(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-133976(P2021-133976A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】バイアル容器、バイアル
(51)【国際特許分類】
B65D 1/02 20060101AFI20210816BHJP
A61J 1/05 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
B65D1/02 110
A61J1/05 311
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-32847(P2020-32847)
(22)【出願日】2020年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000104674
【氏名又は名称】キョーラク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 孝幸
(72)【発明者】
【氏名】内橋 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐野 尊
【テーマコード(参考)】
3E033
4C047
【Fターム(参考)】
3E033AA01
3E033BA15
3E033BA16
3E033BB08
3E033CA20
3E033DA08
3E033FA03
3E033GA02
4C047AA05
4C047BB12
4C047CC04
(57)【要約】
【課題】使用感に優れたバイアル容器を提供する。
【解決手段】本発明によれば、バイアル容器であって、前記バイアル容器は、最内層が環状オレフィン系樹脂層であり、かつ前記最内層よりも外側に鎖状オレフィン系樹脂層を備える、バイアル容器が提供される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアル容器であって、
前記バイアル容器は、最内層が環状オレフィン系樹脂層であり、かつ前記最内層よりも外側に鎖状オレフィン系樹脂層を備える、バイアル容器。
【請求項2】
請求項1に記載のバイアル容器であって、
前記環状オレフィン系樹脂層は、引張弾性率が1700〜2100MPaである、バイアル容器。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のバイアル容器であって、
前記環状オレフィン系樹脂層に含まれる環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が60〜100℃である、バイアル容器。
【請求項4】
請求項1〜請求項3の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記バイアル容器の高さ方向中央において、前記バイアル容器の全層の平均肉厚に対する前記環状オレフィン系樹脂層の平均肉厚の割合が10〜40%である、バイアル容器。
【請求項5】
請求項1〜請求項4の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記バイアル容器の高さ方向中央において、前記バイアル容器の全層の平均肉厚に対する前記鎖状オレフィン系樹脂層の平均肉厚の割合が60〜90%である、バイアル容器。
【請求項6】
請求項1〜請求項5の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記鎖状オレフィン系樹脂層に含まれる鎖状オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである、バイアル容器。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記バイアル容器の全層の引張弾性率が500〜900MPaである、バイアル容器。
【請求項8】
請求項1〜請求項7の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記環状オレフィン系樹脂層は、引張弾性率が1700〜1950MPaである、バイアル容器。
【請求項9】
請求項1〜請求項8の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記バイアル容器は、自立可能である、バイアル容器。
【請求項10】
請求項1〜請求項9の何れか1つに記載のバイアル容器であって、
前記バイアル容器は、前記バイアル容器の高さ方向中央での前記バイアル容器の全層の平均肉厚が0.2〜1.0mmである、バイアル容器。
【請求項11】
請求項1〜請求項10の何れか1つに記載のバイアル容器と、前記バイアル容器の口部に装着された栓体を備えるバイアル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイアル容器及びバイアルに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、薬液を収容するバイアルが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015−229505号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バイアルは、薬液を収容するバイアル容器と、バイアル容器の口部に装着された栓体(ゴム栓など)を備える。バイアル容器内の薬液は、注射器を用いて取り出される。注射器は、シリンジと、その先端に設けられた注射針と、シリンジ内を摺動するプランジャを備える。注射針を栓体に突き刺した状態でプランジャを引くことによって、シリンジ内に薬液を吸い上げることができる。
【0005】
