【解決手段】非接触搬送装置10を構成するディフレクタ14のフランジ部66には、径方向外側に向かって延在し、且つ、周方向に互いに等間隔離間した複数のノズル溝84を備える。このノズル溝84は、フランジ部66の上面66aに対して断面円弧状に窪んで形成され、ボディ12における凹部36の平坦面52と導出路85を構成している。そして、ボディ12の第1ポート22に供給された圧力流体が、ボディ12の内部を通じて複数のノズル溝84から凹部36の第1及び第2湾曲面48、50に沿って流れワーク保持面16へと到達することで、前記ワーク保持面16とワークS1との間を高速で流れる圧力流体によってボディ12側へと働く吸引力が発生して前記ワークS1が吸引される。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明に係る非接触搬送装置について好適な実施の形態を挙げ、添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
【0017】
この第1の実施の形態に係る非接触搬送装置10は、
図1〜
図3に示されるように、軸方向から見て断面円形状に形成されたボディ12と、該ボディ12の内部に収納されるディフレクタ14と、前記ボディ12においてワークS1(
図3参照)を保持するワーク保持面16に設けられるストッパ機構18とを含む。
【0018】
ボディ12は、例えば、金属製材料から円柱状に形成され、その中央下端に開口した孔部20と、外周部位に形成され径方向内側へ延在する第1及び第2ポート22、24と、上端に開口したサブポート26とを備える。そして、ボディ12の上端には、非接触搬送装置10を図示しないロボット等のアーム先端に固定するための4つの取付孔28が形成されている。
【0019】
孔部20は、ボディ12の軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って延在し、後述するディフレクタ14が下方から挿入可能に形成され、その上端に形成され内周面にねじの設けられたねじ孔30と、該ねじ孔30の下方(矢印A2方向)に形成され拡径した中間孔32と、該中間孔32に対してさらに下方に拡径して形成された導出孔(通路)34とを含み、前記導出孔34がワーク保持面16に形成された凹部36と連通している。すなわち、孔部20は、ボディ12の軸中心において、軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って一直線状に形成され、そのねじ孔30が最も小径に形成され、導出孔34が最も大径で形成される。
【0020】
第1及び第2ポート22、24は、ボディ12の外周面にそれぞれ開口して径方向内側へとそれぞれ延在すると共に、ボディ12の軸方向から見て、該ボディ12の軸中心に対して第1ポート(エア供給部)22と第2ポート24とが一直線状となるように配置される。
【0021】
そして、第1ポート22は、図示しない配管と接続された第1接続プラグ38が螺合され、図示しない圧力流体供給源と接続されると共に、その内端が導出孔34の外周部に接続されて連通している。一方、第2ポート24には、図示しない配管と接続された第2接続プラグ40が螺合され、例えば、圧力センサ等の圧力検出手段(図示せず)と接続されると共に、その内端が中間孔32の外周部に接続されて連通している。すなわち、第1及び第2ポート22、24は、ボディ12の軸方向(矢印A1、A2方向)にオフセットするように形成されている。
【0022】
サブポート26は、ボディ12の上端において、該ボディ12の軸中心から径方向外側となる位置に形成され、軸方向(矢印A2方向)に断面円形状に窪んだ窪み部42と、該窪み部42の中心に貫通したボルト孔44とを有し、該ボルト孔44が第1ポート22の途中に接続されて連通している。そして、サブポート26には、圧力流体を供給可能な第1接続プラグ38が選択的に接続可能である。
【0023】
例えば、サブポート26を利用して非接触搬送装置10の上端側から圧力流体を供給する場合には、
