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特開2021-131387試料に磁場を供給するためのシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-131387(P2021-131387A)
(43)【公開日】2021年9月9日
(54)【発明の名称】試料に磁場を供給するためのシステム
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/72 20060101AFI20210813BHJP
【FI】
   G01N27/72
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2021-23933(P2021-23933)
(22)【出願日】2021年2月18日
(31)【優先権主張番号】10 2020 104 497.6
(32)【優先日】2020年2月20日
(33)【優先権主張国】DE
(71)【出願人】
【識別番号】510093266
【氏名又は名称】アットキューブ システムズ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000970
【氏名又は名称】特許業務法人 楓国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー ドヴィナージ
(72)【発明者】
【氏名】アルミン シェニング
(72)【発明者】
【氏名】ルカ グラニャニエロ
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AB13
2G053BB11
2G053BC14
(57)【要約】      (修正有)
【課題】様々に設計された磁気光学実験が最高分解能で柔軟で容易に行われ得るシステムを提供する。
【解決手段】試料8に磁場を供給するためのシステムは、試料8と熱的に接触するための第1接触面1と、少なくとも1つの磁気要素4と熱的に接触する第2接触面2と、を備える。光学実験のための上述のアクセス可能性があり得るように、300Kステージ13の光学的アクセス12a、12b、12cと共に光軸に沿って配置される。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料(8)に磁場を供給するためのシステムであって、
前記試料(8)と熱的に接触するための第1接触面(1)と、
少なくとも1つの磁気要素(4、5)と熱的に接触する第2接触面(2)と、を備え、
さらに、少なくとも1つのさらに別の磁気要素(6)が前記第1接触面(1)と熱的に接触していることを特徴とするシステム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの磁気要素(4、5)は低温シールド(10)に固定され、
前記低温シールド(10)は前記第2接触面(2)と熱的に接触することを特徴とする、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
少なくとも1つのさらに別の磁気要素と熱的に接触する少なくとも1つの第3接触面が設けられることを特徴とする、請求項1又は2に記載のシステム。
【請求項4】
前記磁気要素(4、5)は制御ユニットに結合され、
前記制御ユニットは、所定の磁場パラメータに応じて前記磁気要素(4、5)に電流を印加することで、前記試料(8)に供給された磁場が前記所定の磁場パラメータを有するように設けられることを特徴とする、請求項1から3の何れかに記載のシステム。
【請求項5】
前記第2接触面(2)と熱的に接触し、前記磁気要素(4、5)と対をなして配置された少なくとも1つのさらに別の磁気要素(4、5)を特徴とし、
前記対をなして配置された磁気要素(4、5)は、それらによって生成され得る磁場が共通の軸を有するように、前記試料(8)に関して反対側に配置される、請求項1から4の何れかに記載のシステム。
【請求項6】
対をなして配置された磁気要素(4、5)の2つの対は、前記第2接触面(2)と熱的に接触し、前記それぞれ互いに対をなして配置された磁気要素(4、5)によって生成され得る前記磁場の軸が互いに垂直に延びるように配置されることを特徴とする、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記磁気要素(4、5、6)は、超伝導材料、特に高温超伝導体を備えることを特徴とする、請求項1から6の何れかに記載のシステム。
【請求項8】
前記磁気要素(4、5、6)は金属又は半金属を備えることを特徴とする、請求項1から7の何れかに記載のシステム。
【請求項9】
前記低温シールド(10)は、前記試料(8)を囲み、少なくとも1つの光学的アクセス開口(14a、14b、14c、14d)を設けられた周壁を備えることを特徴とする、請求項2から7の何れかに記載のシステム。
【請求項10】
請求項1から9の何れかに記載のシステムを有するテーブルであって、前記第1接触面(1)及び前記第2接触面(2)が前記テーブルのテーブルトップの領域に形成されるテーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は試料に磁場を供給するためのシステム及びテーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
高精度そしてそれに対応して非常に高感度の多くの光学実験、例えば最高分解能それ故に極めて高感度の超分解能光学顕微鏡法又はさらに量子光学の実験において、多数の光学構成要素(例えば、鏡、オブジェクト、コリメータ、絞り、照明要素)からなる複雑な測定装置は、光学テーブル上、又は光学ブレッドボードを有するフラットテーブルのような構造物上に配置される。測定精度は、振動、熱的効果又は電磁ノイズのような環境影響により制限される。従って、そのような多くの実験は、測定試料の位置において可能な限り低振動及び低温の条件下で行われる。
【0003】
さらに、磁気光学現象を調べるために、上述の条件に加えて、ターゲットを定めて磁場を印加できることも望ましい。このために、様々な方法が提案されている。例えば、光学試料の領域に磁場を生成するために、無冷媒のHTS磁石(HTS、高温超伝導体)を用いることが知られている。ここで、磁石は、試料を配置及び操作し得る孔の周りに配置される。この孔内を周囲温度が支配している。ここで、磁石は、磁気光学装置から機械的にそれを分離するために、冷却システムによって保持される(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Wolfus et al., “Compact HTS Cryogen-Free magnet for magneto-opticsResearch Setup”, IEEE Transactions on Applied Superconductivity, Vol. 15, No.2, June 2005
