【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであり、第1の発明(請求項1記載の発明)は、洪水や津波による水により、地盤上に形成された基礎部とこの基礎部に固定された住宅本体が一体的に浮上する住宅の浮上構造であって、上記住宅本体から離間した位置において鉛直方向に起立してなるとともに該住宅本体の周囲に設置された複数のポールと、一端は上記ポールに対して上下方向に移動可能に取り付けられ、他端は上記基礎部に固定されてなる連結部材と、を備え、上記基礎部と住宅本体とが一体的に浮上することにより、上記連結部材の一端側がポールの上下方向に移動されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0009】
この第1の発明に係る住宅の浮上構造では、洪水や津波等の水により基礎部と住宅本体とが一体的に浮上すると、上記それぞれの連結部材の一端側は上記各ポールに沿って上昇する。この際、上記それぞれのポールは住宅本体の周囲に設置されていることから、水流による抵抗が住宅本体及び基礎部に作用した場合には、上流側の連結部材に張力が付与されて緊張状態となり、それ以上に該住宅本体及び基礎部が水に流れて移動されることはない。そして、徐々に水位が低下すると、その水位に応じて住宅本体及び基礎部は元の位置又はその近傍に着地する。この際、上記連結部材の一端側は、上記ポールに沿って下方に移動する。
【0010】
したがって、この第1の発明に係る住宅の浮上構造によれば、材料費ばかりか施工費用も含めて極めて低コストで提供することが可能となるとともに、洪水等のように流れる水の抵抗により先に背景技術として説明した該棒状体と管体との摩擦抵抗が増加するような事態もなく、確実に住宅を浮上させることが可能となる。また、上記棒状体を構成要素としないことから、住宅の外観を大きく損なうこともない。さらに、上記ポールは、住宅本体の周囲に設置されていることから、濁流により住宅本体に大きな抵抗が発生し、その結果万が一上記連結部材と基礎部との固定状態が解除されてしまった場合であっても、住宅本体は上記幾つかのポールに衝突し、それ以上下流側に押し流されてしまう事態を回避することができる。
【0011】
なお、上記住宅の浮上構造を備えるポールは、上記住宅本体から離間した位置において鉛直方向に起立してなるとともに該住宅本体の周囲に設置されたものであれば、その本数は特に限定されるものではない。また、これらのポールの高さは、住宅本体が建設される場所や想定される津波の高さ(例えば、政府又は自治体により公表されているハザードマップ)に応じて適宜設定すれば良く、必ずしも住宅本体の高さと同じ高さとする必要性はない。また、上記連結部材は、少なくとも、一端は上記ポールに対して上下移動可能に取り付けられ、他端は上記基礎部に固定されてなるものであれば良く、該連結部材として線状材を用いる場合には、例えば、ワイヤ、紐又はチェーン等を使用することができる。また、この連結部材の一端とポールとの取付状態は、少なくとも該連結部材が上下方向に移動可能な状態で取り付けられていれば良く、該連結部材(の主要部)を上記線状材とした場合には、該線状材をポールの外周に掛け渡したものの他、ポールに鉛直方向に長さを有するガイド溝を形成し、このガイド溝にガイドされながら昇降する昇降部材が連結部材の一部として構成要素とされているものであっても良い。また、上記連結部材の全長は、少なくともこの第1の発明では特に限定されるものではない。但し、上記ポールから上記基礎部までの距離よりも長ければ長い程、濁流等により住宅本体と基礎部とが一体的に流された場合、下流側に配置されたポールに住宅本体が衝突する危険性が高くなるとともに、水位が低下した際には、元の位置からはずれた位置に住宅本体等が着地することとなるため、該連結部材の全長は、可能な限り短いものとすることが望ましいが、逆に通常時においても該連結部材が張設された状態とすると、ポールと連結部材の一端側との摩擦抵抗が増加して住宅本体及び基礎部の浮上を妨げる危険性もある。したがって、上記連結部材の全長は、上記互いに相反する事態を考慮して適宜選定することが好ましい。
【0012】
また、第2の発明(請求項2記載の発明)は、上記第1の発明において、前記地盤はコンクリート又は砕石により上面が平坦とされ、前記基礎部はこの平坦とされた地盤上に形成されてなることを特徴とするものである。
【0013】
この第2の発明に係る住宅の浮上構造では、前記地盤は、コンクリート又は砕石により上面が平坦とされており、土からなる地盤上に上記基礎部が形成されているものではない。したがって、洪水等が発生し、上記基礎部と住宅本体とが一体的に浮上すると、該基礎部と上記地盤との間は濁流が流れ、こうした濁流により、例えば該基礎部の周囲の土(地盤)が部分的に(不均一に)浸食されたり崩れたりすることを防止することができる。換言すれば、この第2の発明に係る住宅の浮上構造では、コンクリート又は砕石により上面が平坦とされた地盤上に上記基礎部が形成されていることから、上記地盤の不均一な浸食や崩れを防止することができ、水位が低下して再び地盤上に着地された住宅本体等が傾斜してしまう危険性を有効に防止することができる。
