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特開2021-127480スパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-127480(P2021-127480A)
(43)【公開日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20210806BHJP
   C04B 35/50 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
   C23C14/34 A
   C04B35/50
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2020-21735(P2020-21735)
(22)【出願日】2020年2月12日
(71)【出願人】
【識別番号】591124765
【氏名又は名称】ジオマテック株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】593163449
【氏名又は名称】株式会社豊島製作所
(71)【出願人】
【識別番号】518019651
【氏名又は名称】株式会社表面・界面工房
(74)【代理人】
【識別番号】100088580
【弁理士】
【氏名又は名称】秋山 敦
(74)【代理人】
【識別番号】100195453
【弁理士】
【氏名又は名称】福士 智恵子
(74)【代理人】
【識別番号】100205501
【弁理士】
【氏名又は名称】角渕 由英
(72)【発明者】
【氏名】多賀 康訓
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029DC05
4K029DC09
(57)【要約】
【課題】有機・無機ハイブリッド膜をスパッタリングにより安定して成膜することが可能な有機・無機複合スパッタリングターゲット及びスパッタリングターゲットの製造方法を提供する。
【解決手段】金属酸化物のマトリックスと、該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、樹脂バインダーと、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットにより解決される。
また、フッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、前記成型加工物を100℃以上200℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程と、を行うことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法により解決される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属酸化物のマトリックスと、
該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、
樹脂バインダーと、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項2】
金属酸化物のマトリックスと、
該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、を含み、
該フッ素樹脂成分は、炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有し、
前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されることを特徴とするスパッタリングターゲット。
【請求項3】
前記フッ素樹脂成分と前記金属酸化物の合計量を100体積%としたときに、前記フッ素樹脂成分が0.1体積%以上20体積%以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項4】
前記金属酸化物は、金属元素としてCe、Al、Si、Nb、Zr及びYを含む群から選択される1種以上を含むことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項5】
前記フッ素(F)が金属フッ化物又はフッ化炭素の複合化合物相を形成していることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項6】
Ce−F−C−H−Oから成る複合化合物相を含有することを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項7】
前記金属酸化物は、セリウム酸化物であり、
前記フッ素樹脂成分は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む群から選択される少なくとも1種以上に由来することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲット。
【請求項8】
スパッタリングターゲットの製造方法であって、
フッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、
前記成型加工物を100℃以上200℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程と、を行うことを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項9】
スパッタリングターゲットの製造方法であって、
炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有するフッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、
前記成型加工物を400℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程と、を行い、
前記混合工程において、前記フッ素樹脂粉末と前記金属酸化物粉末の合計を100体積%としたときに前記フッ素樹脂粉末の含有量が0.1体積%以上20体積%以下であり、
前記焼結体において、前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項10】
前記混合工程で用いる前記金属酸化物粉末の表面が、ZrO又はNbで被覆されていることを特徴とする請求項8又は9に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項11】
前記混合工程で用いる前記フッ素樹脂粉末の表面が、プラズマ処理されていることを特徴とする請求項8乃至10のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項12】
スパッタリングターゲットの製造方法であって、
金属酸化物粉末と、アクリル樹脂球とを混合して混合物を得る混合工程と、
前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、
前記成型加工物を1000℃以上で焼成して焼結体を得る焼成工程と、
前記焼結体に形成された空隙に炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有するフッ素樹脂粉末を充填する充填工程と、を行い、
前記混合工程において、前記金属酸化物粉末を100体積%としたときに前記アクリル樹脂球の含有量が1体積%以上30体積%以下であり、
前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されることを特徴とするスパッタリングターゲットの製造方法。
【請求項13】
前記金属酸化物は、セリウム酸化物であり、
前記フッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む群から選択される少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項8乃至12のいずれか一項に記載のスパッタリングターゲットの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特に、フッ素樹脂成分を含む酸化物膜をスパッタリング法により成膜する際に用いられるスパッタリングターゲット及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、基体または基板表面に薄膜を形成し新しい機能を付与する表面処理が研究開発されている。また、軽量化や変形性の観点から従来の重くて硬い無機基板に代わり軽くて形状柔軟性のある樹脂フィルムが用いられ始めている。こうした樹脂基体や基板の表面処理には低温成膜が可能なスパッタリングが広く用いられている。また、処理面積の大面積化に伴い使用するターゲットの規格も大型化しより一層高い機械的が求められている。
【0003】
さらに、表面処理する膜材料もこれまで無機化合物がほとんどであったが、より高い機能を求め無機物と有機物との複合化合物膜の作製と評価が研究され始めている。ところが、無機物と有機物の混合物ターゲットの焼結温度は有機物の蒸発温度に律速されて低温焼結で作製されることからその機械的強度は、高温焼結ターゲット(特許文献1や特許文献2)に比べ低く十分な機械的強度が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012−162755号公報
【特許文献2】特開2019−137875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
大型のフラットパネル表示を用いるデジタルサイネージデバイスや自動車、ビル・住宅用窓ガラスの表面処理にはスパッタリング法が広く用いられている。表面処理対象の大面積化に伴い用いられるスパッタリングターゲットの大型化が進み成膜時の熱応力による割れが問題となっている。
【0006】
一方、スパッタリングターゲットとしては古くから金属、酸化物、窒化物、炭化物、硫化物等の無機物およびそれらの複合無機化合物やフッ素樹脂等の有機化合物が用いられている。しかし、無機物ターゲットのスパッタリングにより作製した無機膜や有機物ターゲットのスパッタリングにより作製した有機膜にはそれぞれ長所と欠点がある。
【0007】
近年、無機物及び有機物の両方のメリットを併せ持つ有機・無機ハイブリッド膜が研究開発され始めている。こうしたハイブリッド膜をスパッタリング法により作製する方法には、(1)無機物ターゲットと有機物ターゲットを同時に成膜する方法や、(2)有機物と無機物の複合ターゲット(有機・無機複合ターゲット)を用いる方法がある。
【0008】
上記の(1)の方法は研究段階においては目標とする膜組成と構造及び特性の最適化に広く用いられているが、至近距離に配置された異なるターゲット上の放電の相互干渉等により放電が不安定となることがあり生産技術としては不適切である。
【0009】
