【解決手段】筒状電極11と軸状電極12とで形成されたプラズマ処理空間14に連通するガス導入路15が、プラズマ処理空間14に向かう被処理ガスの流れを螺旋流に変えるガイドベーン部15aと、ガイドベーン部15aとプラズマ処理空間14との間で螺旋流に後流渦を発生させる障害部15dを有する。
軸方向に並ぶ複数の仮想円周上にそれぞれ二以上の前記障害部が配置されており、前記複数の仮想円周上に配置された前記障害部が、前記螺旋流の巻き方向と逆方向に巻いた螺旋状に分布している請求項1に記載のプラズマ処理装置。
前記ガス導入路が、前記筒状電極に軸方向に連続する円管状部と、前記ガイドベーン部と前記軸状電極の間で前記円管状部の内側に同軸状に配置された円柱状部と、を有し、
前記障害部が、前記円管状部と前記円柱状部との間に配置されている請求項2に記載のプラズマ処理装置。
前記筒状電極と前記軸状電極の間に印加される電圧が、これら両電極間で火花放電を発生させない電圧に設定されている請求項1から3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の一例としての実施形態に係るプラズマ処理装置を添付図面に基づいて説明する。
【0012】
図1、
図2に示すこのプラズマ処理装置は、被処理ガスを通過させる際にプラズマ処理を施す二以上の処理ユニット部10と、これら処理ユニット部10に対して上流側から被処理ガスを供給するインレット管20と、これら処理ユニット部10に対して下流側から被処理ガスを排出するアウトレット管30と、を備える。
【0013】
このプラズマ処理装置は、前述の食品加工施設や食品保管施設、下水処理施設やゴミ処理施設などの他、半導体製造工場や塗装工場など、様々な業務施設において発生又は使用されるVOCなどの被処理ガスを無臭又は無害な物質に分解処理するために用いられる。そのため、このプラズマ処理装置は、設置される場所や被処理ガスの量などに応じて様々な変形が可能なように処理ユニット部10等が構成される。
【0014】
処理ユニット部10は、筒状電極11と、筒状電極11の内側に筒状電極11と同軸状に配置された軸状電極12と、軸状電極12を筒状電極11と同軸状に保持するための複数の絶縁スペーサ13と、筒状電極11と軸状電極12とで形成されたプラズマ処理空間14に連通するガス導入路15とで構成されている。
【0015】
このプラズマ処理装置は、インレット管20とアウトレット管30との間に二以上の処理ユニット部10が並列に接続された構造になっている。
【0016】
筒状電極11は、筒体16の内周に円筒面状に設けられた陰極になっている。軸状電極12は、軸体の外周に円筒面状に設けられた陽極になっている。軸状電極12は、筒状電極11と径方向に対向する。
【0017】
ここで、軸方向とは、筒状電極11の筒軸に沿った方向のことをいう。また、径方向とは、その筒軸に対して直角な方向のことをいう。また、周方向とは、その筒軸回りの円周方向のことをいう。
【0018】
筒状電極11及び軸状電極12として、継ぎ目のないシームレスパイプを用いることが好ましく、その材料は特に限定されない。例えば、ステンレスパイプであってもよいし、グラファイト、カーボンナノチューブ等のカーボンで強化された導電性樹脂(CFRP:Carbon Fiber Reinforced Plastics)パイプであってもよい。或いは、ステンレスパイプの内周面又は外周面に、グラファイト、カーボンナノチューブ等のカーボンを含む樹脂層をコーティングしたものであってもよい。なお、シームレスのステンレスパイプは高価であり、重量が重いこと、400℃以上の高温に耐えにくいこと、強酸及び強アルカリによって腐食する可能性があることから、導電性樹脂パイプの方が好ましい。
【0019】
絶縁スペーサ13は、耐薬品性及び耐熱性に優れた、例えばフッ素系樹脂などで形成されている。絶縁スペーサ13は、例えば、同軸状に芯だしをするため、軸方向から見て略X状、あるいは略Y状のものにするとよく、また、被処理ガスの流れを妨げないようにするため、なるべく細いフレームで構成するとよい。
【0020】
プラズマ処理空間14は、筒状電極11と軸状電極12が径方向に対向する空間である。このプラズマ処理装置は、大量の被処理ガスを処理するため、例えば、筒状電極11の内径を100mm、軸状電極12の外径を20mm、筒状電極11と軸状電極12が径方向に対向する領域の軸方向の長さを1600mmとしている。この寸法は、一例であって、これに限定されるものではない。軸状電極12の外径は、10mm以上あればよい。一方、筒状電極11の内径を大きくしすぎると、筒状電極11と軸状電極12間の距離が長くなり、放電が起こりにくくなる。このため、筒状電極11の内径をD1、軸状電極12の外径をD2として、3≦D1/D2≦6を満足すること、D1−D2≧20mmを満足すること、及びD2≧10mmを満足することが好ましい。
