【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)展示による公開 〔展示日〕 令和2年2月8日〜2月9日 〔展示会名〕 介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会全国設置・運営業務成果報告会 〔開催場所〕 TKP東京駅日本橋カンファレンスセンター(東京都中央区八重洲1−2−16 TGビル) (2)発表による公開 〔展示日〕 令和2年2月9日 〔展示会名〕 介護ロボットのニーズ・シーズ連携協調協議会全国設置・運営業務成果報告会 〔開催場所〕 TKP東京駅日本橋カンファレンスセンター(東京都中央区八重洲1−2−16 TGビル)
【解決手段】排尿検知装置1は、複数の導通電極及び一対の絶縁電極を備えるセンサ2と、導通電極及び絶縁電極に接続され、排尿を検知する検知部3と、を備え、センサ2は、長さ方向21及びこれに交差する交差方向22を有し、絶縁電極は、長さ方向21に延びるとともに、交差方向22に離間して配置され、導通電極は、長さ方向21に延びるとともに、交差方向22に離間し、絶縁電極の間に配置される。
前記検知部は、前記導通電極間のインピーダンスを測定し、前記インピーダンスに基づく値の急激な減少を検知すると、前記インピーダンスに基づく値が急激に減少し始めてから増加に転じるまでの時間を前記インピーダンスの立下り時間として算出し、前記立下り時間から排尿量を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の排尿検知装置。
前記検知部は、前記インピーダンスに基づく値の急激な減少を検知するごとに前記立下り時間を累計した値を第1変数として算出し、予め記憶される前記第1変数と前記排尿量との関係に基づいて前記排尿量を推定する
ことを特徴とする請求項2に記載の排尿検知装置。
前記検知部は、前記静電容量に基づく値の急激な増加を検知するごとに前記静電容量に基づく値の増加量を累計した値を第2変数として算出し、予め記憶される前記第2変数と前記排尿量との関係に基づいて前記排尿量を推定する
ことを特徴とする請求項4に記載の排尿検知装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この発明の排尿検知装置1は、
図1に示したように、尿取りパッド等の着用物品の肌側に接着固定可能なセンサ2と、センサ2に接続され排尿を検知する検知部3とを備える。検知部3は、センサ2の導通電極及び絶縁電極に接続され、排尿に関するデータをパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」と表記する。)5に送信する送信機4と、送信機4と電気通信可能に接続されるパソコン5から構成され、排尿を検知する。
【0014】
<センサ2の構成>
図2に示したようにセンサ2は長さ方向21と、長さ方向21に交差する交差方向22と、長さ方向21に延びるとともに交差方向22における寸法を二等分する中心線2Aとを有する。センサ2は中心線2Aにおいて左右対称の構成となっており、
図2においては中心線2Aの左半分は透液性シート26を省略している。
【0015】
センサ2は、交差方向22の寸法よりも長さ方向21における寸法が大きく、長さ方向21に離間する一方の端部23A及び他方の端部23Bと、交差方向22に離間する両側縁24A,24Bとを有する。センサ2は、長さ方向21に隣接する尿検知領域2Aと取付領域2Bとを備える。尿検知領域2Aは、着用物品に取り付けた際、そのすべてが着用物品内に位置し、取付領域2Bは尿検知領域2Aから着用物品外へと延びる。この実施形態において尿検知領域2Aにおける長さ方向21の寸法は約200mmであり、取付領域2Bにおける長さ方向21の寸法は約300mmである。また、尿検知領域2Aにおける一方の側縁24Aから他方の側縁24Bまでの交差方向22の寸法は約74mm、取付領域2Bにおける交差方向22の寸法は約38mmである。
【0016】
併せて
図3及び
