【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和1年10月31日から同年11月1日の板橋区立東板橋体育館で開催された、いたばし産業見本市“製造と加工技術展2019”にてサンプルを展示し、配布のパンフレットに掲載した。
【解決手段】チューブと、チューブの内部に挿入された板コイルとで構成される2層構成の板コイル付きチューブであって、板コイルの外周面がチューブの内壁面に接するように、チューブ内に前記板コイルが配置され、板コイルの隙間であって、板コイルの外径で規定される距離の空間に、チューブが入り込んでいないようにした。板コイル付きチューブはカテーテルチューブとして用いることができる。この板コイル付きチューブは、外径が大きくなる反発力を持つように、外径を小さくするような圧力がかかった板コイルをチューブ内に挿入し、圧力を開放して前記板コイルの外径を大きくして、板コイルの外周面が前記チューブの内壁面に接するようにすることで製造できる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようなカテーテルチューブは、柔軟に湾曲できることが望ましい。
本発明は板コイルがチューブの強度を補強するとともに、板コイルとの接触部を減らし、より柔軟に湾曲できる板コイル付きチューブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
また、本発明は板コイルが自由に伸縮可能な板コイル付きチューブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1) 本発明に係る板コイル付きチューブは、チューブと、該チューブの内部に挿入された板コイルとで構成される2層構成の板コイル付きチューブであって、
前記板コイルの外周面が前記チューブの内壁面に接するように、前記チューブ内に前記板コイルが配置され、
前記板コイルの隙間であって、前記板コイルの外径で規定される距離の空間に、前記チューブが入り込んでいない、板コイル付きチューブである。
【0006】
(2) 上記(1)に記載の板コイル付きチューブにおいて、前記板コイル付きチューブはカテーテルチューブとすることができる。
【0007】
(3) 本発明に係る板コイル付きチューブの製造方法は、チューブの内部に、該チューブの内径よりも小さい外径を有する板コイルを挿入し、
前記板コイルの内側から圧力をかけて前記板コイルの外径を大きくして、前記板コイルの外周面が前記チューブの内壁面に接するようにする、板コイル付きチューブの製造方法である。
【0008】
(4) また、本発明に係る板コイル付きチューブの製造方法は、外径が大きくなる反発力を持つように、外径を小さくするような圧力がかかった板コイルをチューブ内に挿入し、
前記圧力を開放して前記板コイルの外径を大きくして、前記板コイルの外周面が前記チューブの内壁面に接するようにする、板コイル付きチューブの製造方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、板コイルがチューブの強度を補強でき、2層構成の板コイル付きチューブとすることで板コイルとの接触部を減らし、より柔軟に湾曲できる板コイル付きチューブ及びその製造方法を提供することができる。
また、本発明によれば、板コイルの隙間にチューブの一部に入り込まないので、板コイルは自由に伸縮可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一実施形態の板コイル付きチューブを示す斜視図である。
【
図2】
図1に示した板コイル付きチューブの一部拡大斜視図である。
【
図3】チューブ内に挿入される板コイルを示す斜視図である。
【
図4】板コイル付きチューブが直線状の場合の板コイルの状態を示す説明図である。
【
図5】板コイル付きチューブが曲がった場合の板コイルの状態を示す説明図である。
【
図6】チューブの一部が、板コイルの隙間に入り込んでいる状態を示す説明図である。
【
図7】2層構成の板コイル付きチューブを横方向から見た図である。
【
図8】3層構成の板コイル付きチューブを横方向から見た図である。
【
図9】板コイル付きチューブの製造方法の一例を示す説明図である。
【
図10】板コイル付きチューブの製造方法の一例を示す説明図である。
【
図11】板コイル付きチューブの製造方法の他の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて詳細に説明する。
図1は本発明の一実施形態の板コイル付きチューブを示す斜視図である。
図2は
図1に示した板コイル付きチューブの一部拡大斜視図である。
図3はチューブ内に挿入される板コイルを示す斜視図である。
図4は板コイル付きチューブが直線状の場合の板コイルの状態を示す説明図である。
図5は板コイル付きチューブが曲がった場合の板コイルの状態を示す説明図である。
図1及び
図2に示すように、板コイル付きチューブ10は、チューブ100と、チューブ100の内部に挿入された板コイル200とで構成される2層構成のチューブである。
【0012】
