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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-130711(P2021-130711A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】軟組織硬化用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20210813BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 31/496 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 31/43 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 31/519 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 31/431 20060101ALI20210813BHJP
   A61K 31/505 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 1/18 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 15/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61P 21/00 20060101ALI20210813BHJP
   A61L 17/00 20060101ALI20210813BHJP
   C07D 499/46 20060101ALN20210813BHJP
   C07D 499/64 20060101ALN20210813BHJP
【FI】
   A61K31/47
   A61K31/198
   A61K31/496
   A61K31/43
   A61K31/519
   A61K31/431
   A61K31/505
   A61P1/18
   A61P1/16
   A61P25/00
   A61P15/00
   A61P21/00
   A61L17/00
   C07D499/46
   C07D499/64 B
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2021-93468(P2021-93468)
(22)【出願日】2021年6月3日
(62)【分割の表示】特願2019-507773(P2019-507773)の分割
【原出願日】2017年8月11日
(31)【優先権主張番号】10-2016-0102895
(32)【優先日】2016年8月12日
(33)【優先権主張国】KR
(71)【出願人】
【識別番号】510058863
【氏名又は名称】ザ カトリック ユニバーシティ オブ コリア インダストリー−アカデミック コーオペレイション ファウンデーション
(71)【出願人】
【識別番号】510256159
【氏名又は名称】コリア リサーチ インスティテュート オブ ケミカル テクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】特許業務法人 ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】イ、サン チョル
(72)【発明者】
【氏名】キム、セイ チュン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、クォン ヨン
(72)【発明者】
【氏名】キム、オク ヒ
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ソク チュン
(72)【発明者】
【氏名】ユ、ミン チン
【テーマコード(参考)】
4C081
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C081AB11
4C081CE08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC42
4C086BC50
4C086CB09
4C086CC04
4C086CC05
4C086CC09
4C086GA02
4C086GA07
4C086GA12
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA66
4C086ZA75
4C086ZA81
4C086ZA94
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA53
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA66
4C206ZA75
4C206ZA81
4C206ZA94
(57)【要約】      (修正有)
【課題】軟組織の縫合手術のために軟組織を一時的に硬く硬化させることができる多様な化合物を提供する。
【解決手段】例えば、7−クロロ−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸等の化合物による。本発明に係る化合物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の縫合効率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防することができる。また、本発明に係る化合物は、軟組織の中でも特に膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に予防することができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシキノリン(8−hydroxyquinoline)化合物、その薬学的に許容可能な塩および水和物、並びに下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩及び水和物からなる群より選択された化合物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物。
【化1】
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【請求項2】
前記化合物は、以下の化合物からなる群より選択された1種以上である、請求項1に記載の薬学組成物:
16)7−クロロ−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸(7−chloro−4−hydroxy−3−quinolinecarbo);
17)5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン(5−chloro−8−hydroxyquinoline);
18)5−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン(5−chloro−8−hydroxy−7−iodoquinoline);
19)5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキノリン(5,7−diiodo−8−hydroxyquinoline);
20)4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸(4,8−dihydroxyquinoline−2−carboxylic acid);
21)4−ヒドロキシ−2−メチルキノリン(4−hydroxy−2−methylquinoline);
22)2−ヒドロキシ−4−メチルキノリン(2−hydroxy−4−methylquinoline);
23)8−ヒドロキシ−5−ニトロキノリン(8−hydroxy−5−nitroquinoline);
24)4−ヒドロキシ−7−トリフルオロメチル−3−キノリンカルボン酸(4−hydroxy−7−trifluoromethyl−3−quinolinecarboxylic acid);
25)3−ヒドロキシイソキノリン(3−hydroxyisoquinoline);
26)4−ヒドロキシ−7−メトキシキノリン(4−hydroxy−7−methoxyquinoline);
27)4−ヒドロキシキノリン(4−hydroxyquinoline);
28)6−ヒドロキシキノリン(6−hydroxyquinoline);
29)2−ヒドロキシキノリン(2−hydroxyquinoline);
30)7−ヒドロキシキノリン(7−hydroxyquinoline);
31)8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸(8−hydroxyquinoline−7−carboxylic acid);
32)8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸(8−hydroxy−5−quinoline sulfonic acid);
33)8−ヒドロキシキノリン(8−hydroxyquinoline);および
34)8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸ハイドレイト(8−hydroxy−5−quinoline sulfonic acid hydrate)。
