【解決手段】密閉容器2の内周面側に張り出る略弧状の第二の圧力制御板41による区画部位を、密閉容器2の長さ方向での冷媒吐出管40を配置している部分を通る位置に偏倚させた。
横型の密閉容器内に、電動要素と、該電動要素で駆動される回転圧縮要素と、前記密閉容器の内底部のオイル溜めに収納された潤滑用のオイルと、前記回転圧縮要素の前記電動要素とは反対側に設けられ、前記オイルを前記回転圧縮要素に供給するためのオイルポンプとを備えて、密閉容器での前記オイルポンプ側となる上部に、冷媒吐出管が設けられていて、
前記密閉容器内の上部を、前記回転圧縮要素の電動要素側となる部分に配した環状の第一の圧力制御板で電動要素側と回転圧縮要素側とに一部区画して、前記第一の圧力制御板の外側に沿って略環状の第一の流体通過部を形成し、
前記密閉容器内での前記回転圧縮要素側となる上部を、回転圧縮要素のオイルポンプ側となる部分に配した略弧状の第二の圧力制御板で、回転圧縮要素側とオイルポンプ側とに一部区画して、前記第二の圧力制御板の外側に沿って弧状の第二の流体通過部を形成し、
前記第二の圧力制御板による区画部位が、密閉容器の長さ方向での前記冷媒吐出管を配置している部分を通る位置に偏倚していることを特徴とする横型ロータリコンプレッサ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、密閉容器内の回転圧縮要素で圧縮された冷媒ガスを潤滑用のオイルと共に、密閉容器内の電動要素側に一旦に吐出してから、密閉容器外に吐出するようにした横型ロータリコンプレッサに関するものである。
【0002】
従来この種の横型ロータリコンプレッサは、回転圧縮要素の吸込ポートから冷媒ガスがシリンダの低圧室側に吸入され、ローラとベーンの動作により圧縮されてシリンダの高圧室側より吐出ポート、吐出消音室を経て密閉容器内に吐出された後、外部の放熱器などに流入する構成とされている。
【0003】
また、密閉容器内の底部はオイル溜めとされており、回転圧縮要素の電動要素とは反対側に取り付けられたオイルポンプ(給油手段)によりオイル溜めから潤滑用のオイルが吸い上げられ、回転圧縮要素に供給されて回転圧縮要素の摩耗を防いでいる。
【0004】
このような横型ロータリコンプレッサにおいて、回転圧縮要素で圧縮された冷媒ガス中には前記オイルが混入し、冷媒ガスと共に当該オイルも密閉容器内に吐出される。
【0005】
冷媒ガス中のオイル分離を促進するため、冷媒ガスは回転圧縮要素から一旦シリンダの電動要素側に吐出され、さらに、この電動要素側から回転圧縮要素側へと密閉容器内で回すようにしている。そして、冷媒ガスの外部への吐出は、密閉容器の上部でのオイルポンプ側となる部分に設けた冷媒吐出管から行われていた。
【0006】
そのため、オイルはオイルポンプ側だけでなく、電動要素側にも溜まるようになるので、オイルポンプ部分の油面が低下するとオイルの吸引が円滑に行えなくなる不具合が生じる。
【0007】
オイルポンプ側と電動要素側との両方で油面の高さが揃ってオイルが溜まることの上記不具合を生じないようにするために、密閉容器内の電動要素側の冷媒ガスの圧力を高くし、オイルポンプ側の冷媒ガスの圧力が低くなるように、圧力差を生じさせる工夫が提案されている。
【0008】
その技術が特許文献1に示されている。特許文献1では、電動要素側とオイルポンプ側とで圧力差が形成されるようにするために、回転圧縮要素の電動要素側となる部分に、邪魔板となる環状の圧力制御板を設けるとともに、前記回転圧縮要素のオイルポンプ側となる部分に同じく邪魔板となる略弧状の圧力制御板を設けている。
【0009】
特許文献1での回転圧縮要素の電動要素側に設けた環状の圧力制御板は、密閉容器の上部を電動要素側と回転圧縮要素側とに一部区画するものとしている。具体的には、前記環状の圧力制御板は、その外周が密閉容器の内面に近接していて、環状の圧力制御板と密閉容器との隙間を、オイルを含んだ冷媒ガスである流体が電動要素側から回転圧縮要素側に向けて通るときに差圧が形成される間隔としている。
