【解決手段】シリンダボア壁の保温具は、膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部25を有し、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材31aと、前記膨張部材31aを押し付けるように付勢する弾性部材33が付設されており、前記膨張部材31aの接触面側に設けられ、内側に第1開口301を有し、背面側押し付け部材32とで、前記膨張部材31aの外縁側を挟み込むための正面側当て板30と、前記膨張部材31a、前記背面側押し付け部32、および正面側当て板30を一体の保温部として固定する固定部と、前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定され、前記弾性部材33が通り抜けるための第2開口を有する基体部材と、を有する。
シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁のうちの一部のボア壁を保温するためのシリンダボア壁の保温具であり、
膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有し、外縁が正面側当て板の第1開口より外側に位置し、且つ、内縁が前記正面側当て板の前記第1開口より内側に位置する形状であり、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、
前記膨張部材の背面側に設けられ、前記膨張部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されており、前記膨張部材全体を背面側から前記溝状冷却水流路の前記シリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部と、
前記膨張部材の接触面側に設けられ、内側に前記第1開口を有し、前記背面側押し付け部材とで、前記膨張部材の外縁側を挟み込むための前記正面側当て板と、
前記膨張部材、前記背面側押し付け部、および正面側当て板を一体の保温部として固定する固定部と、
前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定され、前記弾性部材が通り抜けるための第2開口を有する基体部材と、
を有すること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具。
シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁のうちの一部のボア壁を保温するためのシリンダボア壁の保温具であり、
膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有し、外縁が正面側当て板の第1開口より外側に位置し、且つ、内縁が前記正面側当て板の前記第1開口より内側に位置する形状であり、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、
前記膨張部材の背面側に設けられ、前記膨張部材全体を背面側から前記溝状冷却水流路の前記シリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部と、
前記膨張部材の接触面側に設けられ、内側に前記第1開口を有し、前記背面側押し付け部とで、前記膨張部材の外縁側を挟み込むための前記正面側当て板と、
前記膨張部材、前記背面側押し付け部、および正面側当て板を一体の保温部として固定する固定部と、
前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定されるとともに前記背面側押し付け部を前記シリンダボア側の壁面に向かって付勢する弾性部材を有する基体部材と、
を有すること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具。
前記膨張部材が2以上の分割体で構成されており、且つ、前記膨張部材の外縁の形状及び内縁の形状が矩形であることを特徴とする請求項1又は請求項2記載のシリンダボア壁の保温具。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の内燃機関について、
図1〜
図16を参照して説明する。
図1〜
図4は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されるシリンダブロックの形態例を示すものであり、
図1及び
図4は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されるシリンダブロックを示す模式的な平面図であり、
図2は、
図1のx−x線断面図であり、
図3は、
図1に示すシリンダブロックの斜視図である。
図5は、本発明のシリンダボア壁の保温具に係る保温部の形態例を作製する様子を示す模式的な斜視図である。
図6は、本発明のシリンダボア壁の保温具に係る保温部を示す模式図であり、内側から見た図である。
図7は、
図6中の保温部を基体部材に固定する様子を示す図である。
図8は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例を示す模式的な斜視図であり、(A)は、内側斜め上から見た図であり、(B)は、背面側斜め上から見た図である。
図9は、
図8中のシリンダボア壁の保温具を上から見た図である。なお、
図9では、シリンダボア壁の保温具に固定されている保温部のうち、右端の保温部については、構成部材毎に分離して示した。
図10は、
図8中シリンダボア壁の保温具を横から見た図であり、内側から見た図である。
図11は、
図8中のシリンダボア壁の保温具を横から見た図であり、背面側から見た図である。
図12は、
図10及び
図11のX−X線及びY−Y線の断面図である。
図13は、
図1に示すシリンダブロックに、シリンダボア壁の保温具を設置する様子を示す模式図である。
図14は、
図1に示すシリンダブロックに、シリンダボア壁の保温具が設置されている様子を示す模式図である。
図15は、溝状冷却水流路内で、膨張部材が膨張した後の様子を示す断面図である。
図16は、保温部が、ボア壁に接触する様子を示す図である。
【0016】
図1〜
図3に示すように、シリンダボア壁の保温具が設置される車両搭載用内燃機関のオープンデッキ型のシリンダブロック11には、ピストンが上下するためのボア12、及び冷却水を流すための溝状冷却水流路14が形成されている。そして、ボア12と溝状冷却水流路14とを区切る壁が、シリンダボア壁13である。また、シリンダブロック11には、溝状冷却水流路11へ冷却水を供給するための冷却水供給口15及び冷却水を溝状冷却水流路11から排出するための冷却水排出口16が形成されている。
【0017】
このシリンダブロック11には、2つ以上のボア12が直列に並ぶように形成されている。そのため、ボア12には、1つのボアに隣り合っている端ボア12a1、12a2と、2つのボアに挟まれている中間ボア12b1、12b2とがある(なお、シリンダブロックのボアの数が2つの場合は、端ボアのみである。)。直列に並んだボアのうち、端ボア12a1、12a2は両端のボアであり、また、中間ボア12b1、12b2は、一端の端ボア12a1と他端の端ボア12a2の間にあるボアである。端ボア12a1と中間ボア12b1の間の壁、中間ボア12b1と中間ボア12b2の間の壁及び中間ボア12b2と端ボア12a2の間の壁(ボア間壁191)は、2つのボアに挟まれる部分なので、2つのシリンダボアから熱が伝わるため、他の壁に比べ壁温が高くなる。そのため、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17では、ボア間壁191の近傍が、温度が最も高くなるので、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17のうち、各シリンダボアのボア壁の境界192及びその近傍の温度が最も高くなる。
【0018】
また、本発明では、溝状冷却水流路14の壁面のうち、シリンダボア13側の壁面を、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17と記載し、溝状冷却水流路14の壁面のうち、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面を壁面18と記載する。
【0019】
また、本発明において、片側半分とは、シリンダブロックをシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分を指す。よって、本発明において、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁とは、全シリンダボア壁をシリンダボアが並んでいる方向で垂直に二分割したときの片側の半分のボア壁を指す。例えば、
図4では、シリンダボアが並んでいる方向がZ−Z方向であり、このZ−Z線で垂直に二分割したときの片側半分のボア壁のそれぞれが、全シリンダボアのボア壁のうちの片側半分のボア壁である。つまり、
図4では、Z−Z線より20a側の片側半分のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの一方の片側半分のボア壁21aであり、Z−Z線より20b側の片側半分のボア壁が、全シリンダボアのボア壁のうちの他方の片側半分のボア壁21bである。また、全シリンダボア壁のうちの片側とは、片側半分のボア壁21a又は片側半分のボア壁21bのいずれかを指し、片側の一部とは、片側半分のボア壁21aの一部又は片側半分のボア壁21bの一部を指す。
【0020】
また、本発明において、各シリンダボアのボア壁とは、1つ1つのシリンダボアに対応する各ボア壁部分を指し、
図4では、両矢印22a1で示す範囲が、シリンダボア12a1のボア壁23a1であり、両矢印22b1で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b1であり、両矢印22b2で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b2であり、両矢印22a2で示す範囲が、シリンダボア12a2のボア壁23a2であり、両矢印22b3で示す範囲が、シリンダボア12b1のボア壁23b3であり、両矢印22b4で示す範囲が、シリンダボア12b2のボア壁23b4である。つまり、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b1、シリンダボア12b2のボア壁23b2、シリンダボア12a2のボア壁23a2、シリンダボア12b1のボア壁23b3及びシリンダボア12b2のボア壁23b4が、それぞれ、各シリンダボアのボア壁である。
【0021】
保温部35aは、
図5に示すように、金属板バネ39が付設されており、円弧状に成形されている弾性部材付設部材33と、円弧状に成形されている背面側押し付け板32と、膨張部材31aと、円弧状に成形されている正面側当て板30と、を有し、これらが順に重ね合わされて形成される。保温部35aは、弾性部材付設部材33の上端に形成されている折り曲げ部331aと、弾性部材付設部材33の下端に形成されている折り曲げ部331bと、弾性部材付設部材33の右端に形成されている折り曲げ部332aと、弾性部材付設部材33の左端に形成されている折り曲げ部332bと、を有する。これらの折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、膨張部材31a、背面側押し付け板32、弾性部材付設部材33、および正面側当て板を一体の保温部35aとして固定する固定部の一例である。
【0022】
図6に示すように、折り曲げ部331a、331b、332a、332bがは、正面側当て板30側に折り曲げられて、これらと弾性部材付設部材33との間に、背面側押し付け板32、膨張部材31a及び正面側当て板30が挟み込まれる。このようにして、保温部35aは、一体に作製される。なお、
図6に示す形態例では、弾性部材付設部材33と背面側押し付け板32とが組み合わされて、背面側押し付け部が構成されている。
【0023】
そして、
図7に示すように、シリンダボア壁の保温具36aが設置される溝状冷却水流路14に沿う形状、すなわち、上から見た時に複数の円弧が連なった形状に成形された基体部材34aの各ボア部に、保温部35aが、1つずつ固定される。保温部35aの基体部材34aへの固定は、弾性部材付設部材33の上端及び下端に形成されている折り曲げ部37が、基体部材34側に折り曲げられて、折り曲げ部37と弾性部材付設部材33との間に、基体部材34が挟み込まれることにより、保温部35aが、基体部材34aに固定される。
【0024】
図8に示すシリンダボア壁の保温具36aは、
図4中、一方の片側半分(20b側)のボア壁21bを保温するための保温具である。シリンダボア壁の保温具36aには、冷却水流れ仕切り部材38が付設されている。冷却水流れ仕切り部材38は、冷却水の供給口15と排出口16との間を仕切るための部材である。
図4に示すシリンダブロック11において、冷却水流れ仕切り部材38は、冷却水供給口15から溝状冷却水流路14へ供給された冷却水が、直ぐに近傍にある冷却水排出口16から排出されることを防止する。冷却水流れ仕切り部材38は、先ず、20b側の片側半分の溝状冷却水流路14において、冷却水供給口15の位置とは反対側の端に向かって冷却水を流がす。冷却水流れ仕切り部材38は、さらに、20b側の片側半分の溝状冷却水流路14の冷却水供給口15の位置とは反対側の端まで来た冷却水を、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14に回し、次いで、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14において、冷却水を冷却水排出口16に向けて流し、最後に冷却水排出口16から排出されるように、案内する。また、
図4には、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14を端まで流れた冷却水が、シリンダブロック11の横側に形成されている冷却水排出口16から排出される形態のシリンダブロックを記載したが、他には、例えば、20a側の片側半分の溝状冷却水流路14を一方の端から他方の端まで流れた冷却水が、シリンダブロックの横側から排出されるのではなく、シリンダヘッドに形成されている冷却水流路に流れ込む形態のシリンダブロックがある。
【0025】
図8〜
図11に示すように、シリンダボア壁の保温具36は、
図4に示すシリンダブロック11の片側半分のボア壁21bを保温するための保温具であり、シリンダブロック11の片側半分のボア壁21bには、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b3、シリンダボア12b2のボア壁23b4及びシリンダボア12a2のボア壁23a2と、4つの各シリンダボアのボア壁がある。そして、シリンダボア壁の保温具36では、この4つの各シリンダボアのボア壁を保温するために保温部が設けられる。そのため、シリンダボア壁の保温具36aには、4つの保温部35aが設けられている。なお、本実施形態では、基体部材34aの4つの各シリンダボアのボア壁にそれぞれに対応して、4つの保温具35aが配置されているが、保温具35aの配置はこれに限られるものではない。保温の必要性がないシリンダボアのボア壁に対応する保温具35aをあえて設置しなくてもよい。したがって、保温具35aの配置は任意であり、基体部材34aの4個の円弧状のボア部のすべてに保温具35aを設置してもよいし、基体部材34aの4個の円弧状のボア部のいずれかに保温具35aを設置しない箇所を設けてもよい。
【0026】
シリンダボア壁の保温具36aでは、シリンダボア側の壁面に、膨張部材31aの接触面26が向き、膨張部材31aの接触面26が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に接触できるように、保温部35aが固定されている。また、シリンダボア壁の保温部36aの背面側では、保温部35aに付設されている金属板バネ39が、基体部材34aの開口42を通って、膨張部材31aとは反対側に向けて張り出している。そして、溝状冷却水流路内で膨張部材31aが膨張すると、金属板バネの39の張り出した先端27が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面18に接触する。
【0027】
シリンダボア壁の保温部36aに固定されている保温部35aは、
