(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-134843(P2021-134843A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】パイプクランプ
(51)【国際特許分類】
F16B 2/10 20060101AFI20210816BHJP
E04G 7/06 20060101ALI20210816BHJP
E04G 5/04 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
F16B2/10 B
E04G7/06
E04G5/04 F
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2020-30775(P2020-30775)
(22)【出願日】2020年2月26日
(71)【出願人】
【識別番号】000167211
【氏名又は名称】イイファス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 勝夫
【テーマコード(参考)】
3J022
【Fターム(参考)】
3J022DA14
3J022DA15
3J022EA42
3J022EB14
3J022EC17
3J022EC22
3J022FB12
3J022GA04
3J022GA12
3J022GB23
3J022GB25
(57)【要約】
【課題】 パイプ外周方向に対して略均等な挟持力で固定することができ、製造コストを低減し、容易に製品管理することができるパイプクランプを提供する。
【解決手段】 パイプの外周面に合わせて略半円弧状に形成された一対のクランプ片2,2を、各一端部を回動自在に軸支して他端部を開閉自在に構成してなるパイプクランプ1であって、前記一対のクランプ片2,2は、同一形状に形成されており、かつ、半円弧状の両側縁部31を縮径させるとともに外方向に屈曲させて前記パイプを略半円弧面41で挟持可能に形成された半円弧面リブ4を有している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面に合わせて略半円弧状に形成された一対のクランプ片を、各一端部を回動自在に軸支して他端部を開閉自在に構成してなるパイプクランプであって、
前記一対のクランプ片は、同一形状に形成されており、かつ、半円弧状の両側縁部を縮径させるとともに外方向に屈曲させて前記パイプを略半円弧面で挟持可能に形成された半円弧面リブを有している、前記パイプクランプ。
【請求項2】
前記一対のクランプ片の本体部における略半円弧面の頂部中央位置には、他の固定金具と連結するための連結部材を嵌入可能な連結孔が形成されている、請求項1に記載のパイプクランプ。
【請求項3】
前記一対のクランプ片における開閉自在な他端部には、外方向に延出するように屈曲されてなる締結部が形成されているとともに、この締結部の略中央位置に締結部材を挿通可能な締結孔が形成されている、請求項1または請求項2に記載のパイプクランプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、仮設の足場等に用いられるパイプを狭持して固定するパイプクランプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
建設工事や塗装工事などでは高所作業を行うために単管パイプを連結して組み立てられる仮設の足場が用いられる。このときパイプ同士の連結には各種クランプが用いられており、例えば、パイプ同士を直交した状態で固定する直交クランプ、パイプ同士の角度を自在に変えて連結することのできる自在クランプ、3本のパイプを連結することのできる3連クランプ、さらにはパイプとH鋼とを連結することのできるH鋼クランプなどが用いられる。
【0003】
パイプクランプは、このような様々なクランプにおいてパイプを固定するための金具であり、複数の円弧状のクランプ片を回動自在に軸支して一端側を開閉自在に構成している。そして各クランプ片によりパイプを挟持し、開放端部を締結材により締結することでパイプを他のパイプや鋼材等の各種締結材に固定するようになっている。
【0004】
このようなパイプクランプについて、これまでに様々な構成が提案されている。例えば、実開平3−78841号公報では、パイプ外周の略半分に係合する弧状縁を形成したL字状抱持基体の一端部に、パイプ外周の残りの略半分に係合する弧状縁を形成した抱持開閉体の基端部を開閉自在に枢着し、内周面に雌螺子部を形成した開閉筒に頭付締結ボルトを螺入し、抱持開閉体の開放端部に頭付締付ボルトの先端部を嵌入する嵌入溝を形成したことを特徴とする仮設用クランプが提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平3−78841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された発明など、これまでのパイプクランプでは各クランプ片の形状が異なることから、パイプ外周方向に対して挟持力を均等にかけられないという問題がある。また、パイプを挟持する面積が小さく、十分な挟持力がないという欠点もある。このため挟持力不足や挟持力のアンバランスからパイプが空回りしてしまうおそれがあり、高所作業に用いられる仮設足場においては足場崩壊のおそれもあるため大変危険である。
