【課題】高沸点、或いは沸点が不明である多種多様な有機物が吸着した活性炭の再生方法であって、加熱コストや設備コストを低減することが可能で、活性炭の消耗や損傷を抑制した活性炭の再生方法を提供する。
【解決手段】活性炭の再生方法であって、有機物を含む水から、ろ過塔に収容される活性炭を用いたろ過により、有機物を吸着ろ過した後に、少なくとも活性炭の一部が200℃以上600℃未満になるまで加熱する加熱工程であって、活性炭の発火温度以上の領域においては不活性ガスの雰囲気下で加熱する加熱工程と、活性炭の一部が200℃以上600℃未満に到達した時点で、ろ過塔の減圧を開始する第1減圧工程とを備える。
前記第1減圧工程においては、前記ろ過塔の減圧を開始してから、5分以上の時間、減圧状態を保持する、請求項1から請求項10のいずれか1項に記載の活性炭の再生方法。
前記工場排水は、食品・飲料業、化学工業、製紙業、染色業、リネンサプライ業、クリーニング業のいずれかの工場からの排水である、請求項12に記載の活性炭の再生方法。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔1 第1実施形態〕
以下、
図1〜
図10を参照することにより、本発明の第1実施形態に係る活性炭再生システムについて説明する。
【0027】
〔1.1 実施形態の構成〕
図1は、本実施形態に係る活性炭再生システムの構成を示す。活性炭再生システム1は、ろ過塔2、圧力調整弁3、加熱器4、ブロワ5、冷却器6、気液分離器7、真空ポンプ8を備える。更に、活性炭再生システム1は、第1開閉弁V1〜第11開閉弁V11、第1原水供給ラインL1、第2原水供給ラインL2、第1処理水排出ラインL3、第2処理水排出ラインL4、第1熱風供給ラインL5、第1循環ラインL6、圧力逃がしラインL7、第2熱風供給ラインL8、第1不活性ガス供給ラインL9、第2循環ラインL10、第1外気供給ラインL11、気体排出ラインL12、第2外気供給ラインL13、第2不活性ガス供給ラインL14、第3外気供給ラインL15、分離ガス排気ラインL16、分離水排出ラインL17を備える。
【0028】
第1原水供給ラインL1は、系外から、活性炭再生システム1に有機物を含む原水を供給するラインである。また、第1原水供給ラインL1は第1開閉弁V1を備え、第1開閉弁V1を開閉することにより、活性炭再生システム1への原水の供給を制御することが可能となる。第1原水供給ラインL1は、接続点J1において、第2原水供給ラインL2及び第1熱風供給ラインL5に接続される。
【0029】
なお、本発明は、高沸点、或いは沸点が不明である多種多様な有機物が吸着した活性炭の再生に適している。また、一つの装置の中で吸着処理と再生処理の両方が可能であることから、上記の「有機物を含む原水」として、処理量や有機物濃度の変動が大きい工場排水の処理に適しており、活性炭で効率よく吸着できる油分や色素、非イオン界面活性剤等を多く含む食品・飲料業、化学工業、製紙業、染色業、リネンサプライ業、クリーニング業の総合排水やプロセス排水の処理により適している。
【0030】
第2原水供給ラインL2は、第1原水供給ラインL1によって供給される、有機物を含む原水を、ろ過塔2に供給するラインである。第2原水供給ラインL2は、接続点J1と反対側の端部において、ろ過塔2に接続される。
【0031】
ろ過塔2は、活性炭を収容し、当該活性炭を用いたろ過により、原水に含まれる有機物を吸着ろ過する。ろ過塔2において、活性炭によって有機物が吸着ろ過された後の処理水は、第1処理水排出ラインL3から排出される。
【0032】
なお、この「ろ過塔2」としては、活性炭を収容でき、水や200℃以上の流体を流通させることができるものであれば特に限定されないが、後述のように、活性炭の加熱効率を上げるため、ヒータ等の加熱機器や熱流体の照射管、或いは金属棒等の熱伝導体を内包した固定床式でもよいし、ロータリーキルン等の流動床式であってもよい。或いは、複数の細管に活性炭を分割収容してモジュール化して一つのろ過塔とし、細管の外部からヒータや熱流体で活性炭を間接加熱できるようにしてもよい。また、当該ろ過塔2は、逆洗機構や通水方向の切替機能を備えているとよい。更に、このようなろ過塔を並列又は直列で2塔以上設置した上でその他の構成部品を共通化し、適宜ラインを切替て通水や再生のタイミングにおいて、メリーゴーランド方式等の時間差を設けて運用してもよい。
【0033】
更に、当該ろ過塔2は、吸光度やpH、電気伝導度、温度、色度、濁度、臭気、表面張力、TOC、トレーサー等の監視システムを備えることにより、給水や処理水、廃蒸気や凝縮液を継続又は断続的に監視しながら、各処理に移行するタイミングや、各処理の温度や時間等の処理条件をフィードバック制御できるようにしてもよい。
【0034】
また、この「活性炭」の種類としては特に限定されることはないが、比較的大きい細孔を多く有する活性炭は、有機物の吸脱着が容易となる。例えば、JIS K 1474 に規定されているメチレンブルー吸着能が250mL/g以上、更により好ましくは300mL/g以上の活性炭であることがより好ましい。
【0035】
この「活性炭」の原材料としては、流通性や汎用性の観点から、石炭、ヤシガラ、木材、繊維、樹脂が好ましく、再生後の微粉炭発生を極力抑えられる観点から、靱性の高い石炭を原材料としたコール炭とヤシガラを原材料としたヤシガラ炭がより適している。
【0036】
この「活性炭」の形状としては、ろ過塔での通水や再生ガスの圧損を抑え、逆洗時の良好な展開性や流出防止効果を得られる観点から、粒状活性炭が好ましく、平均粒径が0.5mm以上の粒状活性炭であることがより好ましい。
【0037】
また、2種類以上の活性炭や、アルミナやシリカゲル、ゼオライト等の活性炭以外の吸着体を多段に充填、或いは混合して、ろ過塔2に収容してもよい。
【0038】
第1処理水排出ラインL3は、ろ過塔2において、活性炭によって有機物が吸着ろ過された後の処理水を、ろ過塔2の外に排出する。第1処理水排出ラインL3は、接続点J2において、第2処理水排出ラインL4及び第1循環ラインL6に接続される。
【0039】