薬液をシリンジ内に吸い上げると、吸い上げた薬液の体積分だけバイアル容器の内部が減圧され、シリンジ内の薬液に対して逆流方向の力が加わる。この力が強いとシリンジ内に吸い上げる薬液量を調整しにくくなり、使用感が悪くなる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、使用感に優れたバイアル容器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によれば、バイアル容器であって、前記バイアル容器は、最内層が環状オレフィン系樹脂層であり、かつ前記最内層よりも外側に鎖状オレフィン系樹脂層を備える、バイアル容器が提供される。
【0008】
環状オレフィン系樹脂層は、薬剤低吸着性に優れている一方で剛性が高いので、特許文献1のように、最内層と最外層の両方が環状オレフィン系樹脂層であると容器の剛性が高くなる。容器の剛性が高くなると、容器内部の減圧によって容器が収縮したときに生じる復元力も大きくなり、復元力が大きくなるにつれて、薬液に加わる逆流方向の力が大きくなり、使用感が悪化する。一方、ポリエチレンのような鎖状オレフィン系樹脂層は、環状オレフィン系樹脂層やPET層よりも剛性が低い傾向がある。このため、本発明のように、環状オレフィン系樹脂層の外側に鎖状オレフィン系樹脂層を設けることによって、容器の剛性を低下させて、使用感を向上させることができる。
【0009】
以下、本発明の種々の実施形態を例示する。以下に示す実施形態は互いに組み合わせ可能である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記環状オレフィン系樹脂層は、引張弾性率が1700〜2100MPaである、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記環状オレフィン系樹脂層に含まれる環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度が60〜100℃である、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記バイアル容器の高さ方向中央において、前記バイアル容器の全層の平均肉厚に対する前記環状オレフィン系樹脂層の平均肉厚の割合が10〜40%である、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記バイアル容器の高さ方向中央において、前記バイアル容器の全層の平均肉厚に対する前記鎖状オレフィン系樹脂層の平均肉厚の割合が60〜90%である、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記鎖状オレフィン系樹脂層に含まれる鎖状オレフィン系樹脂は、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンである、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記バイアル容器の全層の引張弾性率が500〜900MPaである、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記環状オレフィン系樹脂層は、引張弾性率が1700〜1950MPaである、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記バイアル容器は、自立可能である、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器であって、前記バイアル容器は、前記バイアル容器の高さ方向中央での前記バイアル容器の全層の平均肉厚が0.2〜1.0mmである、バイアル容器である。
好ましくは、前記記載のバイアル容器と、前記バイアル容器の口部に装着された栓体を備えるバイアルである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。また、各特徴事項について独立して発明が成立する。
【0012】
1.バイアル1の構成
図1に示すように、バイアル1は、バイアル容器2と、栓体3を備える。
【0013】
バイアル容器2は、収容部2aと、収容部2aの上端に設けられた口部2bを備える。収容部2aには薬液が収容される。口部2bは、開口2b1を有する。栓体3の挿入部3aを開口2b1から口部2b内に挿入することによって、栓体3を口部2bに装着可能になっている。収容部2aは、胴部2a1と、胴部2a1の下端に設らけれた底部2a2を備える。容器2は、底部2a2を載置面に載置して自立可能になっている。容器2は、ブロー成形によって形成されたブロー成形体である。ブロー成形の詳細は後述する。栓体3は、ゴムなどの弾性材料で構成されることが好ましい。
【0014】
容器2内の薬液は、注射器を用いて取り出される。注射器は、シリンジと、その先端に設けられた注射針と、シリンジ内を摺動するプランジャを備える。注射針を栓体3に突き刺した状態でプランジャを引くことによって、シリンジ内に薬液を吸い上げることができる。
【0015】
薬液をシリンジ内に吸い上げると、吸い上げた薬液の体積分だけ容器2の内部が減圧され、シリンジ内の薬液に対して逆流方向の力が加わる。この力が強いとシリンジ内に吸い上げる薬液量を調整しにくくなり、使用感が悪くなる。本実施形態では、容器2の剛性を小さくすることによって使用感を高めることを可能にしている。
【0016】
容器2の全層の引張弾性率は、例えば200〜1200MPaであり、500〜900MPaであることが好ましい。この引張弾性率が低すぎると、容器2の剛性が不十分となって、容器2の自立性が不十分になる場合がある。この引張弾性率が高すぎると、容器2の剛性が高くなりすぎ、容器2から薬液を吸い出す際に、容器2内部の減圧によって容器2が収縮したときに生じる復元力も大きくなり、容器2の復元力が大きくなるにつれて、薬液に加わる逆流方向の力が大きくなり、使用感が悪化する場合がある。各層の引張弾性率は、各層を構成する樹脂組成物を用いて、JIS K 7127に準拠して試験片を作成して測定することができる。全層の引張弾性率は、各層の引張弾性率に肉厚比率(=各層の平均肉厚/全層の平均肉厚)を掛けたものを足し合わせることによって算出することができる。なお、平均肉厚とは、周方向の90度間隔の4点で測定した肉厚の平均値を意味する。
