【解決手段】研磨材回収部20から導入された回収研磨材70’と,砥粒供給器13から導入された砥粒72を混合して,回収研磨材70’の核体71の表面に砥粒72を付着させる混合器11と,前記混合器11による混合後の前記回収研磨材70’に,例えば回転するローラ123,123間に形成された,流路面積が徐々に狭まる絞り流路121を集合状態で通過させることにより,前記核体71の表面に前記砥粒72を押圧して結合させる結合器12を備えた弾性研磨材再生装置10を,循環式のブラスト加工装置1に設け,循環使用される弾性研磨材の全部,又は一部を再生する。
広間隔部から狭間隔部に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの押圧面間に前記絞り流路を形成し,前記混合工程後の前記核体を,前記広間隔部から前記狭間隔部に向かって前記絞り流路を通過させることにより前記結合工程を実行することを特徴とする請求項1記載の弾性研磨材の製造方法。
前記押圧面の少なくとも一方を円筒状のローラの外周面により形成し,前記ローラの外周面によって形成された前記押圧面が,前記絞り流路内を前記広間隔部側から狭間隔部側に向かって移動するように前記ローラを回転させながら前記結合工程を実行することを特徴とする請求項2記載の弾性研磨材の製造方法。
前記絞り流路を複数直列に配置し,前記混合工程後の前記核体に,上流側に設けた1の絞り流路を通過させた後,更に該1の絞り流路の下流側に設けた他の絞り流路を通過させて,前記結合工程における前記核体の表面に対する前記砥粒の押圧を,前記絞り流路の形成数に対応した回数で複数回行うことを特徴とする請求項1〜3いずれか1項記載の弾性研磨材の製造方法。
前記1の絞り流路の狭間隔部の流路面積に対し,前記他の絞り流路の狭間隔部の流路面積を狭くして,前記結合工程における前記核体の表面に対する前記砥粒の押圧力を段階的に高めることを特徴とする請求項4記載の弾性研磨材の製造方法。
前記絞り流路を,広間隔部から狭間隔部に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの押圧面間に形成したことを特徴とする請求項6記載の弾性研磨材の製造装置。
前記押圧面の少なくとも一方を円筒状のローラの外周面により形成し,前記ローラの外周面によって形成された前記押圧面が,前記絞り流路内を前記広間隔部側から狭間隔部側に向かって移動するように前記ローラを回転可能としたことを特徴とする請求項7記載の弾性研磨材の製造装置。
前記絞り流路のうち上流側に配置された1の絞り流路の狭間隔部の流路面積に対し,該1の絞り流路の下流側に配置された他の絞り流路の狭間隔部の流路面積を狭くしたことを特徴とする請求項9記載の弾性研磨材の製造装置。
研磨材の噴射が行われるブラスト加工室と,前記ブラスト加工室の底部に連通する研磨材回収部と,前記研磨材回収部内の研磨材を前記ブラスト加工室内で噴射する研磨材噴射手段を備え,前記ブラスト加工室から,研磨材回収部を介し,前記研磨材噴射手段に前記研磨材を循環させる研磨材の循環系が形成された,循環式のブラスト加工装置を使用すると共に,前記研磨材として,少なくとも表面が粘着性を有する弾性材料の核体表面に砥粒を付着させた構造の弾性研磨材を使用して行うブラスト加工方法において,
前記研磨材回収部に回収された回収研磨材の少なくとも一部を再生して前記研磨材の循環系内に戻す弾性研磨材の再生工程を含み,
前記再生工程が,
前記回収研磨材と砥粒を混合して,前記回収研磨材の核体の表面に前記砥粒を付着させる混合工程と,
前記混合工程後の前記回収研磨材に,流路面積が徐々に狭まる絞り流路を集合状態で通過させて該回収研磨材の集合体を圧縮することにより,該回収研磨材の前記核体の表面に前記砥粒を押圧して結合させる,結合工程を含むことを特徴とするブラスト加工方法。
広間隔部から狭間隔部に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの押圧面間に前記絞り流路を形成し,前記混合工程後の前記回収研磨材を,前記広間隔部から前記狭間隔部に向かって前記絞り流路を通過させることにより前記結合工程を実行することを特徴とする請求項11記載のブラスト加工方法。
前記押圧面の少なくとも一方を円筒状のローラの外周面により形成し,前記ローラの外周面によって形成された前記押圧面が,前記絞り流路内を前記広間隔部側から狭間隔部側に向かって移動するように前記ローラを回転させながら前記結合工程を実行することを特徴とする請求項12記載のブラスト加工方法。
前記絞り流路を複数直列に配置し,前記混合工程後の前記回収研磨材に,上流側に設けた1の絞り流路を通過させた後,更に該1の絞り流路の下流側に設けた他の絞り流路を通過させて,前記結合工程における前記核体の表面に対する前記砥粒の押圧を,前記絞り流路の形成数に対応した回数で複数回行うことを特徴とする請求項11〜13いずれか1項記載のブラスト加工方法。
前記1の絞り流路の狭間隔部の流路面積に対し,前記他の絞り流路の狭間隔部の流路面積を狭くして,前記結合工程における前記核体の表面に対する前記砥粒の押圧力を段階的に高めることを特徴とする請求項14記載のブラスト加工方法。
研磨材の噴射が行われるブラスト加工室と,前記ブラスト加工室の底部に連通する研磨材回収部と,前記研磨材回収部内の研磨材を前記ブラスト加工室内で噴射する研磨材噴射手段を備え,前記ブラスト加工室から,研磨材回収部を介し,前記研磨材噴射手段に前記研磨材を循環させる研磨材の循環系が形成され,前記研磨材として,少なくとも表面が粘着性を有する弾性材料の核体表面に砥粒を付着させた構造の弾性研磨材を使用するブラスト加工装置において,
前記研磨材回収部に回収された回収研磨材の少なくとも一部を再生して前記研磨材の循環系内に戻す弾性研磨材の再生装置を含み,
前記再生装置が,
前記回収研磨材と前記砥粒を混合して,前記回収研磨材の前記核体の表面に前記砥粒を付着させる混合器と,
前記混合器による混合後の前記回収研磨材を集合状態で通過させる,流路面積が徐々に狭まる絞り流路を備えた結合器を含むことを特徴とするブラスト加工装置。
前記絞り流路を,広間隔部から狭間隔部に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの押圧面間に形成したことを特徴とする請求項16記載のブラスト加工装置。
前記押圧面の少なくとも一方を円筒状のローラの外周面により形成し,前記ローラの外周面によって形成された前記押圧面が,前記絞り流路内を前記広間隔部側から狭間隔部側に向かって移動するように前記ローラを回転可能としたことを特徴とする請求項17記載のブラスト加工装置。
前記絞り流路のうち上流側に配置された1の絞り流路の狭間隔部の流路面積に対し,該1の絞り流路の下流側に配置された他の絞り流路の狭間隔部の流路面積を狭くしたことを特徴とする請求項19記載のブラスト加工装置。
【背景技術】
【0003】