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、重要な課題は、調査試料を操作及び測定できるように、できるだけ容易で柔軟な調査試料へのアクセスを確保することである。
【0006】
本発明の目的は、様々に設計された磁気光学実験が最高分解能で柔軟で容易に行われ得る、冒頭で述べられた型のシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的は、請求項1の特徴を有するシステムによって達成される。本発明の有利な実施形態及び発展は従属請求項に詳細に述べられる。
【0008】
試料に磁場を供給するための本発明によるシステムは、試料と熱的に接触するための第1接触面と、少なくとも1つの磁気要素と熱的に接触する第2接触面と、を備える。さらに、今度は少なくとも1つのさらに別の磁気要素と熱的に接触する第3接触面がシステムに設けられ得る。その上、原則として、接触面及びそれらと熱的に接触する磁気要素の数は限定されない。
【0009】
磁気要素は能動的に又は受動的に磁場を生成するように形成される。特に、それは、電磁気要素として形成され又はそれを備えてもよく、例えばコイルを備えてもよい。以下でコイルに言及する場合、コイルに明示的に限定する特徴を文脈において明確に述べていない限り、異なる態様で形成された磁気要素又は電磁気要素の使用を制限することを意図していない。さらに、磁気要素は永久磁石(強磁性)材料でもよい。
【0010】
本発明において、磁気要素と試料の熱的分離が有利に達成される。磁気要素、特に電流を通すコイルの冷却は、第2接触面への直接又は間接の熱的結合を通じて行われ、従ってその必要条件に応じて調整され得るが、同時に、試料の温度は、第1接触面への直接又は間接の熱的結合を通じて調節され、従って実験の特定の必要条件に応じて選択されて任意に変更され得る。
【0011】
特に、第3接触面、及び原則として可能な全てのさらに別の接触面、並びに、それらの上に位置し、これらの接触面と熱的に接触する磁気要素は、試料から、さらに互いに熱的に分離されるように形成される。後者は、試料上に磁場を生成するための多種多様な磁気要素を組み合わせる可能性、及び、それぞれ独立に生成された磁場を加えて絶対磁場を形成し、従って場合によりそれを強める可能性を提供する。
【0012】
本発明の設計において、少なくとも1つの磁気要素は低温シールドに固定され、低温シールドは第2接触面と熱的に接触する。従って、特に、磁気要素は低温シールドを介して第2接触面と間接に熱的に接触する。有利に、磁気要素は、低温シールドへの熱的結合によって特に容易に冷却され得る。同様のことは、第3の接触面、及び原則として可能なさらに別の接触面に適用される。さらに、それは、試料に利用可能な体積を必要以上に大幅に減らすことを必要とせずに、試料の近くに非常に容易に配置され得る。さらに、比較的大きな設置空間が低温シールドの領域で磁気要素に利用可能であり、その結果、1つ以上の磁気要素が異なる態様で形成されて非常に柔軟に配置され得る。
【0013】
特に、第1及び第2接触面、場合によりさらに別の接触面、並びに、低温シールド、磁気要素、及び試料が、高真空条件下に、特に真空ベルジャーの下に配置されることが提供される。高真空によって、異なる温度の異なるオブジェクト及び領域間の断熱が達成される。
【0014】
システムは、例えば、試料が、第1接触面に熱的に結合し得る試料空間、特に試料ホルダ内に配置されるように形成され得る。これは、試料の熱的接触が、直接に、又は、さらに別の要素、例えば試料ホルダを介して間接に行われ得ることを意味する。次に、低温シールドは、試料又は試料ホルダの上に被せられ、それを、少なくとも側面で、第1及び第2接触面を有する底部表面を除いて、任意に全ての面で、囲むように形成され得る。その方法は、さらに別の磁気要素とのさらに別の接触面が存在する場合も同様である。同様に被せられた真空ベルジャーは真空領域を定め、空気がそこから吸い出され得る。低温シールドと第2接触面の熱的接触によって、シールドは特定の温度まで冷却され得る。同様に、さらに別の低温シールドとのさらに別の接触面は、典型的により高い温度まで冷却され得る。このような装置によれば、例えば、真空中で段階的に室温より低い温度まで低温シールドを冷却することで、試料の領域に特に低温を生成できる。試料に向かって、低温シールド、従って接触面及び磁気要素は、このような例において、連続的に低温に冷却され、試料ホルダ又は試料は最終的なさらに低い温度まで冷却される。
【0015】
さらに、個々の低温シールドが互いに及び真空ベルジャーに対して真空気密に設計されることが提供され得る。その進展において、真空ベルジャーと低温シールドは少なくとも2つの異なる空間の境界を定める。そこには、例えば、異なる圧力条件が生成され得、任意に異なるガス及びガス混合物が存在し得る。
【0016】
さらに、熱的分離は、特に、第1及び第2接触面、並びに原則として可能なさらに別の接触面を互いに分離することで達成され、その結果、異なる温度が設定され得る。第1、第2、及び原則として可能なさらに別の接触面に熱的に結合された要素間の熱的結合は、任意に必要な機械的結合を形成するために、例えば低い熱伝導率の材料を用いることで、可能な限り回避される。これにより、結果として生じる熱流は最小限にされる。さらに、真空は、試料と低温シールドを、同様に低温シールド同士を熱的に分離することに寄与する。
【0017】
そのシステムは数ある中でも次の点で公知の方法と異なる。即ち、室温で試料から遠く離れた真空ベルジャーの外側にも、試料のごく周囲の領域にも、特に試料と同じ温度ステージに、特に試料に磁場を印加するための少なくとも1つの磁気要素は設けられず、それぞれ少なくとも磁気要素と熱的に接触する、少なくとも1つのさらに別の接触面、同様に原則として可能なさらに別の接触面が設けられる。何よりも、磁気要素又は複数の磁気要素のそれぞれが試料のすぐ隣に配置されず及び/又は前述の第1接触面に熱的に接触しないので、例えば磁気要素を一定に冷却しながら特定の可変の温度範囲で試料の測定を行うために、試料と磁気要素の温度は別々に調整され得る。特に、その進展において、生成される磁場は、一定のままであり、温度変動による悪影響を受けない。これは、試料と要素の熱的分離を利用して、可能な実験の範囲を広げられることを意味する。
