【課題を解決するための手段】
【0017】
以下、本願に記載の多様な具体例が図面を参照して記載される。下記の説明において、
本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物、お
よび工程などが記載されている。しかし、特定の具体例は、これらの特異的詳細事項のう
ち1つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行される。他の例におい
て、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにさせないために、特定の
詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」に対する本明細書全体
にわたる参照は、具体例と結び付けて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が本
発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる
多様な位置で表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも
本発明の同一の具体例を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成、または特性は、
一つ以上の具体例において何らかの適した方法で組み合わされる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能
な塩または水和物を提供する:
【化1】
前記化学式1において、
Rは、水素またはN(R’)(R’’)であり;
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6アルケ
ニル基であり;
R
1は、水素またはC
1−6アルキル基であり;
前記R
1のC
1−6アルキル基は、R
2で置換もしくは非置換であり;
R
2は、C
1−6アルケニル基、C
3−7シクロアルキル基、シアノ基、C
1−6アルキ
ル基、C
6−10アリール基、−OR
3および−COOR
4からなる群より選択され;
R
2のアリール基は、ハロゲンで置換もしくは非置換であり;
R
3は、−(CH
2)
mOR
5であり;
mは、0〜3の整数であり;
R
4およびR
5は、それぞれ独立に、C
1−6アルキル基である。
【0019】
本発明の一具体例において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は
、好ましくは、下記表1に示す化合物から選択された1種以上であってもよい。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明の好ましい具体例として、前記R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素また
はC
1−6アルケニル基であってもよい。
【0022】
本発明の好ましい具体例として、前記R
1は、水素またはC
1−4アルキル基であって
もよい。
【0023】
本発明の好ましい具体例として、前記R
2は、C
1−3アルケニル基、C
5−7シクロ
アルキル基、シアノ基、C
1−3アルキル基、C
6−8アリール基、−OR
3および−C
OOR
4からなる群より選択されてもよい。
【0024】
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、好ましくは、(2S,5R,6R
)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド)−4−チア−1
−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸;アリル(2S,5R,6R)
−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド)−4−チア−1−
アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシレート;シクロヘキシルメチル(
2S,5R,6R)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド
)−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシレート;3−
シアノプロピル(2S,5R,6R)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェ
ニルアセトアミド)−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボ
キシレート;および(2S,5R,6R)−6−((S)−2−アミノ−2−フェニルア
セトアミド)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.
0]ヘプタン−2−カルボン酸からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0025】
本発明はまた、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。薬
学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質に悪
影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な遊離塩基と前記
酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0026】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレート、および
カーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸
、コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、
ゲンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチ
ルサリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン
、バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン
、リシン、アルギニン、チロシン、およびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メ
タンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、およびトルエンスルホ
ネート;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;また
はアンモニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式1の化合物を、メタノール、
エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような水と混合可能な溶媒に溶かしてから
、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製造することができる。
【0028】
本発明において、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、下記表2に示す塩の中から選択された1種以上であってもよい。
【0029】
【表2】
【0030】
その他にも、前記化学式1で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含まれる
。
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可
能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0032】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0033】
本発明で提供する前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水
和物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の縫合効
率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防することがで
きる。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可
能な塩または水和物を有効成分として含む、膵臓漏れ予防用薬学組成物を提供する。
【0035】
本発明で提供する前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水
和物は、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancrea
ticoduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に
