【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和1年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「摩擦帯電センサを用いたインテリジェントタイヤの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
【解決手段】発電体は、第1部材と、第2部材と、包装体とを備える。第1部材は、第1面を形成する第1絶縁膜を有する。第2部材は、前記第1面に対向し、かつ前記第1面に接触する第2面を形成する第2絶縁膜を有する。包装体は、前記第1部材と前記第2部材とを密封する。前記第1部材及び前記第2部材は、前記第1部材及び前記第2部材に加わる圧力に応じて前記第1面と前記第2面との真実接触面積が変化するように構成され、前記第1絶縁膜と前記第2絶縁膜とは、前記真実接触面積が変化することにより一方が正に帯電し、他方が負に帯電するように構成される。
前記タイヤに関する情報は、前記タイヤの回転速度に関する情報、前記タイヤの摩耗に関する情報及び前記タイヤが装着された車両が走行する路面の状態に関する情報のうち、少なくとも1つを含む、
請求項11に記載のタイヤのモニタリングシステム。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照しつつ、本発明の一実施形態に係る発電体及びこれを備えるタイヤ組立体、並びにこのタイヤ組立体を利用したタイヤのモニタリングシステム及びモニタリング方法について説明する。
【0024】
<1.発電体の構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る発電体1の構成を示す断面図である。
図1に示すように、発電体1は、第1部材10と、第2部材20と、包装体50とを備え、第1部材10及び第2部材20は包装体50の内部に収容されている。なお、発電体1の使用時の方向は、
図1に示すような方向に限定されない。
【0025】
第1部材10は、第1基材130と、第1電極120と、第1絶縁膜110とを有し、各要素は、発電体1の外側から内側に向かってこの順に積層している。第1基材130は、外力を受けて変形できるように、可撓性を有する材料や粘弾性を有する材料、例えば、樹脂、ゴム又はエラストマーで構成されている。本実施形態の第1基材130はシリコーンゴムにより構成されている。第1基材130の、第1電極120に接触する側の表面には多数の凹凸が形成されている。これにより、第1電極120を介して第1絶縁膜110が形成する第1面100に、第1基材130の凹凸に対応した凹凸が再現されるようになっている。
【0026】
第1電極120は、第1絶縁膜110に生じた電荷を発電体1の外部に取り出すための部分であり、第1面100の裏面において、第1絶縁膜110と接触するように配置されている。第1電極120は、導電性を有する材料、例えばAg、Cu等の膜により構成されている。第1電極120は可撓性を有し、第1基材130の変形に追従して変形することができる。また、第1電極120は、第1絶縁膜110と接触する面において、第1基材130の凹凸に対応した凹凸を再現している。
【0027】
第1絶縁膜110は、絶縁体で構成された膜であり、可撓性を有する。第1絶縁膜110は、第1面100を形成している。第1面100には、第1基材130によって、第1基材130の凹凸に対応する凹凸が形成されている。第1面100は、後述する第2絶縁膜210が形成する第2面200と対面し、第2面200と接触している。第1絶縁膜110は、発電体1に加わる圧力により、第1面100と第2面200との実質的な接触面積である真実接触面積が変化すると、第2絶縁膜210とは逆の極性に帯電する。すなわち、第2絶縁膜210が正に帯電する場合、第1絶縁膜110は負に帯電する。また、第2絶縁膜210が負に帯電する場合、第1絶縁膜110は正に帯電する。
【0028】
第1面100の十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、十点平均粗さの測定方法はJIS B 0601:2001に従う。
【0029】
なお、第1面100と第2面200とが「接触する」という場合、第1面100と第2面200とが部分的に接触していればよく、第1面100と第2面200とが接触していない部分が存在していてもよいものとする。
【0030】
第2部材20は、第2基材230と、第2電極220と、第2絶縁膜210とを有し、各要素は、発電体1の外側から内側に向かってこの順に積層している。第2基材230は、外力を受けて変形できるように、可撓性を有する材料や粘弾性を有する材料、例えば、樹脂、ゴム又はエラストマーで構成されている。本実施形態の第2基材230は、シリコーンゴムにより構成されている。第2基材230の、第2電極220に接触する側の表面には多数の凹凸が形成されている。これにより、第2電極220を介して第2絶縁膜210が形成する第2面200に、第2基材230の凹凸に対応した凹凸が再現されるようになっている。
【0031】
第2電極220は、第2絶縁膜210に生じた電荷を発電体1の外部に取り出すための部分であり、第2面200の裏面において、第2絶縁膜210と接触するように配置されている。第2電極220は、導電性を有する材料、例えばAg、Cu等の膜により構成されている。第2電極220は可撓性を有し、第2基材230の変形に追従して変形することができる。また、第2電極220は、第2絶縁膜210と接触する面において、第2基材230の凹凸に対応した凹凸を再現している。
