【解決手段】金型は、溶融樹脂シートを挟んで成形体を成形する第1金型1と第2金型とを備える。第1金型1は、溶融樹脂シートと当接可能な当接面121と、当接面121から突出した突出面122とを有する。また、第2金型は、突出面122と対向する位置に当接面121に倣った当接面を有する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の樹脂成形装置60を示す図である。樹脂成形装置60は、樹脂供給装置61により、シート状の樹脂材である溶融樹脂シート3を成形する。溶融樹脂シート3は、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、エンジニアリングプラスチックなどから形成することができる。樹脂供給装置61の下方には、金型10(第1金型1、第2金型2)が配置される。
【0011】
樹脂供給装置61は、樹脂材料の供給口とされるホッパー65と、油圧モータ68に接続されて内部に配置されるスクリューによりホッパー65から供給された材料を溶融、混錬する押出機66と、を有する。押出機66は、プランジャ72を備えるアキュムレータ70と接続される。溶融、混錬された樹脂材料は、押出機66によりアキュムレータ70に送られる。樹脂材料は、アキュムレータ70で高圧とされてTダイ71に送られる。そして、適宜のタイミングでTダイ71のダイスリットが開かれて、ローラ79により送り出された溶融樹脂シート3が形成される。
【0012】
第1金型1及び第2金型2は、対向して配置される。本実施形態では、第1金型1及び第2金型2がそれぞれ凸型及び凹型である場合について示す。第1金型1には、後述するスライド部12及び固定部13を含むコア1aが形成される。第2金型2には、コア1aに対応するキャビティ2aが形成され、キャビティ2a内に囲われた空間を吸気孔2a1により吸気して減圧する真空ポンプ(不図示)が設けられる。また、第2金型2の外周には、型枠21が設けられる。
【0013】
図2は、第1金型1の一部を示す斜視図である。
図3は、
図2の第1金型1の裏面側から見た拡大斜視図である。また、
図4は、
図2の第1金型1のIV−IV断面において、第1規制部16の断面を組み合わせた組合せ断面図である。第1金型1は、平板状の基部11に対して、相対的に移動可能な複数のスライド部12と、複数のスライド部12の外周を囲うよう配置された固定部13とを有する。基部11は、
図1の移動型14に対して固定される。また、本実施形態の固定部13は、
図1に示すように移動型14の一部として構成されるが(
図4に示す一点鎖線は固定部13と移動型14との境界の仮想線である)、移動型14とは別体に構成してもよい。
【0014】
スライド部12は、矩形平板状に形成され、2行3列のマトリクス状に複数配置される。スライド部12は、略平坦な当接面121(第1当接面)と、当接面121上に形成された突出部122とを有する。突出部122には、所定の幅を有して当接面121と略平行で平坦な突出面123が形成される。
図2のA部拡大図に示すように、突出部122は、3枚のスライド部12が連設される方向である第1方向に延設される第1突出部122aと、2枚のスライド部12が連設される方向である第2方向に延設される第2突出部122bとを含む。第1突出部122a及び第2突出部122bは、直線状に複数本略等間隔で配置されており、互いに直交(交差)するように形成される。本実施形態の突出部122は、当接面121の全体に亘って略格子状に形成される。
【0015】
突出面123の幅は、当接面121の幅よりも短幅で形成される。例えば、
図2に示す複数の突出面123の幅を15mmとし、突出面123の第1方向及び第2方向のピッチを80mm又は40mm(すなわち各当接面121の幅は65mm又は25mm)とすることができる。
【0016】
突出面123の高さ(当接面121から突出面123までの距離)は、溶融樹脂シート3の肉厚よりも薄い寸法で突出しており、例えば溶融樹脂シート3を2〜3mm程度とし、突出面123の高さを0.5mmに設定することができる。突出面123の当接面121からの高さは、溶融樹脂シート3の流動性(MFR,メルトフローレート)等の特性に応じて、後述する型締工程における第1金型1が溶融樹脂シート3と当接する初期の第1タイミングにおいて溶融樹脂シート3が当接面121と当接しない高さであって、第1金型1と第2金型2との型締め力により第1タイミングの後の第2タイミングにおいて当接面121と当接する高さに設定される。これにより、溶融樹脂シート3に対して突出面123に対応する箇所の冷却を素早く開始させ、その後の当接面121の当接により溶融樹脂シート3全体の冷却時間を短くすることができる。
