【解決手段】熱輸送装置11は、メイン基板20における裏面20bに沿って広がり、裏面20bにおけるチップ34に対応する位置に接触する第1放熱板38と、実装面20aに沿って広がり、チップ34の表面に接触する第2放熱板40と、メイン基板20のスルーホール41を通り、第1放熱板38と第2放熱板40との隙間が所定幅Wになるように第1放熱板38と第2放熱板40とを固定する接続具42とを備える。接続具42は、第2放熱板40に形成された雄ネジ孔58を雄ネジ部44bが通るボルト44と、第1放熱板38に固定されてスルーホール41を通って立設し、雄ネジ部44bが螺合されるスタッド46とを備える。第2放熱板40は、スタッド46の端面46bとボルト44のヘッド部44aとによって固定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献2に記載の発明では、下層サブパッケージの電子部品に放熱部材を接触させているが、該放熱部材は下層サブパッケージと上層サブパッケージとの狭い隙間に介在させなければならず製造が困難である。また、既存のPoP構造に対してはこのような放熱部材を後付けで取り付けることはできない。
【0007】
発熱量が大きい発熱体を十分に放熱させるためには、放熱板を2枚設けることが考えられる。例えば、
図11の比較例に示すように基板500の上面に発熱体のチップ502が実装されている場合に第1放熱板504および第2放熱板506を設ける。第1放熱板504は、基板500におけるチップ502の裏面500aに沿って広がり、裏面500aにおけるチップ502に対応する位置に接触する。第2放熱板506は、実装面500bに沿って広がり、チップ502の表面に接触する。第1放熱板504および第2放熱板506は、それぞれ基板500に対してスタッド508a,508bによって固定される。このように第1放熱板504と第2放熱板506とを用いることにより、チップ502がPoP構造であっても適切に放熱させることができる。
【0008】
しかしながら、
図11に示す例では第1放熱板504が裏面500aに対してスタッド508aで固定されるとともに、第2放熱板506が実装面500bに対してスタッド508bで固定されていることから、高さ方向に2つのスタッド508a,508bが介在して高さ方向寸法が大きくなり薄型化の要請に反する。
【0009】
また、第1放熱板504および第2放熱板506をチップ502の上面およびその裏面相当部に対して適切に接触させるためには、各スタッド508a,508bをチップ502の近傍に配置することが望ましいが、これらのスタッド508a,508bは基板500に固定されることから該基板500には曲げストレスが加わり、チップ502の半田付け部に剥離などの接触不良が発生する懸念がある。
【0010】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、良好な放熱性を有し、薄型化が可能で、しかも基板に対してストレスを与えることのない熱輸送装置および電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明の第1態様に係る熱輸送装置は、基板上に実装された発熱体の熱を輸送する熱輸送装置であって、前記基板における前記発熱体の実装面と逆の裏面に沿って広がり、前記裏面における前記発熱体に対応する位置に熱接触する第1放熱板と、前記実装面に沿って広がり、前記発熱体の表面に熱接触する第2放熱板と、前記基板に形成されたスルーホールを通り、前記第1放熱板と前記第2放熱板との隙間が所定幅になるように前記第1放熱板と前記第2放熱板とを固定する接続具と、を備える。
【0012】
このような熱輸送装置では、第1放熱板と第2放熱板とにより良好な放熱性を有する。また、第1放熱板と第2放熱板とを固定する接続具は、基板に形成されたスルーホールを通っていることから実装面側と裏面側とで共通であることから薄型化が可能で、しかも基板に対してストレスを与えることがない。
【0013】
前記接続具は、前記第1放熱板および前記第2放熱板のいずれか一方に形成された雄ネジ孔を雄ネジ部が通るボルトと、他方に固定されて前記スルーホールを通って立設し、前記雄ネジ部が螺合されるスタッドと、を備え、前記第1放熱板および前記第2放熱板のうち前記雄ネジ孔の形成された一方は、前記スタッドの端面と前記ボルトのヘッド部とによって挟持されて固定されてもよい。
【0014】
前記接続具は、前記第1放熱板および前記第2放熱板のいずれか一方に形成された雄ネジ孔を雄ネジ部が通るボルトと、他方に形成された支柱孔を通って立設し、前記支柱孔に対して抜け止めされ、前記雄ネジ部が螺合されるスタッドと、を備え、前記第1放熱板および前記第2放熱板のうち前記雄ネジ孔が形成された一方は、前記スタッドの端面と前記ボルトのヘッド部とによって挟持されて固定されてもよい。