第2処理水排出ラインL4は、接続点J2を介して、第1処理水排出ラインL3から流入される処理水を系外に排出する。第2処理水排出ラインL4は第2開閉弁V2を備え、第2開閉弁V2を開閉することにより、活性炭再生システム1の系外への処理水の排出を制御することが可能となる。
【0040】
第1熱風供給ラインL5は、ろ過塔2に対して熱風を供給するラインである。より詳細には、第1熱風供給ラインL5は、接続点J1、及び第2原水供給ラインL2を介して、ろ過塔2に対して熱風を供給する。第1熱風供給ラインL5は第3開閉弁V3を備え、第3開閉弁V3を開閉することにより、ろ過塔2に対する熱風の供給を制御することが可能となる。また、第1熱風供給ラインL5は、接続点J1とは反対側の接続点J3において、上記圧力逃がしラインL7、第2熱風供給ラインL8、及び気体排出ラインL12に接続される。
【0041】
第1循環ラインL6は、後述のように、ろ過塔2に収容される活性炭の再生のため、再生温度に到達するまで不活性ガスを系内で循環させる際、当該不活性ガスが循環する流路となるラインである。第1循環ラインL6は第4開閉弁V4を備え、第4開閉弁V4を開閉することにより、第1循環ラインL6における不活性ガスの流通を制御することが可能となる。また、第1循環ラインL6は、接続点J2とは反対側の接続点J5において、第1不活性ガス供給ラインL9、第2循環ラインL10、及び第2不活性ガス供給ラインL14に接続される。
【0042】
なお、この「不活性ガス」としては、600℃未満で活性炭を分解させないものであればよく、水蒸気や窒素、二酸化炭素、希ガス、ボイラや焼却施設等から排出される排ガス等が挙げられるが、ガス単価やガス純度の観点から水蒸気がより適している。
【0043】
圧力逃がしラインL7は、ろ過塔2に収容される活性炭の再生のため、再生温度に到達するまで不活性ガスを系内で循環させる際、不活性ガスが熱せられることによって膨張した気体を系外に排出するラインである。圧力逃がしラインL7は、接続点J3と反対側の端部において、圧力調整弁3に接続される。
【0044】
圧力調整弁3は、活性炭再生システム1の内部の圧力が所定の値よりも上昇した場合に、膨張した気体を系外に排出して活性炭再生システム1の圧力を調整する。圧力調整弁3には、後述する減圧の際に外気がろ過塔2内に逆流することを防ぐために逆止機構が備わることが好ましく、具体的には、逆止弁やリリーフ弁、安全弁等が挙げられる。また、上記の「所定の値」は、安全面を考慮して10kPaG以内であることが好ましい。
【0045】
第2熱風供給ラインL8は、接続点J3、第1熱風供給ラインL5、接続点J1、及び第2原水供給ラインL2を介して、ろ過塔2に熱風を供給するラインである。第2熱風供給ラインL8は、接続点J3と反対側の接続点J4において、第1不活性ガス供給ラインL9及び第2外気供給ラインL13に接続される。
第2熱風供給ラインL8には、加熱器4が配置される。
【0046】
加熱器4は、後述のように、第1外気供給ラインL11、第3外気供給ラインL15、ブロワ5、第2外気供給ラインL13を介して第2熱風供給ラインL8に流入する外気や、第2不活性ガス供給ラインL14、第1不活性ガス供給ラインL9を介して第2熱風供給ラインL8に流入する不活性ガス、或いは、第1循環ラインL6、第2循環ラインL10、第3外気供給ラインL15、ブロワ5、第2外気供給ラインL13を介して第2熱風供給ラインL8に循環させる不活性ガスを加熱する装置である。加熱器4として、具体的には、カートリッジヒータ、フランジヒータ、赤外線ヒータ、テープヒーター、セラミックヒータ等の直接加熱装置、又は、誘導加熱装置、誘電加熱装置、マイクロ波加熱装置等の間接加熱装置が挙げられる。また、加熱器4に対し、過加熱を防止するための温度センサや温度ヒューズ等の安全装置を取り付けてもよい。加熱器4の取付位置は、導入する外気や不活性ガスを加熱でき、且つ、後述する不活性ガスの循環流路内であればどこでもよいが、放熱を少なくするためろ過塔2の上流側でより近い位置、或いはろ過塔2の内部であることが好ましい。また、加熱器4として、複数の加熱器を設置してもよい。
【0047】
また、後述するように、有機物を含むガスを触媒燃焼や直接燃焼等で処理する場合、ろ過塔2と真空ポンプ8との間に加熱器4を配置することによって、燃焼に必要な加熱機構を兼用化することができる。この場合、
図1における加熱器4の位置は、第2原水供給ラインL2又は第1熱風供給ラインL5上に配置されることになる。
【0048】
第1不活性ガス供給ラインL9は、後述のように、第2不活性ガス供給ラインL14から流入する不活性ガスを、接続点J4を介して、加熱器4に供給するラインである。第1不活性ガス供給ラインL9は、第5開閉弁V5を備え、第5開閉弁V5を開閉することにより、第1不活性ガス供給ラインL9における不活性ガスの流通を制御することが可能となる。また、第1不活性ガス供給ラインL9は、接続点J5において、第1循環ラインL6、第2循環ラインL10、第2不活性ガス供給ラインL14に接続される。
【0049】
第2循環ラインL10は、後述のように、ろ過塔2に収容される活性炭の再生のため、再生温度に到達するまで不活性ガスを系内で循環させる際、当該不活性ガスが循環する流路となるラインである。第2循環ラインL10は第6開閉弁V6を備え、第6開閉弁V6を開閉することにより、第2循環ラインL10における不活性ガスの流通を制御することが可能となる。また、第2循環ラインL10は、接続点J5とは反対側の接続点J6において、第1外気供給ラインL11、及び第3外気供給ラインL15に接続される。
【0050】
第1外気供給ラインL11は、系外から、活性炭再生システム1に外気を供給するラインである。また、第1外気供給ラインL11は第7開閉弁V7を備え、第7開閉弁V7を開閉することにより、活性炭再生システム1への外気の供給を制御することが可能となる。
【0051】
気体排出ラインL12は、ろ過塔2から除去され、第2原水供給ラインL2、及び第1熱風供給ラインL5を介して流入する気体を排出するラインである。気体排出ラインL12は、接続点J3と反対側の端部において、冷却器6及び気液分離器7に接続される。
【0052】
