【解決手段】容器本体6の開口部最端部ならびに、内装材10の開口部に位置するフランジ部10dの最端部の円縁を溶接続部4によってくまなく溶着し一体化させた後、内装材10の内部に潤滑剤を充満させ、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材3にて密閉、封止することで、潤滑剤等が男性器に接しない構造を提供できる。
一端に開口部を有し、その外形が略円筒状で、且つ円筒として開口部より長手方向に開口部の直径よりは十分に長く、おおよそ男性の手のひらの直径程度の長さに成形され、円筒側面長手方向中心部に、筒周囲を円の方向に一周するよう設けられた山形の突起を長手方向開口部から順よく配置した容器本体並びに、前記容器本体に収容され、一端に開口部を有し前記容器本体内にあって円筒状を維持しつつ容器本体に沿う形に長手方向に十分長く、内部に潤滑剤を保持する空間を有する弾性変形自在なゲル状樹脂製の内装材と、容器本体内にあって前記内装材の外周を覆い、内装材および自身の位置を固定または内装材からくる圧力を緩衝するウレタン樹脂等により成形されたスポンジ部材を備え、前記容器本体内に前記内装材およびスポンジ部材を収容した状態で、前記容器本体ならびに内装材の開口部の円縁をくまなく溶着し一体化させた後、内装材の内部に潤滑剤を充満させ、開口部に合わせ形状加工し且つ開口部中心部に精子一時保持のための凹みのある延性の高いゴム材にて密閉、封止したことを特徴とする医療用精子採取装置。
開口部に合わせ形状加工し、開口部中心部に凹みのない延性の高いゴム材並びに、潤滑剤を保持する内部の空間を簡易構造とした内装材からなることを特徴とした請求項1記載の医療用精子採取装置。
請求項2に係る、開口部に合わせ形状加工し、開口部中心部に凹みのない延性の高いゴム材並びに、潤滑剤を保持する内部の空間を簡易構造としたゲル状樹脂本体のみで構成されることを特徴とし、内装材およびゴム材の円縁部を溶着した医療用精子採取装置。
【背景技術】
【0002】
これまで主に医療現場において、不妊治療研究ならびにその他妊娠等人間もしくは哺乳類生物誕生に関わる生命科学の発達に寄与すべく、人間の男性の精子を持ってその研究材料とするために、その精子もしくはそれを含む精液を被検者より効率的かつ安全に採取するための装置が医療用精子採取装置として提案されてきた。
【0003】
医療用精子採取装置においてはその形態ならびに構成要素として特許第5260866号によれば、例えば一端に開口部を有した容器本体並びに、該開口部に脱着して開閉するキャップとから成る容器、前記容器本体内に収容され一端面の挿入口から内部に延びる挿入空所を有したゲル状樹脂製の内装材及び、前記挿入口から前記内装材内部に挿着されるリング部材、前記リング部材の内径側に嵌合されるスポンジ部材とから主に構成され、それ単体で男性器にスポンジから来る圧力、また容器本体に対しピストン運動を加えた場合それにかかる摺擦による刺激により短時間で精子の採取が期待できる医療用精子採取装置となっている。
【0004】
別の例では、特開2006ー212395号において精液捕集補助具として、シリコン等の軟性素材を使用した男性器を覆うための袋の開口部に、男性器を覆う形で収納し男性器をとらえ精子を採取するための補助者の指が収まるよう切り込みが入れてあり、容易かつ効率的に精子が採取できるように構成されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の発明では男性器に直接ゲル状樹脂製の内装材が接触するため、男性器外皮における当該内装材との摺擦に伴うストレスによるダメージ、ともすると破損もしくは損壊を生じる危険性が否定できなかった。
【0007】
また、それらを避けるための一般的な方法としてローション等の潤滑剤を男性器外皮部全域に覆う形で塗布することが必要であった。この場合、男性器外皮部における当該潤滑剤に対する生理学的ならびに科学的反応として、潤滑剤における材料的な観点もしくは男性器外皮部における個々人の特性的な観点から、その生理学的および科学的な反応が予想以上に著しく過敏な場合においては、男性器外皮の破損もしくは損壊を避ける必要性からそれら装置の使用を断念せざるを得ない場合があった。
【0008】