【請求項3】
前記軟組織は、膵臓、肝臓、神経、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織である、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項4】
前記化合物は、軟組織の硬度または引張力を増加させる、請求項1に記載の薬学組成物。
【請求項5】
ヒドロキシキノリン(8−hydroxyquinoline)化合物、その薬学的に許容可能な塩および水和物、並びに下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩及び水和物からなる群より選択された化合物を有効成分として含む、膵臓漏れの予防用薬学組成物
【化9】
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【請求項6】
前記化合物は、以下の化合物からなる群より選択された1種以上である、請求項5に記載の薬学組成物:
16)7−クロロ−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸(7−chloro−4−hydroxy−3−quinolinecarbo);
17)5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン(5−chloro−8−hydroxyquinoline);
18)5−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン(5−chloro−8−hydroxy−7−iodoquinoline);
19)5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキノリン(5,7−diiodo−8−hydroxyquinoline);
20)4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸(4,8−dihydroxyquinoline−2−carboxylic acid);
21)4−ヒドロキシ−2−メチルキノリン(4−hydroxy−2−methylquinoline);
22)2−ヒドロキシ−4−メチルキノリン(2−hydroxy−4−methylquinoline);
23)8−ヒドロキシ−5−ニトロキノリン(8−hydroxy−5−nitroquinoline);
24)4−ヒドロキシ−7−トリフルオロメチル−3−キノリンカルボン酸(4−hydroxy−7−trifluoromethyl−3−quinolinecarboxylic acid);
25)3−ヒドロキシイソキノリン(3−hydroxyisoquinoline);
26)4−ヒドロキシ−7−メトキシキノリン(4−hydroxy−7−methoxyquinoline);
27)4−ヒドロキシキノリン(4−hydroxyquinoline);
28)6−ヒドロキシキノリン(6−hydroxyquinoline);
29)2−ヒドロキシキノリン(2−hydroxyquinoline);
30)7−ヒドロキシキノリン(7−hydroxyquinoline);
31)8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸(8−hydroxyquinoline−7−carboxylic acid);
32)8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸(8−hydroxy−5−quinoline sulfonic acid);
33)8−ヒドロキシキノリン(8−hydroxyquinoline);および
34)8−ヒドロキシ−5−キノリンスルホン酸ハイドレイト(8−hydroxy−5−quinoline sulfonic acid hydrate)。
【請求項7】
前記塩は、ソジウム(6R,7R)−3−(アセトキシメチル)−8−オキソ−7−(2−(チオフェン−2−イル)アセトアミド)−5−チア−1−アザビシクロ[4.2.0]オクト−2−エン−2−カルボキシレート(sodium(6R,7R)−3−(acetoxymethyl)−8−oxo−7−(2−(thiophen−2−yl)acetamido)−5−thia−1−azabicyclo[4.2.0]oct−2−ene−2−carboxylate)である、請求項1又は5に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軟組織の縫合手術のために軟組織を一時的に硬く硬化させることができる化
合物に関する。
【背景技術】
【0002】
膵臓(パンクレアス;pancreas)は、胃の後ろ部分に位置している臓器であり
、多様な消化酵素を分泌して胃を通過した炭水化物、タンパク質、脂肪の分解を促進する
だけでなく、インスリン、グルカゴンなどの重要なホルモンを生産する器官である。膵臓
から消化酵素の十分な分泌がなければ栄養素の吸収が不十分になる。また、インスリンと
グルカゴンの分泌は、血管内糖の濃度を調節する。これら各種酵素とホルモンの生産と分
泌を調節する機序に対する研究は、栄養と糖尿、肥満など各種の多様な疾病に関連して重
要なテーマとなっている。
【0003】
膵臓に関連して発生する主要疾病としては、膵臓癌、膵臓炎、糖尿病などがある。糖尿
病の場合には、膵臓でのインスリン分泌が低下したり、他の組織でインスリンの作用に対
する抵抗性が生じる場合に発生する疾病であって、血糖値が上昇してそれによる各種の合
併症をもたらす危険な疾患である。また、膵臓癌の場合には、悪性腫瘍の中でも最も死亡
率が高く予後が良くない疾病として知られている。
【0004】
膵臓に関連する疾患を治療するための最も一般的な治療方法としては、鎮痛剤、抗生剤
、抗癌剤などの投与や静脈内点滴の供給などで試みられており、ひどい場合には、手術に
より疾患を治療する膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenecto
my)が施されている。
【0005】
前記膵頭十二指腸切除術は、1912年、Kauschによって成功的な膵頭十二指腸
切除術が最初に紹介された後、Whippleらによって広く普及されるようになった。
膵頭十二指腸切除術は、膵臓頭部、総胆管、十二指膓膨大部などに発生するVater氏
膨大部周辺癌の根治的治療に適用している重要な術式であるが、手術後合併症が発生する
可能性が高い手術方法である。1970年代までは手術後死亡率が約20%程度と報告さ
れており、最近は、手術術技および麻酔術の発展と手術前後の患者管理、栄養管理などの
発展により膵頭十二指腸切除術の死亡率は5%以下と報告されている。
【0006】
しかし、たとえ死亡率の急激な減少にもかかわらず、手術後合併症の発生頻度は最近も
40〜50%と報告されており、なかでも、死亡率と深い関係がある膵臓漏れ(panc
reatic leakage)の発生は依然として10〜20%と報告されている。膵
臓漏れは発生すると、腹腔内出血や膿瘍、またはそれによる敗血症を引き起こすことがあ
り、これに関連する死亡率も高いことが明らかになった。
【0007】
様々な報告によれば、膵臓漏れの発生に関与する危険因子として膵管の直径と膵臓柔組
織の硬度(consistency)などが関与することが知られている。ここで、前記
膵臓実質の硬度に関連して、膵臓切除術後に残っている膵臓は柔組織が非常に柔らかく、
縫合時に組織がもろくなる危険性が高くて縫合に高度の技術を要するが、縫合後にも吻合
がきちんと行われず、その隙間に膵液(pancreatic juice)が流れ出て
前記膵臓漏れが発生するのである。
【0008】
これによって、最近は、手術後膵臓漏れの発生を防止するために、膵−空腸吻合術また
は膵−胃腸吻合術、膵管−粘膜吻合術またはdunking法、ステント挿入術などが提
案され、このような手術縫合方法以外にも、ソマトスタチン(somatostatin
)や繊維素接着剤なども提案されている。
【0009】
本発明者らは、既存の抗生剤の構造を基本骨格として合成された新たな化合物が膵臓を
一時的に硬化させることができて、前記のような膵頭十二指腸切除術などの膵臓手術時に
縫合効率が高められることを見出して、本発明を完成するに至った。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明者らは、膵頭十二指腸切除術後の膵臓漏れの発生を予防するために、膵臓縫合を
より効率的に行えるように膵臓を一時的に硬化させることができる新規な化合物を開発し
、その結果、本発明に係る化合物誘導体が膵臓のような軟組織の強度または引張力を一時
的に向上させることができることを確認して、本発明に至った。
【0011】
したがって、本発明の一つの目的は、化学式1で表される新規な化合物またはその薬学
的に許容可能な塩を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、前記化合物の製造方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、軟組織硬化用薬学組成物を提供することである。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、膵臓硬化用薬学組成物を提供することである。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、膵臓漏れの予防用薬学組成物を提供することである。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、軟組織硬化用物質の選別方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