図3の二点鎖線で示されるように、該サブポート26から封止ボルト46を取り外した後に、前記サブポート26に対して第1接続プラグ38を接続し、第1ポート22には前記封止ボルト46を螺合させて閉塞する。これにより、第1接続プラグ38から供給された圧力流体がサブポート26のボルト孔44から第1ポート22の途中へと供給される。
【0024】
一方、第1ポート22の開口した非接触搬送装置10の外周側から圧力流体を供給する場合には、第1ポート22に対して第1接続プラグ38を接続してサブポート26を封止ボルト46で閉塞しておく。
【0025】
さらに、ボディ12の下端には、
図3に示されるように、ワークS1を非接触で保持可能なワーク保持面16が形成され、軸方向と直交方向(矢印B方向)に平坦状に形成されたワーク保持面16の略中央部には軸方向から見て円形状となる凹部36が形成される。凹部36は、ワーク保持面16に対して軸方向一端側(矢印A1方向)に窪んで形成され、孔部20における導出孔34の軸方向下端と繋がるように形成されると共に、ボディ12の周方向に沿って同一断面形状で形成される。
【0026】
この凹部36は、導出孔34の軸方向下端に対して径方向外側へ延在し、緩やかに湾曲しながら径方向外側に向けて下方へと延在した第1湾曲面(湾曲面)48と、該第1湾曲面48の径方向外側に繋がり緩やかに湾曲しながら径方向外側に向けて下方へと延在した第2湾曲面(湾曲面)50と、前記第1湾曲面48の径方向内側に形成される平坦面52から構成される。
【0027】
図3及び
図5に示されるように、第1湾曲面48は、上方(矢印A1方向)へ向けて断面円弧状となるように湾曲し、第2湾曲面50は、下方(矢印A2方向)へ向けて断面円弧状となるように湾曲している。
【0028】
また、第2湾曲面50は、その径方向外側となる外縁部がワーク保持面16に対して徐々に接するように湾曲している。換言すれば、凹部36は、その第1湾曲面48と第2湾曲面50との繋がる部位で湾曲方向が切り替わるように形成されている。
【0029】
平坦面52は
図3、
図5及び
図6に示されるように、凹部36において最も径方向内側となり導出孔34に臨む部位に径方向へ所定幅で延在し、後述するディフレクタ14の外縁部に臨むように環状に形成される。そして、平坦面52の径方向外側となる端部が第1湾曲面48と繋がっている。なお、上述した平坦面52とワーク保持面16とを湾曲面で繋ぐ代わりに、前記平坦面52から前記ワーク保持面16に向けて緩やかに傾斜した傾斜面で凹部を構成するようにしてもよい。
【0030】
また、ワーク保持面16には、
図3、
図7〜
図9に示されるように、凹部36の径方向外側となる位置にストッパ機構18の装着される複数の装着穴54が形成される。この装着穴54は、例えば、ボディ12の軸中心に対して同一直径上、且つ、周方向に互いに等間隔離間して形成され、最も上方(矢印A1方向)に形成されたピン穴部56と、該ピン穴部56に対して拡径しワーク保持面16側(矢印A2方向)に形成された拡径部58と、該拡径部58に対してさらにワーク保持面16側(矢印A2方向)に形成されたパッド穴部60とを備える。そして、装着穴54は、ピン穴部56、拡径部58及びパッド穴部60が軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って同軸状に形成される。
【0031】
また、装着穴54は、
図9に示されるように、最も大径であるパッド穴部60よりも外側となるようにエア抜き穴62が形成され、該エア抜き穴62は、ワーク保持面16から軸方向(矢印A1、A2方向)に沿ってパッド穴部60、拡径部58及びピン穴部56の途中まで延在している。
【0032】
ディフレクタ14は、
図2〜
図5に示されるように、例えば、金属製材料から形成され、軸方向(矢印A1、A2方向)に延在するロッド部64と、該ロッド部64の下端に形成され径方向外側へ拡径したフランジ部66とを含む。
【0033】