【0007】
また、開放端部を強く締め付けすぎることにより、クランプ片が変形したり破損したりすることもある。このため使用後は次の使用に備えて破損等の有無のチェックを行うが、メンテナンスの頻度が高まり維持管理の負担が大きい。
【0008】
さらに、従来の一対のクランプ片は互いに異なる形状であるため、製造コストや製品管理の点で改善の余地があった。
【0009】
本発明は、以上のような問題点を解決するためになされたものであって、パイプ外周方向に対して略均等な挟持力で固定することができ、製造コストを低減し、容易に製品管理することができるパイプクランプを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るパイプクランプは、強靱性を高めるとともにパイプを強力に締め付け可能であって、パイプとの空転を防止するとともに、製造コストを低減しさらに維持管理を容易にするという課題を解決するために、パイプの外周面に合わせて略半円弧状に形成された一対のクランプ片を、各一端部を回動自在に軸支して他端部を開閉自在に構成してなるパイプクランプであって、前記一対のクランプ片は、同一形状に形成されており、かつ、半円弧状の両側縁部を縮径させるとともに外方向に屈曲させて前記パイプを略半円弧面で挟持可能に形成された半円弧面リブを有している。
【0011】
また、本発明の一態様として、汎用性を高めるという課題を解決するために、前記一対のクランプ片の本体部における略半円弧面の頂部中央位置には、他の固定金具と連結するための連結部材を嵌入可能な連結孔が形成されていてもよい。
【0012】
さらに、本発明の一態様として、パイプを締結する部分における強靱性を高めるという課題を解決するために、前記一対のクランプ片における開閉自在な他端部には、外方向に延出するように屈曲されてなる締結部が形成されているとともに、この締結部の略中央位置に締結部材を挿通可能な締結孔が形成されていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、パイプ外周方向に対して略均等な挟持力で固定することができ、製造コストを低減し、容易に製品管理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係るパイプクランプの一実施形態を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態のパイプクランプを示す(a)左側面図および(b)正面図である。
【
図3】本実施形態のパイプクランプと他のパイプクランプとを横断面が多角形状の連結部材により連結した金具を示す(a)斜視図、(b)断面図および(c)前記連結部材の側面図および断面図である。
【
図4】本実施形態のパイプクランプと他のパイプクランプとを横断面が円形状の連結部材により連結した金具を示す(a)断面図および(b)前記連結部材の側面図および断面図である。
【
図5】本実施形態のパイプクランプを3連クランプとして構成した状態を示す斜視図である。
【
図6】本実施形態のパイプクランプの一方を(a)H鋼クランプとして構成した状態を示す斜視図および(b)このH鋼クランプをH鋼に連結した状態を示す斜視図である。
【
図7】本実施形態のパイプクランプを用いた直交クランプにパイプ状の壁つなぎ材を固定した状態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係るパイプクランプの一実施形態について図面を用いて説明する。
【0016】
本実施形態のパイプクランプ1は、
図1に示すように、主に、一対のクランプ片2,2からなる。前記一対のクランプ片2,2は、各一端部を回動自在に軸支して他端部を開閉自在に構成されている。また、一対のクランプ片2,2は、それぞれのクランプ片2が同一形状に形成されている。
【0017】
各クランプ片2は、パイプの外周面に併せて略半円弧状に形成された本体部3と、両側縁部31に形成された半円弧面リブ4と、一端部を回動自在に軸支する軸支部5と、開閉自在な端部側に形成される締結部6とを有する。
【0018】
本体部3は、仮設用の足場パイプやパイプ状の壁つなぎ材などパイプ状の部材を挟持固定することのできる一対のクランプ片2,2の本体となる部分であり、所定幅を備えた略半円弧状に形成されている。