【0015】
前記第1放熱板および前記第2放熱板のうち前記雄ネジ孔が形成された一方に対して、一端が前記発熱体と熱接触する部分に固定され、前記ボルトが前記スタッドに螺合することにより他端が前記ヘッド部によって押圧されて弾性変位する板バネを備えていると、良好な熱接続状態となる。
【0016】
前記第1放熱板は、前記裏面における前記発熱体に対応する位置に熱接触し、前記スタッドが設けられる第1厚み部分と、前記第1厚み部分の側面に固定され、前記第1厚み部分よりも薄い第2厚み部分と、を備えてもよい。第2厚み部分は第1厚み部分よりも厚く、スタッドの支持に好適である。
【0017】
前記第2放熱板は、前記発熱体に熱接触する接触部が凸形状になっていていると良好な熱接続状態となる。
【0018】
前記発熱体はPoP構造であっても、好適な放熱性が得られる。
【0019】
また、本発明の第2態様に係る電子機器は、発熱体を備える電子機器であって、前記発熱体が実装された基板と、前記基板における前記発熱体の実装面と逆の裏面に沿って広がり、前記裏面における前記発熱体に対応する位置に熱接触する第1放熱板と、前記実装面に沿って広がり、前記発熱体の表面に熱接触する第2放熱板と、前記基板に形成されたスルーホールを通り、前記第1放熱板と前記第2放熱板との隙間が所定幅になるように前記第1放熱板と前記第2放熱板とを固定する接続具と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明の上記態様によれば、良好な放熱性を有し、薄型化が可能で、しかも基板に対してストレスを与えることのない熱輸送装置および電子機器を提供することを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に、本発明にかかる熱輸送装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係る電子機器10を閉じて収納形態とした状態を示した斜視図である。
図2は、
図1に示す電子機器10を開いて使用形態とした状態を模式的に示した斜視図である。
図3は、
図2に示す電子機器10の内部構造を模式的に示した平面図である。電子機器10は、本発明の一実施形態にかかる熱輸送装置11を内部に備えている。
【0024】
図1及び
図2に示すように、電子機器10は、2つの筐体部材12A及び12Bと、背表紙部材14と、ディスプレイ16とを備える。筐体部材12A及び12Bは、カバー18で覆われている。カバー18は、例えばポリウレタンである。本実施形態では電子機器10として本のように二つ折りに折り畳み可能なタブレット型PCを例示する。電子機器10は携帯電話、スマートフォン又は電子手帳等であってもよい。
【0025】
ディスプレイ16は、例えばタッチパネル式である。ディスプレイ16は、筐体部材12A,12Bを折り畳んだ際に一緒に折り畳み可能な構造である。ディスプレイ16は、例えば柔軟性の高いペーパー構造を持った有機EL(Electro Luminescence)等のフレキシブルディスプレイであり、筐体部材12A,12Bの開閉動作に伴って開閉する。ディスプレイ16は、折り畳み構造ではない液晶型で筐体部材12A,12Bのいずれか一方に設けられていてもよい。
【0026】
各筐体部材12A,12Bは、それぞれ背表紙部材14に対応する辺以外の3辺に側壁を起立形成した矩形の板状部材である。各筐体部材12A,12Bは、例えばステンレスやマグネシウム、アルミニウム等の金属板や炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂板で構成される。筐体部材12A,12Bの内面側には、支持プレートを介してディスプレイ16が固定される。筐体部材12A,12B間は、一対のヒンジ機構19,19を介して連結される。ヒンジ機構19は、筐体部材12A,12B間を
図1に示す収納形態と
図2に示す使用形態とに折り畳み可能に連結している。
図3中に1点鎖線で示す線Oは、筐体部材12A,12Bの折り畳み動作の中心となる折曲中心Oを示している。
【0027】
図3に示すように、筐体部材12Aの内面12Aaには、熱輸送装置11、メイン基板20、通信モジュール22およびSSD(Solid State Drive)24などが取付固定される。メイン基板20および熱輸送装置11は筐体部材12Aの内面12Aaにおいて広い面積を占めている。筐体部材12Aの隅には冷却ファン26が設けられている。筐体部材12Bの内面12Baには、サブ基板28、アンテナ30及びバッテリ装置32等が取付固定される。
