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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-131243(P2021-131243A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】計量装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 23/37 20060101AFI20210813BHJP
   G01G 11/00 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
   G01G23/37 G
   G01G11/00 H
   G01G23/37 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2020-25432(P2020-25432)
(22)【出願日】2020年2月18日
(71)【出願人】
【識別番号】302046001
【氏名又は名称】アンリツインフィビス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000000572
【氏名又は名称】アンリツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140501
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 栄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100072604
【弁理士】
【氏名又は名称】有我 軍一郎
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康平
(72)【発明者】
【氏名】石原 俊介
(57)【要約】
【課題】質量検査用や工程管理用等といった用途ごとに最適な計量値出力を行うことのできる計量装置を提供する。
【解決手段】物品Wの重量に対応する質量を計量して計量信号Vを出力する計量器21と、計量信号Vに対応する計量情報を異なる複数の目量のうちいずれかの目量に基づいて出力する計量情報出力部42、43と、計量情報出力部42、43の出力に応じて表示出力または測定信号出力を制御する出力制御部44と、を備えた計量装置であって、出力制御部44は、表示出力または測定信号出力の用途種別に応じて、複数の目量のうちいずれかの目量を選択設定する目量選択手段44aを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物の重量に対応する質量を計量し、計量信号を出力する計量部と、
前記計量信号に対応する計量情報を異なる複数の目量のうちいずれかの目量に基づいて出力する計量情報出力部と、
前記計量情報出力部の出力に応じて表示出力または測定信号出力を制御する出力制御部と、を備えた計量装置であって、
前記出力制御部は、前記表示出力または測定信号出力の用途種別に応じて、前記複数の目量のうちいずれかの目量を選択設定する目量選択手段を有していることを特徴とする計量装置。
【請求項2】
前記出力制御部は、前記計量情報出力部により、前記計量信号に対応する計量値を前記複数の目量のうち主たる目量を基に表示出力または測定信号出力する第1の計量情報出力を実行させる一方、前記複数の目量のうち前記主たる目量より小さい予備の目量を基に前記計量値を表示出力または測定信号出力する第2の計量情報出力を選択的に実行させることを特徴とする請求項1に記載の計量装置。
【請求項3】
前記複数の目量が、検査目量と実目量とを含むことを特徴とする請求項1または2に記載の計量装置。
【請求項4】
前記計量部での前記質量の計量範囲を、第1の検査目量が適用される第1の部分計量範囲と前記第1の検査目量より小さい第2の検査目量が適用される第2の部分計量範囲とに分割設定する部分計量範囲設定手段と、
前記計量部で計量される前記質量に応じて、前記第1の部分計量範囲および前記第2の部分計量範囲のうちいずれか一範囲に適用される検査目量を選択設定する検査目量選択手段と、を更に有し、
多目量はかり機能を発揮することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の計量装置。
【請求項5】
前記被検査物が、前段の物品処理装置によって所定の重量値範囲内に充填または包装されており、