以下、本願に記載の多様な具体例が図面を参照して記載される。下記の説明において、
本発明の完全な理解のために、多様な特異的詳細事項、例えば、特異的形態、組成物、お
よび工程などが記載されている。しかし、特定の具体例は、これらの特異的詳細事項のう
ち1つ以上なしに、または他の公知の方法および形態とともに実行される。他の例におい
て、公知の工程および製造技術は、本発明を不必要にあいまいにさせないために、特定の
詳細事項として記載されない。「一つの具体例」または「具体例」に対する本明細書全体
にわたる参照は、具体例と結び付けて記載された特別な特徴、形態、組成または特性が本
発明の一つ以上の具体例に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたる
多様な位置で表現された「一つの具体例において」または「具体例」の状況は、必ずしも
本発明の同一の具体例を示さない。追加的に、特別な特徴、形態、組成、または特性は、
一つ以上の具体例において何らかの適した方法で組み合わされる。
【0018】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能
な塩または水和物を提供する:
【化1】
前記化学式1において、
Rは、水素またはN(R’)(R’’)であり;
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル基またはC1−6アルケ
ニル基であり;
は、水素またはC1−6アルキル基であり;
前記RのC1−6アルキル基は、Rで置換もしくは非置換であり;
は、C1−6アルケニル基、C3−7シクロアルキル基、シアノ基、C1−6アルキ
ル基、C6−10アリール基、−ORおよび−COORからなる群より選択され;
のアリール基は、ハロゲンで置換もしくは非置換であり;
は、−(CHORであり;
mは、0〜3の整数であり;
およびRは、それぞれ独立に、C1−6アルキル基である。
【0019】
本発明の一具体例において、前記化学式1の化合物またはその薬学的に許容可能な塩は
、好ましくは、下記表1に示す化合物から選択された1種以上であってもよい。
【0020】
【表1】
【0021】
本発明の好ましい具体例として、前記R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素また
はC1−6アルケニル基であってもよい。
【0022】
本発明の好ましい具体例として、前記Rは、水素またはC1−4アルキル基であって
もよい。
【0023】
本発明の好ましい具体例として、前記Rは、C1−3アルケニル基、C5−7シクロ
アルキル基、シアノ基、C1−3アルキル基、C6−8アリール基、−ORおよび−C
OORからなる群より選択されてもよい。
【0024】
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、好ましくは、(2S,5R,6R
)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド)−4−チア−1
−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボン酸;アリル(2S,5R,6R)
−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド)−4−チア−1−
アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシレート;シクロヘキシルメチル(
2S,5R,6R)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェニルアセトアミド
)−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボキシレート;3−
シアノプロピル(2S,5R,6R)−3,3−ジメチル−7−オキソ−6−(2−フェ
ニルアセトアミド)−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.0]ヘプタン−2−カルボ
キシレート;および(2S,5R,6R)−6−((S)−2−アミノ−2−フェニルア
セトアミド)−3,3−ジメチル−7−オキソ−4−チア−1−アザビシクロ[3.2.
0]ヘプタン−2−カルボン酸からなる群より選択された1種以上であってもよい。
【0025】
本発明はまた、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する。薬
学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質に悪
影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な遊離塩基と前記
酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0026】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレート、および
カーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸
、コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、
ゲンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチ
ルサリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン
、バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン
、リシン、アルギニン、チロシン、およびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メ
タンスルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネート、およびトルエンスルホ
ネート;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;また
はアンモニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0027】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式1の化合物を、メタノール、
エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような水と混合可能な溶媒に溶かしてから
、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製造することができる。
【0028】
本発明において、前記化学式1で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、下記表2に示す塩の中から選択された1種以上であってもよい。
【0029】
【表2】
【0030】
その他にも、前記化学式1で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含まれる
【0031】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可
能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0032】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0033】
本発明で提供する前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水
和物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の縫合効
率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防することがで
きる。
【0034】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可
能な塩または水和物を有効成分として含む、膵臓漏れ予防用薬学組成物を提供する。
【0035】
本発明で提供する前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水
和物は、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancrea
ticoduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に
予防することができる。
【0036】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式1で表される化合物、その
薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステップを含む、軟組織を硬化す
る方法に関する。
【0037】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0038】
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩ま
たは水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0039】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0040】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式1で表される化合物、その
薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステップを含む、膵臓漏れの予防
方法に関する。
【0041】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0042】
また、本発明において、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩ま
たは水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0043】
本発明で使用される「有効量」は、対象体の軟組織、または膵臓に一時的に硬度または
引張力への変化を達成するのに十分な量を指す。
【0044】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ヒドロキシキノリン(hydroxyquin
oline)化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群よ
り選択された化合物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0045】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物とその誘導体は、下記表3に示す化合
物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0046】
【表3】
【0047】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物の誘導体は、好ましくは、7−クロロ
−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸;5−クロロ−8−ヒドロキシキノリン;5
−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン;5,7−ジヨード−8−ヒドロキシキ
ノリン;4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸;4−ヒドロキシ−7−トリフ
ルオロメチル−3−キノリンカルボン酸;3−ヒドロキシイソキノリン;4−ヒドロキシ
キノリン;6−ヒドロキシキノリン;2−ヒドロキシキノリン;8−ヒドロキシキノリン
−7−カルボン酸;および8−ヒドロキシキノリンからなる群より選択された1種以上で
あってもよいし、より好ましくは、3−ヒドロキシイソキノリンであってもよい。
【0048】
本発明はまた、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の薬学的に許
容可能な塩を提供する。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的
活性と物理化学的性質に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に
許容可能な遊離酸と前記塩基化合物の酸付加塩などが可能であるが、これに制限されない
【0049】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0050】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記ヒドロキシキノリン化合物またはそ
の化合物の誘導体を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0051】
その他にも、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の水和物形態も
、本発明の範囲に含まれ、好ましくは、下記表4に示す水和物であってもよいが、これに
制限されるわけではない。
【0052】
【表4】
【0053】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0054】
本発明の前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩、お
よび水和物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の
縫合効率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防するこ
とができる。
【0055】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その
薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効成分として含
む、膵臓漏れ予防用薬学組成物を提供する。
【0056】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物とその誘導体は、前記表3に示した化
合物の中から選択された1種以上であってもよい。
【0057】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物の誘導体は、好ましくは、5−ヒドロ
キシキノリン;7−クロロ−4−ヒドロキシ−3−キノリンカルボン酸;5−クロロ−8
−ヒドロキシキノリン;5−クロロ−8−ヒドロキシ−7−ヨードキノリン;5,7−ジ
ヨード−8−ヒドロキシキノリン;4,8−ジヒドロキシキノリン−2−カルボン酸;4
−ヒドロキシ−7−トリフルオロメチル−3−キノリンカルボン酸;3−ヒドロキシイソ
キノリン;4−ヒドロキシキノリン;6−ヒドロキシキノリン;2−ヒドロキシキノリン
;8−ヒドロキシキノリン−7−カルボン酸;および8−ヒドロキシキノリンからなる群
より選択された1種以上であってもよいし、より好ましくは、3−ヒドロキシイソキノリ
ンであってもよい。
【0058】
本発明はまた、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその化合物の誘導体の薬学的に許
容可能な塩を提供する。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的
活性と物理化学的性質に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に
許容可能な遊離酸と前記塩基化合物の酸付加塩などが可能であるが、これに制限されない
【0059】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0060】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記ヒドロキシキノリン化合物またはそ
の化合物の誘導体を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0061】
その他にも、前記ヒドロキシキノリン化合物またはその誘導体の水和物形態も、本発明
の範囲に含まれ、好ましくは、前記表4に示した水和物であってもよいが、これに制限さ
れるわけではない。
【0062】
本発明の前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩およ
び水和物は、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancr
eaticoduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果
的に予防することができる。
【0063】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体にヒドロキシキノリン化合物、その誘導
体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効量で
投与するステップを含む、軟組織を硬化する方法に関する。
【0064】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能
な塩および水和物は、本発明に係る軟組織硬化用薬学組成物に記載したところと重複し、
以下、詳細な記載を省略する。
【0065】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0066】
また、本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許
