特開2021-130166(P2021-130166A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭精機工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開2021130166-加工機 図000003
  • 特開2021130166-加工機 図000004
  • 特開2021130166-加工機 図000005
  • 特開2021130166-加工機 図000006
  • 特開2021130166-加工機 図000007
  • 特開2021130166-加工機 図000008
  • 特開2021130166-加工機 図000009
  • 特開2021130166-加工機 図000010
  • 特開2021130166-加工機 図000011
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-130166(P2021-130166A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】加工機
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/02 20060101AFI20210813BHJP
   B23P 21/00 20060101ALI20210813BHJP
   B30B 1/14 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
   B23P19/02 B
   B23P21/00 307G
   B30B1/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-26945(P2020-26945)
(22)【出願日】2020年2月20日
(71)【出願人】
【識別番号】000116976
【氏名又は名称】旭精機工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112472
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 弘
(74)【代理人】
【識別番号】100202223
【弁理士】
【氏名又は名称】軸見 可奈子
(72)【発明者】
【氏名】野口 洋平
【テーマコード(参考)】
3C030
4E090
【Fターム(参考)】
3C030AA05
3C030AA13
3C030BC19
3C030DA15
3C030DA22
4E090AA01
4E090AB01
4E090BA02
4E090CC02
4E090CD02
4E090GA03
(57)【要約】
【課題】通常は、共通の駆動源で駆動される第1ツール及び第2ツールの一方のみを、必要に応じて駆動することが可能な加工機を提供する。
【解決手段】本実施形態の加工機10は、下側プレスツール15と上側プレスツール16と搬送ツール17とからなる複数のツールを有し、これら複数のツールが共通のサーボモータ95に連結されて同期して動作する。また、これら複数のツールのうち搬送ツール17には、エアシリンダ48が連結されている。そして、本実施形態の加工機10では、サーボモータ95のみを駆動して複数のツールを往復動させる通常モードと、エアシリンダ48を駆動して複数のツールのうちの搬送ツール17のみに往復動作を繰り返させる特別モードとに切り替えるモード切替部が設けられている。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特別ツールとその他のツールとからなり、往復動作を繰り返し、協動してワークを加工する複数のツールと、
第1駆動源と、
前記第1駆動源の動力を前記その他のツールに伝達する第1動力伝達経路と、
前記第1動力伝達経路に接続されるか、又は、前記第1動力伝達経路と共に前記第1駆動源に対して並列に接続され、前記第1駆動源の動力を前記複数のツールのうち前記特別ツールのみに伝達する第2動力伝達経路と、を備える加工機であって、
前記第2動力伝達経路に含まれて往復動作を繰り返す第2中間部品と、
前記第2中間部品を往復動作の一方側に付勢する付勢手段と、
前記付勢手段の付勢力によって前記第2中間部品が押し付けられ、その付勢力に抗するように前記第1駆動源からの動力を前記第2中間部品に伝達する第1中間部品と、