図4を参照すれば、センサ2は、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)等のポリエステル樹脂によって形成された不透液性フィルム25と、不透液性フィルム25に対向して配置される透液性シート26と、不透液性フィルム25に設けられた導電体27と、導電体27の一部を覆う絶縁膜28と、を備える。導電体27として、導電性インクや導電性塗料等を用いることができる。導電体27を絶縁膜28で覆うことによって、絶縁電極とすることができ、絶縁膜28で覆わない部分を導通電極とすることができる。透液性シート26は着用者の肌に直接接触するものであり、尿検知領域2A及び取付領域2Bのほぼ全域を覆い、不透液性フィルム25や導電体27、絶縁膜28が着用者の肌に直接触れるのを防止している。透液性シート26として、例えば透液性の不織布を用いることができる。
【0017】
尿検知領域2Aにおいて、一方の側縁24Aから他方の側縁24Bに向かって、第1絶縁電極61、第2導通電極62、第3導通電極63、第4導通電極64、第5導通電極65、第6絶縁電極66と順に交差方向に並ぶとともに、長さ方向21に連続して延びる。第1及び第6絶縁電極61,66は、導電体27を絶縁膜28で覆うことによって形成される。第2〜第5導通電極62〜65は、絶縁膜28で覆うことなく、直接透液性シート26を積層することによって形成される。なお、絶縁電極及び導通電極のいずれにおいても不透液性フィルム25に接触する部分は絶縁される。したがって、導通電極は不透液性フィルム25の反対側である透液性シート26側のみが通電可能な片面導通電極である。
【0018】
上記のようにセンサ2は、尿検知領域2Aにおいて、一対の絶縁電極である第1絶縁電極61及び第6絶縁電極66と、複数の導通電極である第2〜第5導通電極62〜65が配置される。第1及び第6絶縁電極61,66は、長さ方向21に延びるとともに、交差方向22に離間して配置され、より詳細には両側縁24A,24B近傍にそれぞれ配置される。第2〜第5導通電極62〜65は、長さ方向21に延びるとともに、交差方向22に離間し、第1絶縁電極及び第6絶縁電極66の間に配置される。このように導通電極の両側に絶縁電極を配置することによって、導通電極における外側からのノイズを遮断することができ、より精度の高い検知を可能とすることができる。
【0019】
尿検知領域2Aにおいて、第2導通電極62及び第3導通電極63の離間寸法D2、第3導通電極63及び第4導通電極64の離間寸法D3、第4導通電極64及び第5導通電極65の離間寸法D4はほぼ等しく、この実施形態では約10mmとしている。また、第1絶縁電極61及び第2導通電極62の離間寸法D1、第5導通電極65及び第6絶縁電極66の離間寸法D5はほぼ等しく、導通電極間における離間寸法よりも小さく、この実施形態では約3mmとしている。更に、それぞれの電極は不透液性フィルム25及び透液性シート26によって連結されている。これにより、シートのバタつきを抑え、着用物品に張り付けしやすくなる。
【0020】
尿検知領域2Aにおいて、第1絶縁電極61及び第6絶縁電極66の幅寸法H1はほぼ等しく、この実施形態では約5mmである。第2導通電極62、第3導通電極63、第4導通電極64、第5導通電極65の幅寸法H2はほぼ等しく、この実施形態では約3mmである。このように絶縁電極の幅寸法H1を導通電極の幅寸法H2よりも大きくすることによって、静電容量の感度を向上させることができる。
【0021】
尿検知領域2Aの第1絶縁電極61、第2〜第5導通電極62〜65、第6絶縁電極66を構成する導電体27は、取付領域2Bへと連続して長さ方向21に延びる。これら導電体27は、端縁23Bを除く取付領域2Bの全域において絶縁膜28で覆われる。すなわち、第2導通電極62、第3導通電極63、第4導通電極64、第5導通電極65を構成する導電体27は、尿検知領域2Aにおいては絶縁膜で覆われることなく導通性を有するが、取付領域2Bにおいては絶縁膜28で覆われて導通性を喪失し、それぞれ第2絶縁電極72、第3絶縁電極73、第4絶縁電極74、第5絶縁電極75となる。また、取付領域2Bにおいて、第1絶縁電極61及び第2絶縁電極72の離間寸法D6、第2絶縁電極72及び第3絶縁電極73の離間寸法D7、第4絶縁電極74及び第5絶縁電極75の離間寸法D9、第5絶縁電極75及び第6絶縁電極66の離間寸法D10はほぼ等しく、この実施形態において約3mmである。第3絶縁電極73及び第4絶縁電極74の離間寸法D8は、この実施形態において約8mmであり、D6〜D10よりも大きくしている。
【0022】