容可能な塩または水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0067】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0068】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体にヒドロキシキノリン化合物、その誘導
体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群より選択された化合物を有効量で
投与するステップを含む、膵臓漏れの予防方法に関する。
【0069】
本発明において、前記ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能
な塩および水和物は、本発明に係る膵臓漏れ予防用薬学組成物に記載したところと重複し
、以下、詳細な記載を省略する。
【0070】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0071】
また、本発明において、ヒドロキシキノリン化合物、その誘導体、その薬学的に許容可
能な塩または水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0072】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表さ
れる化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化
用薬学組成物を提供する:
【化2】
【化3】
【化4】
【化5】
【化6】
【化7】
【化8】
【化9】
【0073】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物の具体的な名称は、下記表5の通
りである。
【0074】
【表5】
【0075】
本発明はまた、前記化学式2〜9で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する
。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質
に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な塩基と化学
式2〜9の酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0076】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つ
で表される化合物を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0078】
本発明において、前記化学式8で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、下記表6に示す塩であってもよい。
【0079】
【表6】
【0080】
その他にも、前記化学式2〜9で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含ま
れる。
【0081】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0082】
本発明の前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩および水和物
は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫合施術時の縫合効率を
高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを予防することができる
【0083】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表さ
れる化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効成分として含む、膵臓漏れ予
防用薬学組成物を提供する:
【化10】
【化11】
【化12】
【化13】
【化14】
【化15】
【化16】
【化17】
【0084】
本発明はまた、前記化学式2〜9で表される化合物の薬学的に許容可能な塩を提供する
。薬学的に許容可能な塩は、人体に毒性が低く親化合物の生物学的活性と物理化学的性質
に悪影響を与えてはならない。薬学的に許容可能な塩は、薬学的に許容可能な遊離塩基と
前記化学式2〜9の酸化合物の付加塩などが可能であるが、これに制限されない。
【0085】
本発明に係る化合物の好ましい塩の形態としては、例えば、無機酸を有する塩、例えば
、塩化水素酸、臭素酸、硫酸、硫酸水素ナトリウム、ホスフェート、ニトレートおよびカ
ーボネート;および有機酸を有する塩、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、シュウ酸、
コハク酸、安息香酸、クエン酸、マレイン酸、マロン酸、酒石酸、グルコン酸、乳酸、ゲ
ンチジン酸、フマル酸、ラクトビオン酸、サリチル酸、トリフルオロ酢酸およびアセチル
サリチル酸(アスピリン);またはアミノ酸を有する塩、例えば、グリシン、アラニン、
バリン、イソロイシン、セリン、システイン、シスチン、アスパラギン酸、グルタミン、
リシン、アルギニン、チロシンおよびプロリン;スルホン酸を有する塩、例えば、メタン
スルホネート、エタンスルホネート、ベンゼンスルホネートおよびトルエンスルホネート
;アルカリ金属との反応による金属塩、例えば、ナトリウムおよびカリウム;またはアン
モニウムイオンを有する塩であるが、これらに限定されるものではない。
【0086】
前記塩は、通常の方法で製造できる。例えば、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つ
で表される化合物を、メタノール、エタノール、アセトン、1,4−ジオキサンのような
水と混合可能な溶媒に溶かしてから、遊離酸または遊離塩基を加えた後に結晶化させて製
造することができる。
【0087】
本発明において、前記化学式8で表される化合物の薬学的に許容可能な塩の好ましい例
示としては、前記表6に示した塩であってもよい。
【0088】
その他にも、前記化学式2〜9で表される化合物の水和物形態も、本発明の範囲に含ま
れる。
【0089】
本発明の前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物は
、膵臓の硬度または引張力を一時的に高めて膵頭十二指腸切除術(pancreatic
oduodenectomy)時の縫合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に予防す
ることができる。
【0090】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式2〜9のうちのいずれか1
つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステッ
プを含む、軟組織を硬化する方法に関する。
【0091】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩およ
び水和物は、本発明に係る軟組織硬化用薬学組成物に記載したところと重複し、以下、詳
細な記載を省略する。
【0092】
本発明において、前記対象体は、一時的に軟組織硬化が必要な対象体であってもよく、
より好ましくは、軟組織に対して縫合施術を必要とする対象体であってもよい。
【0093】
また、本発明において、前記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表される化合物、そ
の薬学的に許容可能な塩または水和物は、前記対象体の軟組織に投与される。
【0094】
本発明において、前記「軟組織(soft tissue)」とは、膵臓、肝臓、神経
、靭帯、漿膜、筋膜、椎間板および血管からなる群より選択された1種以上の組織であっ
てもよく、好ましくは、膵臓であってもよいが、これに制限されるわけではない。
【0095】
本発明のさらに他の実施形態によれば、対象体に前記化学式2〜9のうちのいずれか1
つで表される化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効量で投与するステッ
プを含む、膵臓漏れの予防方法に関する。
【0096】
本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な塩また
は水和物は、本発明に係る膵臓漏れ予防用薬学組成物に記載したところと重複し、以下、
詳細な記載を省略する。
【0097】
本発明において、前記対象体は、膵頭十二指腸切除術を必要とする対象体であってもよ
い。
【0098】
また、本発明において、前記化学式2〜9で表される化合物、その薬学的に許容可能な
塩または水和物は、前記対象体の膵臓に投与される。
【0099】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式10で表される化合物および18−
クラウン−6(1,4,7,10,13,16−ヘキサオキサシクロオクタデカン)(1
8−crown−6(1,4,7,10,13,16−hexaoxacyclooct
adecane))を有機溶媒に溶解させるステップと、
前記溶解した溶液に下記化学式11で表される化合物を添加し、撹拌して化合物を合成す