ロッド部64は、上端に形成され外周面にねじの形成されたねじ部68と、該ねじ部68の下方(矢印A2方向)に形成され拡径したロッド本体70とを備える。このロッド本体70は、ボディ12の中間孔32と略同一径で形成され、その内部には、径方向に貫通した連通孔72が形成されると共に、連通孔72からフランジ部66の検出用ポート74まで軸方向に沿って延在する検出用通路76が形成される。また、ロッド本体70の外周面には環状溝78を介してシールリング80が装着されている。
【0034】
フランジ部66は、ロッド部64におけるロッド本体70の軸方向下端に対して緩やかに拡径する断面円弧状の接合部82を介して一体的に接続され、その上面66a及び下面が軸方向(矢印A1、A2方向)と略直交する水平方向(矢印B方向)に沿って平坦状に形成される。また、フランジ部66の上面66aには、その外縁部近傍に周方向に沿って等間隔離間した複数のノズル溝84が形成される。
【0035】
ノズル溝84は、
図2〜
図6に示されるように、例えば、ロッド部64を中心として周方向に等間隔離間して10本設けられ、フランジ部66の上面66aに対して下方(矢印A2方向)へ向けて断面円弧状に窪んで形成されると共に、ディフレクタ14のロッド部64を中心として径方向外側へ延在するように放射状に形成される。このノズル溝84は、例えば、単一の半径で形成されている。
【0036】
また、ノズル溝84は、
図6に示される該ノズル溝84の延在方向から見て、ボディ12の平坦面52に臨み、最も幅広となる開口端84aの幅寸法(周方向に沿った寸法)をW、軸方向(矢印A2方向)に沿った軸方向深さをHとした場合、1/30W<H≦Wの関係を満たすように形成される。すなわち、ノズル溝84は、その軸方向深さHが、開口端84aの幅寸法Wよりも大きくなることがないように形成される。
【0037】
さらに、
図6に示されるように、ノズル溝84は、その開口端84aを通る接線Cとフランジ部66の上面66aとがなす角度θが90°以下となるように形成される(θ≦90°)。
【0038】
また、ノズル溝84は、
図6に示される延在方向から見た断面形状全体が円弧状で形成される場合に限定されるものではなく、例えば、フランジ部66の上面66aから底部に向けて(矢印A2方向)傾斜して直線状に延在した一対のテーパ面と、一方のテーパ面と他方のテーパ面とを繋ぐ断面円弧状部とを備えた形状であってもよい。すなわち、ノズル溝84における断面形状の少なくとも一部が断面円弧状に形成されていればよい。
【0039】
さらに、ノズル溝84は、
図3及び
図5に示されるように、その径方向外側となる一部がボディ12における凹部36の平坦面52に臨み、該平坦面52との間に圧力流体を導出する導出路(ノズル)85を構成する。導出路85の形状は、
図5に示されるように、径方向に沿った径方向長さLがノズル溝84の軸方向深さHよりも大きくなるように設定される(L>H)。
【0040】
なお、ノズル溝84の本数は、例えば、ボディ12の直径、流通する圧力流体の流量、要求されるワークに対する吸引力の大きさ等の条件に応じて適宜設定される。
【0041】
そして、
図3に示されるように、ディフレクタ14を、ボディ12の孔部20へと挿入し、ロッド本体70が中間孔32に収納されると共に、ロッド部64のねじ部68をねじ孔30に対して螺合することで、前記孔部20に対してロッド部64が同軸状に連結され、ディフレクタ14がボディ12の孔部20に固定される。
【0042】
また、ロッド本体70の連通孔72が第2ポート24に対して径方向に一直線状となって連通し、フランジ部66の外縁部(ノズル溝84)が凹部36の平坦面52に当接して導出路85を構成すると共に、孔部20がフランジ部66によって覆われる。さらに、第1ポート22が、導出孔34及びノズル溝84(導出路85)を通じて凹部36と連通している。なお、連通孔72は、第2ポート24と一直線状に配置される場合に限定されるものではない。
【0043】
ストッパ機構18は、
図2、
図3、
図7〜