【0032】
第2絶縁膜210は、第1絶縁膜110とは異なる絶縁体で構成された膜であり、可撓性を有する。第2絶縁膜210は、第2面200を形成している。第2面200には、第2基材230によって、第2基材230の凹凸に対応する凹凸が形成されている。第2面200は、第1絶縁膜110が形成する第1面100と対面し、第1面100と接触している。第2絶縁膜210は、発電体1に加わる圧力により、第1面100と第2面200との真実接触面積が変化すると、第1絶縁膜110とは逆の極性に帯電する。すなわち、第1絶縁膜110が正に帯電する場合、第2絶縁膜210は負に帯電する。また、第1絶縁膜110が負に帯電する場合、第2絶縁膜210は正に帯電する。
【0033】
第2面200の十点平均粗さは、100μm以上2mm以下であることが好ましい。なお、十点平均粗さの測定方法はJIS B 0601:2001に従う。
【0034】
第1絶縁膜110の厚さW1及び第2絶縁膜210の厚さW2の少なくとも一方は、20μm以下であることが好ましい。また、厚さW1及び厚さW2は、ともに20μm以下であることがより好ましい。
【0035】
第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210を構成する材料は、例えば、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)、パーフルオロポリエーテル、ポリメチルメタクリレート、ナイロン、ポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリイソブチレン、ポリウレタン(PU)、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルブチラール、ポリクロロプレン、天然ゴム、ポリアクリロニトリル、ポリジフェノールカーボネート、塩化ポリエーテル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリジメチルシロキサン、ポリテトラフルオロエチレン、四フッ化エチレン及び六フッ化プロピレン共重合体、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、及びその他のフッ化炭素有機物を主成分とする材料からなる群から選択することができる。
【0036】
上述した群のうち、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210の摩擦接触による絶縁膜の摩耗が少ないという観点では、硬度が高く、なおかつ摩擦係数が低いDLCや、潤滑性の高いフッ化炭素有機物を主成分とする材料が好ましい。また、発電体1の起電力を大きくするという観点からは、この群のうち、帯電列上でより離れた物質を選択することが好ましい。なお、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210のうち、いずれが正に帯電し、いずれが負に帯電してもよい。
【0037】
本実施形態では、第1絶縁膜110はFEPから構成され、第2絶縁膜210はPUから構成されている。これにより、本実施形態では、第1絶縁膜110が負に帯電する方の絶縁膜となり、第2絶縁膜210が正に帯電する方の絶縁膜となる。
【0038】
第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210は、以下のように動作することにより帯電する。
図1に示すように、第1面100と第2面200とはともに凹凸を有し、発電体1に外部からの圧力が加わっていない状態においても完全には離れず、互いに接触する部分を残している。このとき、第1面100の平均面と第2面200の平均面との距離(平均面間隔)は比較的大きく、第1面100と第2面200との真実接触面積が比較的小さいことと等価な状態である。次に、第1絶縁膜110と第2絶縁膜210とがより近接するように発電体1に圧力を加えると、第1面100と第2面200との形状が変化して凹凸がやや扁平になり、平均面間隔が減少する(
図2)。言い換えると、真実接触面積が増加する。さらに、発電体1に加えた圧力を取り除くと、第1絶縁膜110と第2絶縁膜210とが再び離れていき、平均面間隔が増加する。言い換えると、真実接触面積が減少する。このようにして、真実接触面積が変化すると、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210の帯電量が最初の状態よりも増加し、第1電極120及び第2電極220にはより多くの電荷が誘導される。
【0039】
なお、真実接触面積は、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210が面方向に相対的に移動することによっても変化させることができる。従って、発電体1に加わる力のうち、平均面間隔を増加又は減少させる方向の力のみならず、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210が面方向に相対的にスライドするような力も、発電体1の発電に寄与する。
【0040】