前記第2動力伝達経路のうち前記第2中間部品から前記特別ツールまでの何れかの動力伝達部品に連結される第2駆動源と、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源を駆動制御する駆動制御部と、
前記駆動制御部に設けられ、前記第1駆動源及び前記第2駆動源のうち前記第1駆動源のみを駆動して、その動力によって前記第2駆動源を従動させながら前記複数のツールに前記往復動作を繰り返させる通常モードと、前記複数のツールのうち前記その他のツールを予め定められた位置に保持すると共に、前記第2駆動源のみを駆動して、前記複数のツールのうち前記特別ツールのみに前記往復動作を繰り返させる特別モードとに切り替えるモード切替部と、を備える加工機。
【請求項2】
前記第1中間部品は、一方向に回転するカムであり、
前記第2中間部品は、揺動可能又は直線移動可能に支持され、前記カムの外周面に当接して往復動作し、
前記第1駆動源は、サーボモータであり、
前記第2駆動源は、前記第1中間部品及び前記第2中間部品を支持する固定ベースと前記第2中間部品との間に架け渡されるエアシリンダである請求項1に記載の加工機。
【請求項3】
上下方向又は斜め上下方向に延び、複数のワークを1列に並んだ状態に支持すると共に、下端からワークを排出するワークガイドと、前記ワークガイドの下端に対してワーク1つ分の隙間を空けて対向する固定テーブルとを備え、
前記特別ツールは、前記往復動作を繰り返す度に、前記ワークガイドと前記固定テーブルとの間を通過し、前記ワークガイドから前記ワークを1つずつ受け取って、前記ワークガイドの下端から離れたプレス位置まで移動し、
前記通常モードでは、前記プレス位置に配置された前記ワークが前記その他のツールによってプレスされ、前記特別モードでは、前記プレス位置に配置された前記ワークがプレスされずに回収される請求項1又は2に記載の加工機。
【請求項4】
前記固定テーブルの前記プレス位置を上下に貫通する第1貫通孔と、
前記第1駆動源及び前記第2駆動源とは別の第3駆動源から動力を受けて回転すると共に、一部が前記第1貫通孔に下方から対向する回転テーブルと、
前記回転テーブルを上下に貫通し、その回転中心回りに間隔を開けて複数設けられ、前記第1貫通孔の同軸上に位置し得る複数の第2貫通孔と、を備え、
前記ワークは、円柱状をなして前記ワークガイドに一列に並べて収容される第2ワークと、前記第2ワークが圧入される圧入孔を有する第1ワークとからなり、
前記その他のツールは、前記固定テーブル及び前記回転テーブルを挟んで上下に対向配置される上側プレスツールと下側プレスツールとからなり、
前記回転テーブルは、前記複数の第2貫通孔に前記第1ワークを上側から受容して、それら第1ワークが順次前記第1貫通孔の同軸下方に移動されるように回動し、
前記下側プレスツールは、前記第2貫通孔内の前記第1ワークを押し上げて前記第1貫通孔内のワーク受容部まで移動し、
前記特別ツールは、前記ワークガイドから排出される前記第2ワークを前記第1ワークの前記圧入孔の同軸上方まで移動し、
前記上側プレスツールは、前記下側プレスツールと協動して前記第2ワークを前記第1ワークの前記圧入孔に圧入してから、その第1ワークを前記第2貫通孔内まで移動する請求項3に記載の加工機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ツールが往復動作を繰り返してワークを加工する加工機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の加工機として、共通の駆動源で駆動される第1ツール及び第2ツールが協動してワークを加工するものが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016−182640号公報(段落[0019]、[0020])
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した従来の加工機では、ワークの種類やツールを変更するときに、第1ツール及び第2ツールの一方のツールのみによる加工、搬送又は支持等の動作確認や調整等を行うために、一方のツールのみの駆動が望まれることがあるが、従来の加工機では、その望みに応えることができなかった。