【解決手段】本開示の一態様は、シート本体と回転装置とを備える乗物用シートに用いられるシート用ワイヤハーネス配策装置である。シート用ワイヤハーネス配策装置は、シート本体の回転に伴ってワイヤハーネスの回収又は送出を行う余長吸収装置を備える。余長吸収装置は、シート本体が回転基準位置から左方向に回転する時と、シート本体が回転基準位置から右方向に回転する時とのそれぞれにおいてワイヤハーネスを外部に送出する収容部を有する。収容部は、シート本体が回転基準位置に向かって回転する復帰回転時にワイヤハーネスを内部に回収する。
シート本体と、前記シート本体をスライドさせるスライド装置と、前記シート本体を回転させる回転装置と、を備える乗物用シートに用いられるシート用ワイヤハーネス配策装置であって、
前記シート本体と共にスライドするように構成されると共に、前記シート本体の回転に伴ってワイヤハーネスの回収又は送出を行うように構成された第1余長吸収装置と、
前記シート本体と共にスライドするように構成されると共に、前記シート本体のスライドに伴ってワイヤハーネスの回収又は送出を行うように構成された第2余長吸収装置と、
を備え、
前記第1余長吸収装置は、前記シート本体が回転基準位置から左方向に回転する左回転時と、前記シート本体が前記回転基準位置から右方向に回転する右回転時と、のそれぞれにおいて前記ワイヤハーネスを外部に送出するように構成された第1収容部を有し、
前記第1収容部は、前記シート本体が前記回転基準位置に向かって左方向又は右方向に回転する復帰回転時に前記ワイヤハーネスを内部に回収するように構成される、シート用ワイヤハーネス配策装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記公報の配策装置では、乗物用シートの一方向の回転のみにおいてワイヤハーネスの余長の吸収が可能であり、左右両方向に回転する乗物用シートではワイヤハーネスの余長が吸収できない。
【0006】
本開示の一局面は、左右両方向に回転する乗物用シートのワイヤハーネスの余長を吸収できるシート用ワイヤハーネス配策装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、シート本体(11)と、シート本体(11)をスライドさせるスライド装置(12)と、シート本体(11)を回転させる回転装置(13)と、を備える乗物用シート(10)に用いられるシート用ワイヤハーネス配策装置(1)である。
【0008】
シート用ワイヤハーネス配策装置(1)は、シート本体(11)と共にスライドするように構成されると共に、シート本体(11)の回転に伴ってワイヤハーネス(100)の回収又は送出を行うように構成された第1余長吸収装置(2)と、シート本体(11)と共にスライドするように構成されると共に、シート本体(11)のスライドに伴ってワイヤハーネス(100)の回収又は送出を行うように構成された第2余長吸収装置(3)と、を備える。
【0009】
第1余長吸収装置(2)は、シート本体(11)が回転基準位置から左方向に回転する左回転時と、シート本体(11)が回転基準位置から右方向に回転する右回転時と、のそれぞれにおいてワイヤハーネス(100)を外部に送出するように構成された第1収容部(21)を有する。第1収容部(21)は、シート本体(11)が回転基準位置に向かって左方向又は右方向に回転する復帰回転時にワイヤハーネス(100)を内部に回収するように構成される。
【0010】
このような構成によれば、第1余長吸収装置(2)によって、シート本体(11)の左回転時及び右回転時にワイヤハーネス(100)が送出され、回転基準位置への復帰回転時にはワイヤハーネス(100)が回収される。そのため、左右両方向に回転する乗物用シート(10)のワイヤハーネス(100)の余長を吸収できる。
【0011】
本開示の一態様では、第1収容部(21)は、シート本体(11)の回転軸の周りにワイヤハーネス(100)を巻きながら収容するように構成されてもよい。このような構成によれば、シート本体(11)の回転に伴うワイヤハーネス(100)の回収を容易に行うことができる。
