【解決手段】(メタ)アクリル樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを含有し、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計含有量100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂の含有量が5〜40質量部であり、ポリカーボネート樹脂の含有量が60〜95質量部である樹脂組成物を、式(1)の条件で射出成形する工程を含む、成形体の製造方法である。Tg
前記式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルが、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸フェニルまたはメタクリル酸ナフチルである、請求項2に記載の成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施形態の成形品の製造方法は、
(メタ)アクリル樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを含有し、
(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計含有量100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂の含有量が5〜40質量部であり、ポリカーボネート樹脂の含有量が60〜95質量部である特定の樹脂組成物を、特定の条件で、射出成形する工程を含む。
まず、(メタ)アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂について説明する。
【0015】
[ポリカーボネート樹脂]
本明細書において、「ポリカーボネート樹脂」とは、ジヒドロキシ化合物に由来する構造単位を含むポリカーボネート樹脂である。ポリカーボネート樹脂としては、例えば、二価フェノール又はイソソルバイドなどのジヒドロキシ化合物とカルボニル化剤とを界面重縮合法又は溶融エステル交換法などで反応させることにより得られたもの;カーボネートプレポリマーを固相エステル交換法などで重合させることにより得られたもの;および、環状カーボネート化合物を開環重合法で重合させることにより得られたものが挙げられる。ポリカーボネート樹脂は、芳香族ポリカーボネート樹脂であることが好ましい。
【0016】
二価フェノールとしては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4'−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、9,9−ビス(4−ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4'−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4'−ジヒドロキシジフェニルエーテル、及び4,4'−ジヒドロキシジフェニルエステルが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
これらの二価フェノールの中でも、ビスフェノールA、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、及びα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンが好ましい。特に、ビスフェノールAの単独使用や、ビスフェノールAと、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、及びα,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンからなる群より選択される少なくとも1種との併用が好ましい。
【0018】
カルボニル化剤としては、例えばカルボニルハライド(ホスゲンなど)、カーボネートエステル(ジフェニルカーボネートなど)、及びハロホルメート(二価フェノールのジハロホルメートなど)が挙げられる。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0019】
ポリカーボネート樹脂は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の質量平均分子量が10,000〜50,000であることが好ましい。なお、このような芳香族ポリカーボネート樹脂を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
【0020】
ポリカーボネート樹脂は、300℃、1.2kg荷重で測定したメルトボリュームフローレート(MVR)が、2〜280cm
3/10分であることが好ましく、2〜100cm
3/10分であることが好ましい。MVRがこのような範囲であるポリカーボネート樹脂は、流動性に優れ、メタクリル樹脂と混合するときに溶融混練しやすい。また、MVRがこのような範囲であるポリカーボネート樹脂を用いると、本実施形態の成形体は機械的強度に優れる。
【0021】
[(メタ)アクリル樹脂]
本明細書において、用語「(メタ)アクリル樹脂」は、アクリル樹脂およびメタクリル樹脂を包含する。
アクリル樹脂は、アクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位を含む重合体であり、アクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位が、全ての単量体単位の50モル%を超える重合体である。
メタクリル樹脂は、メタクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位を有する重合体であり、メタクリル基を有するモノマーに由来する単量体単位が、全ての単量体単位の50モル%以上である重合体である。
【0022】
[アクリル樹脂]
アクリル系樹脂としては、例えば、アクリル酸、アクリル酸エステル、アクリロニトリル等のアクリル系モノマーの単独重合体または2種以上の共重合体、アクリル系モノマーとその他のモノマーとの共重合体などが挙げられる。
【0023】
[メタクリル樹脂]
