【実施例】
【0014】
この発明の一実施例を以下図面に基づいて詳述する。
図面は車両の前部車体構造を示し、
図1は当該車両の前部車体構造を示す斜視図、
図2は
図1から一部の部材(シュラウドメンバ、支持部材、足払いバー、タワーバーなど)を取外した状態で示す斜視図である。
【0015】
また、
図3は
図2で示した前部車体構造の平面図、
図4は
図2で示した前部車体構造の底面図、
図5は
図2で示した前部車体構造を車幅方向外側から見た状態で示す側面図、
図6は
図2で示した前部車体構造を車幅方向内側から見た状態で示す側面図である。
なお、図中、矢印Fは車両前方を示し、矢印Rは車両後方を示し、矢印INは車幅方向の内方を示し、矢印OUTは車幅方向の外方を示し、矢印UPは車両上方を示す。
【0016】
図2、
図3に示すように、エンジンルームと車室とを車両前後方向に仕切るダッシュパネル1(詳しくは、ダッシュロアパネル)を設け、このダッシュパネル1の車幅方向中央にはトンネル部2を形成すると共に、ダッシュパネル1の上端部にはカウル部3を配置している。
図2、
図3に示すように、上述のダッシュパネル1の上部前側には車幅方向に延びるダッシュパネル補強部材4を連結固定している。
【0017】
図2に示すように、上述のダッシュパネル1の車幅方向左右両端部には、上部にジャンクション部材5を備えたヒンジピラー6が立設固定されている。該ヒンジピラー6はアルミ合金製の押出し部材にて閉断面構造に形成されている。
図2に示すように、上述のヒンジピラー6の前部には、タイヤストッパ7が連結固定されている。このタイヤストッパ7は、車両のオフセット衝突時に、後退する前輪を受け止めるメンバである。
【0018】
また上述のタイヤストッパ7は、ヒンジピラー6の前部から車両前方に延びるアルミ押出し材から形成された角パイプ8(中空部材)と、当該角パイプ8の前端に取付けられた前部プレート9と、上記角パイプ8の外側部に取付けられた側部プレート10と、を備えている。
図2に示すように、上述のタイヤストッパ7の車幅方向内側とダッシュパネル1の前部との間にはジャンクション部材11が連結固定されている。
【0019】
図3、
図4に示すように、トンネル部2の下部には左右一対の下部トンネルフレーム12,12が設けられており、
図2、
図3に示すように、トンネル部2の上部には、車両平面視でV字状に組合わされた上部トンネルフレーム13が設けられている。なお、
図3、
図4において、14はトンネルパネルである。
【0020】
図2に示すように、上述のヒンジピラー6の下端部には、車両前後方向に延びるサイドシルロア15が設けられており、ヒンジピラー6の車幅方向外側下部には、車両前後方向に延びるサイドシルアッパ16が設けられている。そして、上述のサイドシルロア15とサイドシルアッパ16との両者によりサイドシル17が構成されている。
上述のサイドシルロア15およびサイドシルアッパ16は、何れもアルミ合金製の押出し部材にて形成されている。
【0021】
図4に示すように、上述のサイドシルロア15の前端部と下部トンネルフレーム12の前端部とは、車幅方向に延びるトルクボックス18で連結されている。
図3、
図4に示すように、車室内に位置するトンネル部2と、サイドシル17の車両前後方向中間部との間には、車幅方向に延びるフロアクロスメンバ19,19が設けられている。このフロアクロスメンバ19とフロアパネルとの間には、車幅方向に延びる閉断面が形成されている。
そして、上述のダッシュパネル1、ヒンジピラー6、サイドシル17、トルクボックス18等の各要素により車室構成部材20を構成している(
図3、
図4参照)。
【0022】
図2、
図5、
図6に示すように、ダッシュパネル1の前方におけるエンジンルームの左右両サイドには、サスペンションハウジング30(以下、単に、サスハウジング30と略記する)を設けている。このサスハウジング30はアルミダイカスト製である。アルミダイカストは周知のように、金型を用いて、アルミ合金の溶融金属を鋳造する方式である。
【0023】
左右一対のサスハウジング30における前側上部相互間は、
図6に示すように、車幅方向に延びる上部クロスメンバ31で連結されている。また左右一対のサスハウジング30における前側下部相互間は、
図6に示すように、車幅方向に延びる下部クロスメンバ32で連結されている。ここで、上述の上部クロスメンバ31および下部クロスメンバ32は、閉断面構造に形成された角パイプに構成されている。
