【解決手段】給水加温システム1であって、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒循環ラインL9により環状に接続され、圧縮機11の駆動により凝縮器12で温熱を取り出す蒸気圧縮式のヒートポンプ回路10と、熱回収用熱交換器40と、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源流体を流通させる熱源流体ラインL5と、熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に給水W1を流通させる給水ラインL1と、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの過熱度に基づいて制御され、冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段と、凝縮器12から流出する給水W1の出湯温度に基づいて制御され、給水流量を調整する給水流量調整手段と、冷媒流量調整手段および給水流量調整手段を制御する制御手段と、を備える。
前記熱源流体ラインは、前記熱回収用熱交換器で熱源流体と給水をカウンターフローで熱交換させた後、前記蒸発器で熱源流体と液冷媒をカウンターフローで熱交換させる接続構成である、請求項1に記載の給水加温システム。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の給水加温システム1の好ましい一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書における「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。
【0020】
図1は、本実施形態に係る給水加温システム1の構成を模式的に示す図である。
図1に示すように、給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10で加温した給水W1を、温水W2として温水需要箇所に供給するシステムである。
【0021】
より詳細には、本実施形態の給水加温システム1は、給水W1として利用される補給水Wを貯留する補給水タンク70と、給水W1を加温する熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10と、加温された給水W1を温水W2として貯留する温水タンク60と、熱源流体としての熱源水W5を貯留する熱源水タンク50を備える。
また、本実施形態の給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10の凝縮器12の順に給水W1を流通させる給水ラインL1と、温水タンク60内の温水W2を熱回収用熱交換器40よりも上流側に還流させる還流ラインL2と、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパスさせるバイパスラインL3と、温水タンク60内の温水W2を温水需要箇所に供給するための温水供給ラインL4と、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10の蒸発器14に熱源流体としての熱源水W5を流通させる熱源流体ラインL5と、を備える。
【0022】
補給水タンク70は、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10で加温する給水W1として利用される補給水Wを貯留するタンクであり、給水ラインL1が接続されている。
【0023】
熱回収用熱交換器40は、給水ラインL1を流れる給水W1と、熱源流体ラインL5を流れる熱源水W5との間の間接熱交換を行う間接熱交換器である。より詳細には、熱回収用熱交換器40は、ヒートポンプ回路10の凝縮器12を通過する前の給水W1と、ヒートポンプ回路10の蒸発器14を通過する前の熱源水W5との間で熱交換を行う。
給水ラインL1の給水W1は、熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に通過し、熱源流体ラインL5の熱源水W5は、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に通過する。
【0024】
ヒートポンプ回路10は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒循環ラインL9により環状に接続され、圧縮機11の駆動により凝縮器12で温熱を取り出す蒸気圧縮式のヒートポンプ回路である。この冷媒循環ラインL9には冷媒Rが流れる。
圧縮機11は、駆動源としての電気モータ15を有しており、フロンガス等のガス状の冷媒Rを圧縮して高温高圧の冷媒Rにする。凝縮器12は、給水ラインL1を通じて送られてくる給水W1へ放熱して、圧縮機11からの冷媒Rを凝縮液化する。膨張弁13は、凝縮器12から送られた冷媒Rを通過させることで、冷媒Rの圧力と温度とを低下させる。蒸発器14は、熱源流体ラインL5を通じて送られてくる熱源水W5から吸熱して、膨張弁13から送られる冷媒Rを蒸発させる。
このように、ヒートポンプ回路10は、蒸発器14において、冷媒Rが外部から熱を奪って気化する一方、凝縮器12において、冷媒Rが外部へ放熱して凝縮している。このような原理を利用して、ヒートポンプ回路10は、蒸発器14において、熱源水W5から熱をくみ上げ、凝縮器12において、給水ラインL1の給水W1を加温する。
