特開2021-130654(P2021-130654A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 旭富製藥科技股▲分▼有限公司の特許一覧

<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-130654(P2021-130654A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】カンナビノイドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 37/50 20060101AFI20210813BHJP
   C07C 39/23 20060101ALI20210813BHJP
   C07C 67/343 20060101ALI20210813BHJP
   C07C 69/94 20060101ALI20210813BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20210813BHJP
   A61K 31/05 20060101ALN20210813BHJP
【FI】
   C07C37/50
   C07C39/23
   C07C67/343
   C07C69/94
   C07B61/00 300
   A61K31/05
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2021-19616(P2021-19616)
(22)【出願日】2021年2月10日
(31)【優先権主張番号】16/795,851
(32)【優先日】2020年2月20日
(33)【優先権主張国】US
(71)【出願人】
【識別番号】521064406
【氏名又は名称】旭富製藥科技股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110003029
【氏名又は名称】特許業務法人ブナ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】王 ハン雁
(72)【発明者】
【氏名】李 豊旭
(72)【発明者】
【氏名】楊 智傑
(72)【発明者】
【氏名】黄 馨誼
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
4H039
【Fターム(参考)】
4C206AA04
4C206CA19
4C206NA20
4H006AA02
4H006AB20
4H006AC23
4H006AC26
4H006BA31
4H006BB11
4H006BB30
4H006BC10
4H006BE10
4H006BE56
4H006BJ20
4H006BJ50
4H006BN30
4H006FC22
4H006FC50
4H006FC72
4H006FE13
4H006KA31
4H006KC30
4H039CA40
4H039CD10
4H039CD40
4H039CL25
(57)【要約】
【課題】本発明は、大気圧下で無溶媒状態での式(II)で表される化合物の加水分解脱炭酸を含む、合成カンナビジオールの製造方法を提供する。
【解決手段】前記方法は、式(II)で表される化合物の製造をさらに含む。前記方法は、カンナビジオールを合成・製造するために、安全で、経済的で、環境に優しく、拡張可能な方法を提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧下で無溶媒状態での式(II):
【化1】
で表される化合物の加水分解脱炭酸を含む、式(I):
【化2】
[Rは、H、アルキル基または保護基であり、Rは、アルキル基またはエーテル基であり、Rは、アルキル基または保護基であり、Aは、Hまたはカルボン酸エステル基である。]
で表されるカンナビジオールの製造方法。
【請求項2】
無溶媒状態で実施される加水分解脱炭酸のために、水および溶媒を除去することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記の加水分解脱炭酸において、水および溶媒を除去するために蒸留を行うことをさらに含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