さらに、上述のサスハウジング30と車室構成部材20(各要素、1、6、17、18参照)との間は、複数のフレーム21〜25により連結されている。このフレーム21〜25による連結構造については後述する。
【0024】
図2に示すように、左右一対のサスハウジング30の前面部には、セットプレート33(
図5、
図6参照)を介して、衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス40が締結固定されている。
このクラッシュボックス40は、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastic、いわゆるFRP)により形成されている。上述のクラッシュボックス40の後方基端部に一体形成されたフランジ部40aが、ボルト、ナット等の締結部材を用いて、セットプレート33およびサスハウジング30に共締め固定されている。
【0025】
図2〜
図4に示すように、上述の左右一対のクラッシュボックス40,40の前端部相互間には、アルミ合金製の押出し部材から成るバンパレインフォースメント41が取付けられている。上述のバンパレインフォースメント41は、車両デザインの関係上、押出し成形後において湾曲形状に曲げ加工されたものである。
上述のバンパレインフォースメント41のクラッシュボックス40と対応する位置には、アルミ合金製のバンパステイ42を設け、クラッシュボックス40前端をバンパステイ42に締結固定している。
【0026】
また、
図4に示すように、バンパステイ42を補強するアルミ合金製のバンパステイ補強部材43を設けている。このバンパステイ補強部材43とバンパレインフォースメント41とがクラッシュボックス40に対応する位置には凹形状の切欠き部41a,43aをそれぞれ形成し、クラッシュボックス40先端をバンパステイ42に締結固定すると共に、バンパレインフォースメント41とバンパステイ補強部材43とバンパステイ42とは、相互にMIG溶接手段にて接合固定されている。
【0027】
MIG溶接(MIG welding)は、周知のように、イナートガスアーク溶接法の一種で、不活性なアルゴンやヘリウムなどのイナートガスをシールドガスとして使用し、ワイヤ状の消耗電極を用いる溶極式の溶接である。
【0028】
図5、
図6に示すように、上述のサスハウジング30は、上辺部30aと、下辺部30bと、前辺部30cと、後辺部30dとを有すると共に、これら各辺30a〜30dで囲繞された開口部30eを備えている。
上述の開口部30eを利用して、図示しないステアリングラックシャフトを挿通配置するように構成している。
【0029】
また、
図5に示すように、上述のサスハウジング30は、上辺部30aの前後方向中間部にサスペンションダンパ支持部34(以下、単にダンパ支持部34と略記する)が、上辺部30a前側および後側にアッパアーム支持部35が、下辺部30b前側および後側にロアアーム支持部36が、それぞれ形成されている。
【0030】
そして、上述のダンパ支持部34には、サスペンションダンパ95(
図9、
図10参照)の上端部が支持され、アッパアーム支持部35には、アッパアーム93(
図9、
図10参照)の車体側枢支部が支持され、ロアアーム支持部36には、ロアアーム94(
図9、
図10参照)の車体側枢支部が支持されるように構成している。
【0031】
上述のサスハウジング30は、複数のフレーム21〜25(詳しくは、アルミ合金製の押出し部材によるフレーム部材)を用いて、車室構成部材20に連結されているので、次に、各フレーム21〜25によるサスハウジング30の連結構造について説明する。
【0032】
図2、
図6に示すように、サスハウジング30の上側部とダッシュパネル1の車幅方向内側上部とは、ダッシュパネル補強部材4およびブラケット27を介して、上部内側フレーム21で連結されている。上述のダッシュパネル補強部材4は締結部材を用いてダッシュパネル1の上部前面に締結固定されており、ブラケット27も別の締結部材を用いてダッシュパネル補強部材4の前部に締結固定されている。
【0033】
また、上部内側フレーム21の前端部とサスハウジング30とは、
図6に示すように、MIG溶接にて接合固定されており、上部内側フレーム21の後端部とブラケット27とは、同様に、MIG溶接にて接合固定されている。
