【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例において、
1H及び
13C NMRはJEOL JNM ECA-500 (
1H NMR, 500 MHz;
13C NMR, 125 MHz)またはJEOL JNM ECZ-400 (
1H NMR, 400 MHz;
13C NMR, 100 MHz)で測定した。NMRの化学シフト値はCDCl
3中の微量未標識体の吸収(
1H NMR: δ = 0.00;
13C NMR: δ = 77.0)を内部標準として、ppm単位で表示した。高分解能マススペクトルは Shimazu hybrid IT-TOF mass spectrometer で測定した。
【0038】
実 施 例 1
貴金属種の検討:
以下の式で示される脱水素反応を行った。まず、N−ベンジル−6,7−ジヒドロインドール−4,5−ジカルボン酸ジメチル(65mg、0.2mmol)と各10%触媒10mol%に蒸留水(1mL)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、メンブランフィルター(Millipore, Millex-LH:0.20mm)でろ過した。フィルター中の触媒を酢酸エチル(10mL×3)で洗浄し、ろ液と合わせてから蒸留水(20mL)を加え、分液抽出した。水層をさらに酢酸エチル(10mL×2)で抽出し、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製した収率を表2に示す。
【0039】
【化11】
【0040】
【表2】
【0041】
この結果により、ルテニウム、イリジウム、パラジウム、白金またはロジウムを炭素担体に担持した不均一系貴金属触媒を用いることにより、シクロヘキサジエン類の脱水素反応が行われ、1の芳香族化合物が収率よく得られることが分かった。
【0042】
実 施 例 2
1−Pot反応:
以下の式で示される脱水素反応を1−Potで行った。まず、N−ベンジル−2−ビニルピロール(1a:37mg、0.2mmol)のトルエン(1mL)溶液にアセチレンジカルボン酸ジメチル(2a:30μL、0.24mmol)を加えてアルゴン雰囲気下120℃で24時間撹拌して、シクロヘキサジエン類を含む反応液を得た。次に、この反応液を室温まで放冷し、10%Ruカーボン粉末(乾燥品)Kタイプ(エヌ・イー ケムキャット社製)20mg(10mol%)を加えてから酸素雰囲気下110℃で24時間さらに攪拌した。反応液を室温まで放冷し、酢酸エチル(50mL)を用いてメンブランフィルター(Millipore, Millex-LH、0.20mm)でろ過した。得られたろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、4a(46.5mg、72%)が得られた。
【0043】
【化12】
【0044】
この結果により、本発明方法は1−Potで行えることが分かった。
【0045】
実 施 例 3
基質多様性の検討:
以下の式で示される脱水素反応を実施例2と同様にして1−Potで行った。また、この脱水素反応における基質、反応条件、生成物等は表3に示した。
【0046】
【化13】
【0047】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【表3-4】
【表3-5】
【0048】
この結果から、種々の共役ジエンとアルキンをディールス・アルダー反応で付加重合させてシクロヘキサジエン類またはシクロヘキセン類を得て、更にシクロヘキサジエン類またはシクロヘキセン類を脱水素して芳香族化合物が得られることが分かった。
【0049】
実 施 例 4
触媒の繰り返し使用:
以下の式で示される脱水素反応を行った。まず、N−ベンジル−6,7−ジヒドロインドール−4,5−ジカルボン酸ジメチル(3a:65mg、0.2mmol)と10%Ruカーボン粉末(乾燥品)Kタイプ(エヌ・イー ケムキャット社製)20mg、10mol%に蒸留水(1mL)を加え、アルゴン雰囲気下、100℃で24時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、メンブランフィルター(Millipore, Millex-LH、0.20mm)でろ過した。フィルター中の触媒を酢酸エチル(10mL×3)で洗浄し、ろ液と合わせてから蒸留水(20mL)を加え、分液抽出した。水層をさらに酢酸エチル(10mL ×2)で抽出し、有機層を合わせて無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過した。ろ液を減圧留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ、4a(56.1mg、 87%)が得られた。使用した触媒をろ紙上でメタノール(10mL×5)と蒸留水(10mL×5)で交互に洗浄し、24時間減圧乾燥して回収し、再度利用した結果を表4に示す。
【0050】
【化14】
【0051】
【表4】
【0052】
本発明方法で用いられる不均一系貴金属触媒は、繰り返し使用できることが分かった。なお、2回目と3回目の転化率や収率が下がっているのは、触媒自体の賦活処理や還元処理を行っていないためであり、それらの処理を行えば1回目と同等の添加率や収率となると考えられる。
【0053】
実 施 例 5
芳香化反応:
以下の式で示される脱水素反応を実施例1と同様にして行った。また、この脱水素反応における基質、反応条件、生成物等は表5に示した。