【0025】
ヒートポンプ回路の冷媒循環ラインL9には、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの吸込温度を検知する吸込温度センサ17と、蒸発器14から流出するガス冷媒Rの蒸気圧力を検知する蒸気圧力センサ18と、が設けられている。
【0026】
ここで、膨張弁13は、ヒートポンプ回路10の冷媒循環ラインL9を流れる冷媒Rの流量を調整する冷媒流量調整手段を構成する。具体的には、膨張弁13は、比例制御式のニードル弁として構成され、駆動用ステッピングモータの回転数制御によりニードル弁のストロークを変え、弁開度を調節することで、冷媒Rの流量を調整することができる。
【0027】
温水タンク60は、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10で加温された給水W1を温水W2として貯留するタンクである。
温水タンク60内に貯留された温水W2は、循環して加温することが可能である。具体的には、温水タンク60内の温水W2は、還流ラインL2を通じて給水ラインL1と合流し、給水ラインL1を通じて、再度、熱回収用熱交換器40および凝縮器12を通過して加温され、温水タンク60内に戻ることが可能である。
そして、温水タンク60には、温水タンク60内の温水W2の温度を検知する温水温度センサ61を備える。また、温水タンク60には、温水タンク60内の水位を検出する水位検出部62が設けられている。本実施形態においては、水位検出部62は、複数の電極棒を備える電極式水位検出器により構成されている。具体的には、長さの異なる2本の電極棒621、622が、その下端部の高さ位置を互いに異ならせて差し込まれて保持されている。本実施形態においては、電極棒621、622が、順に下端部の高さ位置を低くして、温水タンク60に挿入されている。各電極棒621、622は、その下端部が水に浸かるか否かにより、下端部における水位の有無を検出する。
本実施形態においては、温水温度センサ61および水位検出部62の検出結果を用いるなどして、制御部100が、後述の通水モードの切り替え制御を行う。この制御内容については、追って詳細に説明する。
【0028】
熱源水タンク50は、ヒートポンプ回路10の熱源流体としての熱源水W5を貯留する。熱源水W5としては、例えば工場の廃温水などが用いられる。熱源水タンク50には、所定以上の熱源水をあふれさせる不図示のオーバーフローラインが設けられている。また、熱源水タンク50には、熱源水が所定の低水位を下回っていないことを監視するための、不図示の水位検出部が設けられている。
【0029】
給水ラインL1は、その上流側が補給水タンク70に接続され、その下流側が温水タンク60に接続されている。そして、給水ラインL1には、上流側から、給水ポンプ21、第1逆止弁23、第1給水温度センサ24、バイパスライン分岐部に配置された三方弁25、熱回収用熱交換器40、第2給水温度センサ26、凝縮器12、出湯温度センサ27が順次配置されている。
【0030】
給水ポンプ21は、インバータにより回転数を制御可能とされる。給水ポンプ21の回転数を変更することで、後述の一過通水モードの場合において、給水ラインL1を介した温水タンク60への給水流量を調整することができる。すなわち、この給水ポンプ21は、一過通水モード時における給水流量調整手段を構成する。
第1逆止弁23は、後述の還流ラインL2の合流部よりも上流側に設けられている。これにより、後述の循環通水モードの際に、温水W2が補給水タンク70側に流れ込むのを防ぐ。
第1給水温度センサ24は、熱回収用熱交換器40に流入する前の給水W1の温度を検知する熱交換器流入前給水温度センサである。この第1給水温度センサ24は、バイパスラインL3の分岐部の上流側に設けられている。
三方弁25は、バイパスラインL3の分岐部に配置されている。この三方弁25は、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパスさせるか否かを切り替える手段であり、予熱モード切替手段を構成する。バイパスラインL3は、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパスさせるバイパスラインである。
第2給水温度センサ26は、ヒートポンプ回路10の凝縮器12に流入する前の給水W1の温度を検知する給水温度センサである。この第2給水温度センサ26は、凝縮器12の上流側に配置されており、本実施形態においては、熱回収用熱交換器40の下流側に配置されている。
出湯温度センサ27は、凝縮器12から流出する加温された給水W1の出湯温度を検知する。
【0031】
還流ラインL2は、その上流側が温水タンク60に接続され、その下流側が給水ラインL1に接続されている。そして、還流ラインL2には、上流側から、還流ポンプ31(循環ポンプ31)、第2逆止弁33が順次配置されている。
【0032】
還流ポンプ31は、インバータにより回転数を制御可能とされる。還流ポンプ31の回転数を変更することで、後述の循環通水モードの場合において、還流ラインL2および給水ラインL1を介して温水タンク60に戻るように循環する給水流量を調整することができる。すなわち、この還流ポンプ31は、循環通水モード時における給水流量調整手段を構成する。
第2逆止弁33は、還流ラインL2において、給水ラインL1と還流ラインL2の合流部よりも上流側に設けられている。これにより、後述の一過通水モードの際に、補給水タンク70からの補給水Wが温水タンク60側に流れ込むのを防ぐ。
