および表2)と実施例14〜23(表5および表6)とを対比した。これらの間では、それぞれのソーセージ原材料の組成は同じであるが(表1と表5)、ソーセージ作製手順の手順(2)が異なった。油脂と他原材料との混合の際、先にラードと混合後に植物性油脂と混合して製造した実施例1〜9のソーセージ(表2)の方が、ラードおよび植物性油脂を同時に添加して混合して製造した実施例13〜21のソーセージ(表6)と比べて、相対的に高い食感改良効果を示していた。表6においても、例えば、サフラワー油を用いた場合のように、十分にソーセージの食感改良効果は示されていた。
【0113】
(実施例24〜26:ソーセージの作製)
ソーセージ原材料の組成をそれぞれ実施例11〜13と同じにして、上記ソーセージの作製手順2にしたがってソーセージを作製した(実施例24〜26)。
【0114】
実施例24〜26で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。対比のため、実施例14、ならびに比較例1〜3のそれぞれと同様にソーセージを作製して評価を行った。実施例24〜26で作製したソーセージの組成を、実施例14ならびに比較例1〜3で作製したソーセージの組成とともに表7に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表8に示す。
【0115】
【表7】
【0116】
【表8】
【0117】
表7および8から明らかなように、ラードとサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例14および実施例24〜26)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例14および実施例24〜26のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例1のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例3)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0118】
ここで、表8において実施例14と実施例24〜26の結果を対比すると、特にラード100重量部に対してサフラワー油を100重量部〜233重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0119】
さらに、同様に、ソーセージ原材料の組成は同じでソーセージ作製手順が異なる実施例1および11〜13(表3および表4)と実施例14および24〜26(表7および表8)とを対比した。先にラードと混合後に植物性油脂と混合して製造した実施例1および11〜13のソーセージ(表4)の方が、ラードおよび植物性油脂を同時に添加して混合して製造した実施例14および24〜26のソーセージ(表8)と比べて、相対的に高い食感改良効果を示していた。
【0120】
(実施例27〜32:ソーセージの作製)
以下の表9に示す原材料組成にて、ソーセージ原材料の混合工程を以下に示すように行った以外は、上記ソーセージの作製手順1および2と同様の手順でソーセージを作製した(実施例27〜32)。実施例27〜32では、動物性油脂としてラードまたは背脂を用いた。背脂は、豚背脂をミンサーで挽いて得られたミンチを用いた。
【0121】
実施例27では、上記ソーセージの作製手順1と同様に、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合し、得られた混合物にラードを投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合した後に、植物性油脂を投入し、フードカッターで均一になるまで(約40秒間)混合してパティを得た。
【0122】
実施例28では、上記ソーセージの作製手順2と同様に、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料をフードカッターに入れ、約1分間混合した。得られた混合物にラードおよび植物性油脂を投入し、フードカッターで約40秒間均一になるまで混合してパティを得た。
【0123】
実施例29では、上記ソーセージの作製手順1または2と異なり、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料の混合により得られた混合物に、植物性油脂を投入し、フードカッターで約60秒間均一になるまで混合した後に、ラードを投入し、フードカッターで均一になるまで(約40秒間)混合してパティを得た。
【0124】
実施例30〜32では、動物性油脂としてラードの代わりに背脂を用いたこと以外は、それぞれ実施例27〜29と同様にソーセージの原材料の混合工程を行った。
【0125】
実施例27〜32で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例27〜32で作製したソーセージの組成を表9に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表10に示す。
【0126】
【表9】
【0127】
【表10】
【0128】
表9にも示すように、実施例27〜29は、動物性油脂としてラードを使用して試験した。その結果、表10に示されるように、実施例27および28はそれぞれ同様の作製方法で作製した実施例1および14のソーセージと同様に、歩留まり率、官能評価および結着性において良好な結果を示した。実施例29は、上記のソーセージの作製方法1および2とは異なる混合手順であり、植物性油脂との混合後に動物性油脂のラードと混合した。この混合順序の場合は、植物性油脂と原料肉との混合時間を実施例27のラードとの混合時間と比べて長くすることで、実施例27および28と同じように、歩留まり率、官能評価および結着性がよいソーセージを作製することができた。
【0129】
