【解決手段】溶融樹脂成形材料を流通させる成形材料通路32が形成されたゲート部材31と、成形材料通路32の下流端を開閉するバルブピン37とを有するバルブゲートシステム30において、サーボモータ33と、軸の径外方に突出した係合部34aを有し、サーボモータ33の回転軸33aに連結して軸周りに回転するカム操作軸34と、カム操作軸34の係合部34aと係合する螺旋形状のカム溝35aを周壁部に有し、バルブピン37の中心軸の延長上に筒軸が有る状態に配置されて該バルブピン37と連結され、カム操作軸34の回転に伴って筒軸方向に移動するカム部材35と、カム操作軸34およびカム部材35を収容するハウジング36とを設ける。
前記ゲート部材に、前記成形材料通路の少なくとも一部を外側から取り囲み、供給された冷却媒体を流通させる冷却媒体通路が穿設されている請求項1に記載のバルブゲートシステム。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1〜4に示されているように、樹脂成形材料を成形する金型装置が知られている。この種の金型装置においては、溶融状態の樹脂成形材料を金型装置のキャビティに供給し、またその供給を断つために、溶融樹脂成形材料を上流端から受け入れて、該溶融樹脂成形材料が流出する下流端まで導く成形材料通路が形成されたゲート部材と、上記成形材料通路の下流端を開閉するバルブピンとを備えてなるバルブゲートシステムが広く用いられている。特許文献1〜4にはそのようなバルブゲートシステムの例も示されている。
【0003】
上記構成を有するバルブゲートシステムにおいては、通常、ゲート部材に形成された成形材料通路内に配されたバルブピンをその長手方向、つまり成形材料通路が延びる方向に移動させることによって、成形材料通路の下流端(ゲート)を開閉するようにしている。そしてバルブピンを上述のように移動させるための駆動手段としては、従来、エアシリンダや油圧シリンダ等からなるシリンダ装置や、モータが多く適用されている。特許文献1には、バルブピン駆動手段としてシリンダ装置を適用したバルブゲートシステムの例が示されている。また特許文献2〜4にはバルブピン駆動手段としてモータを適用したバルブゲートシステムの例が示されている。
【0004】
特許文献2〜4の中でも特に特許文献2には、バルブピンの側外方にモータを配置すると共に、バルブピンの接線方向に延在する伝達部材を設け、この伝達部材をモータによってその延在方向に移動させ、この移動をカム手段によってバルブピンの長手方向の移動に変換して、バルブピンに伝達させるようにしたバルブゲートシステムの例が示されている。また特許文献3および4には、回転軸がバルブピンの中心軸と向かい合う状態にモータを配置し、モータの回転軸に同軸に連結した雄ねじ部と、バルブピンに同軸に連結すると共に上記雄ねじ部と螺合する雌ねじ部とを設け、モータの回転駆動によって雌ねじ部をネジ軸方向に移動させてバルブピンを同方向に移動させるようにしたバルブゲートシステムの例が示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に示されたバルブゲートシステムにおいては、バルブピン駆動手段としてシリンダ装置を適用しているので、バルブピンの位置を検出する手段を付加することが困難であり、そのためバルブピンの開閉制御は一般にオープン制御でなされている。そこでこの種のバルブゲートシステムにおいては、バルブピンの移動位置(開閉位置)の制御の精度が低くなりがちであるという問題が認められている。
【0007】
特許文献2〜4に示されたバルブゲートシステムによれば、バルブピン駆動手段としてモータを適用しているので、モータ回転軸の回転量を検出するロータリエンコーダ等を付加することにより、上記の問題を防止可能である。しかし、特許文献2に示されたバルブゲートシステムにおいては、モータの駆動力をバルブピンまで伝達する機構が複雑で、大型化しやすいという問題が認められる。それに対して、特許文献3や4に示されたバルブゲートシステムによれば、モータの駆動力をバルブピンまで伝達する機構を簡素化かつ小型化することも容易である。しかし、特許文献3や4に示されたバルブゲートシステムにおいては、前述した雄ねじ部と雌ねじ部とを金型内に収めることが難しいので、それらのねじ部からなる機構および、この機構に連結するモータを金型の外に配設せざるを得ず、そのために金型装置が大型化するという問題が認められている。
【0008】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたものであり、バルブピン駆動手段としてモータを適用した上で、構成が簡単で、金型装置の大型化を回避できるバルブゲートシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によるバルブゲートシステムは、