上記のような構成にすることによって、取付領域2Bにおける一方の側縁24Aから他方の側縁24Bまでの幅寸法H3は、この実施形態において約38mmであり、尿検知領域2Aにおける幅寸法H4は約74mmとしている。尿検知領域2Aの幅寸法H4を大きくすることによって、より広い範囲で排尿を検出することができ検出精度を向上させることができる。また、取付領域2Bの幅寸法H3を小さくすることによって、送信機への連結を容易にすることができる。取付領域2Bにおける端部23B近傍では、第1〜第6絶縁電極の導電体27が露出し、導通可能としている。また、第3絶縁電極73と第4絶縁電極74との間であって端部23B近傍には、送信機への導通を担保するために補助電極76をさらに設けている。
【0023】
センサ2は、不透液性フィルム25の裏面、すなわち透液性シート26とは反対側の面に粘着剤が塗布され、尿取りパッド等のインナーに貼付可能としている。したがって、着用者の排尿位置に尿検知領域2Aを合わせるようにしてセンサ2を着用物品に取り付けることができる。
【0024】
上記のようなセンサ2は、取付領域2Bの端部23Bを送信機の図示しないソケットに挿入することによって、これらを連結可能としている。取付領域2Bの端部23Bはアタッチメント部材を用いることによってより容易に挿入可能とすることができる。アタッチメント部材は略矩形の板状部材であり、その大きさはソケットの大きさよりもわずかに小さい。センサ2の端部23Bは、不透液性フィルム25が対向するように折り返し、対向する不透液性フィルム25の間にアタッチメント部材を配置する。アタッチメント部材とセンサ2の端部23Bとを挟持しながらこれをソケットに挿入することによって、露出した導電体27ソケット内部に接触可能とすることができる。アタッチメント部材を用いることにより、可撓性を有するセンサを容易にソケットに挿入することができる。
【0025】
<検知部3の構成>
図1に示すように、検知部3は、センサ2の導通電極及び絶縁電極に接続され、排尿に関するデータをパソコン5に送信する送信機4と、送信機4と電気通信可能に接続されるパソコン5から構成され、排尿を検知する。
【0026】
送信機4は、他の電子部品を制御するマイクロコンピュータ(以下、「マイコン」と表記する。)41と、センサ2に電圧を印加し、センサ2のインピーダンスや静電容量等を測定する測定部42と、マイコン41から出力されるデータをパソコン5に送信する送信部43等から構成される。
【0027】
マイコン41は、CPU、ROM、RAM、フラッシュメモリ等を備える。マイコン41のCPUは、ROMに格納されたプログラムをRAMに読み出し、RAMやフラッシュメモリ等にアクセスしながら、その他の機器を制御し、後述する処理を実行する。
【0028】
測定部42は、センサ2の2つの導通電極間のインピーダンスを測定し、インピーダンスに基づく電圧をマイコン41に出力する。また、測定部42は、センサ2の導通電極と絶縁電極との間の静電容量に基づく値を測定し、静電容量に基づく電圧をマイコン41に出力する。マイコン41は、インピーダンスに基づく電圧や、静電容量に基づく電圧をAD変換し、排尿量を推定し、インピーダンスや静電容量に基づく値と推定排尿量を送信部43に出力する。送信機4がデータロガーを備える場合、マイコン41は、一旦データロガーにデータを保存し、データロガーが所定時間ごとに送信部43にデータを出力しても良い。
【0029】
送信部43は、マイコン41又はデータロガーからデータを入力すると、ブルートゥース(登録商標)やWi-Fi等の無線通信によって、パソコン5にデータを送信する。パソコン5は、送信部43からデータを入力すると、予め定められた処理を実行する。例えば、排尿量が閾値を超えている場合、パソコン5は、画面に表示したり、他の電子端末(例えば、スマートフォン等)にメッセージを送信したりして、着用者の介護や看護等を担当する担当者に通知する。
【0030】
上記の説明では、マイコン41が排尿量を推定するものとしたが、マイコン41はインピーダンスや静電容量に基づく値をパソコン5に送信する制御のみを行い、パソコン5が排尿量を推定しても良い。また、パソコン5は、クラウドサーバであっても良い。また、検知部3は、パソコン5を備えなくても良く、排尿量が閾値を超えている場合、マイコン41が警告音等を出力し、担当者に通知しても良い。以下では、マイコン41が排尿量を推定するものとして説明する。