予防することができる。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式1で表される化合物、その
薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステップを含む、軟組織を硬化す
る方法に関する。
【0037】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0038】
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩ま
たは水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0039】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式1で表される化合物、その
薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステップを含む、膵臓漏れの予防
方法に関する。
【0041】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0042】
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩ま
たは水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0043】
本発明で使用される「有効量」は、対象体の軟組織、または膵臓に一時的に硬度または
引張力への変化を達成するのに十分な量を指す。
【0044】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ヒドロキシキノリン(hydroxyquin
oline)化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群よ
り選択された化合物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0045】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物とその誘導体は、下記表3に示す化合
物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0046】
【表3】
【0047】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物の誘導体は、好ましくは、7−クロロ
−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸;5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン;5
−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン;5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキ
ノリン;4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸;4−ヒドロキシ−7−トリフ
ルオロメチル−3−キノリンカルボン酸;3−ヒドロキシイソキノリン;4−ヒドロキシ
キノリン;6−ヒドロキシキノリン;2−ヒドロキシキノリン;8−ヒドロキシキノリン
−7−カルボン酸;および8−ヒドロキシキノリンからなる群より選択された1種以上で
あってもよいし、より好ましくは、3−ヒドロキシイソキノリンであってもよい。
【0048】
本発明はまた、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の薬学的に許
容可能な塩を提供する。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的
活性と物理化学的性質に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に
許容可能な遊離酸と前記塩基化合物の酸付加塩などが可能であるが、これに制限されない
。
【0049】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記ヒドロキシキノリン化合物またはそ
の化合物の誘導体を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0051】
その他にも、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の水和物形態も
、本発明の範囲に含まれ、好ましくは、下記表4に示す水和物であってもよいが、これに
制限されるわけではない。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0054】
本発明の前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩、お
よび水和物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の
縫合効率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防するこ
とができる。
【0055】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その
薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効成分として含
む、膵臓漏れ予防用薬学組成物を提供する。
【0056】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物とその誘導体は、前記表3に示した化
合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0057】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物の誘導体は、好ましくは、5−ヒドロ
キシキノリン;7−クロロ−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸;5−クロロ−8
−ヒドロキシキノリン;5−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン;5,7−ジ
ヨード−8−ヒドロキシキノリン;4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸;4
−ヒドロキシ−7−トリフルオロメチル−3−キノリンカルボン酸;3−ヒドロキシイソ
キノリン;4−ヒドロキシキノリン;6−ヒドロキシキノリン;2−ヒドロキシキノリン
;8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸;および8−ヒドロキシキノリンからなる群
より選択された1種以上であってもよいし、より好ましくは、3−ヒドロキシイソキノリ
ンであってもよい。
【0058】
本発明はまた、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の薬学的に許
容可能な塩を提供する。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的
活性と物理化学的性質に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に
許容可能な遊離酸と前記塩基化合物の酸付加塩などが可能であるが、これに制限されない
。
【0059】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記ヒドロキシキノリン化合物またはそ
の化合物の誘導体を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0061】
その他にも、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその誘導体の水和物形態も、本発明
の範囲に含まれ、好ましくは、前記表4に示した水和物であってもよいが、これに制限さ
れるわけではない。
【0062】
本発明の前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩およ
び水和物は、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancr
eaticoduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果
的に予防することができる。
【0063】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体にヒドロキシキノリン化合物、その誘導
体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効量で
投与するステップを含む、軟組織を硬化する方法に関する。
【0064】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能
な塩および水和物は、本発明に係る軟組織硬化用薬学組成物に記載したところと重複し、
