(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-130726(P2021-130726A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】水分インジケータ用インキ組成物、水分検知シート及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09D 11/50 20140101AFI20210813BHJP
G01N 31/00 20060101ALI20210813BHJP
G01N 31/22 20060101ALI20210813BHJP
G01N 21/80 20060101ALI20210813BHJP
A61F 13/42 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
C09D11/50
G01N31/00 B
G01N31/22 123
G01N21/80
A61F13/42 B
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2020-24848(P2020-24848)
(22)【出願日】2020年2月18日
(11)【特許番号】特許第6767021号(P6767021)
(45)【特許公報発行日】2020年10月14日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000204619
【氏名又は名称】大化工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】野口 貴匡
(72)【発明者】
【氏名】粟屋 勝文
(72)【発明者】
【氏名】小笹 浩幸
(72)【発明者】
【氏名】東 亮一
【テーマコード(参考)】
2G042
2G054
3B200
4J039
【Fターム(参考)】
2G042AA01
2G042BB01
2G042CB03
2G042DA08
2G042FA12
2G042FB07
2G042GA05
2G042HA10
2G054AA02
2G054AA07
2G054CA03
2G054CE02
2G054CE08
2G054CE10
2G054EA05
2G054EA06
2G054GB04
2G054GE02
2G054JA02
3B200AA01
3B200BB09
3B200DA25
3B200DD09
3B200DF02
4J039AD09
4J039AE04
4J039AE06
4J039BA19
4J039BC19
4J039BC58
4J039BE02
4J039BE30
4J039EA29
4J039EA43
4J039FA03
(57)【要約】
【課題】水分検知後も呈色性化合物が溶出しにくく、基材への密着性及びデザイン性に優れた水分検知部を形成することが可能な、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適した水分インジケータ用インキ組成物、及びそれを用いた水分検知シートを提供する。
【解決手段】樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)とを含有し、樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂である水分インジケータ用インキ組成物である。また、液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、シート状基材の一方の表面に印刷された、上記の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部とを備える水分検知シートである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)と、を含有し、
前記樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂である水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーに由来する構成単位を有する、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂の少なくともいずれかである請求項1に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂の、ガラス転移温度が60℃以上であり、重量平均分子量が30,000〜100,000である請求項2に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項4】
pH緩衝剤(D)をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項5】
前記pH緩衝剤(D)が、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸、フタル酸、及びクエン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である請求項4に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項6】
塩基性物質(E)をさらに含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項7】
前記塩基性物質(E)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び塩基性樹脂(但し、前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項6に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項8】
前記呈色性化合物(B)が、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、リトマス、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、フェノールレッド、クレゾールレッド、ナフトールフタレイン、及びコンゴーレッドからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜7のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項9】
アンチブロッキング剤(F)をさらに含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項10】
尿インジケータとして用いられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項11】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、
前記シート状基材の一方の表面に印刷された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部と、を備える水分検知シート。
【請求項12】
前記シート状基材が、塩基性成分を含有する請求項11に記載の水分検知シート。
【請求項13】
前記シート状基材が、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン10〜40質量%、高圧法低密度ポリエチレン2〜10質量%、ポリプロピレンブロックコポリマー3〜10質量%、及び重質炭酸カルシウム35〜60質量%を含有する樹脂組成物で形成されたポリオレフィン系多孔質フィルムである請求項11又は12に記載の水分検知シート。
