特開2021-127714(P2021-127714A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-127714(P2021-127714A)
(43)【公開日】2021年9月2日
(54)【発明の名称】回転圧縮機
(51)【国際特許分類】
   F04C 23/02 20060101AFI20210806BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20210806BHJP
   F04C 18/356 20060101ALI20210806BHJP
   F04C 29/12 20060101ALI20210806BHJP
【FI】
   F04C23/02 G
   F04C29/00 H
   F04C18/356 Q
   F04C29/12 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2020-22316(P2020-22316)
(22)【出願日】2020年2月13日
(71)【出願人】
【識別番号】517403558
【氏名又は名称】瀋陽中航機電三洋制冷設備有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100062225
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 輝雄
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100145458
【弁理士】
【氏名又は名称】秋元 正哉
(72)【発明者】
【氏名】西川 剛弘
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 隆泰
(72)【発明者】
【氏名】比留間 義明
【テーマコード(参考)】
3H129
【Fターム(参考)】
3H129AA04
3H129AA14
3H129AA32
3H129AB03
3H129BB01
3H129BB21
3H129BB43
3H129CC04
3H129CC08
3H129CC17
3H129CC24
(57)【要約】      (修正有)
【課題】電動部の高出力を図るためステータやロータの厚みを増やした場合でも、大幅なコスト高騰をもたらさず、且つロータの回転軸を適切に支持できる回転圧縮機を提供する。
【解決手段】回転圧縮機1は、ステータ11、ロータ12、ロータ12の回転軸13を備える電動部10と、電動部10より頂方側に配設される回転圧縮機構部20と、回転圧縮機構部20の底方側の端部から電動部10側に延出し、電動部10より頂方側の位置で回転軸13を支持する第1の軸受部52と、電動部10より底方側の位置で回転軸13を支持する第2の軸受部60とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータと、ロータと、前記ロータの回転軸とを備える電動部と、
前記回転軸によって駆動される回転圧縮機構部と、
前記電動部が前記回転圧縮機構部より底方側に配設されるよう、前記電動部と前記回転圧縮機構部とを収容する容器と、
前記回転圧縮機構部の底方側の端部から前記電動部側に延出し、前記電動部より頂方側の位置で前記回転軸を支持する第1の軸受部と、
前記電動部より底方側の位置で前記回転軸を支持する第2の軸受部と
を備える回転圧縮機。
【請求項2】
前記回転圧縮機構部は、
圧縮室を内部に備えるシリンダ部と、
前記圧縮室に収容されると共に、前記回転軸の回転に伴い前記圧縮室の内側面に沿って偏芯回転するローラと、
前記ローラの外側面に当接し、前記圧縮室を低圧室と高圧室に区画するベーンと、
前記圧縮室から前記シリンダ部の径方向外側に向けて延設され、前記ベーンを挿し込むスロット部と、
前記シリンダ部の頂方側の端面に装着される第1の枠体と、
を備え、
前記回転軸は、軸方向に沿って形成される第1のオイル流路を備え、
前記第1のオイル流路の底方側の端部は、容器底方に貯留された潤滑用のオイルに臨み、
前記第1のオイル流路の頂方側の端部は、前記第1の枠体と対向し、
前記第1の枠体は、前記第1のオイル流路を通過したオイルを前記スロット部に供給するための第2のオイル流路を備える
請求項1に記載の回転圧縮機。
【請求項3】
更に、容器外から前記回転圧縮機構部に冷媒を供給する冷媒吸入管を備え、
前記冷媒吸入管は、前記回転圧縮機構部の頂方側から前記回転圧縮機構部と接続する