前記計量情報出力部が、前記第2の計量情報出力を、前記前段の物品処理装置に出力することを特徴とする請求項2に記載の計量装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計量装置に関し、特に被検査物の質量を自動捕捉可能な計量装置に関する。
【背景技術】
【0002】
計量装置、特に食品等の生産ラインにおける検査工程で被検査物の質量を自動捕捉可能な計量装置は、従前より、コンベア搬送される被検査物の重量選別その他の検査に、広く使用されている。
【0003】
このような計量装置は、検査で使用される質量の計量値の最小表示(計量値を表示する数字や目盛等のうち隣り合う2つがそれぞれ表す量の差)である検査目量を有しており、その検査目量に基づいて計量値を表示(印字を含む;以下同様)するようになっている。また、計量の分解能に対応する実目量に基づいて検査結果の計量値の誤差や検査目量での計量値を決定できるようになっている。
【0004】
従来のこの種の計量装置としては、例えば被検査物の質量の計量単位(目量に相当)が、計量部の感度および許容最大質量に応じて切換え設定されるもの(例えば、特許文献1参照)や、上位または下位の所望桁の表示を消去し得るようにしたもの(例えば、特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−310777号公報
【特許文献2】特開昭55−116223号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のような従来の計量装置にあっては、次のような問題があった。
【0007】
例えば、計量装置の計量値を前段の充填機による充填処理後の重量選別に使用する場合に、計量装置による計量値または計量値と設定値(充填量の目標値)の差分を充填機の充填量制御回路にフィードバックすることで、充填機の充填量を安定的に設定値(充填量の目標値)側に補正することが考えられるが、そのような傾向制御に際し、重量選別に使用する計量値をそのまま充填機にフィードバックしたのでは、充填量の目標値に対して充填機にフィードバックされる計量値の偏差が粗く変動するものとなってしまう。そのため、充填機の充填量を計量結果に応じてきめ細かに補正することが困難となり、充填精度を高めて原材料ロスを抑えたり製品歩留りを向上させたりする効果が十分に得られない。
【0008】
あるいは、後段の組合せ包装用の包装機に対していわゆる組合せ計量を行う場合に、並列する複数の計量部でそれぞれの組合せ要素の個々の重量判定に使用する計量結果をそのまま組合せ包装用の包装機に提供したのでは、組合せ計量の目標値に対して包装機に提供される所定数の最適な組合せ品の計量結果の合計値の偏差が粗く変動するものとなってしまうため、やはり、きめ細かな組合せ計量を行うことが困難になってしまう。
【0009】
このように、従来の計量装置にあっては、質量検査用の計量値を算出する計量処理結果を、検査以外の用途にもそのまま利用していたため、同一製造ライン内で前段や後段に設置される物品処理装置の制御性を低下させてしまう場合があった。
【0010】
本発明は、上述のような従来の課題を解決すべくなされたものであり、質量検査用や工程管理用等といった用途ごとに最適な計量値出力を行うことのできる計量装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る計量装置は、上記目的達成のため、被検査物の重量に対応する質量を計量し、計量信号を出力する計量部と、前記計量信号に対応する計量情報を異なる複数の目量のうちいずれかの目量に基づいて出力する計量情報出力部と、前記計量情報出力部の出力に応じて表示出力または測定信号出力を制御する出力制御部と、を備えた計量装置であって、前記出力制御部は、前記表示出力または測定信号出力の用途種別に応じて、前記複数の目量のうちいずれかの目量を選択設定する目量選択手段を有していることを特徴とする。
【0012】
この構成により、計量情報出力部が、その出力の用途種別ごとに好適な目量での計量情報出力を行うことができることになり、質量検査用と工程管理用等の用途別に最適な計量値出力を行うことが可能となる。
【0013】
なお、出力の用途種別とは、例えばメンテナンス等のための拡張表示用の表示出力や、前段の物品処理手段に対する傾向制御用の測定信号出力等であるが、いわゆる組合せ計量値等を後段の物品処理装置に出力する場合も、そのような出力の用途種別に含まれ得る。
【0014】