【0028】
図4は、筐体部材12Aとその内部に設けられる構成部品との分解斜視図である。
図5は、筐体部材12Aとその内部に設けられる構成部品との斜視図である。以下の説明において、
図4、
図5におけるメイン基板20が配置される方向を上、筐体部材12Aが配置される方向を下とする。
【0029】
図4および
図5に示すように、メイン基板20の上面である実装面20aにはPoP構造のチップ34、チップセット36などが実装されている。チップ34は電子機器10に搭載された電子部品のうちで熱量が最大の発熱体である。熱輸送装置11はメイン基板20上に実装されたチップ34の熱を輸送するものであるが、メイン基板20に実装された他の発熱体(PoP構造に限らない)に対しても適用可能である。
【0030】
図6は、PoP構造であるチップ34の断面側面図である。チップ34は下層サブパッケージ34aと、上層サブパッケージ34bとから構成されている。下層サブパッケージ34aと上層サブパッケージ34bとの間の隙間は狭く、チップ34の高さ方向寸法は十分に小さい。
【0031】
下層サブパッケージ34aは、下層基板34aaと、半導体部品34abとを備える。下層基板34aaの下面には複数のハンダボール34acが設けられており、該ハンダボール34acがメイン基板20のパターンに対して電気的に接続される。半導体部品34abは、例えばCPU(Central Processing Unit)である。下層基板34aaと半導体部品34abとの間は複数のワイヤー34adによって接続されており信号伝達が行われる。半導体部品34abおよびワイヤー34adは樹脂34aeによって封止されている。
【0032】
上層サブパッケージ34bは、上層基板34baと、半導体部品34bbとを備える。上層祈願34baの下面にはハンダボール34bcが設けられており、該ハンダボール34bcが下層基板34aaのパターンに対して電気的に接続される。半導体部品34bbは、例えばメモリである。上層基板34baと半導体部品34bbとの間は複数のワイヤー34bdによって接続されており信号伝達が行われる。半導体部品34bbおよびワイヤー34bdは樹脂34bedによって封止されている。このようなチップ34は、下層サブパッケージ34aと上層サブパッケージ34bとが積層構造となっていることにより、メイン基板20を小型化することができる。
【0033】
図4および
図5に戻り、熱輸送装置11は、実装面20aと逆の裏面20bに沿って広がり、裏面20bにおけるチップ34の裏側に対応する位置に熱接触する第1放熱板38と、実装面20aに沿って広がり、チップ34の表面に熱接触する第2放熱板40と、メイン基板20に形成されたスルーホール41を通り、第1放熱板38と第2放熱板40との隙間が所定幅W(
図8参照)になるように第1放熱板38と第2放熱板40とを固定する接続具42とを備える。なお、熱接触とは伝熱可能なように接触することであり、直接的な接触以外にも伝熱体や伝熱用グリースなどを介して接触することを含む。
【0034】
スルーホール41及び接続具42は、チップ34の近くに3つずつほぼ等間隔で設けられている。熱輸送装置11の第1放熱板38および第2放熱板40は、平面視でメイン基板20よりも大きく設定されている。なお、メイン基板20では、チップ34を含む多くの電子部品が実装面20aに実装されているが、設計条件により裏面20bにもある程度の部品が実装されていてもよい。
【0035】
接続具42はボルト44とスタッド46とを備える。第2放熱板40には補助具48がカシメ固定されている。補助具48は第2放熱板40に固定される部材であるが、
図4では理解を容易にするために補助具48と第2放熱板40とを分離して示している。ボルト44、スタッド46および補助具48については後述する。
【0036】
第1放熱板38は、メイン基板20を介してチップ34と熱接続するヒートパイプ50と、ヒートパイプ50と熱接続して熱を放熱させるヒートスプレッダー54とを備えている。
【0037】
ヒートパイプ50は、例えば両端部を接合して内側に密閉空間を形成した金属管を潰した構成であり、その密閉空間内に封入した作動流体の相変化を利用して熱を高効率に輸送可能な熱輸送装置である。ヒートパイプ50は、一部がメイン基板20の裏面20bにおけるチップ34の裏側と熱接続するように配置され、端部50aが冷却ファン26の送風口に接続された冷却ファン26と熱伝達可能に接続されている。ヒートパイプ50は、伝熱板52を介してメイン基板20と熱接続するが、メイン基板20と直接的に接していてもよい。
【0038】
