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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-133263(P2021-133263A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】水浄化システム、および水浄化方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 3/10 20060101AFI20210816BHJP
   C02F 3/34 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   C02F3/10 Z
   C02F3/34 101D
【審査請求】未請求
【請求項の数】45
【出願形態】OL
【全頁数】29
(21)【出願番号】特願2020-28815(P2020-28815)
(22)【出願日】2020年2月21日
(71)【出願人】
【識別番号】302060926
【氏名又は名称】株式会社フジタ
(71)【出願人】
【識別番号】899000057
【氏名又は名称】学校法人日本大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】特許業務法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】倉澤 響
(72)【発明者】
【氏名】袋 昭太
(72)【発明者】
【氏名】横山 茂輝
(72)【発明者】
【氏名】松澤 大起
(72)【発明者】
【氏名】中野 和典
(72)【発明者】
【氏名】荒川 皓太
【テーマコード(参考)】
4D003
4D040
【Fターム(参考)】
4D003AA01
4D003AB02
4D003BA03
4D003EA14
4D003EA15
4D003EA16
4D003EA19
4D003EA22
4D003EA25
4D003EA30
4D003FA10
4D040BB32
4D040BB42
4D040BB72
4D040BB82
(57)【要約】
【課題】水を浄化するためのシステムと方法を提供すること。
【解決手段】このシステムは、処理槽を有し、処理槽は、鉄および/または鉄化合物が担持された多孔質炭化物、および嫌気性微生物と好気性微生物が含有される汚泥および/または担体を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水が供給されるように構成される。このシステムはさらに、処理槽に接続される酸素供給装置を含んでもよい。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄および/または鉄化合物が担持された多孔質炭化物、および嫌気性微生物と好気性微生物が含有される汚泥および/または担体を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水が供給されるように構成される処理槽を有する、水浄化システム。
【請求項2】
前記処理槽に接続される酸素供給装置をさらに含む、請求項1に記載の水浄化システム。
【請求項3】
前記酸素供給装置に接続されるノズルを前記処理槽内にさらに含む、請求項2に記載の水浄化システム。
【請求項4】
前記ノズルは、前記多孔質炭化物が形成するろ床の下に配置される、請求項3に記載の水浄化システム。
【請求項5】
前記ノズルは、前記多孔質炭化物が形成するろ床内部に配置される、請求項3に記載の水浄化システム。
【請求項6】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、および炭酸鉄(III)から選択される少なくとも1つ以上である、請求項1に記載の水浄化システム。
【請求項7】
鉄および/または鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物、および嫌気性微生物が含有される第1の担体および/または第1の汚泥を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水が供給されるように構成される第1の処理槽、
多孔質体、および好気性微生物が含有される第2の担体および/または第2の汚泥を収容し、前記第1の処理槽から前記被処理水が供給されるように構成される第2の処理槽、および
前記第1の処理槽で処理された前記被処理水に酸素含有ガスを供給するように構成される酸素供給装置を含む、水浄化システム。
【請求項8】
前記酸素供給装置に接続されるノズルを前記第2の処理槽内にさらに含む、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項9】
前記ノズルは、前記多孔質体が形成するろ床の下に配置される、請求項8に記載の水浄化システム。
【請求項10】
前記第1の処理槽から前記第2の処理槽に前記被処理水を輸送する輸送管をさらに備え、
前記酸素供給装置は、前記輸送管内で前記酸素含有ガスが上昇流を形成するように前記輸送管に接続される、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項11】
前記第2の処理槽は、前記被処理水を前記第1の処理槽に供給するようにさらに構成される、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項12】
嫌気性微生物および/または好気性微生物が含有される第3の担体もしくは第3の汚泥を収容し、前記被処理水が前記第2の処理槽から供給されるように構成される第3の処理槽をさらに含む、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項13】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、および炭酸鉄(III)から選択される少なくとも1つ以上である、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項14】
前記多孔質体は、炭化物である、請求項7に記載の水浄化システム。
【請求項15】
鉄および/または鉄化合物が担持され、嫌気性微生物が含有される第1の多孔質炭化物を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水が供給されるように構成される第1の処理槽、
好気性微生物が含有される多孔質体を収容し、前記第1の処理槽から前記被処理水が供給されるように構成される第2の処理槽、および
前記第1の処理槽で処理された前記被処理水に酸素含有ガスを供給するように構成される酸素供給装置を含む、水浄化システム。
【請求項16】
前記酸素供給装置に接続されるノズルを前記第2の処理槽内にさらに含む、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項17】
前記ノズルは、前記多孔質体が形成するろ床の下に配置される、請求項16に記載の水浄化システム。
【請求項18】
前記第1の処理槽から前記第2の処理槽に前記被処理水を輸送する輸送管をさらに備え、
前記酸素供給装置は、前記輸送管内で前記酸素含有ガスが上昇流を形成するように前記輸送管に接続される、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項19】
前記第2の処理槽は、前記被処理水を前記第1の処理槽に供給するようにさらに構成される、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項20】
嫌気性微生物および/または好気性微生物が含有される担体もしくは汚泥を収容し、前記被処理水が前記第2の処理槽から供給されるように構成される第3の処理槽をさらに含む、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項21】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、および炭酸鉄(III)から選択される少なくとも1つ以上である、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項22】
前記多孔質体は、炭化物である、請求項15に記載の水浄化システム。
【請求項23】
鉄および/または鉄化合物が担持された多孔質炭化物、および嫌気性微生物と好気性微生物が含有される汚泥もしくは担体が収容された処理槽に対し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水を供給することを含む、水浄化方法。
【請求項24】
前記処理槽において、前記被処理水に酸素含有ガスを供給することをさらに含む、請求項23に記載の水浄化方法。
【請求項25】
前記酸素含有ガスの供給は、断続的に行われる、請求項24に記載の水浄化方法。
【請求項26】
前記被処理水を前記処理槽に供給した後、前記被処理水を前記処理槽に貯留することをさらに含む、請求項23に記載の水浄化方法。
【請求項27】
前記被処理水は、3時間以上48時間以下の範囲から選択される時間、前記処理槽に貯留される、請求項26に記載の水浄化方法。
【請求項28】
前記被処理水の貯留後、前記被処理水を前記処理槽から排出し、3時間以上48時間以下の範囲から選択される時間後に、新たな被処理水を前記処理槽に供給することをさらに含む、請求項27に記載の水浄化方法。
【請求項29】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、炭酸鉄(III)から選択される少なくとも1つ以上である、請求項23に記載の水浄化方法。
【請求項30】
鉄および/または鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物、および嫌気性微生物が付着された第1の担体もしくは第1の汚泥を収容する第1の処理槽に、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水を供給すること、
多孔質体、および好気性微生物が含有される第2の担体もしくは第2の汚泥が収容された第2の処理槽に、前記被処理水を前記第1の処理槽からが供給すること、および
前記第1の処理槽で処理された前記被処理水に酸素含有ガスを供給することを含む、水浄化方法。
【請求項31】