【0010】
また、回転圧縮要素のオイルポンプ側に設けた略弧状の圧力制御板は、前記環状の圧力制御板で仕切られた密封容器の上部の回転圧縮要素側から密閉容器の端部側に亘る部分を、回転圧縮要素側とオイルポンプ側とに一部区画するものとしている。具体的には、この圧力制御板の密閉容器側の外縁が密閉容器の内面に近接していて、略弧状の圧力制御板と密閉容器との隙間を、上記流体が回転圧縮要素側からオイルポンプ側に向けて通るときに差圧が形成される間隔としている。
【0011】
このように回転圧縮要素の電動要素側に環状の圧力制御板を設けるとともに、オイルポンプ側に略弧状の圧力制御板とを設けて、オイルを含んだ冷媒ガスからなる流体が両圧力制御板の外縁に沿う隙間を順に通ることで、電動要素側の圧力を高くするとともに、オイルポンプ側の圧力が低くなるようにしている。
【0012】
上記圧力制御板を備えた横型ロータリコンプレッサにおいても、回転圧縮要素から電動要素側に吐出されたオイルを含む冷媒ガスは、電動要素の上方へと導かれる。電動要素の上部へと導かれた前記冷媒ガスは環状の圧力制御板の周囲の隙間を通り、更に略弧状の圧力制御板の側方の開放部分や密閉容器との間の隙間を通るようになり、これらの隙間を通過するときにオイルと冷媒ガスとが分離される。
【0013】
そして、分離されてオイル溜めに降りたオイルは、電動要素側とオイルポンプ側とに圧力差を形成されていることで、密閉容器底部でのオイルポンプ側に移動するとともに、オイルポンプ側で溜まるオイルの油面を高めて、オイルポンプが円滑にオイルを吸引できる。冷媒ガスについてもオイルポンプ側となる密閉容器の上部に取付の冷媒吐出管から密閉容器外へと吐出されるようにしたものであった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
従来の横型ロータリコンプレッサは低温用途が多く、冷媒循環量も少なかった。そのため、横型ロータリコンプレッサから外部へのオイル吐出は問題とされることが多くはなく、コンプレッサ外に吐出されたオイルについては、冷媒利用機器側で対応できるものであった。
【0016】
ところで近年、空気調和用途として用いられるコンプレッサには、冷媒ガスを高循環量にして供給することが条件付けされるようになってきている。また、DCインバータ化により循環量大とするために、コンプレッサにコンパクト化が求められている。
【0017】
しかしながら、従来の横型ロータリコンプレッサでは、オイル分離を効率的に行なえるようにするための、冷媒ガスとオイルとの分離に効果的な冷媒吐出管の位置、圧力制御板の形状や位置などの条件、回転圧縮要素から密閉容器のオイルポンプ側の端部までの距離が規定されておらず、コンプレッサ内の限られた空間において、冷媒ガスとオイルとを効果的に分離するには限界があった。
【0018】
そこで、本発明は上記事情に鑑み、オイルを含んだ冷媒ガスを密閉容器内で効率的にオイルと冷媒ガスに分離できるようにすることを課題とし、コンパクトで高循環量で冷媒ガスを供給できる横型ロータリコンプレッサを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0019】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、横型の密閉容器内に、電動要素と、該電動要素で駆動される回転圧縮要素と、前記密閉容器の内底部のオイル溜めに収納された潤滑用のオイルと、前記回転圧縮要素の前記電動要素とは反対側に設けられ、前記オイルを前記回転圧縮要素に供給するためのオイルポンプとを備えて、密閉容器での前記オイルポンプ側となる上部に、冷媒吐出管が設けられていて、
