【解決手段】式(1)骨格を有し、パラメータαが30以下である、インダンビスフェノール化合物。パラメータα=(滴定法水酸基当量−GPC算出水酸基当量)/(滴定法水酸基当量)×100
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、下記一般式(1)で示されるインダン骨格を有し、下記一般式(2)から算出されるパラメータαが30以下であることを特徴とするインダンビスフェノール化合物に関する。
【化2】
パラメータα=(滴定法で測定した水酸基当量−GPC算出水酸基当量)/(滴定法で測定した水酸基当量)×100・・・・(2)
【0021】
上記式(1)中、xは1又は2であり、Raは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、ニトロ基、水酸基またはメルカプト基を表し、qは0〜4の整数値を示す。qが2〜4の場合、Raは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。Rbは、それぞれ独立に、炭素数1〜10のアルキル基、アルキルオキシ基もしくはアルキルチオ基、炭素数6〜10のアリール基、アリールオキシ基もしくはアリールチオ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、ハロゲン原子、水酸基またはメルカプト基を表し、rは0〜3の整数値を示す。rが2〜3の場合、Rbは同一環内で同じであってもよいし異なっていてもよい。nは平均繰り返し単位数であり、0.2〜20の数値を示す。
【0022】
前記インダンビスフェノール化合物がインダン骨格を有することにより、前記インダンビスフェノール化合物の構造中に耐熱性と誘電特性のバランスに優れる脂環式構造が導入され、前記インダンビスフェノール化合物を使用して製造される硬化物は、耐熱性と誘電特性とのバランスに優れるため、好ましい。
【0023】
上記一般式(1)のxが1であり、つまり、水酸基(フェノール性水酸基)を1個有することが好ましい。これにより、適切な架橋密度を得ることができ、可撓性の高い硬化物が得られ、好ましい態様となる。
【0024】
上記一般式(1)のRaが、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、炭素数6〜10のアリール基のいずれかであり、前記炭素数1〜4のアルキル基等であることで、ビスフェノール基近傍の平面性の低下、結晶性低下により、溶剤溶解性が向上するとともに、ビスフェノール基の反応性が損なわれることなく、硬化物を得ることが可能な好ましい態様となる。
【0025】
上記一般式(1)中のqが、1〜3であることが好ましく、2であることがより好ましい。前記qが2の場合、立体障害の影響が小さく、インダンビスフェノール化合物の製造(合成)において、より好ましい態様となる。
【0026】
上記一般式(1)中のrが0であり、Rbが、水素原子であることが好ましく、また、rが1〜3であり、Rbが、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基、及び、炭素数6〜10のアリール基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、特に前記rが0であって、Rbが、水素原子であることで、インダンビスフェノール化合物中のインダン骨格の形成の際に、立体障害が少なくなり、インダンビスフェノール化合物の製造(合成)にとって、有利となり、好ましい態様となる。
【0027】
上記一般式(2)のパラメータαは、30以下であり、好ましくは、25以下であり、より好ましくは、20以下である。前記パラメータαが30以下と小さな値であることは、得られたインダンビスフェノール化合物中に水酸基を含まず、架橋に関与しない不純物の含有量が低いことを意味し、このようなインダンビスフェノール化合物を使用することで、高い耐熱性の硬化物を得ることができる。
なお、前記パラメータαは、前記インダンビスフェノール化合物の合成時において、高純度で得られているかを確認する事ができる指標である。例えば、前記インダンビスフェノール化合物(上記一般式(1))の合成時に、両末端にフェノール性水酸基を有する所望のインダンビスフェノール化合物と共に、両末端もしくは片末端にフェノール性水酸基を有さないインダンビスフェノール化合物(副生成物)が含まれる場合に、GPC法と滴定法により、副生成物の含まれる量を定量化するために用いられるものである。GPC法では、滴定法とは異なり、両末端にフェノール性水酸基を有するものとして、水酸基当量を算出する。そのため、フェノール性水酸基の滴定法とGPC法との水酸基当量の測定基準の違いにより、どれだけの副生成物が含まれているかを上記一般式(2)により算出することができ、副生成物の含まれる度合(純度)を評価することができる。
【0028】
<インダン骨格を有するインダンビスフェノール化合物の製造方法>
前記インダンビスフェノール化合物の製造方法について、以下に説明する。
【0029】
下記一般式(3)は、Rcはそれぞれ独立に下記一般式(4)及び(5)よりなる群から選択される一価の官能基を示しており、2つのRcの少なくとも一方のRcのオルト位が水素原子で、Rb及びrは、上記と同様のものを示す化合物である。
【0031】
下記一般式(6)は、x、Ra及びqは、それぞれ上記と同様のものを示すフェノールまたはその誘導体であり、上記一般式(3)の化合物と、下記一般式(6)の化合物を、酸触媒存在下に反応させることにより、下記一般式(1)で示されるインダンビスフェノール化合物を得ることができる。なお、下記一般式(1)中のRa、Rb、q、r、x及びnは上記と同様のものを示す。
【化6】
【化7】
【0033】