【0031】
<第1排尿量推定方法>
図5〜
図8を参照しながら、本実施の形態における第1排尿量推定方法について説明する。第1排尿量推定方法では、検知部3は、2つの導通電極間のインピーダンスを測定し、インピーダンスに基づく値の急激な減少を検知すると、インピーダンスに基づく値が急激に減少し始めてから増加に転じるまでの時間をインピーダンスの立下り時間として算出し、インピーダンスの立下り時間に基づいて排尿量を推定する。
【0032】
図5(a)〜
図5(c)は、センサ2の中心に流量率が山型となるように水を滴下し、その量を変えて実験した結果を示している。
図5(a)は滴下量が12cc、
図5(b)は滴下量が30cc、
図5(c)は滴下量が48ccである。
図5(a)〜
図5(c)の横軸は時間、縦軸は測定部42によって測定される導通電極間のインピーダンスのAD変換値である。
【0033】
測定部42は、周知の手法によって、センサ2の導通電極間のインピーダンスを電圧に変換し、これをマイコン41はAD変換する。例えば、測定部42は、基準電圧発生回路、電流電圧変換回路、電圧出力回路等を備え、基準電圧発生回路によって電圧をセンサ2の2つの導通電極間に印加し、その際の電流値を電流電圧変換回路によって電圧変換し、電圧出力回路を通して、マイコン41に出力する。
【0034】
図5(a)〜
図5(c)に示す波形は、インピーダンスのAD変換値、すなわちインピーダンスに基づく値の波形である。3つのいずれにおいても、インピーダンスのAD変換値の波形は、急激に減少し、その後に増加に転じる下端のピーク、すなわち谷が存在する。これは、水がセンサ2に滴下された後にインピーダンスが大きく変化し、尿取りパッドに水が吸収されていくにつれて、インピーダンスが元の値に戻ることを示している。
【0035】
本実施の形態では、この波形の谷に着目し、マイコン41が、導通電極間のインピーダンスのAD変換値が急激に減少し始めてから増加に転じるまでの時間をインピーダンスの立下り時間として算出する。具体的には、マイコン41は、インピーダンスのAD変換値が所定の減少判定閾値(例えば、「10」)以上減少したことを検知すると、その時点から所定の増加判定閾値(例えば、「3」)以上の増加に転じるまでの時間をインピーダンスの立下り時間として算出する。
【0036】
図6は、
図5(a)〜
図5(c)における滴下量と立下り時間の関係を示している。
図6に示すように、滴下量と立下り時間には相関関係があることが分かる。この結果から、排尿量と立下り時間にも相関関係があると推測できる。
【0037】
図7(a)は、1%の食塩水を5分毎に30cc滴下し、合計で150ccの滴下を行った時の特性を示している。第1測定の波形は、第2導通電極62と第3導通電極63との間のインピーダンスのAD変換値、第2測定の波形は、第3導通電極63と第4導通電極64との間のインピーダンスのAD変換値、第3測定の波形は、第4導通電極64と第5導通電極65との間のインピーダンスのAD変換値であり、いずれも測定部42によって測定されたものである。
【0038】
図7(a)に示す第1変数P1は、第1測定〜第3測定のAD変換値におけるインピーダンスの立下り時間の合計を累計したものである。具体的には、マイコン41は、インピーダンスのAD変換値が所定の減少判定閾値以上減少したことを検知するごとに、3つの測定におけるインピーダンスのAD変換値の立下り時間を加算し、それまでの値を累計して第1変数P1の値とする。
【0039】
ここで、排尿検知装置1は、少なくとも一か所の導通電極間のインピーダンスを測定することによって、排尿量を推定することができるが、上記の説明のように、複数の異なる箇所の導通電極間のインピーダンスを測定し、排尿量の推定に用いることによって、より推定精度が向上する。特に、複数の異なる箇所の導通電極間のインピーダンスを測定することで、排尿量が少量であったり、排尿領域が偏ったりしている場合であっても、確実に排尿を検知し、精度良く排尿量を推定することができる。
【0040】
図7(b)は、