【0034】
図3、
図6に示すように、サスハウジング30の上側部とヒンジピラー6の前側部とは、ジャンクション部材11を介して上部外側フレーム22で連結されている。ジャンクション部材11はタイヤストッパ7の車幅方向内側部とダッシュパネル1の前面部とに連結されている。
【0035】
また、上部外側フレーム22の前端部とサスハウジング30とは、
図6に示すように、MIG溶接にて接合固定されており、上部外側フレーム22の後端部とジャンクション部材11とは、同様に、MIG溶接にて接合固定されている。
【0036】
図4、
図6に示すように、サスハウジング30の下側部とダッシュパネル1の車幅方向内側下部とは、トルクボックス18およびブラケット50を介して下部内側フレーム23で連結されている。ブラケット50は締結部材を用いてトルクボックス18に締結固定されている。
また、下部内側フレーム23の前端部とサスハウジング30とは、
図6に示すように、MIG溶接にて接合固定されており、下部内側フレーム23の後端部とブラケット50とは、同様に、MIG溶接にて接合固定されている。
【0037】
図4、
図5に示すように、サスハウジング30の下側部とヒンジピラー6の下側部とは、サイドシルロア15、トルクボックス18およびブラケット51を介して下部外側フレーム24で連結されている。ブラケット51は締結部材を用いてトルクボックス18に締結固定されている。
また、下部外側フレーム24の前端部とサスハウジング30とは、
図5に示すように、MIG溶接にて接合固定されており、下部外側フレーム24の後端部とブラケット51とは、同様に、MIG溶接にて接合固定されている。
【0038】
この構成により、サスハウジング30の上側部においては、各要素21,22,1、すなわち、上部内側フレーム21と上部外側フレーム22とヒンジピラー6を含むダッシュパネル1とで、車両平面視でトラス構造が形成される(
図3参照)。サスハウジング30の下側部においては、各要素23,24,1、すなわち、下部内側フレーム23と下部外側フレーム24とヒンジピラー6を含むダッシュパネル1とで、車両平面視でトラス構造が形成される(
図4参照)。
【0039】
要するに、サスハウジング30を、少なくとも4本のフレーム21〜24(この実施例では、片側5本のフレーム21〜25)にて車体に連結し、当該サスハウジング30と車体部材との間にトラス構造を形成することで、サスハウジング30を高剛性にて支持し、効果的な荷重伝達を行なうように構成したものである。
【0040】
図2、
図3に示すように、上述のサスハウジング30の上端とヒンジピラー6の上端とは、ジャンクション部材5を介して上端外側フレーム25で連結されている。ジャンクション部材5はヒンジピラー6の上端に連結固定されている。
【0041】
また、上端外側フレーム25の前端部とサスハウジング30とは、
図3に示すように、MIG溶接にて接合固定されている。上端外側フレーム25の後端部とジャンクション部材5とは、同様に、MIG溶接にて接合固定されている。これにより、上述の上端外側フレーム25にてサスハウジング30の支持剛性のさらなる向上を図るように構成している。
図2に示すように、上述の上端外側フレーム25は、車幅方向の外側に膨出する湾曲形状に形成されている。ここで、上述の各フレーム21〜25はアルミ合金製の押出し部材にて角パイプ状(中空形状)に形成されたものである。
【0042】
加えて、
図5に示すように、上端外側フレーム25の前側下面部と、タイヤストッパ7の前面部とを円弧状に連結する補強フレーム26を設けている。この補強フレーム26の前端部と上端外側フレーム25の前側下面部とはMIG溶接により連結固定されており、同様に、補強フレーム26の後端部とタイヤストッパ7前面側の前部プレート9とはMIG溶接により連結固定されている。
【0043】
さらに、
図1に示すように、上部外側フレーム22と下部外側フレーム24との間を、鉛直方向に連結するアルミ合金製の連結部材28を備えている。これにより、上部外側フレーム22と下部外側フレーム24とを鉛直方向に剛性高く連結し、車体の捩れを抑制して、車両の挙動の応答性向上を図るように構成している。
上述の連結部材28の上下両端部は、
図1に示すように、上部外側フレーム22と下部外側フレーム24とにMIG溶接によりそれぞれ接合固定されたものである。