冷却器6は、ろ過塔2から除去され、第2原水供給ラインL2、及び第1熱風供給ラインL5を介して流入する流体を冷却する装置である。冷却器6は、空冷式や水冷式であってもよいし、熱交換器やヒートポンプ等の熱回収装置によって熱を回収して再利用できる形態でもよい。
【0053】
気液分離器7は、冷却器6から排出される、冷却後の気体と有機物が高濃縮された少量の凝縮液を、気体と凝縮液に分離する装置である。気液分離器7は、重力式や遠心式、フィルター式等、気体と液体を分離できるものであれば特に制限されない。
【0054】
また、気体排出ラインL12は第8開閉弁V8を備え、第8開閉弁V8を開閉することにより、気体排出ラインL12での流体の流通を制御することが可能となる。
【0055】
第2外気供給ラインL13は、第1外気供給ラインL11及び第3外気供給ラインL15を経て、ブロワ5から流入する外気、或いは、第1循環ラインL6、第2循環ラインL10、第3外気供給ラインL15を経て、ブロワ5から流入されることにより、循環する不活性ガスを、接続点J4を介して、加熱器4に供給するラインである。第2外気供給ラインL13は、接続点J4と反対側の端部において、ブロワ5に接続される。
【0056】
ブロワ5は、後述の第3外気供給ラインL15から流入する外気又は循環する不活性ガスを、第2外気供給ラインL13へ流して供給する。ブロワ5には、高温下で使用できるものであれば特に制限がないが、気体の漏洩や有機物の付着による障害を少なくするため、キャンド構造やラビリンス構造を有することが好ましい。
【0057】
また、流入する外気又は循環させる不活性ガスの圧力や流速も特に制限されないが、ろ過塔2に高流速で気体が流れると、活性炭が物理的に破損して再生後の吸着除去の際に微粉炭が混入することがある。このことから、活性炭上での線速度LVを1.0m/sec以下、より好ましくは0.1m/sec以下とすると良く、更により好ましくはインバータ等でブロワ5の駆動電力の周波数を変換して流量を制御してもよい。
【0058】
また、第2外気供給ラインL13は第9開閉弁V9を備え、第9開閉弁V9を開閉することにより、第2外気供給ラインL13での外気の流通を制御することが可能となる。
【0059】
第2不活性ガス供給ラインL14は、系外から、活性炭再生システム1に不活性ガスを供給するラインである。また、第2不活性ガス供給ラインL14は第10開閉弁V10を備え、第10開閉弁V10を開閉することにより、活性炭再生システム1への不活性ガスの供給を制御することが可能となる。
【0060】
なお、第1外気供給ラインL11と第2不活性ガス供給ラインL14は共通化することも可能である。
【0061】
第3外気供給ラインL15は、第1外気供給ラインL11から流入する外気、又は第1循環ラインL6から流入され、循環する不活性ガスを、ブロワ5に供給するラインである。
【0062】
分離ガス排気ラインL16は、気液分離器7によって分離された気体を系外に排出するラインである。分離ガス排気ラインL16には、真空ポンプ8が配置される。
【0063】
真空ポンプ8は、気液分離器7から排出された空気を、系外に向けて圧送(吐出)する機器である。真空ポンプ8には、特に限定されないが、水分や有機物がポンプ内に流入する可能性がある場合は、水封式やダイヤフラム式の真空ポンプを用いることが好ましい。更に、ろ過塔2から排出される気体の排出量を制御するために、真空ポンプ8に対して、インバータから周波数が変換された駆動電力が供給され、駆動電力の周波数(駆動周波数)に応じた回転速度、ひいては排気速度や到達真空度で駆動できることが好ましい。
【0064】
分離水排出ラインL17は、気液分離器7によって分離された凝縮液を系外に排出するラインである。分離水排出ラインL17は、第11開閉弁V11を備え、第11開閉弁V11を開閉することにより、分離水排出ラインL17からの凝縮液の系外への排出を制御することが可能となる。
【0065】
〔1.2 第1実施形態の動作〕
図2は、活性炭再生システム1の動作を示すフローチャートである。また、
図3〜
図10は、フローチャートの各ステップにおける、活性炭再生システム1内の原水、空気、蒸気等の流路を示す図である。
【0066】
以降の各ステップを実行する前段として、ろ過塔2には、有機物が吸着された活性炭が収容される。
【0067】
例えば、
図3に示すように、第1開閉弁V1及び第2開閉弁V2を開き、他の開閉弁を閉めることで、第1原水供給ラインL1、及び第2原水供給ラインL2を介して、原水がろ過塔2に供給され、ろ過塔2に収容される活性炭に、原水に含まれる有機物が吸着されることにより、原水が処理水となる。処理水は、第1処理水排出ラインL3、及び第2処理水排出ラインL4を経由して、系外に排出され、各種用途に利用される。
【0068】
なお、ここでは、ろ過塔2内において水が下方に流通する、下向流通水の例で示したが、ろ過塔2内において水が上方に流通する、上向流通水を実施してもよい。この場合、第2処理水排出ラインL4、及び第1処理水排出ラインL3を介して、原水がろ過塔2に供給され、ろ過塔2に収容される活性炭に、原水に含まれる有機物が吸着されることにより、原水が処理水となる。処理水は、第2原水供給ラインL2、及び第1原水供給ラインL1を経由して、系外に排出され、各種用途に利用される。
【0069】
下向流通水の場合は、活性炭が密に充填されているため水と活性炭との接触効率が高く、高い有機物除去率が得られる一方、原水が高濁質である場合には、濁質が堆積して圧損上昇が大きくなってしまう。上向流通水の場合は活性炭が展開しながら流れるため水と活性炭との接触効率が低く、有機物除去率が低下する一方、濁質が素通りしやすく高濁質の水に対して圧損上昇が生じにくい。
【0070】
この有機物を含む原水は、工場排水であると好適である。なぜならば、本実施形態においては、有機物を高温で加熱することで分解し低分子化するが、工場排水においては、低沸点である揮発性有機化合物(VOC)処理や、予め沸点を把握しやすい溶剤回収の場合に比較して、沸点が幅広く異なり、且つ、未知の有機成分が多種多様に含まれた水が排出されるため、本実施形態により低分子化することによって、より大きな効果が奏されるからである。この工場排水は、食品・飲料業、化学工業、製紙業、染色業、リネンサプライ業、クリーニング業のいずれかの工場からの排水であると更に好適である。