弾性を有する核体に砥粒を練り込み,あるいは,弾性を有する核体の表面に砥粒を付着させる等して前記核体に砥粒を担持させた弾性研磨材が各種提案されており(特許文献1〜3),この弾性研磨材を使用してブラスト加工を行うことで,核体が有する弾性によって被加工物に対する衝突時の衝撃が吸収され,その結果,一般的なブラスト加工を行う場合に被加工物の表面に生じる梨地の形成を抑制しつつ,被加工物に対し研磨や酸化被膜の除去,バリ取り等の処理を行うことを可能としている。
【0004】
特に,衝突時における反跳を防止し得る反発弾性率に抑えた核体を使用した弾性研磨材にあっては,噴射された弾性研磨材を被加工物の表面上で滑走させることで,従来のブラスト加工では不可能であった鏡面研磨についても行うことができるようになり,ブラストによる加工分野の拡大に大きく貢献するものとなっている(特許文献4参照)。
【0005】
このような弾性研磨材の構造としては,ゴム等の弾性材料により構成された核体に砥粒を練り込むことにより核体に砥粒を担持させたものの他(特許文献3参照),粘着性を持つ油脂分や糖分を含む植物繊維を核体とし(特許文献1),あるいは水分の含有によって粘着性と弾性を発揮するゼラチンを核体とする等して(特許文献2),核体の表面に砥粒を付着させた構造のものがある。
【0006】
これらの弾性研磨材のうち,核体の表面に砥粒を付着させた構造の弾性研磨材を使用してブラスト加工を行う場合,衝突時の衝撃や摩擦によって,弾性研磨材の核体表面に付着している砥粒は脱落し,被加工物に対する衝突回数が増加するに従い,核体表面に付着する砥粒量は減少する。
【0007】
そのため,循環式のブラスト加工装置で弾性研磨材を使用したブラスト加工を行う場合,
図10に示すように弾性研磨材の切削能力は時間の経過と共に徐々に低下し,弾性研磨材が新しい状態で行った被加工物に対する加工状態と,繰り返し使用された弾性研磨材を使用して行った被加工物に対する加工状態とでは,光沢や鏡面度等の表面の状態に大きな差が生じる。
【0008】
このような加工状態の変化が発生することを防止するために,一定時間毎に弾性研磨材を新しいものに入れ替えたとしても,入れ替え直後には一時的に切削量が増大するものの,その後,時間の経過と共に切削量が低下して,切削量は,
図10に示すように安定することなく変化することから,依然として一定品質で被加工物の加工を行うことはできない。
【0009】
そのため,核体の表面に砥粒を付着させた構造を有する弾性研磨材を使用してブラスト加工を行う場合には,弾性研磨材を1回の使用毎に交換するバッチ式の処理とするか,あるいは,数回程度の循環使用で短期に新しい弾性研磨材と交換することが必要となり,弾性研磨材の消費量が増えることでコスト高となると共に,弾性研磨材の交換作業毎にブラスト作業が中断されるために生産性が大幅に低下するという問題があった。
【0010】
このような問題に鑑み,本願の出願人は,弾性研磨材の再生装置を組み込んだブラスト加工装置について特許出願を行い,既に特許を受けている(特許文献5参照)。
【0011】
このブラスト加工装置に設けられた弾性研磨材の再生装置は,ブラスト加工装置の研磨材回収部に回収された回収研磨材の一部と,砥粒供給器から導入された砥粒を共に気体流中に導入して砥粒と核体とが混合された固気二相流を生成する混合器と,前記混合器で生成された固気二相流を通過させる,一例として渦巻状の管路である曲折空間を有する結合器を備えている。
【0012】
そして,前記混合器による混合によって回収研磨材の核体表面に砥粒を付着させると共に,曲折空間を有する結合器を通過する際の固気二相流の推進力又は遠心力によって核体の表面に砥粒を押圧して結合させることにより,循環使用される弾性研磨材の少なくとも一部を再生できるものとなっている(特許文献5)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
循環使用する弾性研磨材により行うブラスト加工において,長期にわたり一定品質で研磨等の加工を行うためには,核体の表面に付着させた砥粒が脱落し難く,かつ,若干の砥粒が脱落したとしても加工性が大きく変化しないよう,核体の表面に高密度かつ高強度に砥粒を結合させることが必要で,このような高密度かつ高強度に砥粒を結合させるためには,核体の表面に砥粒を結合させる際に,砥粒を核体の表面に十分に押し付けることが必要となる。
【0015】
ここで,特許文献5の弾性研磨材再生装置では,混合器11による混合で核体が有する粘性によって核体の表面に砥粒を付着させた後,この核体を含む固気二相流を,一例として渦巻状の空間である結合器の曲折空間に導入することで,曲折空間を通過する際の固気二相流の推進力や遠心力によって核体の表面に付着した砥粒を更に核体の表面に押圧することで強固に結合させている。
【0016】
しかし,上記方法で核体表面に砥粒を強固に結合させるためには,前述の曲折空間を比較的長い距離設ける必要がある。
【0017】
また,核体に砥粒を結合させる際の最適な押圧力は,使用する核体の物性(例えば,硬度,伸張度,反発係数,粘着強度,粒度)や,付着させる砥粒の物性(例えば,粒度や形状,材質等),及び環境条件(温度,湿度等)によって変化するところ,前述した特許文献5に記載の方法では,核体の表面に対する砥粒の押圧力の調整が行い難い。
【0018】
そのため,前述した特許文献5に記載の方法と同様,核体の表面に砥粒を強固に結合させることができるものでありながら,より簡単な構成で,かつ,核体の表面に対する砥粒の押圧力を調整することができる弾性研磨材の製造方法,及び製造装置の開発が要望されている。
【0019】
本発明は,上記要望に対応すべくなされたもので,比較的簡単な構成でありながら,前掲の特許文献5で採用する結合工程,及び結合器と同様に核体に対し砥粒を押圧して強固に結合させることができ,好ましくは核体の表面に対する砥粒の押圧力を比較的容易に調整することができる結合工程,及び結合器を備えた弾性研磨材の製造方法,及び製造装置,及びこれらを組み込むことにより加工状態を一定に維持しながら,長時間連続した加工を行うことができる循環式のブラスト加工方法及びブラスト加工装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
以下に,課題を解決するための手段を,発明を実施するための形態で使用する符号と共に記載する。この符号は,特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態の記載との対応を明らかにするためのものであり,言うまでもなく,本発明の技術的範囲の解釈に制限的に用いられるものではない。
【0021】
上記目的を達成するための,本発明の弾性研磨材の製造方法,及び製造装置は,
弾性材料により形成されていると共に少なくとも表面が粘着性を有する核体71の表面に砥粒72を結合させた構造を有する弾性研磨材70の製造方法及び前記製造方法を実施する製造装置において,
前記核体71と前記砥粒72を混合して,前記核体71の表面に前記砥粒72を付着させる混合工程を実行する混合器11と,
