【解決手段】中空の筒状である筒状部と、該筒状部の両端面がエンドプレートによって閉塞されて成る燃料タンクであって、筒状部は、底面に連接して2つの側面が立設されると共に、底面と対抗する位置に天面が配置され、該天面と2つの側面とが夫々下り傾斜を成す傾斜面を介して連接されて成り、底面及び天面は、所定の曲率半径を有する曲面形状に成形されると共に、側面及び傾斜面は、平面形状に成形されて成り、エンドプレートは、外周縁部を内側へ2段階に絞ることで、基部側に第1の絞り部が形成されると共に、端部側に第2の絞り部が形成され、外周形状が前記筒状部の端面形状と同形を成し、第1の絞り部の外周面全体にはセレーション部が形成されると共に、第2の絞り部にはひだ状部が形成されて成り、エンドプレートの第1の絞り部を筒状部の端面内側へ圧入した状態で接続部分を溶接することで、筒状部とエンドプレートとが固定されて成る手段を採る。
傾斜面のいずれか一方には、該傾斜面に対し略垂直方向へ延伸する略円筒形状の給油口が配設されて成ることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の燃料タンク。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、溶接の際に、発生するガスによってピンホールや亀裂が発生するなどといった、溶接が不完全になるという問題点に鑑み、溶接する部分付近にセレーションを形成することによって、接合不良を抑制して品質・強度を向上させることを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、中空の筒状である筒状部と、該筒状部の両端面がエンドプレートによって閉塞されて成る燃料タンクであって、筒状部は、底面に連接して2つの側面が立設されると共に、底面と対抗する位置に天面が配置され、該天面と2つの側面とが夫々下り傾斜を成す傾斜面を介して連接されて成り、底面及び天面は、所定の曲率半径を有する曲面形状に成形されると共に、側面及び傾斜面は、平面形状に成形されて成り、エンドプレートは、外周縁部を内側へ2段階に絞ることで、基部側に第1の絞り部が形成されると共に、端部側に第2の絞り部が形成され、外周形状が前記筒状部の端面形状と同形を成し、必要に応じて筒状部との溶接箇所に存するメッキが除去され、第1の絞り部の外周面全体にはセレーション部が形成されると共に、第2の絞り部にはひだ状部が形成されて成り、エンドプレートの第1の絞り部を筒状部の端面内側へ圧入した状態で接続部分を溶接することで、筒状部とエンドプレートとが固定されて成る手段を採る。
【0008】
また、本発明は、前記燃料タンクにおいて、セレーション部のピッチが1.5mmであることを手段とする。
【0009】
さらに、本発明は、前記燃料タンクにおいて、筒状部の内部にセパレータが配設されて成ることを手段とする。
【0010】
またさらに、本発明は、前記燃料タンクにおいて、傾斜面のいずれか一方に、該傾斜面に対し略垂直方向へ延伸する略円筒形状の給油口が配設されて成ることを手段とする。
【0011】
さらにまた、本発明は、中空の筒状である筒状部と、該筒状部の両端面がエンドプレートによって閉塞されて成る燃料タンクの製造方法であって、平板に複数の孔を開け、曲げ加工によって、底面、天面、一対の側面、傾斜面を形成し、端部を溶接し、筒状部を形成する筒状部形成工程と、筒状部の両端の形状に合わせた皿状板の外周縁部を中心方向に絞ることで、第1の絞りと第2の絞りを設け、必要に応じて筒状部との溶接箇所に存するメッキを除去し、第1の絞りにはセレーションを設け、第2の絞りにはひだ状部を設けて、エンドプレートを形成するエンドプレート形成工程と、該エンドプレートの該第1の絞りと第2の絞りを該筒状部の端部から挿入し、該筒状部と該エンドプレートとを該筒状部の端部に沿って溶接するエンドプレート固定工程と、から成る手段を採る。
【0012】
またさらに、本発明は、前記燃料タンクの製造方法において、セレーションのピッチが1.5mmであることを手段とする。
【0013】
さらにまた、本発明は、前記燃料タンクの製造方法において、筒状部の内部にセパレータを圧入して溶接し固定することを手段とする。
【0014】