図9に示されるように、ボディ12の装着穴54に装着されるパッド部材86と、該パッド部材86を通じて前記装着穴54の内部に挿入されるピン部材88とを含み、該ピン部材88は、例えば、金属製材料から一定径で軸方向(矢印A1、A2方向)に所定長さを有して形成される。
【0044】
パッド部材86は、例えば、ゴム等の弾性材料から形成され、円筒状に形成された本体部90と、該本体部90の下端に形成されたパッド部92とを備え、前記本体部90の内部には、ピン部材88の挿入される挿入孔94が軸方向(矢印A1、A2方向)に沿って貫通している。
【0045】
本体部90は、その外周径が略同一に形成されると共に、上端部側(矢印A1方向)において径方向内側に厚く形成された厚肉部96を有し、挿入孔94は、前記厚肉部96においてピン部材88の直径よりも小さく形成される。パッド部92は、下方(矢印A2方向)に向かって径方向外側へと拡がったスカート状に形成され、ボディ12のワーク保持面16にワークS1が保持される際に接触可能に設けられる(
図3参照)。
【0046】
そして、
図7及び
図8に示されるように、ストッパ機構18は、パッド部材86の本体部90が装着穴54に対して挿入され、その厚肉部96が拡径部58に臨み、該本体部90及びパッド部92の一部がパッド穴部60に収納された状態で、挿入孔94へピン部材88を挿入してピン穴部56まで押し込む。これにより、厚肉部96がピン部材88によって径方向外側へと押圧され膨出することで拡径部58に係合され、パッド部92がワーク保持面16に対して下方へと突出した状態で、パッド部材86が装着穴54に対して軸方向に固定される。
【0047】
また、
図9に示されるように、ピン部材88をパッド部材86の挿入孔94へと挿入する際、ピン穴部56の内部に残っている空気が前記ピン部材88によって押圧されてエア抜き穴62から外部へと好適に排出されるため、前記ピン穴部56内に残存している空気によって前記ピン部材88の挿入が妨げられてしまうことがない。
【0048】
また、上述した非接触搬送装置10を構成するボディ12、ディフレクタ14及びストッパ機構18は、例えば、カーボンの含有された半導電性材料から形成してもよい。
【0049】
本発明の第1の実施の形態に係る非接触搬送装置10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作並びに作用効果について説明する。なお、ここでは、円板状のプレート体をワークS1(
図3参照)として保持して搬送する場合について説明する。
【0050】
先ず、
図3に示されるように、圧力流体供給源(図示せず)と接続された配管を通じて第1接続プラグ38及び第1ポート22へと圧力流体を供給する。この圧力流体は、第1ポート22から径方向内側へと流通して孔部20の導出孔34へと流通する。
【0051】
そして、導出孔34においてディフレクタ14のロッド部64の外周面及び接合部82に沿って圧力流体が径方向外側へと導かれ、フランジ部66の上面66aに沿って径方向外側へと流れて複数のノズル溝84(導出路85)を通じて凹部36内へと放射状に導出される。この場合、複数のノズル溝84が同一形状で形成され、且つ、周方向に等間隔離間して配置されているため、前記ノズル溝84を通じて凹部36の周方向に均等に圧力流体が導出されることとなる。
【0052】
このノズル溝84を通じて凹部36内へ導出された圧力流体は、コアンダ効果によって湾曲した第1及び第2湾曲面48、50に沿って径方向外側へ向かってワーク保持面16へと流れる。
【0053】
このボディ12を含む非接触搬送装置10を、例えば、ロボットアーム等によって移動させ、前記ハウジングをワークS1に対して略平行となるように接近させることで、前記ワークS1に対するワーク保持面16が接近していくに従って、該ワークS1と前記ワーク保持面16との間を高速で流れる圧力流体によって負圧が発生する。
【0054】
そして、この負圧によってワーク保持面16側(矢印A1方向)に向かって働く吸引力が発生し、ワークS1が前記ワーク保持面16側(矢印A1方向)へ吸引され、ストッパ機構18におけるパッド部材86のパッド部92に接触する。これにより、ワークS1がボディ12に対して軸方向に所定間隔離間した非接触な状態となり、前記ワーク保持面16と略平行に保持される(