【0018】
その進展において、第1接触面によって、25Kより低い、好ましくは15Kより低い、さらに好ましくは10Kより低い、さらに好ましくは4Kまでの温度まで、試料、又は第1接触面と熱的に接触するさらに別のオブジェクトの冷却を達成できることが提供され得る。さらに、第1接触面によって、高々1.5K、好ましくは、高々1K、高々100mK、又は高々10mKの温度までの冷却を達成できる。その進展において、本発明は一般に特定の温度範囲に限定されない。有利に、その結果、非常に高感度の測定に対する熱的干渉源が大幅に低減され得る。
【0019】
さらに、第1接触面の熱的接触によって到達される温度が特定の値に調整され得ることが提供され得る。例えば、第1接触面の温度、従って同様に特にそれと熱的に接触する試料の温度は、100Kまで、好ましくは200Kまで、さらに好ましくは300Kまで、さらに好ましくは350Kまでの値に調節可能であり得る。特に、試料の温度はそれによって調節され得る。第1接触面は特に低温プレートとして形成され、それによって温度が特に特定の間隔内で調節され得る。
【0020】
さらに、その進展において、第2接触面によって、150Kより低い、好ましくは100Kより低い、さらに好ましくは70Kより低い、さらに好ましくは50Kまでの温度まで、低温シールド、従って同様に特にそれと熱的に接触する磁気要素の冷却を達成できることが提供され得る。特に、第2接触面は、特に磁場が生成されるときの電流による入熱がある場合に、磁気要素のこの温度がさらにその動作中に達成可能であるように、冷却ユニットによって冷却される。また、この冷却は、特に、第1接触面と熱的に接触する要素、特に試料が、100Kまで、好ましくは200Kまで、さらに好ましくは300Kまで、さらに好ましくは350Kまでの範囲の温度を有する場合に達成される。さらに、可能性のある第3接触面、及び原則として可能なさら別の接触面も、同様に、述べられた温度又は任意の所望の中間の温度まで冷却され得、その結果、調節された温度はそれぞれの磁気要素の動作条件を満たす。
【0021】
例えば、第1及び第2接触面は2つの温度ステージを提供する冷凍機に熱的に接続され得る。従って、第1及び第2接触面で到達される温度は、特に冷凍機によって提供され得る温度ステージに相当する。本発明において、第1及び第2接触面は、特に所謂「閉サイクルクライオクーラ」又は「閉サイクル冷凍機」(CCR)によって冷却され得る。第3接触面、及び原則として可能なさら別の接触面は、同様に、閉サイクル冷凍機によって、第3温度ステージ、又は原則として可能なさら別の温度ステージと熱的に接続され得る。その進展において、特に、真空ベルジャー、低温シールド、並びに、CCRによって冷却された、第1、第2、及び原則として可能なさら別の接触面を備える全体システムは、所謂「閉サイクルクライオスタット」を形成する。ここで、接触面は、熱伝導で冷却され、特に液体で又は類似の方法では冷却されない。
【0022】
さらに、閉サイクル冷凍機は、互いに熱的に絶縁された多数の接触面を提供する多数の他の冷却可能な手段と組み合わせられ得る。ここで、CCRと、ヘリウム4蒸発冷凍機、ヘリウムジュールトムソン減圧冷凍機、ヘリウム3/ヘリウム4希釈冷凍機、又は断熱消磁冷凍の原理を用いる磁気冷凍機との組み合わせが好ましい。熱的な機能上の原理、及び冷凍機同士の原則として可能なさらに別の組み合わせによって、少なくとも1つの磁気要素の熱的接触に使用され得る多数の接触面が本質的に可能となる。
【0023】
磁気要素は、例えば、低温シールドに直接に取り付けられてもよく、又は例えば固定装置によって間接に固定されてもよい。さらに、磁気要素と低温シールドは統合されたユニットとして形成され得る。さらに、それは、例えば電磁気要素として形成されてもよく、又はそれを備えてもよい。それは例えばコイル及び/又はコアを備え、それぞれの電磁気要素は原則として個別に又は一緒に低温シールドに固定され得る。特に、低温シールドは、磁気要素が、例えば固定されて取り付けられた磁気要素として、それと統合されるように形成される。この場合、システムを全体として組み立てるために、磁気要素と共に低温シールドを取り扱うことができるので、システムを有利に特に容易に形成できる。
【0024】
さらに、磁気要素は低温シールドに着脱可能に又は固定されて接続され得る。また、それは、例えば低温シールドの凹所又は開口への挿入によって、低温シールドに統合され得る。
【0025】
さらに別の設計において、磁気要素は制御ユニットに結合され、制御ユニットは、所定の磁場パラメータに応じて磁気要素に電流を印加することで、試料に供給された磁場が所定の磁場パラメータを有するように設けられる。特に、ここで、制御ユニットによって作動され得る複数の磁気要素が提供され得る。それにより、有利に、特に正確に定められた磁場に試料をさらすことができる。
【0026】
磁場パラメータは、例えば、特に特定の位置、特に試料の位置、又は定められた試料空間内における、磁場の方向、強さ及び/又は時間的変化に関連し得る。磁場は、時間と共に変化し得る、1、2又は3次元のベクトルとみなし得る。特に、複数の磁気要素の作動を通じて、試料に作用する磁場を定める特定の磁場ベクトルに対応する1つの磁場が、別々に生成及び調整され得る磁場のベクトルの重ね合わせによって生成され得る。所定の磁場パラメータは、様々な方法で、例えばユーザ入力を通じて取得されてもよく、又は、例えば所定の型の測定が行われている間、自動で決定されてもよい。
【0027】
さらに別の設計において、所定の温度値が、試料、磁気要素、及び/又は低温シールドに対してさらに調節される。このために、制御信号が、特に上述の制御ユニット又はさらに別の制御ユニットによって生成され、第1及び/又は第2接触面に接続されてそれぞれの接触面を介して温度制御又は冷却を提供する装置に送信される。その方法は、第3接触面、及び原則としてさらに別の接触面、並びにそれらと熱的に接触する磁気要素について同様であり得る。
【0028】
システムの実施形態において、特に、冷却が、所謂「閉サイクル」冷凍機(CCR)によって、第1及び/又は第2接触面を介して行われることが提供される。ここで、接触面の冷却は、冷媒を用いずに、熱伝導によって行われる。
【0029】