樹脂成形材料を成形する金型装置におけるバルブゲートシステムであって、
溶融樹脂成形材料を上流端から受け入れて、該溶融樹脂成形材料が流出する下流端まで導く成形材料通路が形成されたゲート部材と、
上記成形材料通路の下流端を開閉するバルブピンと、
を有するバルブゲートシステムにおいて、
サーボモータと、
バルブピンの中心軸の延長上に配置された軸であって、軸の径外方に突出した係合部を有し、上記サーボモータの回転軸に連結して該サーボモータの駆動により軸周りに回転するカム操作軸と、
このカム操作軸の係合部と係合する螺旋形状のカム溝を周壁部に有する筒状のカム部材であって、バルブピンの中心軸の延長上に筒軸が有る状態に配置されて該バルブピンと連結され、カム操作軸の回転に伴って筒軸方向に移動するカム部材と、
上記カム操作軸および上記カム部材を収容するハウジングと、
を含んで構成されたことを特徴とするものである。
【0010】
なお、上記サーボモータの回転軸とカム操作軸との「連結」とは、それら両者が直接連結していることは勿論ながら、両者が間に何かの部材を介して間接的に連結していることも含むものとする。その点は、カム部材とバルブピンとの「連結」に関しても同様とする。
【0011】
また、上記のゲート部材には、成形材料通路の少なくとも一部を外側から取り囲み、供給された冷却媒体を流通させる冷却媒体通路が穿設されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によるバルブゲートシステムにおいては、軸の径外方に突出した係合部を有し、サーボモータの回転軸に連結して該サーボモータの駆動により軸周りに回転するカム操作軸と、このカム操作軸の回転に伴って筒軸方向に移動するカム部材とが、サーボモータの回転軸とバルブピンの中心軸との間に、それらの軸も含んで同軸上に直列に配置されているので、簡単な構成とすることができる。そして、上記の係合部とカム溝との間で係合を果たしているカム操作軸およびカム部材は、共にハウジング内に収容されているので、ハウジング共々金型装置内に配設することも容易である。そのようにカム操作軸およびカム部材を配設すれば、金型装置が徒に大型化することを防止できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態によるバルブゲートシステムを備えた金型装置1を示す平面図であり、
図2は
図1中のA−A線に沿った部分の側断面形状を示す側断面図である。金型装置1は基本的に、固定側金型10と可動側金型20とから構成されている。可動側金型20は図示外の駆動装置により、固定側金型10に対して接近、離間するように、つまり
図2中で上下方向に往復移動可能とされている。この
図2では、可動側金型20が固定側金型10に対して密接した状態を示しており、この状態下では両金型10および20によって樹脂成形用のキャビティCが形成される。固定側金型10の内部には、各キャビティCに対応させて1つのバルブゲートシステム30が配置されている。
【0015】
固定側金型10の最上部には、図示外の樹脂供給装置に接続された射出シリンダ11が配設されている。樹脂供給装置から射出シリンダ11に供給された溶融樹脂12は、マニホールド13を流通した後、該マニホールド13から各キャビティ用に分岐された成形材料通路14を経て、バルブゲートシステム30に送られる。バルブゲートシステム30は概略円柱状のゲート部材(ゲートブロック)31を含むものであり、このゲート部材31の中心部には全長に亘って延びる成形材料通路32が形成されている。成形材料通路32は上記成形材料通路14と連通されており、該成形材料通路32の図中の下端部は後述する機構によって開閉可能とされている。成形材料通路14を経て成形材料通路32内にその上端側から供給された溶融樹脂12は、キャビティCが形成された状態下で成形材料通路32が開かれるとキャビティC内に供給される。
【0016】
キャビティC内に供給された溶融樹脂12は、その後に固化して樹脂成形品となる。こうして樹脂成形品が得られると、可動側金型20は固定側金型10から離間する方向、つまり
図2中で下方に移動される。可動側金型20が固定側金型10から離間すると、プッシュ部21aを有するプッシャ21が可動側金型20内でキャビティC内に進入する方向、つまり
図2中で上方に移動される。樹脂成形品は、移動したこのプッシャ21のプッシュ部21aにより押されて、可動側金型20から外に排出される。
【0017】