前記インダンビスフェノール化合物の特徴であるインダン骨格(上記一般式(7)参照)において、平均繰り返し単位数nは、低い融点(低軟化点)で、かつ溶融粘度が低く、ハンドリング性に優れたものとするため、平均繰り返し単位数n(平均値)として、0.2〜20であり、好ましくは0.5〜10.0であり、より好ましくは、1.0〜8.0である。前記インダンビスフェノール化合物の構造中に、インダン骨格を有することで、溶剤溶解性に優れ、好ましい態様となる。なお、前記nが0.2未満であれば、前記インダンビスフェノール化合物の構造中の高融点物質の含有割合が高くなり、溶剤溶解性に劣り、更に、可撓性に寄与する高分子量成分の割合が低くなるため、得られる硬化物の耐脆性が低下し、更に、可撓性や柔軟性も低下する恐れがあり好ましくない。また、前記nが20を越えると、溶剤に溶解した際に粘度が高くなり、更に得られる硬化物の耐熱性が劣ることが懸念され、更に、高分子量成分が多くなりすぎ、硬化物を成形する際に、流動性が低下し、ハンドリング性に劣ることが懸念され、好ましくない。
【0034】
本発明において用いる上記一般式(3)で表される化合物(以下、「化合物(a)」)は、特に限定されないが、典型的には、p−及びm−ジイソプロペニルベンゼン、p−及びm−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、p−及びm−ビス(α−クロロイソプロピル)ベンゼン、1−(α−ヒドロキシイソプロピル)−3−イソプロペニルベンゼン、1−(α−ヒドロキシイソプロピル)−4−イソプロペニルベンゼンあるいはこれらの混合物を用いる。またこれらの化合物の核アルキル基置換体、例えば、ジイソプロペニルトルエン及びビス(α−ヒドロキシイソプロピル)トルエン等も用いることができ、さらに核ハロゲン置換体、例えば、クロロジイソプロペニルベンゼン及びクロロビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン等も用いることができる。
【0035】
その他、前記化合物(a)として、例えば、2−クロロ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−クロロ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−ブロモ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−ブロモ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−ブロモ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、2−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、4−ブロモ−1,3−ジイソプロピルベンゼン、4−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ブロモ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ブロモ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−メトキシ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メトキシ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−エトキシ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−エトキシ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェノキシ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェノキシ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2,4−ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2,5−ジイソプロペニルベンゼンチオール、2,5−ビス(αヒドロキシイソプロピル)ベンゼンチオール、2−メチルチオ−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メチルチオ−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェニルチオ−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェニルチオ−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−フェニル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−フェニル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−シクロペンチル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−シクロペンチル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ナフチル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ナフチル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、2−メチル−1,4−ジイソプロペニルベンゼン、2−メチル−1,4−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−ブチル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−ブチル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン、5−シクロヘキシル−1,3−ジイソプロペニルベンゼン、5−シクロヘキシル−1,3−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼンなどを例示することができる。
【0036】