前記混合工程後の前記核体71に,流路面積が徐々に狭まる絞り流路121,121’を集合状態で通過させて該核体71の集合体を圧縮することにより,該核体71の表面に前記砥粒72を押圧して結合させる,結合工程を実行する結合器12を含むことを特徴とする(請求項1,6)。
【0022】
前述の絞り流路121,121’は,広間隔部125から狭間隔部126に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの壁面から成る押圧面124,124間に形成するものとしても良く,前記混合器11による混合工程後の前記核体71を,前記広間隔部125から前記狭間隔部126に向かって前記絞り流路121,121’を通過させることにより前記結合工程を実行するものとしても良い(請求項2,請求項7,
図4及び
図6参照)。
【0023】
前記押圧面124,124の少なくとも一方は,これを円筒状のローラ123の外周面(
図6中,斜線を付した部分の外周面)により形成するものとしても良く,この場合,前記ローラ123の外周面によって形成された前記押圧面124が,前記絞り流路121内を前記広間隔部125側から狭間隔部126側に向かって移動するように前記ローラ123を回転させながら前記結合工程を実行する(請求項3,請求項8,
図6参照)。
【0024】
更に,前記結合器12の前記絞り流路121,121’は,これを複数直列に配置するものとしても良く,混合器11による混合工程後の前記核体71に,上流側に設けた1の絞り流路121を通過させた後,更に該1の絞り流路121の下流側に設けた他の絞り流路121’を通過させて,結合器12による結合工程における前記核体71の表面に対する前記砥粒72の押圧を,前記絞り流路121,121’の形成数に対応した回数で複数回行うものとしても良い〔請求項4,請求項9,
図6(C)参照〕。
【0025】
この場合,前記1の絞り流路121の狭間隔部126の流路面積d1に対し,前記他の絞り流路121’の狭間隔部126の流路面積d2を狭くして,前記結合工程における前記核体71の表面に対する前記砥粒72の押圧力を段階的に高めるようにしても良い〔請求項5,請求項10,
図6(C)参照〕。
【0026】
また,本発明のブラスト加工方法及びこれを実行するブラスト加工装置1は,
研磨材の噴射が行われるブラスト加工室8と,前記ブラスト加工室8の底部に連通する研磨材回収部20と,前記研磨材回収部20内の研磨材を前記ブラスト加工室8内で噴射する研磨材噴射手段30を備え,前記ブラスト加工室8から,研磨材回収部20を介し,前記研磨材噴射手段30に前記研磨材を循環させる研磨材の循環系が形成された,循環式のブラスト加工装置を使用すると共に,前記研磨材として,少なくとも表面が粘着性を有する弾性材料の核体71表面に砥粒72を付着させた構造の弾性研磨材70を使用して行われ,
前記研磨材回収部20に回収された回収研磨材70’の少なくとも一部を再生して前記研磨材の循環系内に戻す弾性研磨材の再生工程を実行する再生装置10を含み,
前記再生装置10が,
前記回収研磨材70’と砥粒72を混合して,前記回収研磨材70’の核体71の表面に前記砥粒72を付着させる混合工程を実行する混合器11と,
前記混合器11による混合工程後の前記回収研磨材70’に,流路面積が徐々に狭まる絞り流路121を集合状態で通過させて該回収研磨材70’の集合体を圧縮することにより,該回収研磨材70’の前記核体71の表面に前記砥粒72を押圧して結合させる,結合工程を実行する結合器12を含むことを特徴とする(請求項11,請求項16)。
【0027】
上記構成のブラスト加工装置1において,前記絞り流路121は,広間隔部125から狭間隔部126に向かって徐々に間隔を狭めるように配置された2つの壁面から成る押圧面124,124間に形成することができ,前記混合器11による混合工程後の前記回収研磨材70’を,前記広間隔部125から前記狭間隔部126に向かって前記絞り流路121を通過させることにより前記結合工程を実行するものとすることができる(請求項12,請求項17,
図4〜
図6参照)。
【0028】
この押圧面124,124の少なくとも一方は,これを円筒状のローラ123の外周面(
図6中,斜線を付した部分の外周面)により形成するものとしても良く,この場合,前記ローラ123の外周面によって形成された前記押圧面124が,前記絞り流路121内を前記広間隔部125側から狭間隔部126側に向かって移動するように前記ローラ123を回転させながら前記結合工程を実行する(請求項13,請求項18,
図6参照)。
【0029】
更に,前記絞り流路121,121’は,これを複数直列に配置し,前記混合工程後の前記回収研磨材70’に,上流側に設けた1の絞り流路121を通過させた後,更に該1の絞り流路121の下流側に設けた他の絞り流路121’を通過させて,前記結合工程における前記核体71の表面に対する前記砥粒72の押圧を,前記絞り流路121,121’の形成数に対応した回数で複数回行うものとしても良い〔請求項14,請求項19,
図6(C)参照〕。
【0030】
この場合,前記1の絞り流路121の狭間隔部126の流路面積d1に対し,前記他の絞り流路121’の狭間隔部126の流路面積d2を狭くして,前記結合工程における前記核体71の表面に対する前記砥粒72の押圧力を段階的に高めるようにすることが好ましい〔請求項15,請求項20,
図6(C)参照〕。
【発明の効果】
【0031】
以上で説明した本発明の構成により,本発明の弾性研磨材の製造方法,弾性研磨材の製造装置によれば,混合器11によって核体71(又は回収研磨材70’)と砥粒72とを混合して,核体71(回収研磨材70’)の表面に砥粒を付着させると共に,この混合器による混合後の核体71(回収研磨材70’)に,流路面積が徐々に狭まる絞り流路121,121’を集合状態で通過させることにより,流路面積の減少に伴って核体71(回収研磨材70’)の集合体が圧縮されることで,比較的強い押圧力で核体71の表面に砥粒72を押圧することができ,その結果,混合器11による混合で付着させた砥粒72を,核体71の表面に高密度かつ高強度に結合させることができた。
【0032】
しかも,核体71の表面に対する砥粒72の押圧力は,狭間隔部126の流路面積dを変更する等して核体71(回収研磨材70’)の集合体に対する圧縮比を変更することにより容易に調整することができ,核体71や砥粒72の物性や環境条件等に応じて核体71の表面に対する砥粒72の押圧力を最適なものに変更することが容易である。
【0033】
前述した絞り流路121,121’を,2つの壁面から成る押圧面124,124間に設けた構成では,前記押圧面124,124の傾斜角を変更することにより,又は,前記押圧面124,124間の間隔を調整することで,核体71や砥粒72の物性,環境条件等に対応して核体71の表面に対する砥粒72の押圧力の変更を更に容易に行うことができた。