【0014】
なお、上記地盤を構成するコンクリートや砕石は、少なくともその一方が打設又は敷設されていれば良く、例えば、住宅本体の中央は砕石が敷設され、この砕石の周囲にはコンクリートが打設されている等して、該コンクリートと砕石の双方により地盤が形成されている場合であっても良い。
【0015】
また、第3の発明(請求項3記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記基礎部と該基礎部が形成された地盤との間には、シート体が敷設されてなることを特徴とするものである。
【0016】
この第3の発明に係る住宅の浮上構造は、以下の2つの態様に分かれる。1つ目の態様は、上記第1の発明を引用したものであり、コンクリートを打設することにより成形された基礎部と地盤(特に、以下に記載するコンクリート又は砕石からなる地盤ではなく、該地盤が土である)との間に上記シート体が敷設されている場合である。2つ目の態様は、上記第2の発明を引用したものであり、上記コンクリート又は砕石の何れか又はそれらの双方からなる地盤上にシート体が敷設され、このシート体上に上記基礎部が施工されている場合である。したがって、こうした住宅の浮上構造では、上記シート体を間に介して上記地盤と基礎部とは完全に分離されており、住宅本体を含めた基礎部全体が浮上した際、該基礎部の下面に地盤である土、コンクリート又は砕石の一部が該基礎部の下面等に付着して上昇し、この結果該地盤に凹凸が形成されることを有効に防止することができる。こうした凹凸が地盤に形成されそれが剥き出しの状態となり、該地盤が濁流により不均一に浸食されれば、水位が低下して再び地盤上に着地した際、住宅本体は傾斜してしまうこととなり、住宅本体の内部への浸水が無い状態であっても、良好な居住空間を確保できず、以後大規模な修復工事が必要となる。したがって、この第3の発明に係る住宅の浮上構造によれば、こうした事態を有効に回避することができる。
【0017】
なお、上記シート体は合成樹脂からなるフィルムであっても良いばかりではなく、更に透湿性を有するシート体(透湿シート)であっても良い。
【0018】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)は、上記第1又は第2の発明の何れかにおいて、前記基礎部の外周の下端には、ジャッキ等の昇降装置を構成する昇降部材又はベースが該基礎部の外側から挿入される挿入空間が形成されてなることを特徴とするものである。
【0019】
この第4の発明に係る住宅の浮上構造は、上記ジャッキ等の昇降装置を構成する昇降部材又はベースが該基礎部の外側から挿入される挿入空間が上記基礎部の外周の下端に形成されていることから、濁流等が収まって水位が低下し、浮上していた住宅本体及び基礎部が地盤に着地した後において、該住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる(ジャッキアップさせる)際に、上記ベース等を上記挿入空間内に挿入することができる。なお、こうした挿入空間を基礎部に形成する方法は、概ね以下に説啓する工程を採用すれば良い。先ず、地盤上に所定の鉄筋を配筋し、次いで上記挿入空間となる部位に発泡ウレタン又は木片等のスペーサを配置する。その上で、上記鉄筋及びスペーサの周囲に型枠を配置し、この型枠内にコンクリートを打設する。そして、このコンクリートが硬化した後に、上記スペーサを取り除く。こうした一連の工程により、上記挿入空間が形成される。
【0020】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)は、上記第1ないし第4の発明の何れかにおいて、前記ポールには、前記連結部材が上昇した際に該連結部材に係止する1又は複数の係止部が形成されてなることを特徴とするものである。
【0021】
この第5の発明に係る住宅の浮上構造では、前記ポールには1又は複数の係止部が形成され、この係止部は、住宅本体と基礎部との一体的な浮上に追随して上昇した連結部材が係止される部位である。すなわち、想定された水位よりも大幅に水位が上昇し住宅本体等がポールの高さよりも上方に浮上した場合には、上記連結部材と係止部とが互いに係合し、住宅本体及び基礎部はそれ以上上昇しない。
【0022】
したがって、この第5の発明に係る住宅の浮上構造によれば、想定外の水位となった場合であっても上記連結部材は必ず上記ポールに形成された係止部に係止されることから、ある程度各ポールの高さを低いものとすることができ、該ポールにかかるコストを抑制することができるとともに、住宅の周囲の外観を損なうことも抑制することができる。
