特開2021-13360(P2021-13360A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021013360-酵素グルカンリアーゼ活性の高い海藻 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-13360(P2021-13360A)
(43)【公開日】2021年2月12日
(54)【発明の名称】酵素グルカンリアーゼ活性の高い海藻
(51)【国際特許分類】
   C12P 19/02 20060101AFI20210115BHJP
   A01H 13/00 20060101ALI20210115BHJP
   C12N 9/88 20060101ALI20210115BHJP
【FI】
   C12P19/02
   A01H13/00
   C12N9/88
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-130970(P2019-130970)
(22)【出願日】2019年7月16日
(71)【出願人】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(71)【出願人】
【識別番号】390015004
【氏名又は名称】株式会社サナス
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100080609
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 正孝
(74)【代理人】
【識別番号】100109287
【弁理士】
【氏名又は名称】白石 泰三
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(72)【発明者】
【氏名】寺田 竜太
(72)【発明者】
【氏名】石場 秀人
(72)【発明者】
【氏名】吉永 一浩
【テーマコード(参考)】
2B030
4B050
4B064
【Fターム(参考)】
2B030AB03
2B030AD20
4B050DD20
4B050LL05
4B064AF02
4B064BJ10
4B064CA21
4B064CD19
4B064DA10
(57)【要約】
【課題】効率のよい1,5−アンヒドロ−D−フルクトース(1,5−AF)の製造方法を提供する。
【解決手段】α−1,4−グルカンリアーゼ活性を有する海藻由来の酸素をα−1,4−グルカンを含む糖鎖に作用させることで、効率良く1,5−AFを生産することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し、そして酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻。
【請求項2】
α−1,4−グルカンに、Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し且つ酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻由来の酵素グルカンリアーゼを水媒体中で接触せしめることを特徴とする1,5−アンヒドロ−D−フルクトースの製造方法。
【請求項3】
α−1,4−グルカンから1,5−アンヒドロ−D−フルクトースを製造するための酵素グルカンリアーゼを採取するための、Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し、そして酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻の使用。
【請求項4】
Gracilariopsis属の海藻が、α−1,4−グルカンから1,5−アンヒドロ−D−フルクトースを製造するために有効であることを決定する方法であって、海藻のRubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有する海藻のグルカンリアーゼ活性を測定し同活性が5.0U/gを超える海藻を有効であると決定することを特徴とする上記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の遺伝子配列を有する海藻およびそれを酵素源とし、その酵素を用いて効率良く1,5−アンヒドロ−D−フルクトース(1,5−AF)を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1,5−AFは抗酸化性、静菌性、着色性などの機能性を有している。1,5−AFは、この機能性を利用して食品の変色を防止したり、微生物の汚染を抑制したりすることができ、食品の劣化を効果的に遅延させることができる。また本糖はメイラード反応性に富むことから食品の着色にも利用することができる。このように1,5−AFは多機能な素材であり現在、食品分野で利用されている。
1,5−AFの製造方法としては澱粉やグリコーゲンなどのα−1,4−グルカンをα−1,4−グルカンリアーゼ(GLase)で分解する方法が最も効率的であることが知られている。
【0003】
これまでにGLaseの酵素源としては真菌類であるMorchella costataやMorchella vulgaris(非特許文献1)や紅藻であるGracilariopsis lemaneiformis、Gracilaria verrucosa(非特許文献2)、Gracilaria chorda(非特許文献3)が知られているが、Morchella costataやMorchella vulgarisでは目的とする酵素活性が低く工業的な生産の酵素源としては現実的ではない。
【0004】
一方、Gracilariopsis属やGracilaria属では酵素活性が高い海藻もあるが、本発明者らが評価した結果、殆ど活性の無い海藻もあり、1,5−AF生産の酵素源として使用するには活性が不安定であるという問題があることがわかった。また、この酵素活性に影響する因子については菌類感染した影響との報告(特許文献1)もあるが、菌に感染することで、活性の変動がどの程度あるのか、感染する菌の属や種が何であるかは報告されておらず、高い活性の海藻を安定的に入手するための情報として不十分であった。海藻類のGLase活性で最も高い値が報告(非特許文献3)されているのは鹿児島県の指宿で採取されたGracilaria chordaで、本発明における測定条件と同じ測定条件で測定されるGLase活性が5U/gである。一方で、現在ではこの海域では海流の変化や海の清澄化の影響が考えられるがGracilaria chordaは生育しておらず採取できず、1,5−AFの原料としての利用は不可能に近い。
【0005】