1つの発展において、システムは、第2接触面と熱的に接触し、磁気要素と対をなして配置された少なくとも1つのさらに別の磁気要素を備える。対をなして配置された磁気要素は、それらによって生成され得る磁場が共通の軸を有するように、試料に関して反対側に配置される。それにより、有利に、均一で強い磁場を特に容易に生成できる。
【0030】
さらに別の磁気要素は特に低温シールドと熱的に接触し得、第2接触面との熱的接触は特に低温シールドを介して間接に生成される。磁気要素は、特に低温シールドに関して反対側に配置され、それに固定され、及び/又はそれと熱的に接触する。
【0031】
特に、磁気要素は、例えば同心円状に又はヘルムホルツ構成で配置され得る2つのコイルを備える。従って、特に、コイル対のコイルによって生成された磁場は、同じ方向に進み、互いに強め合い、その結果、本質的に均一な磁場がコイル間に生成される。その進展において、特に、対をなして配置された2つの磁気要素が、試料に関して反対側に等距離に配置され、仮想の完全な円柱の側面上に本質的に置かれたコイルを備えることが提供され得る。特に、コイル軸は、例えばヘルムホルツ構成又は同心配置で上下に置かれた場合、試料を通って延びる。
【0032】
さらに、例えば試料の近くに大きな磁場勾配を生成するために、磁場が互いに反対方向に進むように生成されることが提供され得る。特に、上述のように配置されたコイル対は、コイルを通る電流によって生成された磁場が互いに向かい合うように作動され得る。これは特にアンチヘルムホルツ構成で達成される。
【0033】
磁気要素、及び任意にそれらに含まれるコイルの他の構成、特に、コイル径、磁気要素の整列、及び互いに対してずらされた配置のさらに別の組み合わせも同様に本発明に含まれる。
【0034】
1つの設計において、対をなして配置された磁気要素の2つの対は、第2接触面と熱的に接触し、それぞれ互いに対をなして配置された磁気要素によって生成され得る磁場の軸が互いに垂直に延びるように配置される。正確には、1つの対又は少なくとも2つの対が設けられてもよく、その結果、3つ以上の対も本発明に含まれる。それにより、有利に、生成される磁場を大きさ及び方向に関して特に容易に定めて調節できる。
【0035】
特に、磁気要素の2つの対は、低温シールドと熱的に接触し、及び/又はそれに固定される。
【0036】
特に、互いに対をなして配置された磁気要素は、均一な磁場が、要素間の領域、特に試料領域に生成されるように一緒に作動される。さらに、正確には、それぞれ互いに対をなして配置された磁気要素の2つの対が、それぞれ、特に共通のコイル軸と一致し得る磁気軸を定め得る。2つの対の磁気軸は、特に直角に互いに交差し得、従って平面を張り、その平面内で、ベクトル的にパラメータで表され得る様々な磁場が生成され得る。張られた平面は、特に、水平に、即ち特に低温シールドの軸に垂直に広がり得る。
【0037】
特に、互いに対をなして配置された磁気要素の少なくとも1つのさらに別の対が設けられ、さらに別の対によって生成され得る磁場の軸は磁気要素の2つの対の2つの軸に垂直に延びる。これは、さらに別の対によって定められた軸が、磁気要素の2つの対の磁気軸によって張られた平面に垂直に延び得ることを意味する。特に、述べられた軸は、x軸、y軸、及びz軸を表し得る。それらは、特に互いに垂直に配置され、直交座標系として理解される三次元座標系の軸を形成する。特に、磁気要素の2つの対の互いに垂直に延びる磁気軸によって張られた水平なx−y平面が定められる。その上、さらに別の磁気要素の対の磁気軸に沿って延びる鉛直なz軸が定められる。ここで、「鉛直」及び「水平」は地球の重力場に対して定義される。さらに、「水平」は、システムが配置されるテーブル面に平行であると定義され得る。さらに、「鉛直」は、試料ホルダ及び/又は低温シールドの長手方向軸に平行であると定義され得る。
【0038】
さらに、特に垂直に延びる磁気軸が割り当てられ得る少なくとも1つのさらに別の磁気要素は、第1接触面と熱的に接触する。それにより、さらに別の磁気要素は、有利に、試料と共に冷却され、とりわけ特に低い温度に到達し得る。
【0039】
この場合、低温シールドから熱的に分離されたさらに別の磁気要素は、それと熱的に結合された磁気要素に加えて、システムに設けられる。このため、第1接触面との熱的な接触状態での冷却によって、例えば、10Kより低い、好ましくは約4K以下、例えば高々1.5K、高々1K、高々100mK、又は高々10mKの温度が達成され得る。その進展において、本発明は一般に特定の温度範囲に限定されない。
【0040】
特に、さらに別の磁気要素は、それぞれ互いに対をなして配置された磁気要素によって生成され得る磁場に垂直な磁場を生成するように形成及び配置され得る。それにより、有利に、大きさ及び方向を有する所定の磁場ベクトルを表すことができる。
【0041】
特に、さらに別の磁気要素の対、例えばコイル対が設けられ得、その共通の軸は低温シールドと熱的に接触する1つ又は2つのコイル対の軸に垂直である。例えば、z軸に沿った磁場は第1接触面と接触する磁気要素によって生成され得るが、x−y平面内の磁場は特に低温シールドと熱的に接触するさらに別の磁気要素によって生成される。
【0042】
磁気要素の熱的接触は非常に低い温度まで冷却を可能にする。それに対応した低い温度が第1接触面との熱的接触によって到達される場合、例えば40Kより低い温度まで冷却を要する転移温度を有する超伝導体がこのために使用され得る。
【0043】
1つの発展において、磁気要素は、超伝導材料、特に高温超伝導体を備える。特に、超伝導材料は、低温シールドの動作温度より高い転移温度を有するように形成される。この場合、低温シールドをその動作温度まで冷却したときに超伝導状態に到達する。それにより、有利に、高磁場を生成できる。
【0044】
特に転移温度より低く冷却することで超伝導状態に至った超伝導体の場合、例えば超伝導コイル内の非常に大きな電流でさえ、電気抵抗によって引き起こされるだろうオーム加熱による強い発熱をもたらさない。従って、磁気要素、例えばコイルは、より小さく、特に電流強度に対してより小さい導体断面積を有するように設計され得る。さらに、望ましくない追加の入熱を最小限にし、電流によって引き起こされる発熱による損傷を回避するために、コイルのための追加の冷却の必要性はない。
【0045】
例えば、低温超伝導体(LTS)、例えばニオブチタン超伝導体が使用され得る。例えば、NbTi、Nb3Sn、Nb3Al、Nb3Ge、又はMgB2が超伝導体として使用され得る。それらの転移温度は、それぞれ、約9.25K、18.3K、18K、23.2K、及び39Kである。それぞれの材料の超伝導状態には転移温度より低い温度で到達する。MgB2は、その高い転移温度にもかかわらず、通常はLTSとみなされる。対照的に、高温超伝導体は、一般に、材料の転移温度が、約30K以上、例えば70K又は90Kより高く140Kまでの範囲にある場合に言及される。特に、第2世代の高温超伝導体が設けられ得る。