【0023】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)は、上記第1ないし第5の発明の何れかにおいて、前記複数の連結部材は、一部の連結部材が緊張状態となった際に、他の連結部材が連結された前記ポールに前記住宅本体が当接しない長さとされてなることを特徴とするものである。
【0024】
この第6の発明に係る住宅の浮上構造では、浮上した住宅本体及び基礎部が下流側に流され、一部の連結部材が緊張状態となった際に、他の連結部材が連結されたポールに住宅本体が当接(衝突)しない長さとされていることから、該住宅本体が下流に配置されたポールと当接することにより破損したり変形したりする危険性を有効に防止することができる。
【0025】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)は、上記第1ないし第6の発明の何れかにおいて、前記基礎部は、前記住宅本体の下方に形成された水平基礎部と、この水平基礎部から起立してなる垂直基礎部とを有し、前記連結部材は、一端に前記ポールの外周に掛け渡される中空状の挿通部が形成された線状材を備え、上記垂直基礎部の外側面には、上記連結部材の他端を固定する1又は複数の固定金具が固定されてなることを特徴とするものである。
【0026】
この第7の発明に係る住宅の浮上構造によれば、連結部材の一端側とポールとの取付状態を簡素な構成とすることができ、安価に提供することが可能となる。
【0027】
なお、上記第7の発明に係る住宅の浮上構造では、上記連結部材の一端に前記ポールの外周に掛け渡される中空状の挿通部が形成された線状材を備えている。換言すれば、この挿通部が上記ポールに外嵌挿されている。また、上記線状材は、ワイヤ、紐或いはチェーン等のように可撓性を有するものであり、該連結部材の他端は、上記垂直基礎部の外側面に固定された1又は複数の固定金具に固定されている。なお、この固定金具は、少なくとも上記連結部材の他端を固定するものであれば、その形状は特に限定されず、また、該固定金具と連結部材とは、互いに直接的に固定されている場合以外に、該固定金具と連結部材との間にリング状の部材やボルト・ナット等の締結部材が介在している場合であっても良い。
【0028】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)は、上記第7の発明において、前記固定金具は、前記垂直基礎部の外側面に露出してなる固定板部と、前記連結部材の他端を固定する固定部と、基端は上記固定板部の背面に固定され上記垂直基礎部内に埋設されてなるとともに該固定板部の背面との間において該垂直基礎部の材料であるコンクリートが充填された充填空間が形成されてなる埋設部と、を備えてなることを特徴とするものである。
【0029】
この第8の発明に係る住宅の浮上構造では、上記垂直基礎の外側面に露出してなる固定板部に背面には、埋設部を備えている。この埋設部は、上記垂直基礎部内に埋設されてなるとともに該固定板部の背面との間において該垂直基礎部の材料であるコンクリートが充填された充填空間が形成されている。したがって、この第8の発明に係る住宅の浮上構造によれば、濁流により住宅本体等に大きな抵抗が作用し、この結果上記連結部材全体が緊張した場合であっても、上記充填空間内に充填されたコンクリートと埋設部とが係合し該垂直基礎部と連結部材との固定状態が解除されることがない。
【0030】
なお、上記埋設部は、少なくとも上記固定板部の背面との間において該垂直基礎部の材料であるコンクリートが充填された充填空間が形成されてなるものであれば良く、その形状が限定されるものではない。例えば、上記垂直基礎部内に埋設され鉛直方向に長さ又は幅を有する板体を上記埋設部として、上記固定板部の背面に接続部を介して固定し、この板体と固定板部との間の空間が上記充填空間とされたものであっても良い。
【0031】
また、第9の発明(請求項9記載の発明)は、上記第8の発明において、前記連結部材の他端にはボルト部を備えたボルト部材が固定され、前記固定板部には、上記ボルト部材が螺着されるナット部が内周に形成されてなるとともに前記垂直基礎部内に埋設された1又は複数のナット部材が該固定板部から水平に固定されてなることを特徴とするものである。
【0032】
この第9の発明に係る住宅の浮上構造では、上記連結部材の他端に固定されたボルト部材が、上記固定板部に水平に固定されたナット部材に螺着されることにより、上記連結部材の他端が垂直基礎部に固定される。上記ナット部材は、上記垂直基礎部内に埋設されてなるものであり、その先端は外部に露出されている。したがって、この第9の発明に係る住宅の浮上構造によれば、連結部材の他端を上記垂直基礎部に対して簡単に固定することができるとともに、固定された連結部材の他端を該垂直基礎部から容易に取り外すことができる。また、上記固定板部に複数のナット部材が固定されている場合には、上記ナット部材を取り外し、例えば垂直板部と水平板部とにより側面形状がL字状に成形されたアングル材(の垂直板部)を垂直基礎部に複数のボルト部材により固定することにより、水位が低下し着地した住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる際に使用される昇降装置(ジャッキ)の昇降部材の上面を該アングル材(の水平板部)の下面に当接させることができる。