なお本実施形態では、溶融樹脂12は一例として熱硬化型樹脂であり、キャビティC内に供給された後に例えば180℃程度に加熱されて固化する。この溶融樹脂12は、ゲート部材31内で固化することは避けなければならない。そのためにゲート部材31内には、溶融樹脂12の温度を例えば20℃程度に保つための冷却手段が設けられているが、その手段については後に詳しく説明する。なお、その冷却手段は、固定側金型10内に形成された冷却媒体通路を含んで構成されている。
図2では、図中右側のゲート部材31に対して設けられた1つの冷却媒体通路15の高さ位置が示されるように、特別にこの冷却媒体通路15周りの部分については、
図1中のB−B線に沿った面の側断面形状を示している。
【0018】
次に
図3〜
図5を参照して、バルブゲートシステム30について詳しく説明する。
図3は、このバルブゲートシステム30の外形を示す斜視図であり、
図4はバルブゲートシステム30を、
図1中のA−A線に沿った部分で切断して示す側断面図である。これらの図に示される通りバルブゲートシステム30は、先に説明したゲート部材31に加えて、サーボモータ33、カム操作軸34、カム部材35、ハウジング36およびバルブピン37を設けて構成されている。
【0019】
サーボモータ33の回転軸33aは、概略円柱状のカム操作軸34と同軸に連結されている。本実施形態において、回転軸33aはカム操作軸34と直接連結されているが、それら両者は間に別の部材を介して間接的に連結されても構わない。カム部材35は概略円筒状に形成されたものであり、上記カム操作軸34はこのカム部材35の内部に、同軸状態に組み合わせて配置されている。
図5は、このように組み合わされたカム操作軸34とカム部材35とを示すものであり、以下この
図5も参照してカム操作軸34およびカム部材35について詳しく説明する。
【0020】
カム操作軸34は、その外周面から径外方に突出した、例えば2個の係合部34aを有している。これらの係合部34aは、互いに180°(度)の角度間隔を置いて配置されている。一方カム部材35は、周壁部に螺旋形状のカム溝35aを有するものであり、このカム溝35aには上記2個の係合部34aがそれぞれ係合している。カム部材35の先端側、つまりサーボモータ33と反対側にはバルブピン連結部35bが形成され、バルブピン37はこのバルブピン連結部35bに連結されている。本実施形態において、バルブピン37はこうしてカム部材35と直接連結されているが、それら両者は間に別の部材を介して間接的に連結されても構わない。またカム部材35の外周面上には、互いに180度の角度間隔を置いて2本の案内凸部35cが突設されている。なおこれらの案内凸部35cはそれぞれ、カム溝35aが形成されている部分では途切れた状態となっている。
【0021】
以上の通りにしてサーボモータ33の回転軸33a、カム操作軸34、カム部材35は、バルブピン37の中心軸の延長上に中心軸が有る状態に配置されている。カム操作軸34およびカム部材35は、上述のように互いに係合した状態で、ハウジング36の概略円筒状の部分内に収容されている。ハウジング36の周壁部の内面には、
図4に示すように、それぞれカム操作軸34およびカム部材35の中心軸と平行な方向に延びる2本の案内溝36aが、互いに180度の角度間隔を置いて形成されている(
図4では、一方の案内溝36aのみ表示)。カム部材35に形成された上記2本の案内凸部35cは、それぞれこの案内溝36a内に収められている。
【0022】
そこでカム部材35はハウジング36内において、回転することは不可能で、その筒軸方向に移動することは可能とされている。したがって、このカム部材35内でカム操作軸34が回転された場合、カム部材35はカム操作軸34の回転に伴って筒軸方向に直線移動する。この直線移動の方向は、カム操作軸34の回転方向に応じて、つまりサーボモータ33の回転駆動方向に応じて変化する。こうしてカム部材35が直線移動すれば、該カム部材35に連結されているバルブピン37も同じように直線移動する。
【0023】
以上の実施の形態のバルブゲートシステムにおけるカム操作軸34とカム部材35の構成は、いわゆる「直進ヘリコイド」の構成に似ており、係合部34aは、ヘリコイドピンの役割を果たす。本実施の形態のバルブゲートシステムは、バルブピンの直進の移動距離を長くすることが難しいが、バルブの開閉に必要な移動距離を満足し、ネジ機構では困難である、回転運動を直進運動に変換する機構を金型内に収容することが比較的容易であり、もってバルブゲートのおおよそ全体を金型の中に収容することを可能にし、バルブゲートシステムの金型装置をよりコンパクトで省スペースにすることができるとともに、金型装置の外側に設けられる部材が少なく、設置に対する制約を少なくする点で有利である。また、バルブピンの制御をより正確に行なうようにすることができ、確実な動作を行なうことができる点で有利である。
【0024】