メタクリル樹脂の質量平均分子量は、10,000〜30,000であることが好ましい。本明細書において、メタクリル樹脂に関する「分子量」、「質量平均分子量」、「数平均分子量」および「分子量分布指数」は、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定される、標準ポリメタクリル酸メチル(PMMA)換算分子量を意味する。
【0024】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位を主成分とする単独重合体または共重合体である。メタクリル樹脂は、透明性および耐候性が良好となるため、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位を55質量%以上含むことが好ましく、60質量%以上含むことがより好ましく、65質量%以上含むことが更に好ましい。メタクリル酸メチルは、市販品をそのまま用いてもよいし、従来公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0025】
メタクリル樹脂がメタクリル酸メチルに由来する単量体単位を主成分とする共重合体である場合、他の単量体単位としては、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位が挙げられる。メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量は、0.1質量%以上であることが好ましく、0.1〜45質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0026】
メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位としては、エステルを構成するアルコール残基が炭化水素環構造を有する基が挙げられ、具体的には、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位が挙げられる。
【0027】
【化2】
(式中、
R
1は、水素原子またはメチル基を表す。
R
2は、炭化水素環構造を有する基を表す。)
【0028】
メタクリル樹脂が、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位と、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位とを含むことで、ポリカーボネート樹脂との相溶性が改善される。
【0029】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、市販品をそのまま用いてもよいし、従来公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0030】
R
1はメチル基であることが好ましい。
【0031】
R
2の炭化水素環構造を有する基は、シクロアルキル基で置換されたアルキル基、シクロアルキル基、アルキル基で置換されたシクロアルキル基、フェニル基で置換されたアルキル基、フェニル基、アルキル基で置換されたフェニル基、ナフチル基で置換されたアルキル基、ナフチル基、アルキル基で置換されたナフチル基、ジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基を表すことが好ましい。
【0032】
R
2がシクロアルキル基で置換されたアルキル基、フェニル基で置換されたアルキル基またはナフチル基で置換されたアルキル基である場合、それぞれのアルキル基の炭素数は1〜4であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0033】
R
2がシクロアルキル基で置換されたアルキル基である場合、シクロアルキル基の炭素数は5〜12であってもよい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基が挙げられる。R
2で表されるシクロアルキル基で置換されたアルキル基として、例えば、少なくとも1つの水素原子が上記の炭素数5〜12のシクロアルキル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0034】
R
2で表されるフェニル基で置換されたアルキル基として、例えば、少なくとも1つの水素原子がフェニル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、より具体的には、ベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
【0035】
R
2で表されるナフチル基で置換されたアルキル基として、例えば、少なくとも1つの水素原子がナフチル基で置換されたメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられ、より具体的には、1−ナフチルメチル基、2−ナフチルメチル基、1−ナフチルエチル基、2−ナフチルエチル基が挙げられる。
【0036】
R
2がシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基の炭素数は5〜12であってもよい。このようなシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基が挙げられる。これらのシクロアルキル基は、必要に応じて、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0037】
R
2がアルキル基で置換されたシクロアルキル基である場合、シクロアルキル基の炭素数は5〜12であってもよい。このようなシクロアルキル基としては、上記と同じものが挙げられる。シクロアルキル基の置換基であるアルキル基は、炭素数1〜4であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。R
2で表されるアルキル基で置換されたシクロアルキル基としては、例えば、少なくとも1つの水素原子が上記炭素数1〜4のアルキル基で置換されたシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基が挙げられる。
【0038】
R