一方、上記の(2)で用いる複合ターゲットは無機物と有機物の混合体の焼結により作製するが、無機物の焼結温度が大よそ1000℃〜1200℃であるのに対し有機物の蒸発温度は極めて低く混合物の焼結温度は有機物の蒸発温度に律速されることになる。例えば、蒸発温度が最も高く耐熱性のある有機物はポリテトラフルオロエチレン(PTFE、テフロン(登録商標))であるがその蒸発温度は大よそ330℃である。従って、無機化合物とフッ素樹脂との混合物の焼結は330℃以下で行う必要が有る。しかし、高温焼結された無機化合物のターゲットに対しフッ素樹脂との混合物の330℃における低温焼結ターゲットは実用上必要な機械的強度が不十分であった。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、有機物と無機物から成る有機・無機複合スパッタリングターゲットの提供、及び、有機・無機ハイブリッド膜をスパッタリングにより安定して成膜することが可能な有機・無機複合スパッタリングターゲットの製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究した結果、有機・無機複合スパッタリングターゲットにおいて、樹脂バインダーを残存させることで機械的強度が高くなることを明らかにして、本発明をするに至った。
【0012】
前記課題は、本発明のスパッタリングターゲットによれば、金属酸化物のマトリックスと、該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、樹脂バインダーと、を含むことを特徴とするスパッタリングターゲットにより解決される。
【0013】
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、有機・無機複合スパッタリングターゲットにおいて、フッ素樹脂成分の炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)の少なくとも一部がC−FまたはC−F−H化合物の形態で酸化物マトリックス中に存在していると機械的強度が高くなることを明らかにして、本発明をするに至った。
【0014】
前記課題は、本発明のスパッタリングターゲットによれば、金属酸化物のマトリックスと、該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、を含み、該フッ素樹脂成分は、炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有し、前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されること、により解決される。
【0015】
このとき、前記フッ素樹脂成分と前記金属酸化物の合計量を100体積%としたときに、前記フッ素樹脂成分が0.1体積%以上20体積%以下であると好適である。
このとき、前記金属酸化物は、金属元素としてCe、Al、Si、Nb、Zr及びYを含む群から選択される1種以上を含むと好適である。
このとき、前記フッ素(F)が金属フッ化物又はフッ化炭素の複合化合物相を形成していると好適である。
このとき、Ce−F−C−H−Oから成る複合化合物相を含有すると好適である。
このとき、前記金属酸化物は、セリウム酸化物であり、前記フッ素樹脂成分は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む群から選択される少なくとも1種以上に由来すると好適である。
【0016】
前記課題は、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、スパッタリングターゲットの製造方法であって、フッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、前記成型加工物を100℃以上200℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程と、を行うこと、により解決される。
【0017】
前記課題は、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、スパッタリングターゲットの製造方法であって、炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有するフッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、前記成型加工物を400℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程と、を行い、前記混合工程において、前記フッ素樹脂粉末と前記金属酸化物粉末の合計を100体積%としたときに前記フッ素樹脂粉末の含有量が0.1体積%以上20体積%以下であり、前記焼結体において、前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されること、により解決される。
【0018】
このとき、前記混合工程で用いる前記金属酸化物粉末の表面が、ZrO又はNb5で被覆されていると好適である。
このとき、前記混合工程で用いる前記フッ素樹脂粉末の表面が、プラズマ処理されていると好適である。
【0019】
前記課題は、本発明のスパッタリングターゲットの製造方法によれば、スパッタリングターゲットの製造方法であって、金属酸化物粉末と、アクリル樹脂球とを混合して混合物を得る混合工程と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程と、前記成型加工物を1000℃以上で焼成して焼結体を得る焼成工程と、前記焼結体に形成された空隙に炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有するフッ素樹脂粉末を充填する充填工程と、を行い、前記混合工程において、前記金属酸化物粉末を100体積%としたときに前記アクリル樹脂球の含有量が1体積%以上30体積%以下であり、前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されること、により解決される。