請求項1又は2に記載の回転圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば空調機器用の圧縮機として、特許文献1や特許文献2に開示される回転圧縮機が提供されている。回転圧縮機は、ステータ、ロータ、ロータの回転軸を備える電動部と、電動部によって駆動される回転圧縮機構部とを備える。また、電動部及び回転圧縮機構部は、筒状の密閉容器内に上下並んだ状態で配設される。
【0003】
ここで、特許文献1に開示される電動部は、回転圧縮機構部より容器頂方側に配設される。これに対して、特許文献2に開示される電動部は、回転圧縮機構部より容器底方側に配設される。また、特許文献1,2に開示される電動部の双方は、回転圧縮機構部における電動部と対向する側の端部から電動部に向けて延出する1つの軸受部によって支持される。すなわち、双方の電動部において、回転軸の回転圧縮機構部に連結される側の端部のみが、軸受部によって支持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2015−68262号公報
【特許文献2】特開平2−227566号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動部に備わるステータ及びロータとして、上下に積層された複数の電磁鋼板を用いるものが例示される。このような構造を備えた電動部の高出力化(例えば、電動部のトルク向上)を図る場合、積層される電磁鋼板の数を増やしてステータやロータの厚みを増やす方法が採用される。
【0006】
しかしながら、この方法を用いる場合、より長尺な軸受部や剛性の高い回転軸を用いなければ、厚みの増えたロータの回転時に回転軸を適切に支持することができない。しかしながら、軸受部の長尺化や回転軸の高剛性化は、電動部のコスト向上をもたらす。また、ロータの厚みが増えるに従い、ロータ及び回転軸が回転中心に対して振動する、所謂振れ回りが起こる可能性が高まる。その結果、回転圧縮機の信頼性が低下する。
【0007】
これに対して、ステータとロータとの間隙を増やせば、ロータの振れ回りが生じてもロータとステータとの接触を避けることができる。しかしながら、ロータとステータとの間隙が増えることで、ステータからロータに伝わる磁気エネルギーが間隙の距離分減衰するため、ロータの回転性能が損なわれる。
【0008】
また、電動部の高出力化を図る他の方法として、ステータやロータを拡径する方法が挙げられる。しかしながら、この方法も、ステータ及びロータの体積が増える分、電動部のコスト向上をもたらす。それに加え、容器の幅寸法を増やさなければ電動部を収容できないため、回転圧縮機の省スペース化が阻害される。
【0009】
本発明は、前記課題に鑑みてなされたものであり、電動部の高出力を図るためにステータやロータの厚みを増やしても、大幅なコスト高騰をもたらさず、且つロータの回転軸を適切に支持できる回転圧縮機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る回転圧縮機は、
ステータと、ロータと、前記ロータの回転軸とを備える電動部と、
前記回転軸によって駆動される回転圧縮機構部と、
前記電動部が前記回転圧縮機構部より底方側に配設されるよう、前記電動部と前記回転圧縮機構部とを収容する容器と、
前記回転圧縮機構部の底方側の端部から前記電動部側に延出し、前記電動部より頂方側の位置で前記回転軸を支持する第1の軸受部と、
前記電動部より底方側の位置で前記回転軸を支持する第2の軸受部と
を備える。
【0011】
本発明のこの態様によれば、電動部より頂方側に配設される第1の軸受部及び電動部より底方側に配設される第2の軸受部の双方によって、ロータの回転軸が支持されるため、ロータの厚みを増やした場合であっても、長尺な軸受や剛性の高い回転軸を用いる必要がない。
【0012】
それに加えて、本発明のこの態様によれば、電動部が回転圧縮機構部より底方側に配設されるため、高重量の電動部を容器中央寄りに配置することができる。その結果、電動部が回転圧縮機構部より容器頂方側に配設される従来の回転圧縮機に比べて、重心位置を下げることができることから、ロータ回転時の振動を抑制することができる。
【0013】
また、本発明に係る回転圧縮機において、
前記回転圧縮機構部は、
圧縮室を内部に備えるシリンダ部と、
前記圧縮室に収容されると共に、前記回転軸の回転に伴い前記圧縮室の内側面に沿って偏芯回転するローラと、
前記ローラの外側面に当接し、前記圧縮室を低圧室と高圧室に区画するベーンと、
前記圧縮室から前記シリンダ部の径方向外側に向けて延設され、前記ベーンを挿し込むスロット部と、
前記シリンダ部の頂方側の端面に装着される第1の枠体と、
を備え、
前記回転軸は、軸方向に沿って形成される第1のオイル流路を備え、