特に潤滑剤に関して言えば、本精子採取装置の目的を達成するため、装置を頻繁に摺擦せざるを得ないという本質的な使用方法という制限から、常に外気に触れる可能性があるのみならず、摺擦の度に潤滑剤と外気とが混合してしまうというその使用環境により、当該医療用精子採取装置の使われ方によっては思いもよらない科学薬品等の影響による変化並びに劣化の可能性がある。当該医療用精子採取装置が主に使用されることが予想される医療機関においては、各種薬剤並びに消毒用アルコール等揮発性の物質等、工業的に加工されているものの普段の生活環境、日常の家庭などでは存在し得ない薬品が多量に使用される環境であり、それら薬品並びに本医療用精子採取装置の管理が不十分の場合や長期に渡る非洗浄状態での利用においては、思いもよらない潤滑剤の変質に伴う科学作用によって男性器に多大なダメージを与える可能性が多分にある。
【0009】
実際の精子採取の現場に関して言えば、効率よく精子を採取、または採取した精子を調査機関へ送付し調査研究するために、従来の医療用精子採取装置の提案に基づく使用方法においては混合してしまう精子と潤滑剤を、何らかの形で各々分離する必要があった。その一般的な手段として、コンドーム等膜状のゴム材を男性器全域へ装着することが必要であったが、コンドーム等の男性器への装着は時間的に本来の目的に対しては追加作業であり且つ、装着に対する慣れもしくは修練が必要な作業であるため作業中に不備な動作で男性器を傷つけてしまうなど被検者に対して不必要な嫌悪感を課してしまう可能性があった。
【0010】
更に、男性器に神経が集中しているという都合上、従来の医療用精子採取装置の使用については、潤滑剤を介してはいるものの直接男性器と内装材との摺擦の刺激が大きすぎるという理由から、その使用自体を嫌悪する被検者も少なくなかった。その対策として摺擦を繰り返す際医療用精子採取装置から男性器を、いったん引き抜くもしくは他の多くで試みられるケースとして男性器にコンドームで覆うことにより刺激をコントロールすることが有効ではあるが、それに付随する医療関係者並びに被検者に係る手間と時間が増加し効率が悪いという困難さも残存していた。
【0011】
加えて実際の精子採取の現場においては、被検者からの精子採取後の後処理行程として、潤滑剤並びに潤滑剤と混合した精子の清掃除菌作業が被検者の健康を維持するために非常に重要である。この清掃除菌作業は男性器および被採取者の男性器周辺において、本来の潤滑剤および使用に伴い変質してしまった潤滑剤によるかぶれ等の危険のないよう慎重に執り行う必要があり、その安全配慮の要請から入念かつ長い作業時間が必要であった。また使用した装置においても衛生配慮上の心配点を考慮するに、同様に丹念に洗浄する必要があり、構造が複雑もしくは変形しやすい装置の場合には洗浄に多大な時間を要するため、医療の現場においてはしばしば使い捨ての立場をとらざるを得ず、コスト面ならびに廃棄物増加に伴う環境面においてマイナスとなる場合が多く見られた。
【0012】
上気に示した通りの使用材質による心配点並びに、取り扱いおよび清掃除菌作業の簡易化のため特開2006ー212395号のような提案もされているが、その形状から繰り返し使用と洗浄に伴う耐久性に関しては設計上配慮が十分ではないと考えられ、結果使い捨てとなりコストがかかるという問題を含んでいた。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1の発明は一端に開口部を有し、その外形が略円筒状で、且つ円筒として開口部より長手方向に開口部の直径よりは十分に長く、おおよそ男性の手のひらの直径程度の長さに成形され、円筒側面長手方向中心部に、筒周囲を円の方向に一周するよう設けられた山形の突起を長手方向開口部から順よく配置した容器本体並びに、前記容器本体に収容され、一端に開口部を有し前記容器本体内にあって円筒状を維持しつつ容器本体に沿う形に長手方向に十分長く、内部に潤滑剤を保持する空間を有する弾性変形自在なゲル状樹脂製の内装材と、容器本体内にあって前記内装材の外周を覆い、内装材および自身の位置を固定または内装材からくる圧力を緩衝するウレタン樹脂等により成形されたスポンジ部材を備え、前記容器本体内に前記内装材およびスポンジ部材を収容した状態で、前記容器本体ならびに内装材の開口部の円縁をくまなく溶着し一体化させた後、内装材の内部に潤滑剤を充満させ、開口部に合わせ形状加工し且つ開口部中心部に精子一時保持のための凹みのある延性の高いゴム材にて密閉、封止したことを特徴とする。
【0014】