【0034】
このような押圧面124,124の少なくとも一方を,円筒状のローラ123の外周面により形成した構成では,ローラ123,123間の間隔の調整によって狭間隔部126の流路面積dを変化させることで前述した押圧力を容易に変更することができるだけでなく,ローラ123の回転速度の調整によって,絞り流路121を通過する時間,従って,押圧力を加える時間を調整することができ,核体71の表面に対する砥粒72の押圧条件の調整をより詳細に行うことができた。
【0035】
しかも,このように押圧面124,124の少なくとも一方をローラ123の外周面によって形成した構成では,ローラ123の回転によって核体71(回収研磨材70’)を強制的に移動させて絞り流路121,121’より押し出すことができ,これにより狭間隔部126の流路面積d,d1,d2を小さくして高圧縮比で圧縮を行った場合であっても,絞り流路121内で核体71(回収研磨材70’)の目詰まりが生じることを防止でき,その結果,より高い押圧力で核体71の表面に砥粒72を押しつけることが可能となり,選択可能な押圧力の範囲を拡大することができた。
【0036】
更に,複数の絞り流路121,121’を直列に配置して,混合工程後の核体71(回収研磨材70’)を上流側に設けた1の絞り流路121を通過した後,更に,該1の絞り流路121の下流側に設けた他の絞り流路121’を通過させた構成では,核体71の表面に対し,複数回にわたって砥粒72を押圧することができ,これにより,より一層高密度かつ高強度で砥粒72を結合させることができた。
【0037】
特に,上流側の絞り流路121の狭間隔部126の流路面積d1に対し,下流側の絞り流路121’の狭間隔部126の流路面積d2を狭くした構成では,核体71の表面に対する砥粒72の押圧力を段階的に高めることができ,より均一で,かつ,高い結合力で核体71の表面に対する砥粒72の結合を行うことができた。
【0038】
上記のように構成された本発明の弾性研磨材製造装置を弾性研磨材の再生装置10として組み込んだ循環式のブラスト加工装置1では,使用済みの回収研磨材70’の少なくとも一部を再生対象として該回収研磨材70’の核体71の表面に砥粒を付着させると共に結合させて再生した後に研磨材の循環系内に戻すことで,弾性研磨材70の入れ換えを行うことなく,一定の加工精度を維持したまま,長時間連続してブラスト加工を行うことができるブラスト加工装置1を提供することができた。
【発明を実施するための形態】
【0040】
次に,本発明の実施形態につき添付図面を参照しながら以下説明する。
【0041】
なお,以下で説明する実施形態にあっては,本発明の弾性研磨材の製造装置を,循環式のブラスト加工装置中に弾性研磨材の再生装置として組み込んだ構成について説明するが,本発明の弾性研磨材の製造装置は,ブラスト加工装置中に組み込むことなく,単独で弾性研磨材の製造に使用することもできる。
【0042】
〔製造(再生)対象とする弾性研磨材〕
本発明で製造あるいは再生の対象とする弾性研磨材70は,少なくとも表面に粘着性を有する弾性の核体71と,該核体71の表面に砥粒72が付着した構造のものであり,上記構造のものであれば,各種材質,寸法,形状等のものを対象とすることができ,ゼラチンやエラストマーのように,自己粘着性を有する材質で構成された核体71の表面に砥粒72を付着させたものであっても良く,あるいは,ポリウレタン等の樹脂の表面に,前述した自己粘着性を有する材質をコーティングして表面に粘着性を付与した核体71の表面に砥粒72を付着させた弾性研磨材70であっても良い。
【0043】
また,使用する砥粒72も各種の砥粒を使用可能であるが,一例として,ダイヤモンド,cBN,炭化ケイ素,アルミナ,ジルコン,高速度鋼,鉄炭素合金,ガラス,樹脂,銅とその合金,アルミニウムとその合金等が使用可能で,これらを1種,又は複数種組み合わせて使用するものとしても良く,砥粒の粒径も,得られる弾性研磨材の用途に応じて各種の粒径より選択可能であり,一例として,メジアン径D50で0.05μm〜1mmの範囲より選択可能であり,その形状も,不定形,多角形,球状,円柱状等,各種形状より選択可能である。
【0044】
〔ブラスト加工装置の全体構造〕
後述する弾性研磨材の再生装置10を備えた本発明のブラスト加工装置の構成例を
図1(A),(B)に示す。
【0045】
図1に示すブラスト加工装置1は,研磨材の噴射が行われるキャビネット7内に形成されたブラスト加工室8と,前記ブラスト加工室8の底部と連通する,研磨材を回収する回収ホッパである研磨材回収部20,前記研磨材回収部20内の研磨材を前記ブラスト加工室8内で噴射する研磨材噴射手段30を備えた循環型のブラスト加工装置であり,前記ブラスト加工室8から,研磨材回収部20及び研磨材供給管41を介して前記研磨材噴射手段30に至る研磨材の循環系が形成さており,研磨材噴射手段30より噴射された研磨材は,この系を循環して再度,研磨材噴射手段30より噴射することができるように構成されている。
【0046】
前述のブラスト加工室8内で研磨材の噴射を行う研磨材噴射手段30として,図示の実施形態にあっては,図示せざる圧縮気体供給源からの圧縮気体に乗せて研磨材を噴射するブラストガンを設けているが,研磨材の噴射はこのようなエア式のものに限定されず,回転する羽根車に砥粒を衝突させて打ち出す打撃式,遠心力によって研磨材を噴射する遠心式等,乾式で研磨材を噴射あるいは投射(本発明では,これらを総称して「噴射」という。)することができるものであれば圧縮気体による加速以外にも既知の各種方式の研磨材噴射手段を採用することが可能である。
【0047】
研磨材噴射手段30による研磨材の噴射が行われるブラスト加工室8の底部は逆角錐形状に形成されてホッパ状を成し,ブラスト加工室8内で噴射された研磨材は,このホッパ状に形成された研磨材回収部20に落下するように構成されている。
【0048】
ブラスト加工室8内には,弾性研磨材と粉塵を分級するための邪魔板(図示せず)が設けられており,この邪魔板による分級によって弾性研磨材を研磨材回収部20に回収すると共に,ブラスト加工室8内を浮遊する粉塵は排風機(ブロワー)25によりキャビネット7の背面に設けられたダストコレクタ26内に導入されて捕集される。
【0049】
弾性研磨材の回収が行われる研磨材回収部20の底部には,研磨材供給管41が連通されており,この研磨材供給管41が,図示の例ではサクション式のブラストガンである研磨材噴射手段30に連通されている。
【0050】
なお,本実施形態では弾性研磨材と粉塵の分級を,前述した邪魔板により行う構成について説明したが,この構成に代え,例えば研磨材回収部20をサイクロン型の研磨材タンクによって構成する等して,弾性研磨材と粉塵を分級できるようにしても良い。
【0051】
このブラストガン30には,図示せざる圧縮空気供給源からの圧縮空気が導入されており,この圧縮空気供給源からの圧縮空気をブラストガン30内に導入することで,ブラストガン30内で生じた負圧により研磨材供給管41を介して研磨材回収部20内の研磨材が吸い込まれ,圧縮空気と共にブラスト加工室8内に噴射できるようになっている。