【0044】
図7は
図1の要部拡大斜視図、
図8は
図7の側面図(詳しくは、車両左側外方から見た状態で示す側面図)、
図9はフロントサスペンションを車幅方向外側かつ後部上方から見た状態で示す斜視図、
図10はフロントサスペンションを車幅方向外側かつ車両前方から見た状態で示す斜視図である。
【0045】
図1、
図7、
図8に示すように、上述のバンパレインフォースメント41の後方で、かつ上記クラッシュボックス40の車幅方向外側には左右一対のシュラウドサイドメンバ60が設けられている。
上述のシュラウドサイドメンバ60は、クラッシュボックス40の外側近傍において上下方向に延びるインナ部材61と、車幅方向外方において上下方向に延びるアウタ部材62と、上方において車幅方向に延びるアッパ部材63と、下方において車幅方向に延びるロア部材64と、を略方形枠状に組合せて構成したものである。
【0046】
上述のシュラウドサイドメンバ60を構成する各部材61〜64は、アルミ合金製の押出し部材により角パイプ形状(内部中空形状)に形成されており、各部材61〜64間をMIG溶接により接合することで、略方形枠状に組合せたものである。
【0047】
一方、
図8に示すように、サスハウジング30の上辺部30a前側には、締結部材52を用いてジャンクション部材53を取付けている。
そして、
図1、
図8に示すように、シュラウドサイドメンバ60におけるインナ部材61の上部背面と、上述のジャンクション部材53と、の間を、車両前後方向に延びる支持部材65で連結している。
【0048】
また、
図1、
図8に示すように、上述のインナ部材61の下部背面と、サスハウジング30の下辺部30b前面と、の間を車両前後方向に延びる支持部材66で連結している。なお、サスハウジング30の下辺部30b前面と、支持部材66の後端部との間には、プレート54(
図8参照)が介設されている。
【0049】
図1、
図7、
図8に示すように、上述のシュラウドサイドメンバ60におけるアッパ部材63の車幅方向外側背面と、支持部材65の後部における車幅方向外側面と、の間を、後方かつ車幅方向内側に向けて傾斜状に延びる支持部材67(いわゆるスラント部材)で連結している。
【0050】
図1、
図7に示すように、上述のインナ部材61の下部前面部には、プレート部材68を介して車両前方に延びる支持部材69が取付けられており、左右一対の支持部材69,69の前端部相互間には、車幅方向に延びる足払い部材としての足払いバー70が横架されている。
【0051】
図1、
図7に示すように、上述の足払いバー70はバンパレインフォースメント41の下方に位置するものである。また、当該足払いバー70は、前側に位置する足払いバー本体71と、後側に位置するクロージングプレート72とを接合固定して構成したものである。
【0052】
図8に示すように、シュラウドサイドメンバ60におけるインナ部材61の上部前面の上下両部には、締結部材を用いて、上部ブラケット73および下部ブラケット74を上下方向に対向させて取付けており、これら上下の各ブラケット73,74には、車幅方向に延びるシュラウドアッパメンバ75を取付けている。
図1、
図8に示すように、当該シュラウドアッパメンバ75は、上述のバンパレインフォースメント41の上方かつ後方に位置するものである。
【0053】
図1、
図8に示すように、上述のバンパレインフォースメント41は左右一対の連結ブラケット76,76を介して、足払いバー70に連結されている。この実施例では、上述の連結ブラケット76の上端部は、バンパステイ補強部材43を介してバンパレインフォースメント41に連結されており、連結ブラケット76の下端部は、足払いバー70のクロージングプレート72背面に連結されている。
【0054】
また、
図1、
図8に示すように、上述のバンパレインフォースメント41は複数の連結ブラケット77を介して、シュラウドアッパメンバ75に連結されている。これらの各連結ブラケット77は、車幅方向に離間して設けられている。また、上記連結ブラケット77の上端部は、シュラウドアッパメンバ75の下面部に連結されており、連結ブラケット77の下端部は、バンパレインフォースメント41の背面部に連結されている。
【0055】
しかも、
図7、