図2に示すように、板コイル200の外周面は、チューブ100の内壁面に接している。
図4に示すように、板コイル付きチューブ10が直線状の場合には、板コイル200の外周面の全部がチューブ100の内壁面に接している。
図5に示すように、板コイル付きチューブ10が曲がると、板コイル付きチューブ10の延びる側で、板コイル200の外周面の一部はチューブ100の内壁面上を移動し、板コイル200の隙間の間隔が広がる。板コイル付きチューブ10の縮まる側では、板コイル200の外周面の一部はチューブ100の内壁面上を移動し、板コイル200の隙間の間隔が狭くなる。従って、チューブ100の湾曲に対応して、板コイル200は柔軟に湾曲可能であり、チューブ100の内壁面に接して湾曲するためにチューブ100の強度を補強する役割を担う。
【0013】
また、
図4に示すように、板コイル付きチューブ10は、板コイル200の隙間であって、板コイル200の外径で規定される距離Dの空間に、チューブ100が入り込んでいないため、板コイル200は自由に伸縮可能である。
これに対して、
図6に示すように、チューブ100の一部100aが、板コイル200の隙間であって、板コイル200の外径で規定される距離Dの空間に入り込んでいると、板コイル200の自由な伸縮が妨げられ、その結果、板コイル付きチューブ10の湾曲を妨げることになる。このようなチューブ100の一部100aの入り込みはチューブとして熱収縮チューブ又は溶媒膨潤性チューブを用い、チューブ100を収縮させることで、板コイル200に接するようにする場合に生じやすい。
【0014】
図1に示す、板コイル付きチューブ10を横方向から見た場合、板コイル付きチューブ10は、
図7に示すような2層構成となる。特許文献1に記載された板コイル付きチューブの先端部は、
図8に示すように、板コイル200の内側に内層となる内側チューブ300が挿入されて、外層のチューブ100、板コイル200、内層のチューブ300の3層構成となる。
図7に示す板コイル付きチューブ10では、板コイル200の接触部は、板コイル200の外周面とチューブ100の内壁面との間の1か所である。一方、
図8に示す特許文献1に記載された板コイル付きチューブでは、板コイル200の接触部は、板コイル200の外周面とチューブ100の内壁面との間と、板コイル200の内周面と内側チューブ300の外周面との間との2か所となる。したがって、2層構成の板コイル付きチューブ10は、板コイル200が曲げやすく、特許文献1に記載された3層構成の板コイル付きチューブに比べて板コイル200の接触面積が少なく、より柔軟に湾曲できる。
また、
図7に示す板コイル付きチューブ10では、板コイル200の内側にチューブを設けないため、内部空間を広く確保することができる。
【0015】
図3に示した板コイル200の材料及び形状(コイルの横断面形状、コイルの厚さ及びコイル巾等)は、特に限定されないが、板コイル付きチューブ10の用途(例えば、カテーテル用)に応じて適宜選択される。例えば、板コイル200の材料及び形状として、特許文献1に記載されたコイル層の材料及び形状のものを用いることができる。
【0016】
チューブ100の材料は、板コイル付きチューブ10の製造方法により適宜決められる。
特許文献1では外層の材料として可撓性を有する材料が挙げられており、更にチューブの製造方法として、チューブの収縮を用いる場合には、外層のチューブとして熱収縮チューブ、溶媒膨潤性チューブを挙げ、これらの材料を記載している。チューブ100の製造方法として、チューブの収縮を用いる場合には、特許文献1に記載された材料の熱収縮チューブ、溶媒膨潤性チューブをチューブ100として用いることができる。
しかし、前述したように、熱収縮チューブ、溶媒膨潤性チューブは収縮するときに板コイル200の隙間に入り込みやすい。板コイル付きチューブ10の製造方法として後述する製造方法を用いる場合は、チューブ100の収縮を行わないためチューブ100の材料は特に限定されず、熱収縮チューブ、溶媒膨潤性チューブの他に、非熱収縮チューブ、非溶媒膨潤性チューブの材料のチューブをチューブ100として用いることができる。チューブ100の収縮を行わないため、チューブの劣化及び特性変化を抑制することができる。
【0017】
<板コイル付きチューブ10の製造方法>
次に、
図1及び
図2に示した、板コイル付きチューブ10の製造方法の一例について
図9及び
図10を用いて説明する。以下の製造方法は、チューブ100内の板コイル200に板コイルの内側から圧力をかけて板コイル200の外径を大きくする方法である。
【0018】
図9及び
図10は板コイル付きチューブ10の製造方法の一例を示す説明図である。
板コイル200が挿入できるように、チューブの内径よりも小さく外径の板コイル20を用意する。
図9に示すように、板コイル200をチューブ100の内部に挿入する。
次に、