【0033】
このような給水ラインL1と還流ラインL2を備えることにより、還流ポンプ31を停止した状態で給水ポンプ21を作動させると、補給水タンク70からの補給水Wを給水W1として、熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に通して加温しながら温水タンク60へ給水することができる。これを、一過通水モードという。一方、給水ポンプ21を停止した状態で還流ポンプ31を作動させると、温水タンク60内の温水W2を給水W1として熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に通して再加温しながら温水タンク60へ戻して、温水タンク60内の貯留水を循環させることができる。これを、循環通水モードという。また、給水ポンプ21および還流ポンプ31を共に停止すると、熱回収用熱交換器40および凝縮器12への通水を停止することができる。これを、通水停止モードという。
【0034】
すなわち、本実施形態においては、給水ポンプ21および還流ポンプ31が、還流ラインL2に温水W2を流通させずに凝縮器12に通水する一過通水モードと、還流ラインL2に温水W2を流通させながら凝縮器12に通水する循環通水モードと、凝縮器12への通水を停止する通水停止モードと、を切り替える通水モード切替手段を構成している。
【0035】
そして、温水タンク60内の温水W2は、温水供給ラインL4を通じて、温水需要箇所に供給される。
温水供給ラインL4には、温水供給ポンプ63が設けられている。温水需要箇所の例としては、蒸気ボイラの給水利用が挙げられる。但し、温水W2の利用先は、蒸気ボイラに限らない。例えば、食品・飲料・薬品用の容器洗浄や、パストライザー殺菌(瓶詰の殺菌)等に、本実施形態の給水加温システム1により製造した温水W2を利用してもよい。この場合は、常に、60℃〜80℃程度の高温域の温水W2の供給が求められることがある。本実施形態の給水加温システム1によれば、このような、常に所定の温度範囲内の温度の温水の供給が要求される用途において、例えば、温水タンク60内に加温された給水W1のみが供給されるシステム(温水タンク60内に加温されていない補給水が直接供給されないシステム)において、特に好適に、温水を効率よく加温し、かつその温度を維持しつつ供給することができる。
【0036】
熱源流体ラインL5には、上流側から、熱源供給ポンプ53、第1熱源温度センサ54、熱回収用熱交換器40、第2熱源温度センサ55、蒸発器14が順次配置されている。
熱源供給ポンプ53を作動させることで、熱源水タンク50からの熱源水W5を、熱回収用熱交換器40と蒸発器14の順に流通させることができる。
第1熱源温度センサ54は、熱回収用熱交換器に流入させる前の熱源水W5の温度を検知する、熱交換器流入前熱源温度センサである。なお、本実施形態においては、第1熱源温度センサ54は、熱源流体ラインL5に設けられているが、このセンサは、熱源水タンク50に設けられていてもよい。
第2熱源温度センサ55は、蒸発器14で冷媒Rとの間で熱交換を行う熱源流体の温度を検知する熱源温度センサである。本実施形態においては、蒸発器14に流入する前の熱源水W5の温度を検出している。この第2熱源温度センサ55は、蒸発器14の上流側に配置されており、本実施形態においては、熱回収用熱交換器40の下流側に配置されている。
【0037】
なお、上述のとおり、熱源流体ラインL5は、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源水W5を流通させる接続構成となっている。
このように、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで給水W1の予熱量を増やし、熱回収用熱交換器40の熱出力をアップさせることができる。なお、熱源水W5の温度が高いほど熱出力を高める効果が大きい。
【0038】
また、熱源流体ラインL5は、
図1に示すとおり、熱回収用熱交換器40で熱源水W5と給水W1をカウンターフローで熱交換させた後、蒸発器14で熱源水W5と液冷媒Rをカウンターフローで熱交換させる接続構成となっている。
このように、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源水W5を流し、かつ熱回収用熱交換器40と蒸発器14のそれぞれで給水W1の流れ方向に対してカウンターフローで流すことにより、熱回収量の最大化を図ることができる。
【0039】
次に、本実施形態の給水加温システム1の制御部100について説明する。
図2は、本実施形態の給水加温システム1の制御手段としての制御部100のブロック図である。制御部100は、目標過熱度設定部111と、過熱度算出部112と、冷媒流量制御部113と、目標出湯温度設定可能範囲決定部121と、目標出湯温度設定部122と、給水流量制御部123と、通水モード切替制御部130と、予熱モード切替制御部140と、信号入力部150と、記憶部160と、を備える。
【0040】
目標過熱度設定部111は、熱源温度センサとしての第2熱源温度センサ55が検知した熱源流体としての熱源水W5の温度を取得し、この第2熱源温度センサ55の検知温度に応じて目標過熱度を設定する。例えば、熱源流体としての熱源水W5の温度が低い場合には目標過熱度を低く設定する。これにより冷媒Rの循環流量が増加し、低温の熱源水W5であっても熱回収量を増やすことができる。