【請求項14】
前記メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.94g/cm3、MFRが2〜16g/10minであり、
前記高圧法低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.925g/cm3、MFRが1〜10g/10minであり、
前記ポリプロピレンブロックコポリマーの、密度が0.89〜0.9g/cm3、MFRが2〜10g/10minである請求項13に記載の水分検知シート。
【請求項15】
前記シート状基材が、分散剤及び熱安定剤の少なくともいずれかを含有する請求項13又は14に記載の水分検知シート。
【請求項16】
前記重質炭酸カルシウムが、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び金属石鹸の少なくともいずれかで表面処理された表面処理物である請求項13〜15のいずれか一項に記載の水分検知シート。
【請求項17】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材の一方の表面に請求項1〜10のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物を付与して水分検知部を印刷するとともに、前記シート状基材の他方の表面に意匠性インキを付与してデザイン部を印刷する両面印刷工程を有する水分検知シートの製造方法。
【請求項18】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の水分検知シートを備えるおむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分インジケータ用インキ組成物、水分検知シート及びその製造方法、並びに水分検知シートを備えるおむつに関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ての紙おむつ等の吸収性物品には、通常、尿などの水分を検知して呈色する、pH指示薬等の着色剤を含有するインジケータ部(水分検知部)が設けられた透湿性シートが用いられている。吸収性物品を構成する水分吸収体に吸収された水分が、この水分吸収体に隣接して配置された透湿性シートに接触すると、透湿性シートに練り込まれた微粒子状の炭酸カルシウム等の成分の影響により接触した水分のpHが変化する。その結果、水分検知部に含まれているpH指示薬が変色するので、水分検知を外部から視認することができる。
【0003】
このような水分検知部は、例えば、pH指示薬を配合したホットメルト剤を透湿性シートに塗布することで形成される。このため、水分検知部の形状はライン(線)などの極めて単純な形状にならざるを得ず、デザイン性に乏しいといった課題があった。このような状況の下、上記の課題を解決しうる種々の材料がこれまでに提案されている。例えば、液体活性化着色剤、ケイ酸アルミニウム等の乳白剤、第4級アミン化合物、及び水溶性樹脂を含有する液体活性化処方物が提案されている(特許文献1)。また、呈色性有機化合物、水溶性高分子材料、疎水性高分子材料、第4級アンモニウム塩、及び溶剤を含有する、各種の基材に印刷して付与することが可能なインキ組成物が提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6013611号公報
【特許文献2】特開2018−24787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2で提案されたインキ組成物等を用いて形成した水分検知部は、水分を検知した後に呈色性化合物が溶出しやすいことがあった。このため、水分検知部のデザイン性が損なわれるとともに、溶出した呈色化合物によって水分検知部の周囲が汚れやすいといった課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、水分検知後も呈色性化合物が溶出しにくく、基材への密着性及びデザイン性に優れた水分検知部を形成することが可能な、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適した水分インジケータ用インキ組成物を提供することにある。また、本発明の課題とするところは、上記の水分インジケータ用インキ組成物を用いた水分検知シート及びその製造方法、並びにこの水分検知シートを備えたおむつを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す水分インジケータ用インキ組成物が提供される。
[1]樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)と、を含有し、前記樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂である水分インジケータ用インキ組成物。
[2]前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーに由来する構成単位を有する、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂の少なくともいずれかである前記[1]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[3]前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂の、ガラス転移温度が60℃以上であり、重量平均分子量が30,000〜100,000である前記[2]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[4]pH緩衝剤(D)をさらに含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[5]前記pH緩衝剤(D)が、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸、フタル酸、及びクエン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である前記[4]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[6]塩基性物質(E)をさらに含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[7]前記塩基性物質(E)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び塩基性樹脂(但し、前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも一種である前記[6]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[8]前記呈色性化合物(B)が、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、リトマス、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、フェノールレッド、クレゾールレッド、ナフトールフタレイン、及びコンゴーレッドからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[9]アンチブロッキング剤(F)をさらに含有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[10]尿インジケータとして用いられる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【0008】