この前段において有機物を含む原水のろ過に用いられ、有機物が吸着された活性炭が、ステップS1以降の本実施形態の活性炭再生システム1の各工程により再生される。
【0071】
ステップS1において、ろ過塔2に収容される活性炭の少なくとも一部が100℃以上250℃未満になるまで、ろ過塔2を空気で加熱する。
【0072】
より詳細には、
図4に示すように、
図3の状態から、第3開閉弁V3、第7開閉弁V7、第9開閉弁V9を開け、第1開閉弁V1を閉じ、その他の開閉弁は
図3の状態を維持するとする。更に、この状態で、ブロワ5を駆動させる。これにより、外気が、第1外気供給ラインL11から、第3外気供給ラインL15を経由してブロワ5に供給され、ブロワ5で圧送された外気が、第2外気供給ラインL13により加熱器4に供給される。加熱器4に供給された外気は、加熱器4で加熱されることによって熱風となり、当該熱風は、第2熱風供給ラインL8、第1熱風供給ラインL5、第2原水供給ラインL2を経由して、ろ過塔2に供給される。これによりろ過塔2に収容された活性炭は加熱される。ろ過塔2を加熱した後の熱風と、ろ過塔2内に保有される水分は、第1処理水排出ラインL3、及び第2処理水排出ラインL4を経由して系外に排出される。
【0073】
なお、ステップS1において、活性炭は水をろ過した後の状態であることから、ろ過塔2には相当量の水分が含まれており、水分に由来する顕熱量と潜熱量が高いために、加熱には多くの熱流体の供給が必要となる。そのため、少なくとも水分の大半がろ過塔2の外に押し出されるか、蒸発して消失するまでは、活性炭の加熱に高価な不活性ガスで加熱することは経済的ではなく、空気で加熱することが好ましい。
【0074】
また、活性炭の少なくとも一部が100℃を超え始めると、水分の大半が消失したことを指し示す間接的な証拠となる。
【0075】
更に、空気加熱を行って活性炭の温度が150℃を超え始めると、活性炭に吸着した有機物の一部が、熱分解及び酸化分解によって低分子化され、ひいては沸点の低下による再生の促進効果が得られ始める。一方、酸素を含む状態で150℃を超えると、吸着された有機物の種類によってはその一部が熱分解及び酸化分解によって一酸化炭素にまで分解される場合があり、更に250℃を超えると活性炭自身が発火して燃焼し始める。そのため、空気で加熱を行う場合、活性炭の損傷を考慮すると、活性炭の少なくとも一部が100℃以上250℃未満になるまで加熱するのが好ましく、安全性を考慮すると100℃以上150℃未満になるまで加熱するのがより好ましい。
【0076】
この工程により、ろ過塔2から余分な水分が効率的に排出され、ろ過塔2内が乾燥状態を保つことが可能となる。
【0077】
なお、ステップS1においては、空気の代わりに、凝縮熱伝達による高い加熱効果が得られる水蒸気を用いてもよい。ボイラ等から発生できる水蒸気は空気に比べれば高価であるが、窒素や二酸化炭素、希ガスに比べれば安価に扱える熱流体であり、排ガスに比べると不純物が少ないメリットがある。また、活性炭に吸着した有機物の一部が加水分解によって低分子化され、ひいては低沸点化されることによる再生の促進効果も得られる。
【0078】
ステップS2において、ろ過塔2に不活性ガスを導入する。
【0079】
より詳細には、最初に、
図5に示すように、ステップS1においてろ過塔2内の温度が、ろ過塔2に収容される活性炭の発火点(例えば、略250℃)に近づいたら、外気の供給を停止した上で、第5開閉弁V5を開き、第7開閉弁V7及び第9開閉弁V9を閉じ、他の開閉弁は、
図4における開閉状態を維持する。更に、第2不活性ガス供給ラインL14から不活性ガスを供給する。これにより、不活性ガスが、第2不活性ガス供給ラインL14、第1不活性ガス供給ラインL9、及び第2熱風供給ラインL8を経由して、加熱器4に供給される。加熱器4に供給された不活性ガスは、加熱器4で加熱されることによって熱風となり、当該熱風は、第2熱風供給ラインL8、第1熱風供給ラインL5、第2原水供給ラインL2を経由して、ろ過塔2に供給される。これによりろ過塔2に収容された活性炭は、不活性ガスで加熱される。ろ過塔2を加熱した後の熱風は、第1処理水排出ラインL3、及び第2処理水排出ラインL4を経由して系外に排出される。
【0080】
この工程により、ろ過塔2内に含まれる酸素を不活性ガスで置換し、後述の循環加熱で活性炭が燃えてしまうことを防ぐ。
【0081】
ステップS3において、活性炭の少なくとも一部が250℃以上600℃未満になるまで、ステップS2で導入した不活性ガスを循環加熱する。なお、活性炭の少なくとも一部が300℃以上600℃未満になるまで循環加熱することが好ましい。
より詳細には、
図6に示すように、ろ過塔2内の酸素を不活性ガスに置換できたら、
図5の状態から、第4開閉弁V4、及び第6開閉弁V6、及び第9開閉弁V9を開き、第2開閉弁V2、及び第5開閉弁V5を閉じ、他の開閉弁は開閉状態を維持した状態で、ブロワ5を駆動する。これにより、不活性ガスは、ろ過塔2から、第1循環ラインL6、第2循環ラインL10、第3外気供給ラインL15、ブロワ5、第2外気供給ラインL13、第2熱風供給ラインL8、第1熱風供給ラインL5、第2原水供給ラインL2を経由して、ろ過塔2に戻ることにより、これらの経路を循環する。
【0082】
また、加熱によって膨張した過剰な不活性ガスは、圧力逃がしラインL7から系外に排出される。
【0083】
なお、ステップS3においては、有機物は150℃以上になると熱分解が起こり始め、更に酸素や水蒸気が存在すると、酸化分解や加水分解も温度上昇に伴って促進されるようになる。より温度を上げることにより、これらの分解反応を積極的に行って低分子化すると、沸点が幅広く異なり、且つ、未知の有機成分が多種多様に吸着されている活性炭を、より効率的に再生できるようになる。一方、600℃を超えると活性炭自身が分解したり、賦活化によって細孔が広がり始めるため、ステップS2において活性炭の少なくとも一部が250℃以上600℃未満になるまで循環加熱するとよく、好ましくは300℃以上600℃未満になるまで循環加熱するとよい。