そこで、本開示では、通常は、共通の駆動源で駆動される第1ツール及び第2ツールの一方のみを、必要に応じて駆動することが可能な加工機を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためになされた請求項1の発明は、特別ツールとその他のツールとからなり、往復動作を繰り返し、協動してワークを加工する複数のツールと、第1駆動源と、前記第1駆動源の動力を前記その他のツールに伝達する第1動力伝達経路と、前記第1動力伝達経路に接続されるか、又は、前記第1動力伝達経路と共に前記第1駆動源に対して並列に接続され、前記第1駆動源の動力を前記複数のツールのうち前記特別ツールのみに伝達する第2動力伝達経路と、を備える加工機であって、前記第2動力伝達経路に含まれて往復動作を繰り返す第2中間部品と、前記第2中間部品を往復動作の一方側に付勢する付勢手段と、前記付勢手段の付勢力によって前記第2中間部品が押し付けられ、その付勢力に抗するように前記第1駆動源からの動力を前記第2中間部品に伝達する第1中間部品と、前記第2動力伝達経路のうち前記第2中間部品から前記特別ツールまでの何れかの動力伝達部品に連結される第2駆動源と、前記第1駆動源及び前記第2駆動源を駆動制御する駆動制御部と、前記駆動制御部に設けられ、前記第1駆動源及び前記第2駆動源のうち前記第1駆動源のみを駆動して、その動力によって前記第2駆動源を従動させながら前記複数のツールに前記往復動作を繰り返させる通常モードと、前記複数のツールのうち前記その他のツールを予め定められた位置に保持すると共に、前記第2駆動源のみを駆動して、前記複数のツールのうち前記特別ツールのみに前記往復動作を繰り返させる特別モードとに切り替えるモード切替部と、を備える加工機である。
【0006】
請求項2の発明は、前記第1中間部品は、一方向に回転するカムであり、前記第2中間部品は、揺動可能又は直線移動可能に支持され、前記カムの外周面に当接して往復動作し、前記第1駆動源は、サーボモータであり、前記第2駆動源は、前記第1中間部品及び前記第2中間部品を支持する固定ベースと前記第2中間部品との間に架け渡されるエアシリンダである請求項1に記載の加工機である。
【0007】
請求項3の発明は、上下方向又は斜め上下方向に延び、複数のワークを1列に並んだ状態に支持すると共に、下端からワークを排出するワークガイドと、前記ワークガイドの下端に対してワーク1つ分の隙間を空けて対向する固定テーブルとを備え、前記特別ツールは、前記往復動作を繰り返す度に、前記ワークガイドと前記固定テーブルとの間を通過し、前記ワークガイドから前記ワークを1つずつ受け取って、前記ワークガイドの下端から離れたプレス位置まで移動し、前記通常モードでは、前記プレス位置に配置された前記ワークが前記その他のツールによってプレスされ、前記特別モードでは、前記プレス位置に配置された前記ワークがプレスされずに回収される請求項1又は2に記載の加工機である。
【0008】
請求項4の発明は、前記固定テーブルの前記プレス位置を上下に貫通する第1貫通孔と、前記第1駆動源及び前記第2駆動源とは別の第3駆動源から動力を受けて回転すると共に、一部が前記第1貫通孔に下方から対向する回転テーブルと、前記回転テーブルを上下に貫通し、その回転中心回りに間隔を開けて複数設けられ、前記第1貫通孔の同軸上に位置し得る複数の第2貫通孔と、を備え、前記ワークは、円柱状をなして前記ワークガイドに一列に並べて収容される第2ワークと、前記第2ワークが圧入される圧入孔を有する第1ワークとからなり、前記その他のツールは、前記固定テーブル及び前記回転テーブルを挟んで上下に対向配置される上側プレスツールと下側プレスツールとからなり、前記回転テーブルは、前記複数の第2貫通孔に前記第1ワークを上側から受容して、それら第1ワークが順次前記第1貫通孔の同軸下方に移動されるように回動し、前記下側プレスツールは、前記第2貫通孔内の前記第1ワークを押し上げて前記第1貫通孔内のワーク受容部まで移動し、前記特別ツールは、前記ワークガイドから排出される前記第2ワークを前記第1ワークの前記圧入孔の同軸上方まで移動し、前記上側プレスツールは、前記下側プレスツールと協動して前記第2ワークを前記第1ワークの前記圧入孔に圧入してから、その第1ワークを前記第2貫通孔内まで移動する請求項3に記載の加工機である。
【発明の効果】
【0009】
本開示の加工機では、通常は、共通の第1駆動源で駆動される複数のツールのうち特別ツールのみを必要に応じて第2駆動源で駆動することが可能になる。
【0010】
請求項2の加工機では、第1駆動源がサーボモータであるので特別モードでその他のツールの停止位置を任意の位置に制御することができる。一方、第2駆動源は、エアシリンダであるので、コストが抑えられる。
【0011】