前記密閉容器内の上部を、前記回転圧縮要素の電動要素側となる部分に配した環状の第一の圧力制御板で電動要素側と回転圧縮要素側とに一部区画して、前記第一の圧力制御板の外側に沿って略環状の第一の流体通過部を形成し、
前記密閉容器内での前記回転圧縮要素側となる上部を、回転圧縮要素のオイルポンプ側となる部分に配した略弧状の第二の圧力制御板で、回転圧縮要素側とオイルポンプ側とに一部区画して、前記第二の圧力制御板の外側に沿って弧状の第二の流体通過部を形成し、
前記第二の圧力制御板による区画部位が、密閉容器の長さ方向での前記冷媒吐出管を配置している部分を通る位置に偏倚していることを特徴とする横型ロータリコンプレッサを提供して、上記課題を解消するものである。
【0020】
(請求項2の発明)
そして、本発明において、前記第一の圧力制御板の外径(Dup)と前記第一の流体通過部の外径(Dm)との比(Dm/Dup)を、
1<Dm/Dup<1.05
とし、
前記第二の圧力制御板の密閉容器側外縁を沿う環の外径(Dlow)と密閉容器の内径(Dc)との比(Dc/Dlow)を、
1<Dc/Dlow<1.05
とし、
前記第二の圧力制御板から冷媒吐出管の中心までの距離(x)と第二の圧力制御板から密閉容器のオイルポンプ側の内端位置までの距離(y)との比(y/x)を、
3<y/x<15
とし、
前記第二の圧力制御板から冷媒吐出管の中心までの距離(x)と冷媒吐出管の内径(d)との比(d/x)を、
0.5<d/x<3
とし、
前記第二の圧力制御板は、冷媒吐出管が設けられている部分より流体流れ方向での上流側に位置していることが良好である。
【発明の効果】
【0021】
(請求項1の発明の効果)
請求項1の発明によれば、第二の圧力制御板による区画部位が、密閉容器の長さ方向での前記冷媒吐出管を配置している部分を通る位置に偏倚しているので、第一の流体通過部と第二の流体通過部とを通ってオイル分離された冷媒ガスが直ぐに冷媒吐出管の部分に達して、この冷媒吐出管に入り込むようになり、密閉容器外に吐出する冷媒ガスにオイルが含まれる割合を効率よく下げることができるという優れた効果を奏する。
【0022】
(請求項2の発明の効果)
請求項2の発明によれば、密閉容器外に吐出する冷媒ガスにオイルが含まれる割合を極めて効率よく下げることができるという優れた効果を奏する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
つぎに本発明を実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は横型ロータリコンプレッサで、
図1に示すように前記横型ロータリコンプレッサ1は、両端が密閉された横長円筒状の密閉容器2を備え、この密閉容器2の内底部をオイル溜めとしている。前記密閉容器2の内側には、電動要素3と、電動要素3の回転軸4により駆動される第一の回転圧縮要素5と第二の回転圧縮要素6とからなる回転圧縮要素(回転圧縮機構部)7が収納されている。なお、
図1は
図2のa−a線に沿った断面位置で実施の形態の構成を概略的に示していて、説明を容易にするために、
図2に示すように断面位置を部分的に変えて図示している。
【0025】
(電動要素)
密閉容器2の電動要素3側の端部には円形の取付孔8が形成されている。前記取付孔8には、電動要素3に電力を供給するためのターミナル9が取り付けられている。
【0026】
電動要素3は、密閉容器2の内周面に沿って環状に取り付けられたステータ10と、このステータ10の内側に僅かな隙間を設けて回転自在に挿入されたロータ11とからなるものである。そして、前記ロータ11を、このロータ11の中心を通って密閉容器2の長手方向に伸びる回転軸4に固定している。
【0027】
ステータ10は、ドーナッツ状の電磁鋼板を積層した積層体と、この積層体の歯部に直巻き(集中巻き)方式により巻装されたステータコイルを有している。そして、前記ロータ11もステータ10と同様に電磁鋼板の積層体で形成されている。