図7(a)において点線で示す範囲Rに関する第1変数P1の計算例を示している。第1測定〜第3測定において下線を引いた箇所は、AD変換値が所定の減少判定閾値以上減少してから所定の増加判定閾値以上の増加に転じるまでの条件を満たしている。ここで、所定の減少判定閾値は「10」、所定の増加判定閾値は「3」とする。例えば、第1測定のAD変換値は、測定時刻が「9:39:58」の時に「882」、「9:39:59」の時に「868」となっており、所定の減少判定閾値以上減少しているので、「9:39:58」が立ち上がり時間の開始時点である。また、第3測定のAD変換値は、測定時刻が「9:40:03」の時に「835」、「9:40:04」の時に「841」となっており、所定の増加判定閾値以上増加しているので、「9:40:04」が立ち上がり時間の終了時点である。従って、範囲Rにおける第1測定の波形の立ち上がり時間は7秒である。同様に、範囲Rにおける第2測定及び第3測定の波形の立ち上がり時間は、それぞれ5秒と6秒である。従って、範囲Rにおける3つの測定の合計値は、7+5+6=18秒であり、累計値は10秒+18秒=28秒となる。
【0041】
図7(a)の第1変数P1のグラフから分かるように、5回の滴下回数と同じ数だけ第1変数P1が上昇を繰り返していることから、滴下のタイミングで第1変数P1の値が上昇し、次の滴下までその値を維持していると言える。
【0042】
図8は、第1排尿量推定方法における第1変数P1と累積滴下量の関係を示している。(x、y)=(0,0)と(x、y)=(60,150)を結ぶ直線y=2.5xによって、第1変数P1と累積滴下量の相関関係が概ね表されていることが分かる。
【0043】
そこで、本実施の形態における排尿検知装置1の検知部3は、マイコン41が、第1変数P1と累積滴下量との関係を示す第1推定情報として、直線y=ax(aは実数)を予め記憶しておく。そして、検知部3としてのマイコン41は、インピーダンスに基づく値の急激な減少を検知するごとにインピーダンスの立下り時間を累計した値を第1変数P1として算出し、予め記憶される第1変数P1と排尿量との関係を示す第1推定情報に基づいて排尿量を推定する。
【0044】
ここで、傾きの係数aは、センサ2の特性、排尿状態及び排尿の成分特性等で変化するものであるから、着用者ごとに予め算出しておくことが望ましい。例えば、着用前、すなわち排尿前の尿取りパッドの重さと、着用後、すなわち排尿後の尿取りパッドの重さを計測し、差分を算出することによって実際の排尿量を得る。そして、実際の排尿量とインピーダンスの立下り時間の算出結果によって、傾きの係数aを算出する。
【0045】
第1推定情報としては、直線y=ax以外にも、単回帰分析の結果としての直線y=ax+b(a、bは時数)や、非線形回帰分析の結果としての非線形関数等であっても良い。また、着用者ごとに第1推定情報を予め算出する代わりに、着用者の性別、年齢、身長、体重等によって区分されるカテゴリごとに第1推定情報を予め算出しても良い。
【0046】
<第2排尿量推定方法>
図9〜
図12を参照しながら、本実施の形態における第2排尿量推定方法について説明する。第2排尿量推定方法では、検知部3は、導通電極と絶縁電極との間の静電容量に基づく値を測定し、静電容量に基づく値から排尿量を推定する。
【0047】
公知の排尿量推定方法として、
図9に示す等価回路のように、2本の絶縁電極を用いて尿取りパッドの静電容量を測定し、静電容量の値に基づいて排尿量を推定する方法が知られている。この回路における静電容量C0を大きくすることによって、静電容量Cxの値を精度良く測定することが可能となる。従って、絶縁電極の面積を大きくしたり、絶縁電極間を狭めたりすることで、高精度な測定が期待できる。
【0048】
一方、本実施の形態におけるセンサ2において、第1絶縁電極61と第6絶縁電極66を用いる場合、互いの距離が離れているため、静電容量C0が小さく、浮遊容量も入り込む不安定な測定となってしまう。
【0049】
そこで、本実施の形態では、測定部42は、1つの絶縁電極と1つの導通電極との間の静電容量に基づく値を測定し、静電容量に基づく値をマイコン41に出力する。マイコン41は、測定部42から入力される静電容量に基づく値から排尿量を推定する。
【0050】