【0046】
さらに、1つの設計において、半導体材料が使用され得る。ここで、特に、所謂ワイル及びディラック半金属が本発明で利用され得る。ワイル半金属の一群からの材料の例は、NbP、TaP、NbAs、及びTaAsである。これらは、既に様々なやり方で、例えば、光素子、熱電材料として、又は他の状況で使用されている。
【0047】
特に、転移温度より低い温度まで磁気要素を冷却することは、第2接触面によって達成され得る。即ち、要素は、その材料が超伝導特性を帯びるように冷却され得る。
【0048】
1つの設計において、磁気要素は金属又は半金属を備える。それにより、有利に、低温シールドとの熱的接触、その結果として第2接触面との間接の熱的接触は、電流が大きい場合に生じる熱を散逸させ、それによって従来の電磁石で高磁場を生成できるように利用される。特に、公知の冷却装置の高い冷却能力がこの目的のために利用される。
【0049】
特に、非常に低い比抵抗及び非常に高い熱伝導率を有する材料が提供される。これは、例えば、銅、アルミニウム、白金、又は銀のような金属であり得る。しかし、ワイル及びディラック半金属も、例えば知られており、そのような利用に対して議論され得る。
【0050】
そのような磁気要素は一般に超伝導体よりも小さな磁場しか生成できないが、しかし、これらは利用の範囲に対して既に十分であり得る。さらに、そのような磁気要素は実質的により高い費用効率で製造され得る。
【0051】
さらに、一部に超伝導素子を備え、一部に従来の非超伝導素子を備える磁気要素の組み合わせが使用され得る。さらに、異なる超伝導素子、例えばLTSとHTSの組み合わせは、好ましくは、異なる接触面で実現され得る。
【0052】
さらに別の設計において、低温シールドは、試料を囲み、光学的アクセス開口を設けられ得る周壁を備える。壁は特に円筒状に形成され得る。さらに、それは、異なる形状の断面、例えば長方形状又は正方形状の断面を有し得る。それにより、有利に、低温シールドによって、特に、より高い温度で動作するさらに別の低温シールド、又はシステムを囲む室温の熱放射からの遮蔽効果を得ることができる。
【0053】
システムの内部、特に試料領域への光学的アクセスは、様々な方法で行われ得る。対物レンズ又はレンズを有する別の光学系が信号を内部及び/又は外部に結合できるように設けられ得る。従って、光信号及び光場は、例えば、試料にもたらされ、又は試料から到来するのを検出され得る。代替的に又は付加的に、様々な光学的アクセスが自由空間によって又はファイバを基にして実現され得る。
【0054】
1つの発展において、システムは第1接触面と熱的に接触するためのモジュールを備える。特に、モジュールは、例えば試料キャリアがその上に被せられ又は置かれることによって、試料キャリアを受け取るように設けられる。さらに、それは、例えば、試料キャリアがモジュールに統合されるという点で、試料キャリアに固定されて接続され得る。
【0055】
このモジュールは第1接触面に熱的に結合される。それが、特に低温を有するステージ、例えば4Kステージである場合、モジュールはそれに応じて冷却される。4Kステージを以下で議論する場合、これが特定の温度への限定を意味することを意図していない。特に、モジュールによって、例えば、高々1.5K、好ましくは高々1K、高々100mK、又は高々10mKのより低い温度に到達できる。さらに、モジュールは、磁気要素、例えば超伝導磁石を備え得る。その転移温度は、それがシステムに配置された場合に、その温度がその転移温度を下回るように選択される。さらに、モジュールの温度、従って同様に試料の温度は、例えば異なる温度での試料の特性を観察するために可変であることが提供され得る。
【0056】
システムのさらに別の設計では、低温シールドは、システムの他の要素、例えば試料キャリアを有するモジュールから離れて形成され、システム内でそれから熱的に絶縁されたモジュールとして形成され得る。このさらに別のモジュールは特に第2接触面と熱的に接触する。
【0057】
低温シールドを有するモジュールは例えば対物レンズ要素を備え得る。その結果、対物レンズ要素は同様に第1接触面に直接又は間接に熱的に結合される。例えば、光信号は対物レンズ要素を通って試料に及び/又は試料から測定センサに伝達され得るので、対物レンズ要素は、特に、試料への光学的アクセスを可能にするように形成及び配置される。
【0058】
モジュールへの対物レンズ要素の統合は特に試料に近い配置を可能にする。その結果、特に高い分解能も高い開口数により達成され得る。さらに、試料に近い配置は、特に高い集光効率が達成されるという利点を有する。即ち、特に多数の光子が試料から対物レンズ要素に到達して検出され得る。これは、特に、例えば単一光子源からの弱い信号の検出において重要である。公知のシステムにおいて、真空チャンバ内に配置され、場合により、さらに別の要素、例えば電磁石で囲まれた試料からの短い距離を、対物レンズに対して、外側から得ることはしばしば困難である。対物レンズ要素はモジュール内に配置されるので、対物レンズは、真空チャンバ内に配置され、必要かもしれない任意のさらに別の装置と共に収容され得る。
【0059】
対物レンズ要素に代えて又は加えて、試料への電磁放射の供給及び/又は試料からの電磁放射の検出のための光学的アクセスを可能にする他の装置が存在し得る。例えば、自由空間光学系又はファイバを基にした光学的アクセスが設けられ得る。
【0060】
本発明の設計において、冷却が第2接触面によって行われ、第1接触面の場合より高い温度レベルに到達し得る。特に、第1接触面が、それによって第2接触面の場合より強い冷却を達成できるように設けられることが提供され得る。例えば、さらに別のモジュールは40K又は50Kステージとして形成される。それは、4Kステージとして形成されたモジュールを囲み、1つには周囲の室温からそれを遮蔽し、もう1つには熱的に分離される。40Kステージ又は50Kステージとしての記載も限定であることを意図しておらず、むしろ、様々な温度レベルに到達し得る。これは、異なるモジュール又はステージの温度が、実質的に、又は少なくとも特定の温度範囲内で、互いに無関係に調節及び変更され得ることを意味する。例えば、低温シールドと熱的に接触する超伝導磁気要素は、転移温度より低い温度に不変に保たれ得るが、低温シールド内に配置されたモジュールの温度、特に試料キャリア又は試料の温度は変更される。