【0021】
また、筒状電極11と軸状電極12を軸方向に長くしすぎると、筒状電極11と軸状電極12を絶縁スペーサ13で同心状に保持することが困難となる。そのため、筒状電極11と軸状電極12が径方向に対向する領域の軸方向の長さをLとして、500mm≦L≦2000mmを満足することが好ましい。
【0022】
筒状電極11と軸状電極12の間に13000〜25000Vの電圧を印加し、筒状電極11と軸状電極12の間で放電を発生させる。ここで、筒状電極11及び軸状電極12に凹凸があると、その箇所で火花放電が発生する。コロナ放電、グロー放電等の火花放電が発生すると、その付近でしかプラズマは生成されず、プラズマ処理の効果が発揮されにくい。また、筒状電極11と軸状電極12の間に印加する電圧が高すぎたり、筒状電極11と軸状電極12の間の距離が短すぎたりすると、火花放電が発生する可能性がある。電圧23000Vは、筒状電極11と軸状電極12の間の距離を40mmとした場合の火花放電を発生させないための上限値である。筒状電極11と軸状電極12の間に印加する電圧は、火花放電が発生しないように、筒状電極11と軸状電極12の寸法に合わせて適宜調節すればよい。なお、筒状電極11及び軸状電極12と電源回路との接続点は、特に限定されないが、図に示す構成例では、筒状電極11と軸状電極12の軸方向の中央部近傍としている。
【0023】
プラズマによる被処理ガスの分解や脱臭作用は、様々な原理が複合的に作用して行われる。被処理ガスは、空気とVOCなどの混合物であり、様々な物質が含まれている。筒状電極11と軸状電極12の間のプラズマ処理空間14で放電が生じると、被処理ガスに含まれる様々な物質が活性化され、プラズマ化される。すなわち、被処理ガス中に含まれるVOC等の被処理物質が直接プラズマ化され、他の物質に変換される場合がある。また、空気中の酸素などがプラズマ化され、それによってオゾンが発生され、そのオゾンによって被処理物質が酸化される場合もある。このように、様々な原理によって、被処理ガス中の被処理物質が、臭気性のない二酸化炭素や水分子などの他の物質に変換され、VOCの分解や臭気ガスの脱臭、被処理物質の分解などが行われる。
【0024】
図1、
図3に示すように、ガス導入路15は、プラズマ処理空間14に向かう被処理ガスの流れを螺旋流に変えるガイドベーン部15aと、軸方向に延びる円管状部15bと、円管状部15bの内側に円管状部15bと同軸状に配置された円柱状部15cと、ガイドベーン部15aとプラズマ処理空間14との間で前述の螺旋流に後流渦を発生させる二以上の障害部15dと、を有する。
【0025】
ガイドベーン部15aは、
図3、
図4に示すように、軸方向に下流側(プラズマ処理空間14側)に向かって所定径に拡がる円錐状体15eと、円錐状体15eから径方向に突き出た複数(図示例では四枚)の垂直ガイド板15fと、曲線状にねじられた形状の板面を有する複数(図示例では四枚)の曲面ガイド板15gとで構成されている。ガイドベーン部15aは、円管状部15bの内側に配置されている。
【0026】
円錐状体15eは、その軸方向の中間で2つに分割したものを嵌合して一体に組立、分離自在に構成されている。円錐状体15eの上流側(プラズマ処理空間14から遠い側)の分割部分には、垂直ガイド板15fが一体に形成されている。円錐状体15eの下流側(プラズマ処理空間14から近い側)の分割部分には、曲面ガイド板15gが一体に形成されている。四枚の垂直ガイド板15fは軸方向からの断面視では十字状に交差する向きで径方向に突出している。曲面ガイド板15gの上流側端部は、垂直ガイド板15fに接続するように軸方向に沿っており、曲面ガイド板15gの下流側部は、前述の上流側端部から曲面ガイド板15gの下流側端まで螺旋状に曲面を成すように延びている。
【0027】
図1、
図2に示すように、円管状部15bは、筒状電極11を設けた筒体16のうち、筒状電極11よりもガス導入路15側(プラズマ処理空間14から遠い側、上流側)の筒部分からなる。このため、円管状部15bの内径と、筒状電極11の内径D1は同一に設定されている。
【0028】
図3に示すように、円管状部15bの上流側端部(筒体16のガス導入路15側の端部は、インレット管20に接続されている。筒体16の反ガス導入路15側(プラズマ処理空間14に近い側、下流側)の端部は、アウトレット管30に接続されている。
【0029】