さらに、本発明によれば、以下に示す水分検知シートが提供される。
[11]液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、前記シート状基材の一方の表面に印刷された、前記[1]〜[10]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部と、を備える水分検知シート。
[12]前記シート状基材が、塩基性成分を含有する前記[11]に記載の水分検知シート。
[13]前記シート状基材が、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン10〜40質量%、高圧法低密度ポリエチレン2〜10質量%、ポリプロピレンブロックコポリマー3〜10質量%、及び重質炭酸カルシウム35〜60質量%を含有する樹脂組成物で形成されたポリオレフィン系多孔質フィルムである前記[11]又は[12]に記載の水分検知シート。
[14]前記メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.94g/cm
3、MFRが2〜16g/10minであり、前記高圧法低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.925g/cm
3、MFRが1〜10g/10minであり、前記ポリプロピレンブロックコポリマーの、密度が0.89〜0.9g/cm
3、MFRが2〜10g/10minである前記[13]に記載の水分検知シート。
[15]前記シート状基材が、分散剤及び熱安定剤の少なくともいずれかを含有する前記[13]又は[14]に記載の水分検知シート。
[16]前記重質炭酸カルシウムが、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び金属石鹸の少なくともいずれかで表面処理された表面処理物である前記[13]〜[15]のいずれかに記載の水分検知シート。
【0009】
さらに、本発明によれば、以下に示す水分検知シートの製造方法が提供される。
[17]液不透過性かつ透湿性のシート状基材の一方の表面に前記[1]〜[10]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物を付与して水分検知部を印刷するとともに、前記シート状基材の他方の表面に意匠性インキを付与してデザイン部を印刷する両面印刷工程を有する水分検知シートの製造方法。
【0010】
また、本発明によれば、以下に示すおむつが提供される。
[18]前記[11]〜[16]のいずれかに記載の水分検知シートを備えるおむつ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、水分を検知して速やかに変色するとともに、水分検知後も呈色性化合物が溶出しにくく、基材への密着性及びデザイン性に優れた水分検知部を形成することが可能な、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適した水分インジケータ用インキ組成物が提供される。また、本発明によれば、上記の水分インジケータ用インキ組成物を用いた水分検知シート及びその製造方法、並びにこの水分検知シートを備えたおむつが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<水分インジケータ用インキ組成物>
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明の一実施形態である水分インジケータ用インキ組成物(以下、単に「インキ組成物」又は「インキ」とも記す)は、例えば、尿インジケータとして好適な印刷用インキであり、樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)とを含有する。そして、樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂である。以下、本実施形態のインキ組成物の詳細について説明する。
【0013】
(樹脂(A))
樹脂(A)は、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂(以下、「第4級アンモニウム塩基含有樹脂」とも記す)である。第4級アンモニウム塩基含有樹脂を含有させることで、ポリエチレン、ポリアミド、ポリエステル等の各種材料で構成された基材に対して密着性に優れた水分検知部を印刷して形成することが可能なインキ組成物とすることができる。
【0014】
樹脂(A)とともに配合される呈色化合物(B)は、通常、接触する液体のpHに応じてアニオン性基(−O
−、−COO
−、−SO
3−等)が生じて呈色する。このため、呈色化合物(B)中のアニオン性基が、第4級アンモニウム塩基含有樹脂の側鎖に存在する第4級アンモニウム塩基(第4級アンモニウムカチオン)と結合することで、水分検知後の呈色性化合物(B)が外部へと溶出しにくくなると考えられる。したがって、第4級アンモニウム塩基含有樹脂は、側鎖に第4級アンモニウム塩基を有する樹脂であればよく、主鎖の構造は特に限定されない。なお、第4級アンモニウム塩基含有樹脂は、親水性溶媒(C)に可溶な樹脂であることが好ましい。
【0015】
第4級アンモニウム塩基含有樹脂は、例えば、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合すること、又は第4級アンモニウム塩基を有するモノマーとその他のモノマーと共重合することで製造することができる。すなわち、第4級アンモニウム塩基含有樹脂は、通常、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーに由来する構成単位を有する樹脂である。
【0016】
第4級アンモニウム塩基含有樹脂としては、その側鎖に第4級アンモニウム塩基を有する、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂などを挙げることができる。なかでも、第4級アンモニウム塩基含有樹脂は、その側鎖に第4級アンモニウム塩基を有するアクリル系樹脂が好ましい。
【0017】
第4級アンモニウム塩基含有樹脂のガラス転移温度(Tg)は、60℃以上であることが好ましく、65〜85℃であることがさらに好ましい。そのガラス転移温度が60℃以上の第4級アンモニウム塩基含有樹脂を用いることで、水分検知部を印刷したシート状基材を巻回又は積層した場合であってもブロッキングが発生しにくくなる。
【0018】
第4級アンモニウム塩基含有樹脂の重量平均分子量(Mw)は、30,000〜100,000であることが好ましく、40,000〜80,000であることがさらに好ましい。重量平均分子量が30,000未満であると、バインダー樹脂としての性能を確保することがやや困難になるとともに、樹脂の製造が困難になる場合がある。一方、重量平均分子量が100,000超であると溶液化しにくく、ワニス状態とすることが困難になる場合があり、インキ化することが難しくなることがある。本明細書における「重量平均分子量(Mw)」とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算の値をいう。