以下、詳細な記載を省略する。
【0065】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0066】
また、本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許
容可能な塩または水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0067】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体にヒドロキシキノリン化合物、その誘導
体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効量で
投与するステップを含む、膵臓漏れの予防方法に関する。
【0069】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能
な塩および水和物は、本発明に係る膵臓漏れ予防用薬学組成物に記載したところと重複し
、以下、詳細な記載を省略する。
【0070】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0071】
また、本発明において、ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可
能な塩または水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表さ
れる化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化
用薬学組成物を提供する:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0073】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物の具体的な名称は、下記表5の通
りである。
【0074】
【表5】
【0075】
本発明はまた、前記化学式2〜9で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する
。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質
に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な塩基と化学
式2〜9の酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0076】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つ
で表される化合物を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0078】
本発明において、前記化学式8で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、下記表6に示す塩であってもよい。
【0079】
【表6】
【0080】
その他にも、前記化学式2〜9で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含ま
れる。
【0081】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0082】
本発明の前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水和物
は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の縫合効率を
高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防することができる
。
【0083】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表さ
れる化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効成分として含む、膵臓漏れ予
防用薬学組成物を提供する:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0084】
本発明はまた、前記化学式2〜9で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する
。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質
に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な遊離塩基と
前記化学式2〜9の酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0085】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つ
で表される化合物を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0087】
本発明において、前記化学式8で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、前記表6に示した塩であってもよい。
【0088】
その他にも、前記化学式2〜9で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含ま
れる。
【0089】
本発明の前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物は
、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancreatic
oduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に予防す
ることができる。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式2〜9のうちのいずれか1
つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステッ
プを含む、軟組織を硬化する方法に関する。
【0091】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩およ
び水和物は、本発明に係る軟組織硬化用薬学組成物に記載したところと重複し、以下、詳
細な記載を省略する。
【0092】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0093】
また、本発明において、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表される化合物、そ
の薬学的に許容可能な塩または水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0094】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0095】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式2〜9のうちのいずれか1
つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステッ
プを含む、膵臓漏れの予防方法に関する。
【0096】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩また
は水和物は、本発明に係る膵臓漏れ予防用薬学組成物に記載したところと重複し、以下、
詳細な記載を省略する。
【0097】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0098】
また、本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な
塩または水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0099】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式10で表される化合物および18−
クラウン−6(1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン)(1
8−crown−6(1,4,7,10,13,16−hexaoxacyclooct
adecane))を有機溶媒に溶解させるステップと、
前記溶解した溶液に下記化学式11で表される化合物を添加し、撹拌して化合物を合成す
るステップとを含む化合物誘導体を製造する方法を提供する:
【化18】
[化学式11]
R
6−Br
前記化学式10において、
Rは、水素またはN(R’)(R’’)であり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素、C
1−6アルキル基またはC
1−6アルケ
ニル基であり、
前記化学式11において、
R
6は、水素またはC
1−6アルキル基であり;
前記R
6のC
1−6アルキル基は、R
7で置換もしくは非置換であり;
R
7は、C
1−6アルケニル基、C