この工程により、不活性ガスを用いた循環加熱を行うことで、水蒸気を供給し続けて加熱する従来の再生法と比較して、不活性ガス使用量を減らすことが可能となると共に、ろ過塔2を通過してきた不活性ガスの排熱を再利用することになるため、加熱器4のヒータ容量低減や活性炭の加熱にかかる時間の短縮効果も見込まれる。
【0084】
なお、
図7に示すように、不活性ガスの代わりに、配管内やろ過塔内に直接水を注入し、加熱器4や既に高温になっている配管やろ過塔内に当該水を接触させることで不活性ガスとしての水蒸気を発生させてろ過塔2に供給してもよい。これにより、不活性ガスとしての水蒸気を発生させるためのボイラが不要となる。
【0085】
また、空気や不活性ガスの導入時又は循環時は、加圧環境であってもよいし、負圧環境であってもよい。
【0086】
ステップS3により、活性炭に含まれる有機物を低分子化し、且つ気化させる状態とすることが可能となる。更には、活性炭の再生に必要となるガス量や、加熱のための燃料や電気代を削減することが可能となる。
【0087】
なお、ステップS1における空気又は水蒸気による加熱、ステップS2における不活性ガス導入、ステップS3における不活性ガスの循環について、ここでは、加熱器4で加熱された空気又は不活性ガスがろ過塔2内において下方に流通する、下向流加熱の例で示したが、加熱器4で加熱された空気又は不活性ガスがろ過塔2内において上方に流通する、上向流加熱を実施してもよい。
【0088】
下向流加熱の場合は、活性炭の上部から下部に向かって順次加熱されるのに対し、上向流加熱の場合は、活性炭の下部から上部に向かって順次加熱されるため、空気又は不活性ガスの流通方向に応じた温度勾配が生じる。下部が先に加熱される上向流加熱の場合では、上昇気流発生による熱移動効果が加わるため、ろ過塔2内の加熱効率の上昇が期待される。
【0089】
ステップS4において、ろ過塔2を減圧する。
【0090】
より詳細には、ろ過塔2内の温度が、ろ過塔2に収容される活性炭の再生温度(例えば、略300℃)に近づいたら、
図8に示すように、ステップS3の状態から、第8開閉弁V8を開け、第4開閉弁V4、第6開閉弁V6、第9開閉弁V9を閉じ、その他の開閉弁の開閉状態は維持する。また、ステップS3における不活性ガスの供給及び加熱器4による加熱を停止する。更に、第2開閉弁V2、及び第4開閉弁V4を閉じた状態で、真空ポンプ8を駆動することにより、ろ過塔2を減圧する。この際、ろ過塔2内の不活性ガスは、第2原水供給ラインL2、第1熱風供給ラインL5、気体排出ラインL12を経て、冷却器6に流入して冷却される。これにより、冷却器6から排出される、冷却後の不活性ガスと有機物が高濃縮された少量の凝縮液との混合物は、気液分離器7で不活性ガスと凝縮液とに分離される。分離された不活性ガスは、分離ガス排気ラインL16、真空ポンプ8を経て系外に排出される。また、凝縮液は、気液分離器7内に貯留された後、分離水排出ラインL17を経て系外に排出される。
【0091】
なお、ろ過塔2内では減圧による吸着有機物の沸点や昇華点の低下効果によって、気化、すなわち当該有機物の活性炭からの脱着が促進される。また、ステップS2で導入する不活性ガスとして水蒸気を用いた際に気液分離器7に貯留される凝縮水は、有機物が高濃縮された状態であるから、有機相と水相が分離しやすくなり、加圧浮上法や凝集法、各種ろ過法等の物理的な分離処理が容易になる。一部水相に溶け込んでしまう分離困難な有機物は低分子化された状態であるから、フェントン酸化や促進酸化法等の化学的処理、或いは、活性汚泥法や担体法等の生物学的処理が容易になる。油相はエネルギー源とすることができる。
【0092】
また、
図9に示すように、冷却器6及び気液分離器7を用いた冷却トラップを行わず、第1熱風供給ラインL5から排出される、有機物を含む不活性ガスを、真空ポンプ8のみにより系外に排出してもよい。この場合、真空ポンプ8から排出される、有機物を含む不活性ガスは、ボイラの燃焼室や焼却炉、バーナー等で直接燃焼させてもよく、真空ポンプ8の前段又は後段で触媒燃焼やプラズマ分解させてもよく、これらの燃焼熱を新たなエネルギー源としてもよい。
【0093】
なお、ステップS4においては、真空度が高ければ高い程、沸点や昇華点が指数関数的に低下して高い再生効率を得ることができるが、有機成分の気化がはじまると真空度が低下して一時的に再生効率が落ちる。そのため、高い再生効率を常に維持するために、ろ過塔2を、絶対圧力として50kPa以下の真空度まで減圧するとよく、より好ましくは10kPa以下に保持するとよい。更に、減圧を開始したからといって、瞬時にすべての有機物が気化するわけではなく、一定温度、一定圧力の下では、有機物の気化量は初期程多く、時間の経過と共に指数関数的に減少していく。そのため、ろ過塔2の減圧を開始してから5分以上の時間、減圧状態を保持するとよく、より好ましくは30分以上の時間、減圧状態を保持するとよい。
【0094】
ステップS4により、ろ過塔2内の圧力が低下することで、活性炭に吸着している有機物の沸点が低下し、有機物の気化(脱着)が促進される。これにより、気化状態となった、活性炭内の有機物が系外に排出されると共に、多種多様な有機物が吸着した活性炭を、良好に再生できる。
【0095】
なお、上記のステップS3とステップS4は、2回以上繰り返してもよい。
【0096】
ステップS5において、ろ過塔2内の活性炭の再生処理が終了した後、ろ過塔2を冷却する。
【0097】
より詳細には、活性炭の発火点温度以下に下がったら、
図10に示すように、ステップS4の状態から、第2開閉弁V2、第7開閉弁V7、第9開閉弁V9を開け、第8開閉弁V8を閉じ、その他の開閉弁は開閉状態を維持した状態でブロワ5を駆動する。これにより、第1外気供給ラインL11から取り込まれた外気は、第3外気供給ラインL15を経由して、ブロワ5で圧送され、その後、第2外気供給ラインL13、第2熱風供給ラインL8を経て、加熱器4に供給されるものの、加熱器4で加熱されることなく、第2熱風供給ラインL8、第1熱風供給ラインL5、第2原水供給ラインL2を経て、ろ過塔2に達し、ろ過塔2を冷却した後、第1処理水排出ラインL3、及び第2処理水排出ラインL4を経て、系外に排出される。