なお、前記化合物(a)中に含まれる置換基としては、特に限定はされず、上記例示の化合物を使用できるが、立体障害の大きな置換基の場合、立体障害の小さな置換基に比べて、得られるインダンビスフェノール化合物同士のスタッキングが生じにくく、インダンビスフェノール化合物同士の結晶化が起こりにくく、つまり、インダンビスフェノール化合物の溶剤溶解性が向上し、好ましい態様となる。
【0037】
また上記一般式(6)で表される化合物(以下、「化合物(b)」)としては、フェノールまたはその誘導体であり、特に限定されないが、典型的には、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール等のクレゾール;フェノール;2,3−キシレノール、2,4−キシレノール、2,5−キシレノール、2,6−キシレノール、3,4−キシレノール、3,5−キシレノール等のキシレノール;o−エチルフェノール、m−エチルフェノール、p−エチルフェノール等のエチルフェノール;イソプロピルフェノール、ブチルフェノール、p−t−ブチルフェノール等のブチルフェノール;p−ペンチルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、p−クミルフェノール等のアルキルフェノール;フルオロフェノール、クロロフェノール、ブロモフェノール、ヨードフェノール等のハロゲン化フェノール;p−フェニルフェノール、アミノフェノール、ニトロフェノール、ジニトロフェノール、トリニトロフェノール等の1置換フェノール;;レゾルシン、アルキルレゾルシン、ピロガロール、カテコール、アルキルカテコール、ハイドロキノン、アルキルハイドロキノン、フロログルシン等の多価フェノール等が挙げられる。これらフェノールまたはその誘導体は、それぞれ単独で用いても良いし、2種以上を併用しても良い。中でも、例えば、2,6−キシレノールや2,4−キシレノールといったフェノール性水酸基に対してオルト位、パラ位のうち2つがアルキル置換された化合物を使用することが、より好ましい態様となる。但し、立体障害が大きすぎると、インダンビスフェノール化合物の合成時における反応性を阻害する場合も懸念されるため、例えば、炭素数1〜4のアルキル基を有する化合物(b)を使用することが好ましい。
【0038】
本発明に用いる上記一般式(1)で表されるインダンビスフェノール化合物の製造方法においては、前記化合物(a)と前記化合物(b)を、前記化合物(a)に対する前記化合物(b)のモル比(化合物(b)/化合物(a))を、好ましくは0.1〜10.0、より好ましくは0.2〜8.0で仕込み、酸触媒存在下に反応させることにより、インダン骨格を有するインダンビスフェノール化合物を得ることができる。
【0039】
前記反応に用いる酸触媒には、例えば、リン酸、塩酸、硫酸のような無機酸、シュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸等の有機酸、活性白土、酸性白土、シリカアルミナ、ゼオライト、強酸性イオン交換樹脂のような固体酸、ヘテロポリ塩酸等を挙げることができるが、反応後、塩基による中和と水による洗浄で簡便に除去できる均一系触媒であるシュウ酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、フルオロメタンスルホン酸(中でも、p-トルエンスルホン酸)を用いることが、高純度のインダンビスフェノール化合物を得られるため、好ましい。
【0040】
前記酸触媒の配合量は、最初に仕込む原料の前記化合物(a)、及び、前記化合物(b)の総量100質量部に対して、酸触媒を0.001〜40質量部の範囲で配合されるが、経済性の点から、0.001〜5質量部が好ましい。
【0041】
前記反応温度は、通常50〜300℃の範囲であればよいが、異性体構造の生成を抑制し、熱分解等の副反応を避け、高純度のインダンビスフェノール化合物を得るためには、80〜200℃が好ましい。
【0042】
前記反応時間としては、短時間では反応が完全に進行せず、また長時間にすると生成物の熱分解反応等の副反応が起こることから、前記反応温度条件下で、通常は、のべ0.5〜24時間の範囲であるが、好ましくは、のべ0.5〜12時間の範囲である。
【0043】
前記インダンビスフェノール化合物の製造方法においては、フェノールまたはその誘導体が溶剤を兼ねるため、必ずしも他の溶剤は用いなくても良いが、溶剤を用いることも可能である。例えば、脱水反応を兼ねた反応系の場合、具体的には、α−ヒドロキシプロピル基を有する化合物を原料として反応させる場合には、トルエン、キシレン、又はクロロベンゼン等の共沸脱水可能な溶剤を用いて、脱水反応を完結させた後、溶剤を留去してから、上記反応温度の範囲で反応を行う方法を採用してもよい。
【0044】
前記インダンビスフェノール化合物を合成するために使用される有機溶媒としては、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチル−2−ピロリドン、アセトニトリル、スルホラン等の非プロトン性溶媒、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の環状エーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族系溶媒等が挙げられ、またこれらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0045】
前記インダンビスフェノール化合物の水酸基当量としては、耐熱性の観点から、好ましくは、100〜1000g/eqであり、より好ましくは、150〜800g/eqである。なお、ここでのインダンビスフェノール化合物の水酸基当量は、滴定法により算出したものであり、JIS K 0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0046】
<硬化性樹脂組成物>
