【解決手段】紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、複数の紡績ユニット2のそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられており、空気紡績装置7と巻取装置13との間で糸Yが分断状態である場合に、糸Yを連続状態にするための糸継動作の少なくとも一部を実行する糸継台車3と、糸継台車3の動作を制御する糸継台車制御部31と、を備え、糸継台車制御部31は、複数の紡績ユニット2のうちの一の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードで糸継動作を実行させ、一の紡績ユニット2とは異なる他の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードとは作業時間が異なる第2モードで糸継動作を実行させる。
繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、前記紡績装置により生成された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有している複数の紡績ユニットと、
複数の前記紡績ユニットのそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられており、前記紡績装置と前記巻取装置との間で前記糸が分断状態である場合に、前記糸を連続状態にするための糸継動作の少なくとも一部を実行する自動機と、
前記自動機の動作を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、
複数の前記紡績ユニットのうちの一の前記紡績ユニットにおいては、前記自動機に第1モードで前記糸継動作を実行させ、
一の前記紡績ユニットとは異なる他の前記紡績ユニットにおいては、前記自動機に前記第1モードとは作業時間が異なる第2モードで前記糸継動作を実行させる、紡績機。
前記制御部は、前記第2捕捉装置において前記第2糸を捕捉していないと判断した場合には、前記第2糸捕捉位置における前記第2糸の捕捉失敗と、前記第2糸捕捉位置から前記第2糸案内位置への移動中又は前記第2糸案内位置における捕捉失敗と、に失敗結果を分類して記憶部に記憶させる、請求項6に記載の紡績機。
繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、前記紡績装置により生成された前記糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有している複数の紡績ユニットと、
複数の前記紡績ユニットのそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられており、前記紡績装置と前記巻取装置との間で前記糸が分断状態である場合に、前記糸を連続状態にするための糸継動作の少なくとも一部を実行する自動機と、を備える紡績機において実行される紡績方法であって、
複数の前記紡績ユニットのうちの一の前記紡績ユニットにおいては、前記自動機に第1モードで前記糸継動作を実行させ、
一の前記紡績ユニットとは異なる他の前記紡績ユニットにおいては、前記自動機に前記第1モードとは作業時間が異なる第2モードで前記糸継動作を実行させる、紡績方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の紡績ユニットのそれぞれは、糸の紡績条件、動作環境(配置されている位置等)、ユニットの個体差等に起因して、動作状況等が異なり得る。そのため、全ての紡績ユニットに対して一律に同じ制御で糸継動作を実行した場合、一の紡績ユニットでは糸継ぎが成功したとしても、他の紡績ユニットでは糸継ぎが失敗することがある。糸継ぎが失敗すると、作業時間が延びると共に、糸を無駄に破棄することになったり、作業者による作業が発生したりする。そのため、糸継ぎの失敗は、作業効率を低下させる。
【0005】
本発明の一側面は、作業効率の向上が図れる紡績機及び紡績方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る紡績機は、繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、紡績装置により生成された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有している複数の紡績ユニットと、複数の紡績ユニットのそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられており、紡績装置と巻取装置との間で糸が分断状態である場合に、糸を連続状態にするための糸継動作の少なくとも一部を実行する自動機と、自動機の動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、複数の紡績ユニットのうちの一の紡績ユニットにおいては、自動機に第1モードで糸継動作を実行させ、一の紡績ユニットとは異なる他の紡績ユニットにおいては、自動機に第1モードとは作業時間が異なる第2モードで糸継動作を実行させる。
【0007】
本発明の一側面に係る紡績機では、制御部は、一の紡績ユニットと他の紡績ユニットとにおいて、糸継動作の作業時間を異ならせている。これにより、紡績機では、各紡績ユニットの動作状況に応じて、各紡績ユニットに適した糸継動作を自動機に実行させることができる。例えば、一の紡績ユニットよりも他の紡績ユニットにおいて糸切れが発生し易い場合、他の紡績ユニットにおいて糸を捕捉する時間を長くして、当該糸をゆっくりと引き出すことにより、糸切れの発生を減らすことができる。したがって、紡績機では、糸継ぎが失敗することを回避できる。その結果、紡績機では、作業効率の向上が図れる。
【0008】
一実施形態においては、自動機は、紡績装置からの第1糸と、巻取装置のパッケージから引き出された第2糸と、の糸継ぎを行う糸継装置と、第1糸を捕捉して糸継装置に第1糸を案内する第1捕捉装置と、第2糸を捕捉して糸継装置に第2糸を案内する第2捕捉装置と、を有し、制御部は、糸継動作において、第2捕捉装置の動作を開始させた後に、第1捕捉装置の動作を開始させ、第1モードと第2モードとにおいて、第2捕捉装置が動作を開始してから第1捕捉装置を動作させるまでの時間を異ならせてもよい。紡績ユニットによっては、糸継動作の実行中に第1糸と第2糸とが絡まることも想定される。第1糸と第2糸とが絡まると、第2糸のテンションが高くなり、第2糸の糸切れが発生し得る。そこで、紡績機では、第1モードと第2モードとにおいて、第1糸を捕捉する第1捕捉装置を作動させるタイミングをずらすことにより、第1糸と第2糸との絡まりを回避することが可能となる。これにより、紡績機では、第2糸の糸切れの発生を低下させることができるため、作業効率の向上が図れる。
【0009】
一実施形態においては、制御部は、第1モードにおいては、第2捕捉装置が第2糸を糸継装置に案内する前に第1捕捉装置の動作を開始させ、第2モードにおいては、第2捕捉装置が第2糸を糸継装置に案内した後に第1捕捉装置の動作を開始させてもよい。この構成では、第1糸と第2糸とが絡まることをより確実に回避することができる。