【0028】
(オイルポンプ)
第一の回転圧縮要素5と第二の回転圧縮要素6とからなる回転圧縮要素7の前記電動要素3とは反対側、即ち、回転軸4の回転圧縮要素7側の端部に、給油手段であるオイルポンプ13が形成されている。
【0029】
オイルポンプ13は、密閉容器2の内底部を利用して構成されたオイル溜めから潤滑用のオイル14を吸い上げて、回転圧縮要素7における第一の回転圧縮要素5及び第二の回転圧縮要素6の各摺動部分に供給し、摩耗を防止するために設けられている。前記オイルポンプ13からは密閉容器2の内底部に向けてオイル吸い上げパイプ15が延びていて、オイル吸い上げパイプ15の下端が、オイル溜め内で開口している。
【0030】
(回転圧縮要素)
第一の回転圧縮要素5は第一のシリンダ16を有し、第二の回転圧縮要素6は第二のシリンダ17を有している。第一のシリンダ16と第二のシリンダ17との間には中間仕切板18が位置していて、中間仕切板18は第一のシリンダ16と第二のシリンダ17とで狭持されている。即ち、回転圧縮要素(回転圧縮機構部)7は、第一の回転圧縮要素5及び第二の回転圧縮要素6と、中間仕切板18とを備えている。
【0031】
第一及び第二の回転圧縮要素5、6は、それぞれ中間仕切板18の両側(
図1では左右)に配置された第一及び第二のシリンダ16、17と、180度の位相差を有して回転軸4に設けられた第一及び第二の偏心部19、20に嵌合され、第一及び第二のシリンダ16、17内を偏心回転する第一及び第二のローラ21、22と、これらローラ21、22にそれぞれ当接して第一及び第二のシリンダ16、17内をそれぞれ低圧室側と高圧室側に区画する図示しないベーンと、第一のシリンダ16の電動要素3側の開口面と第二のシリンダ17の電動要素3とは反対側(オイルポンプ13側)の開口面をそれぞれ閉塞して回転軸4の軸受けを兼用する主軸受け23、副軸受け24とから構成されている。
【0032】
第一のシリンダ16には、吸込ポートにてこの第一のシリンダ16内部の低圧室側と連通する吸込通路25が形成されている。また、第二のシリンダ17及び中間仕切板18にも吸込ポートにて第二のシリンダ17の内部の低圧室側と連通する吸込通路26が形成されている。
【0033】
これら吸込通路25、26は後述する冷媒導入管27の一端と連通するものとされており、冷媒導入管27からそれぞれの吸込通路25、26及び吸込ポートを経て第一、第二のシリンダ16、17に冷媒ガスが供給される。
【0034】
(吐出消音室)
前記第一及び第二のシリンダ16、17の内部で圧縮された冷媒ガスは、主軸受け23、副軸受け24にそれぞれ形成された吐出ポートにて主軸受け23の電動要素3側及び副軸受け24の電動要素3とは反対側に形成された吐出消音室28、29にそれぞれ吐出される。
【0035】
電動要素3側の吐出消音室28は、主軸受け23の回転軸4の軸受け部分を貫通させる部分を中心に開口した吐出消音板30を前記軸受け部分周りに被せ付けるようにして主軸受け23に取り付けることで形成されている。そして、前記吐出消音室28には、第一のシリンダ16の高圧側が主軸受け23に開口の通孔を介して連通している。
【0036】
また、オイルポンプ13側の吐出消音室29は、副軸受け24の軸受け部分を含めてこの副軸受け24をオイルポンプ13側からカップ状の吐出消音板31を被せ付けるように副軸受け24に取り付けることで形成されている。図示されているように吐出消音板31の中心には、オイルポンプ13のオイル吸い上げパイプ15が取り付けられた取付孔が設けられている。そして、前記吐出消音室29には、第二のシリンダ17の高圧側が副軸受け24に開口の通孔を介して連通している。
【0037】
吐出消音室28と吐出消音室29は、第一、第二のシリンダ16、17(シリンダの板材部分)と中間仕切板18を貫通して前記吐出消音室28内に達して開口する連通路(不図示)にて連通されている。