【0012】
本開示の一態様では、回転装置(13)は、スライド装置(12)に支持された支持部(131)と、シート本体(11)に固定されると共に、支持部(131)に対して回転するように構成された回転部(132)と、を有してもよい。第1余長吸収装置(2)及び第2余長吸収装置(3)は、それぞれ、支持部(131)に固定されるように構成されてもよい。このような構成によれば、第1余長吸収装置(2)と第2余長吸収装置(3)との相対位置が保持されるため、シート用ワイヤハーネス配策装置(1)の構造が簡略化できる。
【0013】
本開示の一態様では、第1収容部(21)は、第1収容部(21)の内部と外部とを連通すると共に、第1収容部(21)で回収及び送出されるワイヤハーネス(100)をシート前後方向に通過させるように構成された第1挿入口(21A)を有してもよい。このような構成によれば、左回転時のワイヤハーネス(100)の送出の動きと、右回転時のワイヤハーネス(100)の送出の動きとを対称にすることができる。そのため、左回転と右回転との間におけるワイヤハーネス(100)の送出抵抗の差異を低減できる。
【0014】
本開示の一態様では、第1収容部(21)は、第1収容部(21)の内部で折り返されるようにワイヤハーネス(100)を回収するように構成されてもよい。このような構成によれば、第1収容部(21)への回収時にワイヤハーネス(100)が第1収容部(21)の内部で絡まることを抑制できる。
【0015】
本開示の一態様では、第2余長吸収装置(3)は、シート本体(11)がスライド基準位置から離れるようにスライドする時にワイヤハーネス(100)を外部に送出するように構成された第2収容部(31)を有してもよい。第2収容部(31)は、シート本体(11)がスライド基準位置に向かってスライドする時にワイヤハーネス(100)を内部に回収するように構成されてもよい。このような構成によれば、シート本体(11)のスライドに伴うワイヤハーネス(100)の余長を的確に吸収できる。
【0016】
本開示の一態様では、第2収容部(31)は、第2収容部(31)の内部で折り返されるようにワイヤハーネス(100)を回収するように構成されてもよい。このような構成によれば、第2収容部(31)への回収時にワイヤハーネス(100)が第2収容部(31)の内部で絡まることを抑制できる。
【0017】
本開示の一態様では、第2余長吸収装置(3)は、ワイヤハーネス(100)を第2収容部(31)から上方に挿通させるように構成された挿通部(32)を有してもよい。このような構成によれば、第1余長吸収装置(2)と第2余長吸収装置(3)との間に配置されたワイヤハーネス(100)を挿通部(32)によって保護できる。その結果、シート本体(11)のスライド時にフロア部材等との干渉によってワイヤハーネス(100)が損傷することが抑制できる。
【0018】
本開示の一態様では、ワイヤハーネス(100)は、複数の導体が平面状に並置されたフラットハーネスであってもよい。挿通部(32)は、シート前後方向の長さがシート幅方向の長さよりも大きい筒体であってもよい。このような構成によれば、シート本体(11)のスライド時に挿通部(32)が通過する領域の幅を小さくできる。そのため、例えばカーペット等のフロア部材に設けられる開口の幅を小さくできる。
【0019】
本開示の一態様では、第2収容部(31)は、第2収容部(31)の内部と外部とを連通すると共に、回収及び送出されるワイヤハーネス(100)を通過させるように構成された第2挿入口(31A)と、ワイヤハーネス(100)の回収時にワイヤハーネス(100)を第2挿入口(31A)から上方に誘導するように構成された導入路(31B)と、を有してもよい。このような構成によれば、スライド装置(12)の固定レール(122A)とシート幅方向に重なる位置にワイヤハーネス(100)を配置することができる。その結果、スライド装置(12)の上下方向の高さを低減できる。
【0020】