【0054】
【化15】
【0055】
【表5】
【0056】
この結果から、種々の複素環を有するシクロヘキサジエン類またはシクロヘキセン類からインドールの合成が可能なことが分かった。
【0057】
実 施 例 6
ピロロカルバゾールジオン誘導体の1−Pot合成:
以下の式で示される脱水素反応を1−Potで行った。まず、N−ベンジル−3−ビニルインドール(1a:46mg、0.2mmol)のトルエン(1mL)溶液に、アセチレンジカルボン酸ジメチル(2a:30μL、0.24mmol)を加えてアルゴン雰囲気下150℃で24時間撹拌した。反応液を室温まで放冷し、10%Ruカーボン粉末(乾燥品)Kタイプ (エヌ・イー ケムキャット社製)20mg、(10mol%)を加えてから酸素雰囲気下110℃で48時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、トルエンを減圧留去してN,N−ジメチルエチレンジアミン(1.5mL)とDMF(1.5mL)を加えて150℃でさらに24時間攪拌した。反応液を室温まで放冷し、減圧濃縮した。残渣をエーテル(50mL)でメンブランフィルター(Millipore, Millex-LH、0.20mm)を用いてろ過した。ろ液を分液抽出し、有機層を無水硫酸ナトリウムで乾燥後ろ過した。ろ液を減圧濃縮し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製したところ2−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−10−ベンジル−1,2,3,10−テトラヒドロピロロ[3,4−a]カルバゾール−1,3−ジオン(
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 8.34 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 8.11 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.70 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.49-7.45 (m, 1H), 7.35-7.28 (m, 2H) 7.25-7.17 (m, 3H), 7.08 (d, J = 6.4 Hz, 2H), 6.30 (s, 2H), 3.79 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.59 (t, J = 6.8 Hz, 2H), 2.28 (s, 6H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 169.0, 168.3, 142.4, 137.8, 136.7, 130.9, 130.2, 128.6, 128.1, 127.2, 126.3, 125.3, 122.5, 120.8, 120.7, 113.9, 113.3, 110.6, 57.1, 50.0, 45.5, 35.9; HRMS: m/z [M+H]
+ Calcd for C
25H
24N
3O
2 398.1863; Found 398.1869.47mg、0.118mmol、59%)が1−Potで得られた。
【0058】
【化16】
【0059】
実 施 例 7
2-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-6-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピロロ[3,4-e]インドール-1,3-ジオンの1−Pot合成:
実施例6において、基質をN−ベンジル−3−ビニルインドールにかえてN−ベンジル−2−ビニルピロールとした以外は同様に反応を行ったところ、2-[2-(ジメチルアミノ)エチル]-6-ベンジル-1,2,3,6-テトラヒドロピロロ[3,4-e]インドール-1,3-ジオン(
1H NMR (400 MHz, CDCl
3): δ 7.59 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.49 (d, J = 8.0 Hz, 1H), 7.39 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 7.33-7.29 (m, 3H), 7.09 (dd, J = 7.2, 1.6 Hz, 1H) , 7.05 (d, J = 3.2 Hz, 1H), 5.39 (s, 2H), 3.81 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.61 (t, J = 7.2 Hz, 2H), 2.30 (s, 6H);
13C NMR (100 MHz, CDCl
3): δ 169.9, 169.5, 140.6, 136.2, 133.7, 129.0, 128.1, 126.6, 125.0, 124.3, 123.9, 116.0, 114.2, 101.2, 57.4, 50.6, 45.5, 35.7; HRMS: m/z [M+H]
+ Calcd for C
21H
22N
3O
2 348.1707; Found 348.1706.)が1−Potで得られ、その収率は64%となった。
【0060】
【化17】