〔エポキシ樹脂〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、前記インダンビスフェノール化合物、及び、エポキシ樹脂を含有することが好ましい。前記インダンビスフェノール化合物がインダン骨格を有することにより、溶剤溶解性に優れ、硬化性樹脂組成物の調製が容易で、ハンドリング性に優れ、前記インダンビスフェノール化合物の構造中に極性官能基の割合が少ないため、誘電特性に優れた硬化物を得ることができる。また、前記エポキシ樹脂を使用することで、硬化性樹脂組成物の調製時の流動性が良好となり、密着性に優れた硬化物を得ることができ、例えば、銅箔を使用する回路基板など製造において、有用となる。
【0047】
前記エポキシ樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、α―ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、β―ナフトールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトールアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂等のアラルキル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAP型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ビスフェノールB型エポキシ樹脂、ビスフェノールBP型エポキシ樹脂、ビスフェノールC型エポキシ樹脂、ビスフェノールE型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、テトラブロモビスフェノールA型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;ビフェニル型エポキシ樹脂、テトラメチルビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニル骨格およびジグリシジルオキシベンゼン骨格を有するエポキシ樹脂等のビフェニル型エポキシ樹脂;ナフタレン型エポキシ樹脂;ビナフトール型エポキシ樹脂;ビナフチル型エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエンフェノール型エポキシ樹脂等のジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂;テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン型エポキシ樹脂、トリグリシジル−p−アミノフェノール型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルスルホンのグリシジルアミン型エポキシ樹脂等のグリシジルアミン型エポキシ樹脂;2,6−ナフタレンジカルボン酸ジグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ヘキサヒドロ無水フタル酸のグリシジルエステル型エポキシ樹脂等のジグリシジルエステル型エポキシ樹脂;ジベンゾピラン、ヘキサメチルジベンゾピラン、7−フェニルヘキサメチルジベンゾピラン等のベンゾピラン型エポキシ樹脂等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0048】
本発明の硬化性樹脂組成物には、目的を損なわない範囲で特に限定なく使用でき、アルケニル基含有化合物、例えば、ビスマレイミド類、アリルエーテル系化合物、アリルアミン系化合物、トリアリルシアヌレート、アルケニルフェノール系化合物、ビニル基含有ポリオレフィン化合物等を添加することもできる。また、その他の熱硬化性樹脂、例えば、熱硬化性ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、活性エステル樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、シアネート樹脂等も目的に応じて適宜配合することも可能である。
【0049】
本発明の硬化性樹脂組成物における前記インダンビスフェノール化合物と前記エポキシ樹脂の配合比としては、特に制限されるものではないが、得られる硬化物特性が良好である点から、インダンビスフェノール化合物のフェノール性水酸基:エポキシ樹脂のエポキシ基の化学両論比(当量比)が、0.2:1.5であることが好ましく、より好ましくは、0.4:1.3であり、更に好ましくは、0.6:1.1である。前記範囲に配合比を調製することにより、得られる硬化物は、耐熱性、及び、低誘電特性に優れることになり、好ましい。
【0050】
〔その他硬化剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、インダンビスフェノール化合物以外の硬化剤を、本発明の硬化を損なわない範囲で加えることができる。なお、硬化剤全量100質量%に対して、前記インダンビスフェノール化合物は、50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましく、90質量%以上が最も好ましい。
【0051】
前記インダンビスフェノール化合物以外の硬化剤としては、例えば、アミン系化合物、アミド系化合物、酸無水物系化合物、フェノ−ル系化合物、シアネートエステル化合物などが挙げられる。これらの硬化剤は、単独でも2種類以上の併用でも構わない。
【0052】
前記アミン系化合物としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、イミダゾ−ル、BF
3−アミン錯体、グアニジン誘導体等が挙げられる。
【0053】
前記アミド系化合物としては、例えば、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂等が挙げられる。
【0054】
前記酸無水物系化合物としては、例えば、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸等が挙げられる。
【0055】