冷却ファン26は、端部50aの近傍に配置され、筐体部材12Aの一側面における通気孔12Aaおよび他の側面における通気孔12Abのいずれか一方から吸気して他方に排気し、ヒートパイプ50の熱を放出させる。
【0039】
ヒートスプレッダー54は、ヒートパイプ50における端部50a以外の部分を囲って固定されている第1厚み部分54aと、該第1厚み部分54aのほぼ全周を囲ってその側面に固定されている第2厚み部分54bとを有する。ヒートパイプ50と第1厚み部分54aとは同じ厚みである(
図8参照)。第2厚み部分54bは第1厚み部分54aよりも薄い(
図8参照)。ヒートスプレッダー54における端部50aが配置される側の辺は、ほぼ第1厚み部分54aだけで形成されている。
【0040】
第1厚み部分54aは第2厚み部分54bよりも厚いため、突出する端部50aを安定して支持可能である。ヒートパイプ50、第1厚み部分54aおよび第2厚み部分54bは内面12Aaに沿って広がっており、上下方向には重ならない。第1厚み部分54aはヒートパイプ50と同等かそれ以上の面積を有する。第2厚み部分54bは、第1厚み部分54aよりも面積が広い。
【0041】
ヒートパイプ50と第1厚み部分54aとは、例えばプレスや圧入によって固定され、接触している。ヒートパイプ50と第1厚み部分54aとの圧入は、例えば金属管と第1厚み部分54aの母材とをローラの転動によって同時に加圧し、金属管を潰してヒートパイプ50を形成するのと同時にその側面に対して第1厚み部分54aを圧入することができる。
【0042】
第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとは、例えばプレスや圧入によって固定され、接触している。第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとの境界は、ほぼ全周に亘って連続的に設けられた櫛歯状の噛み合い部で結合していてもよい。第2厚み部分54bの隅には、冷却ファン26を避ける切欠き50が形成されている。
【0043】
伝熱板52およびヒートスプレッダー54は伝熱性の高い金属板であって、例えばアルミニウム、銅、ステンレスまたはこれらの合金である。ヒートスプレッダー54の第1厚み部分54aと第2厚み部分54bとは、同じ材質でもよいし異なる材質でもよい。第2厚み部分54bよりも厚い第1厚み部分54aをアルミニウムにすると軽量化を図ることができる。第1厚み部分54aよりも薄い第2厚み部分54bを銅にすると高い伝熱性によって熱を広く拡散することができる。
【0044】
ヒートパイプ50は一部が伝熱板52を介してメイン基板20の裏面20bと熱接触してヒートスプレッダー54および冷却ファン26に伝熱する。ヒートスプレッダー54は十分に広い面積であり、ヒートパイプ50から受熱して放熱させる。また、ヒートパイプ50の端部50aが冷却ファン26から風を受けることにより、さらに冷却効果が高まる。ただし、熱条件によっては冷却ファン26を省略してもよい。
【0045】
第2放熱板40はヒートスプレッダーであり、例えば第2厚み部分54bと同厚で同材を適用することができる。第2放熱板40は、平面視で第1放熱板38とほぼ同じ形状となっており適度に広い面積を有する。第2放熱板40は下向きに凸形状の凸部56を備える。凸部56は、例えばプレス成型によって形成され、上方に開口する緩やかな略円錐台形状であって、底部56aおよびテーパ部56bを備える。凸部56の下面である底部56aはチップ34の上面に熱接触する。底部56aには補助具48がカシメ固定される。第2放熱板40には、凸部56の周囲に3つの雄ネジ孔58が形成されている。雄ネジ孔58は、スルーホール41およびスタッド46と同軸上にある。
【0046】
第2放熱板40は内面12Aaに設けられた複数のボス47bに対してビス49によって固定される。第1放熱板38は、上記のように接続具42によって第2放熱板40に固定される。メイン基板20は内面12Aaに設けられた複数のボス47Aaに対して図示しないビスによって固定されるが、第1放熱板38および第2放熱板40に対しては直接的には固定されていない。
【0047】
第2放熱板40は内面12Aaに設けられた複数のボス47bに対してビス49によって固定される。第1放熱板38は、上記のとおり補助具48によって第2放熱板40に固定される。メイン基板20は、内面12Aaに設けられた複数のボス47aに対して図示しないビスによって固定されるが、基本的に第1放熱板38および第2放熱板40に対しては直接固定されない。
【0048】
図7は、補助具48の斜視図である。補助具48は円板60と、3つのアーム62とを備える。補助具48は、例えばステンレス板をカットしてプレス成型することにより構成される。円板60は、凸部56(