2がアルキルで置換されたフェニル基またはアルキル基で置換されたナフチル基である場合、フェニル基またはナフチル基に結合するアルキル基は、炭素数1〜4であってもよい。このようなアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0039】
R
2で表されるアルキル基で置換されたフェニル基としては、より具体的には、o−トリル基、m−トリル基、p−トリル基が挙げられる。R
2で表されるアルキル基で置換されたナフチル基としては、より具体的には、メチルナフチル基、エチルナフチル基が挙げられる。
【0040】
R
2がフェニル基またはナフチル基である場合、フェニル基およびナフチル基は、必要に応じて、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等の置換基を有していてもよい。
【0041】
R
2がジシクロペンタニル基またはジシクロペンテニル基である場合、これらの基は、必要に応じて、アルキル基、水酸基、アミノ基、スルホン酸基等の置換基を有していてみもよい。置換基であるアルキル基の炭素数は、1〜4であってもよい。置換基であるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基が挙げられる。
【0042】
R
2は、好ましくは、シクロアルキル基、ベンジル基、ジシクロペンタニル基、フェニル基またはナフチル基であり、より好ましくは、シクロヘキシル基、フェニル基またはナフチル基であり、さらに好ましくは、シクロヘキシル基またはフェニル基である。
【0043】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルの好ましい具体例としては、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ナフチルが挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸フェニルまたはメタクリル酸ナフチルが好ましく、メタクリル酸シクロヘキシルまたはメタクリル酸フェニルがより好ましい。
【0044】
式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
メタクリル酸メチルと、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させる場合、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量は、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを2種以上併用する場合、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の合計含有量が、10〜40質量%であることが好ましく、15〜35質量%であることがより好ましい。
【0046】
更に、メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル以外の(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位(式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルも除く)を含むことができる。(メタ)アクリル酸エステル(メタクリル酸メチルと式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く)の好ましい一形態として、(メタ)アクリル酸アルキルが挙げられる。(メタ)アクリル酸アルキルは、市販品をそのまま用いてもよいし、従来公知の方法に従って合成したものを用いてもよい。
【0047】
(メタ)アクリル酸アルキルは、メタクリル酸メチルと共重合可能なものであれば特に制限されないが、例えば、アルキル部位の炭素数が1〜12のアクリル酸アルキル、アルキル部位の炭素数が2〜12のメタクリル酸アルキルが挙げられる。アルキル部位は、直鎖状でも分岐状でもよい。
【0048】
(メタ)アクリル酸アルキルの具体的としては、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜4のアルキル部位を有する(メタ)アクリル酸アルキルが好ましく、炭素数1〜3のアルキル部位を有する(メタ)アクリル酸アルキルがより好ましく、アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチルまたは(メタ)アクリル酸ブチルがさらに好ましく、アクリル酸メチル、アクリル酸エチルまたはアクリル酸ブチルが特に好ましい。これらの(メタ)アクリル酸アルキルは、それぞれ単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0049】
メタクリル酸メチルと、(メタ)アクリル酸アルキル(メタクリル酸メチルと式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く)とを共重合させる場合、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位の含有量は、0.1〜45質量%であることが好ましく、0.1〜35質量%であることが好ましく、0.1〜30質量%であることが好ましく、0.1〜25質量%であることが好ましく、0.1〜15質量%であることがより好ましく、0.1〜5質量%であることがさらに好ましく、0.1〜1質量%であることが特に好ましく、0.4〜0.8質量%であることが特に好ましい。
【0050】