図3中、二点鎖線形状参照)。
【0055】
そして、ワーク保持面16に対してワークS1を非接触な状態で保持した非接触搬送装置10をロボットアーム等を介して所望の位置へと移動させた後、第1ポート22への圧力流体の供給を停止することで、前記ワークS1の吸引状態が解除されて前記所望の位置へと載置される。
【0056】
また、ワーク保持面16に臨んだ状態でワークS1が吸引されている際、凹部36の中央に連通した検出用ポート74、検出用通路76及び連通孔72が同圧となり、第2ポート24を通じて前記凹部36内の圧力が圧力検出手段(図示せず)によって検出される。これにより、圧力検出手段で検出された圧力値に基づいて、ボディ12のワーク保持面16においてワークS1を吸引するのに十分な吸引力(圧力、揚力)が発生しているか確認することが可能となる。
【0057】
以上のように、第1の実施の形態では、非接触搬送装置10を構成するボディ12の孔部20にディフレクタ14が収納されると共に、前記ボディ12には、軸方向下端に形成されたワーク保持面16に対して窪んだ凹部36を備えている。また、ディフレクタ14には、その径方向外側へ拡径したフランジ部66の外縁部に複数のノズル溝84が形成され、該ノズル溝84は、ワーク保持面16側(矢印A2方向)に向かって窪んだ断面円弧状に形成され、且つ、周方向に沿って互いに等間隔離間して放射状に形成されると共に、凹部36の平坦面52に臨む導出路85を構成している。
【0058】
従って、断面円弧状のノズル溝84を周方向に沿って複数設け、このノズル溝84(導出路85)を通じて第1ポート22から導入された圧力流体を凹部36へと導出し、コアンダ効果によって第1及び第2湾曲面48、50に沿うようにワーク保持面16へと流通させることで、例えば、ノズル溝84を断面円形状や断面矩形状に形成した場合と比較し、該ノズル溝84に沿って圧力流体が流れる際の渦流の発生が抑制され、圧力損失が好適に低減される。
【0059】
その結果、ノズル溝84から凹部36へと圧力流体を安定した流れで流通させることで、前記凹部36からワーク保持面16へと所望の流量で圧力流体を流通させることができ、それに伴って、該ワーク保持面16に臨む位置においてより大きな吸引力を得ることができる。そのため、非接触搬送装置10のワーク保持面16に対してワークS1を非接触でより確実且つ安定的に保持して移送することが可能となる。
【0060】
さらに、ノズル溝84を有したディフレクタ14におけるフランジ部66の外縁部を、ボディ12における凹部36の平坦面52に当接するように設け、前記平坦面52に臨むように複数のノズル溝84(導出路85)を設けることで、前記ノズル溝84を第1湾曲面48に近接した位置に配置することができるため、圧力流体をコアンダ効果によって前記ノズル溝84から前記第1湾曲面48に沿ってワーク保持面16へと流通させることができる。
【0061】
さらにまた、断面円弧状のノズル溝84をディフレクタ14に形成し、ボディ12の平坦面52へと当接させることで、圧力流体の導出される導出路85を容易且つ高精度に構成することが可能となる。
【0062】
またさらに、ボディ12のワーク保持面16に対して吸引されたワークS1を保持可能な複数のストッパ機構18を備え、該ストッパ機構18のパッド部材86を、ボディ12の装着穴54へと挿入してピン部材88を挿入することで、径方向外側へ膨出した厚肉部96を拡径部58へと係合させて容易且つ確実に固定することができる。さらに、複数のストッパ機構18によってワーク保持面16に対して吸引されたワークS1を安定的に保持して移送することができる。
【0063】
また、ストッパ機構18を構成するパッド部材86を弾性材料から形成し、そのパッド部92を下方に向かって拡がったスカート形状とすることで、ワークS1がパッド部92へと接触した際に好適に追従させることができると共に、前記ワークS1を吸引する際、その吸引力に応じてワーク保持面16とワークS1との間の軸方向(矢印A1、A2方向)に沿った間隙変化に追従させることが可能となる。