ゲート部材31は中心部に、その全長に亘って延びる前述の成形材料通路32を有している。バルブピン37は、その先端がテーパ状に形成されたものであり、上記成形材料通路32内に収められている。なおバルブピン37には、その先端に近い位置においてピストン部38が固定されている。そしてゲート部材31の成形材料通路32には、その内径が拡大された拡径部39が形成されており、上記ピストン部38はこの拡径部39内に収容されている。ピストン部38は拡径部39内において、拡径部39の周壁に沿って摺動可能とされている。それによりバルブピン37は、成形材料通路32の長手方向に対して傾斜することなく、該成形材料通路32内で直線移動可能となっている。
【0025】
先に
図2を参照して説明した通り、溶融樹脂12は成形材料通路32内にその上端側から供給される。つまり
図3において成形材料通路32の上端が上流端であり、下端が下流端である。成形材料通路32の下流端(ゲート)を形成しているゲート部材31の下端部31Gは、バルブピン37の先端形状に合わせてテーパ状とされている。そこで、バルブピン37が上述のように直線移動して下限位置に設定されると(
図3の状態)成形材料通路32が閉じられ、バルブピン37が下限位置から所定量上昇した位置に設定されると成形材料通路32が開かれる。
【0026】
前述したようにバルブピン37の直線移動方向は、サーボモータ33の回転駆動方向に応じて変化する。そこで、サーボモータ33の回転方向および回転量を制御してバルブピン37の上下方向位置を変えて、成形材料通路32を開閉することができる。本実施形態では
図3に示すように、サーボモータ33の回転軸33aの回転量を検出するロータリエンコーダ50が設けられている。そこで、このロータリエンコーダ50の出力に基づいてサーボモータ33の回転方向および回転量をフィードバック制御して、バルブピンの移動位置を高精度に制御することが可能である。
【0027】
以上説明した通り本実施形態のバルブゲートシステム30は、サーボモータ33の回転軸33a、カム操作軸34およびカム部材35が、バルブピン37の中心軸の延長上に中心軸が有る状態に配置されたものであって、モータの回転力を伝達部材によって方向を変えながら伝達する構成を有するバルブゲートシステムと比べれば、極めて簡単な構成となっている。また本実施形態のバルブゲートシステム30においては、カム操作軸34およびカム部材35がハウジング36内に収容されているので、カム操作軸34およびカム部材35をハウジング36と共に金型装置1内に、より詳しくは固定側金型10内に配置可能となっている。よってこのバルブゲートシステム30を適用することにより、金型装置1を簡潔かつ小型に形成可能である。
【0028】
次に、ゲート部材31内に形成された冷却媒体通路40について説明する。冷却媒体通路40は、
図3において左右に分けて示される通り2系統設けられている。各系統の冷却媒体通路40は、ゲート部材31内において、
図3中の下端部が閉じて上端部が互いに離れたU字状に穿設されている。ゲート部材31には
図4に示すように、互いに180度の角度間隔を置いて、2つの通路開口41が形成されている。なお
図4では一方の通路開口41のみ表示している。また通路開口41は
図3では表示されないが、2系統の冷却媒体通路40の上端近傍間において、図の手前側と奥側とに通路開口41が有る状態となる。U字状に穿設された各系統の冷却媒体通路40は、互いに離れている上端部の一方が一方の通路開口41に接続し、上端部の他方が他方の通路開口41に接続している。それらの通路開口41にはそれぞれ、固定側金型10内に形成された冷却媒体通路15(
図2に1つだけ表示)が接続される。
【0029】
そこで
図4に矢印Wで示す通り、ある冷却媒体通路15を通して供給された水等の冷却媒体は、1系統の冷却媒体通路40に一方の通路開口41から流入し、冷却媒体通路40内をU字状に流れて、他方の通路開口41から流出する。上記一方の通路開口41および他方の通路開口41は、別の1系統の冷却媒体通路40に対しても共用されている。つまり、その別の1系統の冷却媒体通路40においても、冷却媒体は上記と同じように流通する。以上説明の通り、2系統の冷却媒体通路40が成形材料通路32を外側から取り囲むように設けられていることにより、成形材料通路32を流れる樹脂成形材料が良好に冷却され得る。
【0030】
なお、上記冷却媒体通路40が形成されているゲート部材31は一般に、その外周面に嵌着されたOリング等のシール部材を適宜介して、固定側金型10内に配設される。また固定側金型10内において、ゲート部材31の長手方向中央位置近傍には、その上側と下側とを断熱する断熱部材が設けられることもある。それらのシール部材や断熱部材は本発明と直接的に関わるものではないので図示は省略しているが、必要に応じて従来公知のものを適宜採用することができる。