請求項2の発明は、一端に開口部を有し、その外形が略円筒状で、且つ円筒として開口部より長手方向に開口部の直径よりは十分に長く、おおよそ男性の手のひらの直径程度の長さに成形され、円筒側面長手方向中心部に、筒周囲を円の方向に一周するよう設けられた山形の突起を長手方向開口部から順よく配置した容器本体並びに、前記容器本体に収容され、一端に開口部を有し前記容器本体内にあって円筒状を維持しつつ容器本体に沿う形に長手方向に十分長く、内部に潤滑剤を保持する空間を有するが、その空間は単純形状である突起のみが存在する簡易な構造となっている、弾性変形自在なゲル状樹脂製の内装材と、容器本体内にあって前記内装材の外周を覆い、内装材および自身の位置を固定または内装材からくる圧力を緩衝するウレタン樹脂等により成形されたスポンジ部材を備え、前記容器本体内に前記内装材およびスポンジ部材を収容した状態で、前記容器本体ならびに内装材の開口部の円縁をくまなく溶着し一体化させた後、内装材の内部に潤滑剤を充満させ、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材にて密閉、封止したことを特徴とする。
【0015】
請求項3の発明は、一端に開口部を有しその外形が円筒状で、且つ円筒として開口部より長手方向に開口部の直径よりは十分に長く、おおよそ男性の手のひらの直径程度の長さに成形され、内部に潤滑剤を保持する空間を有するが、その空間は単純形状である突起のみが存在する簡易な構造となっている、弾性変形自在なゲル状樹脂本体に、内部に潤滑剤を充満させ開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材にて密閉、封止したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、使用時においては当該医療用精子採取装置の開口部から男性器を容器本体長手方向に、弾性変形自在なゲル状樹脂製の内装材ないしコア部材の空間に対して挿入するが、その際男性器外皮全面にくまなく開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材が密着するため、男性器と内装材ないしコア部材が直接接触することがなく、男性器外皮における当該内装材ないしコア部材との摺擦に伴うストレスによるダメージ、破損もしくは損壊を生じる恐れがない。開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材は、天然ゴムもしくは天然ゴムから薄型加工されたラテックス製品が考えられる。一般にゴム材は、その表面の凹凸を活かして接触する物体との隙間に適度な真空状態を作り出し密着および吸着することで、接触する物体との摩擦を抑えることができるため、内装材ないしコア部材との摺擦に伴って男性器と当該ゴム材との摩擦に関してもが生じることはなく、男性器外皮におけるストレスによるダメージ、破損もしくは損壊を生じる恐れがない。
【0017】
また、潤滑剤は内装材ないしコア部材の内部に充満されているが、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材にて密閉、封止されているため外気に触れることがなく空気との混合作用による科学的劣化の恐れがないため長期使用に耐えられる。特に、当該医療用精子採取装置が主に使用されることが予想される医療機関においては、各種薬剤並びに消毒用アルコール等揮発性の物質等、工業的に加工されているものの普段の生活環境では存在し得ない薬品が多量に使用される環境である。しかしながら、例えそれら薬品の管理が不十分の場合においても、外気との混合作用による科学的劣化の恐れがないため、思いもよらない潤滑剤の変質に伴う当該医療用精子採取装置の継続使用困難に基づく、廃棄や買い替えコストなどの経済的影響は長期間発生しない。
【0018】
また、内装材ないしコア部材の内部の空間およびそこに充満されている潤滑剤は、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材にて密閉、封止されているため精子が潤滑剤と混合することがない。そのため効率よく採取した精子を調査機関へ送付することが可能である。被検者はコンドームを装着する必要がないため、それに付随する医療関係者並びに被検者に係る手間と作業時間の短縮化を図ることができる。
【0019】
更には、被検者からの精子採取後の後処理行程として、潤滑剤並びに潤滑剤と混合した精子の清掃除菌作業が被検者の健康を維持するために非常に重要であるが、内装材ないしコア部材の内部の空間およびそこに充満されている潤滑剤は、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材にて密閉、封止されているため精子が潤滑剤と混合することがなく、よって内装材ないしコア部材内部の空間の清掃除菌作業は不要である。清掃除菌作業は、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材の容器本体長手方向と逆の表面ならびに被検者の男性器のみ、潤滑剤と混合されていない精子について実施すればよく、洗浄は簡単で且つ短時間である。