【0017】
容器2は、容器2の高さ方向中央での容器2の全層の平均肉厚が0.2〜1.0mmであることが好ましい。この肉厚が薄すぎると容器2の剛性が不十分となって、容器2の自立性が不十分になる場合がある。この肉厚が厚すぎると、容器2の剛性が高くなりすぎ、使用感が悪化する場合がある。この肉厚は、具体的には例えば、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0mmであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0018】
また、容器2の高さ方向の下から10%の位置での全層の平均肉厚をT10と、容器2の高さ方向の下から50%の位置での全層の平均肉厚をT50とすると、T10/T50>1であることが好ましい。この場合、容器2の底部近傍での肉厚が比較的厚くなって注射針を栓体3に刺す際に容器2が座屈しにくくなり、容器2の高さ方向中央部での肉厚が比較的に薄くなって使用感が良好になる。T10/T50の値は、例えば1.05〜2であり、1.1〜1.5がさらに好ましい。この値は、具体的には例えば、1.05、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0019】
容器2は、多層構成であり、最内層が環状オレフィン系樹脂(以下、「COP」)層であり、かつ最内層よりも外側に鎖状オレフィン系樹脂(以下、「PO」)層を備える。容器2は、COP層とPO層の2層構成であってもよく、別の層を含む3層以上の構成であってもよい。別の層としては、COP層とPO層の間の接着層やバリア層が挙げられる。接着層は、接着性樹脂で構成された層であり、接着性樹脂としては、酸変性ポリオレフィン樹脂(例:無水マレイン酸変性ポリエチレン、無水マレイン酸変性ポリプロピレン)等が挙げられる。バリア層としては、EVOHを含む樹脂組成物で構成されたEVOH層が挙げられるが、EVOH層は剛性が高く、容器2の剛性を高めてしまう傾向があるので、EVOH層を含まないことが好ましい。PO層は、最外層であってもよく、PO層の外側に別の層があってもよい。COP層とPO層は、それぞれ、単層構成であってもよく、複数層構成であってもよい。
【0020】
COP層は、COPを含む樹脂組成物で構成された層である。この樹脂組成物は、樹脂成分以外の添加剤を含んでいてもよいが、薬液の汚染を抑制するために樹脂組成物は樹脂成分のみを含むことが好ましい。樹脂成分は、COP以外の樹脂を含んでいてもよいが、樹脂成分中のCOPの割合は、50質量%以上が好ましい。この割合は、例えば50〜100質量%であり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0021】
COPは、環内にエチレン性二重結合を有する重合性の環状オレフィンを少なくとも重合成分とする樹脂であり、重合成分である環状オレフィンは、単環式オレフィンであってもよく、多環式オレフィンであってもよい。
【0022】
前記環状オレフィンとしては、公知のものがいずれも使用可能であるが、代表的なものとしては、ノルボルネン類、シクロペンタジエン類、ジシクロペンタジエン類、さらにはノルボルネン類とシクロペンタジエンとの縮合により得られる多環式オレフィン等を例示することができる。
【0023】
また、COPは、1種類の環状オレフィンの単独重合体であってもよいし、種類の異なる環状ポリオレフィンの共重合体(例えば、単環式オレフィンと多環式オレフィンとの共重合体等)であってもよい。あるいは、環状オレフィンと他の共重合性単量体との共重合体であってもよい。この場合、他の共重合性単量体としては、例えば、エチレンやプロピレン等の鎖状オレフィン、(メタ)アクリル系単量体、不飽和ジカルボン酸又はその誘導体、重合性ニトリル化合物、ビニルエステル類、共役ジエン類等を挙げることができる。
【0024】
ただし、薬剤低吸着性の観点から、1種類の環状オレフィンの単独重合体や、種類の異なる環状ポリオレフィンの共重合体のような、環状ポリオレフィンのみからなるホモポリマーであることが好ましい。環状ポリオレフィンのホモポリマーは、他の共重合性単量体との共重合体に比べて薬剤の吸着性が低い。また、良好な耐衝撃性を備える上でも好ましい。
【0025】
COP層の引張弾性率は、例えば1700〜3300MPaであり、1700〜2100MPaが好ましく、1700〜1950MPaがさらに好ましい。COP層の引張弾性率を小さくすることによって、容器2の剛性を低下させて使用感を向上させることができる。この引張弾性率は、具体的には例えば、1700、1750、1800、1850、1900、1950、2000、2050、2100、2500、3000、3300MPaであり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0026】
COPのガラス転移温度は、例えば60〜160℃であり、60〜100℃が好ましい。容器2をブロー成形によって形成する際に、COP層とPO層を共押出する必要がある。一般に、共押出の際の流動性は、COPの方がPOよりも低い傾向があり、流動性が不足していることに起因してCOP層が局所的に薄くなる等の不具合が生じやすい。一方、COPのガラス転移温度が100℃以下である場合、COPとPOの流動性の差が小さくなり、上記不具合の発生が抑制される。このガラス転移温度は、具体的には例えば、60、65、70、75、80、85、90、95、100、120、140、160℃であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0027】