【0019】
インキ組成物中の樹脂(A)の含有量は、例えば、1.0〜50.0質量%であり、好ましくは10.0〜30.0質量%である。
【0020】
(呈色性化合物(B))
呈色性化合物(B)は、接触する液体のpHに応じて変色する化合物である。この呈色化合物(B)を含有させることで、接触した液体のpHに応じて、インキ組成物やインキ組成物で印刷した水分検知部が変色する。
【0021】
呈色化合物(B)としては、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、メチルレッド、リトマス、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、ニュートラルレッド、フェノールレッド、クレゾールレッド、ナフトールフタレイン、コンゴーレッド等を挙げることができる。なかでも、ブロモチモールブルー(BTB)、ブロモフェノールブルー(BPB)、ブロモクレゾールグリーン(BCG)が好ましい。これらの呈色性化合物(B)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
インキ組成物中の呈色性化合物(B)の含有量は、色変化の確認しやすさ等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、インキ組成物中の呈色性化合物(B)の含有量は、0.1〜30.0質量%であることが好ましく、1.0〜10.0質量%であることがさらに好ましい。
【0023】
(親水性溶媒(C))
親水性溶媒(C)は、各成分を希釈する液媒体として配合される成分である。親水性溶媒(C)としては、水に可溶な水溶性溶媒を用いることが好ましい。親水性溶媒(C)としては、アルコール類を挙げることができる。アルコール類の具体例としては、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコール、ベンジルアルコール、ダイアセトンアルコール、2−エチルヘキサノール等を挙げることができる。なお、親水性溶媒(C)には、水が含まれていてもよい。これらの親水性溶媒(C)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
親水性溶媒(C)として、蒸発速度の速い(乾きやすい)溶媒のみを用いると、水分検知部を印刷する際にミストが発生しやすくなるとともに、繊維状の固形物が生成して印刷版に積層しやすくなる傾向にある。一方、親水性溶媒(C)として、蒸発速度の遅い(乾きにくい)溶媒のみを用いると、印刷物の乾燥速度が遅くなりやすい。このため、製造歩留まりが低下しやすくなるとともに、印刷物の巻き取り時に、いわゆる「ガイドロール取られ」が印刷機械に発生したり、裏移りが生じたりしやすくなる傾向にある。したがって、インキ組成物の印刷適性を考慮し、蒸発速度を制御する観点から、2種以上の親水性溶媒(C)を組み合わせて用いることが好ましい。
【0025】
(pH緩衝剤(D))
本実施形態のインキ組成物は、pH緩衝剤(D)をさらに含有することが好ましい。pH緩衝剤(D)を含有させることで、インキ組成物の液性を制御して、インキ組成物の変色前色相を適切に維持することができる。
【0026】
pH緩衝剤(D)としては、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸、フタル酸、及びクエン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩等を挙げることができる。これらのpH緩衝剤(D)は、1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
インキ組成物中のpH緩衝剤(D)の含有量は、0.1〜30.0質量%とすることが好ましく、0.5〜5.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0028】
(塩基性物質(E))
本実施形態のインキ組成物は、塩基性物質(E)をさらに含有することが好ましい。塩基性物質(E)としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び塩基性樹脂(但し、第4級アンモニウム塩基含有樹脂を除く)等を挙げることができる。アルカリ金属塩としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を挙げることができる。アルカリ土類金属塩としては、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、塩化カルシウム等を挙げることができる。なかでも、炭酸カルシウムが好ましい。これらのアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩を予めインキ組成物に含有させることで、例えば、炭酸カルシウム等の塩基性成分を実質的に含有しないシート状基材の表面に対しても、水分を有効に検知して変色する水分検知部を形成することができる。
【0029】
第4級アンモニウム塩基含有樹脂以外の塩基性樹脂としては、例えば、顔料分散剤等として一般的に用いられている塩基性樹脂(塩基性分散剤)を用いることができる。より具体的には、ポリアミド−ポリエステル系の塩基性分散剤(例えば、商品名「ソルスパース20000」(日本ルブリゾール社製))、アクリルブロックコポリマー分散剤(例えば、商品名「Efka PX 4320」(BASF社製))、顔料親和性基を有するブロックコポリマー分散剤(例えば、商品名「DISPERBYK−2155」(BYK−Chemie社製))等を挙げることができる。これらの塩基性樹脂を含有させることで、水分を検知した際により速やかに変色する、変色速度がより速い水分検知部を形成可能なインキ組成物とすることができる。
【0030】
塩基性物質(E)のうち、アルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩のインキ組成物中の含有量は、0.1.〜30.0質量%とすることが好ましく、0.1〜10.0質量%とすることがさらに好ましい。また、塩基性物質(E)のうち、塩基性樹脂(第4級アンモニウム塩基含有樹脂を除く)のインキ組成物中の含有量は、0.1〜30.0質量%とすることが好ましく、0.5〜10.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0031】
(アンチブロッキング剤(F))
本実施形態のインキ組成物は、アンチブロッキング剤(F)をさらに含有することが好ましい。アンチブロッキング剤(F)をインキ組成物に含有させることで、水分検知部を印刷したシート状基材を巻回又は積層した場合であってもブロッキングが発生しにくくなる。
【0032】
アンチブロッキング剤(F)としては、例えば、シリカ、シリコーンオイル、ワックス、樹脂ビーズ、真球状ポリマー化合物等を挙げることができる。インキ組成物中のアンチブロッキング剤(F)の含有量は、0.5〜10.0質量%とすることが好ましく、1.0〜5.0質量%とすることがさらに好ましい。
【0033】