図6において符号32は、前記連通路の吐出消音室28側の末端であって、主軸受け23のシリンダ対応部分に形成された通孔である。
【0038】
回転圧縮要素7が稼動しているとき、第二の回転圧縮要素6で圧縮された高圧の冷媒ガスが、吐出消音室29と上記連通路とを経て吐出消音室28に吐出される。また、第一の回転圧縮要素5で圧縮された高圧の冷媒ガスが吐出消音室28に吐出され、前記第二の回転圧縮要素6で圧縮された高圧の冷媒ガスと合流し、吐出消音板30の主軸受け23の軸受け部分を貫通させる開口部分とその軸受け部分との間を通して、電動要素3側に吐出される。
【0039】
このとき、冷媒ガス中には第一及び第二の回転圧縮要素5、6に供給されたオイルが混入しているが、このオイルも密閉容器2内の電動要素3側に吐出されることになる。ここで、冷媒ガス中に混入したオイルは、その後冷媒ガスから分離して密閉容器2の内底部のオイル溜めに溜まる。
【0040】
(回転軸)
回転軸4には、回転中心線上にしてこの回転軸4の副軸受け24で軸受けされている端部側から電動要素3側に向けて不図示のオイル通路が設けられている。そして、オイルポンプ13は、オイル通路の副軸受け24で軸受けされている端部側において、電動要素3側に向けてオイルを導くとともに、オイル吸い上げパイプ15側からオイルを吸引する公知の構成を有してなるものである。
【0041】
さらに回転軸4には、第一の回転圧縮要素5と第二の回転圧縮要素6、また、主軸受け23、副軸受け24の軸受け部分にオイルを案内する小孔が設けられ、この小孔が前記オイル通路に連通している。回転軸4のオイル通路と前記小孔を介してオイルは、第一の回転圧縮要素5と第二の回転圧縮要素6、また、主軸受け23、副軸受け24の軸受け部分に供給されて潤滑が行なわれる。
【0042】
そのため、上述したように冷媒ガス中には第一及び第二の回転圧縮要素5、6に供給されたオイルが混入し、オイルを含んだ冷媒ガスからなる流体が、密閉容器2内の電動要素3側に吐出される。横型ロータリコンプレッサ1では、電動要素3側に吐出された流体からオイル分離をし、分離されたオイルはオイル溜めに集まり、また、オイル分離を経た流体、即ち、圧縮されている冷媒ガスは、密閉容器2の外へと吐出されるようにしている。
【0043】
(圧力制御板)
さらに本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1は、オイル分離が行なわれるときに差圧を形成して、密閉容器2の電動要素3側の空間の圧力を高くするとともに、オイルポンプ13側の空間の圧力を低くし、これによってオイルポンプ13側のオイル溜めの油面の高さを高めて、オイルポンプ13のオイル吸い上げが適切に行なわれるようにしている。さらに、オイル分離を効率よく行なって冷媒ガスが密閉容器2の外へ吐出されるようにしている。
【0044】
オイル分離を行なう際に上記差圧を形成するために、横型ロータリコンプレッサ1は、回転圧縮要素7の電動要素3側とオイルポンプ13側とに圧力制御板を備えている。
【0045】
(第一の圧力制御板)
本実施の形態において、第一の回転圧縮要素5の電動要素3側に第一の圧力制御板33が配置されている。第一の圧力制御板33は、吐出消音室28の外周に沿って形成されていて、
図4に示すように環状を呈した鋼板により構成されている。そして、吐出消音室28を形成する上記吐出消音板30を嵌め込む中央の開口部分に、この開口部分の中心に向けて張り出る二片の取付片34を有し、この取付片34を吐出消音板30に重ねて、吐出消音板30と共に主軸受け23にビス止めしている。
【0046】
なお、上記吐出消音板30は第一の圧力制御板33と同種の鋼材である。
【0047】
環状の第一の圧力制御板33の外縁35は、
図4に示すようにほぼ全周において円形状としている。
図3(c)と