障害部15dは、円管状部15bと円柱状部15cとの間に配置されている。障害部15dは、円柱状部15cから径方向に延びる突起部からなる。軸方向に並ぶ複数の仮想円周上にそれぞれ二以上の障害部15dが配置されている。これら複数の仮想円周上に配置された障害部15dは、前述の螺旋流の巻き方向と逆方向に巻いた螺旋状に分布している。
【0030】
円柱状部15cは、
図3、
図4に示すように、複数段(図示例では2段)に嵌合、組立自在な短い円柱片15hを嵌合して1つの円柱状部15cを形成し、それぞれの円柱片15hにはその外周に所定の角度ピッチで二以上の障害部15dが円柱片15hから径方向に突出するよう設けられている(図示例では障害部15dが1つの円柱片15hに7個)。
【0031】
障害部15dの断面は三角形状になっている。障害部15dは、その断面三角形状の一辺を径方向に向け、残り二斜辺が交差する稜線を軸方向上流側に向けた姿勢で円管状部15bの近傍まで延びている。障害部15dの形状は、ガイドベーン部15aによる被処理ガスの螺旋流が障害部15dにぶつかることによって後流に渦を発生させることが可能なものであればよく、図示例以外にも四角形、五角形・・・多角形、円形、楕円形など種々の断面形状のものを使用できる。
【0032】
ガイドベーン部15aの円錐状体15eの下流側端は、円柱状部15cの上流側端に同一径で接続されている。円柱状部15cと円錐状体15eのそれぞれの中心には貫通孔が形成されており、その貫通孔にねじ棒を挿通し、下流端側をナットで締結することにより円柱状部15cとガイドベーン部15aが一体に組立てられる。軸状電極12を成す軸体に形成された雌ねじ部に前述のねじ棒の先端部をねじ込むことにより、ガイドベーン部15a及び円柱状部15cが筒体16及び円管状部15bと同軸状になるように固定されている。
【0033】
各円柱片15hの中心に設けたボス部とその裏側に設けた凹部、及び円柱片15hの一端面に設けた小突起(
図4例では60度ピッチで6個)と、これに対応して他端面に設けた小孔(小突起と同数)とにより嵌合、組立てできるように形成されている。複数段の円柱片15hを組立てる際には、互いに隣り合う二個の円柱片15hのうち、一方の円柱片15hのボス部を他方の円柱片15hの凹部に対応させ、かつ一方の円柱片15hの小突起を他方の円柱片15hの小孔に周方向の配置ピッチを合せて圧入嵌合し、同様な嵌合を隣接する各円柱片15h間でそれぞれ実施すると円柱状部15cが形成される。
【0034】
円柱片15hに形成されている二以上の障害部15dと互いの嵌合のための小突起と小孔の配置については、各円柱片15hにおいて同じである。例えば、小突起、小孔と障害部15dを軸線回りの角度で基準となる0度位置に置き、他の小突起、小孔を60度ピッチで配置し、障害部15dについては51.43度のピッチで同じ回転方向に配置されている。そして、このような形状で複数の円柱片15hの全てを同じ配置構成で形成したから、円柱片15hのそれぞれを互いに嵌合させ、組立てる際に、全ての円柱片15hの障害部15dを互いに角度位置がずれた位置として組立てられる。このような角度位置関係とするためには、上記以外にも例えば障害部の数を11、13又は17のような素数とし、円柱片の段数をその素数より1つ少ない数とすれば、ある仮想円周上の障害部と、他の仮想円周上の障害部の位相をずらすことができる。すなわち、複数の仮想円周上に配置された障害部15dを軸方向に向かって周方向に旋回する螺旋状に分布させることができる。
【0035】
その障害部15dの螺旋状分布における螺旋巻き方向は、右回り及び左回りのいずれにも設定可能である。
図3に示すように、ガイドベーン部15aの曲面ガイド板15gが右ねじの進む方向の螺旋状の板面を有する場合、障害部15dの螺旋状分布における螺旋巻き方向を左向きにすることにより、ガイドベーン部15aによる被処理ガスの螺旋流が円柱状部15cに分布する各障害部15dとぶつかり易くなる。
【0036】
なお、複数段の円柱片15hを円柱状部15cに組立てる際に、障害部15dの配置パターンを種々の形態に変更可能であり、例えば、障害部が右ねじの進む方向に螺旋状をなす分布パターン、右ねじの進む方向の螺旋状から左ねじの進む方向の螺旋状に変化する分布パターン等に組み立てることができる。いずれの分布パターンであっても、軸方向に隣り合う二つの仮想円周上の障害部15dのうち、一方の仮想円周上の障害部15dの位相と他方の仮想円周上の障害部15dの位相がずれるので、被処理ガスの螺旋流を効率よく障害部15dに衝突させるのに有利となる。
【0037】