本発明の好ましい実施形態においては、前記出力制御部は、前記計量情報出力部により、前記計量信号に対応する計量値を前記複数の目量のうち主たる目量を基に表示出力または測定信号出力する第1の計量情報出力を実行させる一方、前記複数の目量のうち前記主たる目量より小さい予備の目量を基に前記計量値を表示出力または測定信号出力する第2の計量情報出力を選択的に実行させる構成とすることができる。
【0015】
このような構成にすると、同一の計量信号に対し主たる目量に基づく第1の計量情報と予備の目量に基づく第2の計量情報とを用途の異なる計量情報として生成可能となり、必要に応じて高計量精度の計量情報が出力可能となる。
【0016】
また、本発明の好ましい実施形態においては、前記複数の目量が、検査目量と実目量とを含むように構成することができる。
【0017】
このようにすると、同一の計量信号に対し検査目量に基づく計量値表示用の計量情報とそれより分解能の高い実目量に基づく多用途の計量情報とを生成可能となり、必要に応じて高計量精度の計量情報を出力可能となる。ここで、検査目量とは、はかりの精度等級分類および検査で使用される質量の単位で表される値であり、2つの連続した計量表示値の差に相当する。また、実目量とは、検査目量より小さい量の表示で、計量部の性能や計量処理能力に応じて定まるものであり、はかりの誤差または計量値の決定に使用することができる。
【0018】
さらに、本発明の計量装置は、前記計量部での前記質量の計量範囲を、第1の検査目量が適用される第1の部分計量範囲と前記第1の検査目量より小さい第2の検査目量が適用される第2の部分計量範囲とに分割設定する部分計量範囲設定手段と、前記計量部で計量される前記質量に応じて、前記第1の部分計量範囲および前記第2の部分計量範囲のうちいずれか一範囲に適用される検査目量を選択設定する検査目量選択手段と、を更に有し、多目量はかり機能を発揮する構成としてもよい。
【0019】
このような構成にすると、同一の計量部に対してひょう量(使用計量範囲の上限値)および目量が異なる複数の計量範囲をもつ複目量はかりや多目量はかりを容易に構成可能となる。
【0020】
また、本発明の好ましい実施形態においては、前記被検査物が、前段の物品処理装置によって所定の重量値範囲内に充填または包装されており、前記計量情報出力部が、前記第2の計量情報出力を、前記前段の物品処理装置に出力するように構成されてもよい。
【0021】
このような構成にすると、前段の物品処理装置での充填または包装処理後の計量値を基に前段の物品処理装置での処理を予めの質量設定値に追従させるように傾向制御可能となる。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、質量検査用や工程管理用等といった用途ごとに最適な計量値出力を行うことのできる計量装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の一実施形態に係る計量装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態に係る計量装置の計量処理に係る要部のブロック構成図である。
図3】本発明の一実施形態に係る計量装置における計量信号処理の手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係る計量装置におけるメイン画面出力のための第1の出力制御の処理手順を示すフローチャートである。
図5】本発明の一実施形態に係る計量装置における用途別出力のための第2の出力制御の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0025】
本発明に係る計量装置は、図1および図2に示すような構成を有する一実施形態とすることができ、この構成により、図3図5に示すような動作を行うことができる。
【0026】
まず、その構成について説明する。
【0027】
図1および図2に示すように、本実施形態の計量装置は、充填機11および前段コンベア12を有する前段ライン10と、計量器21(計量部)および計量コンベア22を有する計量装置本体20と、選別機31および後段コンベア32を有する後段ライン30と、少なくとも計量装置本体20の動作を制御する制御部40と、を備えた重量選別システム1として構成されている。
【0028】