そしてまた、本発明は、前記燃料タンクの製造方法において、傾斜面に給油口を設けることを手段とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る燃料タンク並びにその製造方法によれば、溶接時に発生するガスが、セレーションを通して外部に出るので、ガスが溶接部に滞留すること無く、接合不良を抑制することができると共に、溶接の確実性が向上し、品質・強度を向上させ、経年使用による溶接箇所の疲労にも耐え得る、といった従来にない優れた効果を発揮するものである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る燃料タンク並びにその製造方法は、溶接時に発生するガスによる接合不良を抑制すべく、溶接部にセレーションを形成したことを最大の特徴とする。
以下、本発明に係る燃料タンク並びにその製造方法の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0018】
なお、本実施形態で示される燃料タンク並びにその製造方法における全体構成や各部の構成は、下記に述べる実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、構成・手法等の範囲内で変更することができるものである。
【0019】
図1から
図5に従って、本発明を説明する。
図1は、本発明に係る燃料タンクのセレーション部分を部分断面図とした全体斜視図である。
図2は、本発明に係る燃料タンクの製造工程を示す説明図である。
図3は、本発明に係る燃料タンクのエンドプレートの成形工程を示す模式図であり、エンドプレートを成形する内外ローラの図である。
図4は、従来の燃料タンクの溶接工程を示す説明図である。
図5は、本発明に係る燃料タンクの溶接工程を示す説明図である。
燃料タンク1は、トラックやバス等の燃料を貯蔵するものである。燃料は、引火性が高く危険度が高い。そのため、燃料タンクは重要保安部品として位置付けられ、通常の使用時だけでなく、自動車が衝突した際も、燃料が漏れ出ない構造であることが求められる。そこで、製造段階における溶接等においても、高品質であること、すなわち気密性や所定の強度が求められる。
【0020】
燃料タンク1は、主に筒状部10、セパレータ20とエンドプレート30とから構成されている。また、燃料を給油する給油口、エンジン等に燃料を送るフィードパイプ等を備える。
燃料タンク1は、外観的には、中空の筒状である筒状部10の両端がエンドプレート30によって塞がれ密閉された形状である。
【0021】
筒状部10は、平板60を適宜折り曲げて、底面11、天面12、側面13、傾斜面14の面を生成し、該平板60の短辺同士を溶接し、筒状としたものである。底面11に連接して2つの側面13が立設され、底面11と対抗する位置に天面12が配置され、該天面12と2つの側面13とが夫々下り傾斜を成す傾斜面14を介して連接されている。尚、傾斜面14の傾斜角度については、特に限定はないが、水平面から30°程度が好適である。底面11及び天面12は、燃料タンク1の強度を増すために曲面の形状であり、他の側面13及び傾斜面14は平面の形状である。底面11及び天面12を曲面形状とすることで、走行中の振動による応力を減少させることができ、その結果として燃料タンク1の板厚を薄くすることが可能であって、軽量化にも資する。
【0022】
天面12と2つの側面13との間に夫々存する傾斜面14のいずれか一方には、給油口15が配設されている。該給油口15は、略円筒形状であって、傾斜面14に対し略垂直に延伸する状態で、該傾斜面14に溶接にて取り付け配置される。これにより、給油口15は、傾斜面14に沿って斜め上方を向いて配置されることから、実際の使用において給油しやすくなると共に、該給油口15を配設する為の孔をバーリング加工により形成することで、溶接作業の容易性並びに溶接安定性の向上に資することとなる。
【0023】
筒状部10の材質は、スチール、アルミ、ステンレス等の金属である。ここでは、メッキ鋼の場合について説明する。メッキ鋼とは、表面にメッキ部35が施されている鋼材である。腐食防止のためであり、例えば、亜鉛メッキでなされている。
【0024】
セパレータ20は、必要に応じて燃料タンク1の内部に配置されるもので、燃料タンク1を内側から補強して、全体構造を強化することができ、燃料タンク1の変形や歪みを抑制して、強度品質を向上させることができる。これにより、燃料タンク1の板厚を薄くすることも可能であって、軽量化にも資することとなる。
また、セパレータ20は、それを配置することによって、燃料の流動を抑制して、流動音の防止や流動による衝撃を緩和すると共に、走行時の振動荷重を適宜分散することを可能にする。
セパレータ20は、燃料タンク1内に、必要に応じて1枚または複数枚配置される。セパレータ20には、複数の孔が開いており、セパレータ20を通して、ある程度の燃料が流通する構造となっている。セパレータ20は、溶接によって、筒状部10の内部に固定される。
【0025】
