(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-133641(P2021-133641A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】金型用ブッシュおよび金型
(51)【国際特許分類】
B29C 45/27 20060101AFI20210816BHJP
B29C 45/34 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
B29C45/27
B29C45/34
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2020-33290(P2020-33290)
(22)【出願日】2020年2月28日
(11)【特許番号】特許第6858383号(P6858383)
(45)【特許公報発行日】2021年4月14日
(71)【出願人】
【識別番号】518343316
【氏名又は名称】株式会社ケイプラスモールドジャパン
(71)【出願人】
【識別番号】518343327
【氏名又は名称】コーエイ プライベート リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100168583
【弁理士】
【氏名又は名称】前井 宏之
(72)【発明者】
【氏名】石井 陽
【テーマコード(参考)】
4F202
【Fターム(参考)】
4F202AJ10
4F202AM32
4F202AR12
4F202CA11
4F202CB01
4F202CK02
4F202CP01
4F202CP02
(57)【要約】
【課題】金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる金型用ブッシュを提供する。
【解決手段】金型用ブッシュ200、300は、金型100に取り付けられる。金型用ブッシュ200、300は、金型100のスプルー140またはコールドスラッグウェル160の少なくとも一部を構成する。金型用ブッシュ200、300は、材料流通部240、340と、流入部250、350と、流通経路260、360と、排出部280、380とを備える。材料流通部240、340は、成形品を形成するための材料が流通する。流入部250、350は、気体が流入可能である。流通経路260、360は、流入部250、350から流入した気体が流通する。排出部280、380は、流通経路260、360に接続する。排出部280、380は、流入部250、350から流入した気体を排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に取り付けられ、前記金型のスプルーまたはコールドスラッグウェルの少なくとも一部を構成する金型用ブッシュであって、
成形品を形成するための材料が流通する材料流通部と、
気体が流入可能である流入部と、
前記流入部から流入した前記気体が流通する流通経路と、
前記流通経路に接続し、前記流入部から流入した前記気体を排出する排出部と
を備える、金型用ブッシュ。
【請求項2】
前記流入部は前記材料流通部の外周に位置する、請求項1に記載の金型用ブッシュ。
【請求項3】
前記流入部は環状である、請求項1または請求項2に記載の金型用ブッシュ。
【請求項4】
前記金型は、所定の方向に延びるランナーを有しており、
前記所定の方向に交差する方向において、前記流入部の幅は、前記ランナーの幅より広い、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項5】
前記流入部と前記流通経路との間に、気体が流通する流通空間が形成される請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項6】
前記流入部には貫通孔が形成されている、請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項7】
前記金型には凹部が形成されており、
前記流入部は凹部に対向する、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項8】
前記金型用ブッシュは、スプルーブッシュを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項9】
前記金型用ブッシュは、スプルーロックブッシュを含む、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金型用ブッシュに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形用の金型において、スプルーブッシュが用いられることがある(例えば、特許文献1)。スプルーブッシュは、射出成形機と金型とを繋ぐ樹脂の流路を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実登3205019号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
射出成形において、金型内への樹脂の射出に伴い金型内の気体を外部へ排出する必要がある。しかしながら、特許文献1に記載のスプルーブッシュでは、金型内に溜まった気体を十分に排出できない可能性がある。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる金型用ブッシュを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る金型用ブッシュは、金型に取り付けられる。前記金型用ブッシュは、前記金型のスプルーまたはコールドスラッグウェルの少なくとも一部を構成する。前記金型用ブッシュは、材料流通部と、流入部と、流通経路と、排出部とを備える。前記材料流通部は、成形品を形成するための材料が流通する。前記流入部は、気体が流入可能である。前記流通経路は、前記流入部から流入した前記気体が流通する。前記排出部は、前記流通経路に接続する。前記排出部は、前記流入部から流入した前記気体を排出する。