【0098】
なお、活性炭の発火点温度(略250℃)以下に温度が下がるまでは、自然放熱による温度低下を待ってもよいし、水を注入することで水の蒸発潜熱を利用した冷却促進を行ってもよいし、低温の不活性ガスの導入や循環によって冷却を促進してもよいが、ステップS4における減圧過程を終了した時点で発火点以下になっていれば、この操作は不要である。
【0099】
ステップS5により、ろ過塔2内の活性炭が冷却され、急速に活性炭の再使用が可能となる。
【0100】
〔1.3 第1実施形態が奏する効果〕
本実施形態に係る再生方法は、活性炭の再生方法であって、有機物を含む水から、ろ過塔に収容される活性炭を用いたろ過により、有機物を吸着ろ過した後に、少なくとも活性炭の一部が200℃以上600℃未満になるまで加熱する加熱工程であって、活性炭の発火温度以上の領域においては不活性ガスの雰囲気下で加熱する加熱工程と、活性炭の一部が200℃以上600℃未満に到達した時点で、ろ過塔2の減圧を開始する第1減圧工程とを備える。
【0101】
これにより、熱分解や酸化分解、加水分解によって、活性炭に吸着した有機物を低分子化することが可能となり、低分子化により、有機物の沸点を低くすることが可能となる。これにより、加熱工程から減圧工程に移行する際の温度帯を低くすることができる。また、凝縮液中の有機物が低分子化されるため、微生物も有機物を栄養化しやすくなり、凝縮液の生分解性も向上して、生物処理が簡単になる。更には、処理に時間がかかり、管理も面倒で、広大な敷地が必要な生物処理の負荷低減が可能となる等、大型の排水処理設備は不要となる。また、活性炭の加熱温度を600℃未満とすることにより、活性炭の細孔の広がりを抑制することが可能となる。更には、減圧工程において、ろ過塔内の温度が徐々に下がったとしても、圧力低下によって沸点や昇華点が下がり、有機物が気化されるとほぼ同時に真空ポンプ8によって系外に排出されるため、有機物の再付着化を防ぐことができる。これらにより、多種多様な有機物が付着した活性炭を良好に再生することが可能となる。
【0102】
また、加熱工程において、活性炭の一部が300℃以上600℃未満になるまで加熱してもよい。
【0103】
これにより、より高温な条件とすることで、沸点が幅広く異なり、且つ、未知の有機成分が多種多様に吸着されている活性炭を、より確実に再生することができる。
【0104】
また、加熱工程は、活性炭の一部が100℃以上250℃未満になるまでは、空気又は水蒸気で加熱する第1のステップと、不活性ガスを導入して、少なくとも活性炭の一部が250℃以上600℃未満になるまで加熱する第2のステップとを備えてもよい。
【0105】
これにより、発火温度になった際に空気で加熱すると、空気中の酸素と反応して活性炭が燃焼してしまうため、第1ステップにおいては、あくまで発火温度付近まで空気で加熱する。この第1ステップが存在することにより、加熱工程を通して不活性ガスを導入し続ける従来の再生手法に比較して、不活性ガスの消費量(延いては排出量)を抑えることができる。
【0106】
また、第2のステップ及び第1減圧工程を2回以上繰り返してもよい。
【0107】
絶対真空(0MPa)に到達することは技術的に不可能であり、最終的に到達した絶対圧のうち、分圧分の気化有機物はろ過塔外に排出されずに、有機気体分子として活性炭近傍に存在する。このため、ろ過塔2内の温度が下がったり、常圧に戻ったりした際に、活性炭近傍の有機物が活性炭に再吸着してしまう。そこで、減圧状態から不活性ガスを再導入し、加熱した後、更に減圧を行うことで、気化有機物の分圧を少なくし、ろ過塔外に排出されない有機気体分子の量、延いては活性炭に再吸着する有機物の量を削減することが可能となる。
【0108】
また、第2のステップにおいて、不活性ガスによる循環加熱を実行してもよい。
【0109】
不活性ガスを加熱媒体として使用し、垂れ流しにする従来方法と異なり、循環して再加熱することで未利用熱を再利用することとなるため、省エネ効果が得られる。
【0110】
また、不活性ガスは水蒸気であってもよい。
【0111】
加水分解により有機物を低分子化することが可能となり、低分子化により低沸点化も可能となる。これにより、加熱工程から減圧工程に移行する際の温度帯を低くすることが可能となる。また、凝縮液中の有機物が低分子化されるため、微生物も有機物を栄養化しやすくなり、凝縮液の生分解性も向上して、生物処理が簡単になる。更には、処理に時間がかかり、管理も面倒で、広大な敷地が必要な生物処理の負荷低減が可能となる等、大型の排水処理設備は不要となる。
【0112】
また、水蒸気は、ろ過塔2への水の注入により発生する水蒸気であってよい。
【0113】
ろ過塔2へ水を直接注入することにより、別途ボイラを設置することなく水蒸気を発生させることができる。
【0114】
また、不活性ガスは窒素、又は排ガスであってよい。
【0115】
これにより、不活性ガスとして窒素を用いた加熱分解が可能となる。また、不活性ガスとして排ガスを用いる場合には、加熱コストを下げることが可能となる。
【0116】
また、第1減圧工程においては、ろ過塔2を絶対圧力として50kPa以下の真空度まで減圧してもよい。
【0117】
真空度を高めるほど、有機物が気化する沸点を下げることができるので、好適である。
【0118】
また、第1減圧工程においては、ろ過塔2の減圧を開始してから、5分以上の時間、減圧状態を保持してもよい。
【0119】
減圧を開始したから、或いは、有機物の沸点に到達したからといって、すぐに有機物の全量を活性炭から脱着させることできるという訳ではない。そこで、所定時間以上、減圧状態を保持することにより、活性炭中の有機物を確実に脱着することが可能となる。
【0120】
また、有機物を含む水は、工場排水であってよい。
【0121】
これにより、本実施形態に係る再生方法を、比較的分子量の大きい有機物が排出される工場排水をろ過する活性炭の再生に適用することが可能となる。
【0122】
また、工場排水は、食品・飲料業、化学工業、製紙業、染色業、リネンサプライ業、クリーニング業のいずれかの工場からの排水であってよい。