本実施形態のインキ組成物は、水分を検知して変色可能な水分検知部を印刷して形成可能な、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料となる尿インジケータとして用いられる材料として有用である。また、従来の使い捨ておむつ等の水分検知部の材料として用いられていたホットメルト剤と異なり、本実施形態のインキ組成物は、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適用可能な材料である。このため、吸収性物品を構成する透湿性シートの一方の面に絵柄デザイン用のカラーインキで絵柄を印刷するとともに、他方の面に本実施形態のインキ組成物で水分検知部を印刷する、いわゆる両面印刷を施すことができる。すなわち、本実施形態のインキ組成物を用いる場合、ホットメルト剤が不要になることから、吸収性物品の製造工程を簡略化できるとともに、よりデザイン性(意匠性)に優れた水分検知部を印刷することができる。
【0034】
<水分検知シート>
本発明の一実施形態である水分検知シートは、液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、このシート状基材の一方の表面に印刷された、前述の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部とを備える。
【0035】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材としては、使い捨ておむつ等の吸収性物品を構成する、いわゆる透湿性シートを用いることができる。透湿性シートは、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンなどの樹脂材料で構成されている。インキ用組成物は、前述の通り、各種材料で構成された基材に対して密着性に優れた水分検知部を印刷して形成することが可能な材料である。このため、いずれの樹脂材料で構成された透湿性シートに対しても、密着性に優れた水分検知部を形成することができる。なお、シート状基材の表裏面には、コロナ処理等の表面処理が施されていることが好ましい。表面処理されたシート状基材を用いることで、インキ用組成物の固着性が向上し、印刷部分の脱落を防止することができる。
【0036】
シート状基材は、塩基性成分を含有することが好ましい。塩基性成分を含有するシート状基材に対しては、塩基性物質(E)を含有しないインキ組成物を用いた場合であっても、水分をより有効に検知して変色する水分検知部を形成することができる。一方、塩基性成分を実質的に含有しないシート状基材に対しても、塩基性物質(E)を含有するインキ組成物を用いれば、水分をより有効に検知して変色する水分検知部を形成することができる。
【0037】
塩基性成分の具体例としては、前述の「塩基性物質(E)」のうち、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩の例として列挙したものを挙げることができる。なかでも、重質炭酸カルシウムが好ましい。また、シート状基材は、分散剤及び熱安定剤の少なくともいずれかを含有することが好ましい。
【0038】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材としては、所定の樹脂組成物で形成されたポリオレフィン系多孔質フィルムを用いることが好ましい。このポリオレフィン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物としては、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン、高圧法低密度ポリエチレン、ポリプロピレンブロックコポリマー、及び重質炭酸カルシウムを含有する樹脂組成物が好ましい。
【0039】
メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの密度は、0.91〜0.94g/cm
3であることが好ましい。また、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンのMFRは、2〜16g/10minであることが好ましい。ポリオレフィン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物中のメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの含有量は、10〜40質量%であることが好ましい。このようなメタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの市販品としては、以下商品名で、スミカセンE(住友化学社製);ハーモレックス(日本ポリエチレン社製);エリート(ダウ・ケミカル社製);等を挙げることができる。
【0040】
高圧法低密度ポリエチレンの密度は、0.91〜0.925g/cm
3であることが好ましい。また、高圧法低密度ポリエチレンのMFRは、1〜10g/10minであることが好ましい。ポリオレフィン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物中の高圧法低密度ポリエチレンの含有量は、2〜10質量%であることが好ましい。このような高圧法低密度ポリエチレンの市販品としては、以下商品名で、ノバテックLD(日本ポリエチレン社製);サンテックLD(旭化成社製);スミカセン(住友化学社製);ペトロセン(東ソー社製);等を挙げることができる。
【0041】
ポリプロピレンブロックコポリマーの密度は、0.89〜0.9g/cm
3であることが好ましい。また、ポリプロピレンブロックコポリマーのMFRは、2〜10g/10minであることが好ましい。ポリオレフィン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物中のポリプロピレンブロックコポリマーの含有量は、3〜10質量%であることが好ましい。このようなポリプロピレンブロックコポリマーは、例えば、日本ポリプロ社、サンアロマー社、プライムポリマー社等から市販されているものを用いることができる。
【0042】
重質炭酸カルシウムとしては、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び金属石鹸の少なくともいずれかで表面処理された表面処理物を用いることが好ましい。ポリオレフィン系多孔質フィルムを構成する樹脂組成物中の重質炭酸カルシウムの含有量は、35〜60質量%であることが好ましい。
【0043】
<水分検知シートの製造方法>
本実施形態の水分検知シートは、例えば、以下に示す方法によって製造することができる。すなわち、本実施形態の水分検知シートの製造方法は、液不透過性かつ透湿性のシート状基材の一方の表面に、これまで述べてきた水分インジケータ用インキ組成物を付与して水分検知部を印刷するとともに、シート状基材の他方の表面に意匠性インキを付与してデザイン部を印刷する両面印刷工程を有する。
【0044】
前述の通り、本実施形態のインキ組成物は、従来の使い捨ておむつ等の水分検知部の材料として用いられていたホットメルト剤と異なり、フレキソ印刷法やグラビア印刷法等の各種印刷方法に適用可能な材料である。このため、吸収性物品を構成するシート状基材の一方の面に絵柄デザイン用のカラーインキで絵柄を印刷するとともに、他方の面にインキ組成物で水分検知部を印刷する、いわゆる両面印刷を施すことができる。すなわち、本実施形態の水分検知シートの製造方法では、ホットメルト剤が不要であるために製造工程を簡略化することができるとともに、よりデザイン性(意匠性)に優れた水分検知部を印刷することができる。
【0045】
<おむつ>