図5に示すように、正面側当て板30と、膨張部材31aと、背面側押し付け部材32と、弾性部材付設部材33と、からなる。
【0028】
膨張部材31aは、溝状冷却水流路内で膨張し、各シリンダボアのボア壁22に直接接触して、ボア壁22の保温箇所を囲む部材である。そして、膨張部材31aが、溝状冷却水流路内で膨張して、シリンダボアのボア壁22に接触することにより、膨張部材31aとシリンダボアのボア壁22と背面側押し付け板32とで、冷却水保持部を形成し、内燃機関の運転中に、冷却水保持部に保持された冷却水が、膨張部材31aと同程度の温度まで加温されることにより、各シリンダボアのボア壁22が保温される。そのため、膨張部材31aは、中央部に、溝状冷却水流路内で膨張することにより冷却水保持部を形成させるための空間部25を有する。また、背面側押し付け板32は、円弧状断面を有し、膨張部材31aの全体を膨張部材31aの背面側から押し付けることができるように、膨張部材31aの背面側(接触面26側とは反対側の面)に沿う形状である。また、弾性部材付設部材33は、円弧状断面を有し、背面側押し付け板32の背面側(感熱膨張ゴム31とは反対側の面)に沿う形状であり、弾性部材である金属板バネ39が付設されている。金属板バネ39は、縦長の長方形の金属板であり、長手方向の一端が弾性部材付設部材33に繋がっている。金属板バネ39は、先端27が金属板バネ付設部材33から離れるように、金属板バネ付設部材33に繋がっている他端側28で、弾性部材付設部材33から折り曲げられることにより、弾性部材付設部材33に付設されている。
【0029】
正面側当て板30は、円弧状断面を有し、枠形状をなすとともに内側に矩形状の開口301を有する。そして、弾性部材付設部材33の上端に形成されている折り曲げ部332a、332b、弾性部材付設部材33の下端に形成されている折り曲げ部331a、331b、弾性部材付設部材33の右端に形成されている折り曲げ部332a、及び弾性部材付設部材33の左端に形成されている折り曲げ部332bが、正面側当て板30側に折り曲げられて、弾性部材付設部材33と折り曲げ部332a、332b、331b、332a、332bとの間に、背面側押し付け部材32、膨張部材31及び正面側当て板30が挟み込まれることにより、これらの部材が固定されている。なお、膨張部材31aでは、背面側押し付け部材32側とは反対側の面が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に接する接触面26である。
【0030】
図6に示すように、保温部35aを内側から見たときに、膨張部材31aの内縁、すなわち、膨張部材31aの空間部25の輪郭は、正面当て板30の開口301より内側に位置している。また、
図12に示すように、膨張部材31aの外縁は、正面当て板30の開口(第1開口)301より外側に位置している。そのため、膨張部材31aは、外縁側が、正面当て板30と背面側押し付け板32により挟み込まれて、固定される。また、
図12に示すように、膨張材料31aの内縁側311は、正面当て板30と背面側押し付け部材32により挟み込まれておらず、正面当て板30の開口301から、はみ出している。
【0031】
図6に示すように、正面側当て板30には、外側端が折り曲げ部により挟み込まれている部分と、折り曲げ部に挟み込まれない部分と、がある。つまり、保温部35では、正面側当て板30の上側部に、外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の下側部に、外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の右側部に、外側端が折り曲げ部332aに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の左側部に、外側端が折り曲げ部332bに挟み込まれている部分と、が存在する。また、保温部35では、正面側当て板30の上側部に、外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれていない部分と、正面側当て板30の下側部308bに、外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれていない部分と、が存在する。
【0032】
正面側当て板30のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分には、凸部が形成されている。つまり、正面側当て板30のうち、上側部の外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30の上側部の長手方向に延びる凸部(ビード)302aが形成されている。また、正面側当て板30の下側部の外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30の下側部の長手方向に延びる凸部(ビード)302bが形成されている。
【0033】
図12に示すように、正面当て板30に形成されている凸部302aは、膨張部材31aにめり込んでいる。このことにより、膨張部材31aは、保温部に強く固定されるので、位置ずれを起こし難くなる。内側から見たときに、凸部302aが形成されている位置は、膨張材料31aの外縁より内側である。
【0034】
保温部35aが固定される基体部材34は、上から見たときに、4つの円弧が連続する形状に成形されており、基体部材34の形状は、溝状冷却水流路14の片側半分に沿う形状である。また、基体部材34aには、保温部35に付設されている金属板バネ39が、基体部材34aを通り抜けて、シリンダボア壁の保温具36aの背面側から、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面18に向かって張り出すことができるように、開口42が形成されている。
【0035】
基体部材34aは、保温部35aが固定される部材であり、保温部35aの位置が溝状冷却水流路14内でずれないように、保温部35aの位置を定める役割を果たす。基体部材34aは、金属板又は合成樹脂の成形体である。
【0036】
そして、シリンダボア壁の保温具36aでは、保温部35aは、上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍(保温部35aを上から見たときに、円弧形状の保温部35aの中央又は中央近傍)のみが、基体部材34aに固定されている。
図12のX−X断面図は、保温部35の中央で切った断面図であるが、X−X断面図では、弾性部材付設部材33の上端及び下端のそれぞれが、折り曲げ部37によって、基体部材34aに固定されていることが示されている。それに対して、
図12のY−Y断面図は、保温部35aの端の方の部分を切った断面図であるが、Y−Y断面図では、弾性部材付設部材33は、基体部材34aに固定されていないことが示されている。
【0037】
シリンダボア壁の保温具36aは、例えば、
図1に示すシリンダブロック11の溝状冷却水流路14に設置される。
図13に示すように、シリンダボア壁の保温具36を、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14に挿入して、
図14に示すように、シリンダボア壁の保温具36aを、溝状冷却水流路14に設置する。
【0038】
シリンダボア壁の保温具36aが、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14内に設置された後、自動車および内燃機関が運転されると、膨張材料31aが膨張する。そして、
図15に示すように、正面当て板30と背面側押し付け部材32により挟み込まれていない膨張材料31aの内縁側311は、正面側当て板30の内側部分に形成されている開口301を通って、シリンダボア側の壁面17に向かって膨張し、接触面26がシリンダボア側の壁面17に接触する。接触面26がシリンダボア側の壁面17に接触した後も、膨張材料ゴム31aは膨張を続け、開放状態まで膨張しようとする。そのため、金属板バネ39の先端27には、弾性部材付設部材33に向かう方向に力が加えられる。このことにより、金属板バネ39は、先端27が弾性部材付設部材33側に近づくように変形するので、金属板バネ39には、元に戻ろうとする弾性力が生じる。そして、この弾性力により、弾性部材付設部材33は、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に向かって押され、その結果、弾性部材付設部材33により押された背面側押し付け部材32により、膨張部材31aが、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けられる。つまり、シリンダボア壁の保温具36aが、溝状冷却水流路14に設置され、膨張部材31aが膨張することにより、金属板バネ39が変形し、その変形が戻ろうとして生じる弾性力により、膨張材料31aを溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けるように、背面側押し付け部材32が付勢される。このようにして、シリンダボア壁の保温具36aの保温部35aの膨張材料31aの内縁側311が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の全壁面17のうちの一方の片側半分の壁面17bの各シリンダボアのボア壁面に接触する。
【0039】
このとき、膨張材料31aの内縁側311が膨張して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に接触することにより、膨張部材31aの内縁側311と、壁面17と、背面側押し付け部材32とに囲まれている冷却水保持部25が形成される。自動車および内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部25には、冷却水が保持される。冷却水保持部25に保持された冷却水は、冷却水保持部25内に留まっているため、徐々に温度が上昇し、膨張部材31aの内縁側と同程度の温度になる。このことにより、冷却水保持部25に保持された冷却水は、膨張材料31aと同程度の保温性を発揮するので、冷却水保持部25に保持された冷却水及び膨張部材31aの内縁側311が、保温部位として機能する。冷却水保持部25は、内燃機関が運転される際に、完全な密閉状態を維持してもよく、これによって冷却水保持部25の内外で冷却水の移動を規制してもよい。この構造であれば、保温対象となるシリンダボアのボア壁の下部および中間部の保温を確実に行うことができる。冷却水保持部25は、内燃機関が運転される際に、完全な密閉状態とはならずに、膨張部材31aの一部から冷却水が入れ替わることを許容してもよい。この構造であれば、内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部25に保持された冷却水が微量ずつ冷却水保持部25の内外で入れ替わることになる。これによって、内燃機関が長時間運転されたり、高い回転数で運転された場合に、冷却水を微量ずつ入れ換えることで、保温対象となるシリンダボアのボア壁の温度が上がり過ぎることを防止することができる。
【0040】
また、シリンダボア壁の保温具36aでは、保温部35aは、保温部35aを上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍のみが、基体部材34に固定されているので、保温部35aの弾性部材付設部材33及び背面側押し付け部材32が金属板バネ39で付勢されたときに、基体部材34aとは独立して、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30が変形することができる。
図16を参照して説明する。シリンダボア壁の保温具の作製においては、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率が、膨張部材31aが接触する各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率と合うように加工されるが、実際には、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30と各シリンダボアのボア壁の壁面のいずれにも、設計値に対して加工誤差が生じてしまう。そして、これらの部材又は各シリンダボアのボア壁の壁面の加工誤差により、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率が、各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率より小さくなってしまった場合に、
図16(A)に示すように、保温部の全体が、基体部材に固定されていたならば(例えば、保温部を上から見たときの円弧方向の中央近傍と両端近傍の合計3か所が基体部材に固定されていたならば)、金属板バネで付勢されたときに、膨張材料の円弧方向の中央近傍は、各シリンダボアのボア壁23に接触することはできるが、端の方の部分は、ボア壁には接触できない。それに対して、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率が、各シリンダボアのボア壁の壁面の曲率より小さくなってしまった場合に、
図16(B)に示すように、保温部35aを上から見たときの円弧方向の本発明の保温部35の中央又は中央近傍のみが、基体部材34aに固定されていると、金属板バネ39で付勢されたときに、保温部35aの端の方の部分が、基体部材34aから離れて、各シリンダボアのボア壁23に向かうように変形できるので、膨張材料31aの円弧方向の中央近傍だけでなく、端の方も各シリンダボアのボア23壁に接触することができる。このようなことから、シリンダボア壁の保温具36では、加工誤差により、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率と各シリンダボアのボア壁23の壁面の曲率に差があったとしても、膨張部材31aを確実に各シリンダボアのボア壁の壁面に接触させることができるので、膨張部材31aの各シリンダボアのボア壁23の壁面(溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17)への密着性が高くなる。
【0041】
また、弾性部材付設部材、背面側押し付け部材、膨張部材及び正面側当て板の曲率が、各シリンダボアのボア壁の曲率より大きい場合に、保温部の全体が、基体部材に固定されていたならば、弾性部材付設部材、背面側押し付け部材、膨張部材及び正面側当て板の曲率が変化しないので、上から見た時の膨張材料の円弧方向の中央近傍とボア壁との間に隙間ができるおそれがある。それに対して、シリンダボア壁の保温具36aでは、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率が、各シリンダボアのボア壁23の曲率より大きかったとしても、保温部35は、円弧方向の中央又は中央近傍のみが、基体部材34aに固定されているので、保温部35aの円弧方向の中央又は中央近傍の部分が、弾性部材39により背面側から押されることにより、保温部35aの円弧方向の中央又は中央近傍以外の部分が、基体部材34aとは独立して、保温部35aの円弧方向の両端側の部分が、外に開くように変形する。そのため、膨張材料31aの円弧方向の中央近傍も、端の方も各シリンダボアのボア23壁に接触することができる。このようなことから、シリンダボア壁の保温具36aでは、加工誤差により、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30の曲率と各シリンダボアのボア壁23の壁面の曲率に差があったとしても、膨張材料31aを確実に各シリンダボアのボア壁の壁面に接触させることができるので、膨張部材31aの各シリンダボアのボア壁23の壁面(溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17)への密着性が高くなる。
【0042】
なお、
図16(A)では、本発明の効果の説明のため、保温部の両端側全体に、膨張材料の両端側の接触面とボア壁との間に大きな隙間ができている図を用いたが、実際は、これほど大きな加工誤差が生じることはない。しかし、実際に、加工誤差により、小さな隙間が生じたり、部分的にゴム部材の接触面とボア壁が離れていたり、接触はしているものの押し付けられる力が弱いために密着性が低くなっていることはある。
【0043】
また、