【0052】
このように,図示の循環式のブラスト加工装置1では,研磨材噴射手段30によって噴射された研磨材は,ブラスト加工室8,研磨材回収部20を介して再度,研磨材噴射手段30に導入されて噴射される,研磨材の循環系が形成されていることから,研磨材を循環使用して長時間,連続したブラスト加工を行うことができるように構成されている。
【0053】
〔弾性研磨材の再生装置〕
以上のように構成された循環式のブラスト加工装置1では,研磨材を循環して使用することで,長時間,連続してブラスト加工を行うことが可能であるものの,研磨材として弾性の核体71表面に砥粒を付着させた構造の弾性研磨材70を使用する場合,被加工物との衝突によって核体71表面に付着している砥粒72が脱落し,循環使用を繰り返すうちに徐々に切削能力が低下することから,噴射圧力や噴射速度等の他の加工条件を一定に維持した加工を行う場合でも,被加工物に対する加工状態が変化する(
図10参照)。
【0054】
そこで,本発明のブラスト加工装置1にあっては,前述した研磨材の循環系内を循環する弾性研磨材の少なくとも一部を再生する弾性研磨材再生装置10を設けることで,経時によっても加工状態を変化させることなく,長時間,連続したブラスト加工を可能としている。
【0055】
図1(B)及び
図2に,弾性研磨材の再生装置を符号10で示す。この弾性研磨材の再生装置10は,少なくとも,回収研磨材70’と砥粒を混合して,砥粒の脱落によって露出した回収研磨材70’の核体71の表面に砥粒を付着させる混合器11と,前記混合器11による混合で核体71の表面に新たに付着させた砥粒を,核体71の表面に押圧して結合させる結合器12を含み,図示の実施形態にあっては,この混合器11と結合器12を,前述した研磨材の循環系とは別の流路に設けている。
【0056】
また,図示の実施形態にあっては,前述の混合器11に対して砥粒の導入を行う砥粒供給器13に,砥粒の導入量を可変とする砥粒秤量手段131(
図1(B)参照)を設けると共に,前述の結合器12による結合で再生された再生弾性研磨材70の核体71表面に対する砥粒の付着量を測定する検査手段14を含み,この検査手段14による測定結果のフィードバックを受けて,測定された砥粒の付着量を予め設定された目標付着量に近付けるよう,前記砥粒秤量手段131を制御して,砥粒の導入量を変化させる,制御手段15を設けている。
【0057】
[混合器]
前述の混合器11は,再生対象である回収研磨材70’と,この回収研磨材70’の核体71表面に付着させる砥粒とを混合して,砥粒72の脱落によって露出した回収研磨材70’の核体71の表面に砥粒72を付着させる。
【0058】
本実施形態では,回収研磨材70’と砥粒72とを共に共通の気体流に合流させて固気二相流を生成し,該固気二相流中で回収研磨材70’と砥粒72とを混合することにより,砥粒の脱落によって露出した回収研磨材70’の核体71表面に,該核体71の持つ粘着力によって新たな砥粒72を付着させており,このように気体流中で混合を行うことで,回収研磨材70’同士が結合して凝集することを防止しつつ,脱落部に対する砥粒72の付着を行っている。
【0059】
このように気体流中で回収研磨材70’と砥粒72の混合を行う混合器11の一例を
図3に示す。
【0060】
この
図3に示す混合器11は,内部に砥粒吸入室112が形成された第1ボディ111と,回収研磨材吸入室114が形成された第2ボディ113を,中間ハウジング115を介して連結すると共に,図示せざる圧縮気体供給源に後端が連通された第1のエアジェット116の先端を第1ボディ111の砥粒吸入室112内に挿入し,更に,前記第1のエアジェット116の先端に第2のエアジェット117の後端を向け,且つ,この第2のエアジェット117の先端を前記回収研磨材吸入室114内に挿入すると共に混合器11の出口118に向けた構成を備えている。
【0061】
そして,砥粒吸入室112の吸入口112aを,砥粒供給管42を介して砥粒供給器13(
図2参照)に連通すると共に,前記回収研磨材吸入室114の吸入口114aを,回収研磨材供給管43(
図2参照)を介して研磨材回収部20の底部に連通している。
【0062】
なお,図示の例では,前述した混合器を構成する各部品をそれぞれ別個に形成し,これらを組み合わせることにより前述した混合器11を形成しているが,この構成に代えて,例えばレーザー溶融法,電子ビーム溶融法等による金属3Dプリンタを使用して各部品に分けることなく混合器11を一体的に製造するものとしても良い。
【0063】
このように3Dプリンタを使用した製造は,切削加工法等によって製造する場合に比較して制作速度及びコスト面で有利であり,大量に製造する場合にはコスト面は更に有利となる。
【0064】
このような混合器11の製造に用いる金属としては,マレージング鋼,チタニウム合金,ステンレス合金,コバルトクロム合金,ニッケル合金,インコネル(登録商標)及びその他の金属,合金を用いても良い。
【0065】
以上の構成を備えた混合器11において,第1のエアジェット116に対し圧縮気体供給源からの圧縮気体を導入して第1のエアジェット116の先端より第2のエアジェット117の後端に向けて噴射すると,この圧縮気体の噴射によって砥粒吸入室112内が負圧となり,砥粒供給器13からの砥粒72が砥粒吸入室112内に吸入されて第1のエアジェット116の先端より噴射された圧縮気体と合流し,第2のエアジェット117内に導入される。
【0066】
第2のエアジェット117内に導入された砥粒72と気体流との混合流は,混合器11の出口118に向かって回収研磨材吸入室114内で噴射され,これにより,回収研磨材吸入室114内が負圧となって研磨材回収部20内に回収された弾性研磨材の一部が,再生対象である回収研磨材70’として回収研磨材吸入室114内に導入されると共に,砥粒を含む気体流と合流して,混合器11より固気二相流として噴出される。
【0067】
このようにして,砥粒72と,回収研磨材70’とを,共に気体流に合流させて固気二相流を生成することで,この固気二相流中において砥粒72や回収研磨材70’が凝集等することなく混合され,砥粒72が脱落して露出している回収研磨材70’の核体71表面に,新たな砥粒72が付着する。
【0068】
前述の研磨材回収部20より混合器11に回収研磨材70’として所定時間あたりに導入する弾性研磨材の量(g/分)は,好ましくは所定時間当たりにブラスト加工室内で噴射される弾性研磨材の量(g/分)の5〜50%となるよう調整し,より好ましくは10〜30%となるように調整する。
【0069】
また,混合器11に導入する砥粒量は,回収研磨材の導入量に対し,3.0%以下とすることが好ましく,より好ましくは,1.0%以下とする。
【0070】