【0123】
これにより、本実施形態に係る再生方法を、多種多様な産業に係る工場からの工場排水をろ過する活性炭の再生に適用することが可能となる。
【0124】
〔2 第2実施形態〕
以下、
図11〜
図12を参照することにより、本発明の第2実施形態に係る活性炭再生システム1Aについて説明する。なお、第2実施形態に係る活性炭再生システム1Aの構成は、第1実施形態に係る活性炭再生システム1と同一であるため、その説明を省略する。
【0125】
〔2.1 実施形態の動作〕
図11は、活性炭再生システム1Aの動作を示すフローチャートである。また、
図12は、後述する、フローチャートのステップS13における、活性炭再生システム1A内の空気の流路を示す図である。
【0126】
以下のステップS11〜S16を実行する前段として、活性炭を用いたろ過により、有機物を吸着ろ過する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS1の前段の処理と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0127】
ステップS11において、ろ過塔2に収容される活性炭の少なくとも一部が100℃以上250℃未満になるまで、ろ過塔2を空気又は水蒸気で加熱する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS1と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0128】
ステップS12において、ろ過塔2から空気を除去して、ろ過塔2を減圧する。
【0129】
より詳細には、
図12に示すように、ステップS11の状態から、第8開閉弁V8を開け、第2開閉弁V2、第7開閉弁V7、及び第9開閉弁V9を閉じ、その他の開閉弁は開閉状態を維持する。更に、第2開閉弁V2、及び第4開閉弁V4を閉じた状態で、真空ポンプ8を駆動することにより、ろ過塔2を減圧する。この際、ろ過塔2内の空気は、第2原水供給ラインL2、第1熱風供給ラインL5、気体排出ラインL12、分離ガス排気ラインL16、真空ポンプ8を経て、系外に排出される。
【0130】
ステップS12により、後述のステップS13において、ろ過塔2内の空気を不活性ガスで置換する際、より確実に酸素を除去することが可能となる。
【0131】
ステップS13において、ろ過塔2に不活性ガスを導入する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS2と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0132】
ステップS14において、活性炭の少なくとも一部が250℃以上600℃未満になるまで循環加熱する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS3と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0133】
ステップS15において、ろ過塔2を減圧する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS4と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0134】
ステップS16において、ろ過塔2内の活性炭の再生処理が終了した後、ろ過塔2を冷却する。なお、この処理は、第1実施形態におけるステップS5と同一の処理であるため、その詳細な説明を省略する。
【0135】
〔2.2 第2実施形態が奏する効果〕
本実施形態においては、第1のステップと第2のステップとの間で、ろ過塔2を減圧する第2減圧工程を実行する。
【0136】
第1のステップと第2のステップとの間に、減圧のステップを入れることで、第1のステップで用いた空気、延いては酸素を除去することにより、第2のステップで不活性ガスを導入した際に、より効率的、且つ、確実にろ過塔内を不活性ガスに置換することができ、活性炭の発火や燃焼のリスクを抑えることが可能となる。
【0137】
〔3 実験データ〕
〔3.1 吸着試験と再生処理時の温度データ〕
本発明の効果を確認するため、
図1で示された構成にて活性炭を1L充填した実験装置を用意し、沸点340℃の粉末状の有機物をTOC(全有機炭素 Total Organic Carbon)として2,600mg/Lになるように完全に溶解して調製した、模擬的な排水である模擬排水を、新品のコール炭(新炭)に空間速度SV=10BV/hで通水し、本発明による再生を施した場合と、従来技術として単純な水蒸気供給による再生を施した場合とで、吸着性能、凝縮水量(使用蒸気量)、相分離の有無、及び微粉炭発生(活性炭消耗)の有無の相違を確認した。なお、従来技術による再生を施す場合は、
図5で示した状態において、不活性ガスとして水蒸気を供給し、この状態のみを5時間継続することで再現した。
【0138】
図13Aは、本発明の実施形態に係る活性炭の再生方法を用いて再生した時の、当該活性炭の平均温度と、経過時間との関係の例を示すグラフである。
【0139】
上記のステップS1における、ろ過塔2の空気加熱の間に、活性炭の平均温度は、略30℃から略180℃まで上昇した。
【0140】
上記のステップS2において、ろ過塔2に、0.3kg/hで5分間蒸気を導入して加熱する間に、活性炭の平均温度は、略180℃から略200℃まで上昇した。
上記のステップS3において、循環加熱する際、活性炭の平均温度は、略200℃から略330℃まで上昇した。
【0141】
上記のステップS4において、ろ過塔2をゲージ圧で−90kPaG(絶対圧で10kPa)で2時間減圧している間に、活性炭の平均温度は、略330℃から略250℃まで下降した。
【0142】
その後、ステップS5において、ろ過塔2内の活性炭の再生処理が終了した後、ろ過塔2を大気開放し冷却した。なお、この冷却を除いて再生処理に供した時間(ステップS1〜ステップS4の合計時間)は5時間である。
【0143】
図13Bは、従来技術に係る活性炭の再生方法を用いて再生した時、当該活性炭の平均温度と、経過時間との関係の例を示すグラフである。