請求項3の構成では、通常モードでは、ワークガイドから1つずつ排出されるワークを特別ツールがプレス位置まで移動し、そのプレス位置のワークをその他のツールがプレスする。このように、通常モードでは、複数のツールが協動してワークをプレスする。また、特別モードでは、特別ツールのみが往復動作を繰り返し、ワークガイドから複数のワークを排出することができる。
【0012】
請求項4の構成では、通常モードで、複数の第1ワークの圧入孔に第2ワークを順次圧入していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本開示の実施形態に係るワークの斜視図
図2】加工機の概略図
図3】加工機の一部の側断面図
図4】加工機のプレス位置の近傍の側断面図
図5】ワークをプレスした状態の加工機の側断面図
図6】プレス済みのワークをワーク収容部に収容した状態の加工機の側断面図
図7】ワークを回収している状態の加工機の側断面図
図8】加工機の動力系統の概念図
図9】加工機のコントローラの構成を示すブロック図
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図9に示された本実施形態の加工機10について説明する。図1には、本実施形態の加工機10にてプレス加工されるワーク90の一例が示されている。このワーク90は、第1ワーク91と第2ワーク92とからなる。第1ワーク91は、例えば、金属製であって、扁平な円柱形状をなし、上面中心部に円形の圧入孔91Aを有する。一方、第2ワーク92は、例えば、樹脂の成形品又は粉体を固めたものであって、圧入孔91Aより僅かに径が大きな円柱形状になっている。そして、第1ワーク91の圧入孔91Aに第2ワーク92を圧入するために本実施形態の加工機10が使用される。
【0015】
図2に示すように、加工機10は、ベーステーブル20の上面に円形の回転テーブル11を有し、その回転テーブル11は鉛直な回転中心軸J1を中心に回転する。また、回転テーブル11は、その外縁部を複数に等分割する位置に、複数の第2貫通孔12を有している。図4に示すように、各第2貫通孔12は、回転テーブル11を上下に貫通し、その上下方向の途中位置より上側が段付き状に拡径したワーク収容部12Aになっていて、そこに第1ワーク91が収容される。
【0016】
図2に示すように、ベーステーブル20の上面のうち回転テーブル11より外側部分からは、複数の脚部83(図3参照)が起立し、それらの上に固定テーブル81が差し渡されている。また、固定テーブル81の一部は、例えば回転テーブル11の回転中心軸J1に向かって片持ち梁状に張り出し、回転テーブル11の一部を上方から覆っている。
【0017】
図4に示すように、固定テーブル81には、回転テーブル11の複数の第2貫通孔12が通過する領域の真上に第1貫通孔14が形成されている。第1貫通孔14は、上側から順番にワーク通過部14A、ワーク受容部14B及びワークガイド部14Cを連ねてなる。ワーク通過部14Aは、第2ワーク92より僅かに大きな円形をなしている。ワーク受容部14Bは、第1ワーク91が丁度嵌合される大きさの円形をなしている。ワークガイド部14Cは、ワーク受容部14Bから下方に向かうに従って徐々に拡径している。
【0018】
第1貫通孔14の同軸上で固定テーブル81より下方には、下側プレスツール15が上下に移動可能に支持されている。下側プレスツール15は、例えば上下方向に延びる断面円形のシャフトであって、図5に示すように、ワーク収容部12A内の第1ワーク91を押し上げてワーク受容部14Bへと押し込む。その際、第1ワーク91は、ワークガイド部14Cによってワーク受容部14Bに案内され、ワーク受容部14Bとワーク通過部14Aとの間の段差面に当接して位置決めされる。
【0019】
図4に示すように、第1貫通孔14の同軸上で下側プレスツール15より上側には、上側プレスツール16が上下に移動可能に支持されている。上側プレスツール16は、下側プレスツール15より細いシャフトであって、次述する搬送ツール17にて第1貫通孔14の上方に搬送された第2ワーク92を、図5に示すように、第1貫通孔14内の第1ワーク91の圧入孔91Aへと押し込む。即ち、下側プレスツール15と上側プレスツール16とによって第1ワーク91と第2ワーク92とからなるワーク90がプレス加工される。以下の説明において、第1ワーク91と第2ワーク92とがプレスされる位置、つまり、下側プレスツール15及び上側プレスツール16と同軸上となる位置を、「プレス位置」ということとする。
【0020】