本開示の一態様は、第2余長吸収装置(3)によって回収又は送出されるワイヤハーネス(100)を支持するように構成された支持レール(4)をさらに備えてもよい。スライド装置(12)は、シート本体(11)に回転装置(13)を介して取り付けられた可動レール(121A)と、可動レール(121A)をスライド可能に支持する固定レール(122A)と、を有してもよい。支持レール(4)は、固定レール(122A)に固定されるように構成されもよい。このような構成によれば、第2余長吸収装置(3)によって回収及び排出されるワイヤハーネス(100)を支持レール(4)によって保護することができる。
【0021】
なお、上記各括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的構成等との対応関係を示す一例であり、本開示は上記括弧内の符号に示された具体的構成等に限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本開示が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
[1.第1実施形態]
[1−1.構成]
図1に示す乗物用シート10は、シート本体11と、スライド装置12と、回転装置13と、シート用ワイヤハーネス配策装置(以下、単に「配策装置」ともいう。)1とを備える。
【0024】
<シート本体>
シート本体11は、シートクッション11Aと、シートバック11Bと、クッションフレーム11Cとを有する。
【0025】
シートクッション11Aは、着席者の臀部等を支持する。シートバック11Bは、着席者の背部を支持する。クッションフレーム11Cは、シートクッション11Aを支持する部材である。
【0026】
本実施形態の乗物用シート10のシート本体11は、乗用車の座席シートとして使用される。なお、以下の説明及び各図面における方向は、乗物用シート10を乗物(つまり乗用車)に組み付けた状態における方向を意味する。また、本実施形態では、シート幅方向は、乗物の左右方向に一致し、シート前方は、乗物の前方に一致する。
【0027】
<スライド装置>
スライド装置12は、乗物のフロア101に対し、シート本体11をシート前後方向にスライドさせる。スライド装置12は、第1可動レール121Aと、第2可動レール121Bと、第1固定レール122Aと、第2固定レール122Bと、アクチュエータ(図示省略)とを備える。
【0028】
第1可動レール121A及び第2可動レール121Bは、それぞれ、シート前後方向に延伸すると共に、回転装置13を介してシート本体11のクッションフレーム11Cに取り付けられている。第1可動レール121A及び第2可動レール121Bは、シート幅方向に互いに離間して配置されている。
【0029】
第1固定レール122A及び第2固定レール122Bは、それぞれ、シート前後方向(つまり可動レール121A,121Bのスライド方向)に延伸すると共に、乗物のフロア101に固定されている。
【0030】
第1固定レール122Aは、第1可動レール121Aをシート前後方向にスライド可能に支持している。第2固定レール122Bは、第2可動レール121Bをシート前後方向にスライド可能に支持している。
【0031】
スライド装置12のアクチュエータは、第1可動レール121A及び第2可動レール121Bを第1固定レール122A及び第2固定レール122Bに対しスライドさせる。このアクチュエータには、後述するワイヤハーネス100によって電力が供給させる。
【0032】
<回転装置>
回転装置13は、乗物のフロア101に対し、シート本体11の座面11Dと交差する回転軸Oを中心にシート本体11を回転させる。本実施形態では、回転軸Oは、車両のフロア101の床面と直交する。回転装置13は、支持部131と、回転部132と、アクチュエータ(図示省略)とを有する。
【0033】
支持部131は、スライド装置12に支持されている。具体的には、支持部131の下面には、第1可動レール121Aと第2可動レール121Bとが固定されている。そのため、回転装置13は、スライド装置12によって、シート本体11と共にスライドする。
【0034】
支持部131は、
図2に示す第1プレート131Aと、第2プレート131Bと、