るステップとを含む化合物誘導体を製造する方法を提供する:
【化18】
[化学式11]
−Br
前記化学式10において、
Rは、水素またはN(R’)(R’’)であり、
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル基またはC1−6アルケ
ニル基であり、
前記化学式11において、
は、水素またはC1−6アルキル基であり;
前記RのC1−6アルキル基は、Rで置換もしくは非置換であり;
は、C1−6アルケニル基、C3−7シクロアルキル基、シアノ基、C1−6アルキ
ル基、C6−10アリール基、−ORおよび−COORからなる群より選択され;
のアリール基は、ハロゲンで置換もしくは非置換であり;
は、−(CHOR10であり;
nは、0〜3の整数であり;
およびR10は、それぞれ独立に、C1−6アルキルである。
【0100】
本発明において、前記化学式11で表される化合物は、3−ブロモプロペン(3−br
omopropene)、(ブロモメチル)シクロヘキサン((bromomethyl
)cyclohexane)、4−ブロモブチロニトリル(4−bromobutyro
nitrile)、tert−ブチルブロモプロピオネート(tert butyl b
romopropionate)、1−ブロモ−2−メチルプロパン(1−bromo−
2−methylpropane)、2−フルオロベンジルブロミド(2−fluoro
benzyl bromide)および2−(2−エトキシエトキシ)エチルブロミド(
2−(2−ethoxyethoxy)ethyl bromide)からなる群より選
択されてもよいが、前記化学式のカルボキシレートと反応して置換可能なアルキルブロミ
ドであれば制限はない。
【0101】
本発明において、前記有機溶媒は、化合物の溶解のために使用され、非プロトン性極性
溶媒であることが好ましい。具体的には、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、
アセトン、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、1−
メチル−2−ピロリドン(NMP)などを使用することができ、ジメチルホルムアミド(
DMF)を使用することが最も好ましい。
【0102】
本発明のさらに他の実施形態によれば、(a)化合物を処理しないヒトを除く哺乳動物
の膵臓の硬度または引張力を測定するステップと、(b)候補化合物を処理したヒトを除
く哺乳動物の膵臓の硬度または引張力を測定するステップと、(c)前記(b)ステップ
で測定された膵臓の硬度または引張力が、前記(a)ステップで測定された膵臓の硬度ま
たは引張力より高い場合、前記化合物を膵臓硬化用物質と判断するステップとを含む、膵
臓硬化用物質の選別方法を提供する。
【0103】
本発明において、前記KRM−60027(ペニシリンGポタシウム塩)と前記KRM
−60036(アンピシリンソジウム塩)化合物は、(R)−4−チア−1−アザビシク
ロ[3,2,0]ヘプタ−7−オンを骨格として有する抗生剤であって同じ系列の抗生剤
である。両化合物の相違は、KRM−60027はポタシウム塩、KRM−60036は
ソジウム塩という点で相違があり、KRM−60027は、骨格左側のベンジル位置にC
−結合を有するのに対し、KRM−60036は、ベンジル位置にCH−結合に存
在する水素原子1つをアミノ基に置換して薬物の薬動学(pharmacokineti
cs、PK)を増加させる効果を有する。KRM−60027は、膵臓は引張力を有意な
水準に増加させる結果を示し、KRM−60036の場合には、膵臓の強度を有意に増加
させることが明らかになった。
【0104】
本発明において、前記KRM−60037(D−ペニシラミン)は、単純な構造を有す
る薬物で分子量が149にしかならないが、引張力が1.5倍増加する効果を示していた
。特に、このような小さい分子の場合、化学的に変形可能な部分が多いため、多様な置換
基をつけることにより、膵臓の引張力と硬度を十分に増加させることができるという利点
を有する。
【0105】
本発明において、前記KRM−60042(8−ヒドロキシキノリン)も、単純な骨格
に分子量が145の低分子物質で多様な置換基をつけるのに容易である。KRM−600
42の場合、膵臓の硬度と引張力をすべて有意に増加させていることを確認することがで
きる。
【0106】
本発明において、KRM−60049(ケトコナゾール)は、分子量が530で理想的
な値を有し、ピペラジンとイミダゾールなどの塩を形成可能な官能基が多くて多様な塩を
作ることができるという利点がある。
【0107】
本発明において、「硬度」は、ヒトの臓器の中で特に軟組織、好ましくは、膵臓の外部
に外力が加えられる時、膵臓の変形に対する抵抗力の大きさを意味するものである。本発
明に係る硬度の測定は、硬度計を用いて測定され、膵臓の硬度は、弾性係数(elast
ic modulus;EM)をフックの法則(Hooke’s law)とヘルツ(H
ertz)の接触ストレス理論(contract stress theory)に基
づいて測定することにより行われる。EMは、弾力を有する物質の硬い程度(stiff
ness)を測定するものであって、フックの法則(Hooke’s law)によって
「軸(axis)によって存在する応力(stress)」と「応力の範囲内の軸に存在
する全体変形(strain)」の比率で表される。
【0108】
本発明において、「引張力」は、ヒトの臓器の中で特に軟組織、好ましくは、膵臓内に
生じる力を意味するもので、引き伸ばしたり引っ張ったりする作用で外力が作用した時、
それに抵抗して臓器内に生じる耐力を意味する。本発明に係る引張力の測定は、動力計(
Dynamometer)を用いて測定され、より具体的には、ニュートン動力計を用い
て縫合保持容量(suture−holding capacity)の測定により引張
力を算出する。この時、組織の重量を加算して引張力を算出する。
【0109】
本発明の一具体例において、「アルキル」は、飽和した直鎖状または分枝状炭化水素基
、例えば、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソブチル、3級ブチルおよびペンチル
を意味する。本明細書で使用された「C1−6アルキル基」は、炭素数1−6個のアルキ
ル基を意味する。
【0110】
本発明の一具体例において、「シクロアルキル」は、炭素および水素原子を含む単環式
または多環式飽和環を意味する。
【0111】
本発明の一具体例において、「アリール」は、芳香性を有する全体または部分的に不飽
和の単環式または多環式炭素環を意味する。本発明のアリール基は、好ましくは、モノア
リールまたはビアリール(biaryl)である。
【0112】
本発明の一具体例において、「アルケニル」は、1つ以上の炭素−炭素二重結合を有す
るアルキル残基を意味する。ここで、アルキルは、前記定義された通りである。
【0113】
本発明の一具体例において、「ハロゲン」あるいは「ハロ」は、別の言及がなければ、
フルオル、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0114】
本発明の薬学組成物は、活性成分化合物だけでなく、薬学的に許容可能な担体を含む。
本発明の薬学組成物に含まれる薬学的に許容可能な担体は、通常、薬剤の処方に使用され
るものであって、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトー
ル、デンプン、アカシアガム、リン酸カリウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カリウ
ム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチル
セルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、
ステアリン酸マグネシウム、およびミネラルオイルを含むが、これに限定されるものでは
ない。
【0115】
本発明に係る薬学組成物は、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、およ
び保存剤を追加的に含んでもよい。好適な薬学的に許容可能な担体および剤形の詳細は、
Remington’s Pharmaceutical Sciences(第19版
、1995年)を参照することができる。
【0116】
本発明に係る薬学組成物は、経口または非経口投与可能であり、具体的には、非経口投
与してもよい。非経口投与としては、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮
投与または関節内注入で投与してもよい。より具体的には、筋肉注入または腹腔注入で投
与する。
【0117】
本発明の薬学組成物の好適な投与量は、薬剤の処方方法、投与方法、患者の年齢、体重
、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度および使用された薬学組成物
に対する敏感度によって多様になる。好ましくは、本発明の薬学組成物は、1日投与量0
.001〜10000mg/kg(体重)で投与される。
【0118】
本技術分野における熟練した者に知られた従来技術によれば、本発明に係る薬学組成物
は、上述のような薬学的に許容可能な担体および/または賦形剤に剤形化して、ようやく