除去される前記溶媒は、30℃より高く100℃より低い沸点を有するC〜C炭化水素である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒は、ヘキサンである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記の加水分解脱炭酸において、101℃〜130℃の範囲の温度で加熱することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記の加水分解脱炭酸は、塩基の存在下で行われる、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記の塩基は、3〜5の当量を有する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記の塩基は、アルカリ金属の水酸化物である、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記の塩基は、KOHまたはNaOHである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ルイス酸またはブレンステッド酸によって促進される、式(III):
【化3】
で表される化合物と、式(IV):
【化4】
で表される化合物との縮合により、前記の式(II)で表される化合物を製造することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記のルイス酸は、三フッ化ホウ素エーテラート、塩化アルミニウム、塩化インジウム、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、塩化第二スズ、塩化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化チタン、スカンジウムトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、およびランタントリフルオロメタンスルホネートからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記のルイス酸は、三フッ化ホウ素エーテラートである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記のブレンステッド酸は、p−トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記の式(III)で表される化合物において、RがHであり、RがCアルキル基であり、RがC−Cアルキル基であり、AがHである、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記の式(I)で表される化合物において、RがHであり、RがCアルキル基であり、AがHである、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記の式(II)で表される化合物において、RがHであり、RがCアルキル基であり、RがC−Cアルキル基であり、AがHである、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記の保護基は、トリ−i−プロピルシリルオキシメチル(TOM)、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、アセチル(Ac)、ピバロイル(Piv)、ベンゾアート(Bz)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリ(トリメチルシリル)シリル(TTMSS)、およびt−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、カンナビノイドの製造方法、特にカンナビジオール(CBD)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カンナビジオールは、植物性カンナビノイドであり、大麻植物で特定されたいくつかのカンナビノイドの1つであり、前記植物の抽出物の最大40%を占める。
【0003】
その対応する中間体であるテルペン置換オリベトレート(terpene−substituted olivetolate)の加水分解脱炭酸(hydrolysisdecarboxylation)により、合成カンナビジオール(CBD)を提供することが実証されている。このようなプロセスによる合成カンナビジオールの製造の初期の例の1つは、Petrzilka,W.et al. in Helvetica Chimica Acta 52,4,pp.1102−1134(1969)に記載されており、以下のスキーム1に示される。スキーム1では、Meはメチル基を指し、Etはエチル基を指し、aqは水溶液を指す。
【0004】
【化1】
【0005】
オリベトレート(olivetolate)の加水分解脱炭酸によるカンナビジオール合成の別の初期の例は、Gaoni in Tetrahedron 21,5,pp.1223−1229(1965)に記載されており、以下のスキーム2に示される。
【0006】
【化2】
【0007】