図3に示す第3プレート131Cとを有する。第1プレート131Aは、中央に開口を有する。第2プレート131Bは、第1プレート131Aの開口の中心に配置されている。
【0035】
第3プレート131Cは、第1可動レール121A及び第2可動レール121Bに固定されている。第1プレート131A及び第2プレート131Bは、それぞれ、第3プレート131Cの上面に固定されている。
【0036】
図2に示す回転部132は、シート本体11のクッションフレーム11Cに固定されると共に、支持部131に対して回転するように構成されている。回転部132は、第1プレート131Aの開口に配置されている。回転部132は、第1プレート131Aと第2プレート131Bとによって回転可能に保持されている。
【0037】
回転装置13のアクチュエータは、回転部132を支持部131に対し回転させる。このアクチュエータには、後述するワイヤハーネス100によって電力が供給させる。
【0038】
<配策装置>
配策装置1は、
図4に示すように、第1余長吸収装置2と、第2余長吸収装置3と、支持レール4とを備える。
【0039】
(第1余長吸収装置)
第1余長吸収装置2は、シート本体11の回転に伴ってワイヤハーネス100の回収又は送出を行うように構成されている。第1余長吸収装置2は、
図2に示すように、回転装置13の支持部131の第2プレート131Bの上面に固定されている。
【0040】
第1余長吸収装置2は、シート本体11と共に回転しない。つまり、第1余長吸収装置2は、シート本体11の回転時に同じ姿勢を維持するように構成されている。一方、第1余長吸収装置2は、シート本体11と共にスライドするように構成されている。
【0041】
第1余長吸収装置2は、第1収容部21を有する。第1収容部21は、シート本体11が
図5Aに示す回転基準位置から左方向D1に回転する左回転時と、シート本体11が回転基準位置から右方向D2に回転する右回転時とのそれぞれにおいて、ワイヤハーネス100を外部に送出するように構成されている。
【0042】
また、第1収容部21は、
図5Bに示す右回転位置からシート本体11が回転基準位置に向かって左方向D1に回転するか、又は
図5Cに示す左回転位置からシート本体11が回転基準位置に向かって右方向D2に回転する復帰回転時に、ワイヤハーネス100を内部に回収するように構成されている。
【0043】
ここで、回転基準位置は、シート本体11の前方がスライド方向と平行になる位置である。右回転位置は、回転基準位置に対しシート本体11が右方向に回転した位置である。左回転位置は、回転基準位置に対しシート本体11が左方向に回転した位置である。
【0044】
第1収容部21は、
図6に示すように、第1挿入口21Aと、連通孔21Bと、第1ガイド部21Cと、保持部21Dと、第1仕切部21Eと、第1固定具21Fと、補助固定具21Gとを有する。
【0045】
第1挿入口21Aは、第1収容部21の内部と外部とを連通すると共に、第1収容部21で回収及び送出されるワイヤハーネス100をシート前後方向に通過させるように構成されている。本実施形態では、第1挿入口21Aは、シート前方に向かってワイヤハーネス100を送出する向きに配置されている。
【0046】
本実施形態におけるワイヤハーネス100は、複数の導体が平面状に並置された帯状のフラットハーネスである。ワイヤハーネス100は、幅方向(つまり導体の並置方向)が上下方向と平行となる向きで、第1挿入口21Aに挿入される。
【0047】
連通孔21Bは、第1収容部21の内部と外部とを連通すると共に、後述する第2余長吸収装置3を通過したワイヤハーネス100を受け入れるように構成されている。つまり、ワイヤハーネス100は、連通孔21Bを介して第1収容部21の内部を通過し、第1挿入口21Aからシート本体11に向かって配策される。
【0048】
第1ガイド部21Cは、シート本体11の回転方向に沿ってワイヤハーネス100を左方向又は右方向に送るように構成された通路である。本実施形態の第1ガイド部21Cは、円環の一部で構成されたC字状の通路である。ワイヤハーネス100は、第1ガイド部21Cの内部において、折り返された状態(つまり屈曲状態)で移動する。