3.0%以上の砥粒72を導入する場合,回収研磨材70’の全表面を覆う量よりも多くの砥粒72を導入することとなり,回収研磨材70’の表面に付着することができない多くの遊離砥粒を発生させることとなり,この遊離砥粒が再生された弾性研磨材70と共に研磨材の循環系に戻されて被加工物に噴射されて,被加工物の表面に梨地を形成する等,加工状態を劣化させると共に,この様な遊離砥粒は,その後,研磨材回収部20における風力選別によってダストコレクタ26内に回収されて廃棄されることとなるためにブラスト加工のコストを上げ,特に,ダイヤモンド,炭化ケイ素,cBN等の高価な砥粒を使用する場合には,経済的な負担は更に大きくなる。
【0071】
なお,図示の例では,第1ボディ111内の空間を砥粒吸入室112,第2ボディ113内の空間を回収研磨材吸入室114とし構成したが,これとは逆に,第1ボディ111内の空間を研磨材回収部20と連通して回収研磨材の吸入室とすると共に,第2ボディ113内の空間を砥粒供給器13に連通して砥粒の吸入室として形成するものとしても良く,砥粒72を含む気流と,回収研磨材70’を含む気流とを合流させて混合し,回収研磨材70’の表面に砥粒を付着させることができるものであれば,図示の構成に限定されず,各種の変更が可能である。
【0072】
また,図示の例では砥粒72と回収研磨材70’の混合を気体流中で行う構成について説明したが,両者を混合して回収研磨材70’の核体71の表面に砥粒を付着させることができるものであれば,混合器11の構成は,図示の構成のものに限定されない。
【0073】
[結合器]
前述した混合器11を通過した回収研磨材70’は,混合器11による混合によって核体71の表面に新たな砥粒72が付着しているものの,このような砥粒72の付着は核体71の持つ粘着力によって表面に付着しているのみで,核体71と砥粒72との結合状態は未だ弱い状態にある。
【0074】
そのため,この状態の回収研磨材70’は,そのままでは弾性研磨材70として再使用することができず,これを再使用に耐え得る状態にするためには,砥粒72を回収研磨材70’の核体71表面に押圧して,その一部分を核体71内に埋め込む等して強固に結合させることが必要となる。
【0075】
このような,核体71と砥粒72との強固な結合を可能とするために,前述の混合器11で混合した後の回収研磨材70’は,流路面積を徐々に狭める絞り流路121を備えた結合器12内に導入され,集合状態で前記絞り流路121を通過させる際に回収研磨材70’の集合体を圧縮することで,砥粒72を核体71の表面に押圧させている。
【0076】
このような絞り流路121を備えた結合器12の構成例を,
図4〜
図6に示す。
【0077】
このうちの
図4は,2枚の平板122,122間に前述した絞り流路121を形成したもので,各平板122,122の表面によって絞り流路121を画成する壁面から成る押圧面124,124を形成し,該押圧面124,124間の間隔が広間隔部125から狭間隔部126に向かって徐々に間隔を狭めるように前記2枚の平板122,122が所定の角度を形成するように配置することで,紙面下方に向かって幅を狭める絞り流路121を形成している。
【0078】
この絞り流路121は,
図5に示すように管路16aを介して混合器11より固気二相流として導入された回収研磨材70’が相互に接触して集合状態で通過するようにその流路面積等が調整されており,これにより回収研磨材70’の集合体は,絞り流路121内を広間隔部125から狭間隔部126に移動するに従い圧縮されて密度が高まることで回収研磨材70’同士が圧接された状態で狭間隔部126を通過し,核体71表面に付着していた砥粒72が核体71の中心に向かって押圧されてその一部分が核体71内に埋没する等して,強固に結合する。
【0079】
このように,2枚の平板122,122間に絞り流路121を形成した例では,2枚の平板122,122が成す角度を変化させることにより,及び/又は,狭間隔部126の流路面積dを変更することにより,絞り流路121を通過する回収研磨材70’の圧縮状態,従って,核体71の表面に対する砥粒72の押圧力を変化させることができ,回収研磨材70’の核体71や砥粒72の物性,環境条件等に対応してこれらを調整することで,最適な押圧力によって核体71の表面の砥粒72を押圧することができる。
【0080】
なお,この構成の結合器12には,
図5に示すように前述の絞り流路121に連続して,狭間隔部126の流路面積dを有する直線流路129を所定の長さで設け,該直線流路129を通過するまでの所定時間,回収研磨材70’の集合体を所定の圧縮状態に保持するものとしても良い。
【0081】
また,このように平板122,122によって絞り流路121を形成する場合,平板122,122に対し振動を与えるものとしても良く,これにより回収研磨材70’同士をより密に接触させて核体71の表面に対する砥粒の押圧力を高めると共に,絞り流路121内で回収研磨材70’が目詰まりを起こすことを防止できるようにしても良い。
【0082】
図4を参照して説明した結合器12では,前述の絞り流路121を画成する壁面から成る押圧面124,124を,平板122,122の表面によって形成した構成例を示したが,この絞り流路121を画成する押圧面124,124の少なくとも一方は,円筒状のローラ123の外周面によって形成するものとしても良い。
【0083】
図6(A)に,絞り流路121を画成する押圧面124,124の一方を平板122の表面で,他方をローラ123の外周面(図中,斜線を付した部分の外周)によって構成して,図中グレーで塗り分けた部分を絞り流路121とした例を,
図6(B)に,絞り流路121を画成する押圧面124,124の双方を,所定間隔をあけて配置したローラ123,123の外周面(図中,斜線を付した部分の外周)によって形成して,図中グレーで塗り分けた部分を絞り流路121とした例を,
図6(C)には更に,2対のローラ123,123;123,123を上下に配置して,上段のローラ123,123間に形成された絞り流路121を通過した後の回収研磨材70’を,更に下段のローラ123,123間に形成した絞り流路121’に導入可能とした例を示す。
【0084】
このように絞り流路121を画成する押圧面124,124の少なくとも一方をローラ123の外周面によって形成した構成では,図中に矢印で示したようにローラ123の外周面によって形成された押圧面124が,絞り流路121内を,広間隔部125側から狭間隔部126側に向かって移動するようにローラ123を回転させながら結合を行う。
【0085】
その結果,絞り流路121に集合状態で導入された回収研磨材70’は,このローラ123の回転によって絞り流路121内を狭間隔部126側に向かって強制的に移動されることで圧縮され,回収研磨材70’の核体71の表面に対しより強い力で砥粒72を押圧することができ,核体71の表面に対する砥粒72の結合力をより高めることができる。
【0086】
なお,
図6(A)及び