図8に示すように、シュラウドサイドメンバ60におけるインナ部材61の車幅方向外側面部と、バンパレインフォースメント41の車幅方向外側部とは、連結部材80にて連結されている。
この連結部材80の前部とバンパレインフォースメント41の車幅方向外側部とは、溶接または締結部材を用いて連結することができ、連結部材80の後部とインナ部材61とは、ボルト、ナット等の締結部材を用いて連結することができる。
【0056】
このように、上述の連結部材80をクラッシュボックス40に直接接続することなく、当該連結部材80がシュラウドサイドメンバ60(詳しくは、インナ部材61)とバンパレインフォースメント41とを連結することで、クラッシュボックス40による衝撃吸収機能を確保するように構成したものである。さらに、当該連結部材80にて、バンパ機構(バンパレインフォースメント41、バンパステイ42、バンパステイ補強部材43参照)と車体(サスハウジング30参照)との共振を抑制すべく構成したものである。
【0057】
また、連結ブラケット76(
図1、
図8参照)にてバンパレインフォースメント41と足払いバー70とを連結することで、当該足払いバー70を含むバンパ機構(各要素41、42、43参照)と車体(サスハウジング30)との共振を抑制すべく構成している。
【0058】
さらに、連結ブラケット77(
図1、
図8参照)にてバンパレインフォースメント41とシュラウドアッパメンバ75とを連結することで、当該シュラウドアッパメンバ75を含むバンパ機構(各要素41、42、43参照)と車体(サスハウジング30参照)との共振を抑制すべく構成している。
【0059】
図7、
図8に示すように、上述の連結部材80の上下両部には上下のフランジ部80a,80bが一体的に屈曲形成されている。上側のフランジ部80aは連結部材80の上端から車幅方向外側に延びた後に、上方に延びており、同様に、下側のフランジ部80bは連結部材80の下端から車幅方向外側に延びた後に、下方に延びている。
上述の上下の各フランジ部80a,80bにより連結部材80の高剛性化を図り、これにより、共振抑制機能の向上を図るように構成したものである。
【0060】
図7、
図8に示すように、上述の連結部材80は、上下方向に延びる高剛性化の複数のビード部80c,80dを備えている。当該ビード部80c,80dにより連結部材80の上下方向の剛性を高め、これにより、共振抑制機能のさらなる向上を図るように構成している。
【0061】
図7、
図8に示すように、上述の連結部材80は、その前後方向の剛性を低下させるビード部80c,80dを備えている。すなわち、該連結部材80の車両前後方向中間部は車両平面視において上述のビード部80c,80dを含んでジグザグ形状に形成されており、これにより、上下方向の剛性を高める一方で、前後方向の剛性を低下させている。
【0062】
このように構成することで、車両前突時において連結部材80が前突荷重を受けて潰れやすくなり、当該連結部材80およびクラッシュボックス40の潰れが阻害されることなく、クラッシュボックス40にて前突荷重の円滑なエネルギ吸収を図るように構成している。
【0063】
ところで、
図1に示すように、この実施例の車両の前部車体構造は、車両右側のサスハウジング30の上辺部30aと、ダッシュパネル1におけるトンネル部2よりも上方かつ車幅方向左側の部位と、を連結する一方のタワーバー81を設けている。
また、車両左側のサスハウジング30の上辺部30aと、ダッシュパネル1におけるトンネル部2よりも上方かつ車幅方向右側の部位と、を連結する他方のタワーバー82を設けている。
【0064】
図1に示すように、一方のタワーバー81の後端部は、車幅方向左側に位置するブラケット27と、当該部位のダッシュパネル補強部材4と、を介してダッシュパネル1に連結されている。他方のタワーバー82の後端部は、車幅方向右側に位置するブラケット27と、当該部位のダッシュパネル補強部材4と、を介してダッシュパネル1に連結されている。
そして、これらの各タワーバー81,82を、車両平面視でX形状に組合わせている。さらに、これら各タワーバー81,82の前端部同士を車幅方向に延びて連結する前端連結部83を備えている。
【0065】
ここで、上述の各タワーバー81,82および前端連結部83は、炭素繊維強化プラスチック(Carbon Fiber−Glass Reinforced Plastics、いわゆるCFRP)により一体かつ内部中空に形成されている。