【0049】
第1ガイド部21Cを構成する円環の中心軸P1は、シート本体11の回転軸Oと一致している。具体的には、第1ガイド部21Cは、中心軸P1を中心とする円弧で構成された内面211と、内面211と同心の円弧で構成された外面212とを有する。したがって、第1収容部21は、シート本体11の回転軸Oの周りにワイヤハーネス100を巻きながら収容するように構成されている。
【0050】
保持部21Dは、第1ガイド部21Cを構成する円環の内周面から円環の内側に突出した部位である。保持部21Dの端部には、連通孔21Bが形成されている。保持部21Dには、第1固定具21Fが配置されている。
【0051】
第1仕切部21Eは、第1ガイド部21Cのうち、第1挿入口21Aに近い位置に配置されている。第1仕切部21Eは、第1ガイド部21Cを幅方向(つまり円環の径方向)の2つの領域に分割している。
【0052】
第1仕切部21Eは、ワイヤハーネス100の第1収容部21からの送出長さが最大になる時(つまり、シート本体11の回転基準位置からの回転量が最大となる時)にワイヤハーネス100の折り返し部100Aが当接又は近接する位置に配置されている。
【0053】
第1固定具21Fは、ワイヤハーネス100を第1収容部21内で固定している。第1固定具21Fは、連通孔21Bの近傍に配置されている。第1固定具21Fによって、第1収容部21内のワイヤハーネス100が連通孔21Bから排出されることが規制される。これにより、第1挿入口21Aから第1収容部21内に進入したワイヤハーネス100が第1収容部21内に収容される。
【0054】
補助固定具21Gは、第1仕切部21Eと第1ガイド部21Cの内面211との間に配置されている。補助固定具21Gは、第1ガイド部21Cに配置されたワイヤハーネス100のうち、折り返し部100Aよりも連通孔21Bに近い部分を第1収容部21に対し固定している。ワイヤハーネス100のうち、補助固定具21Gと第1固定具21Fとに挟まれた部分の長さは一定に保たれる。
【0055】
シート本体11が回転基準位置にあるとき、ワイヤハーネス100は、
図6に実線で示す位置に存在する。つまり、シート本体11が回転基準位置にあるとき、ワイヤハーネス100の折り返し部100Aは第1ガイド部21Cの最も奥の部分に位置し、第1ガイド部21Cに収容されるワイヤハーネス100の長さが最大となる。
【0056】
シート本体11が回転基準位置から左方向D1又は右方向D2に回転すると、ワイヤハーネス100が第1ガイド部21Cから引き出される。ワイヤハーネス100は、シート本体11の回転に伴って、
図6に破線で示す位置を経由して、
図6に一点鎖線で示す位置まで移動する。このとき、第1仕切部21Eによって、ワイヤハーネス100の折り返し状態が維持される。
【0057】
シート本体11が右回転位置又は左回転位置から回転基準位置に向かって回転すると、ワイヤハーネス100が第1ガイド部21Cに押し込まれて、ワイヤハーネス100の折り返し部100Aが実線の位置まで移動する。このように、第1収容部21は、第1収容部21の内部で折り返されるようにワイヤハーネス100を回収するように構成されている。
【0058】
(第2余長吸収装置)
第2余長吸収装置3は、シート本体11のスライドに伴ってワイヤハーネス100の回収又は送出を行うように構成されている。第2余長吸収装置3は、
図3に示すように、回転装置13の支持部131の第3プレート131Cに下側から固定されている。第2余長吸収装置3は、第1余長吸収装置2よりも下方に配置されている。
【0059】
第2余長吸収装置3は、シート本体11と共に回転しない。つまり、第2余長吸収装置3は、第1余長吸収装置2と共に、シート本体11の回転時に同じ姿勢を維持するように構成されている。一方、第2余長吸収装置3は、シート本体11と共にスライドするように構成されている。
【0060】
図7に示すように、第2余長吸収装置3は、第2収容部31と、挿通部32とを有する。第2収容部31は、シート本体11がスライド基準位置から離れるようにスライドする時にワイヤハーネス100を外部に送出するように構成されている。