【0061】
さらに、システムは、完全に又は部分的に、固定されて又は着脱可能に組み立てられた要素として形成され得る。その結果、有利に、高い統合度が達成される。特に、運転中に周囲に面し、例えば周囲温度を有する真空ベルジャーと、低温シールドとが互いに接続された、組み立てられた要素が設けられ得る。そして、この組み立てられた要素を例えば試料ホルダの上に載置することでシステムを得ることができる。さらに、組み立てられた要素は、真空ベルジャー内に配置されたシステムの構成要素を備え得る。運転のために、そのような組み立てられた要素は、例えば、対応する構成要素が正しい接触面と熱的に接触するように、第1及び第2接触面上に配置される。
【0062】
本発明によるテーブルは上記に従って形成されたシステムを備え、第1接触面及び第2接触面がテーブルのテーブルトップの領域に形成される。それにより、有利に、磁気光学実験のさらに別の構成要素とのシステムの特に高い統合度を得ることができる。さらに、特に容易で安全な運転がこれによって可能となり、環境からの振動及び他の妨害をさらに防止できる。
【0063】
テーブルにおける統合は、特に、テーブル上のオブジェクト、例えば実験装置の部品が位置及び整列について接触面に対して調整及び調節され得るように行われる。
【0064】
テーブルは特に光学テーブルとして形成される。それは、テーブル周囲の振動の、テーブル脚を経由した、テーブルトップ及び/又はテーブルトップに配置されたオブジェクトへの伝搬を減衰させる少なくとも1つの減衰装置を設けられ得る。光学テーブルのテーブルトップは、一般に、実験で使用される要素のための固定点を備え、システムは1つ以上のそのような固定点に固定され得る。
【0065】
さらに、テーブル、特にテーブルトップには、開口が形成され得る。システムはそれに挿入される。
【0066】
本発明の発展において、システムは少なくとも部分的にテーブルに統合される。例えば、特に光学テーブルのテーブルトップは、第1及び第2接触面、又は原則として可能なさらに別の接触面が配置された開口を有し得る。システムのさらに別の要素、特に真空ベルジャー、低温シールド、及び試料ホルダは、相応に第1又は第2接触面と熱的に接触し、特に例えばネジによってテーブルトップに着脱可能に固定される。
【0067】
試料に磁場を供給するための本発明によるシステムを運転する方法において、試料と熱的に接触する第1接触面は第1温度に冷却される。低温シールドと熱的に接触する第2接触面は第2温度に冷却される。特に、第1及び第2温度は周囲温度より低く、例えば、第1温度は、10Kより低く、好ましくは4Kであり、例えば、第2温度は、70Kより低く、好ましくは50K又は40Kである。その進展において、低温シールドは磁気要素と熱的に接触する。特に、磁気要素は、所定の磁気パラメータを有する磁場が試料の領域に生成されるように制御ユニットによって作動される。
【0068】
その方法は、特に上で説明された本発明によるシステムを運転するために使用され、従って同様の利点を有する。
【0069】
本発明は、添付された図面を参照して以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0070】
図1】本発明によるシステムの第1実施例の側面図である。
図2】本発明によるシステムの第1実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0071】
本発明によるシステムの実施例が図1及び図2を参照して説明される。
【0072】
システムの実施例は、図2に示された断面図において異なるハッチング線で表現された3つのステージで構成される。外側のステージは、以下で「300Kステージ」13と称されるが、モジュール13として形成され、ほぼ現在の周囲温度を有する。典型的な室温は、例えば300K前後の範囲で変化するが、これに限定されない。
【0073】
300Kステージ13は鐘のように形成され、それは、さらに別の要素の上に被せられ、底部表面に接して密閉される。利用状況の中で、「鐘」は状況に応じて「ドーム」又は「チャンバ」とも称されるような構造物を意味する。これにより、300Kステージ13内から空気を吸い出して高真空を生成できる。真空ポンプのための適切な接続は、例えばシステムの底部領域に設けられ、ここでより詳細に説明されない。300Kステージ13内の真空によって、その内部の全ての要素の断熱が達成され、その結果、熱エネルギーの移動は本質的に熱放射及び/又は要素の直接の機械的接触によってしか起こらない。300Kステージ13の基部3は、底部表面に、例えば光学テーブルのテーブルトップにネジで又は別の方法で固定され得る。
【0074】
さらに、300Kステージ13が光学的アクセス12a、12b、12cを有することが提供される。それらは、例えばガラスを嵌められた開口として形成され、真空中への空気の侵入に対抗する。示されたものの中に見えないさらに別の光学的アクセスも同様に設けられる。さらに別の実施例において、光学的アクセスは、異なる数、型、及び形状で設けられ得る。光学的アクセス12a、12b、12cを通じて、例えばレーザビームを用いた結合によって300Kステージ13の内部に密かに到達でき、及び/又は光が内側から外側に通過でき、その結果、例えば外部から光学的測定を行うことができる。
【0075】
300Kステージ13内には、特定の温度に限定されることなく、以下で「50Kステージ」10と称されるさらに別のモジュール10が設けられる。実施例において、50Kステージ10は、300Kステージ13の内部に、より低温のステージ領域を定めることができるように、低温シールド10として働く。低温シールドは、周囲温度よりはるかに低い温度、例えば50Kまで冷却されるので(しかし、本発明はこの値に限定されない)、低温シールド10によって囲まれた領域は、外気温から遮蔽され、より容易にさらに低い温度まで冷却され得る。従って、例えば、低温シールド10によって囲まれたさらに別のモジュール11は、「4Kステージ」11として形成され、対応する温度、例えば4Kまで冷却され得る。しかし、実施例は本発明をこの値に限定しない。例えば、他の実施例では、「4Kステージ」11において、高々1.5K、好ましくは高々1K、高々100mK、又は高々10mKの温度にも到達し得る。
【0076】
50Kステージ10の冷却、本実施例では約50Kへの冷却は、底部領域内の第2接触面2との接触によって行われる。第2接触面2は、所定の温度が達せられるまで、熱エネルギーがその面との熱的接触によって取り出されるように、実施例において「閉サイクル冷凍機」(CCR)として形成された冷凍機(図示せず)に接続される。