【0066】
図9、
図10に示すように、フロントサスペンション90は、フロントホイールハブ91と、ナックル92と、アッパアーム93と、ロアアーム94と、サスペンションダンパ95と、を備えている。
アッパアーム93の前後一対の車体側枢支部93aは取付けボス93b,93bを備えている。ロアアーム94の前後一対の車体側枢支部94aも取付けボス94b,94bを備えている。また、サスペンションダンパ95上端の車体側枢支部95aも取付けボス95b,95bを備えている。
【0067】
さらに、
図9、
図10に示すように、ロアアーム94側の前後一対の車体側枢支部94a,94aのうちの車両後側の車体側枢支部94aの近傍と、アッパアーム93側の前後一対の車体側枢支部93a,93aのうちの車両前側の車体側枢支部93aの近傍と、に跨がって、連結ロッド96が設けられている。
この連結ロッド96は、制動時(つまり、ブレーキング時)のアッパアーム93およびロアアーム94の前後方向の相互逆方向変位を抑制するためのものである。
【0068】
そして、
図9、
図10で示したサスペンションダンパ95の車体側枢支部95aにおける取付けボス95b,95bは、
図5で示したサスハウジング30のダンパ支持部34に取付けられる。
また、アッパアーム93側の前後一対の車体側枢支部93a,93aにおける取付けボス93b,93bは、アッパアーム支持部35に取付けられる(
図5、
図9、
図10参照)。
同様に、ロアアーム94側の前後一対の車体側枢支部94a,94aにおける取付けボス94b,94bは、ロアアーム支持部36に取付けられる(
図5、
図9、
図10参照)。
【0069】
図11は
図1で示した前部車体構造を車幅方向外側から見た状態で示す側面図、
図12は
図11の要部の外方斜視図、
図13はサスハウジング30周辺構造を車幅方向内側から見た状態で示す斜視図である。
図14は車両左側のサスハウジング30を車幅方向外側から見た状態で示す側面図、
図15は車両左側のサスハウジング30を車幅方向内側から見た状態で示す側面図、
図16はディンプル加工部を示す断面図である。
【0070】
図5、
図11に示すように、サスハウジング30における2つ1組の車両前側のアッパアーム支持部35および2つ1組の車両後側のアッパアーム支持部35のうち車両前側に位置するアッパアーム支持部35の直前部には、上述の衝撃吸収部材としてのクラッシュボックス40が取付けられている。
【0071】
図14、
図15に示すように、サスハウジング30における2つ1組の車両前側のロアアーム支持部36および2つ1組の車両後側のロアアーム支持部36のうち車両前側に位置するロアアーム支持部36の直上部かつ直前部には、スタビライザブラケット97を介してスタビライザ98が取付けられている。
【0072】
スタビライザ98は左右一対のスタビライザブラケット97を介して左右一対のサスハウジング30,30に支持されて車幅方向に延びており、このスタビライザ98の車幅方向左右両端部は、図示しないコントロールリンクを介してロアアーム94(
図9、
図10参照)の遊端側に連結固定されている。当該スタビライザ98は、周知のように、左右のフロントサスペンション90の上下回動のばらつきを抑制する、ねじり棒ばねである。
【0073】
図6、
図13で示した上部クロスメンバ31は、車両前側のアッパアーム支持部35と重複してサスハウジング30の車幅方向内側相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面部材である。
また、
図6、
図13で示した下部クロスメンバ32は、車両前側のロアアーム支持部36と重複してサスハウジング30の車幅方向内側相互間を、車幅方向に延びて連結する閉断面部材である。
【0074】
そして、
図5、
図6、
図14に示すように、前面にクラッシュボックス40が支持され、車幅方向内側上部に上部クロスメンバ31が設けられ、車幅方向外側に車両前側のアッパアーム支持部35が設けられるサスハウジング30の所定部位の板厚t(
図16参照)を、他の部位の板厚に対して厚くした厚板部30Aを設けている。
【0075】
同様に、
図5、
図6、
図14に示すように、前面にスタビライザ98が支持され、車幅方向内側下部に下部クロスメンバ32が設けられ、車幅方向外側下部に車両前側のロアアーム支持部36が設けられるサスハウジング30の所定部位の板厚t(