前記第1のオイル流路の底方側の端部は、容器底方に貯留された潤滑用のオイルに臨み、
前記第1のオイル流路の頂方側の端部は、前記第1の枠体と対向し、
前記第1の枠体は、前記第1のオイル流路を通過したオイルを前記スロット部に供給するための第2のオイル流路を備える
ことが好ましい。
【0014】
本発明のこの態様によれば、第1の枠体に形成される第2のオイル流路を通じてベーンを収容するスロット部に直接オイルを供給できるため、ベーンの潤滑性を保つために十分な量のオイルをスロット部に適宜供給することができる。
【0015】
更に、本発明に係る回転圧縮機は、
容器外から前記回転圧縮機構部に冷媒を供給する冷媒吸入管を備え、
前記冷媒吸入管は、前記回転圧縮機構部の頂方側から前記回転圧縮機構部と接続する
ことが好ましい。
【0016】
本発明のこの態様によれば、回転圧縮機構部が電動部より頂方側に配設されるため、回転圧縮機構部の頂方側から冷媒吸入管を接続することができる。その結果、回転圧縮機構部において、冷媒吸入管との接続箇所と圧縮室との距離を短縮することができ、冷媒を効率良く圧縮室に送り込むことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る回転圧縮機によれば、電動部の高出力を図るためステータやロータの厚みを増やした場合であっても、大幅なコスト高騰をもたらさず、且つロータの回転軸を適切に支持できる回転圧縮機できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本実施形態に係る回転圧縮機の垂直断面図。
図2】本実施形態に係る回転圧縮機の主要部を拡大した部分垂直断面図。
図3】本実施形態に係る回転圧縮機の平面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係る回転圧縮機を詳細に説明する。まず、図1を参照して、本実施形態に係る回転圧縮機1の全体構成を説明する。ここで、図1は、本実施形態に係る回転圧縮機1の垂直断面図である(図3に示される断面指示線AOBで回転圧縮機1を垂直に切断した場合の断面図。)。
【0020】
図1に示されるように、本実施形態に係る回転圧縮機1は、電動部10、回転圧縮機構部20を備える。電動部10及び回転圧縮機構部20は、容器本体部31、蓋部32を備える鋼板製の密閉容器30に収容される。なお、図示される回転圧縮機1は縦置型であるが、これに限られない。本発明に係る回転圧縮機は、横置型の回転圧縮機にも適用することもできる。
【0021】
本実施形態における電動部10は、ステータ11と、ロータ12と、ロータ12の回転軸13とを備えるブラシレスDCモータである。ここで、ステータ11は、略円柱状の空域が内側に形成される平面視ドーナッツ形状の複数の電磁鋼板を高さ方向に積層した積層体11aと、積層体11aに備わる歯部に集中巻き方式で巻着されるステータコイル11bとを備える。
【0022】
ステータコイル11bは、容器30の蓋部32に装着されるターミナル33と電気的に接続される。ターミナル33からステータコイル11bに電力が供給されると、ステータコイル11bに電流が流れる。これにより、ロータ12に作用する回転磁界が生成され、ロータ12が回転する。
【0023】
ロータ12は、平面視略円形の複数の電磁鋼板を高さ方向に積層した積層体12aと、積層体12a内に設けられる永久磁石とを備える。ロータ12の積層体12aは、ステータ11の内側に形成される円柱状の空域内に配設される。このとき、ステータ11の歯部内端とロータ12の外面との間に僅かな間隙が形成される。更に、ロータ12の中央に、高さ方向に貫通する貫通孔12bが形成される。回転軸13は、貫通孔12bに挿嵌され、ロータ12を支持する。
【0024】
次に、本実施形態における回転圧縮機構部20は、第1の回転圧縮要素20aと第2の回転圧縮要素20bとを上下積み重ねた所謂2段式の回転圧縮機構部である。まず、第1の回転圧縮要素20aは、シリンダ部21aと、回転軸13に一体形成された偏芯部22aと、偏芯部22aの外側面に周設されるローラ23aと、ローラ23aの外側面に当接するベーン24aと、ベーン24aを付勢するコイルスプリング25aとを備える。
【0025】
ここで、シリンダ部21aは、上下に貫通する圧縮室26aを備える。この圧縮室26a内に、偏芯部22a及びローラ23aが収容される。更に、ベーン24aの内端側は、圧縮室26a内に臨み、圧縮室26a内を低圧室と高圧室とに区画する。
【0026】
また、シリンダ部21aは、その上下に貫通し且つ圧縮室26aからシリンダ部20aの径方向外側に向けて延設される縦溝状のスロット部27aを備える。コイルスプリング25aは、スロット部27a内の外方寄りに収容されると共に、ベーン24aは、スロット部27aに外端側から挿し込まれる。