図2に示すように、固定テーブル81の上面には、回転テーブル11の径方向に延びるガイド溝81Mが形成され、前述した第1貫通孔14は、ガイド溝81Mの底面に開口している。また、ガイド溝81Mの深さは、第2ワーク92の高さの2倍程度になっている。そして、ガイド溝81M内に搬送ツール17がスライド可能に支持されている。具体的には、搬送ツール17は、例えば、ガイド溝81Mに丁度収まる幅で回転テーブル11の径方向に延びる帯板状をなし、固定テーブル81の上面に固定された上面プレート82(図4参照)によって、上方への移動を規制されている。そして、搬送ツール17は、回転テーブル11の回転中心軸J1に近づく第1位置と、その回転中心軸J1から離れる第2位置との間をスライドする。
【0021】
図5に示すように、搬送ツール17には、第2位置に配置されたときに、第1貫通孔14の真上となる位置にワーク受取孔18が形成されている。ワーク受取孔18は、例えば、第1貫通孔14のワーク通過部14Aと同じ大きさの円形をなしている。そして、搬送ツール17が第2位置に配置されたときに、第1貫通孔14とワーク受取孔18とが連続した状態になる。
【0022】
図4に示すように、上面プレート82には、第1位置の搬送ツール17におけるワーク受取孔18の真上となる位置に、ワークガイド93が固定されている。ワークガイド93は、上下方向に延び、その内側はワーク受取孔18と略同一内径のワーク収容孔93Aになっていて、そこに複数の第2ワーク92が一列に積み上げられた状態で収容される。
【0023】
ワークガイド93の下端部は、上面プレート82を貫通し、ワークガイド93の下端面は上面プレート82の下面と面一になっている。そして、ワーク収容孔93Aの下端開口93Bが、ガイド溝81Mの底面に対して第2ワーク92の1つ分の隙間を空けて対向している。これにより、搬送ツール17が第1位置に配置されたとき以外は、図5に示すように、搬送ツール17によってワーク収容孔93Aの下端開口93Bが閉塞され、図4に示すように、搬送ツール17が第1位置に配置されると、ワーク収容孔93Aの下端開口93Bから搬送ツール17のワーク受取孔18へと1つの第2ワーク92が受け渡される。
【0024】
本実施形態の加工機10では、回転テーブル11が一定角度ずつ一方向に間欠的に回転して複数の第1ワーク91が順次、プレス位置に搬送する動作と、搬送ツール17がワークガイド93から第2ワーク92を受け取ってプレス位置に搬送する動作と、下側プレスツール15が第1ワーク91を第1貫通孔14内にリフトアップし、その第1ワーク91の圧入孔91Aに上側プレスツール16が第2ワーク92を圧入し、さらに、第2ワーク92が圧入された第1ワーク91を下側プレスツール15と上側プレスツール16とが挟んだ状態で降下してワーク収容部12Aに収める動作とが同期して繰り返し行われる。そのために下側プレスツール15、上側プレスツール16及び搬送ツール17からなる複数のツールは、共通するサーボモータ95に機械的に連結されると共に、そのサーボモータ95と回転テーブル11の駆動源であるサーボモータ94とが連動するように位置制御される構成になっている。
【0025】
加工機10の動力伝達系統を模式的に示した図8と具体的に示した図3とを参照して、加工機10の動力伝達系統について説明する。図8に示すように、上記したサーボモータ94,95は共に減速機94G,95Gを一体に備える。そして、一方のサーボモータ94の減速機94Gの回転出力部に回転テーブル11が固定されて回転駆動される。また、他方のサーボモータ95の減速機95Gの回転出力部には、第1駆動シャフト31と第2駆動シャフト32とが並列に接続されている。それら第1駆動シャフト31及び第2駆動シャフト32は、例えば互いに平行になって水平方向に延び、ベーステーブル20に回転可能に支持されている。そして、サーボモータ95の減速機95Gの回転出力部に第1駆動シャフト31が一体回転可能に連結されると共に、第1駆動シャフト31と第2駆動シャフト32とが1対のプーリ60とタイミングベルト61とにより連動回転可能に連結されている。
【0026】
第1駆動シャフト31には、その回転中心から離れた位置を旋回するクランク軸部31Aが備えられている。そして、下側プレスツール15を保持するツールホルダ35の下端部とクランク軸部31Aとに、リンク34の上端部と下端部とがヒンジ連結されている。また、ツールホルダ35は、ガイド機構35Gによって上下方向に移動可能に支持され、下側プレスツール15はツールホルダ35から上方に延びている。これらにより、サーボモータ95の動力が下側プレスツール15に伝達されて、下側プレスツール15が第1駆動シャフト31の回転に伴って上下方向に往復移動する。
【0027】