図4(a)においては外縁の一部分が、コンプレッサ組立時の他部品との干渉を避けるためなどの理由により直線の縁としている。この直線の縁とした箇所は、オイル溜めのオイルに没する部分に含まれる。
【0048】
吐出消音板30と上記第一の圧力制御板33とを取り付ける主軸受け23は、軸受け部分の周りに径方向にして広がる板部36と、密閉容器2の内周面に亘って密に接していて前記板部36に連続するフランジ37とを備えている。そして、
図1と
図6とに示されているように主軸受け23の軸受け部分の周りに板部36とフランジ37とで構成された断面略L型の部位については、板部36の外周位置から電動要素3側に向けてフランジ37が延設された状態としている。
【0049】
そして、吐出消音板30と第一の圧力制御板33とが、主軸受け23の電動要素3側から取り付けられていて、第一の圧力制御板33の外縁35が、フランジ37の内周面に隙間を介して近接している。
【0050】
第一の圧力制御板33の円形状となっている外縁35が主軸受け23のフランジ37の内周面に隙間を介して近接していることから、前記第一の圧力制御板33は、回転圧縮要素7の電動要素側となる部分に配した状態で、密閉容器2内の上部を、電動要素3側と回転圧縮要素7側とに一部区画している。区画をしていない部分は、第一の圧力制御板33の外縁35とフランジ37の内周面38との間となる。
【0051】
そして、区画していない第一の圧力制御板33の外縁35とフランジ37の内周面38との間は、オイルを含む冷媒ガスからなる流体が、電動要素3側から回転圧縮要素7側に向けて通ることができる部分となる。よって、本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1において、第一の圧力制御板33は、密閉容器2内の上部を電動要素3側と回転圧縮要素7側とに一部区画し、この第一の圧力制御板33の外縁35に沿って前記隙間からなる略環状の第一の流体通過部39を形成している。
【0052】
略環状の第一の流体通過部39は、オイルを含む冷媒ガスからなる流体が通ることで電動要素3側と回転圧縮要素7側との間に僅かな差圧が構成される程度の十分な間隔に形成されている。
【0053】
上記主軸受け23の板部36には、オイルを含む冷媒ガスからなる流体の移動、そしてオイル溜めでのオイル移動を妨げることのないように、十分な広さの開孔が複数設けられていて、これらの孔をオイルを含んだ気体である冷媒ガスが通過しても、この開孔部分で差圧を構成することはない。
【0054】
第一、第二の回転圧縮要素5、6で圧縮され、吐出消音室28から電動要素3が位置する空間側に吐出された冷媒ガス(オイルを含む流体)が、上記第一の流体通過部39を通ることにより、上述したように僅かながら差圧が構成されるが、電動要素3側の空間を経た流体は、支承なく回転圧縮要素7側に流れる。
【0055】
(第二の圧力制御板)
本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1は、
図2に示すように密閉容器2の容器頂部位置から胴周り方向での容器側面側となる部分に冷媒吐出管40が設けられている。そして、上述したように横型ロータリコンプレッサ1は、回転圧縮要素7のオイルポンプ13側にも圧力制御板を備えていて、この圧力制御板は、胴周り方向の位置において、冷媒吐出管40の位置に対応している。
【0056】
本実施の形態では、回転圧縮要素7のオイルポンプ13側であって、密閉容器2の胴周り方向での位置が冷媒吐出管40の位置に対応する圧力制御板を、上記吐出消音室29の外周の一部分に配された第二の圧力制御板41として備えている。
【0057】
図5に示されているように第二の圧力制御板41は、吐出消音室29を形成する吐出消音板31に一体にした鋼板から形成されている。この第二の圧力制御板41は略円弧状の形状にして第二の回転圧縮要素6側から密閉容器2に向けて延設された形態であり、この密閉容器2側の外縁43が密閉容器2の内周面42に隙間を介して近接している。