【0064】
さらに、ボディ12の上端にサブポート26を備えているため、非接触搬送装置10の使用環境に応じて圧力流体を供給する配管の接続位置を自由に選択することが可能となる。
【0065】
さらにまた、ボディ12の第2ポート24が、ワーク保持面16に開口した凹部36と連通しているため、前記第2ポート24に対して圧力を検出可能な圧力検出手段を接続することで、前記ワーク保持面16に生じている圧力を検出することが可能となる。そのため、圧力検出手段によってワーク保持面16における吸引力の値を検出することで、ワークS1の吸引に必要十分な吸引力が発生しているか否かを容易且つ確実に確認することができる。
【0066】
またさらに、第2ポート24に対して圧力検出手段を接続する場合に限定されるものではなく、例えば、ワークS1をワーク保持面16に対して吸引する際、前記第2ポート24に対して負圧流体を供給することで、該負圧流体が連通孔72、検出用通路76及び検出用ポート74を通じて凹部36の中央へと供給される。その結果、第1ポート22から凹部36へと供給される圧力流体のコアンダ効果に加え、前記凹部36内に供給される負圧流体によって前記ワークS1に対する吸引力を高めることが可能となる。
【0067】
さらに、ワークS1の吸引状態を解除する際に、第1ポート22から凹部36への圧力流体の供給を停止するのと同時に、第2ポート24を通じて前記凹部36内へと正圧の圧力流体を供給することで、前記ワークS1の吸引状態をより迅速に解除して所望の位置に載置することが可能となる。
【0068】
さらにまた、非接触搬送装置10を構成するボディ12、ディフレクタ14及びストッパ機構18を、カーボンの含有された半導電性材料から形成することにより、例えば、ワークS1として半導体や基板等を搬送する際、静電気の発生を好適に防止することができるため、前記ワークS1の静電気による破損が回避される。また、ワークS1として衣料品を搬送する場合において、静電気がワークS1に帯電していたとしてもボディ12に対する貼り付きが好適に防止される。
【0069】
また、導出路85の径方向長さLを、ノズル溝84の軸方向深さHよりも大きく形成することで、前記導出路85から凹部36へと圧力流体を安定した流れで導出させ第1及び第2湾曲面48、50に沿って円滑に流通させることが可能となるため、より安定した吸引力を得ることができる。
【0070】
次に、第2の実施の形態に係る非接触搬送装置100を
図10A〜
図12に示す。なお、上述した第1の実施の形態に係る非接触搬送装置10と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0071】
この第2の実施の形態に係る非接触搬送装置100では、ワーク保持面16側(矢印A2方向)となるボディ102の下端に対して格子状の保持部104を有した第1アタッチメント部材106が着脱自在に設けられる点で、第1の実施の形態に係る非接触搬送装置10と相違している。
【0072】
この非接触搬送装置100は、
図10A〜
図12に示されるように、ボディ102の外周面に後述する第1アタッチメント部材106の凸部118の係合される係合孔108が形成される。係合孔108は、例えば、ボディ102の外周面に対して径方向内側へ断面半円状に窪み、前記凸部118の数量と同数(例えば、3個)で形成され、前記ボディ102の周方向に沿って互いに等間隔離間して設けられる。また、係合孔108は、ボディ102のワーク保持面16に対して所定高さだけ上方(矢印A1方向)となる位置に設けられている。
【0073】
一方、ボディ102に対して装着される第1アタッチメント部材106は、例えば、樹脂製材料から形成され、断面円形状に形成されたカバー壁110と、該カバー壁110の中央部に形成された円環部112と、前記カバー壁110の下端部と前記円環部112とを接続する複数の架橋部114とを含み、前記円環部112及び前記架橋部114が、ワークS2(