【0033】
また、第10の発明(請求項10記載の発明)は、上記第7ないし第9の発明の何れかにおいて、前記固定金具を構成する固定板部の下端には水平板部が固定されてなるとともに、該水平板部の下面の左側には一方の脚部が固定され該水平板部の下面の右側には該一方の脚部と平行に配置された他方の脚部が固定され、上記一方の脚部と他方の脚部との間には、前記基礎部及び住宅本体を上昇させる昇降装置(ジャッキ)の昇降部材又はベースが挿入される挿入空間が形成されてなることを特徴とするものである。
【0034】
この第10の発明に係る住宅の浮上構造では、上記一方の脚部と他方の脚部との間には、前記基礎部及び住宅本体を上昇させる昇降装置(ジャッキ)の昇降部材又はベースが挿入される挿入空間が形成されていることから、水位が低下し着地した住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる際に使用される昇降部材又はベースを上記挿入空間内に挿入することができる。なお、こうした挿入空間が形成された固定金具を上記垂直基礎部に施工・固定する方法は、概ね以下に説明する工程を採用すれば良い。先ず、地盤上に所定の鉄筋を配筋し、次いで上記固定金具を所定位置に配置する。この際、上記挿入空間となる位置には後に容易に取り出すことが可能なスペーサを配置して置く。その上で、上記鉄筋及び固定金具の周囲に型枠を配置し、この型枠内にコンクリートを打設する。そして、このコンクリートが硬化した後に、上記スペーサを取り除く。こうした一連の工程により、上記一方の脚部と他方の脚部との間に挿入空間が形成される。
【0035】
また、第11の発明(請求項11記載の発明)は、上記第1ないし第10の発明の何れかにおいて、前記基礎部には、室外機又は温水器等の前記住宅本体の外側に設置される設備機器が載置される機器載置用基礎部が該基礎部と一体的に形成されてなることを特徴とするものである。
【0036】
この第11の発明に係る住宅の浮上構造では、室外機又は温水器等の前記住宅本体の外側に設置される設備機器が載置される機器載置用基礎部が該基礎部と一体的に形成されてなることから、前記住宅本体及び基礎部が一体的に浮上した際には、この機器載置用基礎部も一体的に浮上し、室外機又は温水器等の設備機器のみが配管又は電気ケーブルを介して不安定に浮遊したり住宅本体に対してぶら下がったりした状態となり、さらには上記配管や電気ケーブルが切断され設備機器は流され、以後使用不能となる事態を有効に防止することができる。
【0037】
また、第12の発明(請求項12記載の発明)は、上記第1ないし第11の発明の何れかにおいて、前記基礎部には、コンクリート製の玄関ポーチ又は勝手口ポーチ等のように該基礎部と一体的に形成されてなるとともに該基礎部の各部位における単位面積当たりの平均荷重と比較して高荷重を有する高荷重部位が形成され、上記高荷重部位の内部には、発泡樹脂等の低比重の素材からなる低荷重部材が配置されてなるか、又は該高荷重部位の内部には空洞が形成されてなるか、若しくは、前記住宅本体及び基礎部全体において、二階建て部位又は三階建て部位等の高荷重である高荷重部位と、この高荷重部位よりも平屋建て部位等のように上記高荷重部位と比較して低荷重である低荷重部位とがそれぞれ該住宅本体及び基礎部全体において変位した位置に形成されており、該低荷重部位には、上記高荷重部位との差異に相当する荷重を付与する荷重付与部材が配置されてなることを特徴とするものである。
【0038】
この第12の発明に係る住宅の浮上構造は、以下の二つの特徴の何れかを備えたものである。すなわち、一方の特徴は、前記基礎部には、コンクリート製の玄関ポーチ又は勝手口ポーチ等のように該基礎部と一体的に形成されてなるとともに該基礎部の各部位における単位面積当たりの平均荷重と比較して高荷重を有する高荷重部位が形成され、上記高荷重部位の内部には、発泡樹脂等の低比重の素材からなる低荷重部材が配置されてなるか、又は該高荷重部位の内部には空洞が形成されてなるものである。この高荷重部位とは、コンクリート製の玄関ポーチ又は勝手口ポーチ等のように該基礎部と一体的に形成されてなるとともに該基礎部の各部位における単位面積当たりの平均荷重と比較して高荷重を有する部位を言う。また、上記低荷重部材とは、発泡樹脂等の低比重の素材からなり、少なくとも単位面積当たりにおける基礎部(コンクリート)の荷重よりも荷重が低い部材を言う。また、他方の特徴は、前記住宅本体及び基礎部全体において、二階建て部位又は三階建て部位等の高荷重である高荷重部位と、この高荷重部位よりも平屋建て部位等のように上記高荷重部位と比較して低荷重である低荷重部位とがそれぞれ該住宅本体及び基礎部全体において変位した位置に形成されており、該低荷重部位には、上記高荷重部位との差異に相当する荷重を付与する荷重付与部材が配置されてなるものである。