図16参照)を、他の部位の板厚に対して厚くした厚板部30Bを設けている。
但し、この実施例では、上記厚板部30Bは、下部クロスメンバ32およびロアアーム支持部36が設けられる部位の直上部、すなわち、近傍部に設定されている。
【0076】
図14で示した上側の厚板部30Aの前面、および、同図に示す下側の厚板部30Bの全面には、複数のディンプル加工部37,37…が形成されている(
図16参照)。
実際には、微細なディンプル加工部37が縦横に配列されて多数形成されるが、図面では、図示の便宜上、縦横のラインにより格子形状を施して示している。上述のディンプル加工部37の形成により、上下両側の厚板部30A,30Bには車幅方向内方へ凹む凹部(
図16参照)が形成され、厚板部30A,30Bの表面積が拡大される。
この表面積の拡大により、冷却性の向上を図り、凝固収縮に伴う引け巣の発生を抑制するものである。
【0077】
上記上側の厚板部30Aとディンプル加工部37とにより、次の如き作用、効果を奏するように構成したものである。
すなわち、クラッシュボックス40からの荷重が入力され、かつ、上部クロスメンバ31を支持する部位に応力がかかり、さらに、アッパアーム93により充分な補強スペースが確保できないサスハウジング30の所定部位を、上述の厚板部30Aにて補強し、加えて、上記ディンプル加工部37による冷却性向上にて、鋳造品に生ずる穴状欠陥としての巣の発生を抑制して、サスハウジング30の強度を安定して確保すべく構成したものである。
【0078】
同様に、上記下側の厚板部30Bとディンプル加工部37とにより、次の如き作用、効果を奏するように構成したものである。
すなわち、スタビライザ98やロアアーム94からの荷重が入力され、かつ、下部クロスメンバ32を支持する部位からの応力によって荷重が集中するサスハウジング30の所定部位を、厚板部30Bにて補強し、加えて、ディンプル加工部37による冷却性向上にて、鋳造品に生ずる穴状欠陥としての巣の発生を抑制して、サスハウジング30の強度を安定して確保すべく構成したものである。
【0079】
また、
図2、
図5、
図6、
図8、
図11〜
図15に示すように、上述のサスハウジング30には、その中間部に、車幅方向へ貫通する開口部30eが形成されている。これにより、当該開口部30eに対して、図示しないステアリングラックシャフトを挿通配置するように構成している。
【0080】
図14、
図15に示すように、上述の上側の厚板部30Aには、当該厚板部30Aの車幅方向内外の両面部にディンプル加工部37が形成されている。
すなわち、上側の厚板部30Aの車幅方向外面においては、
図14に示すように当該厚板部30Aの全面にディンプル加工部37が形成されており、当該厚板部30Aの車幅方向内面においては、
図15に示すように、当該厚板部30Aの前側領域αにディンプル加工部37が形成されている。
【0081】
このように、上側の厚板部30Aの内外両面部にディンプル加工部37を形成することで、冷却性がさらに向上し、巣(穴状欠陥)の発生をより一層抑制して、サスハウジング30のさらなる強度向上を図るように構成したものである。
【0082】
同様に、
図14、
図15に示すように、上述の下側の厚板部30Bには、当該厚板部30Bの車幅方向内外の両面部にディンプル加工部37が形成されている。
すなわち、下側の厚板部30Bの車幅方向外面においては、
図14に示すように当該厚板部30Bの全面にディンプル加工部37が形成されており、該厚板部30Bの車幅方向内面においては、
図15に示すように、当該厚板部30Bの前側領域βにディンプル加工部37が形成されている。
【0083】
このように、下側の厚板部30Bの内外両面部にディンプル加工部37を形成することで、冷却性がさらに向上し、巣(穴状欠陥)の発生をより一層抑制して、サスハウジング30のさらなる強度向上を図るように構成したものである。
【0084】
図12、
図14に示すように、サスハウジング30の車幅方向外側面のうちディンプル加工部37が形成されていない部分、すなわち、厚板部30A以外の部分には諸種の方向に指向する複数の補強リブ30f…が一体形成されている。またサスハウジング30の車幅方向外側面のうちディンプル加工部37が形成された部分、すなわち、厚板部30Aの部分にも複数の補強リブ30g…が一体形成されている。
