(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-131347(P2021-131347A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】電磁式振動計
(51)【国際特許分類】
G01H 11/02 20060101AFI20210813BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20210813BHJP
【FI】
G01H11/02 Z
F16F15/03 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2020-27871(P2020-27871)
(22)【出願日】2020年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】597103872
【氏名又は名称】倉橋護謨工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098202
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 信彦
(72)【発明者】
【氏名】野村 幸司
【テーマコード(参考)】
2G064
3J048
【Fターム(参考)】
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064BD08
2G064BD11
2G064BD12
3J048BC01
3J048BE09
3J048BF03
3J048EA07
(57)【要約】
【課題】同一構成の電磁式振動計間の出力電圧、減衰定数を容易に一致可能とする構造を提供することで、同一構成の電磁式振動計間に互換性をもたせる。
【解決手段】磁界中を導体が運動することにより振動を検出する電磁式振動計である。磁界中に運動可能に配される振子1に、第一巻線2aと、この第一巻線2aと電気的に絶縁された第二巻線2bとを備えている。前記第一巻線2aを含んだ回路5を、前記第一巻線2aと感度調整用の抵抗6とを並列に接続させたものとして、前記第一巻線2aにより出力を得るようにすると共に、前記第二巻線2bを含んだ回路7を、前記第二巻線2bと減衰定数調整用の抵抗8とを並列に接続させたものとして、前記第二巻線2bにより前記振子1の運動を減衰可能としてなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁界中を導体が運動することにより振動を検出する電磁式振動計であって、
磁界中に運動可能に配される振子に、第一巻線と、この第一巻線と電気的に絶縁された第二巻線とを備えており、
前記第一巻線を含んだ回路を、前記第一巻線と感度調整用の抵抗とを並列に接続させたものとして、前記第一巻線により出力を得るようにすると共に、
前記第二巻線を含んだ回路を、前記第二巻線と減衰定数調整用の抵抗とを並列に接続させたものとして、前記第二巻線により前記振子の運動を減衰可能としてなる、電磁式振動計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電磁式振動計の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
磁界中を導体が運動することにより振動を検出する電磁式振動計がある。
図2は、典型的な電磁式振動計の要部断面構成図である。
【0003】
図2中、符号1で示されるのは振子、符号1aで示されるのは前記振子1を構成する錘、符号1bで示されるのは前記振子1を構成するボビン部、符号1cで示されるのは振子1を構成するバネ、符号2で示されるのは前記ボビン部1bに巻かれた導体としての巻線、符号3で示されるのが振子1の支持体、符号3aで示されるのが支持体3側の一部となる永久磁石、符号3bで示されるのが前記永久磁石3aの一方の磁極側に添装される磁性体、符号3cで示されるのが前記永久磁石3bの他方の磁極側に添装される底部3dとこの底部3dを囲む周回状の立ち上がり部3eとを備えた磁性体である。
【0004】
前記磁性体3bと前記磁性体3cの立ち上がり部3eとの間に形成される同心円状の空隙4に磁界(その磁力線の向きを
図2において矢印で示す。)が形成され、この磁界中に前記巻線2が位置されている。
図2中、符号5で示されるのが、前記巻線2を含んだ回路であり、この回路5には巻線2と並列に抵抗6が接続され、この回路5から出力が得られるようになっている。