このように、熱源流体としての熱源水W5の温度に応じて適切な目標過熱度を設定することで、液圧縮や潤滑不良による圧縮機11の破損を防止しつつ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
【0041】
また、目標過熱度設定部111は、第2熱源温度センサ55の検知温度の変動が大きいと判定した場合、目標過熱度を大きくする制御を行ってもよい。
図3は、縦軸を第2熱源温度センサ55の検知温度T、横軸を時間tとしたときのグラフであり、第2熱源温度センサ55の検知温度の変動を示すグラフである。例えば、
図3に示すように、第2熱源温度センサ55の検知温度Tの単位時間t0当たりの変化量ΔTが所定の閾値ΔT0を上回った場合、第2熱源温度センサ55の検知温度の変動が大きいと判定し、目標過熱度を大きくする制御を行う。例えば、ΔT0=5℃、t0=1minとし、5℃/minよりも大きい変動があったときに、目標過熱度を大きくする制御を行う。このとき、例えばそれまでの目標過熱度が5℃に設定されていた場合、目標過熱度を例えば10℃に設定する。
図3の例では、単位時間t0当たりの検知温度Tの低下量ΔTが、所定の閾値ΔT0よりも大きい。よって、熱源水W5の温度が急変する状況と考えられるため、目標過熱度を例えば10℃に変更する。
【0042】
これにより、熱源流体としての熱源水W5の温度が急変する状況が確認された場合であっても、安定的にヒートポンプ回路10を駆動することができる。
例えば、熱源水W5の温度の急変により温度が急激に低下するような場合であっても、目標過熱度を高い値に設定することにより蒸発器14で冷媒Rを確実に気化させることができるため、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。
【0043】
また、目標過熱度設定部111は、第2熱源温度センサ55の検知温度が安定していると判定した場合、目標過熱度を小さくする制御を行ってもよい。
例えば、第2熱源温度センサ55の検知温度Tが所定時間、所定の温度の範囲内のときに、第2熱源温度センサ55の検知温度が安定していると判定する。また、検知温度Tが所定時間、単位時間t0当たりの変化量ΔTが所定の閾値ΔT0を下回っている場合に、第2熱源温度センサ55の検知温度が安定していると判定してもよい。そしてこのとき、目標過熱度を小さくする制御を行う。例えばそれまでの目標過熱度が10℃に設定されていた場合、目標過熱度を例えば5℃に変更する。
【0044】
なお、目標過熱度の下限値を例えば5℃にすることで、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。また、目標過熱度の上限値を例えば10℃にすることで、冷媒Rの循環流量を所定流量以上に維持し、熱回収量の低下を防止することができる。
【0045】
このように、熱源流体としての熱源水W5の温度が安定しているときは、目標過熱度を低い値に設定することにより冷媒Rの循環流量を増加させ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
【0046】
なお、本実施形態においては、目標過熱度を設定する上で、熱源温度センサとして第2熱源温度センサ55の検知温度を用いているが、蒸発器14に流入する前の熱源水W5の温度(蒸発器流入前熱源温度)を検出する熱源温度センサとして、第1熱源温度センサ54を用いてもよい。蒸発器14に流入する直前ではないものの、第1熱源温度センサ54も、蒸発器14で冷媒Rとの間で熱交換を行う熱源流体の温度を間接的に検知することが可能であり、熱源水W5の温度が急変する状況を確認することが可能である。但し、第2熱源温度センサ55を用いて、蒸発器14に流入する直前の熱源水W5の温度を測定する方が、より好ましい。
【0047】
過熱度算出部112は、圧縮機11に流入する冷媒Rの過熱度を算出する。
具体的には、過熱度算出部112は、蒸気圧力センサ18の検知圧力から液冷媒Rの蒸発温度を求めると共に、吸込温度センサ17の検知温度から蒸発温度を差し引いてガス冷媒Rの過熱度を算出する。
【0048】
冷媒流量制御部113は、算出過熱度(過熱度算出部112による算出値)が目標過熱度(目標過熱度設定部111による設定値)になるように冷媒流量制御手段を制御し、冷媒Rの流量を調整する。
具体的な制御としては、例えば、過熱度算出部112によりリアルタイムで算出される算出過熱度をフィードバック値として、この算出過熱度を目標過熱度に収束させるように膨張弁13の弁開度を調整するフィードバック制御を採用するのが好ましい。フィードバック制御は、比例制御(P制御)のほか、これに積分制御(I制御)および/または微分制御(D制御)を組み合わせた操作量の演算アルゴリズムを採用することができる。
【0049】
このように、過熱度算出部112がガス冷媒Rの過熱度を正確に算出し、さらに冷媒流量制御部113がその値を一定に保つように制御することにより、給水W1に対する凝縮器12の熱出力が安定する。これにより、加温されて温水となって供給される給水W1の流量の変動が少なくなる。
【0050】
目標出湯温度設定可能範囲決定部121は、給水温度センサとしての第2給水温度センサ26が検知した凝縮器12に流入する前の給水W1の温度を取得し、この第2給水温度センサ26の検知温度に応じて目標出湯温度の設定可能範囲を決定する。
【0051】
図4は、第2給水温度センサ26の検知温度に応じて決定される、目標出湯温度の設定可能範囲を示す図である。
図4の横軸は第2給水温度センサ26の検知温度(凝縮器流入前給水温度)であり、縦軸はそれに対応する目標出湯温度である。