図8に示す形態例では、保温部が、保温部を上から見たときの円弧方向の中央又は中央近傍のみで、基体部材に固定されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、保温部が、円弧方向の2か所以上で、基体部材に固定されていてもよい。
【0044】
本発明の第一の形態の保温具は、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁のうちの一部のボア壁を保温するためのシリンダボア壁の保温具であり、
膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有し、外縁が正面側当て板の第1開口より外側に位置し、且つ、内縁が前記正面側当て板の前記第1開口より内側に位置する形状であり、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、
前記膨張部材の背面側に設けられ、前記膨張部材を押し付けるように付勢する弾性部材が付設されており、前記膨張部材全体を背面側から前記溝状冷却水流路の前記シリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部と、
前記膨張部材の接触面側に設けられ、内側に前記第1開口を有し、前記背面側押し付け部材とで、前記膨張部材の外縁側を挟み込むための前記正面側当て板と、
前記膨張部材、前記背面側押し付け部、および正面側当て板を一体の保温部として固定する固定部と、
前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定され、前記弾性部材が通り抜けるための第2開口を有する基体部材と、
を有すること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具である。
【0045】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具は、シリンダボア壁の保温具の基体部材に固定されて、シリンダボア壁を保温するための保温具であり、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を保温するための保温部と、保温部が固定される基体部材と、を有する。保温部は、円弧状に成形されており、弾性部材が付設されている背面側押し付け部と、溝状冷却水流路内で膨張して、接触面が溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、円弧状に成形されている正面側当て板と、が順に重ね合わされ、且つ、背面側押し付け部の上端に形成されている折り曲げ部、背面側押し付け部の下端に形成されている折り曲げ部、背面側押し付け部の右端に形成されている折り曲げ部、及び背面側押し付け部の左端に形成されている折り曲げ部が、正面側当て板側に折り曲げられて、背面側押し付け部と折り曲げ部との間に、膨張部材及び正面側当て板が挟み込まれることにより、これらの部材が保温部に固定されている。なお、本発明において、保温部において、上端、下端、右端及び左端とは、それぞれ、内側から、言い換えると、膨張部材の接触面側から見た時の上端、下端、右端及び左端のことを指す。
【0046】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具では、設置される溝状冷却水流路に沿う形状、すなわち、上から見た時に複数の円弧が連なった形状に成形された成形された基体部材の各ボア部に、保温部が固定されている。保温部の基体部材への固定は、背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部が、基体部材側に折り曲げられて、折り曲げ部と背面側押し付け部との間に、基体部材が挟み込まれることにより、保温部が、基体部材に固定される。なお、本発明において、基体部材の各ボア部とは、各シリンダボアのボア壁側の基体部材の部分のことであり、上から見たときの基体部材を形成する円弧形状の1つ分である。
【0047】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る基体部材は、溝状冷却水流路内での各保温部の位置がずれないように、保温部が固定される部材であるので、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具の設置位置の溝状冷却水流路に沿った形状をしており、上から見たときに、全シリンダボアを一周囲む形状又は複数の円弧が連続する形状に成形されている。基体部材は、合成樹脂製又は金属製である。基体部材が合成樹脂製の場合、基体部材は、通常、合成樹脂の射出成形により、冷却水流れ仕切り部材等の基体部材に付設される部材と共に、一体成形されて作製される。合成樹脂材は、耐熱性及び耐LLC性を有していれば、特に制限されず、シリンダボアのボア壁の保温具やウォータージャケットスペーサに用いられる合成樹脂であればよい。基体部材が金属製の場合、金属材料としては、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等の金属板が挙げられる。なお、基体部材が金属製の場合、基体部材は、一端側から他端側まで連続しているのであれば、1つの金属板を成形して作製されたものであっても、複数の金属板を繋ぎ合わせて作製されたものであってもよい。
【0048】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、溝状冷却水流路内で膨張し、接触面が各シリンダボアのボア壁に直接接触して、シリンダボアのボア壁と背面側押し付け部とで、冷却水保持部を囲むことにより、冷却水保持部を、ボア壁の保温箇所に形成させるための部材である。なお、膨張材料では、背面側押し付け部材側とは反対側の面が、溝状冷却水流路のシリンダボア壁に接する接触面である。
【0049】
膨張部材は、膨張材料からなる。膨張材料としては、感熱膨張ゴム、水膨潤性ゴム、セルロース系スポンジ等が挙げられる。
【0050】
感熱膨張ゴムは、溝状冷却水流路内で加熱されることにより膨張するゴムである。感熱膨張ゴムは、ベースフォーム材にベースフォーム材より融点が低い熱可塑性物質を含浸させ圧縮した複合体であり、常温では少なくともその表層部に存在する熱可塑性物質の硬化物により圧縮状態が保持され、且つ、加熱により熱可塑性物質の硬化物が軟化して圧縮状態が開放される材料である。感熱膨張ゴムとしては、例えば、特開2004−143262号公報に記載の感熱膨張ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が感熱膨張ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され、感熱膨張ゴムに熱が加えられることで、感熱膨張ゴムが膨張して、所定の形状に膨張変形する。
【0051】
感熱膨張ゴムに係るベースフォーム材としては、ゴム、エラストマー、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の各種高分子材料が挙げられ、具体的には、天然ゴム、クロロプロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、エチレンプロピレンジエン三元共重合体、シリコーンゴム、フッ素ゴム、アクリルゴム等の各種合成ゴム、軟質ウレタン等の各種エラストマー、硬質ウレタン、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の各種熱硬化性樹脂が挙げられる。
【0052】
感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ガラス転移点、融点又は軟化温度のいずれかが120℃未満であるものが好ましい。感熱膨張ゴムに係る熱可塑性物質としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステル、スチレンブタジエン共重合体、塩素化ポリエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニルアクリル酸エステル共重合体、エチレン酢酸ビニル塩化ビニル共重合体、ナイロン、アクリロニトリルブタジエン共重合体、ポリアクリロニトリル、ポリ塩化ビニル、ポリクロロプレン、ポリブタジエン、熱可塑性ポリイミド、ポリアセタール、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネート、熱可塑性ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、低融点ガラスフリット、でんぷん、はんだ、ワックス等の各種熱可塑性化合物が挙げられる。
【0053】
水膨潤性ゴムとしては、水膨潤性ゴムは、ゴムに吸水性物質が添加された材料であり、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有するゴム材である。水膨潤性ゴムとしては、例えば、ポリアクリル酸中和物の架橋物、デンプンアクリル酸グラフト共重合体架橋物、架橋カルボキシメチルセルロース塩、ポリビニルアルコール等の吸水性物質がゴムに添加されたゴム材が挙げられる。また、水膨潤性ゴムとしては、例えば、特開平9−208752号公報に記載されているケチミン化ポリアミド樹脂、グリシジルエーテル化物、吸水性樹脂及びゴムを含有する水膨潤性ゴムが挙げられる。ゴム部材の材質が水膨潤性ゴムの場合は、本発明のシリンダボア壁の保温具が溝状冷却水流路に設置され冷却水が流されて、水膨潤性ゴムが水を吸収することで、水膨潤性ゴムが膨張して所定の形状に膨張変形する。
【0054】
セルロース系スポンジは、水を吸収して膨潤し、膨張した形状を保持する保形性を有する。
【0055】
膨張部材は、円弧状断面を有する。膨張部材は、正面側から見たときに、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有する。膨張部材の外縁は、正面側当て板の開口より外側に位置し、且つ、膨張材料の内縁、すなわち、空間部の輪郭は、正面側当て板の開口より内側に位置する。そのため、膨張部材の外縁側が、正面側当て板と背面側押し付け部材とで挟み込まれているので、膨張部材が保温部に固定され、且つ、膨張部材の内縁側が、正面側当て板の開口からはみ出しているので、溝状冷却水流路内で膨張し、接触面がシリンダボアの壁面に接触する。
【0056】
そして、溝状冷却水流路内で、膨張材料の内縁側が膨張して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触することにより、膨張材料の内縁側と、シリンダボアのボア壁と、背面側押し付け部材とに囲まれている冷却水保持部が形成される。内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部には、冷却水が保持される。冷却水保持部に保持された冷却水は、冷却水保持部内に留まっているため、徐々に温度が上昇し、膨張材料の内縁側と同程度の温度になる。このことにより、冷却水保持部に保持された冷却水は、膨張材料と同程度の保温性を発揮するので、冷却水保持部に保持された冷却水及び膨張材料の内縁側が、保温部位として機能する。
【0057】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る背面側押し付け部は、円弧状断面を有し、膨張部材の全体を膨張部材の背面側から押し付けることができるように、膨張部材の背面側(接触面側とは反対側の面)に沿う形状であり、膨張材料の背面側全体又はほぼ背面側全体を覆う形状である。また、背面側押し付け部は、冷却水保持部の背面側を閉じる材料でもある。そのため、膨張部材の空間部の全体を背面側から覆っている。
【0058】
背面側押し付け部の上端、下端、右端及び左端には、折り曲げ部が形成されている。背面側押し付け部の折り曲げ部は、背面側押し付け部材、膨張部材及び正面側当て板が順に重ねられた状態で、正面側当て板側に折り曲げられることにより、折り曲げ部と背面押し付け部との間で、膨張部材及び正面側当て板を挟み込むための部位である。
【0059】
背面側押し付け部は、
図5に示す形態例のように、膨張部材を背面側から溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付ける部材(例えば、背面側押し付け板32)と、折り曲げ部が形成されている部材(例えば、弾性部材付設部材33)との組み合わせで構成されていてもよく、あるいは、
図19に示す形態例のように、膨張部材を背面側から溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付ける部位と、折り曲げ部との両方を有する1つの部材で構成されていてもよい。
図19に示す背面側押し付け部47は、背面側押し付け部位321を有し、折り曲げられることにより、折り曲げ部と背面押し付け部材との間で、膨張部材及び正面側当て板を挟み込むための折り曲げ部331c、331d、332e及び332fと、基体部材に保温部を固定するための折り曲げ部37aが形成されており、弾性部材39が付設されている。
【0060】
背面側押し付け部の材質は、弾性部材により背面側から押されたときに、膨張部材を溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けることができるよう変形できるものであればよく、適宜選択されるが、ステンレス鋼、アルミニウム合金等の金属板が好ましい。背面側押し付け部の厚みは、弾性部材により背面側から押し付けられたときに、弾性部材を溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けることができるよう変形できるものであればよく、適宜選択される。
【0061】
背面側押し付け部には、弾性部材が付設されている。弾性部材は、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具が、溝状冷却水流路に設置され、膨張材料が膨張することにより、弾性変形し、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、背面側押し付け部材が感熱膨張ゴムを押し付けるように、弾性力により付勢するための部材である。
【0062】
弾性部材は、保温部を上から見たときに、円弧方向に、1つ以上付設されている。そして、弾性部材は、円弧方向に、2つ以上付設されていることが、膨張材料が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けられる力にバラツキが少なくなる点で好ましく、保温部の円弧方向の中央又は中央近傍に1か所、保温部の一方の端側寄りに1か所、他方の端寄りに1か所の合計3か所に付設されていることがより好ましい。更に、膨張材料の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性を高めるために、保温部の円弧方向の4か所以上に弾性部材が付設されていてもよい。
【0063】
弾性部材の形態は、特に制限されず、例えば、板状の弾性部材、コイル状の弾性部材、重ね板バネ、トーションバネ、弾性ゴム等が挙げられる。弾性部材の材質は、特に制限されないが、耐LLC性が良く及び強度が高い点で、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等が好ましい。弾性部材としては、金属板バネ、コイルバネ、重ね板バネ、トーションバネ等の金属弾性部材が好ましい。
【0064】
背面側押し付け部に形成されている折り曲げ部のうち、右端及び左端に形成されている折り曲げ部は、
図6に示す形態例のように、背面側押し付け部材の右端又は左端の上下方向の全部に亘って形成されていてもよいし、あるいは、
図18に示す形態例のように、背面側押し付け部の右端又は左端の上下方向の一部に形成されていてもよい。また、折り曲げ部が、背面側押し付け部の右端又は左端の一部に形成されている場合は、正面側当て板のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分には、凸部が形成されていることが、膨張部材が位置ずれを起こし難くなる点で好ましい。
図18に示す形態例の保温部35aでは、正面側当て板30aの右側部のうち、外側端が折り曲げ部332cに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30aの右側部の長手方向に延びる凸部302cが形成されており、また、正面側当て板30aの左側部のうち、外側端が折り曲げ部332dに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30aの左側部の長手方向に延びる凸部302dが形成されている。