また、障害部15dは円柱状部にもたせる必要はなく、例えば、円管状部の内周にもたせてもよく、この場合、円柱状部全体を一体に形成し、円管状部を複数のパイプに分割し、これらを小突起と小孔により嵌合して円管状部に組み立てるようにしてもよい。
【0038】
また、障害部15dを径方向に真っすぐ延びる棒状にする必要はなく、例えば、障害部の径方向一端の角度位置に対して当該障害部の径方向他端の角度位置をずらした斜め方向に向けて延びる棒状にしてもよい。
【0039】
円柱片15h、障害部15d、ガイドベーン部15aは、例えば、硬質の合成樹脂、ステンレス鋼等で形成される。
【0040】
図2に示すように、被処理ガスをインレット管20からガス導入路15に供給するためのブロワー40は、処理ユニット部10に対して下流側に設けてもよいし、被処理ガスが発生する実験設備やクリーンルームと処理ユニット部10の間(処理ユニット部10に対して上流側)に設けてもよい。このようなプラズマ処理装置は、どのような場面で使用されるか想定ができず、被処理物質の中には強酸性のものや強アルカリ性のものが含まれている可能性がある。被処理ガスがブロワーのインペラーなどに衝突することを考慮すると、プラズマ処理済みの被処理ガスを排出するアウトレット管30にブロワー40を設けることが好ましい。
【0041】
被処理ガスは、被処理ガスの発生源に連通するインレット管20を流れ、このインレット管20から分岐する各ガス導入路15に流入し、
図3に示すガイドベーン部15aと円管状部15b間を通過する際、軸方向に下流側に向かって一方向に旋回する螺旋状の流れ(螺旋流)に変わり、円管状部15bと円柱状部15cの間の環状空間で障害部15dにぶつかることで後流渦を含む螺旋流に変わってから、プラズマ処理空間14の上流(ガス導入路15)側の端に流入し、プラズマ処理空間14を軸方向に下流側に向かって一方向に旋回する螺旋流の状態で通過し、
図1に示すプラズマ処理空間14の下流側の端から
図2に示すアウトレット管30に流出する。アウトレット管30を流れるプラズマ処理済みの被処理ガスは、やがて外部に排出される。
【0042】
特に、
図1に示すガス導入路15を通過する際の被処理ガスの流れは、
図4に示す垂直ガイド板15fで複数列の流れに分割されて曲面ガイド板15gの位置へと進み、この曲面ガイド板15gとその中心部の円錐状体15eの外周とにより径方向へ少しずつ拡がりながらねじられて、前述の螺旋流となる(
図3中に矢線で概念的に示す)。このとき、被処理ガスの流速が大きい場合は軸方向の速度成分の影響が強いため、螺旋流となってもそのねじれ率が小さくなる。被処理ガスの流速が小さい場合、軸方向の速度成分の影響よりも曲面ガイド板15gに沿って流れる捩じれ方向の速度成分の影響が強くなり、ねじれ率が大きくなる。被処理ガスの螺旋流が、円管状部15bと円柱状部15cとの間の環状空間内を進む際、多数の障害部15dに衝突して、その後流に渦(後流渦)を生じる(図中に渦巻き線で示す)。
【0043】
ここで、被処理ガスの螺旋流の螺旋巻き方向は、軸方向に下流側に向って右回り(右ねじが進む方向)であるのに対し、複数の仮想円周上に配置された障害部15d・・・のうち互いに接近して配置された障害部15d,15dの先端を通るように想像線で結んだ螺旋曲線が左回り(左ねじの進む方向)の螺旋状に分布しているため、螺旋流が多数の障害部と衝突する確率が高く、後流渦を効率よく螺旋流に発生させることができる。
【0044】
なお、円柱状部15cを省いたガス導入路とした場合、障害部を円管状部側に設けることで後流渦を発生させることは可能であるが、円柱状部15cが存在する場合、被処理ガスの螺旋流が中心側へ拡散せず、比較的流速の高い状態で螺旋流を障害部15dに衝突させることになり、効率よく後流渦を発生させることができる。
【0045】
被処理ガスの流速は、図示例の場合、後流渦を含む螺旋流をガス導入路15で生成することができるように調節すればよく、そのためのブロワー40の送風能力については、被処理ガスの量や処理ユニット部10の本数などに応じて適宜調節すればよい。好ましくは、被処理ガスの流速として、被処理ガスがガイドベーン部15aを流出してから、プラズマ処理空間14から流出するまでの間、軸方向に下流側に向かって一方向に旋回する螺旋流の状態を維持することができ、かつ障害部15dに後流渦としてカルマン渦を生じる速度に設定することが好ましい。後流渦としてカルマン渦が発生すると、渦列として多数の渦をプラズマ処理空間14に流入させることができる。このため、被処理ガス中の被処理物質がプラズマによる作用を受ける確率がより高められる。
【0046】