【0005】
以下では、
mを振子1の質量、
λを減衰に関する定数(制動力)、
kをバネ1cのばね定数、
hを減衰定数、
ωnを固有円振動数、
Bを磁束密度、
lを巻線2の長さ、
R1を巻線2の抵抗、
R2を巻線2に並列に接続される抵抗6
eiを巻線2の起電力
eoを出力電圧、
として説明する。
【0006】
図2において支持体3側が固定側、巻線1側が可動側とし、
図2の右側半分で説明する(
図2において矢印で示す磁力線の向きは紙面左から右)。振子1を構成する錘1aが上向きに速度vで運動した時に発生する電圧eiは、フレミングの右手の法則により、(1)式で示される。
【0007】
【数1】
【0008】
(1)式から、出力電圧は速度に比例する。電圧の発生する向きは、紙面手前から奥である。
【0009】
電磁式振動計では、前記回路5に並列に電気抵抗6を入れることにより電磁制動がかかり、振子1に減衰をかけることができる。抵抗6が並列に接続されることにより前記巻線2に電流iが流れる。巻線2に電流が流れることにより、今度は、フレミングの左手の法則により巻線2に速度vと反対の方向に力が発生する。
【0010】
流れる電流iは、(2)式で示される。
【0011】
【数2】
【0012】
発生する力は、(3)式で示される。
【0013】
【数3】
【0014】
(1)(2)(3)式より、(4)式が得られる。
【0015】
【数4】
【0016】
(4)式より発生する力λは、速度vに比例し、振子1の速度方向と逆に働くことから、振子1に制動(減衰)を与えられる。巻線2による減衰定数(h)は、h=λ/(2mωn)より(5)式となる。
【0017】
【数5】
【0018】
抵抗6を増減させることにより、減衰定数を調整することができる。抵抗6を接続した場合の出力電圧は、巻線2の抵抗と抵抗6により分割され(6)式により表される。
【0019】
【数6】
【0020】
前記(5)(6)式から、減衰定数、出力電圧ともに、巻線2に並列に接続する抵抗6で最終的に調整できるが、巻線2の抵抗(R1)、振子1の質量(m)、固有円振動数(ωn)、磁束密度(B)は同一構成の電磁式振動計においてバラツキがあり、同一構成の電磁式振動計間の減衰定数、出力電圧を一致させることは容易でない。
【0021】
振動測定の場合はその3成分(X、Y、Zの3方向)に対応した電磁式振動計が必要とされるなど、測定にあたっては複数の電磁式振動計が同時に使用される場合が多い。しかるに、
図2に示される従来の電磁式振動計は、互換性をもたせ難く、このため、収録装置側で各電磁式振動計に対する感度設定が必要となるといった面倒を強いられていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
そこで、この発明は、同一構成の電磁式振動計間の出力電圧、減衰定数を容易に一致可能とする構造を提供して、同一構成の電磁式振動計間に互換性をもたせることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
前記目的を達成するために、この発明にあっては、電磁式振動計を、磁界中を導体が運動することにより振動を検出する電磁式振動計であって、
磁界中に運動可能に配される振子に、第一巻線と、この第一巻線と電気的に絶縁された第二巻線とを備えており、
前記第一巻線を含んだ回路を、前記第一巻線と感度調整用の抵抗とを並列に接続させたものとして、前記第一巻線により出力を得るようにすると共に、
前記第二巻線を含んだ回路を、前記第二巻線と減衰定数調整用の抵抗とを並列に接続させたものとして、前記第二巻線により前記振子の運動を減衰可能としてなる、ものとした。
【発明の効果】
【0024】
この発明によれば、同一構成の電磁式振動計間の出力電圧、減衰定数を容易に一致させることができ、同一構成の電磁式振動計間に互換性をもたせることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、この発明の一実施の形態にかかる電磁式振動計の要部断面構成図である。
【
図2】
図2は、従来の電磁式振動計の要部断面構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、
図1に基づいて、この発明の典型的な実施の形態について、説明する。
図1は、この発明の一実施の形態にかかる電磁式振動計の要部を、これを構成する後述の振子1の移動方向に沿う向きで断面にして示している。