【0020】
なお、内装材ないしコア部材に使用される弾性変形自在なゲル状樹脂においては、清掃除菌作業の対象とはならないため当該作業による劣化の恐れがなく、長期使用が可能である。また構造上外気と触れないため、内装材ないしコア部材内部の空間に充満されている潤滑剤は揮発することがなく、衛生的であり且つ長期使用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明第1の実施形態に係る精子採取装置の外観傾視図
【
図2】本発明第1の実施形態に係る精子採取装置の内部構造全体図
【
図3】本発明第1の実施形態に係る精子採取装置の上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【
図4】本発明第1の実施形態に係る精子採取装置の底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【
図5】本発明第2の実施形態に係る精子採取装置の内部構造全体図
【
図6】本発明第2の実施形態に係る精子採取装置の上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【
図7】本発明第2の実施形態に係る精子採取装置の底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【
図8】本発明第3の実施形態に係る精子採取装置の内部構造全体図
【
図9】本発明第3の実施形態に係る精子採取装置の上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【
図10】本発明第3の実施形態に係る精子採取装置の底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、第1の本発明を図面に示した実施形態に基づき詳細に説明する。
【0023】
図1は本発明の第1の実施形態に係る医療用精子採取装置の外観傾視図、
図2は内部構造全体を示した縦断面図、
図3は上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図、
図4は底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図である。
【0024】
この精子採取装置(医療用精子採取装置)1は、長手方向一端面に開口部を有し、その外形が略円筒状で、且つ円筒として開口部より長手方向に開口部の直径よりは十分に長く、おおよそ男性が大きく広げた手のひらの直径程度の長さに成形され、円筒側面長手方向中心部に、筒周囲を円の方向に一周するよう設けられた山形の突起6aを長手方向開口部から順よく配置した容器本体6並びに、前記容器本体6に収容され、一端に開口部を有し前記容器本体6内にあって円筒状を維持しつつ容器本体6に沿う形に長手方向に十分長く、内部に潤滑剤を保持する空間8を有する弾性変形自在なゲル状樹脂製の内装材10と、容器本体6内にあって前記内装材10の外周を覆う形で配置されるスポンジ部材5並びに開口部付近に配置されるスポンジ部材5aおよび精子採取装置1の底面部に配置されるスポンジ部材5bを備え、更に潤滑剤を保持する空間8aを封止するために、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材3を備えている。
【0025】
容器本体6は、適度な肉厚とそれに伴う硬度を保つ樹脂ないしプラスチック材料から成形されており、その形は長手方向一端面に開口部を有する略円筒状となっている。内部に他の部材を配置するために十分な空間を確保する必要があるが、その用途を鑑みると内部の部材による円筒中心部からの内圧に耐えうるよう円筒側面である外筒部分については、長手方向に従い滑らかな傾斜を持たせることが材料を必要以上に厚くする必要がないなど、製作コスト並びに製造工程上の簡素化という面では有効ではあるが、必ずしも必須ではない。ただし、本実施形態では
図1ないし、
図2に示されるような傾斜を持った容器本体6を中心として説明する。その傾斜は、容器本体6の開口部から始まり長手方向へ進行するに従い、徐々に中心部に向かって細くなり長手方向の中心位置で筒の直径が最も細くなっている。長手方向中心部からは、容器本体6底面部に進行するに従い徐々に太くなり、容器本体6底面部において容器本体6開口部と同等の太さとなっている。容器本体6における最も直径が細い長手方向中心位置の太さは、作業開始から終了までの間装置をある一定の空間に保ちながら、装置を開口部方向ないし底面部方向へ、男性器への摺擦を目的とした繰り返し動作を行う必要があるため、簡便に片手で握ることができ尚且つ一般的な成人の手に馴染む程度の太さ、すなわち細くもなく太くもない大きさ成形されており、作業の難易度がより軽減され過度に疲労するという不都合がないよう設計されている。