本実施形態の水分検知シートを用いれば、使い捨ておむつ等の吸収性物品を得ることができる。すなわち、本実施形態のおむつは上述の水分検知シートを備える。このため、尿などの水分を有効に検知するとともに、水分を検知したことを外部から容易に視認することができる。また、ホットメルト剤を用いて形成した従来の水分検知部と異なり、本実施形態のおむつに設けられた水分検知部は、よりデザイン性(意匠性)に優れている。さらに、ホットメルト剤が不要であることから、製造工程が簡略化され、コスト面でも有利である。
【実施例】
【0046】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。
【0047】
<第4級アンモニウム塩基含有樹脂の製造>
(第4級アンモニウム塩基含有樹脂A)
撹拌機、滴下ロート、冷却管、及び温度計を備えたフラスコに、メタクリル酸ジメチルアミノエチルメチルクロライド塩(DMCMA)9.4部、メタクリル酸メチル(MMA)26.3部、メタクリル酸ブチル(BMA)3.0部、アクリル酸ブチル(BA)0.75部、2,2−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.8部、2,2−アゾビスイソブチロニトリル0.8部、α−メチルスチレンダイマー0.8部、及びアルコール系溶剤(商品名「ソルミックスAP−1」、日本アルコール販売社製)43.0部を入れた。窒素雰囲気下、80℃まで昇温して120分間保持した後、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.8部、アルコール系溶剤(商品名「ソルミックスAP−1」、日本アルコール販売社製)5.7部、及び1−メトキシ−2−プロパノール8.0部の混合物を、滴下ロートを用いて60分間かけて等速で滴下した。80℃で210分間熟成した後、冷却して、第4級アンモニウム塩基含有樹脂Aの溶液(NV:38%)を得た。得られた第4級アンモニウム塩基含有樹脂Aのガラス転移温度(Tg)は73℃であり、重量平均分子量(Mw)は50,000であった。
【0048】
(第4級アンモニウム塩基含有樹脂B〜E)
用いたモノマーの種類及び量を表1に示すようにしたこと以外は、前述の第4級アンモニウム塩基含有樹脂Aの場合と同様にして、第4級アンモニウム塩基含有樹脂B〜Eの溶液(NV:38%)を得た。
【0049】
【0050】
<インキ組成物の製造(1)>
(実施例1)
第4級アンモニウム塩基含有樹脂Aの溶液(NV:38%)45部、ブロモチモールブルー(BTB)3部、クエン酸1部、塩基性物質(商品名「ソルスパース20000」、日本ルブリゾール社製、ポリアミド−ポリエステル系塩基性分散剤)1部、88%エタノール22部、n−プロパノール25部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテル3部を混合し、ディスパーを使用して5分間混錬してインキ組成物を得た。
【0051】
(実施例2、3、比較例1〜6)
表2に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。表2中の成分の詳細を以下に示す。なお、下記(1)〜(6)の樹脂は、いずれも、その分子中に第4級アンモニウム塩基を有しない樹脂である。
(1)ブチラール樹脂:商品名「エスレックK−KS−10」、積水化学工業社製
(2)ポリオール樹脂:商品名「テゴヴァリプラスSK」、エボニック社製
(3)ポリビニルピロリドン樹脂:商品名「PVP K−15」、日本触媒社製
(4)ポリアミド樹脂:商品名「ベジケムグリーンV759」、築野食品工業社製
(5)アクリル樹脂:商品名「アクリット 1LO−696」、大成ファインケミカル社製
(6)ロジン樹脂:商品名「マルキードNo.31」、荒川化学工業社製
【0052】
<原反シート(透湿性フィルム)の製造>
同方向二軸混錬押出コンパウンド成型機に、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(1)(商品名「NC566A」、日本ポリエチレン製)22部、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン(2)(商品名「5220G」、ダウ・ケミカル社製)13部、高圧法低密度ポリエチレン(商品名「LF441MD」、日本ポリエチレン社製)4部、ポリプロピレンブロックコポリマー(商品名「BC3HF」、日本ポリプロピレン社製)8部、重質炭酸カルシウム(商品名「SST−40」、カルファイン社製)52.6部、分散剤0.2部、及び熱安定剤0.2部を投入した。内容物を混錬するとともに、真空ポンプを使用してベント口より吸引して脱水し、水分含有量が320ppmであるコンパウンド化したペレットを得た。フィルムのフラット性及び延伸後のボイドの安定を図るため、並びにフィルム成型時の発泡によるピンホールの問題を解決するため、ベント真空ポンプ付きの同方向二軸混錬押出機でさらに溶融混錬して脱水した。次いで、ギヤーポンプにて吐出圧力を安定させるとともに溶融樹脂を整流し、コートハンガー型Tダイスから押し出された溶融樹脂を、エアーチャンバー方式にて冷却ロールに0.8kPaの圧力で吹き付けた。冷却成形されたフラットフィルムに余熱を与え、延伸温度60℃で300%に延伸した。さらに、110℃で18%緩和してヒートセットし、フィルムのデザイン面に36mNのコロナ放電処理を施すとともに、フィルムの水分インジケータ印刷面に35mNのコロナ放電処理を施した。これにより、MD方向の熱収縮率2.5%(ASTM D−2732−03に準拠(80℃の熱水に30秒浸漬し5秒間冷却後、縦及び横の伸縮を測定))、坪量15g/m
2、透湿度11,000g/m
2・24h(ASTM F1249に準拠し、モコン社製の水蒸気透過度測定機で測定)の原反シート(透湿性フィルム)を得た。
【0053】
<評価(1)>
(印刷物の作製)
製造した各インキ組成物を粘度測定用のザーンカップ#4(メイセイ社製)に入れ、オリフィスからの流出秒数が9秒となるように88%エタノールで希釈してインキを調製した。原反シート(炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれた液不透過性かつ透湿性のPE系シート)に、アニロックス線数 500Lpiを用いたフレキソ印刷により調製したインキを付与した後、ドライヤーで乾燥して印刷物を得た。
【0054】
(変色前色相)
印刷物の印字箇所(水検知部)の色相を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって変色前色相を評価した。結果を表2に示す。
○:黄色
△:緑色
×:青色
【0055】
(変色速度)
印刷物の印字箇所(水検知部)に水道水を滴下した。滴下してから明らかな変色が認められるまでに要する時間を測定し、以下に示す評価基準にしたがって変色速度を評価した。結果を表2に示す。
○:10秒未満
△:10秒以上1分未満
×:1分以上
【0056】
(耐溶出性)
印刷物の印字箇所(水検知部)に水道水を滴下してから3分後にティッシュペーパーで水分を拭き取った。水分を拭き取ったティッシュペーパーの色付き状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって呈色性化合物(着色剤)の耐溶出性を評価した。結果を表2に示す。
○:全く溶出なし
△:若干の溶出あり
×:容易にわかる程度の溶出あり
【0057】
(密着性)
印刷物の印字箇所(水検知部)にセロファンテープを貼り付けた後に剥離し、以下に示す評価基準にしたがって印字箇所の密着性を評価した。結果を表2に示す。
○:剥がれなし
△:若干の剥がれあり
×:目視で容易にわかる程度の剥がれあり
【0058】