【0020】
このとき、前記金属酸化物は、セリウム酸化物であり、前記フッ素樹脂は、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、ETFE(テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体)、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を含む群から選択される少なくとも1種以上であると好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明のスパッタリングターゲット及びその製造方法によれば、低温で製造することが可能であり、機械的強度が高くなり、取扱時に割れが発生することが抑制される。したがって、フッ素樹脂成分を含む酸化物薄膜を安定して成膜することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法のフロー図である。
図2】本発明の第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法のフロー図である。
図3】プラズマ処理前のPTFE粉末のXPSスペクトルである。
図4】プラズマ処理後のPTFE粉末のXPSスペクトルである。
図5】孔(くぼみ)の有るCeO焼結ターゲットの表面写真である。
図6】CeO焼結体の孔(くぼみ)をPTFEで充填した後に表面を研磨したターゲットの表面写真である。
図7】高周波スパッタ成膜装置を示す模式図である。
図8】試験5で作製したハイブリッドターゲットにより成膜したCeO−PTFE膜の分光特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法について図1乃至図8を参照して説明する。
【0024】
[1.スパッタリングターゲット]
本実施形態のスパッタリングターゲットは、金属酸化物のマトリックスと、マトリックスの中のフッ素樹脂成分とを含む有機・無機複合ハイブリッドターゲットである。このとき、スパッタリングターゲットが、金属酸化物のマトリックスと、該マトリックスの中のフッ素樹脂成分と、樹脂バインダーと、を含むものであると好適である。
【0025】
<金属酸化物>
本実施形態に係るスパッタリングターゲットにおいてマトリックスを形成する金属酸化物は、スパッタリング可能なものであれば特に限定されるものではない。金属酸化物は、例えば、金属元素としてCe、Al、Si、Nb、Zr及びYを含む群から選択される1種以上を含むと好適である。つまり、金属酸化物として、セリウム酸化物、アルミニウム酸化物、ケイ素酸化物、ニオブ酸化物、ジルコニウム酸化物、イットリウム酸化物を用いると好適である。本実施形態に係るスパッタリングターゲットとして、セリウム酸化物を用いることが特に好適である。
【0026】
(セリウム酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるセリウム酸化物としては、三酸化二セリウム(Ce)、及び二酸化セリウム(CeO)が好ましく、二酸化セリウムがより好ましい。スパッタリングターゲットに用いるセリウム酸化物としては、これらセリウム酸化物の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0027】
(アルミニウム酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるアルミニウム酸化物としては、酸化アルミニウム(Al)が例示される。
【0028】
(ケイ素酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるケイ素酸化物としては、酸化ケイ素(SiO)が例示される。
【0029】
(ニオブ酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるニオブ酸化物としては、五酸化二ニオブ(Nb)、二酸化ニオブ(NbO)、三酸化二ニオブ(Nb)、酸化ニオブ(NbO)が例示される。スパッタリングターゲットに用いるニオブ酸化物としては、これらニオブ酸化物の1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0030】
(ジルコニア酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるジルコニウム酸化物としては、酸化ジルコニウム(ZrO)が例示される。
【0031】
(イットリウム酸化物)
本実施形態に係るスパッタリングターゲットで用いるイットリウム酸化物としては、酸化イットリウム(Y)が例示される。
【0032】
(粒子径について)
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際に用いる金属酸化物の粒子(粉末)の平均粒子径は、スパッタリングターゲットを製造可能であれば特に限定されるものではないが、1μm〜50μm、好ましくは2μm〜20μm、より好ましくは3μm〜10μmであるとよい。
【0033】
(被膜について)
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際に用いる金属酸化物の粒子(粉末)の表面が、酸化ジルコニウム(ZrO)又は五酸化二ニオブ(Nb)で被覆されていても良い。金属酸化物粒子の表面をZrアルコキシド又はNbアルコキシドで被覆し、大気中で加熱することで加水分解によってZrO又はNb5の被膜を形成すればよい。