図6(B)に示す結合器12では,混合器11からの回収研磨材70’を一旦,ホッパ127に導入し,このホッパより落下させた回収研磨材70’を,その下方に設けた絞り流路121に導入する構成としているが,
図6(C)に示すように,このようなホッパ127を設けることなく,混合器11を通過した後の回収研磨材70’を直接,ローラ123,123間に形成された絞り流路121に導入するものとしても良い。
【0087】
また,
図6(A)及び
図6(B)の結合器12に設けたホッパ127内に形成された流路に,
図4(A),(B)を参照して説明した絞り流路121の機能を持たせることにより,混合器11を通過した後の回収研磨材70’を,ホッパ127で一次圧縮した後,その下方に設けた絞り流路121で更に圧縮するものとしても良い。
【0088】
なお,このように,回収研磨材70’の圧縮を複数回にわたって行う場合には,
図6(C)に示すように,ローラ対123,123を上下二段に設け,上段のローラ対123,123間に形成された絞り流路121を通過した回収研磨材70’を,下段のローラ対123,123間に形成された絞り流路121’に導入して,回収研磨材70’の核体71表面に対する砥粒の押圧を,2回にわたって行うことができるように構成しても良い。
【0089】
更に,回収研磨材70’の圧縮は,図示の例に限定されず,絞り流路121を3段以上設けて,3回以上にわたって行うものとしても良い。
【0090】
このように,絞り流路121を多段に設ける構成では,上段(上流側)に設ける絞り流路121の狭間隔部126の流路面積d1に対し,下段(下流側)に設ける絞り流路121’の狭間隔部126の流路面積d2を小さく形成し,回収研磨材70’の集合体に対する圧縮比,従って,回収研磨材70’の核体71の表面に対する砥粒72の押圧力を段階的に高めるように構成するものとしても良い。
【0091】
なお,
図6(A)〜(C)に示したように,ローラ123の外周面によって絞り流路121の少なくとも一方の押圧面124を形成する場合,砥粒72や核体71の物性,再生対象とする回収研磨材70’の粒径や量等によっても異なるが狭間隔部126における絞り流路の幅は,一例として0.1mmから10mm程度であり,より好ましくは0.2mmから5mmの範囲から,前述した核体の物性(例えば粘着性の強弱,硬度等),砥粒の物性(形状や粒径等)等に応じて,最適な押圧力となるように調整する。
【0092】
また,絞り流路121を構成する前述の平板122やローラ123の材質は,特に限定されるものではなく,混合器11によって砥粒72が表面に付着された核体71を通過させることができるものであれば特に限定されず,樹脂や各種の単金属,合金,構造用炭素鋼,工具鋼,高速度鋼,超硬合金,ガラス,セラミックス等の各種材質が使用可能である。
【0093】
なお,前述したように絞り流路121を画成する押圧面124,124の少なくとも一方をローラ123の外周面で形成した例では,ローラ123の回転速度が速すぎると核体71の表面に砥粒72が十分に押圧されることなく通過することで,核体71に対する砥粒72の結合力が弱くなり,このようにして再生された弾性研磨材70では使用によって容易に表面から砥粒72が脱落してしまう。
【0094】
一方,ローラ123の回転速度を遅くすると,弾性研磨材70の再生量が減少するため再生が間に合わず,また,ローラ123,123間を通過する際に粘着性を有する核体71が表面に付着している砥粒72の間から外部にはみ出し,核体71同士が付着して凝集することで,弾性研磨材70として再利用できなくなる。
【0095】
従って,ローラ123の回転速度は,好ましくは1〜50m/min,より好ましくは,5〜30m/minである。
【0096】
[砥粒供給器]
前述した混合器11に対し砥粒を導入する砥粒供給器13の構成としては,砥粒を予め設定した導入量で混合器11に対し定量供給することができるものであれば如何なる構造のものを使用しても良く,例えば,砥粒を貯蔵するホッパの底部に,所定寸法の孔あるいはスリットを設け,この孔,又はスリットを通過した砥粒を混合器11に送る等,比較的単純な構造の砥粒供給器13を設けるものとしても良い。
【0097】
砥粒を円滑に供給するためには,好ましくは砥粒を貯蔵するホッパに振動を与えることが好ましく,特に,砥粒のサイズが#3000(D50:11μm)より細かい砥粒を使用する場合,凝集力が強くそのままでは搬送することができないため,超音波振動の付与が不可欠となる。
【0098】
本実施形態にあっては,このような微細な砥粒,特に凝集力の強い#6000(D50:2μm)以下の砥粒であっても正確に秤量して供給できるようにするために,砥粒供給器13に,
図7及び
図8に示す砥粒秤量手段131を設けている。
【0099】
この砥粒秤量手段131を備えた砥粒供給器131は,逆裁頭円錐形状に形成されたホッパ132の下方に,0.1〜2mmの多数の小孔が形成されたパンチングメタルや網等から成るスクリーン133を配置して,ホッパ132内に投入された砥粒を,前記スクリーン133上に落下させることができるように構成すると共に,ホッパ132上方に配置された攪拌モータ134に設けられた回転軸134aに,ホッパ132内で回転する攪拌ブレード135と,前記スクリーン133上で回転するスクレーパ136を取り付けて,攪拌モータ134の回転に伴い回転させることができるように構成している。
【0100】
このスクレーパ136には,スクレーパ136の回転に伴いスクリーン133表面に摺接されるブレード137が設けられており,このブレード137によって,スクリーン133に形成された小孔内より砥粒を落下させることができるように構成されている。
【0101】
従って,ホッパ132内に砥粒を投入した状態で攪拌モータ134を回転させることで,ホッパ132内の砥粒が攪拌ブレード135によって攪拌されてスクリーン133上に落下する。
【0102】
この砥粒をスクレーパ136の回転によりスクリーン133の小孔内にブレード137によって送り込まれた砥粒がスクリーン133の小孔を通過して,少量ずつ下方に落下する。
【0103】
そのため,上記構成の砥粒秤量手段131を備えた砥粒供給器13にあっては,攪拌モータ134の回転速度を早めることで砥粒の供給量を増大させ,これとは逆に攪拌モータ134の回転速度を低下させることで砥粒の供給量を減少させることができ,攪拌モータ134の回転速度を制御することで,砥粒の供給量を可変とすることができるように構成されている。
【0104】
このようにして,スクリーン133を通過した砥粒が落下する砥粒受け部130は,混合器11に設けた砥粒吸入室112に砥粒供給管42を介して連通されており,混合器11内の第1のエアジェット116に対する圧縮気体の導入が行われ,砥粒吸入室112内が負圧になると,砥粒受け部130に設けられた外気吸入口130aより吸入された外気と共に砥粒が混合器11に導入される。
【0105】
[検査手段及び制御手段](フィードバック制御)