【0017】
各スライド部12の四方を囲う側面125には、
図4のB部拡大図参照に示すように、スライド部12の移動方向と平行な平行面125aと、平行面125aと連続して接続される傾斜面125bとが含まれる。平行面125aは当接面121側に設けられ、傾斜面125bは裏面126側(基部11側)に設けられる。傾斜面125bは、スライド部12の板厚方向において、平行面125aよりも広幅となるように形成される。従って、スライド部12は、基部11側へ向かうに従い全体的に窄まるように薄板の角錐台状に形成される。
【0018】
スライド部12は、基部11が設けられる裏面126側において、弾発部15及び第1規制部16により支持される(
図3及び
図4等参照)。スライド部12は、基部11側から第2金型2側に弾発付勢されており、基部11側及び第2金型2側への移動範囲が第1規制部16により所定の位置で規制される。
【0019】
弾発部15は、平面視におけるスライド部12の四隅に対応して四カ所に配置される。弾発部15は、スライド部12から基部11側に立設される軸芯151と、基部11側に固定されたブッシュ152と、軸芯151が挿入されたブッシュ152の外周周りに巻回される圧縮コイルばね153とを備える。軸芯151はブッシュ152を介して基部11の軸受111にも摺動可能に挿通される。スライド部12は、圧縮コイルばね153がスライド部12及び基部11を離間する方向に弾発して、当接面121側(換言すれば、第2金型2側)に付勢される。
【0020】
第1規制部16は、スライド部12の当接面121側への移動を規制する。第1規制部16は、平面視におけるスライド部12の略中央位置に対応して配置される。第1規制部16は、スライド部12の裏面126から立設する円柱状の支持軸部161と、支持軸部161の端部側に形成される四角柱状の拡径部162とを有する。支持軸部161は、基部11に設けられた貫通孔である軸受112に摺動可能に挿通される。拡径部162は、支持軸部161及び軸受112よりも大径に形成されて、移動型14側の摺動空間141に配置される(
図4参照)。従って、スライド部12は、拡径部162が軸受112の周縁と当接して、基部11から離間する方向への移動が規制される。
【0021】
また、基部11には、スライド部12側へ向けて立設する四角柱状の第2規制部17が設けられる。第2規制部17は、平面視におけるスライド部12の四辺に対応して四カ所に配置される。各第2規制部17の端面171は、
図4のB部拡大図に示すように、スライド部12が当接面121側(第2金型2側)へ付勢された状態において、スライド部12の裏面126と所定の間隙Gを設けて離間している。スライド部12が基部11側に押圧された場合、スライド部12の基部11側への移動は、第2規制部17の端面171とスライド部12の裏面126とが当接して規制される。スライド部12の移動可能な幅(間隙Gの最大値)は、例えば、1mmに設定される。
【0022】
図2に戻り、固定部13は、複数のスライド部12の外周周りに隣接配置された矩形環状に形成される。固定部13は、スライド部12の当接面121に対して略平行な平坦面である当接面131(第三当接面)と、当接面131から連設された傾斜面である側面132とを有する。側面132からは、所定の間隔で突出した突出壁部134が複数設けられる。突出壁部134は、平面視において外側へ突出しており、当接面131は突出壁部134側にも延設される。突出壁部134の側面135は、側面132よりも急峻な角度で形成される。側面132及び突出壁部134には、スライド部12に設けられた第1突出部122a又は第2突出部122bの延長方向に連設された第三突出部133a及び第四突出部133bが形成される。第三突出部133a及び第四突出部133bにおける突出面の当接面131からの高さは、第1突出部122a及び第2突出部122bにおける突出面123の当接面121からの高さと略同じである。また、第三突出部133a及び第四突出部133bは、第1突出部122a及び第2突出部122bと同幅で形成される。スライド部12が第2金型2側へ付勢されている状態における、当接面121と当接面131との段差は、突出面123,133cの当接面121,131からの高さよりも大きく設定することができる。