【0027】
更に、シリンダ部20aの上端面(容器頂方側の端面)に、第1の枠体40が装着される。これに対して、シリンダ部20aの下端面(容器底方側の端面)に、第1の回転圧縮要素20aと第2の回転圧縮要素20bとを隔てる中間仕切板42が装着される。これにより、シリンダ20aに形成される圧縮室26aが閉塞される。
【0028】
前記構造の第1の回転圧縮要素20aにおいて、回転軸13が回転すると、圧縮室26a内で偏芯部22a及びローラ23aが偏芯回転する。このとき、ローラ23aは、圧縮室26aの内側面に沿って偏芯回転する。また、ローラ23aの偏芯回転に伴い、ローラ23aの外側面に当接するベーン24aがスロット部27a側に押し込まれる。更に、ローラ23aが偏芯回転すると、ベーン24aは、それまでとは逆方向に動き、スロット部27a側に押し込まれる前の位置に戻る。
【0029】
ところで、冷媒は、容器30の蓋部32に形成された貫通孔から容器内に臨む冷媒吸入管34を介して圧縮室26aの低圧室側に吸入される。低圧室側に吸入された冷媒は、ローラ23a及びベーン24aの前記動作によって、高圧室側に移され圧縮される。また、高圧室内で圧縮された冷媒は、圧縮室26aに連通する第1の枠体40内の流路(図示しない)を介して、吐出口43から容器30に向けて吐出される。
【0030】
回転圧縮機構部20における第2の回転圧縮要素20bも、第1の回転圧縮要素20aと同様に、圧縮室26bを含むシリンダ部21bと、偏芯部22bと、ローラ23bと、ベーン24bと、コイルスプリング25bと、スロット部27bを備える。これら各部材の動作も、前述した第1の回転圧縮要素20aにおける各部材の動作と同様である。
【0031】
ここで、シリンダ部20bの上端面(容器頂方側の端面)に、中間仕切板42が装着される。これに対して、シリンダ部20bの下端面(容器底方側の端面)に、第2の枠体50が装着される。これにより、シリンダ20bに形成される圧縮室26bが閉塞される。
【0032】
圧縮室26bで圧縮された冷媒は、圧縮室26bに連通する第2の枠体50内の流路(図示しない)を介して、吐出口51から容器30に向けて吐出される。本実施形態における回転圧縮機構部20によれば、第1の回転圧縮要素20aで圧縮された冷媒と、第2の回転圧縮要素20bで圧縮された冷媒とが、各々異なる流路から容器30に吐出されるため、冷媒の圧力変動に起因する脈動を低減できる。その結果、前記脈動に基づく回転圧縮機構部20の乱動(例えば、ジャンピング)や騒音を抑制することができる。
【0033】
容器30内に吐出された圧縮後の冷媒は、容器30の本体部31に取り付けられた吐出管35を介して、容器30外に形成される冷媒流通回路に吐出される。なお、前述のように、本実施形態における回転圧縮機構部20は、2段式の回転圧縮要素を備えるものであるが、回転圧縮機構部20の態様はこれに限られない。回転圧縮機構部20の他の態様として、単一の回転圧縮要素からなるものであってもよいし、3段以上に積み重なった回転圧縮要素を備えるものであってもよい。
【0034】
以上、電動部10と回転圧縮機構部20とを詳細に説明した。ここで、図1に示されるように、電動部10は、回転圧縮機構部20より容器30の底方側に配設される。それに加えて、本実施形態に係る回転圧縮機1は、回転圧縮機構部20の底方側の端部から電動部10側に延出し、電動部10より頂方側の位置で回転軸13を支持する第1の軸受部52と、電動部10より底方側の位置で回転軸13を支持する第2の軸受部60とを更に備える。
【0035】
本実施形態において、第1の軸受部52は、第2の回転圧縮要素20bの下端面に装着された第2の枠体50の中央から容器底方側に向けて延出する。また、第2の軸受部60は、容器30の底に設けられたオイル溜め36と対向する第3の枠体61の中央から容器頂方側に向けて延出する。
【0036】
このように、回転軸13は、電動部10より頂方側に配設される第1の軸受部52及び電動部10より底方側に配設される第2の軸受部60の双方によって支持される。これにより、ロータ12の厚みを増やした場合であっても、長尺な軸受部や剛性の高い回転軸を用いる必要がない。すなわち、軸受に係るコストアップを避けながら、信頼性が担保された状態でロータ12の厚みを増すことができる。そのため、大幅なコスト高騰をもたらさず、電動部10の高出力化を図ることができる。
【0037】