【0010】
一実施形態においては、紡績機は、パッケージに巻き取られた糸を解舒する方向である解舒方向にパッケージを回転させる駆動装置を更に備え、制御部は、第2捕捉装置の動作に基づいて、駆動装置の動作を制御してもよい。この構成では、第2捕捉装置が第2糸を捕捉してパッケージから引き出すときに、駆動装置の回転を第2捕捉装置の動作に合わせることで、第2捕捉装置の動作に対して最適な量で第2糸を繰り出すことができる。そのため、紡績機では、第2糸のテンション(弛み量)を調整できる。したがって、紡績機では、第2糸に過度なテンションが加わることを回避できるため、第2糸の糸切れの発生を回避できる。
【0011】
一実施形態においては、紡績機は、第2捕捉装置によって捕捉された第2糸を巻取装置と糸継装置との間で保持すると共に、第2糸の位置を規定する保持装置を更に備え、制御部は、駆動装置によってパッケージを回転させた後に保持装置によって第2糸を保持させてもよい。保持装置が第2糸を保持する際、第2糸が弛んでいると、保持装置が第2糸を保持できない場合がある。この場合、糸継動作後に巻取装置が糸の巻き取りを開始したときに、糸が適切に綾振りされなかったり、パッケージの所定位置に糸が巻かれなかったりするといった不具合が生じ得る。紡績機では、上記駆動装置によって第2糸のテンションが適切に保たれるため、保持装置が第2糸を確実に保持できる。したがって、紡績機では、糸継動作後に、糸の巻き取りに係る不具合が発生することを回避できる。
【0012】
一実施形態においては、第1捕捉装置は、第1糸を捕捉する第1糸捕捉位置及び第1糸を糸継装置に案内する第1糸案内位置に移動可能であり、第2捕捉装置は、第2糸を捕捉する第2糸捕捉位置及び第2糸を糸継装置に案内する第2糸案内位置に移動可能であり、制御部は、第2捕捉装置における第2糸の捕捉の成否判断を、第2捕捉装置が第2糸捕捉位置に位置しているとき、及び、第2捕捉装置の第2糸捕捉位置から第2糸案内位置への移動中又は第2捕捉装置が第2糸案内位置に位置しているときに実施し、第2捕捉装置において第2糸を捕捉していないと判断した場合には、第1捕捉装置を作動させなくてもよい。この構成では、第2捕捉装置が第2糸の捕捉を失敗した場合には第1捕捉装置を作動させないため、第1捕捉装置が無駄に動作することを回避できる。
【0013】
一実施形態においては、制御部は、第2捕捉装置において第2糸を捕捉していないと判断した場合には、第2糸捕捉位置における第2糸の捕捉失敗と、第2糸捕捉位置から第2糸案内位置への移動中又は第2糸案内位置における捕捉失敗と、に失敗結果を分類して記憶部に記憶させてもよい。この構成では、各紡績ユニットの糸継動作の失敗の傾向を確認することが可能となる。
【0014】
一実施形態においては、自動機は、糸が分断状態である場合にパッケージの糸を捕捉して紡績装置に案内する捕捉装置を有し、制御部は、パッケージの糸を捕捉装置によって紡績装置に案内させ、紡績装置において糸継ぎを行わせてもよい。この構成では、分断された糸をピーシングにより連続状態にする構成において、糸継ぎが失敗することを回避でき、作業効率の向上が図れる。
【0015】
一実施形態においては、制御部は、糸の紡績条件に応じて作業時間を変更してもよい。この構成では、糸の紡績条件(糸の物性(糸種)、糸の太さ、紡績速度等)に応じて、最適な条件で糸継動作を実行させることができる。
【0016】
一実施形態においては、複数の紡績ユニットのそれぞれにおいて糸継動作で発生した繊維屑を吸引空気流によって回収する回収装置を備え、制御部は、紡績ユニットと回収装置との間の距離に基づいて、第1モード又は第2モードを選択してもよい。回収装置は、例えば、複数の紡績ユニットの配列方向の端部に配置されている。この構成では、複数の紡績ユニットのそれぞれと回収装置との間の距離が異なっているため、紡績ユニットに作用する吸引空気流の吸引力にばらつきが生じ得る。吸引空気流の吸引力は、糸継動作の成功率に影響を与え得る。そこで、制御部は、紡績ユニットと回収装置との間の距離に基づいて、第1モード又は第2モードを選択する。これにより、紡績機では、各紡績ユニットに適した糸継動作を実行することができる。
【0017】
本発明の一側面に係る紡績方法は、繊維束に撚りを与えて糸を生成する紡績装置と、紡績装置により生成された糸を巻き取ってパッケージを形成する巻取装置と、をそれぞれが有している複数の紡績ユニットと、複数の紡績ユニットのそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられており、紡績装置と巻取装置との間で糸が分断状態である場合に、糸を連続状態にするための糸継動作の少なくとも一部を実行する自動機と、を備える紡績機において実行される紡績方法であって、複数の紡績ユニットのうちの一の紡績ユニットにおいては、自動機に第1モードで糸継動作を実行させ、一の紡績ユニットとは異なる他の紡績ユニットにおいては、自動機に第1モードとは作業時間が異なる第2モードで糸継動作を実行させる。
【0018】
本発明の一側面に係る紡績方法では、一の紡績ユニットと他の紡績ユニットとにおいて、糸継動作の作業時間を異ならせる。これにより、紡績方法では、各紡績ユニットの動作状況に応じて、各紡績ユニットに適した糸継動作を自動機に実行させることができる。例えば、一の紡績ユニットよりも他の紡績ユニットにおいて糸切れが発生し易い場合、他の紡績ユニットにおいて糸を捕捉する時間を長くして、当該糸をゆっくりと引き出すことにより、糸切れの発生を減らすことができる。したがって、紡績方法では、糸継ぎが失敗することを回避できる。その結果、紡績方法では、作業効率の向上が図れる。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面によれば、作業効率の向上が図れる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1に示されるように、紡績機1は、複数の紡績ユニット2と、糸継台車(自動機)3と、玉揚台車(図示省略)と、第1エンドフレーム4と、第2エンドフレーム5と、を備えている。複数の紡績ユニット2は、一方向に配列されている。各紡績ユニット2は、糸Yを生成してパッケージPに巻き取る。玉揚台車は、ある紡績ユニット2でパッケージPが満巻になった場合、パッケージPを玉揚げし、新しいボビンBを当該紡績ユニット2に供給する。
【0023】
第1エンドフレーム4には、紡績ユニット2で発生した繊維屑及び糸屑等を吸引空気流によって回収する回収装置等が収容されている。第1エンドフレーム4は、複数の紡績ユニット2の配列方向の一端部に配置されている。第2エンドフレーム5には、紡績機1が設置される繊維工場内に配置された空気圧送装置(図示省略)から供給される圧縮空気(空気)の空気圧を調整して紡績機1の各部に空気を供給するための空気圧調整部、及び紡績ユニット2の各部に動力を供給するための駆動モータ等が収容されている。
【0024】