発電体1は、おもり40をさらに備えていてもよい。おもり40は、第1部材10の第1面100とは反対側に配置され、第1基材130の第1電極120側とは反対側の面に接触する押圧面41を有している。おもり40は、硬質の材料から構成されるとともに、可撓性を有する平板状に形成されることが好ましい。おもり40は、その質量によって、第1部材10及び第2部材20に、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210が互いに近づくような方向に面圧を加える。これにより、第1面100と第2面200との平均面間隔がより一様に変化する。また、第1面100と第2面200との接触部分及び非接触部分がより一様に形成され、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210の帯電がムラなく効率的に行われる。
【0041】
後述するように、発電体1は、車両6に装着されるタイヤ70の内側に配置され、タイヤ70の伸縮変形を電力に変換するために使用され得る。一実施形態において、発電体1は、第1部材10がタイヤ70の径方向内側に向き、第2部材20が径方向外側に向くようにタイヤ70のトレッド部700の内側に配置される(
図5参照)。発電体1は、タイヤ70とともに路面上を回転し、最も路面に近づくとき、路面からの衝撃を受ける。これにより、第1部材10が第2部材20から浮き上がり、第1面100と第2面200との接触部分が極端に少ない状態が比較的長く維持され、発電体1の発電量が低下し得る。おもり40は、第1絶縁膜110及び第2絶縁膜210の一様な帯電を促進するとともに、路面からの衝撃による第1部材10の浮き上がりを抑制し、発電体1の発電量を向上させる。
【0042】
おもり40は、押圧面41が第1面100及び第2面200の全体に重なるように形成されることが好ましい。押圧面41は、全体として一様に構成されることが好ましいが、必ずしも滑らかな面により形成されていなくてもよく、例えば全体的にパンチング穴等が形成された平板の表面であってもよいし、網目状の平板の表面であってもよい。
【0043】
おもり40を構成する材料、おもり40の質量、密度及び厚さは、特に限定されず、発電体1の実施形態に応じて適宜選択することができる。おもり40を構成する材料としては、例えば金属が挙げられる。本実施形態のおもり40は、ステンレス鋼(SUS)によって形成されている。
【0044】
発電体1は、緩衝材30をさらに有していてもよい。緩衝材30は、おもり40を挟んで、第1部材10側の反対側に配置される。緩衝材30は、第1部材10及び第2部材20が、第1面100と第2面200とが互いに近づく方向の力を受ける際に、この力を緩和し、発電体1の十分な発電量を確保する。例えば、発電体1がタイヤ70に組み込まれてタイヤ70とともに回転することを考える。第1部材10及び第2部材20は、タイヤ70の内圧による力と、タイヤ70の回転による遠心力とを受けて圧縮される。このような環境下では、一たび第1面100と第2面200とが接近すると、再度遠ざかることが困難になり、真実接触面積の変化が乏しくなる結果、発電体1の発電量が低下すると考えられる。従って、緩衝材30は、真実接触面積が変化する余地を確保できるよう、第1部材10と第2部材20の外側であって、主たる圧力を受ける方向に配置されることが好ましい。
【0045】
緩衝材30を構成する材料は、その体積が変化し易いように、空隙構造を有する材料であってよい。空隙構造を有する材料の例としては、不織布、海綿、樹脂、ゴム又はエラストマーの発泡体等が挙げられる。不織布は、ポリアミド、ポリエチレン、アクリル繊維、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン、アラミド、ビニロン、及びポリ乳酸から選択される単独もしくは複数の材料により構成されていてもよい。また、不織布は、ウールにより構成されたフェルトであってもよい。樹脂、ゴム又はエラストマーの発泡体の例としては、ウレタン、シリコーン、アクリル樹脂、メラミン、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリスチレン(PS)、天然ゴム(NR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブチルゴム(IIR)、クロロプレンゴム(CR)、エチレン・プロピレンゴム(EPDM)、ニトリルゴム(NBR)、及びフッ素ゴム(FPM)等ら選択される単独もしくは複数の材料に発泡剤を適宜練り込み、加硫したものが挙げられる。樹脂、ゴム又はエラストマーの発泡体の構造は、独泡よりも連泡であることが好ましい。緩衝材30を構成する材料は、耐熱性が高いという観点からはウールが好ましく、第1部材10の浮き上がりと跳ね返りとによる振動を減衰させる観点からは、樹脂、ゴム又はエラストマー等の粘弾性体が好ましい。第1部材10の振動を減衰させることで、発電量がより大きくなるだけではなく、タイヤ70内の発電体1が最も路面に近づき始める時点と、路面から離れ始める時点が発電体1の出力する電圧波形に適切に反映される。
【0046】