【0061】
また、第2収容部31は、スライド基準位置とは異なる位置からシート本体11がスライド基準位置に向かってスライドする時に、ワイヤハーネス100を内部に回収するように構成されている。
【0062】
ここで、スライド基準位置は、第2収容部31に収容されるワイヤハーネス100の長さが最大になる位置である。本実施形態では、スライド基準位置は、乗物のフロア101に対するワイヤハーネス100の固定位置(例えば後述する支持レール4の第3固定具42)に、第2収容部31の第2挿入口31Aが最も近接する位置である。
【0063】
第2収容部31は、
図8Aに示すように、第2挿入口31Aと、導入路31Bと、第2ガイド部31Cと、第2仕切部31Dと、第2固定具31Eとを有する。
【0064】
第2挿入口31Aは、第2収容部31の内部と外部とを連通すると共に、第2収容部31で回収及び送出されるワイヤハーネス100をシート前後方向に通過させるように構成されている。本実施形態では、第2挿入口31Aは、シート前方に向かってワイヤハーネス100を送出する向きに配置されている。ワイヤハーネス100は、幅方向が上下方向と平行となる向きで、第2挿入口31Aに挿入される。
【0065】
導入路31Bは、後端部に後述する第2ガイド部31Cが連結されると共に、前端部に第2挿入口31Aが設けられている。ワイヤハーネス100は、第2挿入口31Aから導入路31B内を通過して第2ガイド部31Cに到達する。
【0066】
導入路31Bは、
図8Bに示すように、ワイヤハーネス100の回収時にワイヤハーネス100を第2挿入口31Aから上方に誘導するように構成されている。つまり、導入路31Bは、後端部が前端部よりも上方に位置するように湾曲している。
【0067】
図8Aに示す第2ガイド部31Cは、シート本体11の回転方向に沿ってワイヤハーネス100を左方向又は右方向に送るように構成された通路である。本実施形態の第2ガイド部31Cは、円環の一部で構成されたC字状の通路である。ワイヤハーネス100は、第2ガイド部31Cの内部において、折り返された状態で移動する。
【0068】
第2ガイド部31Cを構成する円環の中心軸P2は、シート本体11の回転軸Oと一致している。具体的には、第2ガイド部31Cは、中心軸P2を中心とする円弧で構成された内面311と、内面311と同心の円弧で構成された外面312とを有する。したがって、第2収容部31は、シート本体11の回転軸Oの周りにワイヤハーネス100を巻きながら収容するように構成されている。
【0069】
第2仕切部31Dは、第2ガイド部31Cのうち、導入路31Bに近い位置に配置されている。第2仕切部31Dは、第2ガイド部31Cを幅方向(つまり円環の径方向)の2つの領域に分割している。
【0070】
第2仕切部31Dは、ワイヤハーネス100の第2収容部31からの送出長さが最大になる時(つまりシート本体11のスライド基準位置からのスライド量が最大となる時)にワイヤハーネス100の折り返し部100Bが当接又は近接する位置に配置されている。
【0071】
第2固定具31Eは、ワイヤハーネス100を第2収容部31内で固定している。第2固定具31Eは、挿通部32の近傍に配置されている。第2固定具31Eによって、第2収容部31内のワイヤハーネス100が挿通部32から排出されることが規制される。これにより、第2挿入口31Aから第2収容部31内に進入したワイヤハーネス100が第2収容部31内に収容される。
【0072】
図7に示す挿通部32は、ワイヤハーネス100を第2収容部31から上方に挿通させるように構成されている。挿通部32は、シート本体11の回転軸Oと重なる位置に配置されている。
【0073】
挿通部32は、シート前後方向の長さがシート幅方向の長さよりも大きい筒体である。挿通部32の中空部の中心軸と垂直な断面における形状は、楕円状である。つまり、挿通部32の中空部は、角を有さない。
【0074】