メタクリル酸メチルと、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルと、(メタ)アクリル酸アルキル(メタクリル酸メチルと式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く)とを共重合させてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルは、アクリル酸メチルであることが好ましい。この場合、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が55質量%以上であり、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量が10〜40質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位が0.1〜35質量%であることが好ましく、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が60質量%以上であり、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量が10〜35質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位が0.1〜30質量%であることがより好ましく、メタクリル酸メチルに由来する単量体単位の含有量が65質量%以上であり、式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルに由来する単量体単位の含有量が15〜30質量%であり、(メタ)アクリル酸アルキルに由来する単量体単位が0.1〜25質量%であることがさらに好ましい。
【0051】
メタクリル樹脂は、メタクリル酸メチル、式(I)で示される(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリル酸アルキル(メタクリル酸メチルと式(I)で表される(メタ)アクリル酸エステルを除く)以外の単量体に基づく単量体単位を含んでいてもよい。
【0052】
単量体を重合するときの重合方法に制限はなく、例えば、塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の重合法を採用することができる。重合には通常、ラジカル重合開始剤が用いられ、好ましくはラジカル重合開始剤に加えて連鎖移動剤も用いられる。
【0053】
ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ化合物、ラウロイルパーオキサイド、1,1−ジ(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等の有機過酸化物が好ましく用いられる。重合開始剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。重合開始剤の使用量は、単量体の種類やその割合などに応じて、適宜決定すればよい。
【0054】
連鎖移動剤としては、例えば、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、2−エチルヘキシルチオグリコレート等のメルカプタン類が好ましく用いられる。連鎖移動剤は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。連鎖移動剤の使用量は、単量体の種類やその割合などに応じて、適宜決定すればよい。
【0055】
単量体を重合するときの重合温度、重合時間等は、単量体の種類、単量体の割合などに応じて適宜設定すればよく、特に限定されない。
【0056】
メタクリル樹脂の質量平均分子量は、10,000〜30,000であることが好ましく、10,000〜20,000であることがより好ましい。このようなメタクリル樹脂は、流動性に優れ、ポリカーボネート樹脂と混合した場合に溶融混練が容易である。また、このようなメタクリル樹脂は加工性に優れており、このようなメタクリル樹脂を用いた成形体は透明性に優れる。
【0057】
質量平均分子量が異なるメタクリル樹脂を2種以上併用してもよい。2種以上のメタクリル樹脂を混合する方法は特に制限されるものでなく、例えば、溶融混練法、溶媒混練法、ドライブレンド法等を採用することができるが、生産性の面からは、溶融混練法またはドライブレンド法が好ましく用いられる。2種以上のメタクリル樹脂の混合には、通常の混合器または混練機を用いることができ、具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー等を用いることができる。2種以上のメタクリル樹脂の混合は、個別に行ってもよいし、ポリカーボネート樹脂との混合の際に同時に行ってもよい。
【0058】
質量平均分子量が異なるメタクリル樹脂は、単量体単位の組成が異なっていてもよい。
【0059】
[樹脂組成物]
樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを含有し、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計含有量100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂の含有量が5〜40質量部であり、ポリカーボネート樹脂の含有量が60〜95質量部である。(メタ)アクリル樹脂の含有量が20〜40質量部であり、ポリカーボネート樹脂の含有量が60〜80質量部であることが好ましい。(メタ)アクリル樹脂の含有量が40質量部を超えると、樹脂組成物を射出成形して得られる成形体の耐衝撃性が低下する。
【0060】
樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の他に、紫外線吸収剤、酸化防止剤、相溶化剤、安定剤、着色剤、発泡剤、滑剤、離型剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤等の添加剤を含有していてもよい。また、樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の他に、熱可塑性樹脂を含有していてもよい。添加剤および熱可塑性樹脂は、(メタ)アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂混合物の溶融混練時に加えてもよいし、溶融混練前に加えてもよいし、溶融混練後に加えてもよい。添加剤または熱可塑性樹脂を混合する場合、樹脂組成物の総量100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計含有量が、70〜99.995質量部となるようにすることが好ましい。
【0061】