それに加えて、本実施形態によれば、電動部10が回転圧縮機構部20より底方側に配設されるため、高重量の電動部10を容器30の中央寄りに配設することができる。その結果、電動部10が回転圧縮機構部20より頂方側に配設される従来の回転圧縮機に比べて、重心位置を下げることができることから、ロータ回転時の振動が抑制される。
【0038】
更に、回転圧縮機構部20が電動部10より容器頂方側に配設されるため、冷媒吸入管34を回転圧縮機構部20の頂方側から臨ませた状態で双方を接続することができる。これにより、回転圧縮機構部20において、冷媒吸入管34との接続箇所と圧縮室26a,26bとの距離を短縮することができる結果、冷媒を効率良く圧縮室26a,26bに送り込むことができる。
【0039】
次に、図2を参照して、本実施形態に係る回転圧縮機1のオイル流通構造を説明する。ここで、図2は、回転圧縮機1の主要部を拡大した部分垂直断面図である(図3に示される断面指示線AOCDEで回転圧縮機1を垂直に切断した場合の断面図。)。
【0040】
図2に示されるように、本実施形態に係る回転圧縮機1は、第1のオイル流路70と第2のオイル流路80とを備える。より詳しくは、第1のオイル流路70は、一端側がオイル溜り36(図1)に臨むと共に、他端側が回転軸13の底方側の端部13aから回転軸13の内部に挿し込まれる給油部71と、回転軸13の内部において、軸方向に沿い且つ回転軸13の頂方側の端部13bに掛けて形成される回転軸内流通路72とを備える。図示されるように、回転軸内流通路72の容器頂方側の端部は、第1の枠体40に対向する。
【0041】
なお、オイル溜り36に臨む給油部71の一端側が第1のオイル流路70の底方側の端部に対応する。また、回転軸内流通路72の容器頂方側の端部が第1のオイル流路70の頂方側の端部に対応する。更に、第1のオイル流路70は、流路の外側に連通する横孔73(例えば、図2において符号73a,73b,73cで示される横孔)を備えてもよい。
【0042】
オイル溜り36に貯留されるオイルは、シリンダ部21a,21bの圧縮室26a,26b内との差圧によって、給油部71から回転軸内流通路72の頂方側へ汲み上げられる。また、回転軸13の遠心力によって汲み上げられたオイルは、横孔73a,73b,73cから回転軸13の外側に排出される。
【0043】
これにより、横孔近傍の摺動部(例えば、ローラ23aと圧縮室26aの内側面、ローラ23bと圧縮室26bの内側面、回転軸13と第1の軸受部52の内側面、回転軸13と第2の軸受部60の内側面など)にオイルが供給される。これにより、前記摺動部が潤滑される。
【0044】
また、第2のオイル流路80は、第1のオイル流路70から供給されるオイルを流通させる流路であって、第1の枠体40内に形成される。本実施形態における第2のオイル流路80は、第1の枠体40の略中央から径方向外側に向けて形成される。
【0045】
ここで、第2のオイル流路80は、第1の回転圧縮要素20aにおけるスロット部27aと連通する。これにより、ベーン24aとスロット部27aとの間隙にオイルが供給され、ベーン24aの潤滑とシールが果たされる。
【0046】
また、第1の回転圧縮要素20aにおけるスロット部27aと第2の回転圧縮要素20bにおけるスロット部27bとは、中間仕切板42を貫通する貫通孔44を介して連通する。そのため、スロット部27aを通過したオイルは、スロット部27bに至る。その結果、ベーン24bとスロット部27bとの間隙にオイルが供給され、ベーン24bの潤滑とシールが果たされる。
【0047】
本実施形態によれば、第1の枠体40に形成される第2のオイル流路80を通じて、スロット部27a,27bに直接オイルを供給できる。そのため、ベーン24a,24bの潤滑性を保つために十分な量のオイルをスロット部27a,27bに供給することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明に係る回転圧縮機は、例えば、家庭用・業務用空調装置等に用いられる。ただし、その用途は、これに限られない。
【符号の説明】
【0049】
1・・・・・・・・・回転圧縮機
10・・・・・・・・電動部
11・・・・・・・ステータ
12・・・・・・・ロータ
13・・・・・・・ロータの回転軸
20・・・・・・・・回転圧縮機構部
21・・・・・・・シリンダ部
22・・・・・・・偏芯部
23・・・・・・・ローラ
24・・・・・・・ベーン
25・・・・・・・コイルスプリング
26・・・・・・・圧縮室
27・・・・・・・スロット部
30・・・・・・・・容器
40・・・・・・・・第1の枠体
52・・・・・・・・第1の軸受部
60・・・・・・・・第2の軸受部
70・・・・・・・・第1のオイル流路
80・・・・・・・・第2のオイル流路
図1
図2
図3