【0034】
<フッ素樹脂成分>
フッ素樹脂成分は、フッ素−炭素結合を有する化合物であり、典型的には炭化水素などの有機化合物の1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子に置換された構造を有する化合物である。フッ素樹脂成分は、本実施形態のスパッタリングターゲットにおける有機物成分に該当する。
【0035】
本実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法に用いるフッ素樹脂としては、例えば、α−オレフィンの1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子に置換された構造を有するモノマーに由来する構成単位を含む、好ましくは主要な構成単位の1つとして含む(全構成モノマーに由来する構成単位の総和を100モル%として、通常20モル%以上、好ましくは40モル%以上、より好ましくは60モル%以上、更に好ましくは80モル%以上、最も好ましくは90モル%以上含む。)ものを例示することができる。
【0036】
上記α−オレフィンの1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子に置換された構造を有するモノマーとしては、例えば、テトラフルオロエチレン、トリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、ヘキサフルオロプロピレン、ペンタフルオロプロピレン、テトラフルオロプロピレン、トリフルオロプロピレン、及びクロロトリフルオロエチレンなどをあげることができる。上記α−オレフィンの1つ又は2つ以上の水素原子がフッ素原子に置換された構造を有するモノマーとしては、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0037】
本実施形態のスパッタリングターゲットの製造方法に用いるフッ素樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリフッ化ビニル(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、及びポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)などをあげることができる。フッ素樹脂として、これらの1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
【0038】
これらの中で、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)及びポリフッ化ビニリデン(PVDF)を含む群から選択される少なくとも1種以上を用いることが好ましい。
【0039】
(酸素プラズマ処理)
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際に用いるフッ素樹脂の粒子(粉末)の表面をプラズマ処理すると好適である。具体的には、フッ素樹脂の粒子(粉末)の表面を酸素プラズマ処理することで、C−F結合、C−C、C−H以外に加えて、C−F、C−F、CO、C=O、C−H結合等がフッ素樹脂粒子の表面に新たに出現する。これらの新たな表面結合基は、反応性に富み金属酸化物との焼結に有効である。
【0040】
(粒子径について)
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際に用いるフッ素樹脂の粒子(粉末)の平均粒子径は、スパッタリングターゲットを製造可能であれば特に限定されるものではないが、0.1μm〜20μm、好ましくは0.2μm〜10μm、より好ましくは0.3μm〜5μmであるとよい。
【0041】
(金属酸化物とフッ素樹脂の混合割合について)
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際に用いる金属酸化物粒子(粉末)とフッ素樹脂粒子(粉末)の混合割合は、金属酸化物:フッ素樹脂の体積比率で5:1〜30:1(83体積%:17体積%〜97体積%:3体積%)、好ましくは7:1〜27:1(86体積%:14体積%〜96体積%:4体積%)であるとよい。最終的なスパッタリングターゲットにおけるフッ素樹脂成分と金属酸化物の合計量を100体積%としたときに、フッ素樹脂成分が0.1体積%以上20体積%以下、好ましくは0.1体積%以上15体積%以下であるとよい。
【0042】
<バインダー>
本実施形態のスパッタリングターゲットを製造する際にバインダーを用いると好適である。バインダーとして樹脂バインダー、特にアクリル樹脂バインダーを用いるとよい。金属酸化物粒子とフッ素樹脂粒子とバインダーの合計量を100重量%としたときに、バインダーを固形分(例えば、アクリル樹脂成分)換算で1重量%〜5重量%混合すると好適である。なお、スパッタリングターゲットの製造工程では、焼結後のスパッタリングターゲットにバインダー成分が残存しない条件で焼成が行われる。
【0043】
<スパッタリングターゲットの物性値>
(密度)
本実施形態のスパッタリングターゲットの密度は、測定した重量/体積によって算出した場合に、3.0g/cm以上8.0g/cm以下、好ましくは3.2g/cm以上8.0g/cm以下、より好ましくは3.5g/cm以上5.3g/cm以下である。
【0044】
(破壊強度)