前記酸素含有ガスの前記供給は、前記第2の処理槽内に配置されるノズルを介して行われる、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項32】
前記ノズルは、前記多孔質体が形成するろ床の下に配置される、請求項31に記載の水浄化方法。
【請求項33】
前記第1の処理槽から前記第2の処理槽への前記被処理水の前記供給は、前記第1の処理槽と前記第2の処理槽に接続される輸送管によって行われ、
前記酸素含有ガスは、前記輸送管内で前記酸素含有ガスが上昇流を形成するように前記輸送管に対して供給される、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項34】
前記被処理水を前記第2の処理槽から前記第1の処理槽に供給することをさらに含む、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項35】
嫌気性微生物および/または好気性微生物が含有される第3の担体もしくは第3の汚泥を収容する第3の処理槽に、前記被処理水を前記第2の処理槽から供給することをさらに含む、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項36】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、および炭酸鉄(III)から選択される少なくとも一つである、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項37】
前記多孔質体は、炭化物である、請求項30に記載の水浄化方法。
【請求項38】
鉄および/または鉄化合物が担持され、嫌気性微生物が含有される第1の多孔質炭化物を収容する第1の処理槽に、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる少なくとも一つを含む被処理水を供給すること、
好気性微生物が含有される多孔質体を収容する第2の処理槽に、前記被処理水を前記第1の処理槽から供給すること、および
前記第1の処理槽で処理された前記被処理水に酸素含有ガスを供給することを含む、水浄化方法。
【請求項39】
前記酸素含有ガスの前記供給は、前記第2の処理槽内に配置されるノズルを介して行われる、請求項38に記載の水浄化方法。
【請求項40】
前記ノズルは、前記多孔質体が形成するろ床の下に配置される、請求項39に記載の水浄化方法。
【請求項41】
前記第1の処理槽から前記第2の処理槽への前記被処理水の前記供給は、前記第1の処理槽と前記第2の処理槽に接続される輸送管によって行われ、
前記酸素含有ガスは、前記輸送管内で前記酸素含有ガスが上昇流を形成するように前記輸送管に対して供給される、請求項38に記載の水浄化方法。
【請求項42】
前記被処理水を前記第2の処理槽から前記第1の処理槽に供給することをさらに含む、請求項38に記載の水浄化方法。
【請求項43】
嫌気性微生物および/または好気性微生物が含有される第3の担体もしくは第3の汚泥を収容する第3の処理槽に、前記被処理水を前記第2の処理槽から供給することをさらに含む、請求項38に記載の水浄化方法。
【請求項44】
前記鉄化合物は、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、及び炭酸鉄(III)から選択される少なくとも一つである、請求項38に記載の水浄化方法。
【請求項45】
前記多孔質体は、炭化物である、請求項38に記載の水浄化方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態の一つは、水中に含まれる有機化合物、リン含有化合物、または窒素含有化合物を除去することで水を浄化するためのシステム、および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
活性炭やゼオライトなどの多孔質材料は、様々な物質を吸着することができるため、脱臭剤や脱色剤、脱水剤、触媒担持体などの様々な用途に用いられている。この多孔質炭化物に鉄を担持させた吸着材は、水質汚濁物質であるリンや窒素を含む化合物を吸着することが可能であることから、河川や湖沼の水質改善に有効に利用できることが知られている。また、リン含有化合物や窒素含有化合物を吸着した多孔質炭化物は肥料としても利用することができる。このため、例えばバイオマスに由来する多孔質炭化物を水質改善のための吸着材として使用し、その後土壌へ散布することで、植物の育成に寄与するだけでなく、植物によって固定化された二酸化炭素を大気中に放出することなく炭素という形で土壌へ貯留することが可能となる。したがってバイオマスから得られる多孔質炭化物吸着材は、大気中の温室効果ガスを固定化するための炭素貯留において重要な役割を担っている(特許文献1、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−75706号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】柴田晃、「地域振興のためのバイオマス簡易炭化と炭素貯留野菜COOL VEGETM」、高温学会誌、2011年3月、第37巻、第2号、p.37−42
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の一つは、水を浄化するためのシステムと方法を提供することを課題の一つとする。例えば本発明の実施形態の一つは、多孔質炭化物、嫌気性微生物、および好気性微生物を利用して種々の水質汚濁物質を除去することによって水を浄化するためのシステムと方法を提供することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態の一つは、水浄化システムである。この水浄化システムは処理槽を有し、処理槽は、鉄化合物が担持された多孔質炭化物、および嫌気性微生物と好気性微生物が含有された汚泥および/または担体を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物から選ばれる一つを含む被処理水が供給されるように構成される。
【0007】
本発明の実施形態の一つは、水浄化システムである。この水浄化システムは、第1の処理槽、第2の処理槽、および酸素供給装置を含む。第1の処理槽は、鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物、および嫌気性微生物が含有される第1の担体および/または第1の汚泥を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水が供給されるように構成される。第2の処理槽は、多孔質体、および好気性微生物が含有される第2の担体および/または第2の汚泥を収容し、第1の処理槽から被処理水が供給されるように構成される。酸素供給装置は、第1の処理槽で処理された被処理水に酸素含有ガスを供給するように構成される。
【0008】
本発明の実施形態の一つは、水浄化システムである。この水浄化システムは、第1の処理槽、第2の処理槽、および酸素供給装置を含む。第1の処理槽は、鉄化合物が担持され、嫌気性微生物が含有される第1の多孔質炭化物を収容し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水が供給されるように構成される。第2の処理槽は、好気性微生物が含有される多孔質体を収容し、第1の処理槽から被処理水が供給されるように構成される。酸素供給装置は、第1の処理槽で処理された被処理水に酸素含有ガスを供給するように構成される。
【0009】
本発明の実施形態の一つは、水浄化方法である。この水浄化方法は、鉄化合物が担持された多孔質炭化物、および嫌気性微生物と好気性微生物が含有される汚泥および/または担体が収容された処理槽に対し、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水を供給することを含む。
【0010】
本発明の実施形態の一つは、水浄化方法である。この水浄化方法は、鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物、および嫌気性微生物が含有される第1の担体もしくは第1の汚泥を収容する第1の処理槽に、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水を供給すること、多孔質体、および好気性微生物が含有される第2の担体および/または第2の汚泥が収容された第2の処理槽に、被処理水を第1の処理槽からが供給すること、および第1の処理槽で処理された被処理水に酸素含有ガスを供給することを含む。
【0011】
本発明の実施形態の一つは、水浄化方法である。この水浄化方法は、鉄化合物が担持され、嫌気性微生物が含有される第1の多孔質炭化物を収容する第1の処理槽に、少なくとも有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の一つを含む被処理水を供給すること、好気性微生物が含有される多孔質体を収容する第2の処理槽に、被処理水を第1の処理槽から供給すること、および第1の処理槽で処理された被処理水に酸素含有ガスを供給することを含む。
【発明の効果】
【0012】
本発明の実施形態により、下水などの汚染水の浄化を行うことで、河川、湖沼、海などの水域に適用可能な水浄化システムと水浄化方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムのブロック図。
図2】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの模式図。
図3】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの第2の処理槽の模式的断面図。
図4】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの第2の処理槽の模式的断面図。
図5】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの模式図。
図6】多孔質炭化物の製造方法を示すフローチャート。
図7】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの模式図。
図8】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの模式図。