【0027】
この実施の形態にかかる電磁式振動計は、磁界中を導体が運動することにより振動を検出するものである。かかる運動には、後述の支持体3側が移動することによる相対的な運動も含む。
【0028】
かかる電磁式振動計は、前記磁界中に運動可能に配される振子1に、後述の第一巻線2aと、この第一巻線2aと電気的に絶縁された第二巻線2bとを備えている。
【0029】
また、かかる電磁式振動計は、前記第一巻線2aを含んだ後述の回路5を、前記第一巻線2aと感度調整用の抵抗6とを並列に接続させたものとして、前記第一巻線2aにより出力を得るようにすると共に、
前記第二巻線2bを含んだ後述の回路7を、前記第二巻線2bと減衰定数調整用の抵抗8とを並列に接続させたものとして、前記第二巻線2bにより前記振子1の運動を減衰可能としている。
【0030】
図1中、符号1で示されるのは振子、符号1aで示されるのは前記振子1を構成する錘、符号1bで示されるのは前記振子1を構成するボビン部、符号1cで示されるのは振子1を構成するバネ、符号2aで示されるのは前記ボビン部1bに巻かれた導体としての第一巻線、符号2bで示されるのは前記ボビン部1bに巻かれた導体としての第二巻線、符号3で示されるのが振子1の支持体、符号3aで示されるのが支持体3側の一部となる永久磁石、符号3bで示されるのが前記永久磁石3aの一方の磁極側に添装される磁性体、符号3cで示されるのが前記永久磁石3bの他方の磁極側に添装される底部3dとこの底部3dを囲む周回状の立ち上がり部3eとを備えた磁性体である。
【0031】
前記磁性体3bと前記磁性体3cの立ち上がり部3eとの間に形成される同心円状の空隙4に磁界(その磁力線の向きを
図1において矢印で示す。)が形成され、この磁界中に前記第一巻線2a及び第二巻線2bが位置されている。
【0032】
図1中、符号5で示されるのが、前記第一巻線2aを含んだ回路であり、この回路5には第一巻線2aと並列に抵抗6が接続され、この回路5から出力が得られるようになっている。
【0033】
また、
図1中、符号7で示されるのが、前記第二巻線2bを含んだ回路であり、この回路7には第二巻線2bと並列に抵抗8が接続されている。
【0034】
以下では、
mを振子1の質量、
λを減衰器4に関する定数(制動力)、
kをバネ1cのばね定数、
hを減衰定数、
ωnを固有円振動数、
Bを磁束密度、
lを第一巻線2aの長さ、
R1を第一巻線2aの抵抗、
R2を第一巻線2aに並列に接続される抵抗6、
eoを出力電圧、
lgを第二巻線2bの長さ、
R3を第二巻線2bの抵抗、
R4を第二巻線2bに並列に接続される抵抗8、
λgを第二巻線2bによる減衰力、
hgを第二巻線2bによる減衰定数、
として説明する。
【0035】
信号コイルによる出力電圧は、(7)式で示される。
【0037】
第二巻線2bによる減衰力(λg)は、(8)式で示される。
【0039】
第二巻線2bによる減衰定数(hg)は、(9)式で示される。
【0041】
振子1全体の減衰定数は、第一巻線2aの減衰定数と、振子1のボビン部1bを磁性材で構成した場合はこのボビン部1bの減衰定数と、第二巻線2bの減衰定数の和となる。
【0042】
以上から、電磁式振動計の出力電圧は第一巻線2aに並列に接続した抵抗6により、振子1に対する減衰定数は第二巻線2bに並列に接続した抵抗8により、互いに影響なく独立に設定できることが分かる。
【0043】
これにより、この実施の形態にかかる電磁式振動計によれば、同一構成の電磁式振動計間の出力電圧、減衰定数を容易に一致させることができ、同一構成の電磁式振動計間に互換性をもたせることが可能となる。
【0044】
以上に説明した実施の形態では、振子1の一つのボビン部1bに第一巻線2aと第二巻線2bとを一緒に巻いているが、振子1における第一巻線2aの巻線位置と異なる位置に第二巻線2bを巻くようにし、支持体3側には各巻線2a、2bに対応した磁界がそれぞれ形成されるようにするなど、電磁式振動計の具体的な形状、構造は、本発明の目的を達成し得る範囲で適宜変更して構わない。すなわち、本発明は以上に説明した実施態様に限定されるものではなく、本発明の目的を達成し得るすべての実施態様を含むものである。
【符号の説明】
【0045】
1 振子
1a 錘
1b ボビン部
1c バネ
2a 第一巻線
2b 第二巻線
3 支持体
3a 永久磁石
3b 磁性材
3c 磁性材
3d 底部
3e 立ち上がり部
4 空隙
5 回路
6 抵抗
7 回路
8 抵抗