【0065】
背面側押し付け部の右端及び左端の折り曲げ部は、直線状に折り曲げられるため、
図6に示す形態例のように、背面側押し付け部の右端又は左端の上下方向の全部に亘って形成されていても、正常に折り曲げられる。そして、背面側押し付け部の右端及び左端の折り曲げ部は、弾性部材付設部材の右端又は左端の上下方向の全部に亘って形成されており、膨張材料及び正面側当て板の右側又は左側の上下方向の全部を挟み込んでいることが、膨張部材が位置ずれを起こし難くなる点で好ましい。
【0066】
保温部の上端及び下端は、上から見たときに円弧状であるため、背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部の幅が長過ぎると、折り曲げ部が正常に折り曲げられず、また、膨張材料及び正面側当て板が正常に固定されない。そのため、背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部の幅は、正常な折り曲げが可能となり且つ膨張材料及び正面側当て板の正常な固定が可能となる範囲で、適宜選択される。背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部の数は、保温部を上から見たときに、保温部の円弧方向に、2つ以上である。
【0067】
背面側押し付け部の上端及び下端には、保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部が形成されている。背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部の数が1つずつの場合、保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部は、背面側押し付け部の上端及び下端の円弧方向の中央又は中央近傍に、それぞれ1つずつ形成されている。また、背面側押し付け部の上端及び下端に、保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部が、それぞれ2以上形成される場合は、保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部の形成位置は、保温部が安定して固定される位置が適宜選択される。保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部の幅は、正常な折り曲げが可能となり且つ基体部材への固定が可能となる範囲で、適宜選択される。
【0068】
なお、背面側押し付け部の作製方法としては、例えば、
図17に示すように、金属板43を用意し、
図17(A)中の点線の位置で、金属板43を打ち抜くことにより、
図17(B)のように、金属板バネ39、折り曲げ部332a、332b、331b、332a、332b及び折り曲げ部37を形成させて、金属板の打ち抜き物45を作製する。次いで、金属板の打ち抜き物45全体を円弧状に成形し、且つ、金属板バネ39を背面側に曲げることにより、弾性部材付設部材33を作製する。次いで、背面側押し付け板となる金属板を、円弧状に成形して、背面側押し付け板32を作製する。そして、弾性部材付設部材33と背面側押し付け板32とを組み合わせることで、背面側押し付け部材とする。
【0069】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る正面側当て板は、円弧形状を有し、正面側から見た時に、内側には、略矩形の開口が形成されている。そして、保温部では、膨張部材の外縁側が、背面側押し付け部と正面側当て板との間に挟み込まれることにより、膨張部材が固定されている。
【0070】
正面側当て板には、外側端が折り曲げ部により挟み込まれている部分と、外側端が折り曲げ部に挟み込まれない部分と、がある。保温部では、正面側当て板の少なくとも上側部及び下側部には、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分がある。また、保温部では、正面側当て板の右側部及び左側部には、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分があってもなくてもよい。言い換えると、保温部では、正面側当て板の右側部及び左側部は、外側端の上下方向の全部が折り曲げ部に挟み込まれていてもよいし、一部が挟み込まれていてもよい。
【0071】
正面側当て板のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分には、背面側押し付け部材に向かって凸である凸部が形成されていてもよいし、凸部が形成されていなくてもよいが、背面側押し付け部材に向かって凸である凸部が形成されていることが、凸部が膨張部材にめり込むことにより、膨張部材が保温部に強く固定されて、位置ずれを起こし難くなる点で好ましい。正面側当て板の上側部のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分に凸部が形成される場合、正面側当て板の上側部の長手方向に延びる凸部が形成され、また、正面側当て板の下側部のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分に凸部が形成される場合、正面側当て板の下側部の長手方向に延びる凸部が形成され、また、正面側当て板の右側部のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分に凸部が形成される場合、正面側当て板の右側部の長手方向に延びる凸部が形成され、また、正面側当て板の左側部のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分に凸部が形成される場合、正面側当て板の左側部の長手方向に延びる凸部が形成される。
【0072】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具は、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁のうちの一部のボア壁を保温するためのシリンダボア壁の保温具であり、
膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有し、外縁が正面側当て板の第1開口より外側に位置し、且つ、内縁が前記正面側当て板の前記第1開口より内側に位置する形状であり、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、
前記膨張部材の背面側に設けられ、前記膨張部材全体を背面側から前記溝状冷却水流路の前記シリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部と、
前記膨張部材の接触面側に設けられ、内側に前記第1開口を有し、前記背面側押し付け部とで、前記膨張部材の外縁側を挟み込むための前記正面側当て板と、
前記膨張部材、前記背面側押し付け部、および正面側当て板を一体の保温部として固定する固定部と、
前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定されるとともに前記背面側押し付け部を前記シリンダボア側の壁面に向かって付勢する弾性部材を有する基体部材と、
を有すること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具である。
【0073】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具について、
図20〜
図25を参照して説明する。
図20は、本発明のシリンダボア壁の保温具に係る保温部の形態例を作製する様子を示す模式的な斜視図である。
図21は、本発明のシリンダボア壁の保温具に係る基体部材を示す模式的な斜視図である。
図22は、本発明のシリンダボア壁の保温具の形態例を示す模式的な斜視図であり、(A)は、内側斜め上から見た図であり、(B)は、背面側斜め上から見た図である。
図23は、
図22中のシリンダボア壁の保温具を上から見た図である。なお、
図23では、シリンダボア壁の保温具に固定されている保温部のうち、右端の保温部については、構成部材毎に分離して示した。
図24は、
図22中シリンダボア壁の保温具を横から見た図であり、内側から見た図である。
図25は、
図22中のシリンダボア壁の保温具を横から見た図であり、背面側から見た図である。
【0074】
保温部35bは、
図20に示すように、円弧状に成形されている背面側押し付け部材33b、膨張部材31aと、円弧状に成形されている正面側当て板30と、が順に重ね合わされ、背面側押し付け部材33bの上端に形成されている折り曲げ部332a、332b、背面側押し付け部材33bの下端に形成されている折り曲げ部331a、331b、背面側押し付け部材33bの右端に形成されている折り曲げ部332a、及び背面側押し付け部材33bの左端に形成されている折り曲げ部332bが、正面側当て板30側に折り曲げられて、折り曲げ部332a、332b、331b、332a、332bと背面側押し付け部材33bとの間に、膨張部材31a及び正面側当て板30が挟み込まれることにより、これらの部材が固定されて、作製される。
【0075】
基体部材34bは、
図21に示すように、シリンダボア壁の保温具36bが設置される溝状冷却水流路14に沿う形状、すなわち、上から見た時に複数の円弧が連なった形状を有している。基体部材34bには、弾性部材である金属板バネ39が付設されている。金属板バネ39は、基体部材34bに成形される金属板から、切り抜き部42を切り抜き、背面側に折り曲げられることにより、基体部材34bに付設される。そして、溝状冷却水流路内で膨張部材31bが膨張すると、金属板バネの39の張り出した先端27が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17とは反対側の壁面18に接触する。
【0076】
そして、
図23に示すように、基体部材34bの各ボア部に、保温部35bが、1つずつ固定される。保温部35bの基体部材34bへの固定は、背面側押し付け部材33bの上端及び下端に形成されている折り曲げ部37が、基体部材34b側に折り曲げられて、折り曲げ部37と背面側押し付け部材33bとの間に、基体部材34bが挟み込まれることにより、保温部35bが、基体部材34bに固定される。なお、本実施形態では、基体部材34aの4つの各シリンダボアのボア壁にそれぞれに対応して、4つの保温具35bが配置されているが、保温具35bの配置はこれに限られるものではない。保温の必要性がないシリンダボアのボア壁に対応する保温具35bをあえて設置しなくてもよい。したがって、保温具35bの配置は任意であり、基体部材34aの4個の円弧状のボア部のすべてに保温具35aを設置してもよいし、基体部材34aの4個の円弧状のボア部のいずれかに保温具35bを設置しない箇所を設けてもよい。
【0077】
図22に示すシリンダボア壁の保温具36bは、
図4中、一方の片側半分(20b側)のボア壁21bを保温するための保温具である。シリンダボア壁の保温具36bには、冷却水流れ仕切り部材38が付設されている。
【0078】
図8〜
図11に示すように、シリンダボア壁の保温具36bは、
図4に示すシリンダブロック11の片側半分のボア壁21bを保温するための保温具であり、シリンダブロック11の片側半分のボア壁21bには、シリンダボア12a1のボア壁23a1、シリンダボア12b1のボア壁23b3、シリンダボア12b2のボア壁23b4及びシリンダボア12a2のボア壁23a2と、4つの各シリンダボアのボア壁がある。そして、シリンダボア壁の保温具36bでは、この4つの各シリンダボアのボア壁を保温するために保温部が設けられる。そのため、シリンダボア壁の保温具36bには、4つの保温部35bが設けられている。
【0079】
シリンダボア壁の保温具36bでは、シリンダボア側の壁面に、膨張部材31aの接触面26が向き、膨張部材31aの接触面26が、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に接触できるように、保温部35bが固定されている。
【0080】
シリンダボア壁の保温部36bに固定されている保温部35bは、
図20に示すように、正面側当て板30と、膨張部材31aと、背面側押し付け部材33bと、からなる。
【0081】
膨張部材31aは、溝状冷却水流路内で膨張し、各シリンダボアのボア壁22に直接接触して、ボア壁22の保温箇所を囲む部材である。そして、膨張部材31aが、溝状冷却水流路内で膨張して、シリンダボアのボア壁22に接触することにより、膨張部材31aとシリンダボアのボア壁22と背面側押し付け部材33bとで、冷却水保持部を形成し、内燃機関の運転中に、冷却水保持部に保持された冷却水が、膨張部材31aと同程度の温度まで加温されることにより、各シリンダボアのボア壁22が保温される。そのため、膨張部材31aは、中央部に、溝状冷却水流路内で膨張することにより冷却水保持部を形成させるための空間部25を有する。また、背面側押し付け部材33bは、円弧状断面を有し、膨張部材31aの全体を膨張部材31aの背面側から押し付けることができるように、膨張部材31aの背面側(接触面26側とは反対側の面)に沿う形状である。また、背面側押し付け部材33bは、円弧状断面を有し、膨張材料31aの背面側に沿う形状である。正面側当て板30は、円弧状に成形されており、内側から見た時に、外縁が組形状であり、矩形状の開口301が形成されている。そして、背面側押し付け部材33bの上端に形成されている折り曲げ部332a、332b、背面側押し付け部材33bの下端に形成されている折り曲げ部331a、331b、背面側押し付け部材33bの右端に形成されている折り曲げ部332a、及び背面側押し付け部材33bの左端に形成されている折り曲げ部332bが、正面側当て板30側に折り曲げられて、背面側押し付け部材33bと折り曲げ部332a、332b、331b、332a、332bとの間に、背面側押し付け部材32、膨張部材31a及び正面側当て板30が挟み込まれることにより、これらの部材が固定されている。なお、膨張部材31aでは、背面側押し付け部材33b側とは反対側の面が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に接する接触面26である。
【0082】
保温部35bを内側から見たときに、膨張部材31aの内縁、すなわち、膨張部材31aの空間部25の輪郭は、正面当て板30の開口301より内側に位置している。また、膨張部材31aの外縁は、正面当て板30の開口301より外側に位置している。そのため、膨張部材31aは、外縁側が、正面当て板30と背面側押し付け板32により挟み込まれて、固定される。また、膨張材料31aの内縁側は、正面当て板30と背面側押し付け部材33bにより挟み込まれておらず、正面当て板30の開口301から、はみ出している。
【0083】
正面側当て板30には、外側端が折り曲げ部により挟み込まれている部分と、折り曲げ部に挟み込まれない部分と、がある。つまり、保温部35bでは、正面側当て板30の上側部に、外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の下側部に、外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の右側部に、外側端が折り曲げ部332aに挟み込まれている部分と、正面側当て板30の左側部に、外側端が折り曲げ部332bに挟み込まれている部分と、が存在する。また、保温部35bでは、正面側当て板30の上側部に、外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれていない部分と、正面側当て板30の下側部308bに、外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれていない部分と、が存在する。
【0084】
正面側当て板30のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分には、凸部が形成されている。つまり、正面側当て板30のうち、上側部の外側端が折り曲げ部332a、332bに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30の上側部の長手方向に延びる凸部302aが形成されている。また、正面側当て板30の下側部の外側端が折り曲げ部331a、331bに挟み込まれていない部分には、正面側当て板30の下側部の長手方向に延びる凸部302bが形成されている。