エンドプレート30は、燃料タンク1の両端に配置されるもので、燃料タンク1の強度に大きく関わる。概要としては、筒状部10の両端に蓋をする構造である。エンドプレート30の従来構造としては、筒状部10を外側から覆って固定する方法や、筒状部10の内側にエンドプレート30を挿入して固定する方法があるが、本発明では、エンドプレート30の一部を絞り、エンドプレート30の一部を筒状部10の内部に挿入して固定する方法を採用する。エンドプレート30は、プレス型絞り等によって形成された皿状の部材の外周縁部を、内側に絞る、いわゆる段付加工を行うことで、筒状部10に挿入する部分を形成する。絞りの形状は2段である。端部側の絞りを第2の絞り部32とし、基部側の絞りを第1の絞り部31とする(
図1、
図2(c))。
【0026】
第1の絞り部31には、セレーション部33が作られる。セレーションは、端部方向に延びる細かな溝の列であり、第1の絞り部31の外周面全体に施されている。セレーション部33は、筒状部10とエンドプレート30とを溶接する際のガスがビード内に入るのを防ぐためのものである。筒状部10とエンドプレート30とを溶接によって固定する際、エンドプレート30の表面のメッキ部35が溶接時の高温でガス化する。ガスの行き場が無い場合、溶接時のビード内に入り込み、気泡等になり、溶接箇所の品質強度を低下させる。セレーション部33があると、発生したガスは、セレーション部33を伝って、エンドプレート30の端部方向に抜ける。そのため、ガスが溶接時のビード内に入り込むことが無く、溶接の気密性・密閉性並びに品質強度を維持できる。尚、溶接時のガス発生を抑制すべく、エンドプレート30における筒状部10との溶接箇所に存するメッキは、予め除去しておくことが好適である。
【0027】
セレーション部33は、第1の絞り部31の外周面全体に設けられる。セレーション部33の溝のピッチは1.5mm、深さは0.75mm程度である。セレーション部33のピッチ及び深さが、大きすぎると筒状部10とエンドプレート30の隙間が大きくなり、固定強度に影響を与える可能性がある。ピッチ及び深さが小さすぎると、セレーションを通してガスなどの気体が十分抜け切れず、ガス抜きの効果が得られない。
【0028】
第2の絞り部32には、ひだ状部34が設けられている。ひだ状部34により、エンドプレート30の端部を絞る際の歪みを定型化することによって、エンドプレート30全体の歪みを軽減することができる。 エンドプレート30の材質は、スチール、アルミ、ステンレス等の金属である。ここでは、メッキ鋼の場合について説明する。メッキ鋼とは、表面にメッキ部35が施されている鋼材である。腐食防止のためであり、例えば、亜鉛メッキでなされている。
【0029】
図2に沿って、燃料タンク1の製造工程を説明する。
まず、筒状部形成工程を説明する。筒状部形成工程は、筒状部10を形成する工程である。
平板60は、筒状部10の元となる部材である(
図2(a))。平板60は、筒状部10を展開した形状であり、側面13、底面11、側面13、傾斜面14、天面12、傾斜面14の領域を含む。給油口15等に対応する位置に、打ち抜きまたはNC加工等によって孔が開けられる。このとき、バーリング加工により孔周縁に若干の立ち上がり部を形成してもよい。また、小型の部品として、ゲージシート、塗装ハンガ、ドレインシート、パイプステイ等が取り付けられる。
【0030】
平板60は、ベンディングマシン等でNC制御により正確な曲げ加工が成されることで、底面11、天面12、側面13、傾斜面14の面を形成する(
図2(b))。次に、筒状となるべき面の端部の辺であるドラムの縦継ぎ部分60aの溶接を行う。溶接には、例えば、アーク溶接のMIG溶接あるいはMAG溶接を用いる。外観として目立つ部分であるので、熱集中性が良くビード幅が狭く、歪の少ない溶接が適するからである。溶接を完了することで、筒状部10の概形が完成する。
【0031】
筒状部10の傾斜面14に給油口15を溶接する。また、筒状部10に対して、必要に応じてセパレータ20を所定の位置まで圧入し、溶接によって固定する(
図2(c))。溶接には、例えば、スポット溶接を用いる。溶接すべき場所が筒状部10の内側であり、筒状部10とセパレータ20を挟み込むことで溶接するスポット溶接が適しているためである。いかなる溶接手段を用いるかは、材質によっても異なる。すなわち、メッキ鋼やステンレスであれば、スポット溶接が好適であり、アルミであれば、TIG溶接などのアーク溶接が好適である。
また、筒状部10にフィードパイプ、リターンパイプを取り付ける。
【0032】