最近、米国特許第7,674,922号に開示されているように、カンナビノイドの加水分解脱炭酸のプロセスにより合成カンナビジオールを得ることは、メンタジエノール置換エチルオリベトレート(menthadienol−substituted ethyl olivetolate)を用いて行われた(下記のスキーム3に示される)。特に、エチルカンナビジオラートをメタノールに溶解し、水酸化ナトリウム水溶液を加えた。次に、混合物を加熱して還流させ、3.5時間保持した後、室温まで冷却した。そして、反応混合物をクエン酸水溶液でクエンチした。その後、ヘプタンを混合物に加え、生成物をヘプタン相に抽出した。ヘプタンを使用して2回目の抽出を行った。合わせた有機物を水の共沸蒸留によって乾燥させ濃縮し、続いて冷却して、固体のカンナビジオールを得た。この合成方法では、エチルオリベトレート(ethyl olivetolate)から、2つの工程で、カンナビジオールを57.5%の収率で得ることができた。
【0008】
【化3】
【0009】
さらに、欧州特許第2,314,580号は、メタノールのような低沸点溶媒を含む密閉反応タンク(下記のスキーム4に示される)、または大気圧下でのエチレングリコールのような高沸点のアルコール(下記のスキーム5に示され)の使用により、メンタジエノール置換メチルオリベトレート(methyl olivetolate)の加水分解脱炭酸が95%を超える反応収率を得ると主張した。
【0010】
【化4】
【0011】
【化5】
【0012】
しかしながら、工業生産のための場合、欧州特許第2,314,580号に開示された加水分解脱炭酸法については、いくつかの懸念があった。例えば、前記反応は低沸点溶媒中で加圧下で行われると主張されているが、大量生産においては重大な安全上の危険をもたらす可能性がある。具体的には、メタノールと水との組み合わせを密閉反応タンクにおいて反応温度140℃〜150℃で使用したため、密閉反応タンク内で大量のメタノール/水蒸気を生成する可能性があり、工業規模の生産では危険である。また、高沸点アルコールを使用する加水分解脱炭酸反応の代替方法では、製造後に水性有機廃棄物に追加の処理が必要になる場合がある。さらに、高沸点アルコールを使用すると、エチレングリコールのような潜在的な残留溶媒によってカンナビジオール製品の品質が損なわれるリスクが高まる可能性があり、当該エチレングリコールは、米国薬局方(USP)でクラスII残留溶媒として分類されており、医薬品では避けるべきである。
【0013】
したがって、工業規模でカンナビジオールを合成製造するための安全的で、効果的で、環境に優しい方法については、未だに満たされていないニーズがある。
【発明の概要】
【0014】
前記の観点から、本開示は、以下の式(II):
【0015】
【化6】
[Rは、H、アルキル基または保護基であり、Rは、アルキル基またはエーテル基であり、Rは、アルキル基または保護基であり、Aは、Hまたはカルボン酸エステル基である。]
で表される化合物の加水分解脱炭酸を含む、以下の式(I):
【0016】
【化7】
で表されるカンナビジオールの製造方法を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下の例示的な実施形態は、本明細書の開示を説明するために提供される。これらおよび他の態様ならびに効果は、当業者が本開示を読んだ後に理解することができる。また、本開示は他の異なる実施形態によって実行または適用され得る。本明細書の詳細は、異なる点および用途に基づく場合があり、本開示の精神から逸脱することなく、多数の修正および変形を考案することができる。
【0018】
本開示の前に、アルコール、例えば、MeOHは、カンナビジオール合成の加水分解脱炭酸工程において溶媒として使用される。本開示は、溶媒の非存在下での加水分解脱炭酸を含むカンナビジオールの製造方法を提供する。例えば、本開示は、アルコールを使用せずに加水分解脱炭酸を含むカンナビジオールの製造方法を提供する。本開示で提供されるこのような方法は、環境に優しく、費用対効果が高く、安全であり、良好な収率および品質を有する。
【0019】
本開示は、以下の式(II):
【0020】
【化8】
で表される中間体化合物の加水分離脱炭酸を含む、以下の式(I):
【0021】
【化9】
[Rは、H、C〜C16アルキル基または保護基である。Rは、C〜C16基またはO−C〜C16基であり、ここで、C〜C16基は、ある位置に1つ以上の二重結合または三重結合を有するか、または置換基(例えば、重水素またはハロゲン原子、フェニル基、置換フェニル基、シクロアルキル基、ニトリル基、アルコキシ基、またはケト基)を有する、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。Rは、C〜C16アルキル基または保護基である。Aは、HまたはCOO−C〜C基であり、ここで、C〜C基は、直鎖または分枝鎖のアルキル鎖である。]
で表されるカンナビジオールの製造方法を提供する。
【0022】