単位容量形態および多容量形態を含む様々な形態で提供する。剤形の非限定的な例として
は、溶液、懸濁液または油中の乳液または水性媒質、エリクサー型(elixir)、粉
末、顆粒、錠剤(tablet)およびカプセルを含むが、これに限定されるものではな
く、分散剤または安定剤を追加的に含んでもよい。
【発明の効果】
【0119】
本発明に係る化合物は、軟組織の硬度または引張力を一時的に高めて軟組織に対する縫
合施術時の縫合効率を高めることで、吻合がきちんと行われないことによる後遺症などを
予防することができる。
【0120】
また、本発明に係る化合物は、軟組織の中でも特に膵臓の硬度または引張力を一時的に
高めて膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy)時の縫
合効率を高めることで、膵臓漏れを効果的に予防することができる。
【図面の簡単な説明】
【0121】
図1】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係る抗生剤KRM−60027、KRM−60036、KRM−60037、KRM−60042およびKRM−60049を処理した後、膵臓の硬度の変化をグラフで示すものである。
図2】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係る抗生剤KRM−60027、KRM−60036、KRM−60037、KRM−60042およびKRM−60049を処理した後、膵臓の引張力の変化をグラフで示すものである。
図3】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60028、KRM−60029およびKRM−60030を処理した後、膵臓の硬度の変化をグラフで示すものである。
図4】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60028、KRM−60029およびKRM−60030を処理した後、膵臓の引張力の変化をグラフで示すものである。
図5】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRP−00001〜KRP−00017を処理した後、膵臓の硬度の変化をグラフで示すものである。
図6】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRP−00001〜KRP−00017を処理した後、膵臓の引張力の変化をグラフで示すものである。
図7】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60077〜KRM−60088を処理した後、膵臓の硬度の変化をグラフで示すものである。
図8】本発明の一実施例において、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60077〜KRM−60088を処理した後、膵臓の引張力の変化をグラフで示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0122】
本発明の一実施形態によれば、下記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可能
な塩または水和物を提供する:
【化19】
前記化学式1において、
Rは、水素またはN(R’)(R’’)であり;
R’およびR’’は、それぞれ独立に、水素、C1−6アルキル基またはC1−6アルケ
ニル基であり;
は、水素またはC1−6アルキル基であり;
前記RのC1−6アルキル基は、Rで置換もしくは非置換であり;
は、C1−6アルケニル基、C3−7シクロアルキル基、シアノ基、C1−6アルキ
ル基、C6−10アリール基、−ORおよび−COORからなる群より選択され;
のアリール基は、ハロゲンで置換もしくは非置換であり;
は、−(CHORであり;
mは、0〜3の整数であり;
およびRは、それぞれ独立に、C1−6アルキル基である。
【0123】
本発明の他の実施形態によれば、前記化学式1で表される化合物、その薬学的に許容可
能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0124】
本発明のさらに他の実施形態によれば、ヒドロキシキノリン(hydroxyquin
oline)化合物、その誘導体、その薬学的に許容可能な塩および水和物からなる群よ
り選択された化合物を有効成分として含む、軟組織硬化用薬学組成物を提供する。
【0125】
本発明のさらに他の実施形態によれば、下記化学式2〜9のうちのいずれか1つで表さ
れる化合物、その薬学的に許容可能な塩または水和物を有効成分として含む、軟組織硬化
用薬学組成物を提供する:
【化20】
【化21】
【化22】
【化23】
【化24】
【化25】
【化26】
【化27】
【実施例】
【0126】
以下、実施例を通じて本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明をよ
り具体的に説明するためのもので、本発明の要旨によって本発明の範囲がこれらの実施例
によって制限されないことは、当業界における通常の知識を有する者にとって自明であろ
う。
【0127】
<実施例1:膵臓硬化用化合物の合成のための基礎化合物の選別>
膵臓(pancreas)の機能を強化させることができる化合物を合成するための基
礎化合物を選別するために、下記に示す計23種の抗生剤を準備した:
【化28】
【化29】
【0128】
より詳細には、前記示したそれぞれの抗生剤を1mMの濃度で3匹のマウスに処理し、
対照群としては、リン酸塩緩衝液(phosphate buffered salin
e、PBS)を3匹のマウスに処理した。そして、抗生剤を処理しない対照群のマウスと
、抗生剤を処理したマウスの膵臓の引張力(tension)と硬度(hardness
)を比較して、処理時に引張力と硬度が増加した抗生剤を選択して基礎化合物を選別した
【0129】
その結果、前記23種の化合物のうち、KRM−60027、KRM−60036、K
RM−60037、KRM−60042およびKRM−60049化合物でのみ膵臓の引
張力と硬度が増加する効果を確認し、対照群対比、これら5種の化合物処理後、膵臓の硬
度および引張力の変化を図1および2にグラフで示した。ただし、硬度および引張力は下
記の方法を利用して測定した。
【0130】
(1)硬度の測定
硬度計を用いて膵臓の抵抗力を測定するために、切除した膵臓の弾性係数(elast
ic modulus;EM)を、フックの法則(Hooke’s law)とヘルツ(
Hertz)の接触ストレス理論(contract stress theory)に
基づき、Venustron(Axiom、Koriyama、Japan)を用いて膵
臓の抵抗力を次の公式で算出した。
【数1】
(F、力;v、ポアソン比(Poisson’s ratio);t、圧縮変形(var
iant of compression);r、物体を垂直に押す硬い球状探針(ri
gid spherical probe)の直径)
【0131】
(2)引張力の測定
動力計(Dynamometer)を用いて膵臓の引張力を測定した。膵臓片を1×1
×1.5cmで準備した後、silk4−0縫合糸を組織に通過させて結び目を形成し、
ニュートン動力計(Newton dynamometer)にかけて縫合保持容量(s
uture−holding capacity)を測定した。この時、組織の重量を加
算して引張力を算出した。
【0132】
図1および2に示されるように、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60027(ペ
ニシリンGポタシウム塩;Penicillin G potassium salt)
、KRM−60036(アンピシリンソジウム塩;Ampicillin sodium
salt)、KRM−60037(D−ペニシラミン;D−Penicillamin
e)、KRM−60042(ヒドロキシキノリン;8−Hydroxyquinolin
e)およびKRM−60049(ケトコナゾール;Ketoconazole)の5種の
抗生剤を処理すると、膵臓の引張力および/または硬度が対照群対比著しく増加すること
を確認することができた。より詳細には、KRM−60027は、膵臓の引張力を有意な
水準に増加させ、KRM−60036の場合には、膵臓の強度を有意に増加させることを
確認することができた。また、KRM−60037は、単純な構造を有する薬物で分子量
が149にしかならないが、膵臓の引張力を1.5倍増加させる効果を示し、KRM−6
0042およびKRM−60049は、膵臓の硬度および引張力をすべて高い水準に増加
させることを確認することができた。
【0133】
このような前記結果により、5種類の抗生剤を、膵臓を硬化させることができる化合物
の基礎化合物として選別した。
【0134】
合成例1.KRM−60027の誘導体の合成
前記実施例1において、膵臓の引張力の増加において優れた効果を示したKRM−60
027化合物を出発物質として、KRM−60027のカルボキシレート(carbox
ylate)位置に多様なアルキルブロミド化合物を結合させて、最終膵臓機能強化用化
合物を合成した。
【0135】
合成例1−1:KRM−60028の合成
【化30】
出発物質として使用されたKRM−60027化合物と18−クラウン−6(1,4,