【0085】
図15に示すように、サスハウジング30の車幅方向内側面にも、諸種の方向に指向する複数の補強リブ30h…が一体形成されている。
上述の各補強リブ30f,30g,30hのうち、ディンプル加工部37が形成された部分、特に、サスハウジング30の車幅方向外側面における上側の厚板部30Aの領域内に位置する部分の補強リブ30gの高さは、
図12に示すように厚板部30Aの領域外に位置する補強リブ30fの高さに対して、低く設定されている。
【0086】
上記上側の厚板部30Aには車両前側のアッパアーム支持部35が設けられており、このアッパアーム支持部35にはアッパアーム93が支持される。当該アッパアーム93が支持される部位は、その車体側枢支部93aの形状により本来補強リブによる補強が比較的困難であるが、この部位を、高さが相対的に低い補強リブ30gと、厚板部30Aとで補強するように構成したものである。
【0087】
図9、
図10で示したように、フロントサスペンション90は、
図14に示すアッパアーム支持部35に枢支されるアッパアーム93と、ロアアーム支持部36に枢支されるロアアーム94とを備えている。さらに、上記アッパアーム93の前側の車体側枢支部93a近傍とロアアーム94の後側の車体側枢支部94a近傍との間に跨って連結ロッド96が設けられている。
【0088】
上述の連結ロッド96を設けることで、前後一対のアッパアーム支持部35,35のうちの車両前後方向の前側に位置するアッパアーム支持部35に対する入力荷重が大きくなるが、上述の上側の厚板部30Aにより支持剛性を確保すべく構成したものである。
【0089】
なお、
図12、
図13において、54はプレート(サスペンションクロスメンバと同意)、
図1、
図12、
図13において、55は当該プレート54または下部クロスメンバ32と、サスハウジング30とを傾斜方向に連結する傾斜フレーム、
図13において、56はアンダカバーである。
【0090】
このように、上記実施例の車両の前部車体構造は、サスペンションダンパ支持部(ダンパ支持部34)と、アッパアーム支持部35と、ロアアーム支持部36とが形成される鋳造品から成るサスペンションハウジング(サスハウジング30)を備えた車両の前部車体構造であって、上記サスペンションハウジングは、スタビライザ98を前面に支持すると共に車幅方向内側下部にクロスメンバ(下部クロスメンバ32)が、車幅方向外側下部に上記ロアアーム支持部36がそれぞれ設けられる部位の板厚tを、他の部位よりも厚くした厚板部30Bを有しており、上記厚板部30Bにはディンプル加工部37が形成されたものである(
図9、
図13、
図14、
図16参照)。
【0091】
この構成によれば、スタビライザ98やロアアーム94からの荷重が入力され、クロスメンバ支持部(下部クロスメンバ32を支持する部位)からの応力によって荷重が集中するサスペンションハウジング(サスハウジング30)の所定部位を、上記厚板部30Bにて補強することができると共に、上述のディンプル加工部37による冷却性向上にて、鋳造品に生ずる穴状欠陥としての巣の発生を抑制して構造体(サスペンションハウジング)の強度を安定して確保することができる。
【0092】
また、この発明の一実施形態においては、上記サスペンションハウジング(サスハウジング30)はその中間部に開口部30eが形成されたものである(
図14参照)。
この構成によれば、上述の開口部30eに対してステアリングラックシャフトを挿通配置することができる。
【0093】
さらに、この発明の一実施形態においては、上記厚板部30Bには当該厚板部30Bの車幅方向内外の両面部に上記ディンプル加工部が形成されたものである(
図14、
図15参照)。
この構成によれば、上述の両面部にディンプル加工部37を形成することで、冷却性がさらに向上し、巣の発生をより一層抑制することができるので、サスペンションハウジング(サスハウジング30)のさらなる強度向上を図ることができる。
【0094】
この発明の構成と、上述の実施例との対応において、
この発明のサスペンションダンパ支持部は、実施例のダンパ支持部34に対応し、
以下同様に、
サスペンションハウジングは、サスハウジング30に対応し、
クロスメンバは、下部クロスメンバ32に対応するも、
この発明は、上述の実施例の構成のみに限定されるものではない。