本開示の一実施形態では、保護基は、ヒドロキシル保護基であってもよい。別の実施形態では、ヒドロキシル保護基は、トリ−i−プロピルシリルオキシメチル(TOM)、(フェニルジメチルシリル)メトキシメチル(SMOM)、アセチル(Ac)、ピバロイル(Piv)、ベンゾアート(Bz)、トリメチルシリル(TMS)、t−ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)、トリ(トリメチルシリル)シリル(TTMSS)、およびt−ブチルジフェニルシリル(TBDPS)からなる群から選択される。さらなる実施形態では、保護基は、式O−SiRで表され、ここで、Si原子上の置換基、すなわち、R、RおよびRは、Si原子の結合軌道を満たすために必要とされる。特定の置換基R、RまたはRの使用は特に限定されない。本開示の一実施形態では、R、RおよびRのそれぞれは、CまたはCヒドロカルビル基(すなわち、メチル基またはエチル基)であり、その原因は単にそのような材料が市販の材料から容易に合成されるからである。
【0023】
本開示の一実施形態では、前記の方法は、式(II)で表される中間体化合物の製造をさらに含み、前記の製造は、ルイス酸またはブレンステッド酸によって促進される、式(III):
【0024】
【化10】
で表されるエステル化オリベトール(esterified olivetol)と、式(IV):
【0025】
【化11】
[ここで、R、RおよびAは、上記の通りである。]
で表されるテルペンとの縮合を含む。
【0026】
本開示の一実施形態では、前記方法は、式(III)で表されるエステル化オリーブトールのルイス酸またはブレンステッド酸によって促進される縮合の後、溶媒による式(II)で表される中間体化合物の抽出をさらに含む。さらなる実施形態では、溶媒は、有機溶媒である。別の実施形態では、溶媒は、非プロトン性である。さらに別の実施形態では、溶媒は、低沸点を有するものである。一実施形態では、溶媒は、30℃を超え100℃未満で沸騰するC〜C炭化水素である。さらなる実施形態では、溶媒は、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、またはそれらの混合物である。別の実施形態では、溶媒は、ヘキサンである。
【0027】
本開示の一実施形態において、式(I)で表されるカンナビジオールの製造方法は、以下に示されるスキーム6によって例示される。
【0028】
【化12】
上記のスキームでは、式(II)の加水分解脱炭酸の前に、単純な蒸留を行って、有機溶媒、ヘキサンおよび水を除去することにより、無溶媒(neat)の式(II)を得る。留出物を収集して、さらに精製する前に式(I)の抽出に再利用することができる。蒸留後、反応物を100℃を超える温度に加熱し、無溶媒の式(II)を大気圧下で無溶媒状態で式(I)に変換する。
【0029】
本開示の一実施形態において、式(I)は、溶媒の非存在下での式(II)の加水分解脱炭酸により製造される。本開示のさらなる実施形態において、式(I)は、アルコールの非存在下での式(II)の加水分解脱炭酸により製造される。一実施形態では、式(II)の加水分解脱炭酸は、無溶媒状態で反応する。一実施形態では、式(II)の加水分解脱炭酸は、反応中の水および溶媒を除去することにより、無溶媒状態で反応する。さらなる実施形態において、水および溶媒は、式(II)の加水分解脱炭酸が溶媒の非存在下で無溶媒状態で反応するように、単純な蒸留により、式(II)の加水分解脱炭酸の反応から除去される。一実施形態では、式(II)の加水分解脱炭酸は、塩基、例えば、NaOH溶液の存在下で、無溶媒状態で反応する。一実施形態では、式(II)の加水分解脱炭酸は、大気圧下で行われる。
【0030】
本開示の一実施形態では、式(II)で表される中間体化合物の加水分解脱炭酸は、100℃を超える温度で行われる。本開示の一実施形態では、前記温度は、101℃〜130℃の範囲である。本開示の一実施形態では、前記温度は、105℃〜125℃の範囲である。本開示の別の実施形態では、式(II)で表される中間体化合物の加水分解脱炭酸を実施するための温度は、101℃、102℃、103℃、104℃、105℃、106℃、107℃、108℃、109℃、110℃、111℃、112℃、113℃、114℃、115℃、116℃、117℃、118℃、119℃、120℃、121℃、122℃、123℃、124℃、125℃、126℃、127℃、128℃、129℃または130℃である。
【0031】
本開示の一実施形態では、式(II)で表される中間体化合物の加水分解脱炭酸は、塩基の存在下で行われる。一実施形態では、塩基は、アルカリ金属の水酸化物である。本開示の一実施形態では、塩基は、NaOHまたはKOHである。
【0032】
本開示の一実施形態では、塩基の当量は、3〜5である。
【0033】
本開示の一実施形態では、塩基は、NaOHであり、NaOHの当量は、3〜5である。本開示の別の実施形態では、塩基は、KOHであり、KOHの当量は、3〜5である。
【0034】
