【解決手段】暗号記憶具(1)は、多角柱を軸方向で複数に分割した複数のブロック(2−6)と、複数のブロックを回転可能に支持する軸(7)と、を備える。複数のブロックの各側面に所定の文字を記載可能な文字記載面(21−61)を有する。各ブロックの文字記載面を軸方向に連ねることで所定の暗号を読み取ることが可能である。少なくとも1列の文字記載面の文字列から所定の暗号を読み取ることができれば、他の列の文字記載面の文字列から他の暗号を読み取ることが可能となる。
前記複数のブロックのうち、少なくとも1つのブロックの所定の前記文字記載面には、文字列重複防止用の印が設けられている、請求項3又は請求項4に記載の暗号記憶具。
【発明を実施するための形態】
【0011】
昨今の技術革新に伴い、スマートフォン等の情報端末が普及するにつれて、個人の電話番号や種々の暗証番号等の文字情報は、上記のような情報端末に記憶されるのが通常である。例えば、電話番号等の個人情報は、情報端末内(アドレス帳)に保存されている。
【0012】
しかしながら、災害時等、不測の事態により、情報端末がバッテリ不足で上記のような文字情報を閲覧することができなくなる場合が想定される。そこで、本件発明者は、このような電子化技術に依存する現状の盲点に着目し、敢えて原始的な構造で所定の文字情報を記憶させる本発明に想到した。以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態に係る暗号記憶具を示す斜視図である。
図2は、本実施の形態に係る暗号記憶具の分解斜視図である。
図1Aは所定の文字が記載されていない状態の暗号記憶具を示し、
図1Bは所定の文字として電話番号が記載された暗号記憶具を示している。なお、以下に示す暗号記憶具はあくまで一例にすぎず、これに限定されることなく適宜変更が可能である。
【0014】
図1及び
図2に示すように、本実施の形態に係る暗号記憶具1は、ダイヤル式のパズルで構成され、例えば電話番号を記憶するものである。具体的に暗号記憶具1は、多角柱(本実施の形態では六角柱)を軸方向で複数(本実施の形態では5つ)に分割した5つのブロック2−6と、5つのブロック2−6のうち、4つのブロック3−6を回転可能に支持する軸7と、を備えている。
【0015】
軸7は、所定方向に長い円柱形状の棒で構成される。軸の一端には、六角柱のブロック2が一体固定されている。軸7の外径はブロック2よりも小さくなっている。また、軸7の中心とブロック2の中心とは一致している。ブロック2−6は、軸方向からみて同一の六角形状を有している。ブロック3−6には、それぞれ中央に軸方向へ貫通する貫通孔30−60が形成されている。各貫通孔は、軸7の外径に対応した内径を有しており、軸7が挿通可能となっている。ブロック3−5の軸方向の長さは同一である一方、ブロック6の軸方向の長さは、ブロック3−5に比べて長くなっている。なお、各ブロックの形状及び大きさは、これらに限らず適宜変更が可能である。
【0016】
ブロック2−6の軸周りの各側面には、所定の文字を記載可能な文字記載面21−61が形成されている。詳細は後述するが、各ブロック2−6を軸方向に連ねることで所定の暗号を読み取ることが可能になっている。
【0017】
ブロック3−6は、軸7の一端側から順番に各貫通孔を通じて軸7に取り付けられる。軸7の他端は、ブロック6の端面よりも僅かに突出している。軸7の他端には、図示しないストッパが取り付けられる。これにより、ブロック3−6は、軸7に対して回転自在に支持されつつも、軸方向の移動が規制される。
【0018】
このように構成される暗号記憶具1は、各ブロック2−6の文字記載面21−61を一列に連ねることで全体として軸方向に長い六角柱を形成する。各文字記載面21−61が一列に連なることで、全部で6列の暗号記載領域A−F(
図3参照)が形成される。
【0019】
6列の暗号記載領域A−Fには、所定の暗号として、例えば家族の電話番号が記載される。本実施の形態では、暗号記載領域A−Fが6列あるため、本人を含めて6人分の電話番号を記載することが可能である。
【0020】
本実施の形態では、ブロック3−6が軸7に対して回転自在であるため、ブロック3−6を任意の角度に回転させることで、正規の電話番号の配列をランダムな配列にすることができる。このため、第三者に正規の電話番号を知られることが防止される。
【0021】
通常、複数の電話番号を暗号記憶具1に記載しても、本人以外の電話番号は忘れてしまうものである。一方で、本人の電話番号は、普段から使用するケースが多いため、本人が覚えているのが通常である。
【0022】
そこで、本実施の形態では、本人の電話番号を鍵として、本人の電話番号が揃うようにブロック2−6の文字記載面21−61を位置合わせする。本人の電話番号が揃うことにより、他の電話番号も自動的に揃うことになる。すなわち、少なくとも1列の文字記載面の文字列から所定の暗号(本人の電話番号)を読み取ることができれば、他の列の文字記載面の文字列から他の暗号(他の電話番号)も読み取ることが可能となる。