非特許文献2にはGracilaria verrucosaの酵素活性が記載されているが、海藻1gあたりの酵素活性の記載はない。同論文中の記載データを基に1gあたりの酵素活性を計算すると0.7U/gとなり活性は低く1,5−AF生産に用いるには効率が悪い。
【0006】
熊本県の有明海域には現在も多くのGracilaria属の海藻が生育している。本発明者らはこれらの海域(佐賀県ガンドウ干潟)から形態観察上でGracilariopsis lemaneiformisと鑑定される海藻を収穫し、酵素活性を測定した。その結果によれば下記表1に示すように、同じ形態の海藻を採取しても採取位置や時間の異なるサンプル間で活性に大きな開きがあることが分り、海藻の形態だけをたよりに海藻を収穫しても高活性の海藻だけを入手することは不可能であることがわかった。
【0007】
【表1】
【0008】
酵素活性の高い海藻だけを収穫する方法として、収穫時に酵素活性を測定しつつ収穫する方法も考えられるが、収穫しつつ活性を測定するには、収穫用の小船の上で活性を測定する必要がある。海藻の酵素活性には海藻の磨砕装置、分光高度計、恒温槽など特別な機器が必要であるが、それらを収穫用の小船上で使用することができない。さらには測定には収穫から測定まで最低で3時間を要し、現実的に収穫時に活性を測定することは不可能な状態である。また、仮に、収穫中の船上で測定できたとしても測定したサンプルがその海域の海藻の代表サンプルとなるのか不明であるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表平09−506765
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Yu S, Christensen TM, Kragh KM, Bojsen K, Marcussen J. Efficient purification, characterization and partial amino acid sequencing of two alpha−1,4−glucan lyases from fungi. Biochim Biophys Acta. 1997 May 23;1339(2):311−20.
【非特許文献2】Yu S, Kenne L, Pedersen M., Alpha−1,4−glucan lyase, a new class of starch/glycogen degrading enzyme. I. Efficient purification and characterization from red seaweeds. Biochim Biophys Acta. 1993 Mar 21;1156(3):313−20.
【非特許文献3】Yoshinaga K, Fujisue M, Abe J, Hanashiro I, Takeda Y, Muroya K, Hizukuri S. Characterization of exo−(1,4)−alpha glucan lyase from red alga Gracilaria chorda. Activation, inactivation and the kinetic properties of the enzyme. Biochim Biophys Acta. 1999 Nov 16;1472(3):447−54.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、1,5−AF生産に用いるに適したグルカンリアーゼ活性の高い海藻および、その海藻を決定する方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記海藻由来の酵素グルカンリアーゼをα−1,4−グルカンを含む糖鎖に作用させて1,5−AFを効率よく生産する方法を提供することにある。
本発明のさらに他の目的および利点は、以下の説明から明らかになろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、本発明の上記目的および利点は、第1に、
Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し、そして酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻により達成される。
本発明の上記目的および利点は、第2に、
α−1,4−グルカンに、Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し且つ酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻由来の酵素グルカンリアーゼを水媒体中で接触せしめることを特徴とする1,5−AFの製造方法により達成される。
本発明の上記目的および利点は、第3に、
α−1,4−グルカンから1,5−AFを製造するための酵素グルカンリアーゼを採取するための、Rubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有し、そして酵素グルカンリアーゼ活性が5.0U/gを超える海藻の使用により達成される。
本発明の上記目的および利点は、第4に、
Gracilariopsis属の海藻が、α−1,4−グルカンから1,5−AFを製造するために有効であることを決定する方法であって、海藻のRubisco大サブユニット遺伝子領域にGenBank登録番号LC215806の遺伝子配列を有する海藻のグルカンリアーゼ活性を測定し同活性が5.0U/gを超える海藻を有効であると決定することを特徴とする上記方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、グルカンリアーゼ活性の高い海藻から効率的に酵素グルカンリアーゼを得ることができ、そのためα−1,4−グルカンから1,5−AFを効率的に生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】配列番号1の遺伝子配列を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
Gracilaria属やGracilariopsis属の海藻と活性の関係を調べるため、各地の紅藻を採取し、酵素活性を測定した。酵素活性の測定手順は以下の方法で実施した。得られた酵素活性は海藻1gあたりの活性(U/g)で表示した。
【0016】
酵素活性測定手順:
冷凍庫で保管の海藻試料を室温にて解凍したのち、はさみで約3cm長に切断した。その海藻を5g測りとり、乳鉢に入れ精製水15mlを加えた後、乳棒で海藻の形がなくなるまで常温ですり潰した。その後、3,000gで10分間遠心分離し、上澄みを回収し、粗酵素抽出液とした。
酵素活性は以下の方法で測定した。
【0017】
(1)35℃へ加温した恒温水槽を準備する。