【0007】
ある実施形態において、前記流入部は前記材料流通部の外周に位置する。
【0008】
ある実施形態において、前記流入部は環状である。
【0009】
ある実施形態において、前記金型は、所定の方向に延びるランナーを有している。前記所定の方向に交差する方向において、前記流入部の幅は、前記ランナーの幅より広い。
【0010】
ある実施形態において、前記流入部と前記流通経路との間に、気体が流通する流通空間が形成される。
【0011】
ある実施形態において、前記流入部には貫通孔が形成されている。
【0012】
ある実施形態において、前記金型には凹部が形成されている。前記流入部は凹部に対向する。
【0013】
ある実施形態において、前記金型用ブッシュは、スプルーブッシュを含む。
【0014】
ある実施形態において、前記金型用ブッシュは、スプルーロックブッシュを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る金型用ブッシュによれば、金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態1に係る金型の模式的な断面図である。
【
図2】(a)および(b)は、本発明の実施形態1に係る金型用ブッシュの斜視図である。
【
図3】金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【
図5】本発明の実施形態1の変形例1に係る金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【
図6】本発明の実施形態1の変形例2に係る金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【
図7】本発明の実施形態1の変形例3に係る金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【
図9】本発明の実施形態2に係る金型の模式的な断面図である。
【
図10】(a)および(b)は、本発明の実施形態2に係る金型用ブッシュの斜視図である。
【
図11】金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【
図13】本発明の実施形態2の変形例に係る金型用ブッシュの近傍の模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一または相当部分については同一の参照符号を付して説明を繰り返さない。
【0018】
[実施形態1]
図1を参照して、本発明の実施形態1に係る金型用ブッシュ200を備える金型100について説明する。
図1は、本発明の実施形態1に係る金型100の模式的な断面図である。
図1において、X軸およびY軸は互いに直交し水平面に平行であり、Z軸は鉛直方向に平行である。
【0019】
図1に示すように、金型100は、金型部材110と、金型部材120と、キャビティ130と、スプルー140と、ランナー150と、コールドスラッグウェル160と、金型用ブッシュ200とを備える。
【0020】
金型100は、射出成形用の金型である。
【0021】
金型部材110は、金型部材120の上方に位置する。金型部材110と金型部材120とは、互いに対向する。金型部材110は、例えば、金属製である。
【0022】
金型部材120は、金型部材110の下方に位置する。金型部材120は、例えば、金属製である。
【0023】
キャビティ130は、金型部材110と金型部材120との間に形成される。キャビティ130は、成形品を形成するための空間である。キャビティ130は、成形品の形状に対応する。キャビティ130には、成形品の材料が充填される。成形品の材料は、例えば、樹脂である。
【0024】
金型用ブッシュ200は、スプルー140を構成する。金型用ブッシュ200は、例えば、スプルーブッシュである。金型用ブッシュ200は、スプルー140の内部に残留する気体をスプルー140の外部へ排出する。金型用ブッシュ200は、金型部材110に取り付けられる。例えば、金型用ブッシュ200は、金型部材110に固定具によって取り付けられる。固定具は、例えば、ネジである。あるいは、ロケートリングのような別の部品によって押さえつけることによって、金型用ブッシュ200は、金型部材110に取り付けられてもよい。金型用ブッシュ200の詳細については、
図2および
図3を参照して後述する。
【0025】
スプルー140は、金型用ブッシュ200に形成されている。スプルー140は、Z軸方向に沿って延びる。スプルー140は、射出成形機から射出された樹脂が最初に流れ込む通路である。
【0026】
ランナー150は、スプルー140に接続している。ランナー150は、X軸方向に沿って延びる。ランナー150は、金型部材110と金型部材120との間に形成される。
【0027】
コールドスラッグウェル160は、スプルー140に接続している。コールドスラッグウェル160は、Z軸方向に沿って延びる。コールドスラッグウェル160は、射出成形機から最初に射出された樹脂が溜まる部分である。
【0028】
図2(a)〜
図3を参照して、本発明の実施形態1に係る金型用ブッシュ200についてさらに説明する。
図2(a)および
図2(b)は、本発明の実施形態1に係る金型用ブッシュ200の斜視図である。
図3は、金型用ブッシュ200の近傍の模式的な断面図である。
【0029】
図2(a)、
図2(b)および