図10に示すように、反発弾性の高い線状弾性体となるゴム丸紐400の両端又は一方の端を引っ張ることで、ゴム丸紐400を伸ばし径を細くして、板コイル200の内部に通す。伸ばしたゴム丸紐400を板コイル200の内部に通すことは、例えば、ゴム丸紐400の端を掴む掴持部を端部に有する一方の棒状体で、ゴム丸紐400の一方の端を掴み、ゴム丸紐400の他方の端を別の棒状体で掴み、ゴム丸紐400を伸ばしながら一方の棒状体を板コイル200の内部に挿入して通過させ、ゴム丸紐400を板コイル200の内部に通すことで実現できる。
その後、2つの棒状体がゴム丸紐400の両端を離して、ゴム丸紐400が元のサイズに戻る力を利用して板コイル200の外径を大きくする。板コイル200の外径が大きくなることで、板コイル200の外周面は、チューブ100の内壁面に接する。
板コイル200の外径が大きくなった状態を維持して放置し、板コイル200の形状を安定化させる。
その後、例えば、上述した掴持部を端部に有する2つの棒状体で、ゴム丸紐400の端を引っ張ることで、ゴム丸紐400を伸ばし径を細くしてゴム丸紐400を伸ばしながら一方の棒状体を板コイル200の内部に挿入して通過させ、板コイル200の内部からゴム丸紐400を取り出す。こうして、
図1及び
図2に示した板コイル付きチューブ10を得ることができる。
【0019】
なお、反発弾性の高いゴム丸紐400の端を引っ張ることで、ゴム丸紐400を伸ばし径を細くして、板コイル200の内部に通した後で、ゴム丸紐400が通された板コイル200をチューブ100に挿入してもよい。
また、ゴム丸紐400が通された板コイル200に対して、チューブ100を移動させて、チューブ100内にゴム丸紐400が通された板コイル200を配置してもよい。
板コイル200の内部からゴム丸紐400を取り出す場合に、ゴム丸紐400を伸ばし径を細くした状態とし、板コイル200が接したチューブ100を移動させて、板コイル200の内部からゴム丸紐400を取り出すようにしてもよい。
【0020】
板コイル付きチューブ10の製造方法は、
図9及び
図10に示した製造方法に限らず、他の製造方法を採用することができる。以下の製造方法は、外径が大きくなる反発力を持つように、板コイル200の外径を小さくするような圧力がかかった板コイル200をチューブ100内に挿入し、その後、圧力を開放して板コイル200の外径を大きくする方法である。
【0021】
図11は板コイル付きチューブ10の他の製造方法の一例を示す説明図である。
板コイル200の両端に、互いに逆に回転させて板コイル200をねじる圧力をかけて引っ張ることで、板コイル200の外径を小さくする。このときの板コイル200の外径はコイル100の内径よりも小さくする。引っ張ることで、板コイル200の長さは長くなる。
外径を小さくした状態で、板コイル200をチューブ100の内部に挿入する。このとき、板コイルには、外径が大きくなる反発力を持つように、外径を小さくするような圧力がかかっている。外径を小さくした板コイル200をチューブ100の内部に挿入するには、例えば、板コイル200の端を掴む掴持部を端部に有する棒状体又は板コイル200の端に溶接等で端が接合された棒状体でそれぞれ板コイル200両端にねじる圧力をかけて引っ張りながら、一方の棒状体をチューブ100の内部を通過させ、外径を小さくした板コイル200をチューブ100の内部に挿入することで実現できる。
その後、例えば、板コイル200の両端で、掴持部を端部に有する棒状体の掴持部から板コイル200の端を離す又は板コイル200の端と棒状体の端との接合部を切り離すことで、板コイル200をねじり、引っ張る圧力を開放して、板コイル200の外形を大きくする。このとき板コイル200の長さは短くなる。板コイル200の外径が大きくなることで、板コイル200の外周面は、チューブ100の内壁面に接する。こうして、
図1及び
図2に示した板コイル付きチューブ10を得ることができる。
【0022】
なお、外径を小さくした板コイル200に対して、チューブ100を移動させて、チューブ100内に外径を小さくした板コイル200を配置してもよい。
また、
図11では、板コイル200の両端に、互いに逆に回転させて板コイル200をねじる圧力をかけて引っ張ることで、板コイル200の外径を小さくしているが、板コイル200の両端に、互いに逆に回転させて板コイル200をねじる圧力をかけて押すことで、板コイル200の外径を小さくしてもよい。板コイル200を押すことでも、板コイル200の長さは長くなる。外径を小さくした状態で、板コイル200を板コイル200の内部に挿入し、その後、板コイル200をねじり、押す圧力を開放して板コイル200の外径を大きくする。このときの、板コイル200の長さは短くなる。
【0023】
以上説明した本実施形態の2つの製造方法によれば、外径が大きくなったときの板コイル200の外径を適宜設定することで、板コイルの隙間にチューブの一部に入り込まないように製造することができる。
【0024】
上述した実施形態は、本発明の好適な実施形態ではあるが、上記実施形態のみに本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
【0025】
本実施形態の板コイル付きチューブは、柔軟に湾曲できるのでカテーテルチューブに好適に用いことができるが、その他、分析機器用チューブ、電気機器用チューブ、通信機器用チューブ等にも用いることができる。