図8参照)の底部56aより僅かに小さい円形であり、該底部56aに熱接触して固定される部分である。円板60は、例えば周方向で各アーム62の中間部分の3か所が底部56aに対してカシメ固定される。
【0049】
アーム62は、円板60の径方向の略中間部から緩い角度で斜め上方に突出する傾斜部62aと、該傾斜部62aから水平に突出する水平部62bと、該水平部62bから小さい下向き段差を介してさらに突出するボルト座62cとを備える。3つのアーム62は等間隔で放射状に形成されている。
【0050】
ボルト座62cには、ボルト44が回転可能に設けられている。ボルト座62cの上面にはヘッド部44aが設けられ、雄ネジ部44bは孔62d(
図8参照)を通ってボルト座62cよりも下方に突出している。雄ネジ部44bにはワッシャ64が脱落しないように嵌め込まれている。
【0051】
図8は、熱輸送装置11の断面側面図である。
図8〜
図10では、3本のアーム62のうち2本の中心に沿った断面を示している。
【0052】
図8に示すように、スタッド46は、第1厚み部分54aに設けられた圧入孔38aに対して圧入・固定されて上方に向かって立設している。スタッド46の第1放熱板38の上面からの突出量は規定の所定幅Wである。スタッド46はメイン基板20のスルーホール41を貫通している。なお、スタッド46が貫通するスルーホール41は、メイン基板20における回路パターンの一部として銅メッキ処理されていてもよいし、あるいは銅メッキ処理のない単なるスタッド46を通すだけの孔としてもよい。スルーホール41に銅メッキ処理がなされている場合には、スルーホール41およびスタッド46の少なくとも一方に絶縁被膜が設けられていてもよい。
【0053】
スタッド46は圧入孔38aに対して、例えばセレーション構造で結合されており、上下動不能でかつ回転不能に固定されている。スタッド46は、第2厚み部分54bと比較して厚い第1厚み部分54aに固定されていることから、固定しやすくかつ安定している。スルーホール41はスタッド46よりも大径であって、両者の間にはわずかな隙間が形成される。スタッド46には雌ネジ部46aが形成されている。
【0054】
ボルト44の雄ネジ部44bは、第2放熱板40に形成された雄ネジ孔58を通ってスタッド46の雌ネジ部46aに螺合している。雄ネジ孔58が形成された第2放熱板40は、ボルト座62cおよびワッシャ64を介し、スタッド46の端面46bとボルト44のヘッド部44aとによって挟持されて固定され、第1放熱板38と第2放熱板40との距離は所定幅Wになる。これにより、第2放熱板40の下向きの凸部56は、テーパ部56bがわずかに弾性変形し、底部56aがチップ34の上面に対して弾性的に当接する。
【0055】
また、アーム62は仮想線で示すように、ボルト44がスタッド46に螺合していない自然状態ではやや上方に位置しているが、ボルト44がスタッド46に螺合することにより弾性変形して押し下げられ、ボルト座62cはワッシャ64を介して第2放熱板40の上面に当接する。すなわち、アーム62の一端は、第2放熱板40におけるチップ34と熱接触する底部56aに固定され、他端は、ボルト44がスタッド46に螺合することによりヘッド部44aによって押圧されて弾性変位する。このようにアーム62は板バネとして作用する。アーム62はバネワッシャのように作用することから、ボルト44はスタッド46から抜けにくくなる。また、アーム62の板バネとしての作用により、円板60はチップ34に対してより一層押し付けられて隙間が発生しにくくなり、伝熱性が向上する。アーム62は等間隔で3本設けられていることから、バランスよく底部56aを押圧することができる。
【0056】
ところで、PoP構造であるチップ34の下層サブパッケージ34a(
図6参照)は、発熱量の大きいCPUであるが、上層サブパッケージ34bに覆われていることから単体では放熱性に劣る。これに対して、本実施形態にかかる熱輸送装置11および電子機器10においては、第1放熱板38および第2放熱板40によって良好な放熱性を実現し、チップ34が過度に昇温することを防止している。すなわち、第1放熱板38はメイン基板20の裏面20bにおけるチップ34の裏側に対応する位置に熱接触し、チップ34の熱をハンダボール34ac、メイン基板20および伝熱板52を介して受熱して放熱する。第1放熱板38は、チップ34の裏面部にヒートパイプ50が設けられており、しかもその回りには比較的厚い第1厚み部分54aが接続されていることから伝熱性が高い。さらに第1厚み部分54aの側面には広い第2厚み部分54bが接続されていることから放熱性が高い。