【0077】
実施例において、50Kステージ10が光学的アクセス14a、14b、14cを備えることが提供される。それらは、システムの周囲から50Kステージ10によって囲まれた空間への例えば光学実験のための上述のアクセス可能性があり得るように、300Kステージ13の光学的アクセス12a、12b、12cと共に光軸に沿って配置される。ここでも、300Kステージ13に対して既に述べられたように、ここに示された実施例に示されていないさらに別の光学的アクセスが設けられ得る。
【0078】
実施例において、50Kステージ10内には、さらに別のモジュール11が設けられ、それは以下で「4Kステージ」11と称される。4Kステージ11は、第1接触面1と熱的に接触し、それによって冷却され、その冷却は上述の50Kステージ10の冷却と本質的に類似の方法で行われる。しかし、ここでは、はるかに低い温度、例えば10Kより低い温度、8K又は4Kより低い温度に到達し得る。
【0079】
実施例において、4Kステージ11は試料ホルダ7を備える。試料8は試料ホルダ7に配置される。試料ホルダ7は、試料8を操作するため、特に試料8を正しい場所に置くための(ここでより詳細に説明されない)アクチュエータを有する。試料ホルダ7は、それに保持された試料8を、光学的アクセス12a、12b、12c、14a、14b、14cを通じて、光学的影響が結合されて入り、及び/又は光信号が結合されて出ることができるような領域に置き得るように形成される。実施例において、試料ホルダ7は4Kステージ11と同じ温度まで冷却され、その結果、試料8もそれに応じて冷却される。
【0080】
実施例において、さらに、対物レンズ要素9が試料8に近接してそれに向けられるように50Kステージ10と熱的に接触して配置されることが提供される。50Kステージ10と接触する配置によって、対物レンズ要素9が試料8から熱的に分離されるという特別な利点が結果として生じる。これは、試料8の温度が変化する場合、例えば温度変化が実験条件の一部を形成する場合でさえ、これにより、例えば焦点合わせにおける温度に関連した変化又は他のドリフト現象が生じないことを意味する。
【0081】
実施例において、対物レンズ要素9は、例えば熱ドリフト及びそれによって引き起こされるデフォーカスを防止するために、又は異なる試料及び/又は実験配置に対してシステムを適合させるために、少なくとも1つのアクチュエータによって操作され得るように取り付けられる。その進展において、対物レンズ要素9の位置は特に鉛直なz方向において調節され得る。特に、対物レンズ要素9と試料8間の距離が調節される。しかし、さらに別の実施例において、代替的に又は付加的に、対物レンズ要素9の位置が、別のやり方で、特に試料8に対して、例えば水平なx−y平面内又は特定の方向において調節され得ることが提供され得る。さらに、対物レンズ要素9の位置は、別のやり方で変更可能であり、例えば、空間内の方向によって、又はシステムの軸に対する角度によって定められ得る。従って、システムの設計に応じて、例えば3つ空間的次元内において自由に又は特定の制限の下で、対物レンズ要素9の配置を操作できることが可能である。
【0082】
実施例において、対物レンズ要素9は上から鉛直に試料8に向けられるが、特に幾つかの対物レンズ要素9を用いた他の配置も考えられる。対物レンズ要素9は50Kステージ10の温度の領域における動作に適する。低温シールド10内の配置のために、対物レンズ要素9は有利に試料8に非常に近接して配置され得、それにより今度は高い開口数及びそれに対応する高分解能測定が可能になる。さらに、特に高い集光効率が可能になり、その結果、例えば単一光子源からの弱い光信号が検出及び測定され得る。対物レンズ要素9は、試料8から見て外方を向くその面が、50Kステージ10の光学的アクセス14a、及びさらに延長された範囲で300Kステージ13の光学的アクセス12aに対向するように配置される。これらの光学的アクセス14a、12aを通って、試料8への光信号は、対物レンズ要素9に結合され、試料8に向けられ得る。逆に、試料8からの光信号は、対物レンズ要素9を通って光学的アクセス14a、12aに向かい、例えばそこで検出され得る。
【0083】
さらに別の実施例において、対物レンズ要素9は、4Kステージ11と熱的に接触し得るか、4Kステージ11のモジュールに統合され得るか、又は別のやり方で配置され及び/又は熱的に接触し得る。
【0084】
さらに別の実施例において、対物レンズ要素9は設けられず、又は、それは、他のやり方で、例えばレンズ光学系なしに形成される。例えばファイバを基にした光学的アクセスが設けられ得、又は、試料への光ビームの自由なアクセスのため、若しくは試料からの光ビームの直接の検出のための光学系が設けられ得る。
【0085】
実施例において、磁気要素4、5、6が互いに垂直な3つの軸に沿って磁場を生成し得ることが提供される。磁気要素4、5、6は、この実施例において、コイル4、5、6を有する電磁気要素4、5、6として形成される。さらに別の実施例において、磁気要素4、5、6の少なくとも1つは、電磁石で形成されず、例えば永久磁石を用いて又は別のやり方で形成される。
【0086】
実施例において、磁場は、それぞれ互いに対をなして同心円状に配置されたコイル4、5、6によって、試料8の領域内で本質的に均一に形成され、重ね合わされた成分として形成されるように生成される。特に、コイル4、5、6の対はヘルムホルツ構成又は類似の構成で形成及び配置され得る。コイル4、5、6を通って伝導される電流の協調的な作動によって、広範囲のパラメータを有する磁場ベクトルが試料8の領域内に生成され得る。ここで重要なパラメータは例えば磁場強度及び磁場方向を含む。さらに、1つのパラメータは磁場の方向及び/又は強度の変化であり得、特にパラメータのうちの少なくとも1つの時間に関する1次導関数は予め定められる。
【0087】
実施例において、コイル4、5、6は超伝導材料を備える。その結果として、それらがそれぞれ使用される超伝導材料の転移温度より低く冷却された場合、コイル4、5、6は実質的に電気抵抗なしに電流を伝導でき、従って、非常に高い電流強度が、オーム加熱による実質的な加熱、場合によりコイル4、5、6の損傷に至ることなく、それらに印加され得るという利点が生じる。
【0088】