【0085】
正面当て板30に形成されている凸部302aは、膨張部材31aにめり込んでいる。このことにより、膨張部材31aは、保温部に強く固定されるので、位置ずれを起こし難くなる。内側から見たときに、凸部302aが形成されている位置は、膨張材料31aの外縁より内側である。
【0086】
保温部35bが固定される基体部材34bは、上から見たときに、4つの円弧が連続する形状に成形されており、基体部材34bの形状は、溝状冷却水流路14の片側半分に沿う形状である。
【0087】
基体部材34bは、保温部35bが固定される部材であり、保温部35bの位置が溝状冷却水流路14内でずれないように、保温部35bの位置を定める役割を果たす。基体部材34bは、金属板又は合成樹脂の成形体である。
【0088】
シリンダボア壁の保温具36bが、シリンダブロック11の溝状冷却水流路14内に設置された後、内燃機関が運転されると、膨張材料31aが膨張する。そして、正面当て板30と背面側押し付け部材33bにより挟み込まれていない膨張材料31aの内縁側は、正面側当て板30の内側部分に形成されている開口301を通って、シリンダボア側の壁面17に向かって膨張し、接触面26がシリンダボア側の壁面17に接触する。接触面26がシリンダボア側の壁面17に接触した後も、膨張材料ゴム31aは膨張を続け、開放状態まで膨張しようとする。そのため、金属板バネ39の先端27には、背面側押し付け部材33bに向かう方向に力が加えられる。このことにより、金属板バネ39は、先端27が弾性部材付設部材33側に近づくように変形するので、金属板バネ39には、元に戻ろうとする弾性力が生じる。そして、この弾性力により、背面側押し付け部材33bは基体部材34bを共に、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に向かって押され、その結果、背面側押し付け部材33bにより、膨張部材31aが、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けられる。つまり、シリンダボア壁の保温具36bが、溝状冷却水流路14に設置され、膨張部材31aが膨張することにより、金属板バネ39が変形し、その変形が戻ろうとして生じる弾性力により、膨張材料31aを溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に押し付けるように、背背面側押し付け部材33bが付勢される。このようにして、シリンダボア壁の保温具36bの保温部35bの膨張材料31aの内縁側が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の全壁面17のうちの一方の片側半分の壁面17bの各シリンダボアのボア壁面に接触する。
【0089】
このとき、膨張材料31aの内縁側が膨張して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面17に接触することにより、膨張部材31aの内縁側と、壁面17と、背面側押し付け部材33bとに囲まれている冷却水保持部が形成される。内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部には、冷却水が保持される。冷却水保持部に保持された冷却水は、冷却水保持部内に留まっているため、徐々に温度が上昇し、膨張材料31aの内縁側と同程度の温度になる。このことにより、冷却水保持部に保持された冷却水は、膨張材料31aと同程度の保温性を発揮するので、冷却水保持部25に保持された冷却水及び膨張材料31aの内縁側が、保温部位として機能する。冷却水保持部25は、内燃機関が運転される際に、完全な密閉状態を維持してもよく、これによって冷却水保持部25の内外で冷却水の移動を規制してもよい。この構造であれば、保温対象となるシリンダボアのボア壁の下部および中間部の保温を確実に行うことができる。冷却水保持部25は、内燃機関が運転される際に、完全な密閉状態とはならずに、膨張部材31aの一部から冷却水が入れ替わることを許容してもよい。この構造であれば、内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部25に保持された冷却水が微量ずつ冷却水保持部25の内外で入れ替わることになる。これによって、内燃機関が長時間運転されたり、高い回転数で運転された場合に、冷却水を微量ずつ入れ換えることで、保温対象となるシリンダボアのボア壁の温度が上がり過ぎることを防止することができる。
【0090】
本発明の第二の形態の保温具は、シリンダボアを有する内燃機関のシリンダブロックの溝状冷却水流路に設置され、全シリンダボアのボア壁のうちの一部のボア壁を保温するためのシリンダボア壁の保温具であり、
膨張材料からなり、中央部に膨張後に冷却水保持部となる空間部を有し、外縁が正面側当て板の第1開口より外側に位置し、且つ、内縁が前記正面側当て板の前記第1開口より内側に位置する形状であり、膨張後に前記溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、
前記膨張部材の背面側に設けられ、前記膨張部材全体を背面側から前記溝状冷却水流路の前記シリンダボア側の壁面に向かって押し付けるための背面側押し付け部と、
前記膨張部材の接触面側に設けられ、内側に前記第1開口を有し、前記背面側押し付け部とで、前記膨張部材の外縁側を挟み込むための前記正面側当て板と、
前記膨張部材、前記背面側押し付け部、および正面側当て板を一体の保温部として固定する固定部と、
前記溝状冷却水流路の形状に沿う形状を有し、前記保温部が固定されるとともに前記背面側押し付け部を前記シリンダボア側の壁面に向かって付勢する弾性部材を有する基体部材と、
を有すること、
を特徴とするシリンダボア壁の保温具である。
【0091】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具は、シリンダボア壁の保温具の基体部材に固定されて、シリンダボア壁を保温するための保温具であり、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面を保温するための保温部と、保温部が固定される基体部材と、を有する。保温部は、円弧状に成形されている背面側押し付け部と、溝状冷却水流路内で膨張して、接触面が溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触する膨張部材と、円弧状に成形されている正面側当て板と、が順に重ね合わされ、且つ、背面側押し付け部の上端に形成されている折り曲げ部、背面側押し付け部の下端に形成されている折り曲げ部、背面側押し付け部の右端に形成されている折り曲げ部、及び背面側押し付け部の左端に形成されている折り曲げ部が、正面側当て板側に折り曲げられて、背面側押し付け部と折り曲げ部との間に、膨張部材及び正面側当て板が挟み込まれることにより、これらの部材が保温部に固定されている。
【0092】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具では、設置される溝状冷却水流路に沿う形状、すなわち、上から見た時に複数の円弧が連なった形状に成形された基体部材の各ボア部に、保温部が固定されている。保温部の基体部材への固定は、背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部が、基体部材側に折り曲げられて、折り曲げ部と背面側押し付け部との間に、基体部材が挟み込まれることにより、保温部が、基体部材に固定される。
【0093】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る基体部材は、溝状冷却水流路内での各保温部の位置がずれないように、保温部が固定される部材であるので、本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具の設置位置の溝状冷却水流路に沿った形状をしており、上から見たときに、全シリンダボアを一周囲む形状又は複数の円弧が連続する形状に成形されている。基体部材は、合成樹脂製又は金属製である。基体部材が合成樹脂製の場合、基体部材は、通常、合成樹脂の射出成形により、冷却水流れ仕切り部材等の基体部材に付設される部材と共に、一体成形されて作製され、弾性部材が付設される。合成樹脂材は、耐熱性及び耐LLC性を有していれば、特に制限されず、シリンダボアのボア壁の保温具やウォータージャケットスペーサに用いられる合成樹脂であればよい。基体部材が金属製の場合、金属材料としては、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等の金属板が挙げられ、弾性部材が付設されている。なお、基体部材が金属製の場合、基体部材は、一端側から他端側まで連続しているのであれば、1つの金属板を成形して作製されたものであっても、複数の金属板を繋ぎ合わせて作製されたものであってもよい。
【0094】
基体部材には、弾性部材が付設されている。弾性部材は、本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具が、溝状冷却水流路に設置され、膨張材料が膨張することにより、弾性変形し、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって、背面側押し付け部材が基体部材と共に、感熱膨張ゴムを押し付けるように、弾性力により付勢するための部材である。
【0095】
弾性部材は、基体部材を上から見たときに、各ボア部の円弧方向に、1つ以上付設されている。そして、弾性部材は、各ボア部の円弧方向に、2つ以上付設されていることが、膨張部材が、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に向かって押し付けられる力にバラツキが少なくなる点で好ましく、基体部材の各ボア部の円弧方向の中央又は中央近傍に1か所、基体部材の各ボア部の一方の端側寄りに1か所、他方の端寄りに1か所の合計3か所に付設されていることがより好ましい。更に、膨張材料の溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面への密着性を高めるために、基体部材の各ボア部の円弧方向の4か所以上に弾性部材が付設されていてもよい。
【0096】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る弾性部材は、特に制限されず、例えば、板状の弾性部材、コイル状の弾性部材、重ね板バネ、トーションバネ、弾性ゴム等が挙げられる。弾性部材の材質は、特に制限されないが、耐LLC性が良く及び強度が高い点で、ステンレス鋼(SUS)、アルミニウム合金等が好ましい。弾性部材としては、金属板バネ、コイルバネ、重ね板バネ、トーションバネ等の金属弾性部材が好ましい。
【0097】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材と同様である。
【0098】
溝状冷却水流路内で、膨張材料の内縁側が膨張して、溝状冷却水流路のシリンダボア側の壁面に接触することにより、膨張材料の内縁側と、シリンダボアのボア壁と、背面側押し付け部とに囲まれている冷却水保持部が形成される。内燃機関が運転されているときに、冷却水保持部には、冷却水が保持される。冷却水保持部に保持された冷却水は、冷却水保持部内に留まっているため、徐々に温度が上昇し、膨張材料の内縁側と同程度の温度になる。このことにより、冷却水保持部に保持された冷却水は、膨張材料と同程度の保温性を発揮するので、冷却水保持部に保持された冷却水及び膨張材料の内縁側が、保温部位として機能する。
【0099】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る背面側押し付け部は、円弧状断面を有し、膨張部材の全体を膨張部材の背面側から押し付けることができるように、膨張部材の背面側(接触面側とは反対側の面)に沿う形状であり、膨張材料の背面側全体又はほぼ背面側全体を覆う形状である。また、背面側押し付け部材は、冷却水保持部の背面側を閉じる材料でもある。そのため、膨張部材の空間部の全体を背面側から覆っている。
【0100】
背面側押し付け部の上端、下端、右端及び左端には、折り曲げ部が形成されている。背面側押し付け部の折り曲げ部は、背面側押し付け部、膨張部材及び正面側当て板が順に重ねられた状態で、正面側当て板側に折り曲げられることにより、折り曲げ部と背面押し付け部との間で、膨張部材及び正面側当て板を挟み込むための部位である。
【0101】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る背面側押し付け部の材質及び厚みは、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る背面側押し付け部の材質及び厚みと同様である。
【0102】
背面側押し付け部に形成されている折り曲げ部のうち、右端及び左端に形成されている折り曲げ部は、背面側押し付け部材の右端又は左端の上下方向の全部に亘って形成されていてもよいし、あるいは、背面側押し付け部の右端又は左端の上下方向の一部に形成されていてもよい。また、折り曲げ部が、背面側押し付け部の右端又は左端の一部に形成されている場合は、正面側当て板のうち、外側端が折り曲げ部に挟み込まれていない部分には、凸部が形成されていても、凸部が形成されていなくてもよいが、凸部が形成されていることが、膨張部材が位置ずれを起こし難くなる点で好ましい。背面側押し付け部の上端及び下端に形成されている折り曲げ部の数は、保温部を上から見たときに、保温部の円弧方向に、2つ以上である。
【0103】
背面側押し付け部の上端及び下端には、保温部を基体部材に固定するための折り曲げ部が形成されている。
【0104】
本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る正面側当て板は、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具に係る正面側当て板と同様である。
【0105】
正面側当て板は、円弧形状を有し、正面側から見た時に、内側には、略矩形の開口が形成されている。そして、保温部では、膨張部材の外縁側が、背面側押し付け部と正面側当て板との間に挟み込まれることにより、膨張部材が固定されている。
【0106】
次いで、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材の形態について説明する。
【0107】
図26に示す膨張部材31aでは、外縁の形状が矩形であり、且つ、内縁の形状、すなわち、空間部の輪郭が矩形である。膨張部材31aは、一つの部材からなる。つまり、膨張部材31aは、複数の分割体で構成されているものではない。
【0108】
図27に示す膨張部材31bでは、外縁の形状は、矩形の上側及び下側の一部が、外に向かって張り出している形状である。膨張部材31bの内縁の形状は矩形である。膨張部材31bは、一つ部材からなる。なお、
図27に示す形態例では、矩形の上側及び下側に張り出し部を有しているが、これに限定されず、矩形の右側及び/又は左側に張り出し部を有する形状であってもよい。また、
図27に示す形態例では、矩形の一辺に2つの張り出し部を有しているが、これに限定されず、張り出し部を有する場合、一辺に一つ以上の張り出し部を有することができる。
【0109】
つまり、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材の外縁の形状は、外縁が正面側当て板の開口より外側に位置し、正面側当て板と背面側押し付け部材との間に挟まれて、保温部に固定されることができるのであれば、矩形であってもよいし、矩形でなくてもよい。
【0110】
図28に示す膨張部材31cは、(A)に示すように、第一分割体31c1と第二分割体31c2とで構成されている。そして、(B)に示すように、第一分割体31c1と第二分割体31c2が、合わせ部40cで合わされることより、膨張部材31cの形状となる。膨張部材31cの外縁の形状は矩形であり、且つ、内縁の形状は矩形である。このとき、合わせ部40c同士の間には、隙間を設けても良いし、隙間を設けなくてもよい。隙間を設けない場合には、保温対象となるシリンダボアのボア壁の下部および中間部の保温を確実に行うことができる。合わせ部40c同士の間に隙間を設ける場合には、当該隙間の幅寸法は、例えば、0.5〜2.0mm程度であることが望ましい。このような隙間を設けた場合には、この隙間から冷却水が微量ずつ入れ替わることとなりる。このため、内燃機関が長時間運転したり、内燃機関が高回転数で運転したりした場合に、入れ替わる冷却水によって熱を冷却水保持部25の外に逃がすことができ、保温対象となるシリンダボアのボア壁の温度が上がり過ぎることを防止することができる。