包装体50は、第1部材10、第2部材20、緩衝材30及びおもり40を内部に収容してまとめるともに、これらを密封して水蒸気から遮断する。包装体50は、第1部材10、第2部材20、緩衝材30及びおもり40がタイヤの回転により散逸しないようにまとめるとともに、タイヤ70内に発生し得る水蒸気を遮断し、水蒸気が発電に与える影響を限定的なものとする。包装体50は、透湿度が低く、かつタイヤ70の変形に追従できる程度の可撓性があり、変形可能な材料から構成されることが好ましい。このような材料としては、例えばゴムまたはエラストマー等が挙げられる。
【0047】
包装体50は、第1部材10及び第2部材20等の部材を密封できる限りは、どのような形状に構成されてもよい。
図4は、包装体50の構成例である。
図4に示すように、包装体50は、略正方形状の天面部51と、天面部51に対向する底面部52と、天面部51及び底面部52の間に起立する、4つの側面部53とを有し、これらの部51〜53によって規定される内部空間を有するように構成されてもよい。さらに、底面部52は、フランジ部54を有していてもよい。天面部51、底面部52及び側面部53は、それぞれ同一の材料から構成されてもよいし、異なる材料から構成されていてもよい。また、各部のうち少なくとも一部は一体的に成形されてもよいし、材料に応じて好適な接着剤等を用いることにより接着されてもよい。
【0048】
包装体50を構成する材料は、引張強度が高いことが好ましい。上述したように、タイヤ70の内部に組み込まれた発電体1には、タイヤ70の内圧による力と、回転による遠心力とで、厚さ方向に圧縮される力が加わる。一方、発電体1には、路面からの衝撃により厚さ方向に引き伸ばされる力も加わる。従って、包装体50は、このような力に耐え得る材料から構成されることが好ましい。特に、以下の仮定によれば、包装体50を構成する材料の引張強度は、3.6MPa以上であることが好ましい。
【0049】
発電体1が組み込まれた半径r(m)のタイヤ70(タイヤ組立体7)が、
走行速度v(km/h)で走行する場合に、包装体50の側面部53に発生する応力を考える。緩衝材30、おもり40及び第1部材10に働く遠心力は、緩衝材30、おもり40及び第1部材10の質量m(g)を用いて、mv
2/rで表される。いま、タイヤ70の走行速度vが160(km/h)、半径rが0.33(m)であり、質量mが30(g)であるとき、緩衝材30、おもり40及び第1部材10に働く遠心力mv
2/rは、約180(N)である。なお、タイヤ70の走行速度vとしては、タイヤ70の速度記号で規定されている、タイヤ70の最高速度を仮定している。
【0050】
ここで、包装体50の1つの側面部53の断面積をA(m
2)とすると、側面部53に発生する応力P(MPa)は、(mv
2/r)/Aで表される。
図4に示すような包装体50において、側面部53の一辺の長さをL1(m)、側面部53の厚さをL2(m)と表すと、A=L1×L2である。いま、長さL1が0.05(m)であり、厚さL2が0.001(m)であるとすると、応力P(MPa)は、約3.6MPaとなる。引張強度が3.6MPa以上である材料の例としては、天然ゴム(NR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ブチルゴム(IIR)が挙げられる。これらのゴムを単独もしくは複数配合した材料の引張強度は、一般に、5MPa〜15MPaである。なお、タイヤの半径rがこれより小さくなると、遠心力及び応力Pはこれより大きくなる。例えば、r=0.25(m)とすると、mv
2/rは約236(N)、応力Pは約4.7(MPa)となる。従って、上述した材料によれば、小さな半径のタイヤに適用される場合であっても、包装体50の寸法は不変のまま、充分な引張強度が確保されることが分かる。
【0051】
<2.センサモジュールの構成>
以下、発電体1を含むセンサモジュール(以下、単にモジュールと称する)8の一実施形態について説明する。モジュール8は、例えば後述するようにタイヤ70の内部に配置されて、タイヤ70に関する情報を検出し、検出結果を車両6の制御装置60等に出力する。モジュール8が出力した検出結果は、例えば車両6に搭載されるタイヤの空気圧監視システム(TPMS)等の各種制御システムに利用される。
図3は、モジュール8の構成を示す模式図である。また、
図7には、モジュール8の電気的構成が示されている。
【0052】
発電体1は、第1電極120及び第2電極220を介して、蓄電池80や電子機器を含む回路に電気的に接続される。これにより、発電体1は、蓄電池80及び電子機器とともにモジュール8を構成する。モジュール8において、発電体1は、電子機器に電力を供給することができる。また、発電体1の出力する物理量を他の電子機器によって検知することにより、発電体1をセンサとして用いることもできる。例えば、モジュール8がタイヤ70に適用される場合には、発電体1の出力する電圧のデータは、例えば、タイヤ70の回転速度に関する情報、タイヤ70の摩耗に関する情報、及びタイヤ70が走行する路面の状態に関する情報を含み得る。
【0053】
モジュール8は、発電体1と、蓄電池80と、発電体1から出力される電力の供給を受ける電子機器とを備え、蓄電池80と電子機器とは、プリント基板84を介して電気的に接続されている。本実施形態の電子機器には、マイクロコントローラ(以下、マイコンと称する)81、検出装置82、通信装置83が含まれている。発電体1は、リード線85,85によってマイコン81と電気的に接続されている。
【0054】