図3に示すように、金型用ブッシュ200は、注入部210と、本体部230と、材料流通部240と、流入部250と、流通経路260と、流通空間270と、排出部280とを備える。
【0030】
注入部210には、射出成形する際に、射出成形機の射出ノズルが接続される。射出成形機の射出ノズルから射出された材料は、注入部210から注入される。注入部210は、注入口212を有する。注入口212は、材料流通部240と連通している。
【0031】
本体部230は、フランジ部232と、円筒部234とを有する。フランジ部232は、円筒部234に接続する。フランジ部232は、円筒部234の端部に接続する。円筒部234は、円筒部234の端部から円筒部234の径方向外側に突出する。
【0032】
材料流通部240は、成形品を形成するための材料が流通する。
【0033】
流入部250は、本体部230の先端にはめ込まれる。流入部250は環状である。本実施形態では、流入部250は、円環状である。流入部250は、材料流通部240の外周に位置する。すなわち、材料流通部240は、流入部250の内周に位置する。流入部250は、気体が流入可能である。流入部250は、+Z方向に気体が流入可能である。したがって、流入部250は、上方向に気体が流入可能である。流入部250は、多孔質の部材である。したがって、流入部250には、複数の貫通孔が形成されている。
【0034】
複数の貫通孔の各々は、流入部250を貫通する。複数の貫通孔の各々は、流入部250の下面から上面に貫通する。流入部250は、成形品の材料が流入不可である。本実施形態では、流入部250は、樹脂が流入不可である。なお、貫通孔は、流入部250の下面から上面に貫通している限り、どのような形状でも構わない。例えば、球状の孔が不規則に連なることによって、流入部250の下面から上面に貫通していてもよい。あるいは、貫通孔は、流入部250の下面から上面に貫通するスリットであってもよい。
【0035】
流通経路260は、Z軸方向に沿って延びている。流通経路260は、流入部250から流入した気体が流通する。詳しくは、流入部250から流入した気体は、流通経路260を上方向(+Z方向)に流れていく。
【0036】
流通空間270は、流入部250と流通経路260との間に形成される。流通空間270は、気体が流通する。
【0037】
排出部280は、フランジ部232に形成される。排出部280は、流通経路260に接続する。排出部280は、流入部250から流入した気体を排出する。本実施形態では、排出部280は、流入部250から流入した気体を+Z方向(上方)へ排出する。
【0038】
材料流通部240に樹脂が充填されると、金型100内の気体および射出成形時に金型100内に流れ込む気体は、流入部250の貫通孔を通って+Z方向(上方)へと流入する。そして、流入部250から流入した気体は、流通空間270を流通した後、流通経路260を流通し、排出部280から金型100の外部へと排出される。
【0039】
次に、
図4を参照して、流入部250についてさらに説明する。
図4は、流入部250の近傍の斜視図である。
【0040】
図4に示すように、流入部250は、ランナー150の上方に位置する。流入部250の下面は、ランナー150と接触している。したがって、材料流通部240およびランナー150に樹脂が充填されると、材料流通部240内およびランナー150内に溜まっている気体が流入部250を通って+Z方向(上方)へと流入する。
【0041】
ランナー150は、X軸方向(所定の方向)に延びている。Y軸方向(所定の方向に交差する方向)において、流入部250の幅は、ランナー150の幅よりも広い。したがって、材料流通部240の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。
【0042】
以上、
図1〜
図4を参照して説明したように、金型用ブッシュ200は、材料流通部240と、流入部250と、流通経路260と、排出部280とを備える。材料流通部240は、成形品を形成するための材料が流通する。流入部250は、気体が流入可能である。流通経路260は、流入部250から流入した気体が流通する。排出部280は、流入部250から流入した気体を排出する。したがって、材料流通部240の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。その結果、金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる。
【0043】
[実施形態1の変形例1]
図5を参照して、本発明の実施形態1の変形例1に係る金型用ブッシュ200について説明する。
図5は、本発明の実施形態1の変形例1に係る金型用ブッシュ200の近傍の模式的な断面図である。流通経路260の形状と、排出部280の位置とが異なる点を除いて、実施形態1の変形例1に係る金型用ブッシュ200は、実施形態1に係る金型用ブッシュ200と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0044】
図5に示すように、本変形例では、流通経路260は屈曲している。詳しくは、流通経路260は、Z軸方向に沿って延びた後に、X軸方向に沿って延びている。
【0045】
本変形例では、排出部280は、流入部250から流入した気体をX軸方向(横方向)へ排出する。したがって、射出成形機から注入部210に射出された樹脂が漏れ出して排出部280が塞がれることを抑制することができる。
【0046】
本変形例でも、実施形態1と同様に、材料流通部240の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。したがって、金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる。