【0059】
<インキ組成物の製造(2)>
(実施例4〜8)
表3に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0060】
<評価(2)>
(耐ブロッキング性)
製造した各インキ組成物を粘度測定用のザーンカップ#4(メイセイ社製)に入れ、オリフィスからの流出秒数が9秒となるように88%エタノールで希釈してインキを調製した。また、両面を表面処理(コロナ処理)した原反シートAと、表面処理していない原反シートBを用意した。なお、原反シートは、炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれた液不透過性かつ透湿性のPE系シートである。さらに、シリカ及びシリコーンオイルをそれぞれ適当量含有する水性カラーインキ(意匠性インキ)を用意した。調製したインキと用意した水性カラーインキを使用し、6,000mの原反シートの両面にそれぞれ450m/minの速度で印刷して印刷物を得た。得られた印刷物を印刷巻の状態とし、(i)常温で2週間、及び(ii)50℃で2週間、それぞれ保管した。保管後の印刷物の水性カラーインキで印刷したデザイン部を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって耐ブロッキング性を評価した。結果を表3に示す。
○:いずれの条件で保管した印刷物についても転写なし
△:50℃で2週間の条件で保管した印刷物に若干の転写あり
×:少なくともいずれかの印刷物に容易にわかる程度の転写あり
【0061】
【0062】
<インキ組成物の製造(3)>
(実施例9〜13)
表4に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0063】
<評価(3)>
(印刷適性)
製造した各インキ組成物を粘度測定用のザーンカップ#4(メイセイ社製)に入れ、オリフィスからの流出秒数が9秒となるように88%エタノールで希釈してインキを調製した。原反シート(炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれた液不透過性かつ透湿性のPE系シート)に、アニロックス線数 500Lpiを用いたフレキソ印刷により調製したインキを付与して印刷し、印刷物を得た。印刷中の印字箇所の状態を目視で観察し、(i)「ミスト・繊維の発生」の有無を確認した。また、得られた印刷物を巻き取る際に、印刷機械に「ガイドロール取られ」が発生したか否かを確認した。結果を表4に示す。
【0064】
【0065】
<インキ組成物の製造(4)>
(実施例14〜15)
表5に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0066】
<評価(4)>
(印刷物の作製)
製造した各インキ組成物を粘度測定用のザーンカップ#4(メイセイ社製)に入れ、オリフィスからの流出秒数が9秒となるように88%エタノールで希釈してインキを調製した。原反シート(炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれた液不透過性かつ透湿性のPE系シート)に、アニロックス線数 500Lpiを用いたフレキソ印刷により調製したインキを付与した後、ドライヤーで乾燥して印刷物を得た。
【0067】
(変色前色相)
印刷物の印字箇所(水検知部)の色相を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって変色前色相を評価した。結果を表5に示す。
○:黄色
△:緑色
×:青緑色
【0068】
(変色速度)
印刷物の印字箇所(水検知部)に水道水を滴下した。滴下してから明らかな変色が認められるまでに要する時間を測定し、以下に示す評価基準にしたがって変色速度を評価した。結果を表5に示す。
○:10秒未満
△:10秒以上1分未満
×:1分以上
【0069】
(耐溶出性)
印刷物の印字箇所(水検知部)に水道水を滴下してから3分後にティッシュペーパーで水分を拭き取った。水分を拭き取ったティッシュペーパーの色付き状態を目視で確認し、以下に示す評価基準にしたがって呈色性化合物(着色剤)の耐溶出性を評価した。結果を表5に示す。
○:全く溶出なし
△:若干の溶出あり
×:容易にわかる程度の溶出あり
【0070】
【0071】
<インキ組成物の製造(5)>
(実施例16、17)
表6に示す配合としたこと以外は、前述の実施例1と同様にして、インキ組成物を得た。
【0072】
<評価(5)>
(印刷物の作製)
製造した各インキ組成物を粘度測定用のザーンカップ#4(メイセイ社製)に入れ、オリフィスからの流出秒数が9秒となるように88%エタノールで希釈してインキを調製した。以下に示す原反シートC及びDを用意し、これらの原反シートに、アニロックス線数 500Lpiを用いたフレキソ印刷により調製したインキをそれぞれ付与した後、ドライヤーで乾燥して印刷物を得た。
・原反シートC:炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれた液不透過性かつ透湿性のPE系シート
・原反シートD:液不透過性かつ透湿性のPE系シートであって、炭酸カルシウムの微粒子が練り込まれていないシート
【0073】
(変色前色相)
原反シートCを用いて得た印刷物印字箇所(水検知部)の色相を目視にて確認し、以下に示す評価基準にしたがって変色前色相を評価した。結果を表6に示す。
○:黄色
△:緑色
×:暗緑色
【0074】
(変色性)
印刷物の印字箇所(水検知部)に水道水を滴下した。滴下後の色の変化を目視にて観察し、以下に示す評価基準にしたがって変色性を評価した。結果を表6に示す。
○:青色に変色した
×:変色しなかった
【0075】
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の水分インジケータ用インキ組成物は、使い捨ておむつ等の吸収性物品の構成材料となる水分検知シートの水分検知部(水分インジケータ)を印刷によって形成するためのインキとして有用である。
【手続補正書】
【提出日】2020年7月31日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)と、を含有し、
前記樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂であり、
前記呈色性化合物(B)が、アニオン性基を有する、又は接触する液体のpHに応じてアニオン性基を生ずる化合物である水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項2】
前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーに由来する構成単位を有する、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂の少なくともいずれかである請求項1に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項3】
前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂の、ガラス転移温度が60℃以上であり、重量平均分子量が30,000〜100,000である請求項2に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項4】
pH緩衝剤(D)をさらに含有する請求項1〜3のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項5】