【0039】
したがって、上記第12の発明に係る住宅の浮上構造によれば、洪水等により住宅本体及び基礎部が浮上すると、上記高荷重部位の内部に配置された低荷重部材の浮力又は上記空洞の浮力により、若しくは、上記低荷重部位に対する上記荷重付与部材の配置により、住宅本体等が傾斜しない状態で該住宅本体等を浮上させることができ、この結果、住宅本体の内部に設置された家具や冷蔵庫が転倒したり、或いは什器や調度品等が収納家具から脱落したりする等の被害を低減することができる。
【0040】
また、第13の発明(請求項13記載の発明)は、上記第1ないし第12の発明の何れかにおいて、前記基礎部の外側には、前記住宅本体の内部に配置されたキッチン又はトイレ若しくは洗面台からの排水を該住宅本体内から外部に排水する住宅側排水管の先端が下向きに配置され、前記地盤には、上記住宅側排水管からの排水が流入する地盤側排水管の先端が上向きに配置され、上記住宅本体及び上記基礎部が一体的に浮上した際、それまで互いに接続されていた上記住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端との接続状態が解除されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0041】
この第13の発明に係る住宅の浮上構造では、上記住宅本体及び上記基礎部が一体的に浮上した際、それまで互いに接続されていた上記住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端との接続状態が解除されるように構成されてなることから、洪水や濁流等により住宅本体及び基礎部が浮上した際に、上記住宅側排水管や地盤側排水管が破損することを防止することができる。特に、この第13の発明に係る住宅の浮上構造では、上記住宅側排水管の先端は、上記基礎部の外側に位置してなることから、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した際には、住宅側排水管の先端と地盤側排水管の先端を再び容易に接続することが可能となる。
【0042】
また、第14の発明(請求項14記載の発明)は、上記第13の発明において、前記地盤側排水管の先端側中途部には、蛇腹状に成形された伸縮部が形成されてなり、前記住宅本体及び前記基礎部が一体的に浮上した際、上記伸縮部が伸長されるとともに該伸縮部が所定の長さ伸長された後に、それまで互いに接続されていた上記住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端との接続状態が解除されるように構成されてなることを特徴とするものである。
【0043】
この第14の発明に係る住宅の浮上構造では、上記地盤側排水管の先端側中途部には、蛇腹状に成形された伸縮部が形成されていることから、洪水や濁流等による上記住宅本体及び基礎部の上昇の程度(浮き上がりの長さ)が、上記伸縮部による最大伸長長さに満たない場合には、上記住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端との接続状態が解除されることはなく、その後洪水等が収まって着地した際においても依然として上記接続状態は維持され、該住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端とを接続する作業を要しない。また、上記住宅本体等が濁流等により斜めに浮上した場合であっても、上記地盤側排水管と住宅側排水管との位置の変位は、上記伸縮部により吸収することができるため、上述したように、住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端とを接続する作業を要しない。さらに、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した位置が必ずしも元の位置ではなく多少ずれている場合であっても、上記伸縮部は蛇腹状に成形されていることから、元の位置と着地した位置との距離が該伸縮部の最大伸長長さの範囲内である限りにおいて、地盤側排水管の先端と住宅側排水管を容易に接続することが可能となる。
【0044】
また、第15の発明(請求項15記載の発明)は、上記第13の発明において、前記住宅側排水管は、前記基礎部の外側に先端が露出した第1の住宅側排水管と、この第1の住宅側排水管の先端に接続され下端は下向きとされた第2の住宅側排水管とから構成され、
上記第1の住宅側排水管の先端と第2の住宅側排水管の基端との接続状態は、該第1の住宅側排水管に対して該第2の住宅側排水管が回転可能とされてなることを特徴とするものである。