図10に示すように、測定部42は、例えば、第1絶縁電極61に接続されるパルス発生回路C1及び第5導通電極65に接続される電流電圧変換回路C2等を備える。測定部42は、パルス発生回路C1によって高電位のパルスを発生させ、第1絶縁電極61を高電位とし、その直後に第5導通電極65の電流を電流電圧変換回路C2によって電圧に変換し、それをマイコン41がAD変換値x1に変換する。次に、測定部42は、パルス発生回路C1によって低電位のパルスを発生させ、第1絶縁電極61を低電位とし、所定時間(例えば1ミリ秒)後に第5導通電極65の電流を電流電圧変換回路C2によって電圧に変換し、それをマイコン41がAD変換値x2に変換する。マイコン41は、AD変換値x1とAD変換値x2との差分を算出し、第4測定の値とする。第4測定の値は、絶縁電極と導通電極との間の静電容量に基づく値であり、排尿によるセンサ2の静電容量の変化を示している。
【0051】
図10では、第1絶縁電極61と第5導通電極65を用いて測定したが、複数の異なる絶縁電極及び導通電極を用いて測定しても良い。複数の測定値を用いて排尿量を推定することによって、より推定精度が向上する。特に、複数の異なる絶縁電極及び導通電極を用いて測定することで、排尿量が少量であったり、排尿領域が偏ったりしている場合であっても、確実に排尿を検知し、精度良く排尿量を推定することができる。
【0052】
図9に示す等価回路のように、第1絶縁電極61と第6絶縁電極66を用いた場合、0〜10pF(ピコファラド)程度の範囲しか静電容量を計測できなかったが、本実施の形態における第4測定では、0〜100μF(マイクロファラド)の範囲で静電容量を計測できる。このようにダイナミックレンジを大きく測定できる理由は、導通電極に排尿が接触することで、その接触領域が電極として広がることとなり、結果的に、絶縁電極と通電電極の間隔が狭まり、絶縁電極の静電容量が大きくなることと、
図9に示す静電容量C0が導通電極側には無いことが挙げられる。
【0053】
図11に示す第4測定のグラフは、食塩水の滴下後に急激に数値が高くなり、その後緩やかに低下し、再度食塩水が滴下された場合は、再び数値が高くなる。尚、「9:36:00」前後の1回目の滴下時は、第4測定のグラフが、2回目以降の滴下時に比べて数値の上昇度合が低い。これは、1回目の滴下時にはセンサ2が乾いているので、食塩水がセンサ2をすぐに通過して尿取りパッドに浸み込んでしまうためと考えられる。
【0054】
第4測定の値は、電極近傍の液体容量に相関があることは明らかであるが、この液体が尿取りパッドに浸み込んでいき、電極近傍の液体容量が少なくなるにつれて、第4測定の値が低くなっていると推測できる。そこで、本実施の形態では、第4測定の増加分に着目し、検知部3としてのマイコン41は、絶縁電極と通電電極との間の静電容量に基づく値である第4測定の急激な増加を検知するごとに、第4測定の増加量を累計した値を第2変数として算出し、予め記憶される第2変数と排尿量との関係に基づいて排尿量を推定する。尚、ノイズを除去するため、マイコン41は、所定の増加判定閾値を用いて第4測定が急激に増加したか否かを判断する。
【0055】
図11には、第2変数の算出結果が示されている。また、
図12には、第2変数p2を説明変数、累積滴下量を被説明変数として単回帰分析を行った結果が示されている。回帰直線yの式は、y=0.9322x+29.223である。マイコン41は、第2変数と排尿量との関係を示す第2推定情報として、上記の回帰直線yの式を予め記憶しておく。そして、検知部3としてのマイコン41は、第2変数p2の値を算出すると、第2推定情報に基づいて排尿量を推定する。
図12に示す例では、決定係数R^2(Rの2乗)が0.9974であるから、回帰直線yの式によって、精度良く累積滴下量を推定できることが分かる。
【0056】
ここで、回帰直線の傾き及び切片の値は、センサ2の特性、排尿状態及び排尿の成分特性等で変化するものであるから、第1排尿量推定方法と同様、着用者ごとに予め算出しておくことが望ましい。第2推定情報としては、単回帰分析の結果としての回帰直線の他に、非線形回帰分析の結果としての非線形関数等であっても良い。また、着用者ごとに第2推定情報を予め算出する代わりに、着用者の性別、年齢、身長、体重等によって区分されるカテゴリごとに第2推定情報を予め算出しても良い。
【0057】
以上の通り、本実施の形態では、排尿量にかかわらず高精度で検出可能な排尿検知装置1を提供することができる。前述の第1排尿量推定方法及び第2排尿量推定方法は、いずれか一方のみでも精度良く排尿量を推定することができる。また、前述の第1排尿量推定方法及び第2排尿量推定方法の両方を組み合わせることによって、更に精度良く排尿量を推定することができる。