図9】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムのブロック図と模式図。
図10】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムのブロック図と模式図。
図11】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムの模式図。
図12】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムを利用する肥料の製造方法を示すフローチャート。
図13】本発明の実施形態の一つに係る水浄化システムを利用する二酸化炭素の貯留を示す概念図。
図14】実施例と比較例で使用した処理槽の模式図。
図15】実施例と比較例における被処理水の酸化還元電位の経時変化。
図16】実施例と比較例における被処理水のT−P除去率の経時変化。
図17】実施例と比較例における被処理水のT−N除去率の経時変化。
図18】実施例と比較例における被処理水のCODCr除去率の経時変化。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の各実施形態について、図面等を参照しつつ説明する。ただし、本発明は、その要旨を逸脱しない範囲において様々な態様で実施することができ、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0015】
図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。本明細書と各図において、既出の図に関して説明したものと同様の機能を備えた要素には、同一の符号を付して、重複する説明を省略することがある。
【0016】
<第1実施形態>
本実施形態では、本発明の実施形態の一つに係る水浄化システム100、およびこの水浄化システム100を利用する水浄化方法を説明する。
【0017】
1.構成
水浄化システム100は、有機化合物、リン含有化合物、および窒素含有化合物の少なくとも一つを含む水(以下、被処理水と記す)から、これらの有機化合物、リン含有化合物、または窒素含有化合物を吸着または酸化もしくは還元することで除去し、被処理水を浄化する。水浄化システム100により、下水などの汚染水に含まれる水質汚濁物質として挙げられる有機化合物やリン含有化合物、または窒素含有化合物を効果的に除去し、河川や湖沼、海等の水域の浄水や水質改善を行うことができる。
【0018】
ここで、有機化合物とは、炭素を含む化合物であり、少なくとも一つの炭素は、少なくとも二つの原子と共有結合によって結合される化合物を指す。ただし、以下の有機態リン含有化合物や有機態窒素含有化合物は除かれる。リン含有化合物としては、無機態と有機態のリン含有化合物が挙げられ、これらはそれぞれ溶解性と不溶性のリン含有化合物に分類される。溶解性無機態リン含有化合物としては、オルトリン酸、メタリン酸、ピロリン酸、ポリリン酸が挙げられる。溶解性有機態リン含有化合物としては、リン酸エステルなどのリン脂質、農薬などが挙げられる。不溶性無機態リン含有化合物としては、カルシウムや鉄、アルミニウム、ナトリウム、カリウムなどの金属のリン酸塩が挙げられる。不溶性有機態リン含有化合物としては、バクテリアやプランクトンなどの生態あるいは死骸の構成成分が例示される。窒素含有化合物としては有機態窒素と無機態窒素が挙げられる。有機態窒素含有化合物としては、不溶性または溶解性のアミノ態窒素、蛋白態窒素が挙げられる。無機態窒素含有化合物としては、アンモニア、塩化アンモニウムや硫酸アンモニウム、硝酸アンモニウムなどアンモニウム塩、金属の硝酸塩や亜硝酸塩などの亜硝酸態窒素や硝酸態窒素が挙げられる。
【0019】
図1(A)は、本発明の本実施形態の一つに係る水浄化システム100のブロック図である。この図に示すように、水浄化システム100は、基本的な構成として、第1の処理槽110、第2の処理槽150、および酸素供給装置160を有する。第1の処理槽110と第2の処理槽150は互いに接続され、被処理水が第1の処理槽110を経て第2の処理槽150へ供給されるように水浄化システム100が構成される。酸素供給装置160は、第2の処理槽150に直接または間接的に酸素含有ガスを供給するように構成される。被処理水のすべて、または一部を第2の処理槽150から第1の処理槽110へ供給できるように水浄化システム100を構成してもよい。以下、より具体的な説明を、第1の処理槽110や第2の処理槽150の模式的な断面構造を含む図2を用いて行う。
【0020】
1−1.第1の処理槽
第1の処理槽110は、被処理水が最初に処理される反応槽であり、主な機能として、被処理水に含まれる有機化合物を吸着および/または分解すること、被処理水に少なくとも2価の鉄イオンを供給すること、および被処理水に含まれる硝酸イオンの脱窒を行うことなどが挙げられる。第1の処理槽110は、例えばガラスや石英、セラミック、コンクリート、あるいは高分子材料で形成することができる。高分子材料としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。ポリオレフィンは、ポリテトラフルオロエチレンなどの含フッ素ポリオレフィンでもよい。高分子材料には、ガラス繊維などのフィラーが混合されていてもよい。
【0021】
第1の処理槽110は、被処理水を供給するための給水口112を備えるとともに、被処理水を第2の処理槽150へ供給するための輸送機構を有する。この輸送機構に制約はなく、例えば図2に示すように、第1の処理槽110と第2の処理槽150を接続する輸送管114が挙げられる。輸送管114は、被処理水が重力の作用によって第1の処理槽110から第2の処理槽150へ供給されるよう、かつ、後述する第1の多孔質炭化物124と被処理水が十分に接触する時間を確保できるよう、その構造や位置を適宜調整すればよい。あるいは、図示しないバルブやポンプを輸送機構に追加し、被処理水を第1の処理槽110に貯留し、あるいは強制的に第1の処理槽110から第2の処理槽150へ供給してもよい。
【0022】
第1の処理槽110は、少なくとも鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物124を収容するように構成される。第1の多孔質炭化物124にはさらに、0価の鉄が担持されていてもよい。第1の多孔質炭化物124の詳細については後述する。図示しないが、第1の処理槽110はさらに、嫌気性微生物が含有される汚泥および/または担体を収容可能なように構成される。嫌気性微生物は、第1の多孔質炭化物124に含有されていてもよい。嫌気性微生物としては、硝酸塩還元菌、鉄還元菌、硫酸塩還元菌、酸生成菌、酢酸生成菌、メタン生成古細菌などが挙げられる。
【0023】
第1の多孔質炭化物124は水に浮揚しやすいため、被処理水が通過可能なメッシュ状のケース130内に第1の多孔質炭化物124を収容し、ケース130を第1の処理槽110内に設置することが好ましい。この場合、ケース130が被処理水中で浮揚して被処理水と第1の多孔質炭化物124が十分に接触できないことを防ぐため、第1の処理槽110には複数の開口を有する中蓋116を設けてもよい。あるいは図示しないが、ケース130が被処理水中で沈降するよう、ケース130にアンカーを接続してもよく、あるいは第1の処理槽110内にケース130を適宜固定してもよい。図示しないが、第1の処理槽110には、第1の多孔質炭化物124や担体を配置し、取り出すための開口または蓋が設けられる。また、第1の処理槽110は、被処理水を攪拌するための攪拌装置119を備えてもよい。攪拌装置119を用いて被処理水を攪拌することで、被処理水がより効率的に第1の多孔質炭化物124や嫌気性微生物と接触することができる。
【0024】
1−2.第2の処理槽
第2の処理槽150は、第1の処理槽110で処理された被処理水(以下、この被処理水を一次処理水と記す)を浄化するための反応槽であり、主な機構として、一次処理水に含まれる有機化合物を吸着および/または分解すること、第1の処理槽110で供給された2価の鉄イオンを酸化して3価の鉄イオンおよび/または鉄化合物を生成すること、3価の鉄イオンおよび/または鉄化合物と一次処理水中のリン含有化合物を反応させて生じるリン酸鉄などの不溶性生成物を吸着して除去すること、および窒素含有化合物である亜硝酸イオンやアンモニウムイオンを硝化することなどが挙げられる。第2の処理槽150も、第1の処理槽110で使用可能な材料で構成することができる。
【0025】
第2の処理槽150へ一次処理水を供給する方法は任意に選択される。上述したように、輸送管114を用いて第1の処理槽110と第2の処理槽150を接続し、第1の処理槽110の下部から第2の処理槽150の下部へ一次処理水を供給してもよい。あるいは図3に示すように、第2の処理槽150に給水口153と給水口153に接続されるノズル155を設け、ノズル155に設けられる複数の開口155aを介して一次処理水を散布してもよい。
【0026】
第2の処理槽150には、処理後の一次処理水(以下、第2の処理槽150で処理された一次処理水を二次処理水と記す)を排出するための排出口152が備えられる。図2に示すように、排出口152は第2の処理槽150の上部に設けられてもよいが、例えば図3に示すように、排出口152を第2の処理槽150の下部に設けてもよい。この場合には、図4に示すように、二次処理水を上方に引き上げるための配管158を設け、配管158を介して二次処理水を排出してもよい。
【0027】
第2の処理槽150はさらに、内部に多孔質体126を収容するように構成される(図2)。さらに第2の処理槽150は、図示しないが、好気性微生物が含有される汚泥および/または担体を収容可能なように構成される。好気性微生物は、多孔質体126に含有されていてもよい。多孔質体126の詳細については後述する。好気性微生物としては、例えばアンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌などの細菌や、ツリガネ虫、ワムシなどの原生動物などが挙げられるが、これに限られない。一次処理水中に含まれる有機化合物を酸化する、または窒素含有化合物を硝化する微生物であれば、好気性微生物として利用することができる。
【0028】