第2駆動シャフト32には、第1カム37と第2カム38が一体回転可能に備えられている。第1カム37に対しては、ロッド42の下端部のコロ42Cが上方から当接している。そのロッド42は、ベーステーブル20に備えたガイド部42Gによって上下方向の移動のみを許容された状態で支持されている。また、ロッド42の上端部は、レバー43の一端部に連結されている。
【0028】
レバー43は、略水平方向に延び、その長手方向の途中位置を回動可能に支持されている。また、レバー43の一端部には、レバー43の長手方向に延びる長孔43Aが形成され、ロッド42の上端部に固定されたピン42Pが長孔43Aに係合することで、上述の如く、ロッド42の上端部は、レバー43の一端部に連結されている。
【0029】
さらには、レバー43のうちロッド42との連結部分とレバー43の回動中心軸43Jとの間には、引張コイルばね41の一端部が連結され、その引張コイルばね41の他端部はベーステーブル20に固定されている。そして、引張コイルばね41の弾発力によってロッド42の下端のコロ42Cが、第1カム37に押し付けられている。
【0030】
レバー43の他端部は、ツールホルダ44の上端部に連結されている。ツールホルダ44は、固定テーブル81上のガイド部44Gによって上下方向に移動可能に支持されている。そして、上側プレスツール16は、ツールホルダ44に保持されてそのツールホルダ44から下方に延びている。また、ツールホルダ44の上端部には、例えば、略水平に延びる長孔44Aが形成されている。そして、レバー43の他端部に固定されたピン43Pが長孔44Aに係合することで、上述の如く、レバー43の他端部がツールホルダ44の上端部に連結されている。これらにより、上側プレスツール16にサーボモータ95の動力が伝達されて、第2駆動シャフト32の回転に伴って上側プレスツール16が上下に往復移動する。
【0031】
第2カム38に対しては、レバー45の下端部のコロ45Cが側方から当接している。そのレバー45は、上下方向に延び、その上下方向における途中位置を回動可能に支持され、その回動中心軸45Jは、第2駆動シャフト32の斜め上方に位置している。また、レバー45のうち回動中心軸45Jより上方の途中位置には、引張コイルばね47の一端部が連結され、その引張コイルばね41の他端部がベーステーブル20に固定されて、その引張コイルばね47の弾発力によってレバー45の下端のコロ45Cが、第2カム38に押し付けられている。そして、レバー45の上端部と搬送ツール17とに、リンク46の一端部と他端部とがヒンジ連結されている。なお、搬送ツール17は、前述の如く固定テーブル81のガイド溝81Mによって水平方向のみに移動可能に支持されている。これらにより、搬送ツール17にサーボモータ95の動力が伝達されて、第2駆動シャフト32の回転に伴って搬送ツール17が水平に往復移動する。
【0032】
このように本実施形態の加工機10では、下側プレスツール15と上側プレスツール16と搬送ツール17とからなる複数のツールが共通のサーボモータ95に連結されて同期して動作する。なお、本実施形態では、搬送ツール17が特許請求の範囲の「特別ツール」に相当し、下側プレスツール15と上側プレスツール16とが、特許請求の範囲の「その他のツール」に相当し、サーボモータ95が特許請求の範囲の「第1駆動源」に相当し、サーボモータ94が「第3駆動源」に相当する。また、本実施形態では、特許請求の範囲の「第1動力伝達経路」は、第1駆動シャフト31とリンク34とツールホルダ35とプーリ60とタイミングベルト61と第2駆動シャフト32と第1カム37とロッド42とレバー43とツールホルダ44とを含んでなり、特許請求の範囲の「第2動力伝達経路」は、第2カム38とレバー45とリンク46とを含んでなり、さらに、第2カム38が特許請求の範囲の「第1中間部品」に相当し、レバー45が特許請求の範囲の「第2中間部品」に相当する。
【0033】
ところで、本実施形態の加工機10では、ワークガイド93に収容された第2ワーク92は、そのワークガイド93の下端からしか取り出せない構造になっている。そして、ワークガイド93から複数の第2ワーク92を取り出すには、搬送ツール17を往復移動する必要がある。これに対し、本実施形態の加工機10には、下側プレスツール15と上側プレスツール16とを停止した状態で搬送ツール17のみを往復移動させてワークガイド93から複数の第2ワーク92を取り出すための構成が備えられている。以下、その構成に関して説明する。
【0034】