この重量選別システム1の前段ライン10では、充填機11により所定の包装容器に内容物を充填した物品W(被検査物)が前段コンベア12上に所定の時間間隔で投入され、前段コンベア12によって順次下流側(図1中の右側)に搬送される。そして、前段コンベア12の下流端に達した検査対象の物品Wが、前段コンベア12から計量装置本体20の計量コンベア22に受け渡される。なお、前段コンベア12および計量コンベア22の搬送は、例えば物品Wの検査時に同期制御され、物品投入間隔を規定する前述の所定の時間間隔は、前後に隣り合う計量単位の物品Wが計量コンベア22上に相乗りしないように設定される。
【0029】
計量装置本体20においては、計量コンベア22を支持する計量器21が、計量コンベア22から負荷される荷重を例えば内蔵する荷重センサによって検出し、そのセンサ出力信号を増幅器で増幅した計量信号Vを出力するようになっている。
【0030】
この計量器21からの計量信号Vは、A/D変換器23に入力される。そして、A/D変換器23において、アナログ入力される直流電圧信号が一定時間ごとに標本化(サンプリング)されてその信号値が読み込まれ、その信号値が、小数点以下を例えば切り捨てることで量子化された後、基準電圧の何倍に相当するかを、2進数の桁数を分解能とする所定ビット数(例えば16ビット)で表すよう、電圧値データに符号化される。
【0031】
なお、A/D変換器23の動作は、例えば物品検知センサ14による物品Wの先端または後端の検知時点t1を基準に、前段コンベア12から計量コンベア22上に搬入される物品Wの全重量が計量コンベア22に荷重として負荷され、かつ、計量器21の計量信号Vが安定するタイミングt2を設定しておき、そのタイミングt2で、A/D変換器23の入力電圧に対するサンプリングが開始されるようにすることができる。
【0032】
A/D変換器23から出力される所定ビット数の電圧値データは、換算手段24に取り込まれ、所定の換算係数c1を乗じることで物品Wの質量に換算される。
【0033】
具体的には、計量器21における前述の荷重センサの感度を例えば0.02mV/g、増幅器の増幅度a1を例えば100とし、A/D変換器23におけるA/D変換の基準電圧を例えば0.1mVとすると、物品Wの単位質量1gに対するA/D変換器23の出力値は20倍の感度に相当するものとなるので、換算手段24の換算係数a1は、例えば1/20=0.05に設定される。
【0034】
制御部40においては、計量器21の荷重センサ出力に対する増幅器の増幅度a1が、計量器21の荷重センサに負荷され得る物品Wの全質量計量範囲(Capacity)をA/D変換器23が出力できる所定ビット数のデータに有効に割り当てるように、かつ、切りの良い値に設定される。
【0035】
また、所要の分解能を維持しつつ許容最大質量の異なる複数の動作モードを設定できるよう、質量計量範囲の上限値が大きいほど、計量器21の荷重センサ出力に対する増幅度a1が小さくなり、かつ、換算手段24の換算係数c1が大きくなるように、許容最大質量に応じて計量器21における増幅度a1や換算手段24における換算係数c1を変更するテーブルを参照したり演算式を用いたりすることができる。
【0036】
より具体的には、本実施形態では、計量器21は、例えば最大許容質量(Capacity)を100gとする小質量計量範囲固定の高精度モードと、最大許容質量をそれぞれ100g、300g、600gとする3つの計量範囲のうち任意の計量範囲に切換え可能な中質量計量範囲の可変動作モードとを選択設定可能になっている。
【0037】
勿論、ここに示す計量範囲は一例であり、他の例として、例えば1500g以上3000g未満の大質量計量範囲、600g以上1500g未満の中質量計量範囲、600g以下の小質量計量範囲を設定してもよい。また、その場合に、大質量計量範囲における増幅度として100、中質量計量範囲における増幅度として200、小質量計量範囲における増幅度として500を対応付けるようなメモリテーブルを前述のメモリ参照用に設けることもできる。
【0038】
このように、計量装置本体20およびその計量処理系は、計量器21による計量範囲として、第1の検査目量が適用される中または大質量計量範囲(第1の部分計量範囲)と、その検査目量より小さい第2の検査目量として実目量が適用される小質量計量範囲(第2の部分計量範囲)とを分割設定する部分計量範囲設定が可能である。
【0039】
本実施形態では、また、制御部40は、小質量計量範囲固定の高精度モードの場合には、検査目量を0.05gとする一方、中質量計量範囲の可変動作モードの場合には、検査目量を、選択した計量範囲に応じて0.1g、0.2gまたは0.5gのいずれかに可変設定するようになっている。この場合の実目量は、例えば最大許容質量が300g以下であれば、0.005g、最大許容質量が600gの場合、0.01gである。