前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂、ジシクロペンタジエンフェノール付加型樹脂、フェノールアラルキル樹脂(ザイロック樹脂)、レゾルシンノボラック樹脂に代表される多価ヒドロキシ化合物とホルムアルデヒドから合成される多価フェノールノボラック樹脂、ナフトールアラルキル樹脂、トリメチロールメタン樹脂、テトラフェニロールエタン樹脂、ナフトールノボラック樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック樹脂、ビフェニル変性フェノール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価フェノール化合物)、ビフェニル変性ナフトール樹脂(ビスメチレン基でフェノール核が連結された多価ナフトール化合物)、アミノトリアジン変性フェノール樹脂(メラミン、ベンゾグアナミンなどでフェノール核が連結された多価フェノール化合物)やアルコキシ基含有芳香環変性ノボラック樹脂(ホルムアルデヒドでフェノール核及びアルコキシ基含有芳香環が連結された多価フェノール化合物)等の多価フェノール化合物が挙げられる。
【0056】
前記シアネートエステル化合物としては、例えば、ビスフェノールA型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールF型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールE型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールS型シアネートエステル樹脂、ビスフェノールスルフィド型シアネートエステル樹脂、フェニレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ナフチレンエーテル型シアネートエステル樹脂、ビフェニル型シアネートエステル樹脂、テトラメチルビフェニル型シアネートエステル樹脂、ポリヒドロキシナフタレン型シアネートエステル樹脂、フェノールノボラック型シアネートエステル樹脂、クレゾールノボラック型シアネートエステル樹脂、トリフェニルメタン型シアネートエステル樹脂、テトラフェニルエタン型シアネートエステル樹脂、ジシクロペンタジエン−フェノール付加反応型シアネートエステル樹脂、フェノールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトールノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトールアラルキル型シアネートエステル樹脂、ナフトール−フェノール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、ナフトール−クレゾール共縮ノボラック型シアネートエステル樹脂、芳香族炭化水素ホルムアルデヒド樹脂変性フェノール樹脂型シアネートエステル樹脂、ビフェニル変性ノボラック型シアネートエステル樹脂、アントラセン型シアネートエステル樹脂等が挙げられる。
【0057】
〔硬化促進剤〕
本発明は、エポキシ樹脂を使用する場合、必要に応じて、本発明の硬化性樹脂組成物に硬化促進剤を適宜併用することもできる。前記硬化促進剤としては種々のものが使用できるが、例えば、リン系化合物、第3級アミン、イミダゾール類、有機酸金属塩、ルイス酸、アミン錯塩等が挙げられる。特に半導体封止材料用途として使用する場合には、硬化性、耐熱性、電気特性、耐湿信頼性等に優れる点から、トリフェニルフォスフィン等のリン系化合物、またはイミダゾール類が好ましい。これらの硬化促進剤は、単独で用いることも2種以上を併用することもできる。また、前記硬化促進剤の添加量は、例えば、前記エポキシ樹脂100質量部に対して、0.01〜10質量部の範囲で用いることが好ましい。
【0058】
〔難燃剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、難燃性を発揮させるために、実質的にハロゲン原子を含有しない非ハロゲン系難燃剤を配合することができる。前記非ハロゲン系難燃剤として、例えば、リン系難燃剤、窒素系難燃剤、シリコーン系難燃剤、無機系難燃剤、有機金属塩系難燃剤等が挙げられ、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0059】
〔充填剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物には、必要に応じて、無機質充填剤を配合することができる。前記無機質充填剤として、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、アルミナ、窒化珪素、水酸化アルミ等が挙げられる。前記無機充填剤の配合量を特に大きくする場合は溶融シリカを用いることが好ましい。前記溶融シリカは破砕状、球状のいずれでも使用可能であるが、溶融シリカの配合量を高め、かつ、成形材料の溶融粘度の上昇を抑制するためには、球状のものを主に用いる方が好ましい。更に球状シリカの配合量を高めるためには、球状シリカの粒度分布を適当に調整することが好ましい。その充填率は難燃性を考慮して、高い方が好ましく、硬化性樹脂組成物の全体量に対して20質量%以上が特に好ましい。また、前記硬化性樹脂組成物を以下に詳述する導電ペーストなどの用途に使用する場合は、銀粉や銅粉等の導電性充填剤を用いることができる。
【0060】
〔その他配合剤〕
本発明の硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、シランカップリング剤、離型剤、顔料、乳化剤等の種々の配合剤を添加することができる。
【0061】
<硬化物>
本発明の硬化物は、前記硬化性樹脂組成物を硬化反応させて得られることが好ましい。前記硬化性樹脂組成物は、上述した各成分を均一に混合することにより得られ、従来知られている方法と同様の方法で容易に硬化物とすることができる。前記硬化物としては、積層物、注型物、接着層、塗膜、フィルム等の成形硬化物が挙げられる。
【0062】