【0026】
また容器本体6円筒側面傾斜部には、筒周囲を円の方向に一周するよう設けた山形の突起6aを、開口部から長手方向へ向かって順よく配置する。前述の通りその使用用途からくる作業動作を鑑みた場合、当該突起6aは作業者の手の滑り止めの役割を担い、作業者が本精子採取装置を取り扱う際の精子採取作業の難易度を軽減され過度に疲労するという不具合がなくなる。なお突起6aの材質は、容器本体6と同質の樹脂ないしプラスチック材料を用いることで容器本体6と一体成型されてもよく、また別材として滑り防止の効果がより高いゴム材で形成しても良い。更には容器本体6と一体成型されたのち、表面のみを滑り止め効果の高いゴム系塗料にて塗装加工しても良い。
【0027】
容器本体6の底面部には換気用の小孔7が形成される。この小孔7は、本精子採取装置1使用時に男性器が内装材10内の空間8へ挿入される際、未使用状態と比較し内装材10が膨張し、その外筒部分を容器本体6側面部方向へ拡大することになるため、容器本体6と内装材10の両者間に存在する、内装材10の外周を覆う形で配置されるスポンジ部材5並びに開口部付近に配置されるスポンジ部材5aが圧迫、収縮する際に各々スポンジ部材内部に滞留していた空気を排出しスポンジ部材内部の気圧を一定に保つ役割を持つ。スポンジ部材5並びにスポンジ部材5aは、内装材10ならびに容器本体6に比べて密度が粗く、男性器挿入時には内装材10ならびに容器本体6に比べスポンジ部材5並びにスポンジ部材5aが優先的に圧縮される。この際スポンジ部材5並びにスポンジ部材5a内部の気圧が高まるが、そのままにしておくと高まった気圧による反発力により内装材10が圧迫され、それが男性器に印加することにより使用者に著しい不快感が生じる。また、当該反発力は逃げ場を失った結果、本精子採取装置開口部方向へ向かうことになり、男性器が押し戻され本来の目的を達成できないという問題となる。そのため、小孔7を形成し空間11を介して換気できる構造とすることで、スポンジ部材5並びにスポンジ部材5a内部の余剰空気を排出し外部との気圧差を均一とし、前述した不快感並びに問題を解決することができる。
【0028】
内装材10は、エラストマーもしくは高分子ゴムのような粘性を有した弾性変形自在なゲル状樹脂から構成された袋状体であり、容器本体6に沿う形に長手方向に長く、スポンジ部材5bを介して容器本体6底面部まで達している。容器本体6内部でその形状を維持するため内装材10は、内装材10の外周を覆う形で配置されるスポンジ部材5並びに開口部付近に配置されるスポンジ部材5aによって固定され、未使用時においては容器本体6中央部にその位置を常に留める。また内装材10内部の空間8には潤滑剤が充満密封されており、この状態においては潤滑剤、内装材10、並びにスポンジ部材が容器本体6筒側面への圧力に各々バランスを取る形で形状維持されている。
【0029】
底面部に配置されるスポンジ部材5bは、前述したスポンジ部材5並びにスポンジ部材5a内部の余剰空気排出の必要性に従い、本精子採取装置1使用時においては換気のために機能する。また本精子採取装置1使用時においては、男性器に挿入における内装材10からスポンジ部材5bが底面部方向へ受ける圧迫に対して、スポンジ部材5b内部の空気を小孔7から排出し外部との気圧差を均一とすることができる。
【0030】
なお、外部との気圧差を均一とした場合における男性器に対する本精子採取装置1による刺激と、男性器挿入時に小孔7を塞いだ場合及び、逆に男性器抜出時に小孔7を塞いだ場合の刺激の変化について、前述した通りこれを不快感とするかどうかは個人の感覚による所が大きく、あくまでもそのように感じる場合には小孔7を開放して使用することが推奨されるが、必須ではない。機能としては小孔7の密閉および開放によって、容器本体6のスポンジ部材内部の気密を調整することで、延性の高いゴム材3ないし潤滑剤を介した内装材10と男性器との間の密着度並びに密着感を変えることができ、摺擦に伴う男性器への刺激をコントロールすることが可能である。すなわち、小孔7を塞いだ状態では男性器が内装材10の内壁により密着した状態となるため締め付け力が強くなり、男性器が内装材10の内壁により離着した状態となるため小孔7を開いた状態では締め付け力が弱くなる。このように簡単な操作によって締め付け力を変化させて刺激を変化させることが可能となる。
【0031】