プラズマ処理空間14の軸方向の長さLは、被処理ガスの螺旋流の移動距離を長くするため、1000mm以上にすることが好ましい。
【0047】
図1〜
図4に示すこのプラズマ処理装置は、上述のようなものであり、筒状電極11と、筒状電極11の内側に同軸状に配置された軸状電極12と、筒状電極11と軸状電極12とで形成されたプラズマ処理空間14に連通するガス導入路15と、を備え、ガス導入路15が、プラズマ処理空間14に向かう被処理ガスの流れを螺旋流に変えるガイドベーン部15aと、このガイドベーン部15aとプラズマ処理空間14との間で前記螺旋流に後流渦を発生させる障害部15dと、を有し、その後流渦を含む螺旋流がプラズマ処理空間14のガス導入路15側に流入し、プラズマ処理空間14の反ガス導入路15側から被処理ガスが流出するように設けられていることにより、その後流渦中の被処理物質については、渦で流れる分、プラズマ処理空間14を長く流れることになり、プラズマによる作用を受ける確率が高まる。そのための障害部15dは、ガス導入路15に配置されるので、プラズマ処理空間14でのプラズマ生成自体に悪影響を及ぼさない。
【0048】
したがって、このプラズマ処理装置は、筒状電極11と軸状電極12間のプラズマ処理空間14に被処理ガスを螺旋流化して流入させることで被処理ガス中の被処理物質を分解する処理性能を向上させ、その螺旋流中に後流渦を発生させることで処理性能の更なる向上を図ることができる。
【0049】
また、このプラズマ処理装置は、軸方向に並ぶ複数の仮想円周上にそれぞれ二以上の障害部15dが配置されており、複数の仮想円周上に配置された障害部15d,15d・・・が、螺旋流の巻き方向と逆方向に巻いた螺旋状に分布していることにより、被処理ガスの螺旋流の巻き方向と同じ巻き方向の螺旋状に障害部15d,15d・・・が分布している場合に比して、螺旋流が多数の障害部15dにぶつかり易くなるので、多くの後流渦を発生させることができる。
【0050】
また、このプラズマ処理装置は、ガス導入路15が、筒状電極11に軸方向に連続する円管状部15bと、ガイドベーン部15aと軸状電極12の間で円管状部15bの内側に同軸状に配置された円柱状部15cと、を有し、障害部15dが、円管状部15bと円柱状部15cとの間に配置されていることにより、比較的圧力の高い状態で螺旋流を多数の障害部15dに衝突させて効率よく後流渦を発生させることができる。
【0051】
また、このプラズマ処理装置は、筒状電極11と軸状電極12の間に印加される電圧が、これら両電極11,12間で火花放電を発生させない電圧に設定されていることにより、プラズマ処理空間14の広い範囲で後流渦を含む螺旋流として流れる被処理ガス中の電子を筒状電極11と軸状電極12の間に生じる電界で励起してプラズマを発生させることができるため、大量に被処理ガスを処理するのに好適である。
【0052】
また、このプラズマ処理装置は、インレット管20と、アウトレット管30と、をさらに備え、プラズマ処理空間14とガス導入路15が連通する処理ユニット部10として、インレット管20とアウトレット管30の間に二以上の処理ユニット部10が配置されていることにより、被処理ガスがインレット管20からアウトレット管30まで流れる間に二か所以上において処理性能を更に向上させたプラズマ処理を行えるので、被処理ガスの大量処理や被処理物質の高削減率を達成するのに好適である。なお、インレット管とアウトレット管との間に二以上の処理ユニット部10を直列に組み込んでもよい。
【0053】
図1〜
図4に示すプラズマ処理装置を用いて様々な被処理ガスを処理した実験結果を実施例として示す。以下の各実施例において、個々の処理ユニット部10の寸法は、筒状電極11の内径を108mm、軸状電極12の外径を25mm、筒状電極11と軸状電極12が径方向に対向するプラズマ処理空間14の軸方向の長さを1000mmとしている。また、処理ユニット部10の並列数は、12本である。また、ブロワー40の送風能力は、12本の処理ユニット部10全体に対して1.0m
3/分である。電源の消費電力は40Wであり、電源回路において23000Vに昇圧して筒状電極11と軸状電極12に印加している。
【0054】
インレット管20の全処理ユニット部10よりも上流側の位置で被処理ガス中の被処理物質濃度(ppm)を測定し(原臭濃度)、アウトレット管30の全処理ユニット部10よりも下流側の位置でプラズマ処理済みの被処理ガス(処理済みガス)中の被処理物質濃度(ppm)を測定した(残留濃度)。なお、被処理ガスの種類に応じて、異なる実験設備や異なる検出装置を使用した。
【0055】
また、各実施例につき、比較例として、
図1〜