3−7シクロアルキル基、シアノ基、C
1−6アルキ
ル基、C
6−10アリール基、−OR
8および−COOR
9からなる群より選択され;
R
7のアリール基は、ハロゲンで置換もしくは非置換であり;
R
8は、−(CH
2)
nOR
10であり;
nは、0〜3の整数であり;
R
9およびR
10は、それぞれ独立に、C
1−6アルキルである。
【0100】
本発明において、前記化学式11で表される化合物は、3−ブロモプロペン(3−br
omopropene)、(ブロモメチル)シクロヘキサン((bromomethyl
)cyclohexane)、4−ブロモブチロニトリル(4−bromobutyro
nitrile)、tert−ブチルブロモプロピオネート(tert butyl b
romopropionate)、1−ブロモ−2−メチルプロパン(1−bromo−
2−methylpropane)、2−フルオロベンジルブロミド(2−fluoro
benzyl bromide)および2−(2−エトキシエトキシ)エチルブロミド(
2−(2−ethoxyethoxy)ethyl bromide)からなる群より選
択されてもよいが、前記化学式のカルボキシレートと反応して置換可能なアルキルブロミ
ドであれば制限はない。
【0101】
本発明において、前記有機溶媒は、化合物の溶解のために使用され、非プロトン性極性
溶媒であることが好ましい。具体的には、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1−
メチル−2−ピロリドン(NMP)などを使用することができ、ジメチルホルムアミド(
DMF)を使用することが最も好ましい。
【0102】
本発明のさらに他の実施形態によれば、(a)化合物を処理しないヒトを除く哺乳動物
の膵臓の硬度または引張力を測定するステップと、(b)候補化合物を処理したヒトを除
く哺乳動物の膵臓の硬度または引張力を測定するステップと、(c)前記(b)ステップ
で測定された膵臓の硬度または引張力が、前記(a)ステップで測定された膵臓の硬度ま
たは引張力より高い場合、前記化合物を膵臓硬化用物質と判断するステップとを含む、膵
臓硬化用物質の選別方法を提供する。
【0103】
本発明において、前記KRM−60027(ペニシリンGポタシウム塩)と前記KRM
−60036(アンピシリンソジウム塩)化合物は、(R)−4−チア−1−アザビシク
ロ[3,2,0]ヘプタ−7−オンを骨格として有する抗生剤であって同じ系列の抗生剤
である。両化合物の相違は、KRM−60027はポタシウム塩、KRM−60036は
ソジウム塩という点で相違があり、KRM−60027は、骨格左側のベンジル位置にC
H
2−結合を有するのに対し、KRM−60036は、ベンジル位置にCH
2−結合に存
在する水素原子1つをアミノ基に置換して薬物の薬動学(pharmacokineti
cs、PK)を増加させる効果を有する。KRM−60027は、膵臓は引張力を有意な
水準に増加させる結果を示し、KRM−60036の場合には、膵臓の強度を有意に増加
させることが明らかになった。
【0104】
本発明において、前記KRM−60037(D−ペニシラミン)は、単純な構造を有す
る薬物で分子量が149にしかならないが、引張力が1.5倍増加する効果を示していた
。特に、このような小さい分子の場合、化学的に変形可能な部分が多いため、多様な置換
基をつけることにより、膵臓の引張力と硬度を十分に増加させることができるという利点
を有する。
【0105】
本発明において、前記KRM−60042(8−ヒドロキシキノリン)も、単純な骨格
に分子量が145の低分子物質で多様な置換基をつけるのに容易である。KRM−600
42の場合、膵臓の硬度と引張力をすべて有意に増加させていることを確認することがで
きる。
【0106】
本発明において、KRM−60049(ケトコナゾール)は、分子量が530で理想的
な値を有し、ピペラジンとイミダゾールなどの塩を形成可能な官能基が多くて多様な塩を
作ることができるという利点がある。
【0107】
本発明において、「硬度」は、ヒトの臓器の中で特に軟組織、好ましくは、膵臓の外部
に外力が加えられる時、膵臓の変形に対する抵抗力の大きさを意味するものである。本発
明に係る硬度の測定は、硬度計を用いて測定され、膵臓の硬度は、弾性係数(elast
ic modulus;EM)をフックの法則(Hooke’s law)とヘルツ(H
ertz)の接触ストレス理論(contract stress theory)に基
づいて測定することにより行われる。EMは、弾力を有する物質の硬い程度(stiff
ness)を測定するものであって、フックの法則(Hooke’s law)によって
「軸(axis)によって存在する応力(stress)」と「応力の範囲内の軸に存在
する全体変形(strain)」の比率で表される。
【0108】
本発明において、「引張力」は、ヒトの臓器の中で特に軟組織、好ましくは、膵臓内に
生じる力を意味するもので、引き伸ばしたり引っ張ったりする作用で外力が作用した時、
それに抵抗して臓器内に生じる耐力を意味する。本発明に係る引張力の測定は、動力計(
Dynamometer)を用いて測定され、より具体的には、ニュートン動力計を用い
て縫合保持容量(suture−holding capacity)の測定により引張
力を算出する。この時、組織の重量を加算して引張力を算出する。
【0109】
本発明の一具体例において、「アルキル」は、飽和した直鎖状または分枝状炭化水素基
、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチルおよびペンチル
を意味する。本明細書で使用された「C
1−6アルキル基」は、炭素数1−6個のアルキ
ル基を意味する。
【0110】
本発明の一具体例において、「シクロアルキル」は、炭素および水素原子を含む単環式
または多環式飽和環を意味する。
【0111】
本発明の一具体例において、「アリール」は、芳香性を有する全体または部分的に不飽
和の単環式または多環式炭素環を意味する。本発明のアリール基は、好ましくは、モノア
リールまたはビアリール(biaryl)である。
【0112】
本発明の一具体例において、「アルケニル」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有す
るアルキル残基を意味する。ここで、アルキルは、前記定義された通りである。
【0113】
本発明の一具体例において、「ハロゲン」あるいは「ハロ」は、別の言及がなければ、
フルオル、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0114】
本発明の薬学組成物は、活性成分化合物だけでなく、薬学的に許容可能な担体を含む。
本発明の薬学組成物に含まれる薬学的に許容可能な担体は、通常、薬剤の処方に使用され
るものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトー
ル、デンプン、アカシアガム、リン酸カリウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カリウ
ム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチル
セルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、
ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルを含むが、これに限定されるものでは
ない。
【0115】
本発明に係る薬学組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、およ
び保存剤を追加的に含んでもよい。好適な薬学的に許容可能な担体および剤形の詳細は、
Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版
、1995年)を参照することができる。
【0116】
本発明に係る薬学組成物は、経口または非経口投与可能であり、具体的には、非経口投
与してもよい。非経口投与としては、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮
投与または関節内注入で投与してもよい。より具体的には、筋肉注入または腹腔注入で投
与する。
【0117】
本発明の薬学組成物の好適な投与量は、薬剤の処方方法、投与方法、患者の年齢、体重
、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度および使用された薬学組成物
に対する敏感度によって多様になる。好ましくは、本発明の薬学組成物は、1日投与量0
.001〜10000mg/kg(体重)で投与される。
【0118】
本技術分野における熟練した者に知られた従来技術によれば、本発明に係る薬学組成物
は、上述のような薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤に剤形化して、ようやく
単位容量形態および多容量形態を含む様々な形態で提供する。剤形の非限定的な例として
は、溶液、懸濁液または油中の乳液または水性媒質、エリクサー型(elixir)、粉
末、顆粒、錠剤(tablet)およびカプセルを含むが、これに限定されるものではな
く、分散剤または安定剤を追加的に含んでもよい。