(2)容量5mlの試験官(口径10mm×長さ100mm)に以下のサンプルをそれぞ
れ入れて(1)の恒温水槽で35℃に加温する。
・純水 200μL (水ブランク)
・1,5−AF標準液 200μL (50μg/mlの1,5−AF水溶液)
・基質 175μL (10分間反応用と30分間反応用の2つ)

(3)酵素反応(10分間)
・(2)の基質175μLに水で1/50へ希釈した粗酵素抽出液(以下、酵素)2
5μLを加え、混合して35℃の恒温水槽へ入れる。
・酵素を添加してから10分間反応後、ネオクプロイン試薬A液400μL、ネオク
プロイン試薬B液400μLを加え、混合して35℃の恒温水槽へ入れる。

(4)酵素反応(30分間)
・(2)の基質175μLに水で1/50へ希釈した粗酵素抽出液(以下、酵素)2
5μLを加え、混合して35℃の恒温水槽へ入れる。
・酵素を添加してから30分間反応後、ネオクプロイン試薬A液400μL、ネオク
プロイン試薬B液400μLを加え、混合して35℃の恒温水槽へ入れる。

(5)吸光度測定
・(3)の10分間酵素反応液と(4)の30分間酵素反応液、そして水ブランクと
1,5−AF標準液にそれぞれネオクプロイン試薬A液400μL、ネオクプロイ
ン試薬B液400μLを加え、35℃の恒温水槽で30分間加温したもの、各試料
全てに1,000μLの純水を加えて、室温で5分間放置し、それぞれ光路長1
cmのセルを使用して波長450nmの時の吸光度を測定した。

(6)酵素活性の測定
・1ユニットとは1分間に1μmoleの1,5−AFを生成する酵素量と定義し
、次の計算式で海藻1gあたりの酵素活性F(U/g)を算出した。

酵素活性 F:U/g=(C−D)/E×50/162/20×8×3/50

・C:酵素反応30分間の反応液の吸光度
・D:酵素反応10分間の反応液の吸光度
・E:1,5−AF標準液の吸光度−水ブランクの吸光度

計算式中の数値の説明
・ 50:標準AF濃度(50μg/ml)
・162:1,5−AF分子量
・ 20:反応時間20min
・ 8:酵素反応系での酵素の希釈率(200μL中に25μLの酵素)
【0018】
上記方法において、基質、酵素液、ネオクプロイン試薬は次の内容である。