内装材10に備わるフランジ部10aは、スポンジ部材5とスポンジ部材5bとの間に挟まれるように構成されており、この部位により内装材10は使用時又は未使用時問わず長手方向に対して常に形状維持されることになる。フランジ部10aの形状は内装材10の長手方向中心部より大きい半径を持つ円盤状であり、男性器摺擦時の本精子採取装置1長手方向反復に伴う内装材10の長手方向の変形を防止するため、スポンジ部材5とスポンジ部材5bとの間で確実に固定されるように、十分な厚みが必要となる。フランジ部10aは内装材10と同材で一体成型されてもいいが、上気の通りスポンジ部材5とスポンジ部材5bとの間で固定され、内装材10の長手方向の変形を防止するために常にストレスがかかる状態であり、耐久性を鑑みて別素材とし内装材10に取り付けてもよい。その際には、内装材10とフランジ部10aとの接合強度が、フランジ部10aが位置固定されることに伴なう引張強度より高いことが前提条件となる。
【0032】
また、フランジ部10aはスポンジ部材5とスポンジ部材5bとの間で固定され、内装材10の変形を防止するようその形状変化に対して常にストレスがかかる状態に耐えうる強度を考慮した上で、材料費の低減を目的にその形状を単純な円盤状ではなく、弧が大きい半円状としてもよい。ただしその場合においては、空間11を換気通過する空気の流れによってフランジ先端部が影響を受け、フランジが発振してしまう事により風切り音が発生し、これら意図しない高周波ノイズによって使用者並びに作業者に不快感を与える可能性があるため、フランジ先端部を過剰に細くしないこと及び内装材10加工時に発生するバリを除去することが必要となる。
【0033】
内装材10の内部には潤滑剤を収納しゴム材3で被覆された男性器を摺動、刺激するための空間8が設けられている。実施例1においては、3つの大きな空間8bが狭い空間8cで接続されている例を示したが、必ずしも大きい空間が3つである必要はない。これら内装材10の内部に長手方向に従い設けられた幾つかの大きい空間8b及びそれらを接続するための小さい空間8cにより、潤滑剤並びに男性器の一部が大きい空間8b各々をまたがって、狭い空間8cを通り移動できるようになっている。このような摺動動作によって、内装材10とゴム材3表面との摩擦が振動となり、ゴム材3を介して、ゴム材3と密着した男性器にその振動が伝わり、刺激として知覚される。その結果、連続的な摺動が連続的な刺激となることで快感を得られ、摺動を続けることで射精に至るまでの刺激を継続することが可能となる。
【0034】
なお、大きな空間8bの開口部側入り口付近には突起9を設ける。突起9は2列ないし3列に渡り各々大きな空間8bの開口部側入り口付近に順よく設けられる。大きな空間8b入り口付近は、大きな空間8bの中間部と比較しその内径が狭いため、摺動の際男性器先頭部分を優先的に刺激する。男性器先頭部分には知覚神経が集中しており敏感であるため、当該突起9により摺動の際の摩擦による振動に変化が得られ、内装材10内部表面が平坦な場合と比較し短時間で射精に至ることが期待出来る。
【0035】
本発明によれば、男性器はゴム材3により被覆されているため、男性器が直接これら内装材10の内部表面や、突起9、大きな空間8b及び小さな空間8cに接触することはない。そのため、これら内装材10の内部表面や、突起9、大きな空間8b及び小さな空間8cの形状からくる刺激の大小やリズムはゴム材3による被覆のため緩慢となっており、これら男性器に非接触な部材を精度良く成形しても、又はそうでなくても、男性器が受ける刺激にあまり変わりがないため、精度を落として成形することが可能であり、コストを低減することが出来る。
【0036】
また空間8に充満される潤滑剤は、男性器がゴム材3により被覆されているため、男性器が直接潤滑剤と接触することはなく、男性器表皮に対しての科学的及び病的な反応、アレルギーなどを考慮する必要がない。更に当該潤滑剤は、内装材10内部に空気並びに他の気体、混合気などあらゆる外気との接触がないため、それら気体による科学的反応並びに劣化の恐れがない。そのため潤滑剤の選択の幅が広がり、今まで科学的反応を理由に採用できなかった潤滑剤であっても、価格面や製造時の簡便さを実現できる面などを理由に、安価な材料を積極的に採用するなどして製品のコストダウンに貢献することが可能となる。
【0037】