第2エンドフレーム5には、機台制御装置15と、表示画面16と、入力キー17と、が設けられている。機台制御装置15は、紡績機1の各部を集中的に管理及び制御する。機台制御装置15は、外部との信号の入出力等を行う入出力インタフェイス、処理を行うためのプログラム及び情報等が記憶されたROM(Read Only Memory)、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)等の記憶部、CPU(Central Processing Unit)、及び通信回路等を有する。機台制御装置15は、CPUが出力する信号に基づいて、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで各種処理を実行する。
【0025】
表示画面16は、紡績ユニット2の設定内容及び/又は状態に関する情報等を表示することができる。オペレータが入力キー17を用いて適宜の操作を行うことにより、紡績ユニット2の設定作業を行うことができる。表示画面16がタッチパネルディスプレイで構成されている場合、表示画面16と入力キー17は一体的に構成される。
【0026】
各紡績ユニット2は、糸Yの走行方向において上流側から順に、ドラフト装置6と、空気紡績装置7と、糸監視装置8と、テンションセンサ9と、糸貯留装置11と、ワキシング装置12と、巻取装置13と、を備えている。ユニットコントローラ10は、所定数の紡績ユニット2ごとに設けられており、紡績ユニット2の動作を制御する。なお、ユニットコントローラ10は、各紡績ユニット2に設けられていてもよい。
【0027】
ドラフト装置6は、スライバ(繊維束)Sをドラフトする。ドラフト装置6は、スライバSの走行方向において上流側から順に、バックローラ対と、サードローラ対と、ミドルローラ対と、フロントローラ対と、を有している。各ローラ対は、ボトムローラと、トップローラと、を有している。ボトムローラは、第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)モータにより回転駆動される。
【0028】
空気紡績装置7は、ドラフト装置6でドラフトされた繊維束Fに空気の旋回流によって撚りを与えて糸Yを生成する。より詳細には(ただし、図示省略)、空気紡績装置7は、紡績室と、繊維案内部と、旋回空気流発生ノズルと、中空ガイド軸体と、を有している。繊維案内部は、上流側のドラフト装置6から供給された繊維束Fを紡績室内に案内する。旋回空気流発生ノズルは、繊維束Fが走行する経路の周囲に配置されている。旋回空気流発生ノズルから空気が噴射されることにより、紡績室内に旋回空気流が発生する。この旋回空気流によって、繊維束Fを構成する複数の繊維の各繊維端が反転されて旋回させられる。中空ガイド軸体は、糸Yを紡績室内から空気紡績装置7の外部に案内する。
【0029】
糸貯留装置11は、空気紡績装置7と巻取装置13との間において、糸Yを貯留する。糸貯留装置11は、空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を備えている。
【0030】
ワキシング装置12は、糸貯留装置11と巻取装置13との間において、糸Yにワックスを付与する。
【0031】
巻取装置13は、糸YをボビンBに巻き取ってパッケージPを形成する。巻取装置13は、クレードルアーム21と、巻取ドラム22と、トラバースガイド23と、を有している。クレードルアーム21は、ボビンBを回転可能に支持する。クレードルアーム21は、支軸24によって揺動可能に支持されている。ボビンB(パッケージP)を巻取方向に回転させる場合には、クレードルアーム21は、ボビンBの表面又はパッケージPの表面を巻取ドラム22の表面に適切な圧力で接触させる。第2エンドフレーム5に設けられた駆動モータ(図示省略)が、複数の紡績ユニット2の巻取ドラム22を一斉に駆動する。これにより、各紡績ユニット2において、ボビンB又はパッケージPが巻取方向に回転させられる。
【0032】
糸継台車3には、逆転ローラ29bが設けられている。逆転ローラ29bは、パッケージPを巻取方向とは反対方向である解舒方向に回転させるためのローラである。パッケージPを解舒方向に回転させる場合には、クレードルアーム21は、パッケージPの表面を巻取ドラム22の表面から離反(リフトアップ)させ、糸継台車3は、逆転ローラ29bをパッケージPの表面に接触させる。これにより、逆転ローラ29bが接触するパッケージPを解舒方向に回転させることができる。
【0033】
各紡績ユニット2のトラバースガイド23は、複数の紡績ユニット2で共有されるシャフトに設けられている。第2エンドフレーム5の駆動モータ(図示省略)がシャフトを巻取ドラム22の回転軸方向に往復駆動することによって、回転するボビンB又はパッケージPに対してトラバースガイド23が糸Yを所定幅でトラバースする。
【0034】
糸監視装置8は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yの情報を監視して、監視した情報に基づいて糸欠陥の有無を検出する。糸監視装置8は、糸欠陥を検出した場合、糸欠陥検出信号をユニットコントローラ10に送信する。テンションセンサ9は、空気紡績装置7と糸貯留装置11との間において、走行する糸Yのテンションを測定し、テンション測定信号をユニットコントローラ10に送信する。糸監視装置8及び/又はテンションセンサ9の検出結果に基づきユニットコントローラ10が異常有りと判断した場合、ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2における紡績動作を停止させることによって糸Yを切断する。紡績ユニット2がカッタを備える場合は、カッタにより糸Yを切断してもよい。
【0035】
糸継台車3は、ある紡績ユニット2で糸Yが切断されたり、何らかの理由で糸Yが切れたりした場合、当該紡績ユニット2で糸継動作を行う。糸継台車3は、例えば、紡績機1に複数台設けられている。糸継台車3は、紡績ユニット2の配列方向(
図1における左右方向)に沿って走行する。これにより、糸継台車3は、複数の紡績ユニット2のそれぞれに対する作業位置(糸継動作を実施する位置)に移動可能に設けられている。
【0036】
図2に示されるように、糸継台車3は、糸継装置26と、サクションパイプ(第1捕捉装置)27と、サクションマウス(第2捕捉装置)28と、逆回転装置(駆動装置)29と、ヤーンクランプ(保持装置)30と、糸継台車制御部(制御部)31と、を有している。
【0037】
糸継装置26は、空気紡績装置7と巻取装置13との間で糸Yが分断状態となった場合に、糸Yを連続状態にするための糸継動作を実行する。糸継装置26は、空気紡績装置7から引き出された糸Y(以下、第1糸Y1と称する。)及びパッケージPから引き出された糸Y(以下、第2糸Y2と称する。)の糸継ぎを行う。糸継装置26は、圧縮空気を用いるスプライサ、又は糸Yを機械的に継ぐノッター等である。本実施形態では、スプライサを一例に説明する。
【0038】
サクションパイプ27は、支軸27aによって回動可能に支持されており、空気紡績装置7からの第1糸Y1を捕捉して糸継装置26に案内する。サクションパイプ27は、第1糸Y1を捕捉するとき、空気紡績装置7から送り出される第1糸Y1を吸引する。サクションパイプ27は、待機位置P11と、空気紡績装置7からの第1糸Y1を捕捉する第1糸捕捉位置P12と、第1糸Y1を糸継装置26に案内する第1糸案内位置P13と、に移動可能に設けられている。待機位置P11と第1糸案内位置P13は同じ位置であってもよい。サクションパイプ27の待機位置P11、第1糸捕捉位置P12及び第1糸案内位置P13は、センサ(図示省略)によって検出されてもよいし、エンコーダによって検出されてもよいし、後述する第1駆動部40(ステッピングモータ)の駆動量(パルス数等)に基づいて検出されてもよい。