また、表9にも示すように、実施例30〜32は、動物性油脂として背脂(豚背脂ミンチ)を使用して試験した。その結果、表10に示されるように、実施例30のように動物性油脂の背脂を先に混合した後に植物性油脂と混合する場合、および実施例31のように背脂および植物性油脂を同時に添加して混合する場合とも、ラードの場合と同様に、歩留まり率、官能評価および結着性において良好な結果を示した。植物性油脂との混合後に背脂と混合した実施例32においては、これらの結果から、ラードの場合と同様に、植物性油脂と原料肉との混合時間を実施例30の背脂との混合時間と比べて長くすることで、実施例30および31と同じように、歩留まり率、官能評価および結着性がよいソーセージを作製することができた。
【0130】
(実施例33:ソーセージの作製)
上記の実施例1〜32では、原料肉を含む全原料をフードカッターで混合して細挽きソーセージを作製したのに対し、本実施例では、以下の手順にて粗挽きソーセージを作製した。背脂を動物性油脂として用いた。
【0131】
(粗挽きソーセージの作製方法)
(1)豚モモ肉(生肉)をミンサー(プレートの目6.4mm)で粗挽きにして、粗挽き肉を調製、原料肉とした。
(2)ソーセージの原材料を以下のように混合し、パティを作製した:
まず、粗挽き肉、炭酸ナトリウム、水(氷)、および副原料を縦型ミキサーに入れ、ビーターを用いて約2分間混合した。得られた混合物に植物性油脂を投入し、ビーターを用いて15分間混合した後に、背脂(豚背脂ミンチ)を投入し、ビーターを用いて15分間混合したものをパティとした。
(3)上記(2)で得られたパティをケーシングチューブに充填し、密封した;
(4)パティを充填したケーシングチューブを75℃にて40分間ボイル加熱した;そして
(5)30分間氷冷することで冷却した。
【0132】
本実施例では、15.0gの背脂(動物性油脂)および5.0gのサフラワー油(ハイリノール)(植物性油脂)を油脂として用いた(背脂100重量部に対してサフラワー油33重量部)。そして、55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂27重量部およびサフラワー油9重量部)および0.1gの炭酸ナトリウム(0.18重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは0.5重量部であった。
【0133】
実施例33で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例33で作製したソーセージの組成を表11に示し、かつこれらの評価結果を表12に示す。
【0134】
【表11】
【0135】
【表12】
【0136】
粗挽きソーセージでは、表12に示されるように、原料肉等に植物性油脂を先に混合し、その後背脂を混合した場合に、歩留りおよび官能評価共によい評価となった。
【0137】
(実施例34〜37および比較例4〜6:ソーセージの作製)
動物性油脂の背脂と植物性油脂のサフラワー油との配合比率を変更して、粗挽きソーセージを作製した。以下の表13に示す原材料組成にて、粗挽きソーセージの作製を行った(実施例34〜37および比較例4〜6)。
【0138】
(実施例34:ソーセージの作製)
油脂に18.0gの背脂および2.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いて、実施例33と同様の粗挽きソーセージの作製方法の手順に従ってソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油11重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂32.4重量部およびサフラワー油3.6重量部)を用いた。
【0139】
(実施例35:ソーセージの作製)
油脂に15.0gの背脂および5.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油33重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂27重量部およびサフラワー油9重量部)を用いた。
【0140】
(実施例36:ソーセージの作製)
油脂に10.0gの背脂および10.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油100重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂18重量部およびサフラワー油18重量部)を用いた。
【0141】
(実施例37:ソーセージの作製)
油脂に6.0gの背脂および14.0gのサフラワー油(ハイリノール)を用いたこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した(背脂100重量部に対してサフラワー油233重量部を用いた)。55.2gの原料肉(100重量部)に対し、20.0gの油脂(36重量部)(背脂10.8重量部およびサフラワー油25.2重量部)を用いた。
【0142】
(比較例4:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、そして炭酸ナトリウムの代わりにピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)0.2g(原料肉100重量部に対して0.36重量部を用いた)を用いた

こと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0143】
(比較例5:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと、および炭酸ナトリウムを用いなかったこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0144】
(比較例6:ソーセージの作製)
油脂に20.0gの背脂(原料肉100重量部に対して36重量部を用いた)のみを用いて植物性油脂を用いなかったこと以外は実施例34と同様にしてソーセージを作製した。
【0145】
実施例34〜37および比較例4〜6で得られたソーセージについて、上記と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。実施例34〜37および比較例4〜6で作製したソーセージの組成を表13に示し、かつこれらの評価結果をまとめて表14に示す。
【0146】
【表13】