【0057】
一方、チップ34の上面には第2放熱板40の凸部56が当接しており、しかもテーパ部56bおよびアーム62の弾性によって適度に強く押し付けられていることから隙間がなくて伝熱性が高い。このようにして、熱輸送装置11および電子機器10では、メイン基板20に実装された発熱体であるチップ34に対して、上面側と下面側とから受熱および放熱することができ、チップ34が過度に昇温することを防止できる。したがって、チップ34として消費電力の大きい部品を適用することができる。
【0058】
また、第1放熱板38と第2放熱板40とはスタッド46によって適切な所定幅Wに維持されているが、該スタッド46はメイン基板20のスルーホール41に対して隙間をもって遊嵌していることから、メイン基板20にはストレスが加わらず、ハンダボール34acとメイン基板20との間での接触不良が発生しにくい。スタッド46とスルーホール41との隙間は、両者間に力が働かない程度の公差に設定してもよく、実質的にゼロでもよい。また、スタッド46はメイン基板20にストレスを加えないことから、チップ34の近傍に配置することができ、これにより第1放熱板38および第2放熱板40をチップ34に対して適切に熱接触させることができる。
【0059】
さらに、
図11を参照して説明したように、第1放熱板504および第2放熱板506がメイン基板500の両面から突出するスタッド508a,508bによって固定されているとすると、熱輸送装置の高さ方向寸法が大きくなってしまい、電子機器の薄型化要請に反する。これに対して本実施形態にかかる熱輸送装置11では、第1放熱板38と第2放熱板40とは、スルーホール41を貫通するスタッド46で支持されていることから、高さ方向寸法が小さく、電子機器10を薄型化することができる。
【0060】
図9は、第1変形例にかかる熱輸送装置11Aの断面側面図である。
図10は第2変形例にかかる熱輸送装置11Bの断面側面図である。熱輸送装置11A,11Bにおいて上記の熱輸送装置11と同様の構成要素については同符号を付してその詳細な説明を省略する。
【0061】
図9に示すように、第1変形例にかかる熱輸送装置11Aでは、上記のスタッド46に代えてスタッド46Aが設けられている。スタッド46Aの下端には抜け止めのフランジ46cが設けられている。スタッド46Aは、第1放熱板38に形成された支柱孔38aaを通って立設しており、雌ネジ部46aに対して雄ネジ部44bが螺合される。スタッド46Aは、支柱孔38aaに対してフランジ46cによって抜け止めされている。
【0062】
支柱孔38aaは上記の圧入孔38a(
図8参照)と同じ位置に形成されているが、スタッド46Aは支柱孔38aaよりも小径であり、圧入固定されない。また、スタッド46および支柱孔38aaは断面が非円形(例えば六角形)であって、スタッド46Aは第1放熱板38に対して回り止めがなされている。すなわち、スタッド46Aは、フランジ46cによる抜け止め規制の範囲内で上下動可能であり、かつ第1放熱板38に対して回転不能に設けられている。このような熱輸送装置11Aにおいては、上記の熱輸送装置11と同様に、第1放熱板38と第2放熱板40との距離が所定幅Wに維持される。したがって、第1放熱板38は伝熱板52を介してメイン基板20の裏面20bに当接するとともに、第2放熱板40はチップ34の上面に当接することから、受熱および放熱性に優れる。また、スタッド46Aはスルーホール41を貫通することから、メイン基板20にはストレスが加わらない。
【0063】
図10に示すように、第2変形例にかかる熱輸送装置11Bの構成要素は、基本的に上記の熱輸送装置11と同じであるが、第1放熱板38と第2放熱板40との位置が逆になっている。つまり、第1放熱板38はチップ34の上面に当接し、第2放熱板40は凸部56がメイン基板20の裏面20bにおけるチップ34の裏側相当部分に当接している。そして、第1放熱板38に固定されるスタッド46は下向きに突出し、ボルト44は雄ネジ部44bが上向きとなってスタッド46の雌ネジ部46aに螺合している。このような熱輸送装置11Bにおいても熱輸送装置11と同様の作用が得られる。
【0064】
換言すれば、ボルト44の雄ネジ部44bは、第1放熱板38および第2放熱板40のいずれか一方に形成された雄ネジ孔58を通り、スタッド46は、他方に固定されてメイン基板20のスルーホール41を通って立設し、雄ネジ部44bが螺合される構成となっていればよい。
【0065】
本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で自由に変更できることは勿論である。