本開示の一実施形態では、式(III)と式(IV)との縮合は、ジクロロメタン(DCM)の存在下でルイス酸またはブレンステッド酸によって促進される。本開示の一実施形態では、ルイス酸は、三フッ化ホウ素エーテラート、塩化アルミニウム、塩化インジウム、トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、塩化第二スズ、塩化亜鉛、トリフルオロメタンスルホン酸亜鉛、塩化第二鉄、塩化第一鉄、塩化チタン、スカンジウムトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート、またはランタントリフルオロメタンスルホネートである。本開示の別の実施形態では、ブレンステッド酸は、p−トルエンスルホン酸またはトリフルオロ酢酸である。
【0035】
本開示の一実施形態では、ルイス酸は、三フッ化ホウ素エーテラート(BF・OEt)である。
【0036】
本開示は、従来方法の欠点を克服する、カンナビジオールを工業的に生産する方法を提供する。例えば、(a)反応に必要とされない原料であるアルコールのコストを節約すること、(b)アルコール廃棄物の処理コストを節約すること、(c)留出物を再利用することにより、経済的で環境に優しくすること、および(d)加熱中に溶媒により引き起こされる高圧の安全性を懸念せずに、大気圧下で無溶媒反応で加水分解脱炭酸を行うこと、が可能となる。したがって、本開示は、安全で経済的で、従来方法よりも優れて、工業規模の操作において容易に採用することができる、カンナビジオール合成のための方法を提供する。
【0037】
以下は、本開示の有効性をさらに実証する例であるが、本開示の範囲を限定するものではない。
【実施例】
【0038】
実施例1:無溶媒反応として115℃で加熱された加水分解脱炭酸を介して、エチルオリベトレート(式III)およびNaOHによる、式(I)の製造
【0039】
エチルオリベトレート(式III)(252g、1モル)をジクロロメタンで希釈し、混合物を0℃に冷却した後、BF・EtO(28g、0.2モル)を加えた。ジクロロメタン中のp−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(152g、1モル)の混合物を0℃でエチルオリベトレート溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、10%NaCOでクエンチした。続いて、相分離後に有機層を収集して濃縮し、残留物をヘキサンで希釈した後、水で2回洗浄して、式IIの粗化合物(301.3g、78.1重量%、超高速液体クロマトグラフィー(UPLC)により分析された)を得た。
【0040】
ヘキサン中の式IIの化合物(総重量600g)を、さらに精製することなく、式Iの化合物に変換した。ヘキサン中の式IIの粗化合物(120g、0.2モル)を周囲温度でステンレス製反応器内で20%NaOH(aq)(160g、0.8モル)と混合した。反応混合物中のヘキサンと水を除去するために、単純な蒸留を行い、次に115℃で2時間加熱して、式Iの粗化合物(44.1g、70.3重量%、エチルオリベトレートからの2段階反応によるもの、UPLCにより分析された)を得た。
【0041】
この実施例で行われた反応について、加水分解脱炭酸の収率は90.1%と計算された。
【0042】
実施例2:無溶媒反応として125℃で加熱された加水分解脱炭酸を介して、エチルオリベトレート(式III)およびNaOHによる、式(I)の製造
【0043】
エチルオリベトレート(式III)(252g、1モル)をジクロロメタンで希釈し、混合物を0℃に冷却した後、BF・EtO(28g、0.2モル)を加えた。ジクロロメタン中のp−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(152g、1モル)の混合物を0℃でエチルオリベトレート溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、10%NaCOでクエンチした。続いて、相分離後に有機層を収集して濃縮し、残留物をヘキサンで希釈した後、水で2回洗浄して、式IIの粗化合物(301.3g、78.1重量%、UPLCにより分析された)を得た。ヘキサン中の式IIの化合物(総重量600g)を、さらに精製することなく、式Iの化合物に変換した。
【0044】
ヘキサン中の式IIの粗化合物(120g、0.2モル)を周囲温度でステンレス製反応器内で20%NaOH(aq)(160g、0.8モル)と混合した。反応混合物中のヘキサンと水を除去するために、単純な蒸留を行い、次に125℃で2時間加熱して、式Iの粗化合物(42.4g、67.6重量%、エチルオリベトレートからの2段階反応によるもの、UPLCにより分析された)を得た。
【0045】
この実施例で行われた反応について、加水分解脱炭酸の収率は86.6%と計算された。
【0046】