マイコン81は、プロセッサ、メインメモリ及び不揮発性で書き換え可能な記憶装置を備える。マイコン81の記憶装置には、モジュール8の動作を制御するためのプログラムが書き込まれており、プロセッサにより実行される。マイコン81は、発電体1により出力された電力を蓄電池80に蓄え、蓄えた電力を必要に応じてマイコン81、検出装置82及び通信装置83に振り分ける。
【0055】
また、マイコン81は、通信装置83を介して外部の制御装置とのデータの送受信を行うように構成される。外部の制御装置は、例えば後述する車両6の制御装置60である。マイコン81から制御装置60に送信するデータには、発電体1の出力する電力に関するデータや、検出装置82の出力するデータが含まれる。
【0056】
マイコン81は、図示しない検知回路により、発電体1の出力する電圧または電流を検知する。マイコン81は、検知した電圧または電流を、時系列順のデータとして記憶装置に保存する。マイコン81は、記憶装置に保存したデータを、所定のタイミングで通信装置83に制御装置60に送信させる。なお、送信されるデータは、検知回路により検知された値のデータそのものでなくてもよく、これに代えてまたは加えて、電圧及び電流の少なくとも一方に基づく物理量のデータ(例えば、電力のデータ)を含んでいてもよい。
【0057】
検出装置82は、タイヤ70内の状態を検出するセンサである。タイヤ70内の状態として検出装置82が検出するのは、例えば空気圧に関する値、温度に関する値等であってよい。検出装置82は、検出した値をマイコン81に出力する。
【0058】
通信装置83は、アンテナを含んでおり、無線により外部の装置とデータの送受信を行うことができる。外部の装置は、本実施形態では、タイヤ組立体7が装着される車両6の制御装置60を含む。
【0059】
蓄電池80、マイコン81、検出装置82、通信装置83及びこれらが接続されたプリント基板84は、エポキシ樹脂86によって一体的に封入されている。これにより、蓄電池80及び各電子機器81〜83にタイヤ70内の水蒸気が浸入することが防止されるとともに、蓄電池80及び各電子機器81〜83がプリント基板84に固定された状態が維持される。ただし、検出装置82の図示しない検出素子は、必要に応じてエポキシ樹脂86から露出した状態であってもよい。また、リード線85,85は、エポキシ樹脂86の外部へと延びている。
【0060】
<3−1.タイヤ組立体の構成>
以下では、図を参照しつつタイヤ組立体7の詳細な構成について説明する。
図6に示すように、タイヤ組立体7は、車両6の各車輪に装着される。車両6は、四輪車両であり、左前輪FL、右前輪FR、左後輪RL及び右後輪RRを備えている。車輪FL,FR,RL,RRには、それぞれタイヤ組立体7a〜7dが装着されている。タイヤ組立体7a〜7dは、取り付けられる車輪が異なるが、同じ構造及び機能を有している。従って、これらを区別せずに、タイヤ組立体7a〜7dをタイヤ組立体7と称することがある。タイヤ組立体7は、車両6に搭載される制御装置60に検出データを送信する。
【0061】
図5は、タイヤ組立体7の概略的な部分断面図である。
図5では、紙面の奥から手前に向かう方向、または紙面の手前から奥に向かう方向がタイヤ組立体7の周方向である。タイヤ組立体7は、タイヤ70とモジュール8とを備える。タイヤ組立体7は、ホイール71を介して、車両6の車輪FL,FR,RL,RRに装着される。ホイール71の周縁部には、ホイールリム710が形成される。
【0062】
タイヤ70は、ゴムまたはエラストマー等の弾性材料から構成され、トレッド部700、ショルダ部701、サイドウォール部702、及びビード部703を有する。トレッド部700は、タイヤ組立体7の側周面を画定する部分であり、路面と接触して摩擦を生じることで車両6を前進させる。ショルダ部701は、トレッド部700及びサイドウォール部702に隣接する部分である。サイドウォール部702は、路面からの衝撃を吸収すべく屈曲して撓みを生じる。ビード部703は、内部に図示しないビードワイヤを内蔵しており、ホイールリム710に固定されている。
【0063】
モジュール8は、タイヤ70の内側に配置される。モジュール8のうち、発電体1以外の部分は、発電体1の近傍であって、タイヤ70の内側面に固定されている。モジュール8のうち、発電体1以外の部分が固定される場所は、特に限定されず、例えばトレッド部700、ショルダ部701、サイドウォール部702等に固定されてよい。
【0064】
発電体1は、第2部材20がタイヤ70の径方向外側に、第1部材10がタイヤ70の径方向内側にくるように配置される。
図5に示す例では、包装体50は、フランジ部54を含む底面部52及びがタイヤ70の内側面に接するように固定されている。包装体50のタイヤ70への固定方法は特に限定されず、物理的または化学的に結合されてよい。なお、発電体1を含む包装体50は、トレッド部700の内側に固定されることが好ましいが、タイヤ70の振動を利用して発電体1が発電を行うことができれば、その固定される場所は限定されず、例えばショルダ部701やサイドウォール部702に固定されてもよい。
【0065】
<3−2.タイヤ組立体の動作>
以下、タイヤ組立体7の動作について説明する。タイヤ組立体7が静止している状態では、第1絶縁膜110の第1面100と第2絶縁膜210の第2面200との平均面間隔及び真実接触面積は、変化しないか、殆ど変化しない。このため、第1電極120及び第2電極220には電荷が誘導されないか、殆ど誘導されず、発電体1が出力する電力は、ゼロであるか、微小である。