【0040】
すなわち、制御部40は、2つ以上の目量を有し、用途に応じた計量処理を行うことで、計量器21で計量される質量に応じ、第1の部分計量範囲および第2の部分計量範囲のうちいずれか一範囲に適用される検査目量を第1、第2の検査目量から選択設定する機能を有しており、本重量選別システム1に多目量はかり機能を発揮させることができる。
【0041】
なお、法定計量に使用する計量値として、工程管理用等の多用途の計量値を誤用することを防止するために、用途別に、検査目量(e)、実目量(d)、さらに他の特定用途向けの目量(do)等といった形で、機能ごとに目量を割り付けるが、通常、検査に使用しない工程管理用等の計量値は表示せず、例えばメンテナンスのための拡張表示要求に応じてサブ画面等で表示すようになっている。
【0042】
また、計量装置本体20においては、前述のように、動作モードや質量計量範囲に応じて質量の単位である検査目量を切り換える多目量はかり機能を有することに加えて、計量器21の性能や計量処理能力、例えば前述の電圧値データのビット数(2進数の桁数)等に応じた計量の分解能を有するので、検査目量より小さい実際に読取り可能な実目量を有し得る。
【0043】
ここで、検査目量(JIS B 7607)とは、はかりの精度等級分類および検査で使用される質量の単位で表される値であり、2つの連続した計量表示値の差に相当する。また、実目量とは、検査目量より小さい量の表示で、はかりの誤差または計量値の決定に使用することができる。
【0044】
ところで、計量器21からの計量信号Vは、秤量台を有する計量コンベア22の自重や物品Wの正味重量以外の容器重量等といった風袋分の信号成分を含んでおり、換算手段24での換算後の質量値も風袋質量b1を含んでいるので、風袋引き処理部25により換算手段24での換算後の質量値から風袋質量b1が差し引かれて、物品Wの正味量分の質量のデータが制御部40に取り込まれるようになっている。
【0045】
制御部40は、具体的なハードウェア構成を図示しないが、例えばCPU、ROM、RAMおよび入出力インターフェース回路等を含んで構成されており、ROMや他のメモリデバイスに格納された所定の計量制御プログラムや重量選別のための振分け制御プログラム等に従って、計量作動制御や搬送制御を実行するとともに、選別機31の動作を制御するようになっている。
【0046】
この制御部40は、前述の各種制御プログラムを有することで、複数の制御機能部であるデータ取得手段41、第1計量値算出手段42、第2計量値算出手段43、用途別出力制御手段44(出力制御部)、選別判定手段45および設定入力手段46として機能し得るように構成されている。
【0047】
データ取得手段41は、例えばデータ格納レジスタの機能を有しており、風袋引き処理部25からの各物品Wごとの正味量分の質量値を所定時間ごとに質量データとして取り込むとともに、レジスタ値を順次更新するようになっている。また、データ取得手段41は、前述の増幅度a1、風袋質量b1、換算係数c1およびタイミングt2を、物品Wの品種に対応する質量基準値や搬送方向長さの違い、物品Wに対応する質量計量範囲や風袋質量等に応じて可変設定するとともに、前述の部分計量範囲を設定する部分計量範囲設定手段41a(図2参照)の機能を併有している。
【0048】
第1計量値算出手段42は、データ取得部41で取得された質量値を予め設定された第1の目量、例えば検査目量で補正(小位桁の値を四捨五入等により検査目量単位に丸める端数処理)して、その補正後の計量値である第1計量値を算出するようになっている。
【0049】
また、第2計量値算出手段43は、データ取得部41で取得された質量値を第1の目量より小さい目量として予め設定された第2の目量、例えば実目量で補正(最小位桁の値を四捨五入等により検査目量単位に丸める端数処理)して、その補正後の計量値である第2計量値を算出するようになっている。勿論、多目量はかり等において、第1の目量が第1の検査目量であり、第2の目量が第2の検査目量である場合も考えられる。
【0050】
これら第1計量値算出手段42および第2計量値算出手段43は、計量信号Vに対応する計量情報を異なる複数の目量のうちいずれかの目量、ここでは、例えば検査目量または/および実目量に基づいて、表示部50に表示出力する計量情報または外部に傾向制御出力もしくは測定信号出力するべき計量情報を、用途別出力制御手段44を介して出力する計量情報出力部となっている。
【0051】