【0039】
サクションパイプ27は、第1駆動部40(
図3参照)の作動により、待機位置P11、第1糸捕捉位置P12及び第1糸案内位置P13に移動する。第1駆動部40は、例えば、ステッピングモータである。第1駆動部40の動作は、糸継台車制御部31により制御される。すなわち、サクションパイプ27の移動(回動)は、糸継台車制御部31により制御される。
【0040】
サクションマウス28は、支軸28aによって回動可能に支持されており、巻取装置13から第2糸Y2を捕捉して糸継装置26に案内する。サクションマウス28は、待機位置P21と、巻取装置13からの第2糸Y2を捕捉する第2糸捕捉位置P22と、第2糸Y2を糸継装置26に案内する第2糸案内位置P23と、に移動可能に設けられている。待機位置P21と第2糸案内位置P23は同じ位置であってもよい。サクションマウス28の待機位置P21、第2糸捕捉位置P22及び第2糸案内位置P23は、センサ(図示省略)によって検出されてもよいし、エンコーダによって検出されてもよいし、後述する第2駆動部41(ステッピングモータ)の駆動量(パルス数等)に基づいて検出されてもよい。
【0041】
サクションマウス28は、第2駆動部41(
図3参照)の作動により、待機位置P21、第2糸捕捉位置P22及び第2糸案内位置P23に移動する。第2駆動部41は、例えば、ステッピングモータである。第2駆動部41の動作は、糸継台車制御部31により制御される。すなわち、サクションマウス28の移動(回動)は、糸継台車制御部31により制御される。
【0042】
サクションマウス28には、センサ32が設けられている。センサ32は、サクションマウス28において吸引した第2糸Y2を検出可能な位置に配置されている。センサ32は、例えば、光学式センサ(投光部、受光部)である。センサ32は、サクションマウス28に吸引された第2糸Y2を検出すると、検出信号を糸継台車制御部31に出力する。
【0043】
逆回転装置29は、巻取装置13のパッケージPを逆回転させる。逆回転装置29は、支持アーム29aと、逆転ローラ29bと、を有している。支持アーム29aの一端は、支軸に連結されている。これにより、支持アーム29aは、支軸を中心に揺動可能に設けられている。支持アーム29aは、モータ等の駆動部(図示省略)により、逆転ローラ29bがパッケージPに接触しない待避位置(
図2参照)と、逆転ローラ29bがパッケージPに接触する接触位置(
図5参照)と、に移動する。支持アーム29aの揺動は、糸継台車制御部31により制御される。
【0044】
逆転ローラ29bは、支持アーム29aの他端に設けられている。逆転ローラ29bは、第3駆動部42(
図3参照)により、巻取装置13の巻取ドラム22とは反対方向に回転する。第3駆動部42は、例えば、ステッピングモータである。第3駆動部42の動作は、糸継台車制御部31により制御される。すなわち、逆回転装置29の回転は、糸継台車制御部31により制御される。
【0045】
ヤーンクランプ30は、サクションマウス28によって捕捉された第2糸Y2を巻取装置13と糸継装置26との間で保持すると共に、第2糸Y2の位置を規定する。ヤーンクランプ30は、パッケージPの軸方向における第2糸Y2の位置を規制する。ヤーンクランプ30は、糸Yの走行方向において、糸継装置26とパッケージPとの間に配置されている。ヤーンクランプ30は、第2糸Y2を挟持する。ヤーンクランプ30は、規制プレート30aと、一対の規制バー30bと、を有している。規制プレート30aの一端は、支軸に連結されている。これにより、規制プレート30aは、支軸を中心に揺動可能に設けられている。
【0046】
一対の規制バー30bは、規制プレート30a上に配置されている。一対の規制バー30bのそれぞれの一端は、規制プレート30aに設けられた軸に連結されている。これにより、一対の規制バー30bは、図示しない駆動源の作動により、軸を中心に揺動することができる。一対の規制バー30bのそれぞれは、互いに近接する近接方向及び互いに離間する離間方向に移動する。一対の規制バー30bが近接した位置では、一対の規制バー30bが互いに平行に延在する。このとき、一対の規制バー30bに挟まれた糸Yは、パッケージPの幅方向の略中央に位置する。
【0047】
ヤーンクランプ30は、規制プレート30aの揺動により、規制プレート30aが糸道に重なる規制位置(
図5参照)と、規制プレート30aが糸道に重ならない待避位置(
図2参照)と、に移動可能である。規制位置は、糸Yがトラバースガイド23により綾振りされないように、ヤーンクランプ30が糸Yを規制する位置である。規制プレート30aは、
図2に示す側面で見たときに、揺動することによって、その先端の位置が糸道に対して前後に移動する。ヤーンクランプ30は、駆動部(図示省略)の作動により、規制位置及び待避位置に移動する。ヤーンクランプ30の動作は、糸継台車制御部31により制御される。
【0048】
糸継台車制御部31は、糸継台車3の動作を統括的に制御する。糸継台車制御部31は、外部との信号の入出力等を行う入出力インタフェイス、処理を行うためのプログラム及び情報等が記憶されたROM、データを一時的に記憶するRAM等の記憶部、CPU、及び通信回路等を有する。糸継台車制御部31は、CPUが出力する信号に基づいて、入力データをRAMに記憶し、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムを実行することで各種処理を実行する。糸継台車制御部31は、機台制御装置15と通信可能である。
【0049】
糸継台車制御部31は、糸継台車3における糸継動作を制御する。本実施形態では、糸継動作は、分断された糸Y(第1糸Y1、第2糸Y2)を繋ぐための各装置の一連の動作を意味する。各装置のそれぞれの動作も、糸継動作の一つと言える。糸継台車制御部31は、糸継装置26、サクションパイプ27、サクションマウス28、逆回転装置29及びヤーンクランプ30の動作を制御する。
【0050】
糸継台車制御部31は、複数の紡績ユニット2のうちの一の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードで糸継動作を実行させる。糸継台車制御部31は、一の紡績ユニットとは異なる他の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードとは作業時間(サイクルタイム)が異なる第2モードで糸継動作を実行させる。第1モード及び第2モードの詳細については、後段にて詳述する。
【0051】
一の紡績ユニット2及び他の紡績ユニット2のそれぞれは、一台又は複数台の紡績ユニット2である。一の紡績ユニット2及び他の紡績ユニット2は、各紡績ユニット2の動作状況に応じて設定される。各紡績ユニット2の動作状況とは、糸Yの紡績条件、紡績ユニット2の動作環境(紡績ユニット2が配置されている位置等)、紡績ユニット2の個体差等に起因する紡績ユニット2の特性等である。本実施形態では、他の紡績ユニット2は、一の紡績ユニット2に比べて、糸継動作の実行中に、第1糸Y1と第2糸Y2とが絡まり易い。