図1に示すように、前記本体部3の略半円弧面の頂部中央位置には、他の固定金具7と連結可能に構成するための連結孔32が形成されている。
【0019】
連結孔32は、他の固定金具7との連結に用いられる連結部材8を嵌入可能な大きさの孔であり、本実施形態では、
図1ないし
図4に示すように、本体部3の略半円弧面の頂部中央位置を外側方向に膨出させるとともにその外側面を平坦に形成し、その平坦面33の略中央位置に開口されている。これにより、
図3および
図4に示すように、連結される他の固定金具7とは平坦な面同士で連結することができる。なお、本実施形態における他の固定金具7とは、本実施形態のパイプクランプ1と連結して各種クランプとして構成可能な金具であり、例えば、本実施形態と同形のパイプクランプ1やH鋼等に締め付け可能なクランプ、垂木止め可能なL字金具などが例示される。
【0020】
連結孔32の内周形状は、特に限定されるものではないが、
図1に示すように、本実施形態では多角形状に形成されている。また、後述するように、前記連結孔32に嵌入される連結部材8を横断面が多角形状および円形状から適宜選択することで、他の固定金具7と直交状態で固定的に連結したり、回動自在に連結したりできるようになっている。
【0021】
半円弧面リブ4は、クランプ片2自体の強靱性を向上させるとともに挟持するパイプと広い面で均等に接触させることができるように形成された部分であり、
図1および
図2に示すように、本体部3における半円弧状の両側縁部31に形成されている。本実施形態では、本体部3の両側縁部31を、締結するパイプの外周径に合わせて縮径し、その先端部分には挟持するパイプの外周面と平行するように先端を外側方向に屈曲させてなる略半円弧面41を有している。略半円弧面41の幅は、
図3および
図4に示すように、本体部3の厚さより幅広に形成されており、挟持したときにパイプの外周面に対し本体部3の厚さと同等の幅からなる縁端部で接するよりも広い面積で接触させることができるように構成されている。また、半円弧面リブ4は、クランプ片2の円弧部分の長さとほぼ同等の長さを備えており、かつ、一対のクランプ片2,2として4カ所が同一長さに構成されることにより、パイプを均等な挟持力で挟持するようになっている。
【0022】
軸支部5は、一対のクランプ片2,2同士を回動自在に軸支する部分であり、本体部3の一端部を外方向に延出させて形成されている。本実施形態における軸支部5は、
図2(a)に示すように、側面視で略コの字形に形成された軸支部本体51と、各クランプ片2の軸支部5同士を貫通する軸部材52とから構成される。
図2(b)や
図3(b)に示すように、本実施形態における軸支部本体51は、他端部側を開閉自在に構成するため、連結した他のクランプ片2の本体部3の外周面や軸支部本体51の内周面に引っかからないように縁部が円弧状に形成されている。このように一対のクランプ片2,2は、軸支部5においても同一形状に形成されている。また、軸部材52は、特に限定されるものではないが、本実施形態ではリベットにより構成されている。
【0023】
締結部6は、一対のクランプ片2,2における開閉自在な他端部を締結するための部分であり、本体部3を外方向に延出するように屈曲形成されている。この連結部6の略中央位置には、締結部材9を挿通可能な締結孔61が形成されている。本実施形態における締結孔61は、強靱性を高めるため、周方向に開放部のない環状に形成されている。締結部材9は、特に限定されるものではないが、本実施形態では、一方のクランプ片2の締結部6外側に溶接固定された溶接ナット91と、この溶接ナット91に締結可能な六角ボルト92とからなる。
【0024】
次に、本実施形態のパイプクランプ1における各構成の作用について説明する。
【0025】
本実施形態のパイプクランプ1では、締結部6の締結部材9を取り外し、一対のクランプ片2,2の他端部側を開放する。そして、各クランプ片2の間にパイプを配置して他端部側を閉鎖する。
【0026】
次に、締結孔61に締結部材9を挿通させ各クランプ片2の他端部側を締結する。本実施形態における締結孔61は、周方向に開放部のない環状に形成されているため高い強靱性を有しており、変形や破損しにくく強い締結力をもって締結することができる。
【0027】
また、一対のクランプ片2,2は、同一形状に形成されているため半円弧面リブ4がパイプに対して均等な力で挟持する。このとき半円弧面リブ4の略半円弧面41が、パイプに対して均等な広い面積で接するため強い摩擦力が発揮される。よって、パイプに対する空転を効果的に防ぐことができる。また、リブ構造によりクランプ片2の本体部3自身も強靱性を有しており、破損しにくい構造である。
【0028】
また、本実施形態のパイプクランプ1は、連結部材8を用いて他の固定金具7と連結することで、用途に応じて直交クランプ、自在クランプ、3連クランプおよびH鋼クランプなど、様々な種類のクランプとして構成することができる。
【0029】
例えば、