図4に示すプラズマ処理装置から全ての障害部15d及び円柱状部15cを省略し、ガイドベーン部15aを軸状電極12にねじ止めしたもので同様の実験を行った。
【実施例1】
【0056】
実施例1及び比較例1における被処理対象物質は、硫化ジメチル((CH
3)
2S)である。
【0057】
実施例1及び比較例1では、気温13℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に2分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を3度繰り返した後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例1及び比較例1の各3回の実験結果を表1に示す。
【0058】
【表1】
【実施例2】
【0059】
実施例2及び比較例2における被処理対象物質は、アセトアルデヒド(CH
3CHO)である。
【0060】
実施例2及び比較例2では、気温13℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に3分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を1度行った後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例2及び比較例2の各3回の実験結果を表2に示す。
【0061】
【表2】
【実施例3】
【0062】
実施例3及び比較例3における被処理対象物質は、酢酸エチルエーテル(CH
3COOC
2H
5)である。
【0063】
実施例3及び比較例3では、気温13℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に3分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を2度繰り返した後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例3及び比較例3の各3回の実験結果を表3に示す。
【0064】
【表3】
【実施例4】
【0065】
実施例4及び比較例4における被処理対象物質は、イソプロピルアルコール(C
3H
7OH)である。
【0066】
実施例4及び比較例4では、気温13℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に1.5分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を1度行った後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例4及び比較例4の各3回の実験結果を表4に示す。
【0067】
【表4】
【実施例5】
【0068】
実施例5及び比較例5における被処理対象物質は、トルエン(C
6H
5CH
3)である。
【0069】
実施例5及び比較例5では、気温13℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に1.5分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を2度繰り返した後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例5及び比較例5の各3回の実験結果を表5に示す。
【0070】
【表5】
【実施例6】
【0071】
実施例6及び比較例6における被処理対象物質は、アンモニア(CH
3)である。
【0072】
実施例6及び比較例6では、気温12℃、被処理ガス及び処理済みガスをそれぞれ検出装置に3分間導入した後にその被処理ガス及び処理済みガスを排出する工程を2度繰り返した後、それぞれの検出装置に被処理ガス及び処理済みガスを再度導入することを1回として、3回の測定を行った。実施例6及び比較例6の各3回の実験結果を表6に示す。
【0073】
【表6】
【0074】
上述の実施例1〜6の実験結果から、このプラズマ処理装置によれば、螺旋流化のみの比較例に比して、硫化ジメチル、アセトアルデヒド、酢酸エチルエーテル、イソプロピルアルコール、トルエン等の様々な被処理物質を一層除去できることが示された。
【0075】
なお、今回開示された実施形態及び実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。したがって、本発明の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。