本実施形態における目標出湯温度の設定可能範囲は、設定可能範囲Aに示される三角形の領域となっている。すなわち、本実施形態においては、目標出湯温度は、上限値と下限値の間の値に設定可能であり、下限値は、第2給水温度センサ26の検知温度に所定値を加えた値であって、第2給水温度センサ26の検知温度が高くなるほど高い値となっている。より詳細には、下限値は、第2給水温度センサ26の検知温度に15℃を加えた値となっており、上限値は、一定の温度、本実施形態においては75℃となっている。
【0052】
なお、下限値を設定するための所定値(例えば、15℃)は、後述の記憶部160に記憶されている。この場合、外部入力等により、この所定値を設定可能とすることが好ましい。或いは、この所定値に基づく下限値が、記憶部160に記憶されていてもよい。
【0053】
このように、設定可能範囲Aに示されるような領域を目標出湯温度の設定可能範囲とすることで、凝縮器12の入り口側と出口側の給水W1の温度差が十分大きくなるようにシステムを制御することになるため、ヒートポンプ回路10を流れる冷媒Rの過冷却不足を防止でき、かつ後述の給水流量制御部123による給水流量調整手段の制御において、給水W1の給水流量過多を抑制することができる。
【0054】
なお、目標出湯温度の設定可能範囲を、上限値、下限値とも一定の値とする四角形の領域とする場合であっても、すなわち、下限値を一定にする場合であっても、例えば
図4に示される設定可能範囲Bに示されるような領域とすれば、冷媒Rの過冷却不足を防止でき、かつ給水W1の給水流量過多を抑制することが可能である。しかしながら、この場合は、許容できる熱源水温度の範囲や、目標出湯温度の設定可能範囲が狭くなる。
【0055】
なお、目標出湯温度を、設定可能範囲Aに示される下限値よりも低い温度とした場合、例えば、第2給水温度センサ26の検知温度とあまり変わらない場合は、冷媒Rの過冷却不足が生じる可能性がある。
【0056】
これを、
図5に示すモリエル線図(p−h線図)を使って説明する。
このモリエル線図の縦軸は冷媒の圧力(p)であり、横軸は冷媒の比エンタルピー(h)である。そして、モリエル線図には、飽和液線Y1と、飽和蒸気線Y2が示されている。このようなモリエル線図により、ヒートポンプサイクル中における冷媒Rの状態変化を表すことができる。冷媒Rは、飽和液線Y1よりも左側で過冷却液状態(液冷媒Rの状態)、飽和液線Y1と飽和蒸気線Y2との間で気液混合状態である湿り蒸気状態、飽和蒸気線Y2より右側で過熱蒸気状態(ガス冷媒Rの状態)となる。
【0057】
図5においてR(a→b→c→d)で示される実線は、適正な状態のヒートポンプサイクルにおける冷媒Rの状態の移り変わりを示している。
圧縮機11に吸引された過熱蒸気状態のガス冷媒Rは、圧縮機11において断熱圧縮されて高温高圧の過熱蒸気状態のガス冷媒Rとなり(a→b)、その後、凝縮器12で凝縮・過冷却されることにより過冷却液状態の液冷媒Rとなり(b→c)、さらにその後、膨張弁13にて断熱膨張されることにより湿り蒸気状態の冷媒Rとなる(c→d)。そして、湿り蒸気状態の冷媒Rは、蒸発器14において蒸発・加温されて、過熱蒸気状態のガス冷媒Rとなる(d→a)。このようなサイクルで、冷媒Rは循環する。なお、
図5における(b→c)の過程について詳細に説明すると、凝縮器12は、ガス冷媒Rの潜熱および顕熱を放出して、ガス冷媒Rを液冷媒Rへと変化させ、かつ、液冷媒Rの過冷却を行っている。
【0058】
ここで、目標出湯温度を、設定可能範囲Aに示される下限値よりも低い温度とした場合、凝縮器12の入り口側と出口側の給水W1の温度差が小さくなるため、冷媒Rが凝縮器12で十分に凝縮・過冷却されなくなる可能性がある(b→c’)。その結果、凝縮器12を通過後の冷媒Rの状態を示す「c’」の位置が、適正な場合に比べて右側にずれてしまう。すなわち、「c’」の状態にある冷媒Rは、過冷却不足となっている。また、十分に液冷媒Rの状態となっていない可能性もある。この場合は、適正なヒートポンプサイクルで運転できているとはいえない。
しかしながら、本実施形態においては、下限値を、第2給水温度センサ26の検知温度に所定値を加えた値としていることから、凝縮器12の入り口側と出口側の給水W1の温度差が少なくとも所定値より大きくなるようにシステムを制御することとなり、上述の問題は生じない。すなわち、適正な状態のヒートポンプサイクルで運転することができる。
【0059】
目標出湯温度設定部122は、第2給水温度センサ26の検知温度に応じて、上述の目標出湯温度設定可能範囲内で、目標出湯温度を設定する。例えば、上述の設定可能範囲Aの範囲内で、温水需要箇所の要求等に基づき、任意の目標出湯温度を設定することができる。
すなわち、目標出湯温度設定部122は、第2給水温度センサ26の検知温度を取得し、取得した第2給水温度センサ26の検知温度に対して所定値を加えた値であって、第2給水温度センサ26の検知温度が高くなるほど高い値を下限値として、目標出湯温度を設定することができる。これにより、適正な状態のヒートポンプサイクルで運転することができ、かつ目標出湯温度の設定範囲を広くすることができる。
【0060】
なお、第2給水温度センサ26の検知温度に、予め定められた値を加えた値を、目標出湯温度として自動的に設定する態様としてもよい。
【0061】
給水流量制御部123は、出湯温度センサ27の検知温度が目標出湯温度(目標出湯温度設定部122による設定値)になるように給水流量調整手段を制御し、給水W1の流量を調整する。