用途別出力制御手段44は、計量情報出力部である第1計量値算出手段42および第2計量値算出手段43からの出力をそれぞれに取り込んで、取り込んだ出力をそれぞれの用途を表す情報と関連付けて、複数の目量のうちいずれかの目量に関連付けた表示出力または測定信号出力を用途別に出力できるようになっている。
【0052】
また、用途別出力制御手段44は、計量情報出力部である第1計量値算出手段42および第2計量値算出手段43からの出力の用途種別に応じて、前述の複数の目量のうちいずれかの目量を前述の用途の情報に対応させて選択設定する目量選択手段44a(図2参照)の機能を有している。
【0053】
ここでの出力の用途種別とは、例えばメンテナンス等のための拡張表示や、前段の物品処理手段である充填機11等に対する傾向制御(基準値からのずれを抑える制御)等であり、目量選択手段44aは、用途に対応する表示出力や測定信号出力の情報と、対応する計量値に適用される第1、第2の目量のうち少なくとも1つの選択肢の目量の情報とを関連付けるテーブル等を含んでいてもよい。なお、出力の用途種別には、いわゆる組合せ計量を行う場合(複数組の計量部での計量値を基に後段の包装装置に対し許容範囲内となる組合せの計量値を出力する場合)には、その組合せ計量値の後段の包装装置への出力となることが考えられる。
【0054】
用途別出力制御手段44は、例えば、第1計量値算出手段42からの検査目量に基づく計量値を、表示部50での検査結果表示用のメイン画面出力P1に含めて出力したり、第1計量値算出手段42からの第1の目量に基づく計量値や第2計量値算出手段43からの第2の目量または実目量に基づく計量値を表示部50における拡張表示用のサブ画面出力P2に含めて出力したりすることができる。また、第2計量値算出手段43からの実目量に基づく計量値を、充填機11の充填量フィードバック制御回路への実充填量のフィードバック出力である傾向制御出力M1としたり、用途別出力制御手段44から外部の情報端末やプリンタ等への通信出力M2としたりすることができるようになっている。
【0055】
すなわち、出力制御部としての用途別出力制御手段44は、第1計量値算出手段42からの計量信号Vに対応する計量値を第1の目量(主たる目量)である検査目量を基に、第1の計量情報出力として表示部50への検査結果の表示出力または測定信号出力を実行させる一方で、第2計量値算出手段43からの第2の目量(予備の目量)である実目量を基に、第2の計量情報出力として表示部50への拡張表示出力や外部への測定信号出力するを選択的に実行させるようになっている。
【0056】
選別判定手段45は、物品検知センサ14からの検知信号を基準として所定の判定タイミングで、第1計量値算出手段42による検査目量に基づく計量値の算出結果を取り込み、物品Wの質量に対応する計量値(内容量、個数その他の測定値でもよい)を判定対象値として、例えばその判定対象値が許容範囲内である物品Wを良品、過不足がある物品Wを不良品と判定するようになっている。
【0057】
物品Wの正味重量以外の容器重量等は、設定や要求操作入力が可能な操作部48からの風袋設定操作入力により予め設定入力手段46を介して制御部40に取り込まれ、物品Wの品種ごとに設定されている。設定入力手段46は、公知の任意のマンマシンインターフェースを用いて、各種制御パラメータや要求値の設定入力を行うことができる。
【0058】
さらに、物品Wは、前段の物品処理装置である充填機11によって所定の質量範囲内の内容物を充填または包装したものであり、制御部40においては、第2計量値算出手段43による実目量に基づく計量値の算出結果(第2の計量情報)が、用途別出力制御手段44から前段の充填機11に、傾向制御出力M1としてフィードバックされる。また、用途別出力制御手段44から外部の情報端末やプリンタ等への通信出力M2がなされる。
【0059】
表示部50には、操作部48による画面切換え操作に応じて、選別判定手段45による判定結果および検査目量に基づく計量値の主表示を行うメイン画面出力P1と、検査目量より小さい実目量を手動選択操作で拡張表示可能なサブ画面出力P2とが、切換え可能に表示される。
【0060】
次に、動作について説明する。
【0061】
上述のように構成された本実施形態の重量選別システム1においては、物品Wが物品検知センサ14により検知される度に、計量情報の取得のために図3に示すような計量処理が実行される。
【0062】