【0058】
第二の圧力制御板41における密閉容器2の内周面42側に臨む外縁43が、その密閉容器2に隙間を介して近接していることから、第二の圧力制御板41は、回転圧縮要素7のオイルポンプ13側となる部分に配した状態で、密閉容器2内の上部を、回転圧縮要素7側とオイルポンプ13側に一部区画している。区画をしていない部分は、第二の圧力制御板41の外縁43と密閉容器2の内周面42との間、そして、第二の圧力制御板41を通る胴周り方向においてこの第二の圧力制御板41自体が存在していない部分である。
【0059】
第二の圧力制御板41と一体となっている吐出消音板31自体の密閉容器下部側には、オイルの移動を損なうまで張り出している部分は存在せず、吐出消音板31の下部が直接オイル溜めのオイルに没する。
【0060】
上記区画されていない第二の圧力制御板41の外縁43と密閉容器2の内周面42との間は、オイルを含む冷媒ガスからなる流体が、回転圧縮要素7側の空間からオイルポンプ13側の空間に向けて通ることができる部分となる。
【0061】
よって、本実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1において、第二の圧力制御板41は、密閉容器2内の上部を回転圧縮要素7側とオイルポンプ13側とに一部区画し、第二の圧力制御板41の外縁43に沿った部分に、隙間からなる略弧状の第二の流体通過部44を形成している。
【0062】
(第二の流体通過部の位置)
上述したように略弧状の第二の流体通過部44は、第二の圧力制御板41の上記外縁43とと密閉容器2の内周面42との隙間からなるものであり、また、第二の圧力制御板41による区画部位、即ち、この第二の圧力制御板41自体の位置が、密閉容器2の胴周り方向での位置において、冷媒吐出管40の位置に対応するように偏倚しているので、前記第二の流体通過部44の位置も、密閉容器2の長さ方向での冷媒吐出管40を配置している部分を通る位置に偏倚している。
【0063】
略弧状の第二の流体通過部44は、オイルを含む冷媒ガスからなる流体が通ることで回転圧縮要素7側とオイルポンプ13側との間に僅かな差圧が構成される程度の十分な間隔に形成されている。
【0064】
第一、第二の回転圧縮要素5、6で圧縮されて電動要素3側の空間、上記第一の流体通過部39を経て回転圧縮要素7の上部側の空間側に吐出された冷媒ガスが、第二の流体通過部44を通ってオイルポンプ13側の空間に吐出されることにより、僅かながら差圧が構成されるようにしている。勿論、前記流体はこの第二の流体通過部44を通過するに際しても支承なくオイルポンプ13側の空間に流れるものである。
【0065】
流体が第二の流体通過部44を通過することで構成される差圧も、密閉容器2の電動要素3側の空間の圧力を高くするとともに、オイルポンプ13側の空間の圧力を低くする作用を生じる。そして、オイルポンプ13側のオイル溜めの油面の高さを高めて、オイルポンプ13のオイル吸い上げが適切に行なわれるようにする点に寄与する。
【0066】
さらに、第二の流体通過部44を流体が通過するときにオイル分離を効率よく行なって、上記冷媒吐出管40が取り付けられている部分に向けてオイル分離された冷媒ガスが移動し、そして、第二の流体通過部44が、密閉容器2の長さ方向での冷媒吐出管40が通る線上となるように配置されているので、オイル分離された冷媒ガスが冷媒吐出管40に入り易くなり、このオイル分離された冷媒ガスが吐出されるようにしている。
【0067】
上記第一の流体通過部39と第二の流体通過部44を流体が通過することで構成される差圧によって、密閉容器2内底部のオイル溜めに貯溜されたオイルは、オイルポンプ13側に移動し、オイルポンプ13側のオイルレベルが上昇する。これにより、オイル吸い上げパイプ15の端部の開口は支障無くオイル中に浸漬されるようになるので、オイルポンプ13による回転圧縮要素(回転圧縮機構部)7の摺動部へのオイルの供給が円滑に行われるようになる。