具体的な制御としては、例えば、出湯温度センサ27によりリアルタイムに検知される出湯温度をフィードバック値として、この出湯温度を目標出湯温度に収束させるように給水ポンプ21または還流ポンプ31の駆動周波数を調整するフィードバック制御を採用するのが好ましい。フィードバック制御は、比例制御(P制御)のほか、これに積分制御(I制御)および/または微分制御(D制御)を組み合わせた操作量の演算アルゴリズムを採用することができる。
【0062】
なお、後述の一過通水モードにおいては、インバータ制御が可能な給水ポンプ21が給水流量調整手段を構成し、循環通水モードにおいては、インバータ制御が可能な還流ポンプ31が、給水流量調整手段を構成する。
【0063】
なお、給水流量調整手段は、他の態様によって構成してもよい。例えば、給水ポンプ21、還流ポンプ31をオンオフ制御のみ可能なポンプにより構成する場合は、それぞれのポンプの下流側に比例制御可能な流量調整弁を設けて、これらを給水流量調整手段としてもよい。また、給水ラインL1と還流ラインL2の合流部の下流側に比例制御可能な流量調整弁を設けて、これを給水流量調整手段としてもよい。
また、給水ポンプ21および還流ポンプ31に替わる構成として、給水ラインL1と還流ラインL2に開閉弁を設けた上で、或いは給水ラインL1と還流ラインL2の合流部に三方弁を設けた上で、給水ラインL1と還流ラインL2の合流部の下流側にインバータ制御が可能なポンプを設けて、これを給水流量調整手段としてもよい。
【0064】
このように、凝縮器12に流入する前の給水W1の温度に応じて適切な目標出湯温度を設定することで、凝縮器12での過冷却不足、給水流量過多等の発生を防止することができる。
さらに、凝縮器12に流入する前の給水W1の温度に応じて設定可能な目標出湯温度の範囲の下限値を設定することで、確実に凝縮器12での過冷却不足を防止して、蒸発器14での熱回収量を安定させることができる。また、給水W1の流量が過多になるのを防止して、給水ポンプ21等の過負荷による劣化を抑制することができる。
【0065】
なお、本実施形態においては、目標出湯温度を設定する上で、第2給水温度センサ26の検知温度を用いているが、凝縮器12に流入する前の給水W1の温度(凝縮器流入前給水温度)を間接的に検出する給水温度センサとして、第1給水温度センサ24を用いてもよい。但し、より安定した制御を行うためには、第2給水温度センサ26を用いて、凝縮器12に流入する直前の給水W1の温度を測定する方が好ましい。
【0066】
ここまで説明したように、本実施形態の給水加温システム1は、熱源水W5を、熱回収用熱交換器40と蒸発器14の順に流通させている。そして、本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの過熱度に基づいて制御され、冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段を備える。また、凝縮器12から流出する給水W1の出湯温度に基づいて制御され、給水流量を調整する給水流量調整手段を備える。そして、制御部100は、冷媒流量調整手段を制御する冷媒流量制御部113と、給水流量調整手段を制御する給水流量制御部123と、を備える。
【0067】
これにより、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで熱回収用熱交換器40の熱出力がアップし、給水W1の予熱量が増える。なお、熱源水温度が高いほど熱出力を高める効果が大きい。熱回収用熱交換器40の熱回収量が増えると、相対的にヒートポンプ回路10の熱回収量を減らすことができる。すなわち、蒸発器14および熱回収用熱交換器40の順で熱源水W5を流す場合と同じシステム熱出力を得る場合、圧縮機の出力を下げてヒートポンプ回路10の電力消費量を低減することができる。
このとき、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで蒸発器14に流入する熱源水W5の温度は低下するが、さらなる制御の追加、すなわち、過熱度に基づく冷媒流量の調整と、出湯温度に基づく給水流量の調整の組み合わせによる多重効果により、例えば、低い過熱度設定に応じた冷媒流量の調整による蒸発器14の熱入力アップと、低い出湯温度設定に応じた給水流量の調整による熱回収用熱交換器40の更なる熱出力アップおよび蒸発器14の熱出力アップの多重効果により、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流す構成において、システムのCOPを大幅に高めることができる。
【0068】
通水モード切替制御部130は、一過通水モードと、循環通水モードと、通水停止モードと、を切り替える通水モード切替制御を行う。より詳細には、通水モード切替制御部130は、通水モード切替手段としての給水ポンプ21および還流ポンプ31を制御し、還流ラインL2に温水W2を流通させずに凝縮器12に通水する一過通水モードと、還流ラインL2に温水W2を流通させながら凝縮器12に通水する循環通水モードと、凝縮器12への通水を停止する通水停止モードと、を切り替える制御を行う。
【0069】
なお、一過通水モードのときは、還流ポンプ31の駆動を停止する一方、給水ポンプ21を駆動すると共に、熱源供給ポンプ53およびヒートポンプ回路10の圧縮機11を駆動する。循環通水モードのときは、給水ポンプ21の駆動を停止する一方、還流ポンプ31を駆動すると共に、熱源供給ポンプ53およびヒートポンプ回路10の圧縮機11を駆動する。通水停止モードにおいては、給水ポンプ21および還流ポンプ31の駆動を停止すると共に、ヒートポンプ回路10の圧縮機11の駆動も停止する。また、熱源供給ポンプ53の駆動も停止することが好ましい。