7,10,13,16−Hexaoxacyclooctadecane)をDMF(d
imethylformamide)に溶解させた後、アルキルブロミドとして3−ブロ
モプロペン(3−bromopropene)を入れて、室温で24時間撹拌した。薄層
クロマトグラフィー(Thin−Layer Chromatography、TLC)
で反応が終結したことを確認した後、エチルアセテートを入れて、水で数回洗浄した。生
成物が含まれたエチルアセテート層を別途に分離した後、無水ソジウムスルフェートを入
れて、残る水分を除去して濃縮した。そして、カラムクロマトグラフィー(Column
chromatography)を用いて精製して、KRM−60027のカルボキシ
レートがアリルに置換された最終生成物KRM−60028を得た。
【0136】
合成例1−2:KRM−60029の合成
【化31】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりに(ブロモメチル)シクロヘキサ
ンを用いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、KRM−60
027のカルボキシレートがシクロヘキシルに置換された最終生成物を得た。
【0137】
合成例1−3:KRM−60030の合成
【化32】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりに4−ブロモブチロニトリルを用
いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、KRM−60027
のカルボキシレートがシアノブチルに置換された最終生成物を得た。
【0138】
合成例1−4:KRM−60077の合成
【化33】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりにtert−ブチルブロモプロピオ
ネートを用いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、KRM−
60027のカルボキシレートがtert−ブチルプロピオネートに置換された最終生成
物を得た。
【0139】
合成例1−5:KRM−60078の合成
【化34】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりに1−ブロモ−2−メチルプロパ
ンを用いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、KRM−60
027のカルボキシレートがイソブチルに置換された最終生成物を得た。
【0140】
合成例1−6:KRM−60079の合成
【化35】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりに2−フルオロベンジルブロミド
を用いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、KRM−600
27のカルボキシレートが2−フルオロベンジルに置換された最終生成物を得た。
【0141】
合成例1−7:KRM−60080の合成
【化36】
アルキルブロミドとして3−ブロモプロペンの代わりに2−(2−エトキシエトキシ)
エチルブロミドを用いることを除けば、製造例1−1に記載されたものと同様の方法で、
KRM−60027のカルボキシレートがエチレングリコールに置換された最終生成物を
得た。
【0142】
実施例2:膵臓硬化用化合物の追加的選別
前記合成例1で合成されたKRM−60028、KRM−60029およびKRM−6
0030を前記実施例1と同様の方法でマウスの膵臓に処理した後、何ら処理をしない対
照群対比、膵臓の硬度と引張力の変化を測定して、その結果を図3および4にグラフで示
した。
【0143】
図3および4に示されるように、マウスの膵臓に本発明に係るKRM−60028、K
RM−60029、およびKRM−60030を処理した結果、対照群対比、膵臓の硬度
および引張力がすべて増加することを確認することができた。実施例1を参照すれば、初
期化合物であるKRM−60027の場合には、対照群対比、膵臓の硬度の変化はわずか
であり、引張力は有意に増加したが、これから変形した化合物であるKRM−60028
、KRM−60029、およびKRM−60030の場合には、膵臓の硬度または引張力
がすべて増加することを確認することができた。特に、KRM−60027のカルボキシ
レート基にシアノプロピル基をつけた誘導体として右側末端部位にニトリル基を有するこ
とにより、水素結合受容体(hydrogen bonding acceptor)の
役割を果たせる官能基を有するKRM−60030化合物の場合には、対照群と比較して
、膵臓の硬度が1.5倍増加し、引張力も2倍増加したことを確認することができた。
【0144】
これにより、本発明の化学式1で表される化合物は、膵臓の硬度および引張力を増加さ
せて膵臓を一時的に硬化させることが分かる。
【0145】
合成例2:KRM−60036の誘導体の合成
前記実施例1において、膵臓の硬度の増加において優れた効果を示したKRM−600
36化合物を出発物質として、KRM−60036のアミンは保持したまま、カルボキシ
レート位置にのみ選択的にアルキルブロミド化合物を導入して、最終膵臓機能強化用化合
物を合成した。具体的には、下記反応式1のように出発物質として使用されたKRM−6
0036化合物のアミンをboc保護(boc protection)した後に、反応
式2のようにアルキルブロミドとして3−ブロモプロペン、(ブロモメチル)シクロヘキ
サンおよび4−ブロモブチロニトリルを用いて、製造例1−1に記載されたものと同様の
方法でアルキル基を導入し、boc脱保護(boc deprotection)して、
最終アミン化合物を得た。
【0146】
【化37】
【化38】
【0147】
実施例3:KRM−60042の誘導体
前記実施例1において、膵臓の硬度および引張力の増加においてすべて優れた効果を示
したKRM−60042化合物(Sigma−Aldrich、cat.No25256
5 148−24−3)の基本骨格であるヒドロキシル基とキノリンをベースとする下記
の誘導体化合物を準備した。
【化39】
【0148】
前記KRP−0001〜KRP−00017の計17種の化合物を前記実施例1と同様
の方法でマウスの膵臓に処理した後、何ら処理をしない対照群対比、膵臓の硬度と引張力
の変化を測定して、その結果を図5および6にグラフで示した。
【0149】
図5および6に示されるように、KRM−60042のキノリンを骨格とする17種の
誘導体のうち、KRP−00001、KRP−00002、KRP−00003、KRP
−00004、KRP−00005、KRP−00006、KRP−00009、KRP
−00012、KRP−00013、KRP−00014およびKRP−00016の1
1種の化合物を処理した場合、膵臓の硬度および引張力がすべて増加し、特に、KRP−
00001、KRP−00002、KRP−00003、KRP−00004、KRP−
00005、KRP−00009、KRP−00012、KRP−00013、KRP−
00014およびKRP−00016の10種の化合物を処理した場合、引張力が1.5
倍以上増加し、KRP−00010を処理した場合、対照群と比較して、引張力が2.4
倍位増加したことを確認することができた。
【0150】
これにより、本発明に係るヒドロキシキノリン誘導体は、膵臓の引張力を有意に増加さ
せる効果を証明し、硬度も増加させることを確認することができた。
【0151】
実施例4:その他の化合物
前記合成例1で合成されたKRM−60077〜KRM−60080と、下記にともに
示すKRM−60081〜KRM−60088の化合物を前記実施例1と同様の方法でマ
ウスの膵臓に処理した後、何ら処理をしない対照群対比、膵臓の硬度と引張力の変化を測
定して、その結果を図7および8にグラフで示した。
【化40】
【化41】
【化42】
【化43】
【0152】
図7および8に示されるように、KRM−60077〜KRM−60088化合物を処
理した場合、対照群対比、膵臓の硬度および/または引張力が増加し、特に、KRM−6
0077、KRM−60078、KRM−60080、KRM−60081、KRM−6
0082およびKRM−60088の化合物を処理した場合、膵臓の硬度と引張力がすべ
て有意な水準に増加したことを確認することができた。
【0153】
これにより、本発明に係る前記化合物は、膵臓の引張力を有意に増加させる効果を証明
し、硬度も増加させることを確認することができた。
【0154】
前記実験結果により、本発明では、膵臓の引張力および/または硬度を増加させる抗生
剤の構造に基づいて多様な変形化合物(誘導体)を合成すると、膵臓の機能を効果的に増
加させる化合物を選別できることを確認することができた。また、このように選別された
本発明の化合物は、膵臓に処理する場合、膵臓の硬度および引張力が一時的に増加して膵
頭十二指腸切除術などのような手術における膵臓の縫合効率を高め、ひいては、膵臓漏れ
も予防できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0155】
本発明は、軟組織の縫合手術のために軟組織を一時的に硬く硬化させることができる化
合物に関する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8