前記硬化(熱硬化)反応としては、無触媒下でも容易に行われるが、さらに速く反応させたい場合には、有機過酸化物、アゾ化合物のような重合開始剤やホスフィン系化合物、第3級アミンの様な塩基性触媒の添加が効果的である。例えば、ベンゾイルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、トリフェニルホスフィン、トリエチルアミン、イミダゾール類等があり、配合量としては、硬化性樹脂組成物全体(インダンビスフェノール化合物、及び、エポキシ樹脂の合計量)に対して、たとえば、0.01〜10質量%が好ましい。
【0063】
<プリプレグ>
本発明のプリプレグは、補強基材、及び、前記補強基材に含浸した前記硬化性樹脂組成物の半硬化物を有することが好ましい。前記プリプレグの作製方法としては、公知の方法を使用できるが、前記硬化性樹脂組成物を、有機溶剤に溶解(希釈)した樹脂ワニスを補強基材に含浸させ、樹脂ワニスを含浸させた補強基材を熱処理することにより、前記硬化性樹脂組成物を半硬化(あるいは未硬化)させることで、プリプレグとすることができる。
【0064】
前記有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、テトラヒドロフラン等の中から、単独、あるいは、2種以上の混合溶媒として用いることができる。
【0065】
前記樹脂ワニスを含浸させる補強基材としては、ガラス繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維等の無機繊維、有機繊維からなる織布や不織布、またはマット、紙等であり、これらを単独、あるいは、組み合わせて用いることができる。
【0066】
前記プリプレグ中の硬化性樹脂組成物と補強基材の質量割合としては、特に限定されないが、通常、プリプレグ中の硬化性樹脂組成物(中の樹脂分)が20〜60質量%となるように調製することが好ましい。
【0067】
前記プリプレグの熱処理の条件としては、使用する有機溶剤、触媒、各種添加剤の種類や使用量などに応じて、適宜選択されるが、通常、80〜220℃の温度で、3分〜30分といった条件で行われる。
【0068】
<耐熱材料および電子材料>
本発明の硬化性樹脂組成物により得られる硬化物が、耐熱性、及び、誘電特性に優れることから、耐熱部材や電子部材に好適に使用可能である。特に、回路基板、半導体封止材、半導体装置、ビルドアップフィルム、ビルドアップ基板、接着剤やレジスト材料などに好適に使用できる。また、繊維強化樹脂のマトリクス樹脂にも好適に使用でき、高耐熱性のプリプレグとして特に適している。また、前記硬化性樹脂組成物に含まれる前記インダン骨格を有するインダンビスフェノール化合物は、各種溶剤への優れた溶解性を示すことから塗料化が可能である。こうして得られる耐熱部材や電子部材は、各種用途に好適に使用可能であり、例えば、産業用機械部品、一般機械部品、自動車・鉄道・車両等部品、宇宙・航空関連部品、電子・電気部品、建築材料、容器・包装部材、生活用品、スポーツ・レジャー用品、風力発電用筐体部材等が挙げられるが、これらに限定される物ではない。
【0069】
以下、本発明の硬化性樹脂組成物を用いて製造される代表的な製品について例を挙げて説明する。
【0070】
<回路基板>
本発明において、回路基板としては、前記プリプレグ、及び、銅箔を積層し、加熱圧着成型して得られることが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から回路基板を得る方法としては、上記プリプレグを、常法により積層し、適宜銅箔を重ねて、1〜10MPaの加圧下に170〜300℃で10分〜3時間、加熱圧着成型させる方法が挙げられる。
【0071】
<半導体封止材>
本発明において、半導体封止材としては、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体封止材を得る方法としては、前記硬化性樹脂組成物に、更に任意成分である硬化促進剤、および無機充填剤等の配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に溶融混合する方法が挙げられる。その際、無機充填剤としては、通常、溶融シリカが用いられるが、パワートランジスタ、パワーIC用高熱伝導半導体封止材として用いる場合は、溶融シリカよりも熱伝導率の高い結晶シリカ,アルミナ,窒化ケイ素などの高充填化、または溶融シリカ、結晶性シリカ、アルミナ、窒化ケイ素などを用いるとよい。その充填率は、硬化性樹脂組成物100質量部当たり、無機充填剤を30〜95質量部の範囲で用いることが好ましく、中でも、難燃性や耐湿性や耐ハンダクラック性の向上、線膨張係数の低下を図るためには、70質量部以上がより好ましく、80質量部以上であることがさらに好ましい。
【0072】
<半導体装置>
本発明において、半導体装置としては、前記半導体封止材を加熱硬化した硬化物を含むことが好ましい。具体的には、本発明の硬化性樹脂組成物から半導体装置を得る半導体パッケージ成形としては、上記半導体封止材を注型、または、トランスファー成形機、射出成形機などを用いて成形し、さらに50〜250℃で、2〜10時間の間、加熱硬化する方法が挙げられる。
【0073】
<ビルドアップ基板>
本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップ基板を得る方法としては、工程1〜3を経由する方法が挙げられる。工程1では、まず、ゴム、フィラーなどを適宜配合した前記硬化性樹脂組成物を、回路を形成した回路基板にスプレーコーティング法、カーテンコーティング法等を用いて塗布した後、硬化させる。工程2では、必要に応じて、硬化性樹脂組成物が塗布された回路基板に所定のスルーホール部等の穴あけを行った後、粗化剤により処理し、その表面を湯洗することによって、前記基板に凹凸を形成させ、銅などの金属をめっき処理する。工程3では、工程1〜2の操作を所望に応じて順次繰り返し、樹脂絶縁層及び所定の回路パターンの導体層を交互にビルドアップしてビルドアップ基板を成形する。なお、前記工程において、スルーホール部の穴あけは、最外層の樹脂絶縁層の形成後に行うとよい。また、本発明におけるビルドアップ基板は、銅箔上で当該樹脂組成物を半硬化させた樹脂付き銅箔を、回路を形成した配線基板上に、170〜300℃で加熱圧着することで、粗化面を形成、メッキ処理の工程を省き、ビルドアップ基板を作製することも可能である。