図2に示すように、回転テーブル11には、その周方向の一箇所を切り欠いて回収樋79が固定されている。回収樋79は、隣合う1対のワーク収容部12A同士の中央となる位置に配置され、例えば上下方向に対して傾斜して延びる角溝状をなし、その上端部が回転テーブル11に固定されている。
【0035】
また、搬送ツール17を、サーボモータ95から下側プレスツール15及び上側プレスツール16へと動力を伝達する第1動力伝達経路から切り離して駆動するために、第1動力伝達経路に接続されて搬送ツール17のみにサーボモータ95の動力を伝達する第2動力伝達経路に第2駆動源が接続されている。具体的には、図3に示すように、第2動力伝達経路に含まれる第2中間部品としてのレバー45に、第2駆動源としてのエアシリンダ48が連結され、第1中間部品としての第2カム38からレバー45を切り離して駆動することができるようになっている。
【0036】
詳細には、図3に示すように、エアシリンダ48は、シリンダ部48Aにピストンロッド48Bを直動可能に嵌合してなる。そして、レバー45のうち回動中心軸45Jより上側となる位置に、シリンダ部48Aの先端面から突出するピストンロッド48Bの先端部がヒンジ連結され、シリンダ部48Aの基端部がベーステーブル20にヒンジ連結されている。また、シリンダ部48Aの先端寄り位置には、シリンダ部48A内に連通するパイプジョイント48Cが備えられ、そのパイプジョイント48Cにパイプを介して図9に示した電磁弁49が接続されている。この電磁弁49は、3つのポートを備える所謂、三方弁であって、その第1ポート49Aは、パイプを介してエアシリンダ48のパイプジョイント48Cに接続され、第2ポート49Bは、パイプを介してコンプレッサ又は工場の圧縮エアー供給ラインに接続され、第3ポート49Cは、外気に開放されている。
【0037】
そして、電磁弁49が、第1ポート49Aと第2ポート49Bとが連通した第1連通状態にされると、シリンダ部48A内に圧縮エアーが供給されて、ピストンロッド48Bが、引張コイルばね47の弾発力に抗してレバー45を引っ張って回動させる。また、電磁弁49が、第1ポート49Aと第3ポート49Cとが連通した第2連通状態にされると、シリンダ部48A内が外部と連通し、エアシリンダ48は動力を出力せず、レバー45に対して従動するようにピストンロッド48Bがシリンダ部48Aに対して直動する。
【0038】
本実施形態の加工機10には、図9に示すように、コントローラ120に備えたコンソール121によって通常モードと、特別モードとに切り替え可能になっている。そして、通常モードが選択されると、コントローラ120の制御部124が、サーボモータ94とサーボモータ95とが同期して動作するように制御し、上記したように第1ワーク91に第2ワーク92が順次組み付けられる。
【0039】
一方、特別モードが選択されると、図7に示すように、回収樋79が第1貫通孔14の真下に配置された位置で回転テーブル11が停止するように、コントローラ120の制御部124がサーボモータ94を位置制御する。また、制御部124は、第2カム38とレバー45(詳細には、レバー45のコロ45C)との当接位置が、第2カム38の回転中心に最も接近する回転位置で第2カム38が停止するようにサーボモータ95を位置制御すると共に、第2カム38の回転位置に合わせて、下側プレスツール15及び上側プレスツール16を所定の位置に保持する。なお、特別モードにおいて、サーボモータ95は、第2カム38とレバー45との当接位置が、第2カム38の回転中心に最も接近する回転位置で第2カム38を停止後、電源を落とした状態であってもよいし、電源を落とさずに前記回転位置に第2カム38を保持した状態であってもよい。
【0040】
さらに、制御部124は、電磁弁49が上記した第1連通状態と第2連通状態とに交互に切り替わるように電磁弁49を制御する。これにより、搬送ツール17が第1位置と第2位置との間を往復移動し、ワークガイド93内の複数の第2ワーク92がプレス位置に順次搬送され、回収樋79内に落下する。これにより、ワークガイド93内の複数の第2ワーク92が回収される。
【0041】
ここで、制御部124は、特別モードが選択された場合にプログラムを実行し、回転テーブル11の停止位置や、第2カム38の回転位置を、前述したように制御する。また、プログラムには、コンソール121に表示されるストップボタンが操作されるまで、電磁弁49を第1連通状態と第2連通状態とに交互に切り替えるように制御する処理が設けられていて、作業者にてコンソール121のストップボタンが操作されるまで特別モードが継続される。なお、前記構成に替えて、例えば、電磁弁49を第1連通状態と第2連通状態とに交互に切り替える回数を予め設定しておき、予め設定された回数終了後に特別モードが終了する構成であってもよい。