【0052】
糸継台車制御部31は、サクションマウス28における第2糸Y2の捕捉の成否判断を行う。糸継台車制御部31は、サクションマウス28のセンサ32の検出信号に基づいて、成否判断を行う。具体的には、糸継台車制御部31は、第2糸Y2が所定時間(例えば、1.0秒)以上検出された場合には、サクションマウス28において第2糸Y2の捕捉に成功したと判断する。
【0053】
糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸捕捉位置P22に位置しているときに、第2糸Y2の捕捉の成否判断を行う。さらに、糸継台車制御部31は、第2糸Y2の捕捉の成否判断を、サクションマウス28の第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23への移動中に実施してもよいし、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置したときに実施してもよい。なお、糸継台車制御部31は、第2糸Y2の捕捉の成否判断を、サクションマウス28が作動している間は常時実施してもよい。糸継台車制御部31が第2糸Y2の捕捉の成否判断を実施するタイミングは、適宜設定可能である。第2糸Y2の捕捉の成否判断を実施するタイミングは、例えば、第2エンドフレーム5の表示画面16及び入力キー17を操作することにより、適宜変更可能である。
【0054】
糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸Y2の捕捉を失敗した場合、その失敗結果を記憶部に記憶させる。糸継台車制御部31は、捕捉を失敗したときのサクションマウス28の位置に応じて、失敗結果を分類して記憶させる。具体的には、糸継台車制御部31は、失敗結果を、「口出しミス」と、「マウス上昇時の張り切れ」と、に分類する。糸継台車制御部31は、第2糸捕捉位置P22における成否判断において失敗と判断した場合には、当該失敗を「口出しミス」に分類する。すなわち、糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸Y2を捕捉できなかった場合には、「口出しミス」に分類する。糸継台車制御部31は、第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23への移動中、又は、第2糸案内位置P23における成否判断において失敗と判断した場合には、「マウス上昇時の張り切れ」に分類する。すなわち、糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸Y2を捕捉した後に第2糸Y2が切れて第2糸Y2が検出されなかった場合には、「マウス上昇時の張り切れ」に分類する。
【0055】
糸継台車制御部31によって記憶部に記憶された失敗結果に係るデータは、第2エンドフレーム5の表示画面16において、紡績ユニット2毎に確認することができる。また、当該データは、逆回転装置29の動作の制御に使用(反映)することも可能である。
【0056】
続いて、糸継台車3の動作(紡績方法)について詳細に説明する。糸継台車3では、糸継台車制御部31は、複数の紡績ユニット2のうちの一の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードで糸継動作を実行させ、一の紡績ユニット2とは異なる他の紡績ユニット2においては、糸継台車3に第1モードとは作業時間が異なる第2モードで糸継動作を実行させる。糸継台車制御部31は、各紡績ユニット2のそれぞれと糸継動作のモード(第1モード、第2モード)とを対応付けて記憶部に記憶している。各紡績ユニット2に対するモードの設定は、例えば、第2エンドフレーム5の表示画面16及び入力キー17を操作することにより適宜変更可能である。
【0057】
糸継台車制御部31は、第1モードと第2モードとにおいて、サクションマウス28が動作を開始してからサクションパイプ27を動作させるまでの時間を異ならせる。具体的には、
図4(a)に示されるように、糸継台車制御部31は、第1モードにおいては、サクションマウス28が第2糸Y2を糸継装置26に案内する前にサクションパイプ27の動作を開始させる。すなわち、糸継台車制御部31は、第1モードにおいては、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置する前に、サクションパイプ27を作動させる。第1モードでは、作業時間が「T1」に設定されている。作業時間T1は、一の紡績ユニット2の動作状況等に応じて設定されている。
【0058】
図4(b)及び
図8に示されるように、糸継台車制御部31は、第2モードにおいては、サクションマウス28が第2糸Y2を糸継装置26に案内した後にサクションパイプ27の動作を開始させる。すなわち、糸継台車制御部31は、第2モードにおいては、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置した場合に、サクションパイプ27を作動させる。第2モードでは、作業時間が「T2」に設定されている。作業時間T2は、作業時間T1よりも長い(T2>T1)。作業時間T2は、他の紡績ユニット2の動作状況等に応じて設定されている。なお、作業時間には、例えば、サクションマウス28が第2糸Y2の捕捉に失敗して、第2糸Y2の捕捉動作を再度実行して延長された時間は含まれない。すなわち、各モードの作業時間は、実際に糸継動作に要した時間ではなく、予め設定されている時間を意味する。
【0059】
糸継動作についてより詳細に説明する。一の紡績ユニット2で糸切れ又は糸切断が発生すると、当該紡績ユニット2においてクレードルアーム21が揺動させられることにより、パッケージPが巻取ドラム22から離間する。機台制御装置15は、糸継台車3を上記一の紡績ユニット2まで移動させるための制御信号を糸継台車3に送信する。糸継台車3は、制御信号を受信すると、上記一の紡績ユニット2まで走行し、当該一の紡績ユニット2に対応する作業位置で走行を停止する。糸継台車制御部31は、制御信号を受信すると、制御信号が示す紡績ユニット2に対応する糸継動作のモードを記憶部から取得する。ここでは、糸継台車制御部31は、第1モードを取得したとして説明する。
【0060】
続いて、糸継台車3に設けられた制動部材(図示省略)がパッケージPに接触して、パッケージPの惰性回転を停止する。パッケージPの回転が既に停止している場合は制動部材を作動させなくてもよい。或いは、巻取装置13に制動部材を設け、当該制動部材によりパッケージPの惰性回転を停止してもよい。
【0061】
次に、糸継台車制御部31は、サクションマウス28及び逆回転装置29を作動させる。具体的には、糸継台車制御部31は、サクションマウス28を第2糸捕捉位置P22まで移動させ、逆回転装置29を待機位置から接触位置まで移動させる。そして、逆回転装置29によるパッケージPの逆回転開始と同じタイミングでサクションマウス28の吸引を開始させる(