紫外線吸収剤としては、例えば、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−エトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−プロポキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−6−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2,4,6−トリス(2−ヒドロキシ−4−ヘキシルオキシ−3−メチル)−1,3,5−トリアジンが挙げられる。
【0063】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクチルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクタデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノンが挙げられる。
【0064】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−〔2−ヒドロキシ−3−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5−メチルフェニル〕ベンゾトリアゾール、2,2′−メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕、2−(2−ヒドロキシ−3−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−アミルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが挙げられる。
【0065】
ベンゾエート系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジ−tert−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、2,6−ジ−tert−ブチルフェニル 3’,5’−ジ−tert−ブチル−4’−ヒドロキシベンゾエート、n−ヘキサデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート、n−オクタデシル 3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエートが挙げられる。
【0066】
シアノアクリレート系紫外線吸収剤の具体例としては、2’−エチルヘキシル 2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル 2−シアノ−3−(3,4−メチレンジオキシフェニル)アクリレートが挙げられる。
【0067】
これら紫外線吸収剤の多くは市販されており、ケミプロ化成(株)から販売されているトリアジン系紫外線吸収剤である“KEMISORB 102”、(株)ADEKAから販売されているトリアジン系紫外線吸収剤である“アデカスタブ LA-F70”、(株)ADEKAから販売されているベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤である“アデカスタブ LA-31”等の分子量が比較的大きいものが好ましい。
【0068】
紫外線吸収剤の分子量(混合物またはオリゴマーであれば、質量平均分子量)は、500〜1,000の範囲が好ましく、550〜700の範囲がより好ましい。紫外線吸収剤の分子量が小さいと、成形中に揮発しやすく、一方で紫外線吸収剤の分子量が大きいと、(メタ)アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂との相溶性が低下しやすくなる。
【0069】
酸化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤が挙げられる。これらの酸化防止剤は、(メタ)アクリル樹脂またはポリカーボネート樹脂の熱安定化剤としても機能する。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0070】
ヒンダードフェノール系酸化防止剤は各種のものが市販されており、市販品の例を挙げると、BASF社から販売されている“IRGANOX 1010”、“IRGANOX 1035”、“IRGANOX 1076”及び“IRGANOX 1222”、住友化学(株)から販売されている“スミライザー GM”、“スミライザー GS”及び“スミライザー GA80”、(株)ADEKAから販売されている“アデカスタブ AO-70”及び“アデカスタブ AO-80”などがある。
【0071】
リン系酸化防止剤の具体例を挙げると、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、2−〔{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル}オキシ〕−N,N−ビス〔2−[{2,4,8,10−テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル}オキシ]−エチル〕エタナミン、ジフェニルトリデシルフォスファイト、トリフェニルフォスファイト、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリストールジホスファイトなどがある。これらの中でも、2,2′−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが好ましい。
【0072】
イオウ系酸化防止剤の具体例を挙げると、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィド、ジ−n−プロピルジスルフィド、ジ−n−ブチルジスルフィド、ジ− sec−ブチルジスルフィド、ジ−tert−ブチルジスルフィド、ジ−tert−アミルジスルフィド、ジシクロヘキシルジスルフィド、ジ−tert−オクチルジスルフィド、ジ−n−ドデシルジスルフィド、ジ−tert−ドデシルジスルフィドなどがある。これらの中でも、ジ−tert−アルキルジスルフィドが好ましく、さらに好ましくはジ−tert−ドデシルジスルフィドである。
【0073】