図12参照)を保持可能な保持部104として機能する。
【0074】
カバー壁110は、軸方向(矢印A1、A2方向)に所定高さを有した円筒状に形成され、ボディ102の外周径と略同一又は若干だけ大きな内周径で形成される。すなわち、カバー壁110がボディ102の外周側を覆うことが可能な大きさに形成される。
【0075】
また、カバー壁110には、その上端部側となる位置に径方向に傾動自在な複数の係合片116が形成され、該係合片116の内側には径方向内側に向かって突出した凸部118が形成される。凸部118は、例えば、半球状に形成され、ボディ102の係合孔108と周方向に沿って同一間隔で同数設けられ、該係合孔108に係合可能に形成される。また、係合孔108は、
図12に示されるように、ストッパ機構18を装着可能な装着穴54と連通するように形成されているため、例えば、
図9に示されるようなエア抜き穴62を設けることなく、前記装着穴54を前記係合孔108を通じて外部と連通させることが可能となる。
【0076】
円環部112は、例えば、ディフレクタ14のフランジ部66よりも若干だけ小さな直径で形成され、第1アタッチメント部材106がボディ102に装着された際、前記ボディ102及び前記ディフレクタ14と同軸状に配置される。
【0077】
架橋部114は、第1アタッチメント部材106の周方向に沿って互いに離間するように複数設けられ、その径方向内端が円環部112の外周部位に接続され、径方向外端がカバー壁110の軸方向下端に接続される。そして、架橋部114は、カバー壁110の延在方向(矢印A1、A2方向)に対して略直交するように延在すると共に、前記架橋部114及び前記円環部112が略同一平面上となるように形成される。
【0078】
すなわち、第1アタッチメント部材106は、その軸方向に沿った端部が円環部112及び複数の架橋部114から格子状に形成され、前記円環部112及び前記架橋部114の間が開口した複数の開口120となり、この開口120を通じて第1アタッチメント部材106の外部と内部とが軸方向(矢印A1、A2方向)に連通している。
【0079】
なお、保持部104は、上述したように円環部112と、該円環部112から径方向外側へ向かって放射状に延在する複数の架橋部114とから格子状に形成される場合に限定されるものではなく、例えば、第1湾曲面48に臨む範囲内であれば、複数の架橋部がお互いに交差するように設けられた網目状としてもよいし、複数の架橋部が互いに略平行に設けられたスリット状としてもよい。
【0080】
そして、
図12に示されるように、第1アタッチメント部材106は、ワーク保持面16を有したボディ102の下端に対して装着され、カバー壁110が前記ボディ102の外周面を覆うと共に、複数の架橋部114における径方向外端近傍がワーク保持面16へと当接することで、前記ボディ102に対して軸方向に位置決めされた状態となる。
【0081】
この状態で、複数の凸部118が係合孔108に対して係合されることで、ボディ102の下端を覆った状態で固定される。また、複数の架橋部114における径方向内端近傍及び円環部112は、ボディ102の凹部36に臨み、且つ、ディフレクタ14のフランジ部66に対して軸方向に所定距離だけ離間した状態に保持される。
【0082】
一方、ボディ102に装着された第1アタッチメント部材106を取り外す場合には、カバー壁110における複数の係合片116を、ボディ102の外周面から離間させるように径方向外側へとそれぞれ拡げることで、係合孔108に対する凸部118の係合状態を解除する。そして、第1アタッチメント部材106をボディ102のワーク保持面16から離間させる方向(矢印A2方向)に移動させることで取り外すことができる。
【0083】
以上のように、第2の実施の形態では、非接触搬送装置100を構成するボディ102の下端に対して着脱自在な第1アタッチメント部材106を設けることで、例えば、薄手の柔らかい布やシート等の可撓性や柔軟性を有するワークS2を吸着する場合に、凹部36からワーク保持面16へと流れる圧力流体によって生じた吸引力(揚力)が第1アタッチメント部材106の開口120を通じて外側へと働き、該吸引力によって前記ワークS2が前記円環部112及び架橋部114からなる保持部104によって吸着され保持される。