ワイヤハーネス100は、幅方向がシート前後方向と平行となる向きで挿通部32内に配置される。ワイヤハーネス100は、第2収容部31の第2ガイド部31Cから挿通部32を通過して、第1余長吸収装置2に向かって配策される。
【0075】
第2収容部31は、固定レール122A,122Bと共に、フロア101の上に配置されるカーペットに被覆され、カーペットとフロア101との間でスライドする。一方、挿通部32は、カーペットに設けられたスリットに挿通され、スリット内をスライドする。
【0076】
シート本体11がスライド基準位置にあるとき、ワイヤハーネス100は、
図8Aに実線で示す位置に存在する。つまり、シート本体11がスライド基準位置にあるとき、ワイヤハーネス100の折り返し部100Bは第2ガイド部31Cの最も奥の部分に位置し、第2ガイド部31Cに収容されるワイヤハーネス100の長さが最大となる。
【0077】
シート本体11がスライド基準位置から前方又は後方にスライドすると、ワイヤハーネス100が第2ガイド部31Cから引き出される。ワイヤハーネス100は、シート本体11のスライドに伴って、
図8Aに破線で示す位置を経由して、
図8Aに一点鎖線で示す位置まで移動する。このとき、第2仕切部31Dによって、ワイヤハーネス100の折り返し状態が維持される。
【0078】
シート本体11がスライド基準位置よりも前方又は後方の位置からスライド基準位置に向かってスライドすると、ワイヤハーネス100が第2ガイド部31Cに押し込まれて、ワイヤハーネス100の折り返し部100Bが実線の位置まで移動する。このように、第2収容部31は、第2収容部31の内部で折り返されるようにワイヤハーネス100を回収するように構成されている。
【0079】
<支持レール>
図9に示す支持レール4は、第2余長吸収装置3によって回収又は送出されるワイヤハーネス100を支持するように構成されている。また、支持レール4は、第2余長吸収装置3をスライド可能に支持するようにも構成されている。
【0080】
支持レール4は、
図4に示すように、第1固定レール122Aに固定されている。支持レール4は、第1固定レール122Aのシート幅方向内側(つまり左側)に配置されている。支持レール4は、
図8Aに示すように、溝41と、第3固定具42とを有する。
【0081】
溝41は、第2余長吸収装置3の導入路31Bの前端部がシート前後方向に摺動可能に構成されている。第2余長吸収装置3の導入路31B及び第2挿入口31Aは、シート本体11のスライドに伴って、溝41内をシート前後方向に移動する。
【0082】
第2挿入口31Aから送出されるワイヤハーネス100は、溝41内に配置される。また、第2収容部31は、溝41内に配置されたワイヤハーネス100を第2挿入口31Aから内部に回収する。
【0083】
第3固定具42は、ワイヤハーネス100を溝41内で固定している。第3固定具42は、溝41の前端部に配置されている。第3固定具42によって、溝41よりも前方に配策されたワイヤハーネス100が溝41の内部に進入することが規制される。これにより、溝41内でのワイヤハーネス100の詰まりや撓みが抑制される。
【0084】
乗物用シート10が設置された乗物から引き出されたワイヤハーネス100は、支持レール4、第2余長吸収装置3、及び第1余長吸収装置2をこの順に経由して、シート本体11に取り付けられた電装品に接続される。
【0085】
[1−2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)第1余長吸収装置2によって、シート本体11の左回転時及び右回転時にワイヤハーネス100が送出され、回転基準位置への復帰回転時にはワイヤハーネス100が回収される。そのため、左右両方向に回転する乗物用シート10のワイヤハーネス100の余長を吸収できる。
【0086】
(1b)第1収容部21がシート本体11の回転軸Oの周りにワイヤハーネス100を収容することで、シート本体11の回転に伴うワイヤハーネス100の回収を容易に行うことができる。
【0087】