【0144】
従来技術に係る活性炭の再生方法においては、
図5で示した状態で不活性ガスとしての水蒸気を0.3kg/hで5時間供給することで再現したが、活性炭の温度条件が本発明の実施形態に係る活性炭の再生時とほぼ同じになるように制御した。
【0145】
図14Aは、沸点340℃の粉末状の有機物を完全に溶解した、模擬的な排水である模擬排水を、各活性炭に通水することによる吸着試験の結果を示すグラフである。
【0146】
図14Aに示されるように、従来の再生方法による再生炭と、本発明に係る再生方法による再生炭共に、再生炭である以上、新炭に比較すれば通水時間の経過に伴う有機物除去率の低下の度合いは大きい。
【0147】
しかし、本発明に係る再生方法による再生炭は、従来の再生方法による再生炭に比較して、再生温度や再生時間をほぼ同条件にしているにも関わらず、通水時間が略100(min)を超えて以降は、有機物除去率の低下の度合いは小さいことが示された。
【0148】
図14Bは、本発明に係る再生方法と従来の再生方法との間における、凝縮水量(使用蒸気量)、相分離の有無、及び微粉炭発生(活性炭消耗)の有無の相違を示す表である。
【0149】
廃蒸気の冷却により全量回収した凝縮水については、従来の再生方法によるドレン水が約1.8Lで、相分離していなかったのに対し、本発明に係る再生方法による再生炭では、凝縮水が約60mLで、水相と油相に自然分離していた。このことから、本発明に係る再生方法では、従来の再生方法に比較して、蒸気使用量、ひいては不活性ガス使用量を削減できることが示唆された。また、本発明に係る再生方法では、有機物を高濃縮することができ、粉末状の有機物を液状の有機物にまで低分子化でき、物理的な分離処理や、化学的又は生物学的な二次処理が容易になることが示唆された。更に、従来の再生方法による再生では、通水再開直後に微粉炭が多く混入しており、活性炭の消耗が確認されたのに対し、本発明に係る再生方法による再生炭では、微粉炭の発生はほとんどなく、活性炭の消耗が抑制されていることが確認できた。
【0150】
〔3.2 高温保持時間及び保持温度の根拠データ〕
図15は、ろ過塔2で高温を保持する時間の根拠となるデータを取得するにあたって、凝縮水に含まれる有機物量を監視するために用意した実験装置10の構成である。
【0151】
実験装置10は、ろ過塔12と、面ヒータ13と、温調器15A及び15Bと、熱電対17A及び17Bとを備える。
【0152】
ろ過塔12は、試験体となる活性炭を収容し、有機物を含む水をろ過したり、ろ過により吸着能が低下した活性炭を蒸気によって再生したりする装置であり、SUS304の長ニップルであって、半径10A×長さ125Lである。また、ろ過塔12に収容される活性炭の容量は、30mLである。
【0153】
熱電対17A及び17Bでろ過塔12内の活性炭の温度を測定しながら、面ヒータ13によりろ過塔12を加熱し、温調器15A及び15BのPID制御によりろ過塔12内の活性炭の温度を調節した。
【0154】
その上で、多種多様な有機物が含まれる実際の工場排水を、ろ過塔12に収容される30mLの活性炭に対して、空間速度SV=10BV/hで24時間連続通水させた後、給水量350μL/minの蒸気で再生する際、活性炭温度を段階的に上げていき、ろ過塔2から出てくる廃蒸気を、5分間隔で30mLの純水でトラップして、そのトラップ水の254nm吸光度と電気伝導率を測定した。
【0155】
図16A及び
図16Bは、高温を保持する時間の根拠となるデータであり、
図16Aは、5段階で昇温した場合の有機物の排出量の変化を、
図16Bは、2段階で昇温した場合の有機物の排出量の変化を示すグラフである。このトラップ水の254nm吸光度や電気伝導率は、過熱蒸気で再生される際に排出された有機物量に依存して大きくなる。その上で、
図16A及び
図16Bに示されるように、各温度帯の最初の5分間において排出される有機物量が最も多く、その後は指数関数的に排出量が減少し、約30分間保持させると排出有機物量が横ばいになって、ほとんど排出されなくなることが分かる。
【0156】
従って、一定の温度や圧力の再生条件の下では、5分以上の時間その再生条件を保持するとよく、より好ましくは30分以上の時間保持するとよいことが分かる。
【0157】
更に、200℃を超えたあたりから有機物が顕著に排出されはじめ、300℃〜400℃で排出のピークを迎え、600℃付近に到達する頃には有機物はほとんど排出されなくなっていることから、多種多様な有機物を含む実際の工場排水をろ過処理した活性炭の再生において、200℃以上600℃未満、より好ましくは300℃以上600℃未満で加熱することが有効であることが分かる。
【0158】
〔4 変形例〕
上記の実施形態では、加熱器4により加熱された空気や不活性ガスを、ろ過塔2に供給することにより、ろ過塔2に収容される活性炭を加熱していたが、これには限定されない。
【0159】
図17A〜
図17Dは、他の加熱方法の例を示す図である。例えば、
図17Aに示すように、ろ過塔2の中に、枝分かれした加熱管21とスーパーヒータ22を設置し、当該スーパーヒータ22で、枝分かれした加熱管を介してろ過塔2の中に充填された活性炭23を加熱してもよい。
【0160】
或いは、
図17Bに示すように、ろ過塔2の中に、セラミックヒータ、ハロゲンヒータ等の赤外線ヒータ24を設置すると共に、活性炭23の周囲を、アルミ等の赤外線反射材25で包囲することにより、ろ過塔2の中に充填された活性炭23を加熱してもよい。
【0161】
或いは、
図17Cに示すように、並行して設置される金属柱26を囲むように、高周波電源27に接続された加熱誘導用コイル28で、ろ過塔2の中に充填された活性炭23を加熱してもよい。
【0162】
或いは、
図17Dに示すように、活性炭23が充填された細管29に面ヒータ30を巻き付けたものをモジュール化し、このモジュール31と、給水・蒸気・処理水・廃蒸気の分配/集水部32とでろ過塔2を構成することにより、活性炭23を加熱してもよい。
【0163】
或いは、図示はしないが、マイクロ波加熱や高周波誘電加熱により、ろ過塔2に充填された活性炭を加熱してもよい。