すなわち、図3に示すように、物品Wが1つのワークとして物品検知センサ14により検知されると(ステップS11)、その検知時点を基準に、例えば前段コンベア12から計量コンベア22上に搬入される物品Wの全重量が計量コンベア22に荷重として負荷され、かつ、計量器21の計量信号Vが安定した段階で、計量器21の計量信号VがA/D変換器23によりサンプリングされてA/D変換され、所定ビット数の電圧値データが得られる(ステップS12)。
【0063】
そして、A/D変換器23からの電圧値データが、換算手段24に取り込まれると、所定の換算係数を乗じることで物品Wの質量に換算され(ステップS13)、次いで、風袋引き処理部25により、換算手段24での換算後の質量値から風袋質量が差し引かれて(ステップS14)、物品Wの正味量分の質量のデータが出力される(ステップS15)。
【0064】
このようにして、ワーク検出の度にその物品Wの計量情報として正味量分の質量データが取得される。
【0065】
また、各ワークについて、風袋引き処理部25による風袋引き後の質量データが得られる度に、表示部50での質量検査結果のメイン画面出力のため、図4に示す第1の出力制御が実行されるとともに、用途別出力のため、図5に示す第2の出力制御が実行される。
【0066】
図4に示す第1の出力制御では、計量対象の物品Wが計量コンベア22上にあり、風袋引き処理部25による風袋引き後の質量データが所定の計量周期で取得される度に、その所定ビット数の分解能を有する質量データが、検査結果出力用の第1の目量である検査目量で補正、例えば下位の所望桁の値を四捨五入等により検査目量単位に丸める端数処理を実行され(ステップS21)、その補正後の計量値である第1計量値が算出される。
【0067】
その第1計量値は、制御部40の用途別出力制御部44に取り込まれてメモリに順次記憶されるとともに、今回の計量期間中の記憶値に対する平均値計算等が実行される(ステップS22)。
【0068】
次いで、計量中の物品Wについての選別判定手段45の判定結果が参照され(ステップS23)、その選別判定結果を表すメイン画面出力情報が、検査目量に基づく質量検査結果と併せて生成されて(ステップS24)、表示部50にメイン画面表示情報として出力される(ステップS25)。
【0069】
一方、図5に示す第2の出力制御では、計量対象の物品Wが計量コンベア22上にあり、風袋引き処理部25による風袋引き後の質量データが所定の計量周期で取得される度に、その所定ビット数の分解能を有する質量データが、第1の目量より小さい第2の目量である実目量で補正、例えば最小位桁の値を四捨五入等により検査目量単位に丸める端数処理を実行され(ステップS31)、その補正後の計量値である第2計量値が算出される。
【0070】
その第2計量値は、第1の出力制御で得られる第1計量値と同様に、制御部40の用途別出力制御部44に取り込まれてメモリに順次記憶されるとともに、今回の計量期間中の記憶値(第2計量値)の平均値計算等が実行される(ステップS32)。
【0071】
ここで、計量対象の物品Wの第1計量値および第2計量値は、それぞれ用途別出力制御部44に予め設定された複数の用途に関連付ける情報(例えば、用途種別コード)を付加する等して、用途ごとに読み出し可能に記憶格納される。
【0072】
次いで、操作部48等からの出力要求、例えばメンテナンス等のための拡張表示用の表示出力要求や、充填機11に対する傾向制御用の測定信号出力要求等が発生したか否かが判別され(ステップS34)、そのような出力要求があれば(ステップS34でYESの場合)、用途別の出力、例えば充填機11への傾向制御出力M1や、外部の情報端末やプリンタ等への通信出力M2が、あるいは、メイン画面出力P1の画面出力に代わるサブ画面出力P2が生成され、表示部50に表示出力される(ステップS35)。
【0073】
このように、本実施形態の重量選別システム1においては、制御部40が、計量情報出力部である第1、第2計量値算出手段42、43からの表示出力または測定信号出力の用途種別に応じて、複数の目量のうちいずれかの目量を選択設定するので、第1、第2計量値算出手段42、43が、その出力の用途種別ごとに好適な目量での計量情報出力を行うことができることになり、用途別出力制御手段44により、質量検査用と傾向制御その他の工程管理用等の用途別に最適な計量値出力を行うことが可能となる。
【0074】
また、本実施形態では、第1計量値算出手段42により、計量信号Vに対応する計量値データを主たる目量である検査目量に基づいて丸め補正した第1の計量情報出力を実行させる一方、第2計量値算出手段43により、主たる目量より小さい予備の目量、例えば実目量に基づいて丸め補正した第2の計量情報出力を選択的に実行させる。したがって、計量器21による同一の計量信号Vに対し、主たる目量に基づく第1の計量情報と予備の目量に基づく第2の計量情報とを用途の異なる計量情報として生成可能となり、必要に応じて高計量精度の計量情報を出力可能となる。