【0023】
このように、所定の文字列さえ揃えば他の列が揃うため、本人の電話番号さえ覚えていれば、他の電話番号を自動的に認識することが可能である。したがって、万が一、他人の番号を忘れて情報端末を閲覧することができない状況であっても、暗号記憶具1にその情報が表示されることで思い出すことが可能である。
【0024】
次に、
図3を参照して、暗号記憶具に記載される文字情報の例について説明する。
図3は、暗号記憶具(ブロック)の側面の展開図及び文字情報の記載例を示す図である。なお、
図3では、記憶対象としての暗号が電話番号の場合について説明するが、これに限らず適宜変更が可能である。
【0025】
図3に示すように、5つのブロック2−6の側面により、6×5マスの合計30マスの文字記載面が形成されている。説明の便宜上、縦に並ぶ行を紙面上からABCDEFとし、横に並ぶ列を紙面左からabcdeとする。この場合、所定のマスを指し示す際にはマスAaのように縦の番号と横の番号を組み合わせて表すことにする。また、
図3では、説明の便宜上、縦に並ぶA−Fを行、横に並ぶa−eを列と呼ぶが、A−F、a−eのどちらを行または列と呼んでもよく、A−F、a−eのいずれも行または列と呼んでもよい。
【0026】
本実施の形態では、六角柱の軸周りの側面を文字記載面としたことで、A行からF行まで合計して6つの電話番号が記載可能になっている。
図3に示すように、A−Fの各行は、a−eの5列に区画されている。
【0027】
本実施の形態では、例えば、
(1)A行に本人(私)の電話番号(090−1111−1111)、
(2)B行に兄の電話番号(080−2222−2222)、
(3)C行に姉の電話番号(080−3333−3333)、
(4)D行に子の電話番号(070−4444−4444)、
(5)E行に母の電話番号(090−5555−5555)、
(6)F行に妻の電話番号(090−6666−6666)、
が記載されている(図中ハイフン(−)は省略)。
【0028】
本実施の形態では、暗号記憶具1の持ち主である本人(私)が鍵番号である。鍵番号とは、使用者本人が記憶しているであろう暗号鍵であり、各ブロック2−6の正しい並びを成立させるための認証番号である。すなわち、暗号を確認する際には、鍵番号である本人の電話番号が読み取れるように、ブロックの文字記載面を揃える必要がある。なお、鍵番号は、本人の電話番号に限らず、他人の電話番号であってもよい。その場合、他人の番号を予め使用者が記憶しておく必要がある。
【0029】
各文字記載面の記載内容について説明する。
図3に示すように、a列には、電話番号の持ち主等、電話番号と関連付けられる識別情報(ID)と、電話番号の接頭部分(本実施の形態では上3桁の番号)と、が記載される。電話番号の接頭部分は、接頭番号と呼ばれてもよい。本実施の形態では、IDとして、「私」(本人)の他、電話番号の持ち主が記載されている。IDは、これらの文字に限らず、各電話番号との関連付けがなされれば、どのような情報が記載されてもよい。例えば、IDとして図柄を表記してもよい。
【0030】
また、
図3では、携帯電話の番号である上3桁(例えば090)を接頭番号として記載しているが、これに限定されない。例えば、固定電話であれば、「03」等、接頭番号の桁数は適宜変更が可能である。より好ましくは、電話番号のうち、下8桁を除いた番号を接頭番号に設定するとよい。また、接頭番号を特定することできるのであれば、例えば「090」のうち、前後の「0」を省略して「9」のみを接頭番号として記載することも可能である。接頭番号の桁数が減ることでa列に記載する文字数が減るため、ブロック6の軸長さを短くして、暗号記憶具1全体をコンパクトにすることが可能である。
【0031】
b列からe列には、電話番号の下8桁がそれぞれ2桁ずつ記載される。すなわち、本実施の形態において、ブロック2−6の各文字記載面21−61には、少なくとも2つ以上の文字を記載可能である。本実施の形態では、電話番号の下8桁を2桁ずつ4つのブロックに分けて記載したことにより、電話番号の難読化(暗号秘匿性)を確保している。
【0032】
なお、本実施の形態では、電話番号の下8桁を2桁ずつ4つのブロックに分けて記載する構成としたが、この構成に限定されない。例えば、電話番号の下8桁を4桁ずつ2つのブロックに分けて記載してもよく、電話番号の下8桁を1桁ずつ8つのブロックに分けてもよい。すなわち、ブロックの個数及び単位ブロックにおける記載文字数は、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0033】