容器2の高さ方向中央において、容器2の全層の平均肉厚に対するCOP層の平均肉厚の割合は、例えば、5〜50%であり、10〜40%が好ましく、15〜35%がさらに好ましい。この割合が小さすぎると、薬剤低吸着性が不十分になる場合がある。この割合が大きすぎると容器2の剛性が高くなりすぎて使用感が悪化する場合がある。この割合は、具体的には例えば、10、15、20、25、30、35、40%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0028】
PO層は、POを含む樹脂組成物で構成された層である。この樹脂組成物は、樹脂成分以外の添加剤を含んでいてもいなくてもよい。添加剤としては滑剤などが挙げられる。樹脂成分は、PO以外の樹脂を含んでいてもよいが、樹脂成分中のPOの割合は、50質量%以上が好ましい。この割合は、例えば50〜100質量%であり、具体的には例えば、50、60、70、80、90、95、100質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0029】
POは、鎖状オレフィンを重合成分とする樹脂である。鎖状オレフィンとしては、エチレンやポリプロピレンなどが挙げられる。POとしては、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体及びその混合物などが挙げられる。このうち、柔軟性の観点から、低密度ポリエチレン又は直鎖状低密度ポリエチレンが好ましく、直鎖状低密度ポリエチレンがさらに好ましい。
【0030】
容器2の高さ方向中央において、容器2の全層の平均肉厚に対するPO層の平均肉厚の割合は、例えば、50〜95%であり、60〜90%が好ましい。この割合が小さすぎると、容器2の剛性が高くなりすぎて使用感が悪化する場合がある。この割合が大きすぎると、COP層の割合が必然的に小さくなるので、薬剤低吸着性が不十分になる場合がある。この割合は、具体的には例えば、50、60、65、70、75、80、85、90、95%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
【0031】
2.バイアル1の製造方法
バイアル1は、容器2を製造し、容器2内に薬液を充填した後、栓体3を口部2bに装着することによって製造することができる。
【0032】
容器2は、パリソンのブロー成形によって形成することができる。ブロー成形は、ダイレクトブロー成形であってもよく、インジェクションブロー成形であってもよい。ダイレクトブロー成形では、押出機から押し出された溶融状態の筒状パリソンを一対の分割金型で挟んでパリソン内部にエアーを吹き込むことによって容器2を製造する。インジェクションブロー成形では、プリフォームと呼ばれる試験管状の有底パリソンを射出成形によって形成し、このパリソンを用いてブロー成形を行う。
【0033】
何れのブロー成形においても、パリソンの層構成は、容器2の層構成と同様である。多層のパリソンは、共押出成形や多層射出成形等によって形成可能である。
【実施例】
【0034】
1.容器2の製造
内容量が60mlで
図1に示す形状を有する容器2を製造した。層構成は、表1〜表2に示す通りである。実施例は、最内層と、接着層と、最外層の2層構成とし、比較例は、COP層の単層構成とした。接着層の平均肉厚は、容器2の全層の平均肉厚に対して6.5%とした。表中の実施例・比較例に記載した数値は、容器2の最内層と最外層の合計の平均肉厚に対する、最外層又は最内層の平均肉厚の割合(%)を示す。
【0035】
容器2は、各層を構成する樹脂ないし樹脂組成物を共押出成形により多層ダイヘッドから筒状パリソンを押出し、公知のダイレクトブロー成形を行うことによって製造した。容器2の高さ方向の中央での全層の平均肉厚は0.5mmとした。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
表1〜表2中のLLDPEは、プライムポリマー社製、グレード:3500ZAであり、各グレードのCOPのメーカーは、表3に示す通りである。接着層の接着性樹脂には、酸変性ポリエチレン(三菱ケミカル社製、型式:MC721APR5)を用いた。
【0039】
【表3】
【0040】
2.評価
実施例・比較例のCOP層の引張弾性率、COPガラス転移温度、及び全層の引張弾性率は、表1〜表2に示す通りである。
【0041】
実施例・比較例の容器2について、使用感、薬剤低吸着性、及び成形性を評価した。その結果を表1〜表2に示す。
【0042】
全ての実施例では、比較例に比べて、使用感が良好であった。
【0043】
評価方法の詳細は、以下の通りである。
【0044】
<使用感>
まず、容器2内に水60mlを充填し、ゴム栓で密封(アルミかしめ加工)した。注射器を用いて、容器2内の水を20mLずつ3回抜き取り、3回目に抜き取った際の戻り強度をフォースゲージを用いて測定した。フォースゲージは、IMADA製 ZTA−50Nを用いた。得られた測定値に基づき、使用感を以下の基準で評価した。
◎:3.5N以下
○:3.5N超4.5N以下
△:4.5N超6N以下
×:6N超
【0045】
<薬剤低吸着性>
容器2内にl-メントール類エタノール溶液(10質量%)を充填し、60℃で3週間保管した後の濃度の減少率を測定し、薬剤低吸着性を以下の基準で評価した。
○:2%以下
△:2%超4%以下
×:4%超
【0046】
<成形性>
容器2を100個成形したときの、成形不良の発生割合に基づき、成形性を以下の基準で評価した。
◎:5%以下
○:5%超10%以下
△:10%超20%以下
×:20%超
【符号の説明】
【0047】
1 :バイアル
2 :バイアル容器
2a :収容部
2a1 :胴部
2a2 :底部
2b :口部
2b1 :開口
3 :栓体
3a :挿入部