【0147】
【表14】
【0148】
表14に示したとおり、背脂とサフラワー油との比率を変更して作製したソーセージ(実施例34〜37)はいずれも、リン酸塩またはアルカリ塩を含まずに植物性油脂のサフラワー油を用いなかったソーセージ(比較例5)と比べて、歩留まり率が高く、硬さ、弾力感および結着性が改善された。実施例34〜37のソーセージでは、弾力感や結着性の評価において多少の差異を生じているものの、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、比較例4のピロリン酸四ナトリウム(リン酸塩)を用いたソーセージにほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。植物性油脂のサフラワー油を用いずにアルカリ塩を添加した場合(比較例6)では、歩留まり率は高いものの、ソーセージとしての食感の改良効果が全く見られなかった。
【0149】
ここで、表14において実施例34〜37の結果を対比すると、特に背脂100重量部に対してサフラワー油を33重量部〜100重量部の範囲で植物性油脂を用いて作製した場合に、得られるソーセージの弾力感および結着性が特に優れたものであったことがわかる。
【0150】
(実施例38〜41および比較例7〜8:プレスハムの作製)
実施例38〜41では、以下の手順にてプレスハムを作製した。植物性油脂として、サフラワー油(実施例38)、大豆油(実施例39)、菜種油(実施例40)およびアマニ油(実施例41)のいずれかを用いた。動物性油脂として背脂を用いた。対照として、リン酸塩添加プレスハム(比較例7)およびリン酸塩無添加プレスハム(比較例8)をさらに作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。プレスハムの原材料の組成を以下の表15の(A)および(B)に示す。
【0151】
【表15】
【0152】
(プレスハムの作製方法)
・塩漬肉の作製(表15の(A))
(1)豚肉を10gの小片にカットする。
(2)カットした小片に塩漬剤を加えて真空パックし、一晩冷蔵庫にて塩漬する。
・つなぎの作製(表15の(B))
(3)塩漬肉の一部(12重量部)を取り、つなぎ原料を加えてフードカッターで均一になるまでよく混合する。
・プレスハムの作製
(4)作製したつなぎと塩漬肉を、縦型ミキサーにてよく混合する。
(5)ケーシングに充填。
(6)75℃で加熱調理する。
(7)冷却し、完成。
(8)完成したハムについて、約2mmの厚さにスライスし、官能評価した。
【0153】
実施例38〜41では、油脂として、2重量部の背脂(動物性油脂)に対して3重量部の植物性油脂を用いた(背脂100重量部に対して植物性油脂150重量部)。そして、12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)(背脂16.67重量部および植物性油脂25.00重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0154】
実施例38〜41ならびに比較例7および8で得られたプレスハムについて、以下のようにして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0155】
(歩留まり率の測定)
プレスハムの重量(加熱後重量)を測定し、加熱前重量(ケーシングに充填した量)を100とした場合の割合を百分率で算出し、これを歩留まり率(%)とした。
【0156】
(官能評価)
パネリスト10名にて、上記「プレスハムの作製方法」の工程(8)のスライス後のプレスハムを喫食し、その食感を歯ごたえの程度に基づき弾力感があったかどうかを各自が評価し、協議して結論づけた。
【0157】
(結着性評価)
歩留まり率と官能評価結果とを総合して以下のように基準を設け、評価した:
歩留まり率が90%未満のものもしくは官能評価において「弾力感がない」と評価されたものは、「結着性が悪い」と判断した;そして
歩留まり率が90%以上でかつ官能評価において「弾力感がある」と評価されたものは、「結着性が良好」と判断した。
【0158】
実施例38〜41ならびに比較例7および8のプレスハムについて、評価結果を表16に示す。
【0159】
【表16】
【0160】
リン酸塩添加配合のプレスハム(比較例7)がリン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)では、弾力が無く、結着性が悪いため、スライスしたハムを折り曲げると、ひび割れが多数認められた。リン酸塩無添加であっても植物性油脂と動物性油脂とを添加した場合(実施例38〜41)、やや弾力があり、ひび割れの少ない結着性がやや良好なプレスハムを得ることができた(表16)。
【0161】
(実施例42〜45:プレスハムの作製)
実施例42〜45では、油脂として植物性油脂のみを用いたことを除いて上記の実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。植物性油脂として、サフラワー油(実施例42)、大豆油(実施例43)、菜種油(実施例44)およびアマニ油(実施例45)のいずれかを用いた。
【0162】
対照として、リン酸塩添加プレスハムと、リン酸塩無添加プレスハムとをそれぞれ比較例7および8と同様にして作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0163】
プレスハムの原材料の組成を以下の表17(A)および(B)に示す。
【0164】
【表17】
【0165】
実施例42〜45では、油脂として、5重量部の植物性油脂を用いた。12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0166】
実施例42〜45で得られたプレスハムについて、上記の実施例38〜41と同様の手順にて歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。得られた結果を以下の表18に示す。
【0167】
【表18】
【0168】