内装材10の開口部には、フランジ部10dが設けてある。フランジ部10dはその最端部を、溶接続部4によって容器本体6の開口部最端部と隙間なく接続されており、溶接続部4の加工は本発明品の製造自動化の観点から熱溶接や超音波溶接など、主にプラスチック材料で用いられる工程が加工時間やコストを考慮し採用されるべきであるが、容器本体6の開口部最端部と隙間なく接続されるという目的を達成することが出来る加工方法であれば、あらゆる工法が選択肢となりうる。また、フランジ部10dは内装材10の開口部に近い小さい空間8cから弧を描いて容器本体6の開口部最端部に届くように加工成形されており、男性器がゴム材3を介して内装材10の内部の空間8に挿入される際、弧を描いた角度に沿って男性器を内装材10の開口部の円の中心にガイドする機能を持つ。また、フランジ部10dの内側にはスポンジ部材5aが配置されており、使用時および未使用時においてフランジ部10dを支持するための機能を提供するが、特に使用時において前述した通り男性器がゴム材3を介して内装材10の内部の空間8に挿入される際、フランジ部10dの弧を描いた角度に沿って男性器を内装材10の開口部の円の中心にガイドする際の一連の挿入感覚が、スポンジ部材5aの材質によって決まると言っても過言ではない。そのためスポンジ部材5aは、製造コストを考慮しスポンジ部材5と同材として一体成型しても問題はないが、別材質とすることにより、より自然な挿入感とする工夫の余地もある。
【0038】
フランジ部10dの外側、すなわち内装材10開口部側円全面には空間8aを設け潤滑剤で充満し、その外側には潤滑剤を保持するよう空間8aを封止するために、開口部に合わせ形状加工した延性の高いゴム材3を配して密封する。空間8aは全ての空間、内装材10内部の空間8、小さい空間8cないし大きい空間8bと連続して接続しており、従ってこれら全ての空間は潤滑剤で満たされる。そのため潤滑剤は各々空間をまたがるように行き来することになり、潤滑剤の各々空間への往来はゴム材3で被覆された男性器により撹拌される形で行われるが、外気との接触がないため泡の発生やそれに伴う異音等の煩わしさは生じない。ゴム材3は
図3で示す通り開口部に合わせ形状加工し円状の薄い膜となっており、その中心部には精子を一時滞留させるための凹み2が形成されている。
【0039】
ゴム材3の膜の厚さは全体的に渡り必ずしも一定である必要はなく、各部位の機能毎に異なるよう加工成形される。例えば、中心部の精子を一時滞留させるための凹み2付近の厚みに関しては、場合によっては精子の量が凹み2によって形成された空間のみでは不足することも考えられ、その際には凹み2がより空間を必要とし内部方向へ拡大するため、膜を他の部位より厚くしておくことで、延びて拡がる可能性を高めておく必要がある。膜を厚くすることで、摺動摩擦による刺激が伝わりづらくなることが考えられるが、男性器先端部は非常に敏感な部位であることから刺激とのバランスを考慮し設計することで解決可能である。ゴム材3の他の部位の厚さについては、耐久性、得られる刺激を考慮し決定される。
【0040】
なおゴム材3の男性器との接触面は、中心部の精子を一時滞留させるための凹み2を除いて、凹凸がない。これにより精子採取作業後の清掃除菌作業が簡易化され、メンテナンスの手間が少なくなり時間による負担が軽減される。中心部の精子を一時滞留させるための凹み2については綿棒等で清掃除菌する必要があるが、それを除けば除菌のための布等でひと拭きするだけで清掃除菌作業が完了するため、従来の精子採取装置と比較すると精子採取作業後の清掃除菌作業の手間が圧倒的に少なく、また潤滑剤の男性器への付着もないため極めて衛生的である。
【0041】
更には、採取した精子はゴム材3により潤滑剤から隔離された状態であるため、潤滑剤混合する可能性がない。そのため潤滑剤と分離する作業が必要なく、そのまま直ぐに研究機関へ送付し調査解析が可能であり、解析までの時間短縮を図ることができる。
【0042】
次に、
図5は本発明の第2の実施形態に係る精子採取装置の内部構造全体図であり、
図6はその上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図、
図7はその底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図である。
【0043】
この実施形態に係る精子採取装置1は、内装材10の内部構造の簡素化並びにゴム材3に精子を一時滞留させるための凹み2が無いことを除けば第1の実施形態とほぼ同様であるため、第1の実施形態との相違点を中心として説明する。
【0044】