基質:50mM 酢酸緩衝液(pH5.0)中に9mg/mlとなるように可溶性澱粉を
溶解した溶液
酵素液:粗酵素抽出液を活性が測定できる範囲まで必要に応じて希釈したもの。
ネオクプロイン試薬:
A液:4%炭酸ナトリウム、1.6%グリシン、0.045%硫酸銅溶液。
B液:2,3滴の塩酸を含む0.15%ネオクプロイン溶液。
【0019】
海藻の酵素活性;
海藻の1次選抜には形態観察を用いた。日本各地の海から形態観察上でGracilaria属とGracilariopsis属に分類される海藻を採取し、GLase活性を測定した。その結果、表2に示すように,Gracilaria属には活性が検出されず、Gracilariopsis lemaneiformisに目的とする活性が認められた。また、同じGracilariopsis lemaneiformisであっても酵素活性が大きく異なることを見出した。Gracilariopsis属では菌に感染することでGLase活性が高まることが報告されているが、海藻の生育環境がGLase活性に及ぼす影響については全く報告されていないため、環境因子や菌類による感染と活性との関係を調べた。
【0020】
上記活性が認められたGracilariopsis lemaneiformisは円柱状で細長く繊細で、長さは30cmから1m以上になる。主軸は0.4〜2mmで、枝は不規則な間隔で多数ある。短い末端枝(小枝)が多数ある場合もある。この形態の海藻をここではGracilariopsis lemaneiformisと同定した。
【0021】
【表2】
【0022】
海藻の室内培養;
活性5.46U/gの熊本県の海藻と活性未検出の島根県の海藻をそれぞれ単独で、あるいは両海藻を同じ槽内でネットに入れて分けて培養した。培養方法は以下のとおりとした。
培養方法)9L容の水槽に海水を入れ、空気をエアポンプで海水中に送りながら海藻は約4gずつをネットに入れ室温(25℃:電気ヒータ)で培養した。海水は1週間に1度入れ替えを行った。
約30日間培養したところ、藻体は培養開始前の1.5倍となった。培養開始前と開始後の酵素活性を比較した。その結果、培養開始前に5.46U/gであった海藻は30日後には単独培養で5.50U/gで、活性の無い海藻と培養した場合で5.00U/gであり、培養による活性の変化は認められなかった。また、活性のない海藻については単独培養でも高活性海藻との同一槽内での培養でも培養することで活性が認められるようになることはなかった。以上の結果から、形態観察上ではGracilariopsis lemaneiformisと分類される海藻であってもGLase活性に大きな違いがあり、それは環境条件の影響でないことを初めて見出した。さらに菌類の感染の影響でない可能性も高まった。
【0023】
【表3】
【0024】
GLase酵素活性に生育環境因子、菌類感染の有無が活性に影響がない可能性が高くなった。活性に関わる因子として、そもそも種が本当に同一であるのかが疑問となる。次に活性を有する海藻の分子系統解析を行った。採取し冷凍で保管してあった海藻は、解凍して小袋にいれ、それにシリカゲルを添加し脱水した。その試料をDNA抽出キット等を用いてDNAを抽出し、それぞれの海藻の葉緑体にコードされているリブロース1,5−ビスリン酸カルボキシラーゼ/オキシゲナーゼ大サブユニット遺伝子領域(rbcL領域の)について、PCRを用いて増幅させ、塩基配列をシーケンスした。得られた配列を基に分子系統解析を行い系統樹をそれぞれ比較した。その結果、高活性海藻は低活性海藻と遺伝子系統が異なり、配列番号1の遺伝子配列(GenBank登録番号LC215806rbcL)を有することが明らかになった。
【0025】
遺伝子配列がGLase活性に関係することをさらに確認するために、熊本県有明海南部の海藻を入手し、遺伝子系統を調べ上記の塩基配列を有する海藻を9種選抜した。その酵素活性を測定したところ下表のように、すべての海藻に高い酵素活性を認めた。以下の海藻サンプルは採取場所がそれぞれ異なり、河口からの距離も異なることから、海水の塩分濃度も異なる。従って、異なる塩分濃度であっても酵素活性に変動がないことを認めた。
【0026】
【表4】
【0027】
さらに生育ステージや海水温の酵素活性への影響を調べるために、同一海域に生育する LC215806 rbcLの遺伝子配列を有する海藻の酵素活性の季節変動を調べた。その結果、2月から5月まで活性に変動は認められなかった。
【0028】
【表5】
【0029】
以上の検討の結果、海藻の1,5−AF生産に関わる因子は環境や菌類の感染でなく、種が関わること、さらに LC215806 rbcLの遺伝子配列を有する海藻が高い活性を示すことを見出した。
【0030】
Gracilariopsis属の海藻は生育場所で群生する性質がある。従って、群生している海藻の一部を前もって採取し、遺伝子配列を確認しておき、その群を収穫すれば間違いなく高活性の海藻を収穫でき、活性の低い海藻の混入リスクが排除できる。これは本発明によって初めて導き出された特定の高い活性を有する海藻の収穫方法であり、これまでの酵素活性の測定では達成できなかった安定して高活性の海藻の収穫ができる。収穫した海藻はそのまま酵素として使用することも可能であるし、冷凍庫で保管し、解凍後に使用しても良い。
本海藻からの酵素の抽出方法は磨砕して水抽出の方法が一般的であるが、この方法に限定されるものではない。また、GLaseは精製することでより純度の高い酵素液とすることも可能であり、酵素の精製度も限定されるものではない。また、固定化酵素などへも利用可能である。
また、本遺伝子配列を有する海藻を安定的に入手するために養殖も考えられる。海中での養殖、陸上でのタンクでの養殖など、本発明を実施するにあたり養殖方法は特に限定されない。
【0031】
本発明の海藻からグルカンリアーゼ活性を有する酵素を得るには、採取した海藻をそのままの状態で、あるいは冷凍保存した冷凍品を解凍後、必要に応じ数cm例えば2〜4cmの長さに切断し、水を加えて磨砕するなどして細粒とし、遠心分離などにより水層と固形層とに分離して、上澄み水層を酸素液として得ることにより行うことができる。
この酸素液をそのままあるいは必要により精製した後、α−1,4−グルカン例えばマルトデキストリンと一緒にし、好ましくはグルカンリアーゼ活性が1,4−グルカン1g当り、1.0〜4.0Uとなる条件で、30〜40℃の温度で、1〜48時間反応させることにより、反応液中に1,5−AFを生産することができる。1,5−AFはそれ自体公知の方法により単離、精製することができる。
【実施例】
【0032】
熊本県宇土市永浜町の海岸に生育している海藻を船から500g採取し遺伝子系統を解析した。その結果、 LC215806 rbcLの配列を有することが確認できた。後日、同一の海域の海藻を再度、100kg採取した。酵素活性を測定したところ5.6U/gであった。
その海藻を20Kgずつプラスチック製ケースに入れ、−35℃で冷凍した。30日間冷凍した後、海藻20Kgを解凍し、3cm長に裁断し水道水60Kgを加え、それを石臼式磨砕機で磨砕した。それを遠心分離機にかけ、上澄みを回収し酵素液とした。酵素液の酵素活性は1.8U/mlであり、海藻1gあたり5.4Uであった。この酵素液をマルトデキストリン溶液に加え、30℃で48時間反応させた。マルトデキストリンの約40%が1,5−AFに変換されたことを確認した。
図1