【0111】
図29に示す膨張部材31dは、(A)に示すように、第一分割体31d1と第二分割体31d2とで構成されている。そして、(B)に示すように、第一分割体31d1と第二分割体31d2が、合わせ部40dで合わされることより、膨張部材31dの形状となる。膨張部材31dの外縁の形状は矩形であり、且つ、内縁の形状は矩形である。このとき、合わせ部40d同士の間には、隙間を設けても良いし、隙間を設けなくてもよい。隙間を設けない場合の効果および隙間を設けた場合の効果は、
図28の例と同様である。
【0112】
図30に示す膨張部材31eは、(A)に示すように、第一分割体31e1と第二分割体31e2と第三分割体31e3と第四分割体31e4とで構成されている。そして、(B)に示すように、第一分割体31e1と第二分割体31e2と第三分割体31e3と第四分割体31e4が、合わせ部40eで合わされることより、膨張部材31eの形状となる。膨張部材31eの外縁の形状は矩形であり、且つ、内縁の形状は矩形である。このとき、合わせ部40e同士の間には、隙間を設けても良いし、隙間を設けなくてもよい。隙間を設けない場合の効果および隙間を設けた場合の効果は、
図28の例と同様である。
【0113】
つまり、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、複数の分割体で構成されていてもよい。分割体の数は、2又は4が、分割体の形状が互いに同一又は対称な形状となるため、分割体の作製が容易又は製造コストが低減される点で好ましい。
【0114】
図31に示す膨張部材31fは、(A)に示すように、第一分割体31f1と第二分割体31f2とで構成されている。そして、(B)に示すように、第一分割体31f1と第二分割体31f2が、合わせ部40fで合わされることより、膨張部材31fの形状となる。膨張部材31fの外縁の形状は矩形であり、且つ、内縁の形状は矩形である。この膨張部材31fでは、分割体の一方に形成されている凸部412と分割体の他方に形成されている凹部411が係合することにより、第一分割体31f1と第二分割体31f2が、合わせ部40fで合わせられている。このとき、合わせ部40f同士の間には、隙間を設けても良いし、隙間を設けなくてもよい。隙間を設けない場合の効果および隙間を設けた場合の効果は、
図28の例と同様である。
【0115】
図32に、膨張部材31fの合わせ部40f近傍の拡大図を示す。(A)に示すように、第一分割体31f1に形成されている凸部412と、第二分割体31f2に形成されている凹部411とが、係合している。この状態から、第一分割体31f1が横方向461に動いても、第一分割体の凸部412が、第二分割体の凹部411の横部401fを押すため、第一分割体31fと第二分割体31fが分離することが防がれる。それに対して、(B)に示すように、第二分割体31f2が縦方向462に動くと、第一分割体31fと第二分割体31fとの間に隙間47が生じる。しかし、第二分割体31f2の動く量が、第二分割体の凹部411の縦部401fの長さの範囲内であれば、第一分割体31f1と第二分割体31f2が完全に分離することはない。そして、第二分割体31f2の動く量が、第二分割体の凹部411の縦部401fの長さの範囲内であれば、第二分割体の凹部411の縦部401fが、第一分割体の凸部412と接触しているので、この接触部分が、冷却水が冷却水保持部から膨張部材31fの外に流出するのを防ぐシール部となる。
【0116】
図33に示す膨張部材31gは、(A)に示すように、第一分割体31g1と第二分割体31g2と第三分割体31g3と第四分割体31g4で構成されている。そして、(B)に示すように、第一分割体31g1と第二分割体31g2と第三分割体31g3と第四分割体31g4が、合わせ部40gで合わされることより、膨張部材31gの形状となる。膨張部材31gの外縁の形状は矩形であり、且つ、内縁の形状は矩形である。この膨張部材31gでは、分割体の一方に形成されている凸部412と分割体の他方に形成されている凹部411が係合することにより、第一分割体31g1と第二分割体31g2と第三分割体31g3と第四分割体31g4が、合わせ部40gで合わせられている。第一分割体31g1、第二分割体31g2、第三分割体31g3及び第四分割体31g4に形成されている凸部又は凹部の機能は、
図32に示す凸部及び凹部の機能と同様である。このとき、合わせ部40g同士の間には、隙間を設けても良いし、隙間を設けなくてもよい。隙間を設けない場合の効果および隙間を設けた場合の効果は、
図28の例と同様である。
【0117】
つまり、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、複数の分割体で構成されていており、分割体の一方に形成されている凸部と分割体の他方に形成されている凹部が係合することにより合わせられている。そして、膨張部材が、複数の分割体からなり、分割体の一方に形成されている凸部と分割体の他方に形成されている凹部が係合することにより合わせられていることにより、分割体の一部が振動により動いても、分割体が完全に分離することが防がれると共に、冷却水が冷却水保持部から膨張部材の外に流出することが防がれる。
【0118】
図29に示す膨張部材31dでは、外縁の形状及び内縁の形状が矩形であるため、
図34に示すように、一枚の大きな膨張材料シートから切り抜いて、膨張部材31dの第一分割体31d1と第二分割体31d2を作製するときに、左から順に、第一分割体31d1を打ち抜いた後、第一分割体31d1の内縁に第二分割体31d2の外縁を一致させて第二分割体31d2を打ち抜き、次いで、第二分割体31d2の内縁に第一分割体31d1の外縁を一致させて第一分割体31d1を打ち抜き、次いで、第一分割体31d1の内縁に第二分割体31d2の外縁を一致させて第二分割体31d2を打ち抜くということを繰り返して、分割体を作製することができる。
【0119】
また、
図31に示す膨張部材31fでは、外縁の形状及び内縁の形状が矩形であるため、
図35に示すように、一枚の大きな膨張材料シートから切り抜いて、膨張部材31fの第一分割体31f1と第二分割体31f2を作製するときに、左から順に、第一分割体31f1を打ち抜いた後、第一分割体31f1の内縁の近傍に第二分割体31f2の外縁を位置させて第二分割体31d2を打ち抜き、次いで、第二分割体31f2の内縁の近傍に第一分割体31f1の外縁を位置させて第一分割体31f1を打ち抜き、次いで、第一分割体31f1の内縁近傍に第二分割体31f2の外縁を位置させて第二分割体31f2を打ち抜くということを繰り返して、分割体を作製することができる。
【0120】
図30に示す膨張部材31eでは、外縁の形状及び内縁の形状が矩形であるため、
図36に示すように、一枚の大きな膨張材料シートから切り抜いて、膨張部材31eの第一分割体31e1と第二分割体31e2と第三分割体31e3と第四分割体31e4を作製するときに、左から順に、第一分割体31e1を打ち抜いた後、第一分割体31e1の内縁に第三分割体31e3の外縁を一致させて第三分割体31e3を打ち抜き、次いで、第三分割体31e3の内縁に第一分割体31e1の外縁を一致させて第一分割体31e1を打ち抜き、次いで、第一分割体31e1の内縁に第三分割体31e3の外縁を一致させて第三分割体31e3を打ち抜くということを繰り返し、且つ、左から順に、第二分割体31e2を打ち抜いた後、第二分割体31e2の内縁に第四分割体31e4の外縁を一致させて第四分割体31e4を打ち抜き、次いで、第四分割体31e4の内縁に第二分割体31e2の外縁を一致させて第二分割体31e2を打ち抜き、次いで、第二分割体31e2の内縁に第四分割体31e4の外縁を一致させて第四分割体31e4を打ち抜くということを繰り返し、分割体を作製することができる。
【0121】
つまり、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、複数の分割体で構成されており、外縁及び内縁が矩形であることにより、膨張部材用原材料シートから、分割体を切り抜いて作製するときに、一の分割体の内縁に他の一の分割体の外縁を一致させるか又は一の分割体の内縁の近傍に他の一の分割体の外縁を位置させて、分割体を作製することができるので、膨張部材が一つの部材で構成されている場合に比べ、同じ大きさの膨張部材用原材料シートから、多くの膨張部材を作製することができる。つまり、膨張部材が一つの部材で構成されている場合は、空間部を形成させるために切り抜かれた部分は、他の膨張部材の作製に使用することができないので、空間部に対応する部分が全て無駄になる。それに対して、膨張部材が、複数の分割体で構成されていており、外縁及び内縁が矩形である場合は、一の分割体の空間部に対応する部分の全て又は一部が、他の一の分割体の作製に用いられるので、原材料シートの無駄が少ない。よって、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る膨張部材は、複数の分割体で構成されていており、外縁及び内縁が矩形であることにより、膨張材料の原材料シートの歩留まりを高くすることができる。
【0122】
次いで、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に係る凸部(ビード)およびその周辺構造の第1〜第11実施形態について説明する。
[凸部の第1実施形態]
【0123】
図37、
図38を参照して、保温部35aの凸部(ビード)およびその周辺構造の第1実施形態について説明する。
保温部35aは、固定部材を有する。固定部材は、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材32、膨張部材31a、および正面側当て板30を互いに固定する。固定部材は、一例として弾性部材付設部材33と一体的に設けられているが、弾性部材付設部材33とは分離して設けられてもよい。
【0124】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bと、正面側当て板30の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の折り曲げ部331a、331bと、を有する。複数の折り曲げ部332a、332bおよび複数の折り曲げ部331a、331bは、いずれも保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0125】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向(冷却水の流れ方向Sと直交する方向)に延びる板金として形成され、保温部35aの縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。折り曲げ部332aは、保温部35aの右側端部に設けられ、折り曲げ部332bは、保温部35aの左側端部に設けられる。
【0126】
折り曲げ部331a、331bは、所定幅で横方向(冷却水の流れ方向S)に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の折り曲げ部331a、331bは、正面側当て板30の湾曲辺42の左側端部から湾曲辺42の全長の1/3の長さ分移動した位置と、正面側当て板30の湾曲辺42の右側端部から湾曲辺42の全長の1/3の長さ分移動した位置と、の2か所(上側の折り曲げ部331aと下側の折り曲げ部331bとを合算すると計4か所)に設けられる。
【0127】
折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、弾性部材付設部材33から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工(折り曲げ加工)されることで略U字形に折り曲げられている。このため、折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、挟み込み部を形成している。折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、折り曲げ部331a、331b、332a、332bと弾性部材付設部材33との間に、背面側押し付け部材32、膨張部材31a、および正面側当て板30を挟み込んでこれらを保持できる。折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、弾性部材付設部材33、背面側押し付け部材232、膨張部材31a、および正面側当て板30を互いに固定している。
【0128】
折り曲げ部331a、331b、332a、332bは、上記板金の折り曲げ加工に限られず、例えばねじ、リベット、ハトメ、溶接、ろう付け、バーリング加工等で形成されてもよい。
【0129】
上記したように、弾性部材付設部材33には、複数の金属バネ39が設けられる。金属バネ39は、軸部28Aと、軸部28Aの先端部に設けられる当接部28Bと、を有する。当接部28Bは、軸部28Aに対して折れ曲がるように配置されており、シリンダボア13側の壁面17とは反対側の壁面18に当接できる。
【0130】
図37、
図38に示すように、正面側当て板30は、方形枠状の平板をシリンダボア壁13の壁面17に沿って湾曲するように折り曲げて形成されている。正面側当て板30は、矩形状の第1開口46を有する。正面側当て板30は、金属板、例えばステンレス鋼板によって形成される。正面側当て板30は、縦方向に延びる一対の非湾曲辺41と、横方向に延びる一対の湾曲辺42と、を有する。さらに、正面側当て板30は、一対の非湾曲辺41に対応して縦方向に延びる一対の縦枠部27Aと、一対の湾曲辺42に対応して横方向に延びる一対の横枠部27Bと、を有する。左側の一つの縦枠部27Aは、左側の一つの折り曲げ部332bによって挟まれて保持されている。右側の一つの縦枠部27Aは、右側の一つの折り曲げ部332aによって挟まれて保持されている。
【0131】
正面側当て板30の横枠部27Bは、複数の凸部302a、302bを有する。複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331b同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0132】
図37、
図38に示すように、各凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。凸部302a、302bは、膨張部材31a(背面側押し付け部材32)に向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302bは、横枠部27B内で、直列的に設けられている。
【0133】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。本実施形態では、折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、凸部302a、302bが設けられる位置で背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0134】
以下の第2〜第7実施形態は、主として上記凸部の第1実施形態と異なる部分を説明し、凸部の第1実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[凸部の第2実施形態]
【0135】
図39、
図40を参照して、第2実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0136】
図39、
図40に示すように、膨張部材31aは、略方形の平板状で、且つシリンダボア壁15に沿って湾曲するように成形されている。膨張部材31aは、温度上昇によって膨張する性質のあるゴム材料で形成される。シリンダボア13のシリンダボア壁15に直接接触して、シリンダボア壁15の保温箇所を覆い、各シリンダボア13のシリンダボア壁15を保温するための部材である。
【0137】
図40に示すように、膨張部材31aは、四角の角に対応する位置に設けられる第1切欠部52と、折り曲げ部331a、331b同士の間の位置に設けられる第2切欠部53と、空間部25と、を有する。第1切欠部52は、複数の固定部から外れた位置で、角部を除去するように設けられている。第1切欠部52は、折り曲げ部331a、331bよりも外側(冷却水の流れ方向Sに関して端部側)に位置する。第1切欠部52は、凸部302a、302bに対応して設けられ、膨張部材31aが凸部302a、302bを避けるように設けられている。