(1c)第1余長吸収装置2及び第2余長吸収装置3がそれぞれ回転装置13の支持部131に固定されることで、第1余長吸収装置2と第2余長吸収装置3との相対位置が保持される。その結果、シート用ワイヤハーネス配策装置1の構造が簡略化できる。
【0088】
(1d)第1挿入口21Aがワイヤハーネス100をシート前後方向に通過させることで、左回転時のワイヤハーネス100の送出の動きと、右回転時のワイヤハーネス100の送出の動きとを対称にすることができる。そのため、左回転と右回転との間におけるワイヤハーネス100の送出抵抗の差異を低減できる。
【0089】
(1e)ワイヤハーネス100が第1収容部21の内部で折り返されることで、第1収容部21への回収時にワイヤハーネス100が第1収容部21の内部で絡まることを抑制できる。
【0090】
(1f)ワイヤハーネス100が第2収容部31の内部で折り返されることで、第2収容部31への回収時にワイヤハーネス100が第2収容部31の内部で絡まることを抑制できる。
【0091】
(1g)第1余長吸収装置2と第2余長吸収装置3との間に配置されたワイヤハーネス100を挿通部32によって保護できる。その結果、シート本体11のスライド時にフロア部材等との干渉によってワイヤハーネス100が損傷することが抑制できる。
【0092】
(1h)挿通部32がシート前後方向の長さがシート幅方向の長さよりも大きい筒体であることで、シート本体11のスライド時に挿通部32が通過する領域の幅を小さくできる。そのため、例えばカーペット等のフロア部材に設けられる開口の幅を小さくできる。
【0093】
(1i)ワイヤハーネス100を第2挿入口31Aから上方に誘導する導入路31Bによって、スライド装置12の第1固定レール122Aとシート幅方向に重なる位置にワイヤハーネス100を配置することができる。その結果、スライド装置12の上下方向の高さを低減できる。
【0094】
(1j)第2余長吸収装置3によって回収及び排出されるワイヤハーネス100を支持レール4によって保護することができる。
【0095】
(1k)第1余長吸収装置2、第2余長吸収装置3及び支持レール4がそれぞれ独立しているため、スライド装置12又は回転装置13に個別に取り付けられる。その結果、乗物用シート10の組み立て作業性が向上する。
【0096】
[2.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0097】
(2a)上記実施形態のシート用ワイヤハーネス配策装置1において、第1収容部21及び第2収容部31は、必ずしもシート本体11の回転軸Oの周りにワイヤハーネス100を巻きながら収容しなくてもよい。
【0098】
(2b)上記実施形態のシート用ワイヤハーネス配策装置1において、第1収容部21及び第2収容部31は、必ずしも折り返すようにワイヤハーネス100を回収しなくてもよい。
【0099】
(2c)上記実施形態のシート用ワイヤハーネス配策装置1において、第1収容部21の第1挿入口21A及び第2収容部31の第2挿入口31Aは、必ずしもワイヤハーネス100をシート前後方向に通過させなくてもよい。
【0100】
(2d)上記実施形態のシート用ワイヤハーネス配策装置1において、第1余長吸収装置2及び第2余長吸収装置3は、必ずしも回転装置13の支持部131に固定されなくてもよい。つまり、第1余長吸収装置2及び第2余長吸収装置3は、シート本体11と共に回転するように構成されてもよい。
【0101】
(2e)上記実施形態のシート用ワイヤハーネス配策装置1によって配策されるワイヤハーネス100は、フラットハーネスに限定されない。シート用ワイヤハーネス配策装置1は、例えば、断面が円形のワイヤハーネスにも適用することができる。
【0102】
(2f)上記実施形態の乗物用シート10は、乗用車以外の自動車に用いられるシートや、自動車以外の例えば鉄道車両、船舶、航空機等の乗物に用いられるシートにも適用することができる。
【0103】
(2g)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。なお、特許請求の範囲に記載の文言から特定される技術思想に含まれるあらゆる態様が本開示の実施形態である。