【0084】
これにより、可撓性や柔軟性を有したワークS2が、保持部104によって保持されることで凹部36内へと吸い込まれてしまうことが防止され吸引力が確実に維持されると共に、該ワークS2が前記保持部104へと接触することで変形が抑制される。
【0085】
その結果、薄手の柔らかい布やシート等がワークS2である場合でも、ボディ102のワーク保持面16側に第1アタッチメント部材106を取り付けることで、その保持部104において前記ワークS2の変形を防止して確実に吸着して搬送できると共に、前記保持部104で安定して吸着できるため、該ワークS2の吸着状態が不安定な際に生じるばたつき音を低減することが可能となる。
【0086】
また、第1アタッチメント部材106は、ボディ102に対して容易に着脱自在な構成であるため、ワークS1、S2の種類に応じて取り外しすることで様々な形態のワークS1、S2を単一の非接触搬送装置10で吸着することができる。
【0087】
さらに、
図13に示されるように、ボディ102のワーク保持面16にストッパ機構18を装着することで、保持部104に吸引されたワークS2をパッド部材86によってより確実に保持して搬送することが可能となる。
【0088】
次に、第3の実施の形態に係る非接触搬送装置150を
図14及び
図15に示す。なお、上述した第2の実施の形態に係る非接触搬送装置100と同一の構成要素には同一の参照符号を付して、その詳細な説明を省略する。
【0089】
この第3の実施の形態に係る非接触搬送装置150では、ワーク保持面16側(矢印A2方向)となるボディ102の下端に対して円環状の保持部152を有した第2アタッチメント部材154が着脱自在に設けられる点で、第2の実施の形態に係る非接触搬送装置100と相違している。
【0090】
この第2アタッチメント部材154は、例えば、樹脂製材料から形成され、断面円形状に形成されたカバー壁156と、該カバー壁156の下端部に対して径方向外側へと拡径して軸方向(矢印A2方向)へ円環状に延在したガイド壁158とを含み、該ガイド壁158が、ワークS1を保持可能な保持部152として機能する。
【0091】
ガイド壁158は、ワーク保持面16に対して離間する方向(矢印A2方向)へ向かって所定高さで形成され、カバー壁156に対して少なくとも同一径以上となるように形成されると共に、その周方向に沿って径方向に開口した複数の開口孔160を有している。
【0092】
そして、
図15に示されるように、第2アタッチメント部材154は、ワーク保持面16を有したボディ102の下端に対して装着され、カバー壁156が前記ボディ102の外周面を覆うと共に、該ボディ102のワーク保持面16に対して軸方向(矢印A2方向)に突出するようにガイド壁158が設けられた状態で位置決めされ固定される。
【0093】
以上のように、第3の実施の形態では、非接触搬送装置150を構成するボディ102の下端に対して着脱自在な第2アタッチメント部材154を設けることで、例えば、円板状のワークS1を吸着する際に、搬送時における加減速の影響を受けた場合であっても、前記ワークS1が外周側に設けられたガイド壁158によって常にワーク保持面16に臨む位置に保持され、該ワーク保持面16に対して径方向外側へ飛び出してしまうことがない。そのため、上記のような場合でもワークS1を確実に搬送することが可能となる。
【0094】
また、ストッパ機構18を設けていない場合であっても、ガイド壁158によってワークS1の外周側を保持することで、ワーク保持面16に対して非接触な状態で確実に所定の位置へと搬送することが可能となる。
【0095】
なお、本発明に係る非接触搬送装置は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。