第1の処理槽110と同様、多孔質体126が水に浮揚する場合には、一次処理水が通過可能なメッシュ状のケース132内に多孔質体126を収容し、ケース132を第2の処理槽150内に設置することが好ましい。ケース132が一次処理水中で浮揚して一次処理水と多孔質体126が十分に接触できないことを防ぐため、第2の処理槽150には複数の開口を有する中蓋154を設けてもよい。あるいは図示しないが、ケース132が一次処理水中で沈降するようにケース132にアンカーを接続してもよく、あるいは第2の処理槽150内にケース132を適宜固定してもよい。図示しないが、第2の処理槽150にも、多孔質体126を配置し、取り出すための開口または蓋が設けられる。また、図示しないが、第2の処理槽150は、一次処理水を攪拌するための攪拌装置を備えてもよい。
【0029】
1−3.酸素供給装置
酸素供給装置160は、第2の処理槽150に直接、または間接的に酸素含有ガスを供給するように構成される。酸素含有ガスとしては、酸素でも空気でもよく、酸素含有ガス中における酸素濃度も任意に決定される。例えば酸素供給装置160は、酸素ガスまたは空気が貯蔵されたボンベ、ボンベと接続されるレギュレータを含んでもよい。あるいは空気を供給可能なコンプレッサーやブロワでもよい。
【0030】
酸素含有ガスの供給方法も任意に選択される。例えば、第2の処理槽150に供給される一次処理水中で酸素含有ガスをバブリングしてもよい。この場合には、例えば複数の開口(図示しない)を有するノズル162を酸素供給装置160に接続し、ノズル162を介して一次処理水に酸素含有ガスを供給してもよい(図2図4参照)。図示しないが、例えばノズル162をメンブレンタイプのディフューザとして構成してもよい。すなわち、複数の開口を覆うように多孔性膜を設け、多孔性膜を介して酸素含有ガスをバブリングしてもよい。水浄化システム100では、ノズル162は、多孔質体126が形成するろ床よりも下に配置される。これにより、多孔質体126のほぼ全てが酸素含有ガスと接触することができる。
【0031】
あるいは、図5に示すように、第1の処理槽110と第2の処理槽150を接続する輸送管114から酸素含有ガスを一次処理水に供給することで酸素含有ガスを間接的に第2の処理槽150に供給してもよい。この場合、輸送管114は第1の処理槽110の下部に設けられる排出口117と第2の処理槽150の上部に設けられる給水口153に接続され、酸素含有ガスは輸送管114内において上昇流を形成するように供給される。また、過剰な酸素含有ガスを排出するための排気口151が第2の処理槽150に設けられる。これにより、輸送管114内の一次処理水に比重差が形成され、輸送管114はエアリフトポンプとして機能する。その結果、酸素含有ガスを一次処理水に供給できると同時に、一次処理水を第2の処理槽150へ供給するための駆動力を得ることができる。なお、この場合においても、図示しないが、ポンプを併用してもよい。
【0032】
1−4.その他の構成
図2に示すように、第1の処理槽110と第2の処理槽150によって被処理水が処理され、二次処理水が生成する。この二次処理水は、直接最終処理水として利用してもよいが、水浄化システム100にポンプ174を加え、このポンプ174介して二次処理水の一部を再び第1の処理槽110や第2の処理槽150へ返送してもよい。この場合には、バルブ170、172を排出口152に接続し、これらのバルブ170、172の調整よって二次処理水の返送率(循環水量/被処理水量)を調節すればよい。なお、循環水量とは、第2の処理槽150から第1の処理槽110へ返送する被処理水の量であり、被処理水量は、第1の処理槽110によって処理された被処理水、すなわち一次処理水を第2の処理槽150へ供給する量である。
【0033】
詳細は後述するが、第2の処理槽150内では、亜硝酸、アンモニアやアンモニウム塩の硝化が行われる。すなわち、好気性微生物による作用によって窒素含有化合物に含まれる亜硝酸、アンモニアやアンモニウムイオンが硝酸イオンへ酸化される。二次処理水が再度第1の処理槽110に供給されて処理される場合には、この硝酸イオンが嫌気性微生物の作用によって窒素へ還元される。したがって、二次処理水を再度第1の処理槽110で処理することにより、被処理水中に含まれる窒素含有化合物が還元され、窒素として除去されることになる。
【0034】
任意の構成として、水浄化システム100には、第1の処理槽110や第2の処理槽150から流出する汚泥を沈殿させるための沈殿槽190を備えてもよい。沈殿槽190内で集められた汚泥は、再度第1の処理槽110や第2の処理槽150に戻されるよう、水浄化システム100を構成してもよい。
【0035】
2.水浄化方法
以下、水浄化システム100を用いる被処理水の浄化方法について述べる。
【0036】
2−1.第1の多孔質炭化物
第1の多孔質炭化物124は、炭素を主成分として有し、数nmから数十μmの断面径を有する細孔を備える多孔質材料である。上述したように、第1の多孔質炭化物124には鉄化合物が担持され、さらに0価の鉄が担持されていてもよい。第1の多孔質炭化物124は、例えばバイオマスなどの有機物の炭化による多孔質炭化物の形成、およびこの多孔質炭化物上への鉄化合物の担持によって作製することができる。以下、第1の多孔質炭化物124の作製方法について、図6に示すフローチャートに沿って述べる。
【0037】
(1)炭化
第1の多孔質炭化物124の原料の一つとして利用可能なバイオマスとしては、木に由来する材料が挙げられる。具体的には、板状や柱状の木材、間伐材、剪定廃材、建築廃木材、粉末状のおがくず、パーティクルボートなどの木製成形品が挙げられる。木の種類に制約はなく、スギやヒノキ、竹でもよい。あるいは籾殻、バガス、トウモロコシの軸や葉などの農業廃棄物、藁や麦わら、乾草などの農業副産物もバイオマスの一例として挙げられる。あるいは麻や亜麻、綿、サイザル麻、アバカ、ヤシ毛などの繊維の原料となる植物もバイオマスとして挙げられる。あるいは、バイオマスは海藻などの藻類でもよく、食品残渣や、動物の糞尿から得られるサイレージでもよい。
【0038】
バイオマスの炭化は、低酸素濃度の条件下でバイオマスを加熱することで行うことができる。炭化は公知の装置や方法を適用することで行うことができるため、詳細な説明は割愛する。
【0039】
(2)浸漬と焼成
次に、炭化によって得られる多孔質炭化物の表面や細孔内に鉄化合物を吸着および/または担持させる。具体的には、多孔質炭化物を鉄化合物を含む溶液、または懸濁液に浸漬して鉄化合物を多孔質炭化物に吸着および/または担持させる。鉄化合物としては、硫酸鉄(II)、硫酸鉄(III)(ポリ硫酸鉄も含む)、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、塩化鉄(II)、塩化鉄(III)、過酸化鉄(II)、過酸化鉄(III)、臭化鉄(II)、臭化鉄(III)、炭酸鉄(II)、炭酸鉄(III)などが典型例として挙げられる。
【0040】
次に、鉄化合物が吸着および/または担持された多孔質炭化物(鉄化合物含有炭化物)を還元性ガス雰囲気下で加熱する。加熱温度は、100℃以上900℃以下、500℃以上800℃以下、あるいは600℃以上750℃以下の範囲で適宜選択すればよい。加熱時間は、30分以上24時間以下、1時間以上12時間以下、あるいは1時間以上6時間以下の範囲から選択すればよい。これにより、浸漬において使用した溶媒を除去することができ、表面や細孔内に鉄化合物が含有された第1の多孔質炭化物124が得られる。上述した条件下における加熱により、鉄化合物の一部は還元的に熱分解して0価の鉄金属となり得るものの、担持された鉄化合物の大部分は2価または3価の鉄化合物、若しくはこれらの混合物として担持される。鉄化合物は、例えば、酸化鉄(II)、水酸化鉄(II)、塩化鉄(II)、硫化鉄(II)、硫酸鉄(II)、硝酸鉄(II)、過塩素酸鉄(II)、臭化鉄(II)、炭酸鉄(II)、酸化鉄(III )、水酸化鉄(III)、塩化鉄(III)、硫化鉄(III )、硫酸鉄(III)、硝酸鉄(III)、過塩素酸鉄(III)、臭化鉄(III)、炭酸鉄(III)、二硫化鉄として鉄化合物が担持される。
【0041】
第1の多孔質炭化物124に含まれる鉄の含有量は、担持された鉄化合物や鉄を含む第1の多孔質炭化物124の全質量に対して1質量%以上50質量%以下、3質量%以上30質量%以下、5質量%以上25質量%以下、または10質量%以上25質量%以下である。第1の多孔質炭化物124に含まれる鉄の含有量は、例えば誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP−OES)などの手法で求めることができる。
【0042】
第1の多孔質炭化物124の嵩比重は、0.05g/cm3以上0.8g/cm3以下、または0.1g/cm3以上0.5g/cm3以下である。
【0043】
2−2.担体
第1の処理槽110や第2の処理槽150に配置することができる担体としては、例えばポリエチレンやポリスチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニリデン、ポリ塩化ビニルなどのビニルポリマーに例示される高分子材料、あるいはコンクリートやガラスなどの無機材料を含む構造体である。その三次元構造は任意であり、例えば網状、筒状、円筒状、スポンジ状、球状、紐状、波板状など、様々な形状に担体を加工してもよい。より多くの好気性または嫌気性微生物が固着できるよう、大きな表面積を確保するための凹凸構造が表面に形成されていること好ましい。
【0044】
第1の処理槽110に配置される担体には、好気性または嫌気性微生物が生物膜として固着される。好気性または嫌気性微生物の固着方法としては、例えば接触酸化法や回転円板法、散水ろ床法、浸漬ろ床法などを適用すればよい。
【0045】
2−3.多孔質体
第2の処理槽150内に配置される多孔質体126としては、ゼオライトやシリカゲル、活性炭などの多孔質材料が挙げられる。あるいは、鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物124、あるいは鉄化合物が吸着される前の多孔質炭化物を多孔質体126として用いてもよい。
【0046】
2−4.被処理水の浄化
以下、本発明の実施形態の一つに係る水浄化システム100を利用する水の浄化方法について述べる。
【0047】
(1)一次処理
まず、被処理水を第1の処理槽110に供給する。第1の処理槽110では、主に以下の四つの現象が生じる。これにより、被処理水が一次処理水へ処理(一次処理)される。