図4(a))。糸継台車制御部31は、逆回転装置29の回転を開始させると、ヤーンクランプ30を作動させる。ヤーンクランプ30は、第2糸Y2を挟持する。これにより、サクションマウス28は、逆回転装置29によってパッケージPから繰り出された第2糸Y2を吸引することができる。
【0062】
糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸捕捉位置P22に位置してから所定時間(0秒以上)経過すると、第2糸Y2の捕捉の成否判断を行う。糸継台車制御部31は、サクションマウス28において第2糸Y2が捕捉されたと判断した場合には、サクションマウス28を第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23まで移動させる。これにより、サクションマウス28により、糸継装置26に第2糸Y2が案内された状態となる。糸継台車制御部31は、サクションマウス28による糸の案内を失敗したと判断した場合には、サクションマウス28を再度第2糸捕捉位置P22に移動させ、一連の動作を行わせても良い。サクションパイプ27による第1糸Y1の捕捉が開始していた場合には、サクションパイプ27による捕捉を一旦キャンセルしてもよい。
【0063】
図6に示されるように、第1モードでは、糸継台車制御部31は、サクションマウス28において第2糸Y2が捕捉された場合には、サクションパイプ27を作動させる。糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置する前に(サクションマウス28が第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23への移動中に)(
図4(a)参照)、サクションパイプ27を作動させる。サクションパイプ27は、待機位置P11から第1糸捕捉位置P12まで移動し、第1糸捕捉位置P12で第1糸Y1を捕捉する。サクションパイプ27は、第1糸Y1を捕捉すると第1糸捕捉位置P12から第1糸案内位置P13まで移動し、糸継装置26に第1糸Y1を案内する。
【0064】
図7に示されるように、糸継台車制御部31は、糸継装置26に、サクションパイプ27によって案内された第1糸Y1と、サクションマウス28によって案内された第2糸Y2とを繋ぐ糸継動作を実行させる。糸継装置26は、第1糸Y1の糸端と第2糸Y2の糸端を撚り掛けるか結ぶことにより、第1糸Y1と第2糸Y2を接続する。糸継装置26による糸継動作が完了した後、サクションマウス28は待機位置P21へ、サクションパイプ27は待機位置P11へ戻る。以上により、糸継台車3による第1モードでの糸継動作が完了する。糸継動作が完了すると、機台制御装置15は、例えば、糸継台車3を次の紡績ユニット2まで移動させるための制御信号を糸継台車3に送信する。糸継台車3は、制御信号を受信すると、次の紡績ユニット2まで移動する。
【0065】
次に、第2モードによる糸継動作ついて説明する。他の紡績ユニット2で糸切れ又は糸切断が発生すると、機台制御装置15は、糸継台車3を上記他の紡績ユニット2まで移動させるための制御信号を糸継台車3に送信する。糸継台車3は、制御信号を受信すると、上記他の紡績ユニット2まで走行し、当該他の紡績ユニット2に対応する作業位置で走行を停止する。糸継台車制御部31は、制御信号を受信すると、制御信号が示す紡績ユニット2に対応する糸継動作のモードを記憶部から取得する。ここでは、糸継台車制御部31は、第2モードを取得したとして説明する。
【0066】
第2モードは、サクションパイプ27が動作を開始するタイミングだけが第1モードと異なる。具体的には、
図8に示されるように、糸継台車制御部31は、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に到達したと判断した場合に、サクションパイプ27の動作を開始させる。糸継台車制御部31は、サクションマウス28において第2糸Y2の捕捉又は案内を失敗したと判断した場合には、サクションパイプ27を作動させないようにしてもよい。そして、糸継台車制御部31は、サクションマウス28を再度第2糸捕捉位置P22に移動させ、一連の動作を行わせてもよい。
【0067】
図8に示されるように、具体的には、糸継台車制御部31は、サクションパイプ27を待機位置P11から第1糸捕捉位置P12まで移動させ、第1糸捕捉位置P12で第1糸Y1を捕捉させる。サクションパイプ27は、第1糸Y1を捕捉すると第1糸捕捉位置P12から第1糸案内位置P13まで移動し、糸継装置26に第1糸Y1を案内する。
【0068】
続いて、
図7に示されるように、糸継台車制御部31は、糸継装置26において、サクションパイプ27によって案内された第1糸Y1と、サクションマウス28によって案内された第1糸Y1とを繋ぐ糸継動作を実行させる。糸継装置26は、第1糸Y1の糸端と第2糸Y2の糸端を撚り掛けるか結ぶことにより、第1糸Y1と第2糸Y2を接続する。糸継装置26による糸継動作が完了した後、サクションマウス28は待機位置P21へ、サクションパイプ27は待機位置P11へ戻る。以上により、糸継台車3による第2モードでの糸継動作が完了する。
【0069】
第1モードと第2モードの少なくとも何れかにおいて、糸継台車制御部31は、サクションマウス28によって案内される第2糸Y2が最適な弛みとなるように、逆回転装置29を制御してもよい。糸継台車制御部31は、逆回転装置29の回転時間又は単位時間当たりの回転速度を制御する。逆回転装置29の回転速度を速くすると、第2糸Y2が弛み易くなり(第2糸Y2のテンションが減少する)、逆回転装置29の回転速度を遅くすると、第2糸Y2が弛み難くなる(第2糸Y2のテンションが増大する)。糸継台車制御部31は、逆回転装置29の第3駆動部42の制御量(回転時間又は単位時間当たりの回転速度)を記憶部から取得し、取得した制御量に基づいて第3駆動部42を制御する。第3駆動部42の制御量は、サクションマウス28の制御量(移動時間及び移動速度)に基づいて設定される。制御量は、第2駆動部41(ステッピングモータ)の周波数、パルス数等である。これにより、最適な弛みとなるように第2糸Y2がパッケージPから繰り出される。
【0070】
例えば、糸継台車制御部31は、サクションマウス28による第2糸Y2の捕捉の失敗の結果が「マウス上昇時の張り切れ」であると判断した場合、逆回転装置29の回転時間又は単位時間当たりの回転速度を調整してもよい。なお、逆回転装置29の動作をサクションマウス28の移動に同期させる制御は省略してもよい。
【0071】
以上説明したように、本実施形態に係る紡績機1では、糸継台車制御部31は、一の紡績ユニット2と他の紡績ユニット2とにおいて、糸継動作の作業時間を異ならせている。これにより、紡績機1では、各紡績ユニット2の動作状況に応じて、各紡績ユニット2に適した糸継動作を糸継台車3に実行させることができる。例えば、一の紡績ユニット2よりも他の紡績ユニット2において糸切れが発生し易い場合、他の紡績ユニット2において糸Yを捕捉する時間を長くして、当該糸Yをゆっくりと引き出すことにより、糸切れの発生を回避することができる。したがって、紡績機1では、糸継ぎが失敗することを回避できる。その結果、紡績機1では、作業効率の向上が図れる。