【0047】
[実施形態1の変形例2]
図6を参照して、本発明の実施形態1の変形例2に係る金型用ブッシュ200について説明する。
図6は、本発明の実施形態1の変形例2に係る金型用ブッシュ200の近傍の模式的な断面図である。流通経路260の形状と、排出部280の位置とが異なる点を除いて、実施形態1の変形例2に係る金型用ブッシュ200は、実施形態1に係る金型用ブッシュ200と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0048】
図6に示すように、本変形例では、流通経路260は屈曲している。詳しくは、流通経路260は、Z軸方向に沿って延びてから、X軸方向に沿って延びた後に、Z軸方向に沿って延びている。したがって、注入部210を避けて、排出部280を配置することができる。
【0049】
[実施形態1の変形例3]
図7および
図8を参照して、本発明の実施形態1の変形例3に係る金型用ブッシュ200について説明する。
図7は、本発明の実施形態1の変形例3に係る金型用ブッシュ200の近傍の模式的な断面図である。
図8は、流入部250の近傍の斜視図である。流入部250が凹部112に対向する点を除いて、実施形態1の変形例3に係る金型用ブッシュ200は、実施形態1に係る金型用ブッシュ200と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0050】
図7に示すように、金型部材110には、凹部112が形成されている。流入部250は凹部112に対向する。
【0051】
図7および
図8に示すように、凹部112の大きさは、流入部250の大きさよりも大きい。したがって、流入部250の下方には、流入部250の全体に亘って空間が存在する。その結果、流入部250から空気を、材料流通部240の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。したがって、金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる。
【0052】
[実施形態2]
図9を参照して、本発明の実施形態2に係る金型用ブッシュ300を備える金型100について説明する。
図9は、本発明の実施形態2に係る金型100の模式的な断面図である。金型100が金型用ブッシュ300を備える点を除いて、実施形態2に係る金型100は、実施形態1に係る金型100と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0053】
図9に示すように、金型100は、金型部材110と、金型部材120と、キャビティ130と、スプルー140と、ランナー150と、コールドスラッグウェル160と、金型用ブッシュ200とに加えて、さらに金型用ブッシュ200と、エジェクタピン410とを備える。
【0054】
金型用ブッシュ300は、コールドスラッグウェル160を構成する。金型用ブッシュ300は、例えば、スプルーロックブッシュである。金型用ブッシュ300は、スプルー140の内部に残留する気体をスプルー140の外部へ排出する。金型用ブッシュ300は、金型部材120に取り付けられる。例えば、金型用ブッシュ300は、金型部材120に固定具によって取り付けられる。固定具は、例えば、ネジである。あるいは、プレートのような別の部品よって押さえつけることによって、金型用ブッシュ200は、金型部材120に取り付けられてもよい。金型用ブッシュ300の詳細については、
図10および
図11を参照して後述する。
【0055】
エジェクタピン410は、成形品を金型100から押し出して取り出すために用いられる。
【0056】
図10(a)〜
図11を参照して、本発明の実施形態2に係る金型用ブッシュ300についてさらに説明する。
図10(a)および
図10(b)は、本発明の実施形態2に係る金型用ブッシュ300の斜視図である。
図11は、金型用ブッシュ300の近傍の模式的な断面図である。
【0057】
図10(a)、
図10(b)および
図11に示すように、金型用ブッシュ300は、本体部330と、材料流通部340と、流入部350と、流通経路360と、流通空間370と、排出部380とを備える。
【0058】
本体部330は、フランジ部332と、円筒部334とを有する。フランジ部332は、円筒部334に接続する。フランジ部332は、円筒部334の端部に接続する。円筒部334は、円筒部334の端部から円筒部334の径方向外側に突出する。
【0059】
材料流通部340は、成形品を形成するための材料が流通する。
【0060】
流入部350は、本体部330の先端にはめ込まれる。流入部350は環状である。本実施形態では、流入部350は、円環状である。流入部350は、材料流通部340の外周に位置する。すなわち、材料流通部340は、流入部350の内周に位置する。流入部350は、気体が流入可能である。流入部350は、+Z方向に気体が流入可能である。したがって、流入部350は、上方向に気体が流入可能である。流入部350は、多孔質の部材である。したがって、流入部350には、複数の貫通孔が形成されている。
【0061】
複数の貫通孔の各々は、流入部350を貫通する。複数の貫通孔の各々は、流入部350の下面から上面に貫通する。流入部350は、成形品の材料が流入不可である。本実施形態では、流入部350は、樹脂が流入不可である。なお、貫通孔は、流入部350の下面から上面に貫通している限り、どのような形状でも構わない。例えば、球状の孔が不規則に連なることによって、流入部350の下面から上面に貫通していてもよい。あるいは、貫通孔は、流入部350の下面から上面に貫通するスリットであってもよい。
【0062】