エンドプレート形成工程を説明する。エンドプレート形成工程は、エンドプレートの概形をプレス型で絞り、段付加工として絞りを行い、セレーション、ひだ部を作り、エンドプレート30を完成する工程である。
プレス型での絞りに適した形状に型切りした金属板をプレスすることによって、皿状の形状とし、エンドプレート30の概形を作る(
図2(d))。エンドプレート30の外周端辺部分は、筒状部10の底面11、天面12、側面13、傾斜面14の面に対応するように、各面を形成している。すなわち、エンドプレート30の外周形状は、筒状部10の端面形状と同形に成形することとなり、エンドプレート30の周囲の寸法は、筒状部10の周囲の寸法と同じである。
【0033】
必要に応じて、エンドプレート30における筒状部10との溶接箇所に存するメッキを、研磨等により除去する。これにより、溶接時におけるガスの発生を抑制することができる。
次いで、段付加工専用機によって、段付き、セレーション加工等を行う。段付加工専用機は、成形用外ローラ40と成形用内ローラ50とから成る。
エンドプレート30の外周縁部である皿状の周縁部分を、成形用外ローラ40、成形用内ローラ50で挟み込みながら成形することによって、2段絞り形状とする(
図2(e))。絞りは、端部に近いほうが第2の絞り部32で、端部から遠いほうが第1の絞り部31である。
【0034】
第1の絞り部31は、ローラで成形する際、同時にセレーション部33を形成する。セレーション部33は、端部方向への溝の列であり、溝のピッチは一定である。第1の絞り部31の外周面は、エンドプレート30を筒状部10に圧入する際、筒状部10の内側に密着する部分である。端部に近いほど絞り量を大きくしている。第2の絞り部32は、ローラで成形する際、同時にひだ状部34を形成する。第2の絞り部32は、エンドプレート30を筒状部10に入れやすくするためのもので、端部に近いほど絞り量を大きくしている。ひだ状部34は、絞りの際の歪みを分散するためのものである。
【0035】
エンドプレート固定工程を説明する。エンドプレート30を筒状部10に固定する工程である。
筒状部10の両端にエンドプレート30を取り付ける。エンドプレート30の絞り部分が筒状部10の内側に入る。第1の絞り部31と筒状部10の内側は、ゼロ篏合に近く、圧入する形となる(
図2(f))。
【0036】
筒状部10とエンドプレート30の接続部分を溶接する。溶接には、例えば、アーク溶接のMAG溶接を用いる。他の溶接に比べて、スパッタが少なく仕上がりがきれいだからである。溶接方法は、2枚の鋼板を重ね合わせ、上板となる筒状部10の端部と下板となるエンドプレート30の絞り付近を溶融するため重ねて、すみ肉溶接となる。筒状部10にエンドプレート30を圧接した部分について、全て高品質に溶接する必要がある。溶接が不十分であると、燃料漏れの原因となるからである。
【0037】
尚、かかる筒状部10とエンドプレート30との溶接に際し、筒状部10の両端にエンドプレート30を圧入した状態で、両端側からエンドプレート30を所定ワークで挟持すると共に、溶接箇所に溶接トーチを当てがって、該ワークを所定速度で回転させながら該溶接トーチによる溶接を行う手法を採り得る。かかる手法により、溶接作業の容易性並びに溶接安定性の向上に資することとなる。
【0038】
また、連結用部品であるストレーナ、ガスケット、スクリュープラグ、コネクティングシート等を取り付ける。その後、漏れ検査、塗装等を行い、燃料タンク1が完成する。
【0039】
図3に沿って、エンドプレート30の成形方法について説明する。
図3(a)は、成形用ローラの模式図である。内、外、2つのローラで、エンドプレート30の端部に絞り形状を成形する。成形用外ローラ40は、エンドプレート30の端部に外側から圧接する。紙面上の左側に回転軸があり、成形用内ローラ50とともにエンドプレート30の端部を挟みながら回転することで、絞りを成形する。成形用外ローラ40には、外ローラセレーション成形部41と外ローラひだ部成形部42があり、外ローラセレーション成形部41は、紙面上、上下方向に細かな溝が切ってある。外ローラひだ部成形部42は、紙面上、上下方向に比較的大きなひだが作られている。
【0040】
成形用内ローラ50は、エンドプレート30の端部に内側から圧接する。紙面上の右側に回転軸があり、成形用外ローラ40とともにエンドプレート30の端部を挟みながら回転することで、絞りを成形する。成形用内ローラ50には、内ローラセレーション成形部51と内ローラひだ部成形部52があり、内ローラセレーション成形部51は、外ローラセレーション成形部41に対向する位置にあり、平坦であり、溝は切っていない。内ローラひだ部成形部52は、外ローラひだ部成形部42に対応する位置にあり、紙面上、上下方向に比較的大きなひだが作られている。ひだは、外ローラひだ部成形部42との間隔が同じになるように形成されている。