【0072】
本実施形態に係る紡績機1では、糸継台車3は、空気紡績装置7からの第1糸Y1と、巻取装置13のパッケージPから引き出された第2糸Y2と、の糸継ぎを行う糸継装置26と、第1糸Y1を捕捉して糸継装置26に第1糸Y1を案内するサクションパイプ27と、第2糸Y2を捕捉して糸継装置26に第2糸Y2を案内するサクションマウス28と、を有する。糸継台車制御部31は、糸継動作において、サクションマウス28の動作を開始させた後に、サクションパイプ27の動作を開始させ、第1モードと第2モードとにおいて、サクションマウス28が動作を開始してからサクションパイプ27を動作させるまでの時間を異ならせる。紡績ユニット2によっては、糸継動作の実行中に第1糸Y1と第2糸Y2とが絡まることがある。第1糸Y1と第2糸Y2とが絡まると、第2糸Y2のテンションが高くなり、第2糸Y2の糸切れが発生し得る。そこで、紡績機1では、第1モードと第2モードとにおいて、第1糸Y1を捕捉するサクションパイプ27を作動させるタイミングをずらすことにより、第1糸Y1と第2糸Y2との絡まりを回避することが可能となる。これにより、紡績機1では、第2糸Y2の糸切れの発生を低下させることができるため、作業効率の向上が図れる。
【0073】
本実施形態に係る紡績機1では、糸継台車制御部31は、第1モードにおいては、サクションマウス28が第2糸Y2を糸継装置26に案内する前にサクションパイプ27の動作を開始させ、第2モードにおいては、サクションマウス28が第2糸Y2を糸継装置26に案内した後にサクションパイプ27の動作を開始させる。この構成では、第1糸Y1と第2糸Y2とが絡まることをより確実に回避することができる。
【0074】
本実施形態に係る紡績機1では、紡績ユニット2は、パッケージPに巻き取られた糸Yを解舒する方向である解舒方向にパッケージPを回転させる逆回転装置29を備えている。糸継台車制御部31は、サクションマウス28の動作に基づいて、逆回転装置29の動作を制御する。この構成では、サクションマウス28が第2糸Y2を捕捉してパッケージPから引き出すときに、逆回転装置29の回転をサクションマウス28の動作に合わせることで、サクションマウス28の動作に対して最適な量で第2糸Y2を繰り出すことができる。そのため、紡績機1では、第2糸Y2のテンション(弛み量)を調整できる。したがって、紡績機1では、第2糸Y2に過度なテンションが加わることを回避できるため、第2糸Y2の糸切れの発生を回避できる。
【0075】
本実施形態に係る紡績機1では、紡績ユニット2は、サクションマウス28によって捕捉された第2糸Y2を巻取装置13と糸継装置26との間で保持すると共に、第2糸Y2の位置を規定するヤーンクランプ30を備えている。糸継台車制御部31は、逆回転装置29によってパッケージPを回転させた後にヤーンクランプ30によって第2糸Y2を保持させる。ヤーンクランプ30が第2糸Y2を保持する際、第2糸Y2が弛んでいると、ヤーンクランプ30が第2糸Y2を保持できない場合がある。この場合、糸継動作後に巻取装置13が糸Yの巻き取りを開始したときに、糸Yがトラバースガイド23によって適切に綾振りされなかったり、パッケージPの所定位置に糸Yが巻かれなかったりする(端面落ちする)といった不具合が生じ得る。紡績機1では、逆回転装置29によって第2糸Y2のテンションが適切に保たれるため、ヤーンクランプ30が第2糸Y2を確実に保持できる。したがって、紡績機1では、糸継動作後に、糸Yの巻き取りに係る不具合が発生することを回避できる。
【0076】
本実施形態に係る紡績機1では、サクションパイプ27は、第1糸Y1を捕捉する第1糸捕捉位置P12及び第1糸Y1を糸継装置26に案内する第1糸案内位置P13に移動可能である。サクションマウス28は、第2糸Y2を捕捉する第2糸捕捉位置P22及び第2糸Y2を糸継装置26に案内する第2糸案内位置P23に移動可能である。糸継台車制御部31は、サクションマウス28における第2糸Y2の捕捉の成否判断を、サクションマウス28が第2糸捕捉位置P22に位置しているとき、及び、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置しているときに実施する。糸継台車制御部31は、サクションマウス28において第2糸Y2を捕捉していないと判断した場合には、サクションパイプ27を作動させない。この構成では、サクションマウス28が第2糸Y2の捕捉を失敗した場合にはサクションパイプ27を作動させないため、サクションパイプ27が無駄に動作することを回避できる。
【0077】
サクションマウス28が第2糸Y2を捕捉できていないにもかかわらず、サクションパイプ27を作動させて糸継動作を実行させた場合、糸継動作を最初からやり直す必要がある。この場合、サクションパイプ27によって捕捉されて糸継装置26に案内された第1糸Y1を破棄することになるため、無駄が生じる。また、糸貯留装置11に糸Yが貯留された場合には、作業者によって当該糸Yを除去する作業が必要となるため手間がかかる。紡績機1では、サクションマウス28が第2糸Y2の捕捉を失敗した場合にはサクションパイプ27を作動させないため、第1糸Y1の破棄量の低減を図ることができると共に、作業者の手間の低減を図ることができる。
【0078】
本実施形態に係る紡績機1では、糸継台車制御部31は、サクションマウス28において第2糸Y2を捕捉していないと判断した場合には、第2糸捕捉位置P22おける第2糸Y2の捕捉失敗と、第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23への移動中又は第2糸案内位置P23における捕捉失敗と、に失敗結果を分類して記憶部に記憶させる。この構成では、各紡績ユニット2の糸継動作の失敗の傾向を確認することが可能となる。そのため、各紡績ユニット2のメンテナンス(調整)を当該傾向に基づいて実施することができる。また、サクションマウス28に起因する糸継動作の失敗と、糸継装置26に起因する糸継動作の失敗と、を区別することが可能となる。糸継動作の失敗が糸継装置26に起因する場合には、糸継装置26の調整を行えばよい。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態には限定されず、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0080】
上記実施形態では、自動機が、紡績ユニット2の配列方向に沿って走行する糸継台車3である形態を一例に説明した。しかし、自動機は、糸継台車3に限定されない。自動機は、複数の紡績ユニット2のそれぞれに対する作業位置に移動可能に設けられていればよい。
【0081】
上記実施形態では、糸継台車制御部31は、第1モードと第2モードとにおいて、サクションマウス28が動作を開始してからサクションパイプ27を動作させるまでの時間を異ならせる形態を一例に説明した。しかし、糸継動作の2つのモードは、作業時間が異なっていればよい。そのため、例えば、第1モードと第2モードとでは、サクションパイプ27の動作開始タイミングは同じにして、サクションパイプ27の駆動時間を異ならせてもよい。