【0023】
第2金型2のキャビティ2aには、対向する第1金型1の当接面121に倣った形状の当接面22(第2当接面)が形成される。本実施形態の当接面22は、当接面121と略平行な平坦面として形成される。例えば、第1金型1の当接面121が曲面又は傾斜面を有する場合では、対向する第2金型2の当接面22の箇所は、当接面121に倣うように曲面又は傾斜面とすることができる。
【0024】
次に成形体5の製造方法について説明する。本実施形態で製造される成形体5(
図5参照)は、
図1等に示す樹脂成形装置60により形成される。まず、材料供給工程において、樹脂供給装置61は、溶融樹脂シート3を、第1金型1及び第2金型2の間に配置されるように、垂下させて供給する(
図1参照)。
【0025】
賦形工程では、型枠21を溶融樹脂シート3に向けて移動させて溶融樹脂シート3のシート面に当接させる(
図5(a)参照)。そして、型枠21と第2金型81とを相対的に近づけるとともに、溶融樹脂シート3、キャビティ2a、及び型枠21とで形成される空間内を吸気孔2a1からの吸気により減圧して、溶融樹脂シート3をキャビティ2aに賦形させる(
図5(b)参照)。
【0026】
型締工程では、第1金型1と、第2金型2とを相対的に接近させて、環状のピンチオフ部1b,2b同士が当接するように型締めする(
図6参照)。すなわち、第1金型1及び第2金型2は、両側から直接挟み込むように溶融樹脂シート3に当接する。型締めによりスライド部12が溶融樹脂シート3と当接する初期のタイミング(第1タイミング)では、
図7(a)のC1部拡大図に示すように、溶融樹脂シート3は、初めにスライド部12の突出部122(突出面123)と当接して、この突出部122により押圧される。固定部13付近においても同様に、溶融樹脂シート3は、初めに固定部13の突出部133(突出面133c)と当接する。従って、溶融樹脂シート3は、格子状に形成された突出部122,133と当接した箇所から冷却が開始される。
【0027】
その後、
図7(a)の状態から所定時間経過したタイミング(上記第1タイミングよりも後の第2タイミング)で、
図7(b)のC2部拡大図に示すように、溶融樹脂シート3は、突出部122,133との当接箇所の周囲に流動して、当接面121,131と当接する。固定部13の側面132,135側においても、溶融樹脂シート3は、突出部133との当接箇所の周囲に流動して側面132,135と当接する。これにより、溶融樹脂シート3の第1金型1側の面は、略全面に亘って冷却が開始される。なお、溶融樹脂シート3の突出部122,133に対応する箇所は、前述したように当接面121,131よりも先に当接するため、或いは周囲の当接面121,131と対応する箇所と比較して肉厚が薄くなるため、溶融樹脂シート3のうち格子状の領域(
図5の成形体5の凹部52に対応する領域)を優先的に冷却することができる。
【0028】
スライド部12は、第1金型1及び第2金型2の型締め力により溶融樹脂シート3から受ける抗力が弾発部15の弾発力より大きくなると、弾発部15の弾発力に抗して、第2金型2とは反対側(溶融樹脂シート3とは反対側)に移動する。スライド部12の移動は、裏面126が第2規制部17の端面171と当接することで規制される。スライド部12が第2規制部17と当接するまで押し込まれた場合は、
図7(c)のC3部拡大図に示すように、当接面121と当接面131とが略同一面となる。
【0029】
その後、取出工程にて、第1金型1及び第2金型2を型開きさせて、金型10内からは成形された成形体5が取り出される。また、成形体5は、全体としては完全に冷え切って硬化する前に離型され、外周のバリが取り除かれる。本実施形態の成形体5は、当接面121,131と当接した領域よりも硬化が進んだ格子状の領域(
図5の凹部52に対応する領域)を有するため、金型10から取り出しても成形体5の全体の強度を高くすることができる。従って、金型10から取り出した成形体5の反りを抑制することができる。成形体5は、例えば、トイレユニット、浴室ユニット、シャワーユニット、又はプレハブ等の壁面パネルとして形成することができる。