【0138】
第2切欠部53は、折り曲げ部331a、331bに対応する箇所よりも膨張部材31aの中心側に後退して設けられる。しかしながら、第2切欠部53は、凸部302a、302bを避けるように設けられていない。このため、膨張部材31aは、第2切欠部53に隣接した位置に、凸部302a、302bと重なり合う保持部54を有する。したがって、この位置では、保持部54は、膨張部材31aの外縁を構成している。この位置では、保持部54よりも外側に膨張部材31aが配置されない。膨張部材31aの保持部54は、凸部302a、302bと背面側押し付け部材32との間に挟まれて保持される。
【0139】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。本実施形態では、冷却水の流速の影響が大きい角部の位置に第1切欠部52が設けられる。このため、この位置に膨張部材31aが配置されることがなく、この位置で膨張部材31aにちぎれや破損を生じることが防止される。また、第1切欠部52の外側には、第1切欠部52を保護するように凸部302a、302bが配置される。このため、この位置で膨張部材31aにちぎれや破損を生じることがさらに防止される。第2切欠部53に隣接した保持部54は、凸部302a、302bと背面側押し付け部材32との間に挟まれて保持される。このため、保持部54が設けられた位置において、膨張部材31aと背面側押し付け部材32との間の密着性を向上できる。これによって、第2切欠部53の付近において、膨張部材31aと背面側押し付け部材32との間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。これによって、シリンダボア壁の保温部35aから膨張部材31aが脱落してしまう不具合を防止できる。
【0140】
第2実施形態によれば、以下のことがいえる。該膨張部材31aは、該固定部から外れた位置で、角部を除去するように設けられた第1切欠部52を有する。この構成によれば、冷却水の流れの影響でちぎれを生じやすい角部の位置に切欠部を設けているため、膨張部材31aにちぎれ等の不具合を生じることを防止できる。
【0141】
該膨張部材31aは、該複数の固定部同士の間の位置に設けられた第2切欠部53と、第2切欠部53に隣接して設けられ該凸部302a、302bと該背面側押し付け部材32との間に挟まれて保持される保持部54と、を有する。この構成によれば、保持部54の外側には、膨張部材31aが配置されない。このため、冷却水の流れの影響で保持部54の周辺で膨張部材31aにちぎれを生じてしまうことを防止できる。また、保持部54は、凸部302a、302bと背面側押し付け部材32との間に挟まれて保持されるために、この位置で背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間の密着性が向上する。このため、背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に冷却水が侵入してしまうことを防止できる。これによって、背面側押し付け部材32から膨張部材31aが浮き上がってしまうことが防止され、保温部35aから膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
[凸部の第3実施形態]
【0142】
図41から
図44を参照して、第3実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0143】
図41〜
図44に示すように、膨張部材31aは、複数の凸部302a、302bに対応するように設けられる複数の貫通孔55を有する。複数の貫通孔55は、正面側当て板30の一対の湾曲辺42に沿って(冷却水の流れ方向Sに沿って)、細長い長穴状に形成される。したがって、本実施形態では、複数の凸部302a、302bは、複数の貫通孔55の内側に差し込まれる。膨張部材31aに設けられる複数の貫通孔55は、例えば、長円形の金型等によって厚み方向に膨張部材31aを打ち抜くことで形成できる。
【0144】
図44に示すように、本実施形態の凸部302a、302bの高さhは、膨張部材31aの厚さtと略同等である。本実施形態では
図43、
図44に示すように、背面側押し付け部材32を省略してもよい。
【0145】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。本実施形態では、貫通孔55の内側に凸部302a、302bが通される。このため、膨張部材31aにちぎれを生じない限り、保温部35aから膨張部材31aが脱落することがない。したがって、本実施形態では、膨張部材31aの位置が安定し、保温部35aに対して膨張部材31aが移動してしまうという不具合を生じることがない。
【0146】
第3実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、該膨張部材31aに設けられ、該1以上の凸部302a、302bが通される1以上の貫通孔55を有する。この構成によれば、膨張部材31aが保温部35aから脱落してしまう不具合を極力防止できる。
[凸部の第4実施形態]
【0147】
図45、
図46を参照して、第4実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。なお、以下の第4〜第10実施形態では、基体部材34aの図示が省略されている。
【0148】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bと、正面側当て板30の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の折り曲げ部331a、331bと、を有する。複数の折り曲げ部332a、332bおよび複数の折り曲げ部331a、331bは、いずれも保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0149】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向に延びる板金として形成され、保温部35aの縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。折り曲げ部332a、332bの一つは、保温部35aの左側端部に設けられ、折り曲げ部332a、332bの他の一つは、保温具の右側端部に設けられる。
【0150】
折り曲げ部331a、331bは、所定幅で横方向に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の折り曲げ部331a、331bは、正面側当て板30の湾曲辺42の中間部に対応する位置の上下の2か所に設けられる。
【0151】
正面側当て板30の横枠部27Bは、複数の凸部302a、302bを有する。複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に設けられている。各凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。凸部302a、302bは、膨張部材31aに向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302bは、横枠部27B内で、直列的に設けられている。
【0152】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、膨張部材31aが背面側押し付け部材32から浮き上がって膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、第1実施形態等に比して、折り曲げ部331a、331bの数が低減されている。このため、折り曲げ部331a、331bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な工数が低減される。
【0153】
第4実施形態によれば、以下のことがいえる。該正面側当て板30は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の湾曲辺42の所定の位置に設けられ、該複数の凸部302a、302bは、該一対の湾曲辺42に沿って該所定の位置を間に挟んだ両側に設けられる。
【0154】
この構成によれば、湾曲辺42に沿って凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を防止できる。また、固定部の代わりに凸部302a、302bを配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温部35aの組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[凸部の第5実施形態]
【0155】
図47、
図48を参照して、第5実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0156】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bを有する。本実施形態の固定部材には、横方向に延びる折り曲げ部331a、331bは含まれていない。複数の折り曲げ部332a、332bは、保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0157】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向に延びる板金として形成され、保温部35aの縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。折り曲げ部332a、332bの一つは、保温部35aの左側端部に設けられ、第1固定部の他の一つは、保温部35aの右側端部に設けられる。
【0158】
正面側当て板30の横枠部27Bは、複数の凸部302a、302bを有する。複数の凸部302a、302bは、正面側当て板30の横方向(冷却水の流れ方向S)の略全幅に亘って設けられている。各凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。凸部302a、302bは、膨張部材31aに向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302bは、横枠部27B内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0159】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。正面側当て板30の横方向の略全幅に亘って凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を防止できる。また、本実施形態では、折り曲げ部331a、331bが省略されている。このため、折り曲げ部331a、331bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0160】
第5実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、該正面側当て板30は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該1以上の固定部は、該一対の非湾曲辺41に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺42に対応する位置には設けられず、該1以上の凸部302a、302bは、該一対の湾曲辺42に沿って設けられる。
【0161】
この構成によれば、湾曲辺42に沿って凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aが脱落してしまう不具合を防止できる。また、固定部の代わりに凸部302a、302bを配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温部35aの組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[凸部の第6実施形態]
【0162】
図49、
図50を参照して、第6実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0163】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bを有する。本実施形態の固定部材には、横方向に延びる折り曲げ部331a、331bは含まれていない。複数の折り曲げ部332a、332bは、いずれも保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0164】
正面側当て板30の縦枠部27Aおよび横枠部27Bは、複数の凸部302a、302b、302を有する。複数の凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って、正面側当て板30の横方向(冷却水の流れ方向S)の略全幅に亘って設けられている。横方向に延びる凸部302a、302bの一つは、上側の横枠部27Bに設けられ、横方向に延びる凸部302a、302bの他の一つは、下側の横枠部27Bに設けられる。
【0165】
複数の凸部302は、正面側当て板30の非湾曲辺41に沿って、正面側当て板30の縦方向(冷却水の流れ方向Sと直交する方向)の略全幅に亘って設けられている。縦方向に延びる凸部302の一つは、左側の縦枠部27Aに設けられ、縦方向に延びる凸部302の他の一つは、右側の縦枠部27Aに設けられる。縦枠部27Aに設けられる凸部302は、折り曲げ部332a、332b同士の間に設けられている。
【0166】
凸部302a、302b、302は、膨張部材31aに向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302b、302は、横枠部27B又は縦枠部27A内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0167】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。折り曲げ部332a、332b同士の間に凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。また、湾曲辺42に沿って横方向に延びる凸部302a、302bが一対に設けられる。これらによって、凸部302a、302bが設けられる位置で背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。これらによって、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を防止できる。また、本実施形態では、折り曲げ部331a、331bが省略されている。このため、折り曲げ部331a、331bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0168】
第6実施形態によれば、以下のことがいえる。該正面側当て板30は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41上の複数個所に設けられ、該1以上の凸部302a、302bは、該一対の非湾曲辺41に沿って該複数の固定部同士の間に設けられる。
【0169】
この構成によれば、非湾曲辺41に沿って凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、膨張部材31aが背面側押し付け部材32から浮き上がって膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
[凸部の第7実施形態]
【0170】
図51〜
図54を参照して、第7実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0171】
図51、