流通経路360は、Z軸方向に沿って延びている。流通経路360は、流入部350から流入した気体が流通する。詳しくは、流入部350から流入した気体は、流通経路360を下方向(−Z方向)に流れていく。
【0063】
流通空間370は、流入部350と流通経路360との間に形成される。流通空間370は、気体が流通する。
【0064】
排出部380は、フランジ部332に形成される。排出部380は、流通経路360に接続する。排出部380は、流入部350から流入した気体を排出する。本実施形態では、排出部380は、流入部350から流入した気体を−Z方向(下方)へ排出する。
【0065】
金型部材120は、排出経路190を有する。材料流通部340に樹脂が充填されると、材料流通部340内に溜まっている気体は、流入部350の貫通孔を通って−Z方向(下方)へと流入する。そして、流入部350から流入した気体は、流通空間370を流通した後、流通経路360を流通し、排出部380から排出され、さらに排出経路190を通って、金型100の外部へと排出される。
【0066】
次に、
図12を参照して、流入部350についてさらに説明する。
図12は、流入部350の近傍の斜視図である。
【0067】
図12に示すように、流入部350は、ランナー150の下方に位置する。流入部350の上面は、ランナー150と接触している。したがって、材料流通部340およびランナー150に樹脂が充填されると、材料流通部240内(スプルー140内)およびランナー150内または材料流通部340内(コールドスラッグウェル160内)に溜まっている気体が流入部350を通って−Z方向(下方)へと流入する。
【0068】
ランナー150は、X軸方向(所定の方向)に延びている。Y軸方向(所定の方向に交差する方向)において、流入部350の幅は、ランナー150の幅よりも広い。したがって、材料流通部340の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。
【0069】
以上、
図9〜
図12を参照して説明したように、金型用ブッシュ300は、材料流通部340と、流入部350と、流通経路360と、排出部380とを備える。材料流通部340は、成形品を形成するための材料が流通する。流入部350は、気体が流入可能である。流通経路360は、流入部350から流入した気体が流通する。排出部380は、流入部350から流入した気体を排出する。したがって、材料流通部340の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。
【0070】
[実施形態2の変形例]
図13および
図14を参照して、本発明の実施形態2の変形例に係る金型用ブッシュ300について説明する。
図13は、本発明の実施形態2の変形例に係る金型用ブッシュ300の近傍の模式的な断面図である。
図14は、流入部350の近傍の斜視図である。流入部350が凹部122に対向する点を除いて、実施形態2の変形例に係る金型用ブッシュ300は、実施形態3に係る金型用ブッシュ300と同様な構成を有するため、重複部分については説明を省略する。
【0071】
図13に示すように、金型部材120には、凹部122が形成されている。流入部350は凹部122に対向する。
【0072】
図13および
図14に示すように、凹部122の大きさは、流入部350の大きさよりも大きい。したがって、流入部350の下方には、流入部350の全体に亘って空間が存在する。その結果、流入部350から空気を、材料流通部340の外部に排出する気体の排出量を多くすることができる。したがって、金型内に溜まった気体を効率よく排出することができる。
【0073】
以上、図面(
図1〜
図14)を参照しながら本発明の実施形態を説明した。但し、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施することが可能である(例えば、下記に示す(1)〜(4))。図面は、理解しやすくするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示しており、図示された各構成要素の厚み、長さ、個数等は、図面作成の都合上から実際とは異なる。また、上記の実施形態で示す各構成要素の材質や形状、寸法等は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0074】
(1)
図1〜
図14を参照して説明した金型100では、キャビティ130に充填される成形品の材料は、樹脂であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、キャビティ130に充填される成形品の材料は、金属でもよい。
【0075】
(2)
図1〜
図14を参照して説明した金型100では、金型部材110および金型部材120は、金属製であったが、本発明はこれに限定されない。例えば、金型部材110および金型部材120は、樹脂製であってもよい。
【0076】
(3)
図1〜
図14を参照して説明した金型100では、流入部250および流入部350は、円環状であったが、発明はこれに限定されない。例えば、流入部250および流入部350は、四角環状のような多角環状でもよい。
【0077】
(4)実施形態1では、スプルーブッシュに流入部を有しており、実施形態2では、スプルーブッシュおよびスプルーロックブッシュに流入部を有していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、スプルーロックブッシュのみに流入部を有していてもよい。
【符号の説明】
【0078】
100 金型
112、122 凹部
140 スプルー
150 ランナー
160 コールドスラッグウェル
200、300 金型用ブッシュ
240、340 材料流通部
250、350 流入部
260、360 流通経路