【0048】
(a)有機化合物の分解
上述したように、第1の処理槽110には、第1の多孔質炭化物124、または担体および/または汚泥に含有される嫌気性微生物が含まれる。このため、被処理水中に含まれる種々の有機化合物は、第1の多孔質炭化物124の存在下、嫌気性微生物の作用を受け、二酸化炭素、ギ酸や酢酸、酪酸などの有機酸、メタンなどの低級炭化水素、アンモニアまたはアンモニウム塩、硫化水素などへ分解される。このメカニズムにより、被処理水から有機化合物を除去することができる。
【0049】
(b)2価の鉄イオンの溶出
嫌気性微生物には、少なくとも3価の鉄化合物を電子受容体として利用する鉄還元菌が含まれる。この鉄還元菌の作用を受け、第1の多孔質炭化物124に担持された3価の鉄化合物(例えば水酸化鉄(III)や酸化鉄(III))などが2価の鉄化合物へ還元される。2価の鉄化合物の水に対する溶解度は3価の鉄化合物のそれと比較して高いため、生成する2価の鉄化合物は一部が電離して2価の鉄イオンとして被処理水中に溶解する。なお、2価の鉄イオンの溶出メカニズムはこれに限られない。例えば、担持されている2価の鉄化合物が溶出するメカニズムも含まれる。あるいは、第1の多孔質炭化物124に0価の鉄が担持されている場合、被処理水中に含まれる酸、嫌気性微生物による有機化合物の分解によって生成する有機酸、あるいは嫌気性微生物が発生した二酸化炭素に由来する炭酸によっても0価の鉄が酸化され、2価の鉄イオンが溶出する。これらのメカニズムに従い、第1の処理槽110内の被処理水中に2価の鉄イオンが含まれることになる。
【0050】
(c)窒素含有化合物の脱窒
被処理水中に硝酸塩が含まれている場合には、嫌気性微生物が有する硝酸還元酵素、亜硝酸還元酵素や次亜硝酸還元酵素、亜酸化窒素還元酵素の作用によって硝酸イオン(NO3-)が亜硝酸イオン(NO2-)、一酸化窒素(NO)、一酸化二窒素(N2O)へと順次還元され、最終的には窒素(N2)へ還元される。このメカニズムにより、被処理水中の窒素含有化合物が窒素として除去される。
【0051】
(d)有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化
被処理水中に含まれる有機化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物は、嫌気性微生物が生育および増殖するために利用されるため、被処理水から有機化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物が除去される。
【0052】
(2)二次処理
次に、第1の処理槽110によって処理された被処理水、すなわち一次処理水を第2の処理槽150へ供給する。一次処理水の供給は連続的に行ってもよく、断続的に行ってもよい。すなわち、一定の流量で連続的に被処理水を第1の処理槽110へ供給しつつ、実質的に同一の流量で連続的に一次処理水を第2の処理槽150へ供給してもよい。あるいは、被処理水を第1の処理槽110へ供給し、一次処理水を第2の処理槽150へ供給することなく、一定時間被処理水を第1の処理槽110内で処理した後、第2の処理槽150へ一次処理水を供給してもよい(バッチ式)。バッチ式の場合には、一次処理水は一定時間第2の処理槽150内で貯留されて処理に供され、その後排出口152から二次処理水として排出される。引き続き、新たな被処理水が第1の処理槽110へ供給される。
【0053】
第2の処理槽150に供給される一次処理水に対し、酸素供給装置160を用いて酸素含有ガスを供給する。これにより、一次処理水に酸素を溶解させることができる。このような条件下では、第2の処理槽150において主に以下の四つの現象が生じる。
【0054】
(a)有機化合物の分解
上述したように、第2の処理槽150に含まれる多孔質体126、または担体もしくは汚泥には、好気性微生物が含有されている。このため、一次処理水中に含まれる種々の有機化合物は好気性微生物の作用を受け、二酸化炭素、アンモニアまたはアンモニウム塩、硫化水素などへ分解される。このメカニズムにより、第1の処理槽110で除去されずに残存する有機化合物を除去することができる。
【0055】
(b)リン含有化合物の吸着
上述したように、第2の処理槽150に供給される一次処理水には、酸素含有ガスが供給される。このため、一次処理水に含まれる2価の鉄イオンが酸素によって3価の鉄イオンへ酸化される。3価の鉄イオンは一次処理水中に含まれるリン含有化合物と反応し、リン酸鉄などの3価の鉄化合物を与えると考えられる。この生成物は水に対する溶解度が低く、多孔質体126に吸着される。あるいは、2価の鉄イオンが酸素によって溶解度の小さい3価の酸化鉄となり、多孔質体126に吸着する。この吸着した3価の酸化鉄がリン化合物の吸着サイトとして機能し、リン化合物を捕捉すると考えられる。このようなメカニズムにより、一次処理水中のリン含有化合物が多孔質体126に吸着され、除去される。
【0056】
(c)窒素含有化合物の硝化
好気性微生物の作用により有機化合物が分解され、アンモニアあるいはアンモニウム塩が生成する。この有機化合物に由来するアンモニアあるいはアンモニウム塩、あるいは一次処理水中に含まれているアンモニアあるいはアンモニウム塩はさらに、アンモニア酸化菌、亜硝酸酸化菌などの好気性微生物の作用によって硝化され、亜硝酸イオンを経て硝酸イオンへ酸化される。一次処理水を再度第1の処理槽110へ供給しない場合には、二次処理水には硝酸イオンに由来する硝酸塩や硝酸が含まれる。したがって、この場合には、二次処理水を水酸化ナトリウムや水酸化カリウム、炭酸ナトリウムや炭酸水素ナトリウムなどの塩基を用いて中和してもよい。
【0057】
(d)有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化
被処理水中に含まれる有機化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物は、好気性微生物が生育および増殖するために利用されるため、被処理水から有機化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物が除去される。
【0058】
上述したように、本発明の実施形態の一つに係る水浄化システム100における水浄化方法では、二次処理水を再度第1の処理槽110へ返送してもよい。この場合には、バルブ170、172を排出口152に接続し、これらのバルブ170、172の調整よって二次処理水の返送率(循環水量/被処理水量)を調節すればよい。返送率は任意に設定すればよいが、0.1〜10が好ましく0.5〜2の範囲がより好ましい。
【0059】
この場合、硝化によって生成する硝酸イオンが嫌気性微生物の作用を受けて脱窒が進行し、最終的に窒素として除去することができる。したがってこの場合には、二次処理水中の硝酸イオンの濃度を大きく低減することができ、二次処理水はほぼ中性を保つことができる。
【0060】
すなわち、本発明の実施形態の一つに係る水浄化方法では、第1の処理槽110においては、主に嫌気性微生物による有機化合物の分解、脱窒、および第1の多孔質炭化物124上に担持された鉄または鉄化合物からの2価の鉄イオンの溶出が進行する。一方、第2の処理槽150では、主に好気性微生物による有機化合物の分解、窒素含有化合物の硝化、および2価の鉄イオンの酸化とこれに伴うリン含有化合物の吸着が進行する。したがって、下水などの汚染水に含まれる水質汚濁物質として挙げられる有機化合物やリン含有化合物、または窒素含有化合物を水浄化システム100によって効果的に除去し、河川や湖沼、海等の水域の浄水や水質改善を行うことができる。
【0061】
上述したように、本実施形態に係る水浄化方法では、第1の処理槽110に配置される第1の多孔質炭化物124は、2価の鉄イオンの供給源として機能する。したがって、担持された鉄化合物や0価の鉄が消費されると、2価の鉄イオンの供給源としては機能しなくなる。一方、第2の処理槽150に配置される多孔質体126には鉄や鉄化合物は担持される必要は無く、一次処理水中に含まれる2価の鉄イオンが酸化されて生成する3価の鉄イオンとリン含有化合物との反応によって生成するリン酸鉄、または酸化鉄などを吸着するサイトを有していればよい。したがって、第1の多孔質炭化物124は、鉄化合物の供給源としての機能を失った後、第2の処理槽150においてリン含有化合物を吸着するための多孔質体126として機能することができる。よって本実施形態に係る水浄化方法では、第2の処理槽150内でリン含有化合物を吸着した多孔質体126を取り出し、第1の処理槽110で使用された第1の多孔質炭化物124を取り出して第2の処理槽150に配置し、多孔質体126として再利用してもよい。この場合、第1の処理槽110には、鉄化合物が担持された多孔質炭化物が新たに配置され、これが新たに2価の鉄イオン供給源として機能する。
【0062】
通常、汚水からのリン含有化合物の除去は、凝集沈殿法や電気化学的方法などによって行われる。凝集沈殿法では、リン含有化合物であるリン酸を硫酸アルミニウムやポリ塩化アルミニウムなどのアルミニウム塩、塩化第二鉄などの鉄塩、あるいは消石灰や塩化カルシウムなどの凝集剤と反応させて沈殿物として回収する。電気化学的方法では、好気性微生物による処理を行う処理槽内に一対の鉄電極を設置し、これらの間に通電する。通電によって一方の電極から溶出する2価の鉄イオンを酸素で酸化して3価の鉄イオンとし、3価の鉄イオンと汚水中のリン酸が反応して得られる不溶性リン酸鉄を沈殿させる。いずれの方法でも、これらの沈殿物を除去することでリン含有化合物が除去される。このため、凝集沈殿法では凝集剤や沈殿槽が必要となり、電気化学的方法では2価の鉄イオンを供給するために外部から電気エネルギーの供給を受ける必要がある。
【0063】
これに対し本実施形態に係る水浄化システム100とこれを利用する水浄化方法では、2価または3価の鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物124を2価の鉄イオン供給源として用いる。したがって、水浄化システム100は、従来の水浄化システムと比較すると構造の簡素化と低コスト化が可能であり、また、インフラが十分に整備されていない環境下にも適合しやすいシステムであると言える。
【0064】