図52に示すように、固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bと、正面側当て板30の一対の湾曲辺42に対応して設けられた複数の折り曲げ部331a、331bと、を有する。複数の折り曲げ部332a、332bおよび複数の折り曲げ部331a、331bは、いずれも保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0172】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向に延びる板金として形成され、保温部35aの縦方向に連続的に設けられている。折り曲げ部332a、332bは、保温部35aの縦方向の略中間部に設けられている。折り曲げ部332a、332bは、正面側当て板30の縦方向の長さの2/3以上を保持している。折り曲げ部332a、332bの一つは、保温部35aの左側端部に設けられ、折り曲げ部332a、332bの他の一つは、保温部35aの右側端部に設けられる。
【0173】
折り曲げ部331a、331bは、所定幅で横方向に延びる板金として、短冊状に形成される。複数の折り曲げ部331a、331bは、正面側当て板30の湾曲辺42上の所定の位置に離散的に設けられる。
【0174】
図52に示すように、背面側押し付け部材32は、正面側当て板30の横枠部27Bに対応する位置に複数の凸部302a、302bを有する。複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331b同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0175】
各凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って横方向に延びている。
図53、
図54に示すように、凸部302a、302bは、正面側当て板30に向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302bは、横枠部27Bに対応する位置で、直列的に設けられている。
【0176】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。折り曲げ部331a、331b同士の間に、凸部302a、302bが設けられるために、この位置から背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0177】
第7実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、複数の円弧を連続させた形状を有するとともに、各円弧に第2開口42を有する基体部材34aと、該複数の円弧のうちの1つに固定される少なくとも1つの保温部35aと、を有する。該保温部35aは、溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に接触し、該壁面17を覆うための膨張部材31aと、該膨張部材31aの背面側に設けられ、該膨張部材31aを背面側から該溝状冷却水流路14のシリンダボア側の壁面17に向かって押し付けるための背面側押し付け部材32と、該膨張部材31aの接触面側に設けられ、第1開口301を有し、該背面側押し付け部材32との間に、該膨張部材31aの外縁部を挟み込むための正面側当て板30と、該背面側押し付け部材32の背面側に設けられる弾性部材付設部材33と、該弾性部材付設部材33に設けられ、該開口に差し込み可能で、該壁面22に向かって該膨張部材31aを押し付けるように該壁面22と対向する該溝状冷却水流路14の対壁23に当接する弾性部材28と、該弾性部材付設部材33との間に、該背面側押し付け部材32、該膨張部材31a及び該正面側当て板30を挟み込む1以上の固定部材と、該1以上の固定部材から外れた位置で該背面側押し付け部材32に設けられ、該膨張部材31aに向けて突出し、該正面側当て板30との間で該膨張部材31aを挟み込む1以上の凸部302a、302b、302と、を備える。
【0178】
この構成によれば、固定部材から外れた位置に1以上の凸部302a、302bが設けられるために、凸部302a、302bの位置で膨張部材31aを圧縮する圧力を高くすることができる。このため、凸部302a、302bが設けられる位置で背面側押し付け部材32に対する膨張部材31aの密着性が良好になり、背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に隙間を生じることが防止される。このため、背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に溝状冷却水流路14内の冷却水が侵入することが防止される。これによって背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aが保温部35aから脱落してしまう事態を防止できる。また、背面側押し付け部材32と正面側当て板30との間で膨張部材31aを保持する保持力が増大するために、冷却水の水流によって膨張部材31aにちぎれを生じたり、保温部35aから膨張部材31aが脱落してしまったりすることを防止できる。さらに、固定部材の代わりに凸部302a、302b、302を配置することで、固定部材の総数を低減できることができ、これによって保温部35aの組み立て時に固定部の固定に要する工数を削減できる。このため、保温部35aの組み立て作業の効率化を図ることができる。
【0179】
以下の第8、第9実施形態は、主として上記第7実施形態と異なる部分を説明し、第7実施形態と共通する部分については、図示および説明を省略する。
[凸部の第8実施形態]
【0180】
図55を参照して、第8実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
【0181】
背面側押し付け部材32は、正面側当て板30の横枠部27Bに対応する位置に複数の凸部302a、302bを有する。複数の凸部302a、302bの配置は、第7実施形態の
図52と同様である。複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331bを間に挟んだ両側に設けられている。あるいは、複数の凸部302a、302bは、折り曲げ部331a、331b同士の間に設けられているとも言い換えられる。
【0182】
膨張部材31aは、複数の凸部302a、302bに対応するように設けられる複数の貫通孔55を有する。複数の貫通孔55は、正面側当て板30の一対の湾曲辺42に沿って、細長い長穴状に形成される。複数の貫通孔55は、
図52の複数の凸部302a、302bとオーバーラップする位置に設けられる。本実施形態では、複数の凸部302a、302bは、複数の貫通孔55の内側に差し込まれる。その構造の一例を
図55に示す。膨張部材31aに設けられる複数の貫通孔55は、例えば、長円形の金型によって厚み方向に膨張部材31aを打ち抜くことで形成できる。
【0183】
図55に示すように、本実施形態の凸部302a、302bの高さhは、膨張部材31aの厚さtと略同等である。
【0184】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。本実施形態では、貫通孔55の内側に凸部302a、302bが通される。このため、覆い部材にちぎれを生じない限り、保温具から覆い部材が脱落することがない。したがって、本実施形態では、覆い部材の位置が安定し、背面側押し付け部材32に対して膨張部材31aが移動してしまうという不具合を生じることがない。
【0185】
第8実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、該膨張部材31aに設けられ、該1以上の凸部302a、302bが通される1以上の貫通孔55を有する。この構成によれば、膨張部材31aが背面側押し付け部材32と正面側当て板30との間から脱落してしまう不具合を生じる危険性を極力防止できる。
[凸部の第9実施形態]
【0186】
図56を参照して、第9実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
図56では、膨張部材31aの図示を省略している。
【0187】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた折り曲げ部332a、332bを有する。本実施形態の固定部材には、横方向に延びる折り曲げ部331a、331bは含まれていない。折り曲げ部332a、332bは、保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0188】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向に延びる板金として形成され、保温部35aの縦方向の全長に亘って連続的に設けられている。折り曲げ部332aは、保温部35aの右側端部に設けられ、折り曲げ部332bは、保温部35aの左側端部に設けられる。
【0189】
背面側押し付け部材32は、正面側当て板30の横枠部27Bに対応する位置に凸部302a、302bを有する。凸部302a、302bは、背面側押し付け部材32の横方向(冷却水の流れ方向S)の略全幅に亘って設けられている。凸部302a、302bは、膨張部材31aに向かって凸になるように突出して設けられる。凸部302a、302bは、横枠部27B内で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0190】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。本実施形態では、背面側押し付け部材32の横方向の略全幅に亘って凸部302a、302bが設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、膨張部材31aが背面側押し付け部材32から浮き上がって膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、折り曲げ部331a、331bが省略されている。このため、折り曲げ部331a、331bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0191】
第9実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、該背面側押し付け部材32は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該1以上の固定部は、該一対の非湾曲辺41に対応する位置に設けられるとともに、該一対の湾曲辺42に対応する位置には設けられず、該1以上の凸部302a、302bは、該一対の湾曲辺42に沿って設けられる。この構成によれば、湾曲辺42に沿って凸部302a、302bが設けられるために、凸部302a、302bの位置で膨張部材31aが圧縮される圧力が向上する。このため、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、固定部の代わりに凸部302a、302bを配置することで、固定部の数を低減できる。これによって、シリンダボア壁の保温部35aの組み立て時に、固定部の固定に要する工数を削減して、組み立て作業を簡略化できる。
[凸部の第10実施形態]
【0192】
図57を参照して、第10実施形態のシリンダボア壁の保温部35aについて説明する。
図57では、膨張部材31aの図示を省略している。
【0193】
固定部材は、正面側当て板30の一対の非湾曲辺41に対応して設けられた複数の折り曲げ部332a、332bを有する。本実施形態の固定部材には、横方向に延びる折り曲げ部331a、331bは含まれていない。複数の折り曲げ部332a、332bは、保温部35aの外周部(外縁付近)に設けられている。
【0194】
折り曲げ部332a、332bは、縦方向に延びる板金として形成される。折り曲げ部332aは、保温部35aの右側端部に一対に設けられる。折り曲げ部332bは、保温部35aの左側端部にも一対に設けられる。右側端部に設けられた一対の折り曲げ部332aは、正面側当て板30の縦方向における両端部に設けられる。左側端部に設けられた一対の折り曲げ部332bは、正面側当て板30の縦方向における両端部に設けられる。
【0195】
折り曲げ部332a、332bは、弾性部材付設部材33から突出するように形成された板金であり、プレス機械によってカシメ加工されることで略U字形に折り曲げられている。このため、折り曲げ部332a、332bは、挟み込み部を形成しており、折り曲げ部332a、332bと弾性部材付設部材33との間に、背面側押し付け部材32、膨張部材31a、および正面側当て板30を挟み込んでこれらを保持する。
【0196】
背面側押し付け部材32は、正面側当て板30の縦枠部27Aおよび横枠部27Bに対応する位置に、複数の凸部302a、302b、302を有する。凸部302a、302bは、正面側当て板30の湾曲辺42に沿って、背面側押し付け部材32の横方向(冷却水の流れ方向S)の略全幅に亘って設けられている。横方向に延びる凸部302aは、上側の横枠部27Bに対応するように設けられ、横方向に延びる凸部302bは、下側の横枠部27Bに対応するように設けられる。
【0197】
複数の凸部302は、正面側当て板30の非湾曲辺41に沿って、背面側押し付け部材32の縦方向(冷却水の流れ方向Sと直交する方向)の略全幅に亘って設けられている。縦方向に延びる凸部302の一つは、右側の縦枠部27Aに対応するように設けられ、縦方向に延びる凸部302の他の一つは、左側の縦枠部27Aに対応するように設けられる。縦枠部27Aに対応する位置に設けられる凸部302は、折り曲げ部332a、332b同士の間に設けられている。
【0198】
凸部302a、302b、302は、膨張部材31aに向かって凸になるように突出して設けられる。複数の凸部302a、302b、302は、横枠部27B又は縦枠部27Aに対応する位置で、連続的に設けられているが、一部が不連続になっていてもよい。
【0199】
本実施形態のシリンダボア壁の保温部35aの作用について説明する。折り曲げ部332a、332b同士の間に凸部302a、302b、302が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。また、湾曲辺42に沿って横方向に延びる凸部302a、302bが一対に設けられる。これらによって、凸部302a、302bが設けられる位置で背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に冷却水が侵入してしまうことが防止される。このため、背面側押し付け部材32から浮き上がった膨張部材31aがシリンダボア壁の保温部35aから脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。また、本実施形態では、折り曲げ部331a、331bが省略されている。このため、折り曲げ部331a、331bを略U字形に折り曲げ加工する際に必要な作業が削減される。
【0200】
第10実施形態によれば、以下のことがいえる。シリンダボア壁の保温部35aは、該正面側当て板30は、一対の湾曲辺42と、一対の非湾曲辺41と、を有し、該複数の固定部は、該一対の非湾曲辺41上の複数個所に設けられ、該1以上の凸部302は、該一対の非湾曲辺41に沿って該複数の固定部材同士の間に設けられる。
【0201】
この構成によれば、非湾曲辺41に沿って凸部302が設けられるために、この位置から冷却水が背面側押し付け部材32と膨張部材31aとの間に侵入してしまうことが防止される。これによって、膨張部材31aが背面側押し付け部材32から浮き上がって膨張部材31aが脱落してしまう不具合を生じることを防止できる。
【0202】
本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具は、
図5又は
図22に示す形態例のように、シリンダボア壁の片側半分を保温するためのものに限定されず、他には、例えば、
図58に示す形態例のように、シリンダボア壁の片側半分の一部を保温するためのものや、
図59に示す形態例のように、全シリンダボア壁を保温するためのものが挙げられる。
【0203】
つまり、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具の基体部材の形状としては、上から見たときに、一つの円弧からなる形状、2以上の円弧が繋がった形状、シリンダボア壁を一周囲む形状が挙げられる。また、本発明の第一の形態のシリンダボア壁の保温具及び本発明の第二の形態のシリンダボア壁の保温具に設けられている保温部の数は、一つ又は2以上であり、シリンダボア壁の保温部位により、適宜選択される。
【0204】
本発明の内燃機関は、本発明のシリンダボア壁の保温具が設置されていることを特徴とする内燃機関である。
【0205】
本発明の自動車は、本発明の内燃機関を有することを特徴とする自動車である。