【0070】
なお、本実施形態においては、給水ポンプ21および還流ポンプ31が通水モード切替手段を構成しているが、通水モード切替手段は、他の態様によって構成されていてもよい。例えば、給水ラインL1と還流ラインL2の合流部に設けられた三方弁と、給水ラインL1と還流ラインL2の合流部の下流側に設けられた給水ポンプとにより、通水モード切替手段を構成することもできる。この場合は、三方弁の切り替えと、給水ポンプのオンオフにより、通水モードを切り替える。
【0071】
このように、一過通水モードに加えて循環通水モードでの運転を可能とすることで、必要に応じて温水タンク60の循環加温を行って貯湯温度を維持することができる。また、循環通水モードでは、還流ラインL2を用いて、熱回収用熱交換器40の手前に温水タンク60の貯留水を流入させる構成であるので、熱源水W5の温度が温水タンク60に貯留されている温水W2の温度よりも高い場合は、給水W1として流れる温水W2は、凝縮器12だけでなく、その前に熱回収用熱交換器40によっても加温される。よって、効率よく加温される。
【0072】
ここで、通水モード切替制御部130は、温水タンク60への給水制御を行うと共に、温水タンク60内の温水W2の温度に基づき、通水モードの切替制御を行うことも可能である。
具体的には、通水モード切替制御部130は、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな水供給が実行される場合には、一過通水モードを実行させるように通水モード切替手段を制御し、合流箇所に対する新たな水供給が停止され、かつ温水温度センサ61の検知温度が所定の設定温度を下回っている場合には、循環通水モードを実行させるように通水モード切替手段を制御し、合流箇所に対する新たな水供給が停止され、かつ温水温度センサ61の検知温度が所定の設定温度を上回っている場合には、通水停止モードを実行させるように通水モード切替手段を制御する。
【0073】
この通水モード切替制御について、
図6Aに示す状態遷移図を使って詳細に説明する。
通水モード切替制御部130は、各通水モードの実行中、水位検出部62により温水タンク60内の温水W2の水位を監視すると共に、温水温度センサ61により温水タンク60内の温水W2の温度を監視する。通水停止モードの実行中においては、水位検出部62の電極棒622の検出位置を上回り、かつ温水温度センサ61の検知温度が第1設定温度(例えば、目標出湯温度よりも2〜3℃低い温度)を上回っている場合には、通水モード切替制御部130は、通水停止モードを継続する。
【0074】
<イベントE1>
通水停止モードの実行中、温水タンク60内の水位が低下し、水位検出部62の電極棒622の検出位置を下回った場合には、通水モード切替制御部130は、還流ポンプ31の停止を維持したまま給水ポンプ21を駆動する。給水ポンプ21の駆動により、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな補給水Wの供給が実行されることになるので、通水モード切替制御部130は、熱源供給ポンプ53および圧縮機11を駆動して一過通水モードへ移行させる。一過通水モードでは、所定の目標出湯温度に調節された温水W2が温水タンク60に供給される。
【0075】
<イベントE2>
一過通水モードの実行中、温水タンク60内の水位が上昇し、水位検出部62の電極棒621の検出位置を上回った場合には、通水モード切替制御部130は、還流ポンプ31の停止を維持したまま給水ポンプ21を停止する。給水ポンプ21の停止により、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな補給水Wの供給が停止されることになるので、通水モード切替制御部130は、熱源供給ポンプ53および圧縮機11を停止して通水停止モードへ移行させる。通水停止モードでは、温水タンク60への温水W2の供給が停止される。
【0076】
<イベントE3>
通水停止モードの実行中、温水温度センサ61の検知温度が設定温度を下回った場合には、給水ポンプ21の停止を維持したまま還流ポンプ31を駆動する。還流ポンプ31の駆動により、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな補給水Wの供給が停止された状態で貯留水の水循環が実行されることになるので、通水モード切替制御部130は、熱源供給ポンプ53および圧縮機11を駆動して循環通水モードへ移行させる。循環通水モードでは、所定の目標出湯温度まで再加温された温水W2が温水タンク60に供給される。
【0077】
<イベントE4>
循環通水モードの実行中、温水温度センサ61の検知温度が設定温度を上回った場合には、通水モード切替制御部130は、給水ポンプ21の停止を維持したまま還流ポンプ31を停止する。そして、熱源供給ポンプ53および圧縮機11を停止して通水停止モードへ移行させる。通水停止モードでは、温水タンク60に対する温水W2の循環が停止される。
【0078】
<イベントE5>