【0045】
この第15の発明に係る住宅の浮上構造では、上記第1の住宅側排水管の先端と第2の住宅側排水管の基端との接続状態は、該第1の住宅側排水管に対して該第2の住宅側排水管が回転可能とされてなることから、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した地点が必ずしも元の位置ではなく多少ずれている地点に着地した場合であっても、上記伸縮部は蛇腹状に成形されていることと相俟って、第1の地盤側排水管の先端と上記第2の住宅側排水管を一層容易に接続することが可能となる。
【発明の効果】
【0046】
上記第1の発明(請求項1記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、材料費ばかりか施工費用も含めて極めて低コストで提供することが可能となるとともに、洪水等のように流れる水の抵抗により先に従来の技術として説明した該棒状体と管体との摩擦抵抗が増加するような事態もなく、確実に住宅を浮上させることが可能となる。また、上記棒状体を構成要素としないことから、住宅本体の外観を大きく損なうこともない。さらに、上記ポールは、住宅本体の周囲に設置されていることから、濁流により住宅本体に大きな抵抗が発生し、その結果万が一上記連結部材と基礎部との固定状態が解除されてしまった場合であっても、住宅本体は上記幾つかのポールに衝突し、それ以上下流側に押し流されてしまう事態を回避することができる。
【0047】
また、上記第2の発明(請求項2記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、コンクリート又は砕石により上面が平坦とされた地盤上に上記基礎部が形成されていることから、土からなる地盤の不均一な浸食や崩れを防止することができ、水位が低下して再び地盤上に着地された住宅本体等が傾斜してしまう危険性を有効に防止することができる。
【0048】
また、上記第3の発明(請求項3記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、上記シート体を間に介して上記地盤と基礎部とは完全に分離されていることから、住宅本体及び基礎部が一体的に浮上した際、該基礎部の下面に地盤である土、コンクリート又は砕石の一部が該基礎部の下面等に付着して上昇し、この結果該地盤に凹凸が形成されることを有効に防止することができる。
【0049】
また、第4の発明(請求項4記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、洪水や濁流等が収まって水位が低下し、それまで浮上していた住宅本体及び基礎部が地盤に着地した後において、該住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる(ジャッキアップさせる)際に、上記昇降部材又はベースを上記挿入空間内に挿入することができる。換言すれば、この発明によれば、上記基礎部が着地した後に、住宅本体及び基礎部をジャッキアップし、その位置の修正作業を容易に行うことができる。
【0050】
また、第5の発明(請求項5記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、想定外の水位となった場合であっても上記連結部材は必ず上記ポールに形成された係止部に係止されることから、ある程度各ポールの高さを低いものとすることができ、該ポールにかかるコストを抑制することができるとともに、住宅の周囲の外観を損なうことも抑制することができる。
【0051】
また、第6の発明(請求項6記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、上記住宅本体が下流に配置されたポールと当接することにより破損したり変形したりする危険性を有効に防止することができる。
【0052】
また、第7の発明(請求項7記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、連結部材の一端側とポールとの取付状態を簡素な構成とすることができ、安価に提供することが可能となる。
【0053】
また、第8の発明(請求項8記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、濁流により住宅本体等に大きな抵抗が作用し、この結果上記連結部材全体が緊張した場合であっても、上記充填空間内に充填されたコンクリートと埋設部とが係合し該垂直基礎部と連結部材との固定状態が解除されることがない。
【0054】