<第2実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた水浄化システム100の変形例である水浄化システム102について説明する。第1実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0065】
本変形例に係る水浄化システム102は、図1(B)に示すように、第2の処理槽150に接続される第3の処理槽180をさらに備える点で水浄化システム100と相違する。より具体的には、図7に示すように、水浄化システム102は、輸送管156などの輸送機構によって第2の処理槽150に連結される第3の処理槽180を有する。第3の処理槽180は、第2の処理槽150から排出される被処理水、すなわち二次処理水が輸送機構によって供給されるように構成される。
【0066】
第3の処理槽180は、第2の処理槽150から二次処理水とともに流出する汚泥を用い、二次処理水を更に高度に処理する機能を有する。したがって、第3の処理槽180は第2の処理槽150と同様の構造を有することができる。すなわち、第3の処理槽180は第2の処理槽150と同様、ガラスや石英、セラミック、コンクリート、あるいは高分子材料で形成することができ、処理後の二次処理水を三次処理水として排出するための排出口182を備える。
【0067】
第3の処理槽180はさらに、内部に多孔質体126を収容するように構成される。第1の処理槽110や第2の処理槽150と同様、多孔質体126を収容するケース134が浮揚しないよう、複数の開口を有する中蓋186を第3の処理槽180に設けてもよい。上述したように、第3の処理槽180には、第2の処理槽150から汚泥が流出するため、好気性微生物が含まれる。好気性微生物の活性を保つため、第3の処理槽180は、ノズル162と同様の構造を有するノズル164を介して酸素供給装置160に接続される。好気性微生物の作用により、水浄化システム102では、より効率よく有機化合物やリン含有化合物、窒素含有化合物の除去を行うことができる。
【0068】
なお、第3の処理槽180を二次被処理水に含まれる硝酸イオンの脱窒を行うように機能させてもよい。この場合には、第3の処理槽180には、好気性微生物に替わって嫌気性微生物が付着される汚泥や担体が配置される。したがって、第3の処理槽180は酸素供給装置160に接続されていなくてもよい。第1実施形態で述べたように、第2の処理槽150では窒素含有化合物の硝化が進行するため、二次処理水には硝酸塩や硝酸が含まれる。嫌気性微生物を含む第3の処理槽180を設けることで、この二次処理水を第1の処理槽110へ再度供給することなく、嫌気性微生物の作用を利用して硝酸塩や硝酸の脱窒を行うことができる。したがって、被処理水中の窒素含有化合物を最終的に窒素として除去できるとともに、第3の処理槽180から排出される三次処理水中の硝酸塩や硝酸イオンの濃度を低減することが可能となる。
【0069】
<第3実施形態>
本実施形態では、第1実施形態で述べた水浄化システム100の変形例である水浄化システム104について説明する。第1、第2実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0070】
水浄化システム104と水浄化システム100の相違点の一つは、図8に示すように、水浄化システム104では、第1の処理槽110に汚泥や担体を配置せず、第1の多孔質炭化物124に嫌気性微生物が含有されている点である。第1の多孔質炭化物124への嫌気性微生物を含有させる方法は、公知の方法を用いることができ、例えば、接触酸化法や回転円板法、散水ろ床法、浸漬ろ床法などを適用して行えばよい。
【0071】
嫌気性微生物が有機化合物を分解する際には、二酸化炭素や有機酸を生成する。したがって、二酸化炭素や有機酸の濃度は、嫌気性微生物が存在する空間において局所的に高い。このため、鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物124に嫌気性微生物を固着させて有機化合物を分解させることで、鉄化合物は二酸化炭素や有機酸とより効率的に接触することが可能となる。その結果、高効率で2価の鉄イオンを被処理水へ供給することが可能となり、水浄化の高効率化を図ることができる。
【0072】
第2の処理槽150においても、汚泥や担体を配置せず、好気性微生物が含有される多孔質体126を配置してもよい。これにより、好気性微生物がリン含有有機化合物を分解して生成するリン酸を多孔質体126によって速やかに吸着することができる。
【0073】
<第4実施形態>
本実施形態では、第1から第3実施形態で述べた水浄化システム100、102、104の変形例である水浄化システム106について説明する。第1から第3実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0074】
本実施形態に係る水浄化システム106は、単一の処理槽200を有する点で水浄化システム100、102、104と相違する。より具体的には、図9(A)のブロック図に示すように、水浄化システム106は単一の処理槽200を含み、処理槽200は酸素供給装置160から酸素含有ガスが供給されるように構成される。すなわち、図9(B)に示すように、ノズル162を介して酸素供給装置160が処理槽200に接続される。処理槽200はさらに、第1の多孔質炭化物124が配置されるように構成される。本実施形態においても、ノズル162は第1の多孔質炭化物124が形成するろ床の下に配置することが好ましい。これにより、第1の多孔質炭化物124を効果的に酸素含有ガスと接触させることができる。
【0075】
処理槽200内は、好気性微生物と嫌気性微生物の両者が含有される汚泥および/または担体が配置されるように構成することができる。あるいは、汚泥および/または担体を用いず、第1の多孔質炭化物124に好気性微生物と嫌気性微生物が含有されていてもよい。その他の構成は水浄化システム100の第1の処理槽110と同様であり、被処理水が供給される給水口202、処理槽200で処理された被処理水(処理水)を排出するための排出口204、過剰の酸素を排出するための排気口208などが処理槽200に設けられる。排出口204は、処理槽200の下部に設けることが好ましい。この場合には、図4に示すように、二次処理水を上方に引き上げるための配管158を設け、配管158を介して二次処理水を排出してもよい。また、図示されないが、配管158に代えて排出口204に電磁弁を設けてもよい。処理槽200は第1の多孔質炭化物124の浮揚を防止するための中蓋206を備えてもよい。
【0076】
水浄化システム106を用いる被処理水の浄化では、被処理水が供給された処理槽200に酸素供給装置160から酸素含有ガスを断続的に行う。具体的には、被処理水を処理槽200内に貯留した状態で酸素含有ガスを一定時間供給せず、処理槽200内を嫌気条件下におく。これにより、好気性微生物の作用によって溶存酸素が徐々に減少し、その結果、嫌気性微生物が活性化する。このため、第1実施形態で述べたように、2価の鉄イオンが溶出するとともに、嫌気性微生物の作用によって有機化合物の分解、窒素含有化合物の脱窒、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。
【0077】
この後、酸素含有ガスを一定時間供給し、処理槽200内を好気条件下へ変換する。これにより、好気性微生物が活性化する。すなわち、第1実施形態で述べたように、有機化合物の分解、リン含有化合物の吸着、窒素含有化合物の硝化、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。その後、再び酸素含有ガスの供給を停止する。酸素含有ガスの供給が停止されると、好気性微生物の呼吸により酸素が消費されて二酸化炭素が排出され、処理槽200内は徐々に嫌気条件へ移行する。その結果、上述した有機化合物の分解、2価の鉄イオンの溶出、窒素含有化合物の脱窒、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が再度進行する。この後、酸素含有ガスの供給、停止を繰り返す。
【0078】
このように、この酸素含有ガスの供給を断続的に行うことにより、嫌気性微生物と好気性微生物が交互に活性化され、第1の多孔質炭化物124によるリン含有化合物の吸着とともに窒素含有化合物の脱窒や有機化合物の分解を行うことができる。本実施形態の水浄化システム106では、複数の処理槽が不要であるため、より低コストで被処理水の浄化を行うことができる。
【0079】
<第5実施形態>
本実施形態では、第4実施形態で述べた水浄化システム106の変形例である水浄化システム108について説明する。第1から第4実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0080】
本実施形態に係る水浄化システム108は、図10(A)のブロック図に示すように、酸素供給装置160が処理槽200に接続されない点で水浄化システム106と相違する。したがって、図10(B)に示すように、過剰の酸素含有ガスを排出するための排出口を処理槽200に設けなくてもよい。その他の構成は水浄化システム106の処理槽200と同様であるため、詳細な説明は割愛する。
【0081】
本水浄化システム108を利用する水浄化は、以下のように行うことができる。まず、処理槽200に被処理水を供給する。この際、処理槽200から被処理水を排出せず、一定時間(例えば3時間以上48時間以下、あるいは12時間以上24時間以下)処理槽200に被処理水を貯留する。被処理水の供給時には、被処理水中には酸素が溶存しているため、好気性微生物が活性化状態となる。このため、第1実施形態で述べたように、有機化合物の分解、リン含有化合物の吸着、窒素含有化合物の硝化、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。リン含有化合物の吸着は第1の多孔質炭化物124によって行われる。同時に、酸素は好気性微生物の呼吸により徐々に消費される。したがって、処理槽200内は徐々に嫌気性条件に移行する。
【0082】
処理槽200が嫌気性条件に移行すると、好気性微生物の活性が低下し、逆に嫌気性微生物が活性化する。このため、第1実施形態で述べたように、有機化合物の分解、2価の鉄化合物への還元の進行、窒素含有化合物の脱窒、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。以上のプロセスにより、有機化合物や窒素含有化合物、リン含有化合物が被処理水から除去される。その後、被処理水が処理水として排出口204から排出される。