【0042】
なお、本実施形態では、加工機10を通常モードで動作中に、第2貫通孔12(詳細には、ワーク収容部12A)に第1ワーク91が収容されていない状態でプレス位置に配置された場合、第2貫通孔12に第1ワーク91が収容されているか否かを検出するセンサの検出結果に基づいて、制御部124が下側プレスツール15、上側プレスツール16及び搬送ツール17を駆動させないようにサーボモータ95を待機させる構成となっている。
【0043】
本実施形態の加工機10の構成に関する説明は以上である。上記したように本実施形態の加工機10では、通常は、サーボモータ95を共通の駆動源にして駆動される複数のツールが、それら複数のツールに含まれる搬送ツール17のみを駆動する必要がある場合に、サーボモータ95とは別の駆動源としてのエアシリンダ48で駆動することが可能になる。これにより、例えば、搬送ツール17にて第2ワーク92の搬送処理のみを行って、ワークガイド93から複数の第2ワーク92を取り出すことができる。また、複数のツールの共通の駆動源がサーボモータ95であるので、特別モードで搬送ツール17以外のその他のツールの停止位置を任意の位置に制御することができる。一方、特別モードで使用される駆動源はエアシリンダ48であるので、コストが抑えられる。
【0044】
なお、本実施形態では、上記した制御部124と電磁弁49を主要部とするエアー駆動回路と、サーボモータ94,95のサーボアンプとから特許請求の範囲に係る駆動制御部122が構成され、コンソール121が特許請求の範囲の「モード切替部」に相当する。
【0045】
[他の実施形態]
(1)上記実施形態の回転テーブル11には、図2に示すように、複数の第2貫通孔12が等間隔に配置されていたが、例えば、第2貫通孔12は、2つずつセットになって、この2つずつのセットが等間隔に配置された構成であってもよい。
【0046】
(2)上記実施形態では、回転テーブル11に回収樋79が設けられた構成になっていたが、回収樋79を設けない構成であってもよい。その場合、回転テーブル11の回転位置に関係なく第2ワーク92を排出することができる。また、その際、固定テーブル81の下方にトレー等を配置することで、容易に複数の第2ワーク92を回収することができる。
【0047】
(3)上記実施形態では、第2駆動源としてエアシリンダ48を例示したが、例えば、ソレノイドであってもよい。
【0048】
(4)上記実施形態では、エアシリンダ48がレバー45に連結されていたが、例えば、リンク46に連結されていてもよいし、搬送ツール17に連結されていてもよい。
【0049】
(5)上記実施形態では、第1中間部品が第2カム38で構成され、第2中間部品がレバー45で構成され、レバー45に第2駆動源としてのエアシリンダ48が連結されていたが、例えば、以下の構成であってもよい。即ち、レバー46を長手方向で第1中間部品と第2中間部品に分割して、搬送レバー17が連結される第2中間部品を第1中間部品に対して接離可能に係合すると共に、第2中間部品が第1中間部品に接近するように付勢部材にて付勢し、さらに、第2中間部品にエアシリンダ48を連結した構成とすればよい。
【0050】
(6)上記実施形態では、複数のツールのうち特別ツール(搬送ツール17)のみを駆動して、ワークガイド93から第2ワーク92を排出する例を説明したが、例えば、複数のツールのうち特別ツールのみを駆動して、プレス加工、支持の動作確認や調整を行う構成であってもよい。
【符号の説明】
【0051】
10 加工機
11 回転テーブル
12 第2貫通孔
14 第1貫通孔
14B ワーク受容部
15 下側プレスツール(その他のツール)
16 上側プレスツール(その他のツール)
17 搬送ツール(特別ツール)
38 第2カム(第1中間部品)
45 レバー(第2中間部品)
47 引張コイルばね(付勢手段)
48 エアシリンダ(第2駆動源)
81 固定テーブル
81M ガイド溝
82 上面プレート
83 脚部
90 ワーク
91 第1ワーク
91A 圧入孔
92 第2ワーク
93 ワークガイド
93B 下端開口
94 サーボモータ(第3駆動源)
95 サーボモータ(第1駆動源)
120 コントローラ
121 コンソール(モード切替部)
124 制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9