【0066】
タイヤ組立体7が路面上を回転すると、トレッド部700が、路面と接する部分において衝撃を受ける。この衝撃がタイヤ70全体に伝達されると、衝撃を吸収するため、特にサイドウォール部702に撓みが生じ、タイヤ70全体が変形する。その後、サイドウォール部702は変形から戻ろうとするが、トレッド部700の別の部分を介して再び路面からの衝撃を受ける。このようにして、タイヤ70は全体として伸縮変形を繰り返す。タイヤ70の伸縮変形は、トレッド部700の内側面に固定された発電体1に伝わる。発電体1は、伝達されるタイヤ70の伸縮変形に対応して変形する。その結果、第1絶縁膜110と第2絶縁膜210とが互いに近づいたり離れたりし、または第1絶縁膜110と第2絶縁膜210との相対的な位置が面方向にずれたりして、真実接触面積が変化する。こうして、第1電極120及び第2電極220に電荷が誘導され、発電体1がタイヤ組立体7の静止時よりも大きな電力を出力する。
【0067】
発電体1から取り出される電流は、第1面100と第2面200との平均面間隔の時間変化に比例する。発電体1がトレッド部700を介して路面上を通過するとき(発電体1が最下の位置で路面に最も近づくとき)、平均面間隔の時間変化が最も大きくなり、発電体1の出力する電圧波形には、対となる正と負のピークが出現する。従って、ピークが出現してから次のピークが出現するまでの時間は、タイヤ組立体7が1回転する時間を表しており、発電体1の出力する電圧のデータからは、タイヤ組立体7の回転速度に関する情報が取得可能であると言える。
【0068】
また、タイヤ組立体7の回転速度及びタイヤ組立体7が回転する路面等の条件が同一である場合、平均面間隔の時間変化は、タイヤ70が正常な場合(摩耗していない場合)と、タイヤ70が摩耗している場合(スリップサインが現れている場合)とで異なる。タイヤ70が正常な場合と、摩耗している場合とにつき、所定の回転速度において発電体1が出力する電圧波形を予め取得しておき、当該回転速度において発電体1が出力する電圧波形と比較することにより、タイヤ70が摩耗しているか否かを判定することができる。従って、発電体1の出力する電圧波形からは、タイヤ組立体7を構成するタイヤ70の摩耗に関する情報が取得可能であると言える。
【0069】
さらに、タイヤ組立体7の回転速度及びタイヤ70の摩耗度合い等の条件が同一である場合、平均面間隔の時間変化は、路面の状態(アスファルト、砂利道、濡れた路面等)によって異なる。異なる状態の路面について、所定の回転速度における発電体1が出力する電圧波形を予め取得しておき、当該回転速度において発電体1が出力する電圧波形と比較することにより、現在タイヤ組立体7が回転している路面(車両6が走行している路面)の状態を判断することができる。従って、発電体1の出力する電圧波形からは、車両6が走行する路面の状態に関する情報が取得可能であると言える。
【0070】
マイコン81は、発電体1から出力された電力を蓄電池80に蓄える。マイコン81は、マイコン81自身、検出装置82及び通信装置83のバッテリ残量を所定の周期でモニタリングしており、いずれかのバッテリ残量が一定の閾値以下になると、そのバッテリに蓄電池80に蓄えられた電力を供給させる。
【0071】
電力の振り分けと並行して、マイコン81は、検知した発電体1の出力値と、検出装置82から出力された値とを、時系列順の出力データとして記憶装置に保存する。マイコン81は、記憶装置に保存したこれらの出力データを、所定のタイミングで通信装置83に制御装置60に送信させる。出力データの送信間隔は、例えば1回/40秒とすることができる。
【0072】
<4−1.モニタリングシステムの構成>
以下では、タイヤ組立体7及び車両6の制御装置60を含む、タイヤ70に関する情報のモニタリングシステム(以下、単に「システム」と称することがある)9の構成例について説明する。システム9は、例えば制御装置60の電源がONになると以下のモニタリング処理を開始し、車両6が停止して一定時間が経過するとモニタリング処理を停止するものとすることができる。
【0073】
図6はシステム9の全体を示す図であり、
図7はシステム9の電気的構成を示すブロック図である。システム9では、制御装置60が、モジュール8から送信されてくる出力データを取得し、タイヤ70に関する情報をモニタリングする。制御装置60は、例えばタイヤ70の空気圧、タイヤ70の回転速度等をモニタリングする。タイヤ70の空気圧や回転速度は、例えばタイヤの空気圧監視システム(TPMS)の処理や、車両6の荷重推定の処理等に利用される。また、制御装置60は、例えばタイヤ70の摩耗状態や、車両6が走行する路面の状態をモニタリングする。
【0074】
制御装置60は、CPU600、I/Oインターフェース601、RAM602、ROM603、及び不揮発性で書き換え可能な記憶装置604を備えている。I/Oインターフェース601は、表示器65やタイヤ組立体7等の外部装置との有線又は無線による通信を行うための通信装置である。ROM603には、システム9の動作を制御するためのプログラム610が格納されている。プログラム610は、CD−ROMやUSBメモリ等の記憶媒体611からROM603に書き込まれる。CPU600は、ROM603からプログラム610を読み出して実行することにより、仮想的にデータ取得部620、解析部621、及び警報出力部622として動作する。各部の動作の詳細は、後述する。なお、プログラム610の格納場所は、ROM603ではなく、記憶装置604であってもよい。また、RAM602及び記憶装置604は、CPU600の演算に適宜使用される。