270、370 流通空間
280、380 排出部
【手続補正書】
【提出日】2020年10月8日
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に取り付けられ、前記金型のスプルーまたはコールドスラッグウェルの少なくとも一部を構成する金型用ブッシュであって、
成形品を形成するための材料が流通する材料流通部と、
気体が流入可能である気体流入部と、
前記気体流入部から流入した前記気体が流通する気体流通経路と、
前記気体流通経路に接続し、前記気体流入部から流入した前記気体を排出する気体排出部と、
本体部と
を備え、
前記本体部は、
前記材料流通部を規定する内壁と、
前記内壁よりも外側に位置する外壁と
を有し、
前記気体流入部は、前記内壁と前記外壁との間に位置し、
前記気体流通経路は、前記内壁と前記外壁との間に位置し、
前記気体流入部には、1つの前記気体流通経路に対して複数の貫通孔が形成されている、金型用ブッシュ。
【請求項2】
前記貫通孔はスリットである、請求項1に記載の金型用ブッシュ。
【請求項3】
前記気体流入部は、上面と下面とを有し、
前記気体流通経路は、前記上面に対して直交する方向に延びる、請求項1または請求項2に記載の金型用ブッシュ。
【請求項4】
前記本体部は、
筒部と、
前記筒部に接続し、前記筒部の端部から前記筒部の径方向外側に突出するフランジ部と
を有し、
前記気体排出部は、前記フランジ部に形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項5】
前記気体流入部は環状である、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項6】
前記気体流入部と前記気体流通経路との間に、気体が流通する気体流通空間が形成される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項7】
前記金型用ブッシュは、スプルーブッシュを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項8】
前記金型用ブッシュは、スプルーロックブッシュを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の金型用ブッシュと、
第1金型部材と、
前記第1金型部材と対向する第2金型部材と、
前記第1金型部材と前記第2金型部材とに形成され、所定の方向に延びるランナーと
を備え、
前記所定の方向に直交する方向において、前記気体流入部の幅は、前記ランナーの幅より広い、金型。
【請求項10】
前記第1金型部材または前記第2金型部材には凹部が形成されており、
前記気体流入部は凹部に対向する、請求項9に記載の金型。
【手続補正書】
【提出日】2021年1月28日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金型に取り付けられ、前記金型のスプルーまたはコールドスラッグウェルの少なくとも一部を構成する金型用ブッシュであって、
成形品を形成するための材料が流通する材料流通部と、
気体が流入可能である気体流入部と、
前記気体流入部から流入した前記気体が流通する気体流通経路と、
前記気体流通経路に接続し、前記気体流入部から流入した前記気体を排出する気体排出部と、
本体部と
を備え、
前記本体部は、
前記材料流通部を規定する内壁と、
前記内壁よりも外側に位置する外壁と
を有し、
前記気体流入部は、前記内壁と前記外壁との間に挟まれており、
前記気体流入部は、所定の幅を有する環状の部材であり、
前記気体流通経路は、前記内壁と前記外壁との間に位置し、
前記気体流入部には、1つの前記気体流通経路に対して複数の貫通孔が形成されている、金型用ブッシュ。
【請求項2】
前記貫通孔はスリットである、請求項1に記載の金型用ブッシュ。
【請求項3】
前記気体流入部は、上面と下面とを有し、
前記気体流通経路は、前記上面に対して直交する方向に延びる、請求項1または請求項2に記載の金型用ブッシュ。
【請求項4】
前記本体部は、
筒部と、
前記筒部に接続し、前記筒部の端部から前記筒部の径方向外側に突出するフランジ部と
を有し、
前記気体排出部は、前記フランジ部に形成される、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項5】
前記気体流入部は、前記材料流通部の周囲を環状に囲む、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項6】
前記気体流入部と前記気体流通経路との間に、気体が流通する気体流通空間が形成される請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項7】
前記金型用ブッシュは、スプルーブッシュを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項8】
前記金型用ブッシュは、スプルーロックブッシュを含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型用ブッシュ。
【請求項9】
請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の金型用ブッシュと、
第1金型部材と、
前記第1金型部材と対向する第2金型部材と、
前記第1金型部材と前記第2金型部材とに形成され、所定の方向に延びるランナーと
を備え、
前記所定の方向に直交する方向において、前記気体流入部の外表面間の最大距離は、前記ランナーの幅より広い、金型。
【請求項10】
前記第1金型部材または前記第2金型部材には凹部が形成されており、
前記気体流入部は凹部に対向する、請求項9に記載の金型。