【0030】
図1のTダイ71から垂下された溶融樹脂シート3は、第1金型1及び第2金型2のコア1a及びキャビティ2aの対応範囲に亘ってシート厚みが異なる場合がある。例えば、溶融樹脂シート3は、自重によりTダイ71側が伸長されて、Tダイ71側よりも下端側の溶融樹脂シート3の厚みが薄く形成されることが想定される。この場合、
図6の型締めの際、複数のスライド部12A〜12Cのうち下方のスライド部12Cは、上方の他のスライド部12A,12Bよりも先に溶融樹脂シート3に当接し、その後、スライド部12B及びスライド部12Aの順に溶融樹脂シート3に当接することとなる。また、スライド部12Cに対応する下方側の溶融樹脂シート3が比較的厚い場合、スライド部12Cは、スライド部12A及びスライド部12Bに比べて押し込み量が多くなる。従って、各スライド部12A〜12C(
図2に示すスライド部12D〜12Fも同様)の押し込み量は、溶融樹脂シート3の厚みに応じて異なるように追従することができる。
【0031】
従って、溶融樹脂シート3に薄い箇所が発生した場合であっても、第1金型1が溶融樹脂シート3と当接しなくなることを防止でき、溶融樹脂シート3の冷却ムラを低減することができる。
【0032】
図8は、樹脂成形装置により製造された成形体5の例を示す図である。成形体5は、長矩形の略平板状に形成される。成形体5の
図8に表される表面5aは、第2金型2により成形された成形面である。また、成形体5の表面5aとは反対側の裏面5bには、破線で示すように、第1金型1の当接面121及び突出面123により成形された被当接面51及び凹部52(52a,52b)が設けられる。凹部52aは第1突出部122aに対応し、凹部52bは第2突出部122bに対応する。外周部53は、固定部13により形成された領域である。なお、成形体5の表面5aは略平坦面として構成する例を示しているが、任意に凹凸を設けることができる。この場合であっても、凹部52は、溶融樹脂シート3の肉厚よりも薄く設けられるため、成形体5の表面5a側への機能や意匠へ与える影響を低減することができる。
【0033】
以上、本実施形態によると、溶融樹脂シート3の一方面側は第2金型2と当接させ、溶融樹脂シート3の他方面側は突出部122,136に対応する箇所の溶融樹脂シート3を先に当接させる構成としたため、溶融樹脂シート3の突出部122,136と対応する箇所の硬化速度を向上させ、全体の冷却ムラを低減して成形体5の反りを低減することができる。また、成形体5を反りにくく形成することができるため、成形体5を短い冷却時間で取り出して成形サイクルを短くし、成形体5の生産性を向上させることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は各実施形態により限定されることは無く、種々の変更を加えて実施することができる。例えば、本実施形態では、第1金型1には、溶融樹脂シート3からの抗力により移動可能なスライド部12を設けたが、溶融樹脂シート3の特性によっては、スライド部12を設けない構成としてもよい。この場合は、第1金型1を簡易に構成することができる。
【0035】
また、本実施形態では、第1金型1を凸型とし、第2金型2を凹型とする構成について説明したが、スライド部12を有する第1金型1は凹型で構成してもよい。或いは、第1金型1とともに、第2金型2にもスライド部を設ける構成としてもよい。
【0036】
また、突出部122における突出面123は、当接面121の一部に亘って設ける構成としてもよいが、当接面121(成形体5の面)の全体に対して半分以上、より好ましくは8割以上の面積となるように設けることが好ましい。当接面121に対する突出面123の面積割合を大きくすることで、成形体5の全体の強度を高めることができる。
【0037】
また、突出面123を当接面121の一部に設ける場合、平坦部分(比較的曲率の小さい曲面部分を含む)が大きい当接面121の領域に、突出面123を設けることができる。例えば、突出面123は、上記平坦部分が当接面121の全体に対して30%以上の面積を占める領域に設けることができる。突出面123を部分的に設けることで金型の構成を簡易にすることができる。