【0075】
記憶装置604は、ハードディスクやフラッシュメモリ等で構成される。記憶装置604には、解析部621が、タイヤ70が減圧しているか否かを判定するための減圧閾値が予め保存されている。減圧閾値は、これを下回ったら減圧していると判定される空気圧の値であってもよい。あるいは、減圧閾値は、予め記憶装置604に保存されている各タイヤの空気圧の初期値から、予め定められた減圧率だけ減圧した空気圧とすることもできる。
【0076】
また、記憶装置604には、車両6の様々な走行条件における発電体1の出力波形が、例えば電圧の波形として、予め保存されている。保存される電圧波形は、例えば、タイヤ組立体7の所定の回転速度において、タイヤ70が正常であるときの波形及びタイヤ70が摩耗しているときの波形であってもよい。また、保存される電圧波形は、例えば、タイヤ組立体7の所定の回転速度において、車両6がそれぞれ異なる種類の路面を走行したときの波形であってもよい。さらに、路面の種類ごとについて、タイヤ70が正常であるときの波形及びタイヤ70が摩耗しているときの波形が保存されていてもよい。
【0077】
表示器65は、各種の情報を表示してユーザに伝えることができる限り、態様は限定されない。例えば、液晶モニター、液晶表示素子、有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等、任意の態様で実現することができる。表示器65の取り付け位置は、適宜選択することができるが、例えば、インストルメントパネル上等、ドライバーに分かりやすい位置に設けることが望ましい。制御装置60がカーナビゲーションシステムに接続される場合には、カーナビゲーション用のモニターを表示器65として使用することも可能であるし、マルチインフォメーションディスプレイを表示器65として使用することも可能である。
【0078】
<4−2.モニタリングシステムの動作>
以下では、モジュール8の検出装置82が、タイヤ70の空気圧に関する値を検知する場合の処理について説明する。
【0079】
データ取得部620は、マイコン81から送信されてくるデータを取得する。これらのデータには、検出装置82が検出したタイヤ70の空気圧に関する値のデータ、マイコン81が検出した発電体1の出力電圧のデータ、及びこれらのデータの送信元であるマイコン81(つまり、タイヤ組立体7)を識別するデータが含まれる。なお、タイヤ組立体7a〜7dがそれぞれ装着されている車輪の位置は、予め関連付けられているものとする。
【0080】
解析部621は、タイヤ70の空気圧に関する値のデータから、それぞれのタイヤ組立体7について、現在の空気圧を算出する。解析部621は、算出した空気圧と、記憶装置604に保存されている減圧閾値とを比較し、減圧しているタイヤ70が存在するか(異常か)否か(正常か)を判定する。また、解析部621は、タイヤ組立体7を識別するデータにより、どのタイヤ70が減圧しているかを特定してもよい。解析部621は、いずれのタイヤ70も減圧しておらず、正常であると判定すると、次に受信したデータについて同様の処理を繰り返す。一方、解析部621は、異常と判定すると、警報出力部622に減圧警報を出力させる。警報出力部622は、例えば表示器65に減圧を警告するメッセージを表示させる等により、ユーザにタイヤ70が減圧している旨を通知し、空気圧の調整を促す。
【0081】
解析部621は、これと並行してまたは前後して、発電体1の出力電圧のデータから、タイヤ組立体7の回転速度を計算する。このように、発電体1は速度センサとして利用されてもよい。また、算出された回転速度は、間接式のTPMSに利用されてもよい。さらに、解析部621は、発電体1の出力電圧のデータと、記憶装置604に保存されている電圧波形とを比較し、摩耗しているタイヤ70が存在するか(摩耗か)否か(正常か)を判定する。解析部621は、タイヤ組立体7を識別するデータにより、どのタイヤ70が摩耗しているかを特定してもよい。解析部621は、いずれのタイヤ70も摩耗しておらず、正常であると判定すると、次に受信したデータについて同様の処理を繰り返す。一方、解析部621は、摩耗と判定すると、警報出力部622に警報を出力させる。警報出力部622は、例えば表示器65に摩耗を警告するメッセージを表示させる等により、ユーザにタイヤ70が摩耗している旨を通知し、タイヤの交換等を促す。
【0082】
解析部621は、これと並行してまたは前後して、発電体1の出力電圧のデータと、記憶装置604に保存されている電圧波形とを比較し、車両6が現在走行している路面の状態を判断する。路面の状態の判断は、例えば一定の時間周期ごとに行われてよい。
【0083】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0084】
<5−1>
上記実施形態では、発電体1が出力する電圧の時系列データに基づいてタイヤ70に関する情報のモニタリングを行ったが、発電体1が接続される電気回路に流れる電流や、発電体1が供給する電力等、他の物理量の時系列データに基づいてタイヤ70のモニタリングを行ってもよい。
【0085】
<5−2>
上記実施形態では、第1面100及び第2面200が共に凹凸形状を有していた。しかし、第1面100及び第2面200のうちいずれか一方のみが凹凸形状を有するように発電体1を構成してもよい。