【0074】
<ビルドアップフィルム>
本発明のビルドアップフィルムは、前記硬化性樹脂組成物を含有することが好ましい。本発明の硬化性樹脂組成物からビルドアップフィルムを得る方法としては、例えば、支持フィルム上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本発明の硬化性樹脂組成物をビルドアップフィルムに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(通常70〜140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう前記各成分を配合することが好ましい。
【0075】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は通常0.1〜0.5mm、深さは通常0.1〜1.2mmであり、通常この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0076】
前記したビルドアップフィルムを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、前記ワニス化した樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して、樹脂組成物層(X)を形成する方法が挙げられる。
【0077】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分30〜60質量%となる割合で使用することが好ましい。
【0078】
なお、形成される前記樹脂組成物層(X)の厚さは、通常、導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは通常5〜70μmの範囲であるので、前記樹脂組成物層(X)の厚さは10〜100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本発明における前記樹脂組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0079】
前記した支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、通常10〜150μmであり、好ましくは25〜50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1〜40μmとするのが好ましい。
【0080】
前記支持フィルム(Y)は、回路基板にラミネートした後に、あるいは、加熱硬化することにより、絶縁層を形成した後に、剥離される。ビルドアップフィルムを構成する樹脂組成物層が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。硬化後に剥離する場合、通常、支持フィルムには予め離型処理が施される。
【0081】
なお、前記のようにして得られたビルドアップフィルムから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、前記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合はこれらを剥離した後、前記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前にビルドアップフィルム及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70〜140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1〜11kgf/cm
2(9.8×10
4〜107.9×10
4N/m
2)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0082】
<導電ペースト>
本発明の硬化性樹脂組成物から導電ペーストを得る方法としては、例えば、導電性粒子を該組成物中に分散させる方法が挙げられる。上記導電ペーストは、用いる導電性粒子の種類によって、回路接続用ペースト樹脂組成物や異方性導電接着剤とすることができる。
【実施例】
【0083】
次に本発明を実施例、比較例により具体的に説明するが、以下において「部」及び「%」は特に断わりのない限り質量基準である。なお、以下に示すGPC、及び、パラメータαは、以下の条件にて測定又は計算し、評価を行った。
【0084】
<GPC測定(数平均分子量、水酸基当量、平均繰り返し単位数の評価)>
以下の測定装置、測定条件を用いて測定し、以下に示す合成例で得られたインダンビスフェノール化合物のGPCチャート(
図1及び
図2)を得た。前記GPCチャートの結果より、インダンビスフェノール化合物の数平均分子量(Mn)に基づき、水酸基当量(g/eq)、更に、インダンビスフェノール化合物中のインダン骨格に寄与する平均繰り返し単位数nを数平均分子量(Mn)に基づき算出した。具体的にはnが0〜4の化合物について、理論分子量とGPCにおけるそれぞれの実測値分子量とで散布図上にプロット、近似直線を引き、直線上の実測値Mn(1)が示す点より数平均分子量(Mn)を求め、nを算出した。
測定装置 :東ソー株式会社製「HLC−8320 GPC」
カラム:東ソー株式会社製ガードカラム「HXL−L」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G2000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G3000HXL」+東ソー株式会社製「TSK−GEL G4000HXL」
検出器:RI(示差屈折計)
データ処理:東ソー株式会社製「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」
測定条件:カラム温度 40℃
展開溶媒 テトラヒドロフラン
流速 1.0ml/分
標準:前記「GPCワークステーション EcoSEC−WorkStation」の測定マニュアルに準拠して、分子量が既知の下記の単分散ポリスチレンを用いた。