本実施形態のスパッタリングターゲットの破壊強度は、JIS規格ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法R1601に則り、3点曲げ強さを測定し、これを破壊強度とする場合に、1.0MPa以上、好ましくは1.5MPa以上、より好ましくは2.5MPa以上、更に好ましくは3.5MPa以上である。
【0045】
(化学結合状態について)
本実施形態のスパッタリングターゲットでは、フッ素樹脂成分に起因する炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されている。
【0046】
スパッタリングターゲットにおいて、フッ素(F)が金属フッ化物又はフッ化炭素の複合化合物相を形成していると好適である。また、スパッタリングターゲットが、Ce−F−C−H−Oから成る複合化合物相を含有しているとよい。
【0047】
本実施形態のスパッタリングターゲット中において、各元素がどのような化合物を形成しているかは、エックス線光電子分光法(以下、「XPS分析」と略すことがある。)により確認することができる。XPS分析は、例えば、アルバック・ファイ社のESCA5400型XPS分析装置を使用し、エックス線としてMgKα線(例えば、電力400W、電圧15kVの条件で発生させたビーム直径1.1mmのMgKα線)を使用して測定することができる。
【0048】
[2.スパッタリングターゲットの製造方法]
図1は、第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法のフロー図である。
第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、フッ素樹脂粉末と、金属酸化物粉末と、樹脂バインダーとを混合して混合物を得る混合工程(ステップS1)と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程(ステップS2)と、前記成型加工物を100℃以上200℃以下、好ましくは100℃以上150℃以下で焼成して焼結体を得る焼成工程(ステップS3)と、を行うことを特徴とする。
【0049】
このとき、前記混合工程において、前記フッ素樹脂粉末と前記金属酸化物粉末の合計を100体積%としたときに前記フッ素樹脂粉末の含有量が0.1体積%以上20体積%以下であると好適である。
【0050】
また、第1実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法の変形例として、混合工程でフッ素樹脂粉末が炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有し、焼成工程で成型加工物を400℃以下で焼成し、結果として得られる焼結体において、炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されていてもよい。
【0051】
図2は、第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法のフロー図である。第2実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法は、金属酸化物粉末と、アクリル樹脂球とを混合して混合物を得る混合工程(ステップS11)と、前記混合物を圧縮成型して成型加工物を得る成型工程(ステップS12)と、前記成型加工物を1000℃以上で焼成して焼結体を得る焼成工程(ステップS13)と、前記焼結体に形成された空隙に炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)を含有するフッ素樹脂粉末を充填する充填工程(ステップS14)と、を行い、前記混合工程において、前記金属酸化物粉末を100体積%としたときに前記アクリル樹脂球の含有量が1体積%以上30体積%以下であり、前記炭素(C)、フッ素(F)、水素(H)、酸素(O)の少なくとも一部が、C−F、C−F−O、C−F−O−Hから選択される化合物の形態で金属酸化物マトリックス中に含有されることを特徴とする。
【0052】
本実施形態では、主として本発明に係るスパッタリングターゲット及びその製造方法について説明した。ただし、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【実施例】
【0053】
以下、本発明のスパッタリングターゲット及びその製造方法の具体的実施例について説明するが、本発明は、これに限定されるものではない。
【0054】
(試験方法)
密度は、ターゲット重量をターゲット体積で割り求めた。体積はターゲット厚みと直径を3点ずつノギスにより測定を行い、各々の平均値から求めた。また、破壊強度は、JIS規格ファインセラミックスの曲げ強さ試験方法R1601に則り、3点曲げ強さを測定し、これを破壊強度とした。
【0055】
<試験1:試料1〜試料6の作製>
フッ素樹脂化合物(PTFE)と酸化セリウム(CeO)との低温での焼結性改善とその結果得られる機械的強度の向上を目的として、PTFE粉末、酸化セリウム粉末の粒子径と成型時の圧力および焼結温度を最適化した複合ターゲットの製造方法である。
【0056】
酸化セリウム粉末は共沈法により作製した。酸化セリウム粉末の粒子径は約1μm〜50μm程度であった。酸化セリウム粉末(平均粒子径5μm)とPTFE粉末(平均粒子径3μm)を、体積比率7:1(試料1と試料4)、12:1(試料2と試料5)、27:1(試料3と試料6)で混合し、さらに焼結バインダーとしてアクリルバインダー溶液を固形分(アクリル樹脂成分)が2重量%となるように加えて混合粉末を得た。混合粉末を0.5トン/cm〜2トン/cmの圧力で30mm径、厚さ3mmの円盤状に成型した。なお、各粉末の粒子径は、レーザー散乱式粒度分布測定機により測定を行って算出された値である。