【0086】
<5−3>
第1電極120は、導電性の繊維が織物状に織り込まれて構成されてもよい。繊維は、例えば可撓性を有するCu線、ステンレス鋼線とすることができる。さらに、この繊維の外周面に第1絶縁膜110が被覆されることにより、第1面100が形成されていてもよい。同様に、第2電極220は、導電性の繊維が織物状に織り込まれて構成されてもよく、この繊維の外周面に第2絶縁膜210が被覆されることにより、第2面200が形成されていてもよい。繊維は、例えば可撓性を有するCu線、ステンレス鋼線とすることができる。
【0087】
<5−4>
上記実施形態の発電体1は、緩衝材30及びおもり40を備えていた。しかし、
図8Aに示すように、緩衝材30及びおもり40の少なくとも一方を省略して発電体1を構成してもよい。または、
図8Bの例に示すように、おもり40を省略して発電体1を構成するか、
図8Cの例に示すように、緩衝材30を省略して発電体1を構成してもよい。
図8Bの例のように、おもり40を省略する場合、緩衝材30がある程度の質量を有し、緩衝材として働くとともに、おもり40の機能を兼ね備えるようにしてもよい。緩衝材30がおもり40の機能を兼ね備える場合、緩衝材30は、第1部材10に近づくにつれて密度が大きくなるように構成されてもよい。なお、同じ材料から構成された複数の緩衝材又は異なる材料で構成された複数の緩衝材を適宜積層して、緩衝材30を構成してもよい。
【0088】
<5−5>
発電体1は、第1絶縁膜110、第2絶縁膜210、第1電極120及び第1基材130を複数備えていてもよい。
【0089】
<5−6>
上記実施形態では、モジュール8の外部の制御装置60は車載装置であったが、プログラム610がインストールされたスマートフォン、タブレット、ノートPC等のポータブルなデバイスとすることもできる。このとき、上述のデバイスのディスプレイを表示器65として使用することもできる。
【0090】
<5−7>
検出装置82は、タイヤ70内部の空気圧検出装置としては、検出方式は限定されない。例えば、歪みゲージ式、ダイアフラム式、または半導体式のセンサ等を用いることができる。また、検出装置82は、例えばタイヤ70の内部の温度を検出する温度センサであってもよいし、タイヤ70の振動を検出する振動検出センサ(加速度センサ)であってもよい。
【0091】
<5−8>
上記実施形態のシステム9では、解析部621がタイヤ70の空気圧及び回転速度を算出したり、発電体1の出力波形の比較等の処理を行った。しかしながら、システム9は、これらの処理をマイコン81が行うように構成されていてもよい。このとき、記憶装置604に予め保存される減圧閾値や発電体1の出力波形は、マイコン81の記憶装置に保存されていてもよい。
【0092】
<5−9>
包装体50の形状は、上記実施形態の形状に限定されず、例えばフランジ部54を省略する等、適宜変更されてよい。また、発電体1がタイヤ70に組み込まれる場合において、包装体50の少なくとも一部は、タイヤ70で形成されてもよい。例えば、
図9に示すように、包装体50の底面部52がタイヤ70の内側面で形成されてもよい。つまり、発電体1は、タイヤ70の内側面と、側面部53と、天面部51とに囲まれることにより密封されてもよい。
【0093】
<5−10>
上記実施形態の発電体1は、タイヤ70の内部に組み込まれてタイヤ組立体7を構成したが、発電体1の用途はこれに限定されない。
【実施例】
【0094】
以下では、発明者らが行った実験及びその結果を示す。しかし、本発明はこれに限定されるものではない。
<実験条件>
上記実施形態のように構成された、実施例に係る発電体を、タイヤのトレッド部の内側面に配置した組立体を用意し、
図10Aに示すようなタイヤ回転用の実験装置に組み込んだ。この実験装置により、組立体に所定の輪荷重を加えつつ、回転ベルトによって一定の速度の回転を与えた。発電体の第1電極及び第2電極は、いずれも組立体の外部のデータロガーに電気的に接続された。データロガーにより、一定の回転速度で回転する間に、発電体が出力する電圧を計測した。
【0095】
タイヤのサイズは215/40R17(直径は約604mm)、内圧は200kPaとした。また、輪荷重は3kN、回転速度は40km/hの換算値とした。
【0096】
実施例に係る発電体は、第1部材、第2部材、緩衝材、おもり及び包装体を備えており、第1部材がタイヤの径方向内側に、第2部材がタイヤの径方向外側にくるようにタイヤの内部に組み込まれた。第1部材10A及び第2部材20Aは、ともに平面視において1辺が50mmの正方形状に形成されていた。
【0097】
おもりは、ステンレス(SUS)製の一様な板であり、厚さは0.1mmであった。緩衝材は、軟質のポリウレタンフォームであり、厚さは10mmであった。おもり及び緩衝材は、第1部材及び第2部材の寸法に合わせ、ともに平面視において1辺が50mmの正方形状に形成されていた。包装体は、ブチルゴムから構成されており、
図4に示す形状と同様の形状であった。L1は52(mm)、L2は1(mm)であった。
【0098】
<実験結果>
回転時間(Sec)に対する発電体の出力電圧(V)のグラフは、
図10Bに示すようになった。実験結果からは、実施例に係る発電体では、実際の車両での走行を想定した条件においても、発電が良好に行われることが確認された。