実施例3:無溶媒反応として105℃で加熱された加水分解脱炭酸を介して、エチルオリベトレート(式III)およびNaOHによる、式(I)の製造
【0047】
エチルオリベトレート(式III)(252g、1モル)をジクロロメタンで希釈し、混合物を0℃に冷却した後、BF・EtO(28g、0.2モル)を加えた。ジクロロメタン中のp−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(152g、1モル)の混合物を0℃でエチルオリベトレート溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、10%NaCOでクエンチした。続いて、相分離後に有機層を収集して濃縮し、残留物をヘキサンで希釈した後、水で2回洗浄して、式IIの粗化合物(301.3g、78.1重量%、UPLCにより分析された)を得た。ヘキサン中の式IIの化合物(総重量600g)を、さらに精製することなく、式Iの化合物に変換した。
【0048】
ヘキサン中の式IIの粗化合物(120g、0.2モル)を周囲温度でステンレス製反応器内で20%NaOH(aq)(160g、0.8モル)と混合した。反応混合物中のヘキサンと水を除去するために、単純な蒸留を行い、次に105℃で2時間加熱して、式Iの粗化合物(43.2g、68.8重量%、エチルオリベトレートからの2段階反応によるもの、UPLCにより分析された)を得た。
【0049】
この実施例で行われた反応について、加水分解脱炭酸の収率は88.2%と計算された。
【0050】
実施例4:無溶媒反応として115℃で加熱された加水分解脱炭酸を介して、エチルオリベトレート(式III)およびKOHによる、式(I)の製造
【0051】
エチルオリベトレート(式III)(252g、1モル)をジクロロメタンで希釈し、混合物を0℃に冷却した後、BF・EtO(28g、0.2モル)を加えた。ジクロロメタン中のp−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(152g、1モル)の混合物を0℃でエチルオリベトレート溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、10%NaCOでクエンチした。続いて、相分離後に有機層を収集して濃縮し、残留物をヘキサンで希釈した後、水で2回洗浄して、式IIの粗化合物(301.3g、78.1重量%、UPLCにより分析された)を得た。ヘキサン中の式IIの化合物(総重量600g)を、さらに精製することなく、式Iの化合物に変換した。
【0052】
ヘキサン中の式IIの粗化合物(120g、0.2モル)を周囲温度でステンレス製反応器内で20%KOH(aq)(209g、0.8モル)と混合した。反応混合物中のヘキサンと水を除去するために、単純な蒸留を行い、次に115℃で1時間加熱して、式Iの粗化合物(42.0g、71.2重量%、エチルオリベトレートからの2段階反応によるもの、UPLCにより分析された)を得た。
【0053】
この実施例で行われた反応について、加水分解脱炭酸の収率は91.2%と計算された。
【0054】
実施例5:無溶媒反応として115℃で加熱された加水分解脱炭酸を介して、メチルオリベトレート(式III)およびNaOHによる、式(I)で表される化合物の製造
【0055】
メチルオリベトレート(式III)(47.6g、0.2モル)をジクロロメタンで希釈し、混合物を0℃に冷却した後、BF・EtO(6g、0.04モル)を加えた。ジクロロメタン中のp−メンタ−2,8−ジエン−1−オール(30.4g、0.2モル)の混合物を0℃でメチルオリベトレート溶液に加え、反応混合物を0℃で1時間攪拌した後、10%NaCOでクエンチした。続いて、相分離後に有機層を収集して濃縮し、残留物をヘキサンで希釈した後、水で2回洗浄して、式IIの粗化合物(63.6g、85重量%、UPLCにより分析された)を得た。ヘキサン中の式IIの化合物(総重量208g)を、さらに精製することなく、式Iの化合物に変換した。
【0056】
ヘキサン中の式IIの粗化合物(63.6g、0.2モル)を周囲温度でステンレス製反応器内で20%NaOH(aq)(160g、0.8モル)と混合した。反応混合物中のヘキサンと水を除去するために、単純な蒸留を行い、次に115℃で1時間加熱して、式Iの粗化合物(39.8g、63.8重量%、エチルオリベトレートからの2段階反応によるもの、UPLCにより分析された)を得た。
【0057】
この実施例で行われた反応について、加水分解脱炭酸の収率は75.1%と計算された。
【0058】
本開示のいくつかの実施形態は以上で詳細に説明されてきたが、当業者は、本開示の教示および利点から実質的に逸脱することなく、示された特定の実施形態に対して様々な修正および変更を行うことが可能である。そのような修正および変更は、添付の特許請求の範囲に記載されている本開示の精神および範囲に包含される。