以上説明した酸化防止剤のほか、ゴム用の老化防止剤として知られる芳香族アミン系化合物も、メタクリル樹脂又は樹脂組成物に対する熱安定化剤として用いることができる。芳香族アミン系熱安定化剤(老化防止剤)の具体例を挙げると、N,N′−ジフェニル−p−フェニレンジアミン、N−フェニル−N′−イソプロピル−p−フェニレンジアミン、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンの重合物などがある。これらはそれぞれ、住友化学(株)から“ANTIGENE P”、“ANTIGENE 3C”、“ANTIGENE FR”の商品名で販売されている。
【0074】
樹脂組成物のガラス転移温度(Tg
resin、℃)は、好ましくは100〜150℃であり、より好ましくは110〜150℃である。
【0075】
樹脂組成物は、樹脂の相分離が開始し白濁する温度(曇点)が、好ましくは280℃以上であり、より好ましくは300℃以上である。
【0076】
樹脂組成物は、230℃、剪断速度100sec
−1時の粘度値が、5000Pa・s以下であることが好ましく、250℃、剪断速度100sec
−1時の粘度値が、3000Pa・s以下であることが好ましく、270℃、剪断速度100sec
−1時の粘度値が、1000Pa・s以下であることが好ましい。
【0077】
[樹脂組成物の製造方法]
樹脂組成物は、(メタ)アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂混合物を溶融混錬することにより、製造することができる。溶融混練は、通常、180〜320℃、好ましくは200〜300℃の温度条件下、通常10〜200sec
-1の剪断速度、好ましくは30〜150sec
-1の剪断速度で行われる。
【0078】
(メタ)アクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含む樹脂混合物の溶融混練には、通常の混合機や混練機として知られる機器を用いることができる。具体的には、一軸混練押出機、二軸混練押出機、リボンブレンダー、ヘンシェルミキサー、バンバリーミキサー、ドラムタンブラー等が挙げられる。これらの中でも、二軸混練押出機が好ましい。また、溶融混練は、必要に応じて、窒素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガスなどの不活性ガスの雰囲気下で行うことができる。
【0079】
[成形体]
本実施形態の成形体は、(メタ)アクリル樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを含有し、(メタ)アクリル樹脂およびポリカーボネート樹脂の合計含有量100質量部に対して、(メタ)アクリル樹脂の含有量が5〜40質量部であり、ポリカーボネート樹脂の含有量が60〜95質量部である樹脂組成物を、下記式(1)を満たす特定の条件で、射出成形する工程を含むものである。
Tg
resin+30 ≧ T
mold ≧ Tg
resin−15
(式中、T
moldは、射出された樹脂組成物と接触する金型の温度(℃)を表す。Tg
resinは、樹脂組成物のガラス転移温度(℃)を表す。)
【0080】
本発明の1の実施形態の製造方法は、射出成形を使用し、それを、
図1を参照して説明する。射出成形機(1)は、樹脂組成物のペレット(4)を供給するためのホッパー(2)、樹脂のペレット(4)を溶融するシリンダー(6)を有する。シリンダー(6)の先端は、金型(11)に接続されている。金型(11)は、その内部に、樹脂が充填されて成形品を得る空間を有する。樹脂のペレット(4)がペレット(2)から供給される。シリンダー(6)でペレット(4)は溶融されて、シリンダーの先から、金型(11)に樹脂(4)が供給(又は射出)される。金型(11)の中は樹脂(4)で満たされて、成形品が製造される。本発明の実施形態の製造方法は、例えば、シリンダー(6)から金型(11)に樹脂を供給する際に、樹脂組成物のTgと金型(11)の温度が、式(1)を満たす特定の条件のもとで、射出成形する工程を含む。
【0081】
射出成形する工程において、射出する射出温度は、230℃〜300℃であることが好ましい。また、金型温度は、80℃以上が好ましく、さらに100℃以上が好ましく、さらには120℃以上が好ましい。
【0082】
金型温度が100℃以上である場合、射出成形する工程は、ヒートアンドクール成形が好ましい。ヒートアンドクール成形とは、予め金型表面を加熱した金型内へ、溶融した樹脂組成物を射出した後、金型を冷却して成形品を取り出す製法をいう。
図1を参照してヒートアンドクール成形を説明すると、例えば、予め金型(11)を加熱後、シリンダー(6)から、その加熱した金型(11)に樹脂組成物を供給する。その後、金型(11)を冷却して、成形品を取り出す。特に薄肉成形体やウェルド部を有する成形体を製造する場合に好ましく使用され、高外観の射出成形体をより容易に得ることができる。加熱時の金型温度は100〜180℃、冷却時は50℃〜80℃が好ましい。
【0083】
本発明の実施形態において、ヒートアンドクール成形を行う場合、予め加熱した金型の温度(T
mold(H)ともいう)が、上述の式(1)を満たすことが好ましい。即ち、Tg
resin+30 ≧ T
mold(H) ≧ Tg
resin−15 であることが好ましく、成形品を取り出す際の冷却された金型の温度(T
mold(C))は、式(1)を必ずしも満たす必要はない。
【0084】
射出速度は、10mm/s〜300mm/sであることが好ましく、10mm/s〜100mm/sであることがより好ましく、10mm/s〜50mm/sであることがさらに好ましい。
【0085】
体積流量は、20cm
3〜600cm
3であることが好ましく、20cm
3〜200cm
3であることがより好ましく、20cm
3〜100cm
3であることがさらに好ましい。
【0086】
射出圧力は、100MPa〜300MPaであることが好ましい。
【0087】
保持圧力は、50MPa〜200MPaが好ましい。
【0088】
本実施形態の成形体は、電子光学材料(レンズ、光ディスク基板、導光板などの材料)、カバー材料(ディスプレイ等のカバーなどの材料)、医療品・化粧品容器用材料、樹脂グレージング材料等として有用である。
【実施例】
【0089】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例に限定されるものではない。例中、使用量ないし含有量を表す部、%およびppmは、特記ない限り質量基準である。また、樹脂組成物および成形体の各種物性測定および評価の方法は、次のとおりである。