実施例において、コイル4、5の2つの対は、低温シールド10の外側に取り付けられ、熱的にそれに接続される。従って、実施例において、それらは約50Kの温度まで冷却される。コイル対はそれぞれ2つのコイル4、5からなる。コイル4、5は、試料8がそれらの共通の軸の領域に位置するように、ヘルムホルツ構成で互いに対向して配置される。低温シールド10に取り付けられたコイル4、5の対の軸は、互いに垂直であり、システムが構築された光学テーブルの平面と平行な平面内に配置される。以下では、それぞれx軸及びy軸に沿って延びる軸が想定されている。低温シールド10への熱的結合によって、コイル4、5は約50Kの温度に到達する。この場合にコイル4、5の超伝導材料として高温超伝導体が提供される。高温超伝導体は、この場合に既にそれらの転移温度より低いので、超伝導状態で使用され得る。
【0089】
図2に示される側面図において、本質的に50Kステージが外側から示され、コイル4は左側及び右側に示されているが、その図はそれらに垂直に配置されたコイル5の断面に直接に向けられている。コイル5の断面は、それが50Kステージに形成された光学的アクセス14dの1つの周りを通るように形成される。試料ホルダ9上の試料8は光学的アクセス14dを通して50Kステージ内に見えてもよい。
【0090】
実施例において、さらに別のコイル6の対が低温シールド10の内部に取り付けられることがさらに提供される。ここでも、コイル軸は、上下に置かれ、上述のx−y平面に垂直に延びる。以下で、この方向は「z軸」と解釈される。ヘルムホルツ構成が得られ、それによって、本質的に均一な磁場が試料8の領域内にz軸に沿って生成される。この場合でも、50Kへの冷却が低温シールド10との熱的接触によって達成され、高温超伝導体がコイル6の通電材料として提供される。高温超伝導体はこの場合に既にその転移温度より低い。従って、コイル6も超伝導状態で動作する。
【0091】
さらに別の実施例において、特にコイル6を備える磁気要素6は、4Kステージ11と熱的に接触し得るか、4Kステージ11のモジュールに統合され得るか、又は別のやり方で配置され及び/又は熱的に接触し得る。
【0092】
特に、対物レンズ要素9及び磁気要素6の両方は、z方向の磁場の生成のために、4Kステージ11と熱的に接触し、又は4Kステージ11に統合される。
【0093】
さらに別の実施例において、磁気要素4、5、6は、異なる構成及び組み合わせで、システムの様々なモジュール及びステージ10、11、13に熱的及び/又は機械的に結合され得る。特に、半導体材料を有する磁気要素4、5、6は、それぞれ転移温度を下回るために必要な温度が達せられ、対応する磁気要素4、5、6がそれらの超伝導状態をとるように、50Kステージ10又は4Kステージ11に熱的に結合される。さらに、磁気要素は300Kステージ13の外側に配置され得る。
【0094】
さらに別の実施例において、異なって形成された電磁気要素4、5、6が設けられ得る。例えば、コイルとしての構成以外の構成が使用され得、コイルの他の配置及び異なる材料が使用され得る。さらに、電磁気要素4、5、6は、異なる領域に配置され、熱的に接触し得る。例えば、少なくとも1つの電磁気要素が4Kステージ11と熱的に接触し得る。この場合、非常に低い転移温度を有する超伝導材料が特に使用され得る。さらに、少なくとも1つの電磁気要素が、周囲温度の領域に配置され、例えば300Kステージ13と熱的に接触し得、非超伝導材料が特に使用される。
【0095】
さらに別の実施例において、少なくとも1つの電磁気要素が、非超伝導材料、例えば銅を備え得る。この場合、例えば50Kステージとの熱的接触の場合、電気抵抗によって生じる熱を効率的に散逸させるために、50Kステージの冷却が利用され得、その結果、この場合でも、高磁場を生成できるように、比較的大きな電流を使用し得る。
【0096】
さらに別の実施例において、低温シールド10が300Kステージ13又は真空ベルジャーに対して真空気密に設計されることが提供され得る。その進展において、300Kステージ13及び低温シールド10は異なる空間の境界を定め、そこには、例えば、異なる圧力条件が生成され得、任意に異なるガス及びガス混合物が存在し得る。
【0097】
従って、交換ガス、例えばヘリウムが、定められた圧力で、低温シールドによって囲まれた空間に導入されることが提供され得る。これにより、例えば、第1接触面1、試料ホルダ7、及び試料8の間の特に均一な温度分布が達成され得る。特に、交換ガスは、第1接触面1と熱的に接触する述べられた構成要素間の温度勾配の発生を防止する。
【0098】
その上、交換ガスは、例えば対物レンズ要素9を通じてなされた測定の質を向上させ得、可能性のある試料8の帯電を低減又は妨げ得る。さらに、低温シールド内の超高真空を可能にする低温シールドの真空可能な設計によって、試料8への局所的な圧力がもう一度低減され得る。低温シールド10の真空気密な密閉は、ここで、とりわけ、特に低い圧力に到達するための条件をさらに改善する役目を果たし得る。
【0099】
さらに別の実施例において、300Kステージ13の真空ベルジャーによって、及び低温シールド10によって定められる領域に、圧力又は真空及びガスの様々な組み合わせが提供され得る。
【0100】
さらに別の実施例において、システムは光学テーブルに統合される。これは、真空ベルジャーとしての300Kステージがテーブルトップに固定され得るように、例えば円形状又は別の形状に形成され得る開口を有するテーブルトップを有する。固定のために、例えばネジによってテーブルトップに固定され得る基部3が使用され得る。50Kステージ10又は4Kステージ11のモジュール10、11を固定可能な手段も、それぞれテーブルに統合され得る。
【0101】
実施例において、テーブルは第1接触面1及び第2接触面2をさらに備え、これらは冷凍機に接続され、次にそれは光学テーブルに固定されて又は着脱可能に接続される。特に、ここで、テーブルと冷凍機間の振動減衰接続が提供される。
【0102】
さらに別の例示的な実施形態において、今度は少なくとも1つのさらに別の磁気要素と熱的に接触する第3接触面がシステム設けられ得る。さらに、接触面及びそれらと熱的に接触する磁気要素の数は原則として限定されない。
【符号の説明】
【0103】
1 第1接触面
2 第2接触面
3 基部
4 磁気要素、電磁気要素、コイル(x方向)
5 磁気要素、電磁気要素、コイル(y方向)
6 磁気要素、電磁気要素、コイル(z方向)
7 試料ホルダ
8 試料
9 対物レンズ要素
10 モジュール、低温シールド、50Kステージ
11 モジュール、4Kステージ
12a、12b、12c 光学的アクセス(300Kステージ)
13 モジュール、300Kステージ
14a、14b、14c、14d 光学的アクセス(50Kステージ)
図1
図2