【0041】
図3(b)に沿って、セレーション等の製造方法について説明する。エンドプレート30は、紙面上右が内側、左が外側であり、上側が基部、下側が端部である。二点鎖線は、エンドプレート30を示している。
加工前のエンドプレート30は、外ローラセレーション成形部41によって、内側に大きく段差のある形で絞られる。また、外ローラセレーション成形部41には、セレーション成形のための溝が作られているので、エンドプレート30の表面に外ローラセレーション成形部41に対応したセレーションが作られる。
【0042】
図3(c)に、同(b)におけるAA断面図を示す。外ローラセレーション成形部41の溝構造を示している。ピッチは1.5mm、深さは0.75mm程度である。セレーションは、筒状部10とエンドプレート30の間の気体を通すためのものであるので、エンドプレート30の外側のみに形成される。外ローラセレーション成形部41と内ローラセレーション成形部51によって作られる絞り部分は、筒状部10に対して7度程度、内側方向を向くように形成されている。筒状部10にエンドプレート30を挿入する際、部品交差を吸収し、筒状部10とエンドプレート30の隙間をなくすためである。
外ローラひだ部成形部42、内ローラひだ部成形部52は、ひだ状部34を成形するためのものである。単純に絞り量を増やしてしまうと、歪みが発生するため、ひだをつけることで、歪みを分散させるものである。
【0043】
図4に沿って、従来の溶接の問題について説明する。
筒状部10に対して、エンドプレート30を圧入する(
図4(a))。筒状部10とエンドプレート30の表面には、メッキ部35がある。メッキは亜鉛メッキである。
溶接用トーチ70により、筒状部10とエンドプレート30とを溶接する。筒状部10の端部とエンドプレート30の接触部分Aは、ほぼ、ゼロ篏合であり、気体も通ることができない(
図4(b))。
【0044】
溶接用トーチ70による加熱により、ビード71ができ、溶接が進む(
図4(c))。 ビード71の周囲のメッキ部35が過熱され、亜鉛ガス72を発生させる(
図4(d))。亜鉛ガス72は、行き場が無いので、ビード71内に入り込み、気泡等になる。そのため、ビード71が不均一な形状となり、溶接強度が低下してしまう。このように、亜鉛ガス72の発生によって、溶接の品質を保つことができない。
【0045】
図5に沿って、本発明における溶接を説明する。
筒状部10に対して、エンドプレート30を挿入する(
図5(a))。筒状部10とエンドプレート30の表面には、メッキ部35がある。メッキは亜鉛メッキとする。
溶接時に亜鉛メッキ部分が高温になると亜鉛ガスを発生させ、ビード内に気泡等になって入り込むことがある。そこで、溶接部分のメッキをあらかじめ除去しておく。溶接部分以外のメッキを除去してしまうと、腐食防止の効果が薄れることから最小限の領域のメッキを除去する。メッキ部35をあらかじめ除去した部分が、メッキ除去部36である。
【0046】
筒状部10に対してエンドプレート30を圧入し、溶接用トーチ70により、溶接を行う。筒状部10の端部とエンドプレート30の絞り部分は、ほぼゼロ篏合であるが、セレーション部33があるので、筒状部10とエンドプレート30の接触部分Bには、複数の細かな溝があることになる。そのため、気体は、その溝を通って外部に出ることができる(
図5(b))。
【0047】
溶接用トーチ70による加熱により、ビード71ができ、溶接が進む(
図5(c))。ビード71部分のメッキは、あらかじめ除去されているので、その部分からは亜鉛ガス72は発生しない。しかし、溶接でビードの周辺も高温になることから、メッキ除去部36の周辺のメッキ部も高温になり亜鉛ガス72が発生する。
亜鉛ガス72は、セレーション部33によって作られた筒状部10とエンドプレート30との接触部分の複数の細かな溝を通って、エンドプレート30の端部方向に放出される。そのため、ガスがビード71内に入り込むことが無く、ビード内で気泡等になることも無い。ビード71が不均一な形状とならず、溶接強度が低下しないので、溶接の品質を保つことができる。
【0048】
このように、本発明によれば、燃料タンクの製造時における溶接において、ガスの発生及びガスによるビードの劣化を低減することができるので、溶接不良を抑制することができると共に、溶接の確実性が向上することで、経年使用による溶接箇所の疲労にも耐え得る、といった優れた効果を発揮するものである。