【0090】
[メタクリル樹脂の分子量]
メタクリル樹脂の分子量は、ゲル浸透クロマトグラフ〔東ソー(株)製の“HLC-8320GPC EcoSEC”〕を用いて求めた。測定条件は、移動相としてテトラヒドロフランを流量0.350mL/分で40℃に保持したカラムに流通させて行い、RI(示差屈折率)検出器により検出して、クロマトグラムを得た。カラムは、いずれも東ソー(株)製の“TSKgel SuperMultipore HZ-M”2本と“TSKgel SuperHZ2500”1本とを直列に接続して使用した。分子量の定量には、昭和電工(株)製の標準PMMA“STANDARD M-75”の一式を用いて検量線を作製し、クロマトグラムの値と検量線に基づいて分子量を算出した。
【0091】
[樹脂組成物の曇点]
メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを混合して製造された樹脂組成物を90℃で12時間乾燥した後、プレス成形機〔(株)神藤金属工業所製の“シントー式ASF型油圧プレス”〕を用いて220℃のプレス温度でプレス成形を行い、厚みが3mmの成形片を少なくとも5つ得た。次いで得られた成形片を、再度同じプレス成形機を用いて、280℃、290℃、300℃、310℃および320℃のプレス温度でそれぞれプレス成形を行い、厚みが2mmで40mm角の各試験片を得た。得られた各試験片について外観を目視で評価し、白濁が無くて透明な試験片が得られたプレス温度のうち、最も高いプレス温度を、当該樹脂組成物の曇点とした。
【0092】
[樹脂組成物のガラス転移温度]
メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを混合して製造された樹脂組成物のガラス転移温度(Tg
resin、℃)を、JIS−K7121に準拠して測定した。測定には、示差走査熱量計((株)日立ハイテクサイエンス製「DSC7020」)を窒素ガス流量50mL/分の条件下で用いた。まず、20℃/分で室温(23℃)から150℃まで昇温(1次昇温)し、150℃で5分間保持して、樹脂組成物を完全に融解させた後、10℃/分で150℃から−35℃まで降温して−35℃で1分間保持し、更に、210℃まで10℃/分で再び昇温(2次昇温)した。この間に描かれるDSC曲線のうち、2次昇温時の階段状変化部分曲線と各ベースライン延長線から縦軸方向に等距離にある直線との交点(中間点ガラス転移温度)をガラス転移温度(Tmg)(℃)として測定した。1つの樹脂組成物当たり2回測定を行い、2回の値の算術平均(小数点以下四捨五入)を測定値とした。
【0093】
[成形体の外観]
成形体の外観は、目視で評価した。表2において、成形体の白濁面積がほとんどみられないものを「◎」と表示し、薄く確認できるものを「〇」と表示し、著しく白濁するものを「×」と表示した。
【0094】
[合成例]:メタクリル樹脂(A−1)の製造
内容積200リットルの反応器に、イオン交換水95.4kg、懸濁安定剤としてポリ
メタクリル酸ナトリウム(1%水溶液粘度が30ストークス)48g、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(信越化学(株)製の「メトローズ90SH」)を7.7g、りん酸二水素ナトリウム(無水)230g、りん酸二水素ナトリウム(七水和物)269gからなる水相を仕込んだ後、メタクリル酸メチル44.7kg(73質量%)、メタクリル酸シクロヘキシル13.4kg(22質量%)、メタクリル酸フェニル2.6kg(4質量%)、アクリル酸メチル320g(0.5質量%)、ラウロイルパーオキサイド448g、n−オクチルメルカプタン2.56kgからなる油相を仕込んだ。そして、250rpmで攪拌しながら、83℃に昇温して、1.5時間保持し、その後、室温まで冷却した。得られたスラリーを、水の入ったタンクに注入→分離→水の入ったタンクに注入→分離遠心分離機にて固液分離し、固体として粒状ビーズを回収した。回収した粒状ビーズを大型バットへ入れ、これにイオン交換水4800gを投入後、5分間攪拌した後、再度遠心分離機にて固液分離し粒状ビーズを回収する一連の洗浄操作を3回繰り返した。洗浄後の粒状ビーズを60℃設定の真空乾燥機内で減圧乾燥し、メタクリル樹脂(A−1)を得た。重量平均分子量は、1.2万であった。
【0095】
ポリカーボネート樹脂(B−1)
ポリカーボネート樹脂(B−1)として、住化ポリカーボネート株式会社から販売されている“SD Polyca 301-10”、メルトボリュームフローレートMVR=10g/10分〕を用いた。
【0096】
[製造例1〜2]:メタクリル樹脂とポリカーボネート樹脂とを含有する樹脂組成物
メタクリル樹脂と、ポリカーボネート樹脂とを、表1の組成比に従い、二軸混練機(商品名「TEX−30」、株式会社日本製鋼所製)を用いて、回転数150rpm(剪断速度122sec-1)、250℃にて溶融混練した。溶融混錬した後、得られた溶融物をストランド状に押出し、冷却し、ストランドカッターで切断することにより、ペレット状の樹脂組成物を作製した。
【0097】
【表1】
【0098】
[実施例1〜4及び比較例1]
以下の条件にて、ヒートアンドクール成形を実施し、得られた成形体の外観を評価した。
装置:NADEM2800II-DM((株)名機製作所製)
金型:248mm×198mm×3mm
射出温度:230℃、250℃
射出圧力:200MPa
回転数:100rpm
保持圧力:130MPa
金型温度(高温、射出時):80℃、120℃、140℃
金型温度(低温、取出時):80℃
【0099】
【表2】
【0100】
表1で得られた製造例1〜2の樹脂組成物は、表2に示すような実施例1〜8において、金型温度を特定温度範囲にすることで、白濁を抑制できたことがわかる。
例えば、実施例8の成形体を
図2(A)に示し、比較例1の成形体を
図2(B)に示した。実施例8の成形体は、成形体の全面に渡って白濁がほとんど見られないのに対し、比較例1の成形体は、成形体の左側と右側に大きく白濁していることがわかる。実施例の製造方法を用いると、より広い面積で透明性に優れる、ポリカーボネート樹脂と(メタ)アクリル樹脂を含む成形体を、より容易に製造することができることが明らかになった。