本実施形態に係る内装材10の内部には、潤滑剤を収納しゴム材3で被覆された男性器を摺動、刺激するための空間8が設けられている。本発明の第2の実施形態において空間8は、内装材10の開口部から長手方向に連続した形に延びており、空間の広さはその内部に潤滑剤を滞留させておけるだけの広さとなっている。これにより、潤滑剤並びに男性器の一部が空間8を連続的に最深部まで移動できるようになっている。このような摺動動作によって、内装材10とゴム材3表面との摩擦が振動となり、ゴム材3を介してゴム材3と密着した男性器にその振動が伝わり、刺激として知覚される。その結果、連続的な摺動が連続的な刺激となることで快感を得られ、摺動を続けることで射精に至るまでの刺激を継続することが可能となる。
【0045】
なお、空間8にはその内周を円の方向に周回し且つ螺旋状に空間8の開口部から最深部まで連続的に設けた山形の突起9aを、開口部から長手方向へ向かって順よく配置する。突起9aは2列ないし3列に渡り配置されるが、その数は必ずしも2列ないし3列である必要は無い。
【0046】
更に本発明においてゴム材3は、
図5で示す通り開口部に合わせ形状加工された円状の薄い膜となっており、その表面はゴム材3の材質並びに表面加工からくる表面粗さを除いては、凸凹のない均一した面となっている。ただしゴム材3の中心部には幾分かの追加的厚み部2aを有しており、ゴム材3の膨らみのない他の部位と比較すると、元々延性が高い素材である上に更に、延びて大きく拡がるための余地を有している。
【0047】
本実施形態の実際の使用時においては、男性器先端の精子排出部が追加的厚み部2aに位置するよう構成している。これにより、精子が男性器先端の精子排出部から放出される際、放出された精子の量に従った大きさの空間が必要となるが、追加的厚み部2aがその空間の要請に従って延びることで、放出された精子をその空間に滞留させておくことが可能となる。
【0048】
また、本実施形態のゴム材3の表面はゴム材3の材質並びに表面加工からくる表面粗さを除いては、凸凹のない均一した面となっているため、使用後においては追加的厚み部2aによってできた空間に滞留している精子を採取した後、除菌のための布等でひと拭きするだけで清掃除菌作業が完了するため、従来の精子採取装置並びに第1の実施形態と比較しても、精子採取作業後の清掃除菌作業の手間が極端に少なく、本発明の精子採取装置1の私用者及び医療関係者の負担を軽減することが出来る。
【0049】
次に、
図8は本発明の第3の実施形態に係る精子採取装置の内部構造全体図であり、
図9はその上面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図、
図10はその底面図および精子採取装置に対してその視点を指し示した図である。 第3の実施形態は第2の実施形態の変形例に係り、第2の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明をする。
【0050】
この実施形態を構成するゲル状樹脂本体10cは、一端に開口部を有し円筒状を維持しつつ長手方向に十分長く、内部に潤滑剤を保持する空間8を有する弾性変形自在なゲル状樹脂製で成形されており、その使用時には内部の空間8に延性の高いゴム材3によって包含された男性器の挿入による変形に耐えうるよう十分な厚みを確保している。ゲル状樹脂本体10cの外部はむき出しとなっており、使用者または医療従事者はゲル状樹脂本体10cの円筒としての側面を直接手で固定し使用する。その使用方法は第1の実施形態並びに第2の実施形態同様、本装置の長手方向反復による男性器摺擦であるが、ゲル状樹脂本体10cの円筒としての側面を直接手で固定しているため、その握力を調整することによって長手方向反復時における男性器に対する刺激を調整することが可能である。即ち、強く握ることで男性器を包含しているゴム材3の表面とゲル状樹脂本体10cの内部の空間8の内壁との摩擦が大きくなり、それに伴う振動の振幅が大きくなるため、男性器への刺激が大きくなる。逆に弱く握れば振動の振幅が小さくなり、男性器への刺激が小さくなる。このように刺激を調整することで、使用者並びに医療従事者は被検者の要請に従うことができ、短時間での精子採取が可能となる。
【0051】
更に本発明においてゴム材3は、
図8で示す通り開口部に合わせ形状加工された円状の薄い膜となっており、その表面はゴム材3の材質並びに表面加工からくる表面粗さを除いては、凸凹のない均一した面となっている。そのため使用後においては、ゴム材3表面の男性器精子排出部から放出された精子によってできた空間に滞留している精子を採取した後、除菌のための布等でひと拭きするだけで清掃除菌作業が完了し、使用者及び医療関係者の負担を軽減することが可能となる。
【0052】
また、第3の実施形態は部品点数が少なく構造も簡素であるため、組み立て工数が削減でき製造工程の自動化に、より馴染みやすい構造となっている。