【0068】
また、第一の圧力制御板33と第二の圧力制御板41とにより、電動要素3側とオイルポンプ13側には電動要素3側は高く、オイルポンプ13側が低くなる圧力の差が生じ、電動要素3側に溜まっているオイルもオイルポンプ13側に移動することができるようになる。
【0069】
これにより、オイルポンプ13側のオイルレベルを確保して給油を確実に行いながら、電動要素3を、熱伝導の良いオイルで冷却できる。よって、電動要素3の運転性能及び冷媒ガスの流通性を向上させて、冷媒ガスの吸込・圧縮・吐出というコンプレッサとしての各性能を確保することができる。
【0070】
また、密閉容器2内に吐出された冷媒ガスは、第一の流体通路部と第二の流体通路部とを経てから冷媒吐出管が取り付けられている部分に達し易く、冷媒ガス中に混入したオイルを効果的に分離しながら冷媒吐出管40側へと流し、その冷媒吐出管40を経て密閉容器2の外に吐出されるオイル量を著しく減らすことができる。
【0071】
(条件の規定)
実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1は、オイルをより効率的に分離できるようにするために各部分の距離や位置などの条件を規定している。
図6に、条件を規定するための各部分の寸法範囲が図示されている。なお、この
図6においては、横型ロータリコンプレッサ1の一部分のみを、
図2の断面線に沿った位置での断面が示されている。
【0072】
比(Dm/Dup)
まず、横型ロータリコンプレッサ1において、第一の圧力制御板33の外径(Dup)と第一の流体通過部39の外径(Dm)との比(Dm/Dup)を、
1<Dm/Dup<1.05
とした。
【0073】
比(Dc/Dlow)
つぎに、第二の圧力制御板41の密閉容器2側の上記外縁43を沿う環の外径(Dlow)と密閉容器2の内径(Dc)との比(Dc/Dlow)を、
1<Dc/Dlow<1.05
とした。
上述したように第二の圧力制御板41の外縁43は弧状であるが、この外縁43を密閉容器2の内周方向に延長して仮想の環を想定している。そして、その環の外径を(Dlow)としている。
【0074】
比(y/x)
つぎに、第二の圧力制御板41から冷媒吐出管40の中心までの距離(x)と第二の圧力制御板41から密閉容器2の給油手段(オイルポンプ13)側の内端位置までの距離(y)との比(y/x)を、
3<y/x<15
とした。
【0075】
比(d/x)
つぎに、第二の圧力制御板41から冷媒吐出管40の中心までの距離(x)と冷媒吐出管40の内径(d)との比(d/x)を、
0.5<d/x<3
とした。
【0076】
そして、上述したように第二の圧力制御板41は、冷媒吐出管40が設けられている部分より流体流れ方向での上流側に位置しているものとした。
【0077】
上記範囲において、実施の形態では、
Dm/Dup=1.03、
Dc/Dlow=1.02、
y/x=4.8、
d/x=0.8
とした。
【0078】
上記条件とした実施の形態の横型ロータリコンプレッサと、従来製品の横型ロータリコンプレッサとについて共に1000Wのものを用いて、冷媒吐出管からのオイル吐出量を比較した。
【0079】
(結果)
オイル吐出量(mL/min)は、従来製品の横型ロータリコンプレッサでは、運転周波数60/80(rps)において、7.6/25であった。一方、本実施の形態の横型ロータリコンプレッサでは、同じく運転周波数60/80(rps)において、3.3/13.3であった。
【0080】
上記比較から、実施の形態の横型ロータリコンプレッサ1において、密閉容器2内で冷媒ガスとオイルとが分離され、冷媒吐出管40からのオイル吐出量を、従来製品に対する比として、約60%低減する点が確認できた。