【0057】
その後、大気中300℃〜400℃で1時間、成型加工試料の焼結処理を行った。このようにして作製したPTFE粉末と酸化セリウム粉末の混合粉末の焼結により作製した試料の密度および機械的強度(中心部への印加荷重による破壊強度による評価)結果をまとめて以下の表1に示す。なお、CeOのみを用いて作製した試料を比較例1とした。
【0058】
スパッタターゲットの焼結時には通常密度向上にためにバインダーとしてアクリル樹脂を1重量%〜5重量%混合し、焼結後のターゲットには残存しない条件で焼結した。プラズマ処理したPTFE粉末と酸化セリウム粉末をアクリルバインダーと共に目的とする組成に配合し、0.5トン/cm〜2.0トン/cmで加圧成型し大気中300℃〜350℃で焼結しスパッタリング成膜に耐えうる有機・無機複合ハイブリッドターゲットを作製しその強度を評価した。
【0059】
<試験2:試料7、8の作製>
フッ素樹脂化合物(PTFE)と酸化セリウムとの低温での焼結性改善とその結果得られる機械的強度の向上を目的として、ZrO又はNb被膜で覆った酸化セリウム粉末とPTFE粉末を成型し300℃〜400℃で焼結の加圧成型し焼結した複合ターゲットの製造方法。
【0060】
5μmの粒子径のCeO粉末表面を1mol/LのZrアルコキシド(Zr(OC又はNbアルコキシドNb(OCで被覆し大気中500℃で加水分解によりZrO(試料7)またはNb(試料8)で被覆したCeO粒子を作製した。このように作製した被覆CeO粒子をそれぞれ試験1と同じプロセスで成型し大気中で焼結しその強度を評価した(被覆CeO2:PTFE粒子の体積比率は12:1)。
【0061】
<試験3:試料9の作製>
フッ素樹脂化合物(PTFE)と酸化セリウムとの低温での焼結性改善とその結果得られる機械的強度の向上を目的に酸素プラズマ処理したPTFE粉末(5μm径)を用いた。酸素プラズマ処理前後のX線光電子分光分析(XPS)スペクトルを図3及び図4に示す。酸素プラズマ処理前のPTFE粉末表面に存在したC−F結合に対し処理後にはC−Fの他に、C−F、C−F、CO、C=O、C−H結合等が新たに出現することが判った。これらの新たな表面結合基は反応性に富み酸化セリウム粉末との焼結に有効である。
【0062】
PTFE粉末の表面処理は200Wの高周波による酸素プラズマ中で30分行った。その後、CeO粉末(5μm径)と混合し試験1と同様の成型焼結しその強度を評価した。
【0063】
<試験4:試料10〜11の作製>
酸化セリウムとPTFEの複合ターゲットの作製は以下の方法によっても作製可能であることを見出した。酸化セリウム焼結時にバインダーとして添加するアクリル樹脂球(10μm)を10体積%添加し1000℃で焼結した結果、機械的強度の高いターゲットが得られた。また、このターゲットには図5に示すように、無数の5〜10μmの穴がみられる。こうした穴は樹脂球の蒸発により形成されたものと思われる。
【0064】
多数の穴を有する焼結酸化セリウムの穴の部分に0.3μm径のPTFEを分散した分散液(名古屋合成株式会社製分散液NS−01〜09)を注入し固化することにより複合ターゲットが作製できることを見出した。このようにして作製したCeO−PTFEターゲット表面を研磨しターゲットとした。
【0065】
この方法で作製したターゲットの機械的強度は高温焼結した酸化セリウムとほぼ同等で非常に高く割れに強くかつPTFEを内包することが確認された(図6)。
【0066】
<試験5:試料12〜13の作製>
試験5では、酸化セリウム粉末(平均粒子径5μm)とPTFE粉末(平均粒子径3μm)を、体積比率12:1で混合し、さらに焼結バインダーとしてアクリルバインダー溶液を固形分(アクリル樹脂成分)が2重量%となるように加えて混合粉末を得た。混合粉末を1.0トン/cm又は2.0トン/cmの圧力で30mm径、厚さ3mmの円盤状に成型した。
【0067】
その後、大気中100℃で1時間、成型加工試料の焼結処理を行った。なお、本試験では、焼結後のターゲットにアクリル樹脂成分が残存する条件で焼結している。このようにして作製したPTFE粉末と酸化セリウム粉末の混合粉末の焼結により作製した試料の密度および機械的強度(中心部への印加荷重による破壊強度による評価)結果をまとめて以下の表1に示す。
【0068】
【表1】
【0069】
<試験6:成膜試験>
試験5の方法に準じて作製されたCeO、CeO−15%PTFE及びCeO−20%PTFEハイブリッドターゲットを用いて高周波スパッタ成膜を行った。図7は、高周波スパッタ成膜装置を示す模式図である。基板11としてガラス基板を用いた。成膜の前後で、スパッタリングターゲットは壊れることなく取り扱うことが可能であった。
【0070】
図8に、成膜されたCeO膜及びCeO−PTFE膜の分光特性を示すグラフを示す。分光特性から、CeO2膜、CeO2−15%PTFE膜に確認できる紫外光遮蔽特性が、CeO2−20%PTFE膜には確認できないことがわかった。これらの特性変化から組成の異なるハイブリッドターゲットにより組成の異なるCeO−PTFE膜の作製が可能であることが実証できた。このとき、樹脂バインダー成分がスパッタリングターゲットに残存していても、成膜において影響がないこともわかった。
【符号の説明】
【0071】
10 基板ホルダー
11 基板
12 磁石
20 成膜真空槽
30 高周波電源
T スパッタリングターゲット
P プラズマ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8