図3に示すように、他のパイプクランプ1と連結孔32の内周形状に応じて横断面が多角形状に形成された連結部材8によって連結した場合、各パイプクランプ1の相対的な角度を固定した状態で連結することができる。よって、90度回転した状態で連結すればパイプ同士を直交させた状態で連結することのできる直交クランプとして構成させることができる。
【0030】
また、
図4に示すように、他のパイプクランプ1と回動可能な横断面が円形状に形成され連結部材8によって連結した場合、各パイプクランプ1は相対的に自在に回転することができる。よって、パイプ同士を任意の角度で連結することのできる自在クランプとして構成させることができる。
【0031】
さらに、一対のクランプ片2,2が同一形状に形成されており、連結孔32が両クランプ片2,2に形成されているため、複数のパイプクランプ1を連設することができる。例えば、
図5に示すように、3個のパイプクランプ1同士を連結部材8で連結することで3連クランプとして構成させることができる。
【0032】
また、本実施形態のパイプクランプ1には、パイプクランプ1以外の部材を連結することができる。例えば、
図6(a)に示すように、他の固定金具7としてH鋼に連結可能なクランプを連結することでH鋼クランプとして構成させることができる。このとき連結部材8に円形状に形成されリベットを用いることで、
図6(b)に示すように、連結したH鋼に対しパイプを自在に回動させることができる。
【0033】
さらに、仮設足場用のパイプに限定されるものではなく、パイプ状の部材等に固定することができる。例えば、
図7に示すように、本実施形態のパイプクランプ1を用いた直交クランプの一方のパイプクランプ1にパイプ状の壁つなぎ材10を固定することができる。
【0034】
以上のような本実施形態のパイプクランプ1によれば、以下の効果を奏することができる。
1.一対のクランプ片2,2を同一形状に形成しているためパイプ外周に対して均等な挟持力でパイプを固定することができる。
2.半円弧面リブ4を有することで本体部3の強靱性を高めることができる。
3.半円弧面リブ4の略半円弧面41によってパイプとの接触面積が広くなり、強い摩擦力を発揮するためパイプとの空転を防止することができる。
4.本体部3における略半円弧面の頂部中央位置に連結孔32を形成したことにより、種々のクランプに応用することができ汎用性が高い。
5.締結孔61を開放部の無い環状に形成しているため締結部6の強靱性を高めることができる。
6.一対のクランプ片2,2を同一形状に形成したことにより、部品加工および組み立てが容易になり製造コストを削減し、製品管理も容易にすることができる。
7.締結部6を締結する締結部材9を別体としているため他端部の開放時に締結部材9が突出することがない。
【0035】
なお、本発明に係るパイプクランプは、前述した実施形態に限定されるものではなく、適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0036】
1 パイプクランプ
2 クランプ片
3 本体部
4 半円弧面リブ
5 軸支部
6 締結部
7 他の固定金具
8 連結部材
9 締結部材
10 壁つなぎ材
31 両側縁部
32 連結孔
33 平坦面
41 略半円弧面
51 軸支部本体
52 軸部材
61 締結孔
91 溶接ナット
92 六角ボルト
【手続補正書】
【提出日】2020年5月22日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
パイプの外周面に合わせて略半円弧状に形成された一対のクランプ片を、各一端部を回動自在に軸支して他端部を開閉自在に構成してなるパイプクランプであって、
前記一対のクランプ片は、同一形状に形成されており、かつ、半円弧状の両側縁部を縮径させるとともに外方向に屈曲させて前記パイプを略半円弧面で挟持可能に形成された半円弧面リブを有しており、
一対の前記クランプ片を回動自在に軸支する軸支部が、
前記各一端部から外方向に延出されて側面視で略コの字形に形成されているとともに、当該略コの字の開口側を互いに向かい合わせて軸方向にずらして嵌め合わせ、かつ、軸方向に並置される各一対の支持側部を貫通する孔が形成されてなる一対の軸支部本体と、
前記各貫通孔に挿通されて一対の前記軸支部本体を支持する軸部材と、
から構成されている、前記パイプクランプ。
【請求項2】
前記一対のクランプ片の本体部における略半円弧面の頂部中央位置には、他の固定金具と連結するための連結部材を嵌入可能で、かつ内周形状が多角形状に形成された連結孔が形成されている、請求項1に記載のパイプクランプ。
【請求項3】
前記一対のクランプ片における開閉自在な他端部には、外方向に延出するように屈曲されてなる締結部が形成されているとともに、この締結部の略中央位置に締結部材を挿通可能な締結孔が形成されている、請求項1または請求項2に記載のパイプクランプ。