植物性油脂を配合したプレスハム(実施例42〜45)もまた、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)と比べて、歩留まり、弾力感および結着性の向上がみられた(表18)。プレスハムにおいては、動物性油脂を植物性油脂と併用しなくても、歩留まり、弾力感および結着性を向上させた(表17および表18)。
【0169】
(実施例46:ソーセージの作製)
植物性油脂にサフラワー油の代わりに10.0gの中鎖脂肪酸油脂(スコレー64G、日清オイリオグループ株式会社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にしてソーセージを作製した(ラード100重量部に対して中鎖脂肪酸油脂100重量部を用いた)。
【0170】
対照として、リン酸塩添加ソーセージおよびリン酸塩無添加ソーセージをそれぞれ比較例1および2と同様に作製した(これらは動物性油脂(ラード)を含むが植物性油脂を含まないものであった)。
【0171】
実施例46、比較例1および比較例2で得られたソーセージについて、実施例1と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0172】
実施例46、比較例1および比較例2のソーセージの原材料の組成を以下の表19に示し、ソーセージの評価結果を表20に示す。
【0173】
【表19】
【0174】
【表20】
【0175】
表20に見られるように、植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いた場合(実施例46)も、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、油脂に植物性油脂を用いずにラードのみを用いて作製し、リン酸塩またはアルカリ塩を含まないソーセージ(比較例2)と比べて、歩留まり率、硬さ、弾力感および結着性のいずれもより良好なものとなった。また、実施例46のソーセージでは、リン酸塩が含有されていないにも関わらず、リン酸塩(ピロリン酸四ナトリウム)を含有させたソーセージ(比較例1)とほぼ同等の弾力感かつ結着性を得ることができた。
【0176】
(実施例47:プレスハムの作製)
植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いたことを除いて、実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。
【0177】
対照として、リン酸塩添加プレスハムおよびリン酸塩無添加プレスハムをそれぞれ比較例7および8と同様に作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0178】
実施例47、比較例7および比較例8で得られたプレスハムについて、実施例38〜41と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0179】
実施例47、比較例7および比較例8のプレスハムの原材料の組成を以下の表21の(A)および(B)に示す。
【0180】
【表21】
【0181】
実施例47では、油脂として、4重量部の背脂(動物性油脂)に対して1重量部の植物性油脂を用いた(背脂100重量部に対して植物性油脂25重量部)。そして、12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)(背脂33.33重量部および植物性油脂8.33重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0182】
実施例47、比較例7および比較例8のプレスハムの評価結果を以下の表22に示す。
【0183】
【表22】
【0184】
リン酸塩添加配合のプレスハム(比較例7)では、歩留まり率が高く、弾力感があり、結着性が良好であるのに対し、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)では、弾力が無く、結着性が悪いため、スライスしたハムを折り曲げると、ひび割れが多数認められた。植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いて動物性油脂と共に添加した場合(実施例47)、リン酸塩無添加であっても、やや弾力があり、ひび割れの少ない結着性がやや良好なプレスハムを得ることができた(表22)。
【0185】
(実施例48:プレスハムの作製)
実施例48では、動物性油脂を用いずに植物性油脂のみを用い、かつ植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を用いたことを除いて、実施例38〜41と同様の手順にてプレスハムを作製した。
【0186】
対照として、リン酸塩添加プレスハムおよびリン酸塩無添加プレスハムをそれぞれ比較例7および8と同様に作製した(これらはいずれも油脂を含まないものであった)。
【0187】
実施例48、比較例7および8で得られたプレスハムについて、実施例38〜41と同様にして、歩留まり率、官能評価、および結着性の各評価を行った。
【0188】
実施例48、比較例7および8のプレスハムの原材料の組成を以下の表23(A)および(B)に示す。
【0189】
【表23】
【0190】
実施例48では、油脂として、5重量部の植物性油脂を用いた。12重量部の原料肉(塩漬肉)(100重量部)に対し、5重量部の油脂(41.67重量部)を添加した。原料肉の豚肉67重量部(100重量部)に対し、0.05重量部の炭酸ナトリウム(約0.075重量部)を混合した。また、油脂重量を100重量部とした場合に、炭酸ナトリウムは1.0重量部であった。
【0191】
実施例48、比較例7および比較例8のプレスハムの評価結果を以下の表24に示す。
【0192】
【表24】
【0193】
植物性油脂として中鎖脂肪酸油脂を配合したプレスハム(実施例48)もまた、リン酸塩無添加配合のプレスハム(比較例8)と比べて、歩留まり、弾力感および結着性の向上がみられた(表24)。中鎖脂肪酸油脂を用いた場合であっても、プレスハムにおいては、植物性油脂のみでも歩留まり、弾力感および結着性を向上させた。
【産業上の利用可能性】
【0194】
本発明は、例えば、食品添加剤および食品の製造分野、ならびに食品加工分野において有用である。