前記pH緩衝剤(D)が、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸、フタル酸、及びクエン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である請求項4に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項6】
塩基性物質(E)をさらに含有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項7】
前記塩基性物質(E)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び塩基性樹脂(但し、前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも一種である請求項6に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項8】
前記呈色性化合物(B)が、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド、フェノールレッド、クレゾールレッド、及びナフトールフタレインからなる群より選択される少なくとも一種である請求項1〜7のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項9】
アンチブロッキング剤(F)をさらに含有する請求項1〜8のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項10】
尿インジケータとして用いられる請求項1〜9のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
【請求項11】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材と、
前記シート状基材の一方の表面に印刷された、請求項1〜10のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物で構成される水分検知部と、を備える水分検知シート。
【請求項12】
前記シート状基材が、塩基性成分を含有する請求項11に記載の水分検知シート。
【請求項13】
前記シート状基材が、メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレン10〜40質量%、高圧法低密度ポリエチレン2〜10質量%、ポリプロピレンブロックコポリマー3〜10質量%、及び重質炭酸カルシウム35〜60質量%を含有する樹脂組成物で形成されたポリオレフィン系多孔質フィルムである請求項11又は12に記載の水分検知シート。
【請求項14】
前記メタロセン系直鎖状低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.94g/cm3、MFRが2〜16g/10minであり、
前記高圧法低密度ポリエチレンの、密度が0.91〜0.925g/cm3、MFRが1〜10g/10minであり、
前記ポリプロピレンブロックコポリマーの、密度が0.89〜0.9g/cm3、MFRが2〜10g/10minである請求項13に記載の水分検知シート。
【請求項15】
前記シート状基材が、分散剤及び熱安定剤の少なくともいずれかを含有する請求項13又は14に記載の水分検知シート。
【請求項16】
前記重質炭酸カルシウムが、脂肪酸、脂肪酸エステル、及び金属石鹸の少なくともいずれかで表面処理された表面処理物である請求項13〜15のいずれか一項に記載の水分検知シート。
【請求項17】
液不透過性かつ透湿性のシート状基材の一方の表面に請求項1〜10のいずれか一項に記載の水分インジケータ用インキ組成物を付与して水分検知部を印刷するとともに、前記シート状基材の他方の表面に意匠性インキを付与してデザイン部を印刷する両面印刷工程を有する水分検知シートの製造方法。
【請求項18】
請求項11〜16のいずれか一項に記載の水分検知シートを備えるおむつ。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す水分インジケータ用インキ組成物が提供される。
[1]樹脂(A)と、接触する液体のpHに応じて変色する呈色性化合物(B)と、親水性溶媒(C)と、を含有し、前記樹脂(A)が、第4級アンモニウム塩基を有する樹脂
であり、前記呈色性化合物(B)が、アニオン性基を有する、又は接触する液体のpHに応じてアニオン性基を生ずる化合物である水分インジケータ用インキ組成物。
[2]前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂が、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーに由来する構成単位を有する、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリアミド系樹脂、及びポリエステル系樹脂の少なくともいずれかである前記[1]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[3]前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂の、ガラス転移温度が60℃以上であり、重量平均分子量が30,000〜100,000である前記[2]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[4]pH緩衝剤(D)をさらに含有する前記[1]〜[3]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[5]前記pH緩衝剤(D)が、第一リン酸、第二リン酸、第三リン酸、酢酸、シュウ酸、ホウ酸、フタル酸、及びクエン酸、並びにこれらのナトリウム塩、カリウム塩、及びアンモニウム塩からなる群より選択される少なくとも一種である前記[4]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[6]塩基性物質(E)をさらに含有する前記[1]〜[5]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[7]前記塩基性物質(E)が、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及び塩基性樹脂(但し、前記第4級アンモニウム塩基を有する樹脂を除く)からなる群より選択される少なくとも一種である前記[6]に記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[8]前記呈色性化合物(B)が、ブロモチモールブルー、ブロモフェノールブルー、ブロモクレゾールグリーン
、ブロモクレゾールパープル、クロロフェノールレッド
、フェノールレッド、クレゾールレッド、
及びナフトールフタレイ
ンからなる群より選択される少なくとも一種である前記[1]〜[7]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[9]アンチブロッキング剤(F)をさらに含有する前記[1]〜[8]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。
[10]尿インジケータとして用いられる前記[1]〜[9]のいずれかに記載の水分インジケータ用インキ組成物。