また、第9の発明(請求項9記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、連結部材の他端を上記垂直基礎部に対して簡単に固定することができるとともに、固定された連結部材の他端を該垂直基礎部から容易に取り外すことができる。また、上記固定板部に複数のナット部材が固定されている場合には、上記ナット部材を取り外し、例えば垂直板部と水平板部とにより側面形状がL字状に成形されたアングル材(の垂直板部)を垂直基礎部に複数のボルト部材により固定することにより、水位が低下し着地した住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる際に使用される昇降装置(ジャッキ)の昇降部材又はベースの上面を該アングル材(の水平板部)の下面に当接させることができ、住宅本体及び基礎部をジャッキアップし、その位置の修正作業容易に行うことができる。
【0055】
また、第10の発明(請求項10記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、水位が低下し着地した住宅本体と基礎部とを一体的に上昇させる際に使用される昇降装置(ジャッキ)の昇降部材又はベースを上記挿入空間内に挿入することができ、住宅本体及び基礎部をジャッキアップし、その位置の修正作業を容易に行うことができる。
【0056】
また、第11の発明(請求項11記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、上記住宅本体及び基礎部が一体的に浮上した際には、この機器載置用基礎部も一体的に浮上し、室外機又は温水器等の設備機器のみが配管又は電気ケーブルを介して不安定に浮遊したり住宅本体に対してぶら下がったりした状態となり、さらには上記配管や電気ケーブルが切断され設備機器は流され、以後使用不能となる事態を有効に防止することができる。
【0057】
また、第12の発明(請求項12記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、洪水等により住宅本体及び基礎部が浮上すると、上記高荷重部位の内部に配置された低荷重部材の浮力又は上記空洞の浮力により、若しくは、上記荷重付与部材の配置により、住宅本体等が傾斜することなくほぼ均一な状態で(地面に対して略平行な状態で)該住宅本体等を浮上させることができ、この結果、住宅本体の内部に設置された家具や冷蔵庫が転倒したり、或いは什器や調度品等が収納家具から脱落したりする等の被害を低減することができる。
【0058】
また、第13の発明(請求項13記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、洪水や濁流等により住宅本体及び基礎部が浮上した際に、上記住宅側排水管や地盤側排水管が破損することを防止することができる。特に、この発明では、上記住宅側排水管の先端は、上記基礎部の外側に位置してなることから、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した際には、住宅側排水管の先端と地盤側排水管の先端を再び容易に接続することが可能となる。
【0059】
また、第14の発明(請求項14記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、以下に説明する様々な効果を奏することができる。先ず、この発明では、上記地盤側排水管の先端側中途部には、蛇腹状に成形された伸縮部が形成されていることから、洪水や濁流等による上記住宅本体及び基礎部の上昇の程度(浮き上がりの長さ)が、上記伸縮部による最大伸長長さに満たない場合には、上記住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端との接続状態が解除されることはなく、その後洪水等が収まって着地した際においても依然として上記接続状態は維持され、該住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端とを接続する作業を要しない。次に、上記住宅本体等が濁流等により斜めに浮上した場合であっても、上記地盤側排水管と住宅側排水管との位置の変位は、上記伸縮部により吸収することができるため、上述したように、住宅側排水管の先端と上記地盤側排水管の先端とを接続する作業を要しない。さらに、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した位置が必ずしも元の位置ではなく多少ずれている場合であっても、上記伸縮部は蛇腹状に成形されていることから、元の位置と着地した位置との距離が該伸縮部の最大伸長長さの範囲内である限りにおいて、地盤側排水管の先端と住宅側排水管を容易に接続することが可能となる。
【0060】
また、第15の発明(請求項15記載の発明)に係る住宅の浮上構造によれば、上記洪水等が収まり住宅本体及び基礎部が着地した地点が必ずしも元の位置ではなく多少ずれている地点に着地した場合であっても、上記伸縮部は蛇腹状に成形されていることと相俟って、第1の地盤側排水管の先端と上記第2の住宅側排水管を一層容易に接続することが可能となる。