【0082】
上記実施形態では、糸継台車制御部31が、第1モード及び第2モードの2つのモードで糸継動作を実行させる形態を一例に説明した。しかし、紡績ユニット2の動作状況に応じて、3以上のモードが設定されていてもよい。
【0083】
上記実施形態では、糸継台車制御部31は、第2モードにおいて、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置した後にサクションパイプ27を作動させる形態を一例に説明した。しかし、糸継台車制御部31は、第1モードと第2モードとにおいて、サクションマウス28が動作を開始してからサクションパイプ27を動作させるまでの時間を異ならせればよい。そのため、糸継台車制御部31は、第2モードにおいて、例えば、サクションマウス28が第2糸案内位置P23に位置する前(第2糸捕捉位置P22から第2糸案内位置P23への移動途中)にサクションパイプ27を作動させてもよい。例えば、糸継台車制御部31は、サクションマウス28の移動量(回動量)が3/4以上となった場合に、サクションパイプ27を作動させてもよい。
【0084】
上記実施形態では、サクションマウス28が第2駆動部41によって駆動される形態を一例に説明した。しかし、サクションマウス28は、カム機構によって駆動されてもよい。この場合、糸継装置26及びサクションマウス28が1つのカム機構によって駆動されてもよい。
【0085】
上記実施形態では、糸継台車制御部31が、各紡績ユニット2のそれぞれと糸継動作のモード(第1モード、第2モード)とを対応付けて記憶している形態を一例に説明した。しかし、各紡績ユニット2のそれぞれと糸継動作のモードとは、機台制御装置15において記憶されていてもよい。この場合、機台制御装置15は、糸継台車3に送信する制御信号に、モードを示す情報を含める。糸継台車制御部31は、制御信号を受信すると、制御信号に含まれるモードに基づいて、糸継動作を実行させる。
【0086】
上記実施形態では、糸継台車制御部31が、サクションマウス28が第2糸Y2の捕捉を失敗した場合、その失敗結果を糸継台車制御部31の記憶部に記憶させる形態を一例に説明した。しかし、機台制御装置15に設けられた記憶部に失敗結果を記憶させてもよい。
【0087】
上記実施形態では、糸継台車制御部31が、機台制御装置15からの制御信号を受信すると、制御信号が示す紡績ユニット2に対応する糸継動作のモードを記憶部から取得する形態を一例に説明した。しかし、糸継台車制御部31は、紡績ユニット2と回収装置との間の距離に基づいて、第1モード又は第2モードを選択してもよい。回収装置は、複数の紡績ユニット2の配列方向の端部に配置されている。この構成では、複数の紡績ユニット2のそれぞれと回収装置との間の距離が異なっているため、紡績ユニット2に作用する吸引空気流の吸引力にばらつきが生じ得る。吸引空気流の吸引力は、糸継動作の成功率に影響を与え得る。そこで、糸継台車制御部31は、紡績ユニット2と回収装置との間の距離に基づいて、第1モード又は第2モードを選択する。これにより、紡績機では、各紡績ユニット2に適した糸継動作を実行することができる。
【0088】
上記実施形態では、一の紡績ユニット2及び他の紡績ユニット2は、各紡績ユニット2の動作状況に応じて設定される形態を一例に説明した。すなわち、第1モード及び第2モードは、各紡績ユニット2の動作状況(動作環境)に応じて設定される。動作環境としては、紡績ユニット2と回収装置との間の距離の関係を含めることもできる。つまり、紡績ユニット2と回収装置との間の距離に基づいて、一の紡績ユニット2及び他の紡績ユニット2を設定することができる。
【0089】
上記実施形態では、ドラフト装置6のボトムローラの少なくとも一部と、巻取装置13の巻取ドラム22及びトラバースガイド23とが、第2エンドフレーム5に設けられた複数の駆動モータによってそれぞれ一斉に駆動される形態を一例に説明した。しかし、ボトムローラ、巻取ドラム22及びトラバースガイド23は、各紡績ユニット2に設けられた駆動モータによって独立して駆動されてもよい。この構成では、各紡績ユニット2において、異なる紡績条件(糸の物性(糸種、原料)、糸の太さ(番手)、紡績速度等)で糸を製造することが可能である。この場合、一の紡績ユニット2で製造される糸Yが、他の紡績ユニット2で製造される糸Yよりも切れ難い場合には、一の紡績ユニット2においては第1モードで糸継動作を実行させ、他の紡績ユニット2においては第2モードで糸継動作を実行させる。また、糸継台車制御部31は、糸Yの紡績条件に応じて作業時間を変更してもよい。この構成では、糸Yの紡績条件に応じて、最適な条件で糸継動作を実行させることができる。
【0090】
上記実施形態では、サクションパイプ27、サクションマウス28、逆回転装置29及びヤーンクランプ30を、糸継台車制御部31によって制御する形態を一例に説明した。しかし、各装置は、機台制御装置(制御部)15によって制御されてもよい。
【0091】
上記実施形態では、分断された糸Yを連続状態にする方法として、糸継装置26(スプライサ又はノッター)を用いる形態を一例として説明した。しかし、分断された糸Yをピーシングにより連続状態にするようにしてもよい。この場合、糸継台車は、パッケージPから引き出した糸Yを空気紡績装置7に供給し、機台制御装置15がドラフト装置6のドラフト動作と空気紡績装置7の紡績動作を開始することによって、糸Yを連続状態にする。すなわち、糸継台車3は、糸継動作の一部を実行する。糸継台車制御部31は、第1モードと第2モードとにおいて、上記の供給動作の作業時間(引出時間、引出速度)を異ならせる。
【0092】
上記実施形態では、紡績ユニット2において、糸貯留装置11が空気紡績装置7から糸Yを引き出す機能を有している形態を一例に説明した。しかし、デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yが引き出されてもよい。デリベリローラとニップローラとで空気紡績装置7から糸Yを引き出す場合、糸貯留装置11の代わりに、或いは加えて、吸引空気流で糸Yの弛みを吸収するスラックチューブ及び/又は機械的なコンペンセータ等を設けてもよい。
【0093】
上記実施形態では、紡績機1の高さ方向において、上側で供給された糸Yが下側で巻き取られるように各装置が配置されている形態を一例に説明した。しかし、下側で供給された糸が上側で巻き取られるように各装置が配置されていてもよい。この場合、上記実施形態の「マウス上昇時の張り切れ」は「マウス下降時の張り切れ」に相当する。
【0094】
糸Yの走行方向において、テンションセンサ9が糸監視装置8の上流側に配置されてもよい。ユニットコントローラ10は、紡績ユニット2ごとに設けられてもよい。紡績ユニット2において、ワキシング装置12及びテンションセンサ9は、省略されてもよい。
【0095】
図1では、紡績機1は、チーズ形状のパッケージPを巻き取るように図示されているが、コーン形状のパッケージを巻き取ることも可能である。コーン形状のパッケージの場合、糸のトラバースにより糸の弛みが発生するが、当該弛みは、糸貯留装置11で吸収することができる。各構成の材料及び形状には、上述した材料及び形状に限らず、様々な材料及び形状を採用することができる。