【0083】
被処理水が排出されると同時に、処理槽200に空気が導入される。導入された空気との接触により、好気性微生物が再度活性化され、増殖する。一定時間(例えば3時間以上48時間以下、あるいは12時間以上24時間以下)この状態を維持した後、新たな被処理水を処理槽200に導入する。被処理水は、第1の多孔質炭化物124の存在下、活性化された好気性微生物の作用を受ける。嫌気性条件で第1の多孔質炭化物124に生成した2価の鉄化合物は、第1実施形態で述べたように、被処理水に含まれる酸素により3価の鉄化合物に酸化され、リンを吸着する。このため、上述したように有機化合物の分解、リン含有化合物の吸着、窒素含有化合物の硝化、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。その後のプロセスは同様であり、酸素濃度の低下に伴う嫌気性微生物が活性化し、嫌気性微生物による有機化合物の分解、2価の鉄化合物への還元の進行、窒素含有化合物の脱窒、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。
【0084】
このように、本実施形態に係る水浄化システム108では、単一の処理槽200を用いて被処理水の処理槽200への貯留と排出を繰り返すだけで、水の浄化ができるため、より低コストで被処理水の浄化を行うことができる。
【0085】
<第6実施形態>
本実施形態では、第4実施形態で述べた水浄化システム106の変形例である水浄化システム109について説明する。第1から第5実施形態で述べた構成と同様または類似する構成については説明を割愛することがある。
【0086】
本実施形態に係る水浄化システム109は、図11に示すように、単一の処理槽200を有し、処理槽200は被処理水が供給される給水口202と処理水を排出するための排出口204、および過剰の酸素含有ガスを排出するための排気口208を備える。ここで、給水口202は排出口204よりも低い位置に配置される。したがって、被処理水は処理槽200の下部から導入され、処理槽200内部を上昇し、処理槽200の上部から排出口204を介して処理水として排出される。
【0087】
処理槽200はさらに、第1の多孔質炭化物124と多孔質体126が配置できるように構成される。第1の多孔質炭化物124は多孔質体126よりも下に配置される。このため、大部分の被処理水は最初に第1の多孔質炭化物124と接触し、その後多孔質体126と接する。処理槽200にはさらに、嫌気性微生物と好気性微生物が含有される汚泥および/または担体が収容されるように構成される。あるいは、汚泥や担体を用いず、嫌気性微生物と好気性微生物がそれぞれ第1の多孔質炭化物124と多孔質体126に含有されていてもよい。第1実施形態と同様、第1の多孔質炭化物124は鉄化合物が担持される。一方、多孔質体126はゼオライトやシリカゲル、活性炭などの多孔質材料でもよい。あるいは、鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物124、もしくは鉄化合物が吸着される前の多孔質炭化物でもよい。
【0088】
処理槽200には酸素供給装置160が接続され、酸素含有ガスが供給される。ここで、ノズル162は、第1の多孔質炭化物124と多孔質体126の間に配置される。より具体的には、ノズル162は、第1の多孔質炭化物124が形成するろ床と多孔質体126が形成するろ床との間に配置される。このような配置により、処理槽200においては、酸素含有ガスは第1の多孔質炭化物124よりも上で被処理水と接触することができる。このため、ノズル162から供給される酸素は、そのほとんどは第1の多孔質炭化物124とは接触せず、多孔質体126と接触する。なお、第1の多孔質炭化物124を多孔質体126に用いる場合には、ノズル162は、第1の多孔質炭化物124が形成するろ床の内部に配置されることになり、ノズル162よりも下に配置される第1の多孔質炭化物124は嫌気性条件に、ノズル162よりも上に配置される第1の多孔質炭化物124は好気性条件に晒される。
【0089】
水浄化システム109を利用する水の浄化では、被処理水を給水口202から供給し、同時に酸素含有ガスをノズル162を介して処理槽200に供給する。酸素含有ガスは被処理水中で上昇するため、第1の多孔質炭化物124が配置される処理槽200の下部の酸素濃度は、多孔質体126が配置される上部のそれと比較して低い。したがって、最初に被処理水は、第1の多孔質炭化物124の存在下、嫌気性微生物の作用を主に受ける。このため、第1実施形態で述べたように、処理槽200の下部では、有機化合物の分解、2価の鉄イオンの溶出、窒素含有化合物の脱窒、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。
【0090】
被処理水はその後、多孔質体126が配置される処理槽200上部に移動する。処理槽200上部では酸素濃度が高いため、好気性微生物が活性化される。このため、処理槽200上部では、被処理水は多孔質体126の存在下において好気性微生物の作用を受け、その結果、第1実施形態で述べたように、有機化合物の分解、リン含有化合物の吸着、窒素含有化合物の硝化、および有機物化合物、窒素含有化合物、リン含有化合物の同化が進行する。なお、図11に示すように、処理水の一部を再度給水口202から処理槽200に返送することで、処理槽200上部で硝化された窒素含有化合物を、処理槽下部で脱窒することができる。以上のプロセスによって、被処理水の浄化が行われる。
【0091】
本実施形態に係る水浄化システム109では、単一の処理槽200を用いて被処理水を浄化できるため、より低コストで被処理水の浄化を行うことができる。
【0092】
<第7実施形態>
リン含有化合物は、種々の植物の生長を促進する養分として働くことができるので、これらの化合物をリン酸鉄として吸着した多孔質体126は肥料として利用することができる。本実施形態では、第2の処理槽150内に配置される多孔質体126として多孔質炭化物を用い、リン含有化合物を吸着した多孔質体126を肥料として使用する態様について述べる。第1から第6実施形態で述べた構成と同様、または類似する構成については説明を省略することがある。
【0093】
多孔質体126から肥料を製造するためのフローチャートを図12に示す。多孔質体126は単独で肥料として利用してもよく、あるいは硫酸カルシウムなどの肥料助剤と混合した形態で利用してもよい。混合はミキサーを用いて行えばよく、ミキサーはフリーフォールミキサー、強制ミキサー、Y分岐ミキサー、アジテータミキサー、あるいはパドルミキサーなどから任意に選択することができる。
【0094】
必要に応じ、多孔質体126や肥料助剤の粒径を調整するために解砕を行ってもよい。例えば、多孔質体126の平均粒径が10mm以下、0.1mm以上10mm以下となるように解砕すればよい。解砕は、多孔質体126と肥料助剤を混合する前に行ってもよく、混合後に行ってもよい。解砕は解砕機を用いて行えばよく、例えば振動ミル、ジェットミル、ボールミル、ローラーミル、ロッドミル、ハンマーミル、インパクトミル、回転ミル、ピンミル、ピン−ディスクミル、あるいは遊星ミルなどの解砕機を利用することができる。解砕機を用いて多孔質体126を解砕することで表面積が増大し、その結果、多孔質体126に吸着されたリン酸鉄などのリン含有化合物の解離が促進される。
【0095】
あるいは、多孔質体126や肥料助剤の粒径を肥料の用途に適合させるための分級を行ってもよい。分級も多孔質体126と肥料助剤を混合する前に行ってもよく、混合後に行ってもよい。分級は分級機を用いて行われ、分級機としては乾式分級式分級機でも湿式分級機のいずれを採用してもよい。例えば気流分級機、重力場分級機、慣性力場分級機、遠心力場分級機などが分級機として例示される。
【0096】
得られる肥料に対してさらに肥料成分を混合してもよい。肥料成分としては窒素、カリウム、カルシウム、マグネシウム、マンガン、ケイ酸、ホウ素から選ばれる一つ、あるいは複数が挙げられ、具体的な材料として油粕、発香鶏糞、魚粉、骨粉、米ぬか、バットグアノ、ポカシ肥、草木灰、石灰、化成肥料などが例示される。
【0097】
多孔質体126に基づく肥料の土壌中への散布は、例えばグランドソワーなどの自然落下式の散布機や、圧縮空気を利用する拡散型散布機などを用いて行えばよい。また、散布方式にも制約はなく、条施型散布機、全面施用散布機のいずれを採用してもよい。肥料は、土壌の表面から30cm以内の範囲に散布することが好ましい。
【0098】
このように、本発明の実施形態により、下水などの汚染水に含まれる水質汚濁物質として挙げられる有機化合物やリン含有化合物、または窒素含有化合物を効果的に除去し、河川や湖沼、海等の水域の浄水や水質改善を行うことができるとともに、リン含有化合物を吸着した多孔質体126を肥料として利用することができる。このことは、本実施形態を通じ、水質改善とともに大気中への二酸化炭素の放出を抑制し、二酸化炭素を炭素という形態で地中に貯留できることを意味する。すなわち図13に示すように、本発明の各実施形態により、バイオマスが炭化されて多孔質炭化物が生成され(1)、さらに多孔質炭化物から鉄化合物が担持された第1の多孔質炭化物(鉄化合物担持多孔質炭化物)124が生成される(2)。この第1の多孔質炭化物124は、本水浄化システム100において2価の鉄イオン供給源として機能した後には(3)、第2の処理槽150においては、一次処理水に含まれるリン含有化合物の吸着材として機能する多孔質体126として使用することができる(4)。さらに、リン含有化合物の吸着後の多孔質体126は肥料として利用され、植物の育成に寄与する(5)。植物は大気中の二酸化炭素を固定し、食料や構造材料を提供するとともに、多孔質炭化物の原料となるバイオマスを副生する(6)。
【0099】
この(1)から(6)の一連のプロセスによって構築されるサイクルにより、大気中の二酸化炭素が光合成によって有機物として固定化され、この有機物が食料や材料として利用されるとともにバイオマスが副生される。バイオマスは炭化によって多孔質炭化物へ変換され、最終的には肥料として地中に戻される。したがって、大気中の二酸化炭素は炭素として地中に貯留され、これにより、大気中の二酸化炭素の削減に寄与する。
【実施例】
【0100】
本実施例では、第5実施形態で述べた水浄化システム106を用いる被処理水の処理について説明する。