なお、電話番号の下8桁を4桁ずつ2つのブロックに分けた場合、ブロックの数が減るため、ブロック4つの場合に比べて暗号秘匿性は劣る。また、電話番号の下8桁を1桁ずつ8つのブロックに分けた場合、ブロックの数が増えるため、ブロック4つの場合に比べて暗号秘匿性は向上される。一方で、電話番号の下8桁を1桁ずつ8つのブロックに分けた場合、各列に記載される文字の種類は、電話番号で「0」−「9」に限定されるため、一定の確率で本人と他人とで番号が重複するおそれがある。本人の鍵番号の一部と他人の番号の一部とが重複してしまうと、他人の番号の一部で本人の鍵番号が一致してしまうことが想定される。すなわち、暗号秘匿性と文字重複率はトレードオフの関係にあるといえる。
【0034】
そこで、本実施の形態では、このような事態を可能な限り排除するために、電話番号の下8桁を2桁ずつ4つのブロックに分けたことで、暗号秘匿性の確保と文字重複率の低減とを両立することが可能になっている。
【0035】
しかしながら、それでも場合によっては、鍵番号である本人の電話番号の一部と他人の電話番号の一部とが重複してしまうことが想定される。ここで、
図4を参照して変形例に係る暗号記憶具について説明する。
図4は、変形例に係る暗号記憶具の側面の展開図及び文字情報の記載例を示す図である。変形例では、一部の文字記載面が異なる点でのみ上記実施の形態と相違する。このため、以下では主に相違点について説明し、共通点の説明は適宜省略する。
【0036】
図4に示すように、A行には、本人(私)の電話番号(鍵番号)として、(090−1234−5678)が記載されている。また、D行には、子の電話番号として、(070−4434−4444)が記載されている。この場合、ブロック4の文字記載面41には、所定のマスAcとマスDcとで文字「34」が重複して記載されている。
【0037】
そこで
図4では、マスAcとマスDcとを区別するため、鍵番号に対応する文字記載面(マスAc)に文字列重複防止用の印8が設けられている。これにより、使用者本人は、印8がついた文字記載面の文字列「34」が正規の鍵番号に対応していると認識することができ、誤って他人の番号で鍵番号を成立させてしまうことを防止できる。このように、複数のブロックのうち、少なくとも1つのブロックの所定の文字記載面に、文字列重複防止用の印8が設けられることで、文字が重複した場合の鍵を特定することができる。なお、印8は、凸部や凹部で形成されてもよく、識別できればどのように形成されてもよい。
【0038】
また、各ブロックは、軸7に対して着脱可能なので、印8が設けられたブロックを並べ替えることが可能である。よって、暗号を記載する前に鍵番号の所定の文字列に重複がある場合、任意の箇所に印8の位置を変更することが可能である。すなわち、印8は、どのブロックに設けられてもよい。なお、鍵番号以外の電話番号同士で重複があった場合は、鍵番号を揃える際の妨げとならないため、問題はない。
【0039】
以上説明したように、本実施の形態によれば、鍵となる暗号情報さえ覚えていれば、他の複数の暗号情報を忘れても当該暗号情報を表示して思い出すことが可能である。
【0040】
上記実施の形態において、暗号記憶具1が六角柱で形成される場合について説明したが、この構成に限定されない。暗号記憶具1は、例えば三角柱や四角柱等、任意の多角柱で形成されてもよい。また、暗号記憶具1は円柱で形成されてもよい。円柱の場合、円柱の側面に所定の文字を軸方向に並べて記載可能な文字記載面を周方向に複数有することが好ましい。周方向に複数形成される文字記載面の数は、2つ以上あれば、いくつあってもよい。
【0041】
また、上記実施の形態において、文字記載面に記載される所定の文字(所定の暗号)として、電話番号を例にして説明したが、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【0042】
また、上記実施の形態において、ブロックが6つに分割される場合について説明したが、この構成に限定されない。ブロックの分割数は、適宜変更が可能である。
【0043】
また、上記実施の形態において、文字記載面の1つのマスに記載される文字数は、上記構成に限定されず、適宜変更が可能である。
【0044】
また、上記実施の形態において、暗号記憶具1は、各文字記載面に文字が記載された状態のものを例にして説明したが、この構成に限定されない。すなわち、本発明に係る暗号記憶具は、文字が記載されていない真っ新な状態の形態を排除するものではない。
【0045】
また、上記実施の形態において、ブロック2が軸7に対して一体固定される場合について説明したが、この構成に限定されない。ブロック2は、軸7に対して回転可能に支持されてもよい。この場合、ブロック2の端面に抜け止め用のストッパが設けられることが好ましい。
【0046】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0047】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施形態をカバーしている。