このように,砥粒供給器13に砥粒の導入量を可変と成す砥粒秤量手段131を設けた本発明のブラスト加工装置1にあっては,前述した結合器12によって得られた再生弾性研磨材の核体に対する砥粒の付着量を測定する検査手段14を設け,この検査手段14による検査結果をフィードバックすることで,混合器11に導入する砥粒量を制御するように構成しても良い。
【0106】
砥粒の付着量の測定は,例えば,得られた再生弾性研磨材中よりサンプルとして取り出した再生弾性研磨材の粒子表面を撮影した画像に基づいて,砥粒が付着している部分の画素数と,未付着部分の画素数の比等として求めることもできるが,本実施形態にあっては,再生弾性研磨材を円錐状に積み上げた際の積み上げ角度である安息角によって砥粒の付着量を測定するものとしている。
【0107】
すなわち,砥粒の付着量が変化して,粘着性を有する核体表面の露出面積が大きくなる程,得られた再生弾性研磨材同士が付着し合い凝集し易くなる一方,核体表面の露出面積が小さくなる程,再生弾性研磨材は凝集を起こし難くなり,その結果,核体に対する砥粒の付着が不十分で,核体が露出している場合,安息角が大きくなることから,再生弾性研磨材の安息角を測定することで,核体の表面に対する砥粒の付着状態を測定することができる。
【0108】
このような安息角を測定する検査手段14としては,一例として各種センサやCCDカメラ等を使用することができ,例えば周囲の影響を受け難い位置に設けた円形板上に,こぼれ落ちる迄,再生弾性研磨材を積み上げ,積み上がった再生弾性研磨材の安息角を撮影した映像や,積み上がり高さに基づいて,安息角を測定する。
【0109】
図示の実施形態にあっては,ブラスト加工室8と連通する検査室50を設け,この検査室50内に設けた検査台51上に再生弾性研磨材を落下させて積み上げると共に,この検査台51よりこぼれた再生弾性研磨材をブラスト加工室8内に落下させることで,再生弾性研磨材を,研磨材の循環系内に戻すことができるようにすることにより,前述の検査手段14による検査の工程を,連続した一連の動作内において行うことができるようにしている。
【0110】
このようにして検査手段14により測定された再生弾性研磨材の安息角は,制御手段15に送信される。
【0111】
制御手段15は,検査手段14より受信した安息角に基づき,砥粒供給器13に設けられた攪拌モータ134の回転速度を制御する,例えばマイクロコントローラであり,予め記憶されている安息角と攪拌モータ134の回転速度との対応関係に基づいて,測定された安息角が,目標安息角に近付くよう,測定された安息角が目標安息角よりも大きい場合,攪拌モータ134の回転速度を速くして,砥粒の供給量を増加することで,一定品質の再生弾性研磨材が得られるようにしている。
【0112】
〔変更例等〕
以上で説明した本発明のブラスト加工装置1にあっては,ブラスト加工装置1に設けた研磨材の循環系外に弾性研磨材再生装置10を設けた構成とすると共に,研磨材回収部20に回収された弾性研磨材の一部を再生するものとして説明したが,例えば,研磨材回収部20から研磨材噴射手段30に至る流路中に前述した混合器11と結合器12を設け,研磨材の循環系内において回収された弾性研磨材を全量,再生工程に付すものとして構成しても良い。
【0113】
また,上記の説明では,弾性研磨材再生装置10を,ブラスト加工装置1の構成要素の1つとして設ける場合を例に挙げて説明したが,以上で説明した弾性研磨材再生装置10は,これを,ブラスト加工装置1とは切り離し,単独で,弾性研磨材の製造装置として使用することも可能である。
【0114】
この場合,上記実施形態で弾性研磨材再生装置10における再生対象として説明した回収研磨材70’を,未使用の,あるいは使用済みの核体71に置き換えて使用すれば良い。
【実施例】
【0115】
以下に,弾性研磨材再生装置を備えた本発明のブラスト加工装置の性能確認試験を行った結果につき説明する。
【0116】
〔試験の目的〕
弾性研磨材再生装置を備えた本発明のブラスト加工装置を使用してブラスト加工を行うことで,切削性能の低下がなく,長時間,安定した切削性能が得られることを確認する。
【0117】
〔試験方法〕
弾性研磨材として,自己粘着性を有するエラストマー製の核体(長径の平均値が0.3〜1.0mm)の表面に,ダイヤモンド砥粒♯10000(D50:0.6μm)を,核体の重量に対し30%の量で付着させたもの〔不二製作所製「シリウスZ」〕を使用した。
【0118】
ブラスト加工装置として,市販のエア式のブラスト加工装置(「SFZ−2」不二製作所製)をベースとして,実施例として
図1,2を参照して説明した弾性研磨材再生装置を設けたもの,比較例として
図1,2を参照して説明した弾性研磨材再生装置の混合器11のみを設けた構成(混合器11を通過させた後の回収研磨材70’を,結合器12を通さずに研磨材回収部20に戻す構成)としたもの(実施例,比較例共にフィードバック制御は行わず)を使用し,テストピース(90mm角,厚さ2mmのSUS304矩形板)に対し,下記の表1に示す条件で連続してブラスト加工を行い,加工時間の経過に伴う加工状態の変化を観察した。
【0119】
【表1】
【0120】
なお,実施例のブラスト加工装置の研磨材再生装置に設けた結合器はローラ方式であり,その構成は下記の表2に示すとおりである。
【0121】
【表2】
【0122】
〔試験結果〕
弾性研磨材再生装置を備えた本発明のブラスト加工装置を使用してブラスト加工を行った際の,噴射時間と加工量(切削量)の変化の関係を
図9に示す。
【0123】
図9より明らかなように,本発明のブラスト加工装置を使用して行ったブラスト加工では,加工の開始から実験終了に至る迄,長時間(120時間)に亘り安定した加工量でブラスト加工を行うことができることが確認された(
図9)。
【0124】
以上の結果から,本発明のブラスト加工装置では,弾性研磨材の再生装置によって,弾性研磨材が好適に再生されていることを確認することができた。
【0125】
一方,比較例のブラスト加工装置では,ブラスト加工の開始から0.5時間後には砥粒が脱落した弾性研磨材の核体の破片がワークに付着し始め,3時間の加工で,正常な加工が行えなくなるまでにワークに対する核体の付着量が増大した。
【0126】
比較例のブラスト加工装置においても,混合器によって回収研磨材と砥粒との混合は行われており,これによって砥粒の脱落によって露出した回収研磨材の核体表面には,新たな砥粒の付着は行われている。
【0127】
しかし,比較例のブラスト加工装置は,結合器を備えておらず,混合器によって付着された砥粒は,核体の表面に結合されておらず,その結果,混合器で付着させた砥粒は容易に脱落してしまい,核体が露出してワークに付着したものと考えられる。
【0128】
従って,弾性研磨材の再生装置に前述の結合器を設け,核体の表面に対する砥粒の押圧を行う構成が,砥粒を核体の表面に強固に結合させる上で極めて有効であることが確認された。