【0101】
1.第1の多孔質炭化物の調製
スギ由来の木材を木質バイオマスガス化発電装置により発電することで副生される多孔質炭化物を得た。得られた多孔質炭化物400gを10Lのポリ硫酸第二鉄(II)の水溶液(鉄含有率11%)に、通常大気圧をゼロとしたゲージ圧で−0.09MPa、室温にて10分浸漬した。浸漬後の多孔質炭化物1000gを105℃で24時間乾燥させ、さらに窒素および一酸化炭素ガスの存在下、900℃で3時間加熱して担持されたポリ硫酸第二鉄(II)の還元を行った。得られた第1の多孔質炭化物124を粉砕し、JIS K 1474に従って鉄を抽出し、鉄の含有量を誘導結合プラズマ発光分光分析装置(PerkinElmer社製、Optima 5300 DV)で測定した結果、第1の多孔質炭化物124の全量に対して21質量%であった。
【0102】
2.被処理水
被処理水としては、酢酸ナトリウム、ミートペプトン、塩化アンモニウム、リン酸二水素カリウムの水溶液を用いた。被処理水は、二クロム酸カリウム法によって決定される化学的酸素要求量(CODCr)が1500mg/L、全窒素濃度(T−N)が100mg/L、全リン濃度(T−P)が10mg/Lとなるように調製した。
【0103】
3.実施例
実施例では、所謂タイダルフロー(TF)方式を採用した。具体的には、底部にメッシュが配置され、さらにメッシュを介して電磁弁が接続された塩化ビニル製カラム(内径10.4cm、長さ73cm)にろ床の厚さが10cmになるよう、約145gの第1の多孔質炭化物124を配置した(図14(A)参照)。その後、電磁弁を閉じた状態において、カラム上部から被処理水(500mL)と活性汚泥(約5mL)を投入した。活性汚泥は福島県郡山市の下水処理場の余剰汚泥を使用した。被処理水と活性汚泥は、被処理水の液面が第1の多孔質炭化物124のろ床表面とほぼ一致するように投入した。この状態が満水状態である。この状態で2日間静置し、微生物の馴養を行った。被処理水の酸化還元電位(以下、ORP)を測定するための電極を路床表面から1cm、5cm、10cmの位置に配置した。
【0104】
その後、満水状態、および被処理水の水面がろ床底部にある状態(干水状態)が12時間周期で繰り返されるよう、電磁弁を操作しつつ被処理水(500mL)を一日一回供給した。すなわち、満水状態を12時間維持した後、電磁弁を操作して被処理水をすべて排出し、干水状態とした。干水状態を12時間維持した後、新たに被処理水を500mL加えてからむ内部を満水状態とした。この操作を73日間にわたって繰り返した。
【0105】
被処理水の処理に関する評価は以下のように行った。干水状態を12時間維持した後に被処理水を加えて満水状態とし、直後に被処理水の一部をサンプリングしてT−P、T−N、およびCODCrを測定した。また、同時に電極を用いて被処理水のORPを測定し、その平均値を算出した。これらの測定値は、被処理水流入直後の測定値として評価した。満水状態を12時間維持した後、被処理水の一部をサンプリングしてT−P、T−N、およびCODCrを測定し、同時に電極を用いて被処理水のORPを測定し、その平均値を算出した。これらの測定値は、流出直前の測定値として評価した。
【0106】
4.比較例1
比較例1では、所謂水平流(HF)方式を採用した。具体的には、底部にメッシュが配置され、メッシュを介してサイフォンが接続された塩化ビニル製カラム(内径10.4cm、長さ73cm)に床厚が10cmになるよう、約145gの第1の多孔質炭化物124を配置した(図14(B)参照)。サイフォンは、被処理水が満水状態を常に維持できるように調整した。その後、実施例と同様に、満水状態となるようにカラム上部から被処理水と活性汚泥を投入した。この状態で2日間静置し、微生物の馴養を行った。実施例と同様、被処理水のORPを測定するための電極を路床表面から1cm、5cm、10cmの位置に配置した。
【0107】
その後、一日一回、カラム上部から新たに被処理水を500mL供給した。したがって、HF方式では、24時間被処理水が第1の多孔質炭化物124と接触し、その後被処理水は新たな被処理水によって置換される。
【0108】
被処理水の処理に関する評価は以下のように行った。新たに被処理水を加える直前に被処理水の一部をサンプリングし、実施例と同様にT−P、T−N、およびCODCrを測定し、同時に電極を用いて被処理水のORPを測定し、その平均値を算出した。
【0109】
4.比較例2
比較例2では、所謂鉛直流(VF)方式を採用した。具体的には、底部にメッシュが配置された塩化ビニル製カラム(内径10.4cm、長さ73cm)に床厚が10cmになるよう、約145gの第1の多孔質炭化物124を配置した(図14(C)参照)。その後、満水状態となるようにカラム上部から被処理水と活性汚泥を投入した。この状態で2日間静置し、微生物の馴養を行った。実施例と同様、被処理水のORPを測定するための電極を路床表面から1cm、5cm、10cmの位置に配置した。
【0110】
その後、処理水を排出し、干水状態とした。この干水状態を24時間維持した後、一日一回、カラム上部から新たに被処理水を500mL供給した。ただし、供給された被処理水は、メッシュを介して速やかに流出させた。したがって、VF方式では、被処理水の供給時を除き、常に干水状態が維持される。
【0111】
被処理水の処理に関する評価は以下のように行った。新たに被処理水を加えることでカラム底部から流出する被処理水の一部をサンプリングし、実施例と同様にT−P、T−N、およびCODCrを測定し、同時に電極を用い、カラム内を流下する被処理水のORPを測定し、その平均値を算出した。
【0112】
5.結果と考察
5−1.酸化還元電位
実施例、および比較例1と2の平均ORPの経時変化を図15に示す。試験開始から17日以降の平均ORPは、実施例(TF方式)においては、流入直後では316mV、流入直前では−78mVであった。このことは、実施例において第1の多孔質炭化物124は、干水状態では酸化的条件に、満水状態では還元的条件になっていることを意味している。換言すると、干水状態では好気性微生物が活性化され、満水状態では嫌気性微生物が活性化される。このことは、第5実施形態に係る水浄化システム108では、被処理水の貯留と排出を繰り返すことで、好気性微生物と嫌気性微生物が交互に活性化されることを支持している。
【0113】
一方、比較例1(HF方式)と比較例2(VF方式)では、平均ORPはそれぞれ−308mV、381mVであった。このことは、前者では還元的条件が、後者では酸化的条件が維持されていることを意味する。
【0114】
なお、いずれの例においても試験開始後17日目前後に平均ORPが安定していることから、それぞれの方式に適した微生物の定着が示唆される。
【0115】
5−2.リン含有化合物の除去
実施例(TF)、比較例1(HF)、比較例2(VF)のリン除去性能の経時変化を図16に示す。73日間にわたる試験におけるT−P除去率の平均値は、実施例(TF)、比較例1(HF)、比較例2(VF)でそれぞれ91%、71%、62%であった。比較例1(HF)と比較例2(VF)では、時間とともにリン除去率が減少したのに対し、実施例(TF)ではほとんど除去率が低下しなかった。73日間後の累積リン除去量は実施例(TF)、比較例1(HF)、比較例2(VF)でそれぞれ273mg−P、209mg−P、183mg−Pであった。これらの結果から、実施例(TF)に例示される本発明の実施形態を適用することにより、より効果的にリン含有化合物の除去が可能であり、長期間に亘って水浄化システムを駆動できることが確認された。
【0116】
5−3.窒素含有化合物の除去
実施例(TF)、比較例1(HF)、比較例2(VF)の窒素除去性能の経時変化を図17に示す。T−Nの平均除去率は実施例(TF)が65%と最も高く、比較例1(HF)は26%、比較例2(VF)は28%に留まった。比較例2(VF)は水理学的滞留時間が短いことから除去性能は向上しなかったと考えられる。また、比較例1(HF)は還元的条件下であるため硝化が律速となり、低い除去率となるものと考えられる。注目すべき点は、実施例(TF)ではT−N除去率が徐々に増加し、38日目以降に80%前後に達した点である。このことから、実施例(TF)に例示される本発明の実施形態を適用することにより、より効果的に窒素含有化合物の除去が可能であり、長期間に亘って水浄化システムを駆動できることが確認された。
【0117】
5−4.CODCr除去
実施例(TF)、比較例1(HF)、比較例2(VF)のCODCr除去性能の経時変化を図18に示す。CODCrの平均除去率は実施例(TF)が88%と最も高く、比較例1(HF)は62%、比較例2(VF)は44%であった。また、比較例1(HF)と比較例2(VF)では除去率が変動したのに対し、実施例(TF)では17日目以降は95%以上の高い除去率を安定的に維持した。このことから、実施例(TF)に例示される本発明の実施形態を適用することにより、より効果的にCODCrの低減が可能であり、長期間に亘って水浄化システムを駆動できることが確認された。
【0118】
本発明の実施形態として上述した各実施形態は、相互に矛盾しない限りにおいて、適宜組み合わせて実施することができる。各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0119】
上述した各実施形態によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと理解される。
【符号の説明】
【0120】
100:水浄化システム、102:水浄化システム、104:水浄化システム、106:水浄化システム、108:水浄化システム、109:水浄化システム、110:第1の処理槽、112:給水口、114:輸送管、116:中蓋、117:排出口、119:攪拌装置、124:第1の多孔質炭化物、126:多孔質体、130:ケース、132:ケース、134:ケース、150:第2の処理槽、151:排気口、152:排出口、153:給水口、154:中蓋、155:ノズル、155a:開口、156:輸送管、158:配管、160:酸素供給装置、162:ノズル、164:ノズル、170:バルブ、172:バルブ、174:ポンプ、180:第3の処理槽、182:排出口、186:中蓋、190:沈殿槽、200:処理槽、202:給水口、202:再度給水口、204:排出口、206:中蓋、208:排気口
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