(使用ポリスチレン)
東ソー株式会社製「A−500」
東ソー株式会社製「A−1000」
東ソー株式会社製「A−2500」
東ソー株式会社製「A−5000」
東ソー株式会社製「F−1」
東ソー株式会社製「F−2」
東ソー株式会社製「F−4」
東ソー株式会社製「F−10」
東ソー株式会社製「F−20」
東ソー株式会社製「F−40」
東ソー株式会社製「F−80」
東ソー株式会社製「F−128」
試料:合成例で得られたインダンビスフェノール化合物の固形分換算で1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(50μl)。
【0085】
<パラメータα>
得られたインダンビスフェノール化合物について、上記GPC測定により得られた水酸基当量と、滴定法で得られた水酸基当量の値を用いて、下記式(2)に基づき、パラメータαを算出した。
パラメータα=(滴定法で測定した水酸基当量−GPC算出水酸基当量)/(滴定法で測定した水酸基当量)×100・・・・(2)
なお、前記パラメータαの値は、小さいほど、得られるインダンビスフェノール化合物の純度が高いことを意味する。また、滴定法とは、JIS K 0070に準拠した中和滴定法を指す。
【0086】
合成例1(インダンビスフェノール化合物(A−1)の合成)
撹拌機、ディーンスターク装置と冷却管、窒素封入口が備わったフラスコに、窒素ガスを吹き込みながら、2,6−キシレノール244部、m−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン388部、トルエン633部、p-トルエンスルホン酸1水和物19部を仕込み、加熱した。途中、反応で生じた水を、ディーンスターク装置を使用して除去しながら、120℃まで昇温し、6時間ホールドした。反応液を冷却後、49%水酸化ナトリウム水溶液を使用してpHが中性になるまで中和した。水洗により触媒残渣を除去したのち、加熱と減圧により揮発分を留去することで、インダンビスフェノール化合物(A−1)を得た。滴定法による水酸基当量は317g/eqであった。GPCの数平均分子量(Mn=628)から計算した水酸基当量は314g/eqであり、n=1.45であった。また、パラメータαは9.5だった。
【0087】
合成例2(インダンビスフェノール化合物(B−1)の合成)
撹拌機、ディーンスターク装置と冷却管、窒素封入口が備わったフラスコに、窒素ガスを吹き込みながら、2,6−キシレノール549部、m−ビス(α−ヒドロキシイソプロピル)ベンゼン291部、トルエン840部、酸性白土84部を仕込み、加熱した。途中、反応で生じた水を、ディーンスターク装置を使用して除去しながら、110℃まで昇温し、8時間ホールドした。加熱と減圧により揮発分を留去したのち、トルエンで希釈し、ろ過にて触媒を除去した。ろ液から加熱と減圧により揮発分を留去し、インダンビスフェノール化合物(B−1)を得た。滴定法による水酸基当量は306g/eqであった。GPCの数平均分子量(Mn=588)から計算した水酸基当量は294g/eqであり、n=1.20であった。また、パラメータαは38.7であった。
【0088】
〔実施例1、及び、比較例1〕
(硬化性樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)の調製)
合成例1又は合成例2で得られたインダンビスフェノール化合物を硬化剤として、エポキシ樹脂(DIC社製、商品名:EPICLON N−655−EXP−S、エポキシ当量:201g/eq)100gに対して、硬化剤中の水酸基(フェノール性水酸基)数がエポキシ樹脂中のエポキシ基のモル数と等量になるように配合し、更に、触媒(硬化促進剤、2E4MZ、2-エチル−4−メチルイミダゾール)を、前記インダンビスフェノール化合物、及び、前記エポキシ樹脂の合計質量に対して0.5質量%の割合で加えた後、100〜150℃加熱下で溶融混合し、それぞれの硬化性樹脂組成物(エポキシ樹脂組成物)を得た。
【0089】
<樹脂板の作成>
得られた硬化性樹脂組成物を、長さ11cm×幅9cm×厚さ1.6mmの型枠に流し込み、プレスで175℃の温度で1時間成型した後、175℃の温度で更に5時間加熱・硬化して硬化物である樹脂板を作製した。
【0090】
<ガラス転移温度(Tg)>
得られた樹脂板を、長さ55mm×幅5mm×厚さ1.6mmのサイズに切り出し、これを試験片として、粘弾性測定装置(DMA:レオメトリック社製固体粘弾性測定装置「RSAII」、レクタンギュラーテンション法:周波数1Hz、昇温速度3℃/分)を用いて、弾性率変化が最大となる(tanδ変化率が最も大きい)温度を、ガラス転移温度(Tg)(℃)として評価した。
【0091】
<耐熱分解温度(1%重量減少温度)>
得られた樹脂板を細かく裁断し、これを試験片として耐熱分解温度を評価した。具体的には、重量分析装置としてTG/TA6200(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製)を用いた。測定条件は、昇温温度を5℃/分、測定環境を窒素雰囲気下とした。試験片の重量が1%減少する1%重量減少温度(Td5)を耐熱分解温度(℃)として評価した。
【0092】
<誘電特性の評価(誘電率及び誘電正接の測定)>
得られた樹脂板を、長さ600mm×幅1.6mm×厚さ1.6mmのサイズに切り出し、これを試験片として、JIS−C−6481に準拠し、アジレント・テクノロジー株式会社製インピーダンス・マテリアル・アナライザ「HP4291B」により、絶乾後23℃、湿度50%の室内に24時間保管した後の試験片の10GHzでの誘電率及び誘電正接を測定した。
【0093】
【表1】
【0094】
上記表1の評価結果より、実施例1においては、インダンビスフェノール化合物の製造において純度が高いことが確認でき、更に、耐熱性、及び、低誘電特性であることも確認された。一方、比較例1においては、実施例1と比較して、ガラス転移温度が低く、耐熱分解温度である1%重量減少温度も低く、耐熱性に劣り、実施例1のようには、耐熱性と誘電特性の両立が図れていないことが確認された。