【0075】
さらに、本実施形態においては、複数の目量が、検査目量と実目量とを含んでいるので、同一の計量信号Vに対し検査目量に基づく計量値表示用の計量情報と、それより分解能の高い実目量に基づく多用途の計量情報とを、いずれも生成可能となり、必要に応じて工程管理用その他に高計量精度の計量情報を出力可能となる。
【0076】
加えて、本実施形態では、計量部21での計量範囲を、第1の検査目量が適用される中・大質量用の第1の部分計量範囲とそれより小さい第2の検査目量が適用される小質量用の第2の部分計量範囲とに分割設定し、計量部で計量される質量に応じて、第1、第2の部分計量範囲のうちいずれか一範囲に適用される検査目量を選択設定するので、同一の計量器21に対してひょう量(使用計量範囲の上限値)および目量が異なる複数の計量範囲を持つ多目量はかりや手動選択による拡張表示が可能な複目量はかり等を容易に構成することが可能となる。
【0077】
また、本実施形態では、物品Wが、前段の物品処理装置である充填機11によって所定の重量値範囲内に充填または包装されており、制御部40の用途別出力制御手段44が、第2の計量情報出力を充填機11に出力するように構成されているので、充填機11での充填または包装処理後の計量値を基に、充填機11での充填処理を予めの質量設定値に追従させるように傾向制御することが可能となる。
【0078】
このように、本実施形態においては、質量検査用や工程管理用等といった用途ごとに最適な計量値出力を行うことのできる計量装置を提供することができる。
【0079】
なお、上述の一実施形態では、計量装置を前段の物品処理装置として充填機11を用いる重量選別システム1に適用するものとしたが、充填機を用いない重量選別システムにも適用可能である。例えば、所定数または所定種別の物品の組合せ質量がその許容範囲内となる被検査物の組合せを選別するような場合に、物品搬送方向と直交する方向に隣り合うよう並列する所定数の計量部での計量値を基に、許容範囲内の組合せ質量となる組合せ候補の被検査物の計量値を後段の包装装置やそれと協働する質量ラベル貼付機、傾向把握用の管理システムへの計量値誤差信号等、用途別の目量での出力とするようなことも考えられる。
【0080】
また、第1の目量や主たる目量を検査目量とし、第2の目量を特定計量範囲についての検査目量あるいは実目量としたが、多目量はかり機能を有する場合に、検査結果のメイン画面表示以外の用途について、計量範囲に応じて設定される大小の検査目量のうち大きい方の検査目量を本発明にいう第1の目量とし、小さい方の検査目量を本発明にいう第2の目量とすることができることや、その場合の計量の分解能に対応する実目量が第1、第2の(検査)目量よりも更に小さい目量となることも勿論である。
【0081】
さらに、上述の一実施形態では、用途別の出力制御をメイン画面出力用の第1の出力制御と工程管理用の第2の出力制御とに分けていたが、用途ごととしてもよいことはいうまでもない。さらに、用途ごと出力における計量値の目量との関連付けは、予め用途ごとの対応目量での丸め補正した計量値を準備しておき、出力要求が発生した段階で即座に出力可能とすることとしたが、出力要求に応じて対応目量での丸め補正を実行しつつ用途別出力を行うことができるのも勿論である。
【0082】
以上説明したように、本発明の計量装置は、質量検査用や工程管理用等といった用途ごとに最適な計量値出力を行うことのできるものであり、被検査物の質量を自動捕捉可能な計量装置全般に有用である。
【符号の説明】
【0083】
1 重量選別システム(計量装置)
10 前段ライン
11 充填機
12 前段コンベア
14 物品検知センサ
20 計量装置本体
21 計量器(計量部)
22 計量コンベア
23 A/D変換器
24 換算手段
25 風袋引き処理部
30 後段ライン
31 選別機
32 後段コンベア
40 制御部
41 データ取得手段
41a 部分計量範囲設定手段
42 第1計量値算出手段(計量情報出力部)
43 第2計量値算出手段(計量情報出力部)
44 用途別出力制御手段(出力制御部)
44a 目量選択手段
45 選別判定手段
46 設定入力手段
48 操作部
50 表示部
M1 傾向制御出力
M2 通信出力
P1 メイン画面出力
P2 サブ画面出力
V 計量信号
W 物品(被検査物)
図1
図2
図3
図4
図5