循環通水モードの実行中、温水タンク60内の水位が低下し、水位検出部62の電極棒622の検出位置を下回った場合には、通水モード切替制御部130は、還流ポンプ31の停止させ、給水ポンプ21を駆動する。給水ポンプ21の駆動により、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな補給水Wの供給が実行されることになるので、通水モード切替制御部130は、熱源供給ポンプ53および圧縮機11を駆動したまま一過通水モードへ移行させる。一過通水モードでは、所定の目標出湯温度に調節された温水W2が温水タンク60に供給される。
なお、本実施形態では、一過通水モードから循環通水モードへの移行は行わない。一過通水モードへは温水需要が大きいときに移行するので、補給水Wの温水タンク60への供給を優先し、速やかに水位を回復させるためである。また、一過通水モードでの出湯温度は、温水タンク60の貯湯温度よりも高いため、短時間で貯湯温度を上昇させることもできる。
【0079】
なお、通水停止モードの継続判定を行うための設定温度と、通水停止モードから循環通水モードへの移行判定を行うための設定温度は、同じ温度としてもよいし、異なる温度としてもよい。異なる温度とする場合は、後者の設定温度は前者の設定温度よりも低い温度とする。
【0080】
なお、上述の通水モードの切替制御を行う上で、還流ラインL2の合流箇所に補給水W等による新たな水供給が実行されているか否かの判定は、給水ポンプ21の駆動状態(駆動指令信号または駆動フィードバック信号)に基づいて行ってもよい。
また、給水ラインL1における、還流ラインL2の合流箇所よりも上流側に不図示の流量センサを配置し、この流量センサの検出結果に基づいて判定を行ってもよい。
【0081】
図6Aの状態遷移図に従ったモード切替制御によれば、温水需要が十分にあり補給水Wの供給が必要である時は、システムCOPが最大となる一過通水モードで運転させることができる。また、温水需要が小さく補給水Wの供給が必要でない時は、温水タンク60内の貯留水の温度低下時に、循環通水モードで貯留水の昇温を行うことができる。また、温水需要が小さく補給水Wの供給が必要でない時は、温水タンク60内の貯留水の温度低下が実質的になければ、通水停止モードで待機することができる。
【0082】
以上で説明した構成であれば、温水タンク60内に設定温度以上の温水W2を常時確保することができる。また、循環通水モードは、温水タンク60内の貯留水の温度低下時のみ実行されるので、過剰な水循環により無駄な電力消費を発生させることもない。
【0083】
予熱モード切替制御部140は、給水予熱モードと、予熱停止モードと、を切り替える予熱モード切替制御を行う。より詳細には、予熱モード切替制御部140は、予熱モード切替手段としての三方弁25を制御し、給水W1および熱源水W5を同時に熱回収用熱交換器40に流通させる給水予熱モードと、給水W1をバイパスラインL3に流通させる予熱停止モードと、を切り替える制御を行う。
【0084】
なお、本実施形態においては、三方弁25が予熱モード切替手段を構成しているが、予熱モード切替手段は、他の態様によって構成されていてもよい。例えば、給水ラインL1における、バイパスラインL3との合流部の上流側と、バイパスラインL3とに、それぞれ二方弁を設け、これらの二方弁によって、予熱モード切替手段を構成してもよい。
【0085】
なお、バイパスラインは、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパスさせるものに限らず、熱回収用熱交換器40に対して熱源水W5をバイパスさせるものであってもよい。この場合は、予熱停止モードにおいて、熱源水W5をバイパスラインに流通させる。
すなわち、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパス、および/または、熱回収用熱交換器40に対して熱源水W5をバイパスさせる1本ないし2本のバイパスラインを備え、予熱モード切替手段が、給水W1および熱源水W5を同時に熱回収用熱交換器40に流通させる給水予熱モードと、給水W1および熱源水W5の少なくとも一方をバイパスラインに流通させる予熱停止モードと、を切り替える態様となっていればよい。
これにより、熱回収用熱交換器40を、状況に応じて選択的に利用することができる。
【0086】
ここで、予熱モード切替制御部140は、熱回収用熱交換器40に流入させる前の給水W1の温度を検知する第1給水温度センサ24(熱交換器流入前給水温度センサ24)による第1検知温度(熱交換器流入前給水温度)と、熱回収用熱交換器40に流入させる前の熱源水W5の温度を検知する第1熱源温度センサ54(熱交換器流入前熱源温度センサ54)による第2検知温度(熱交換器流入前熱源温度)と、を取得し、この第1検知温度および第2検知温度に基づき、予熱モードの切替制御を行うことが可能である。
具体的には、予熱モード切替制御部140は、第1給水温度センサ24による第1検知温度と、第1熱源温度センサ54による第2検知温度と、を比較し、第1検知温度が第2検知温度を下回っている場合には、給水予熱モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御し、第1検知温度が第2検知温度を上回っている場合には、予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する。
このような、給水温度と熱源水温度に応じた自動予熱モード切替により、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0087】
なお、予熱モード切替制御部140は、少なくとも通水モードが循環通水モードのときに、予熱モード切替手段を各予熱モード間で切り替え可能である。この場合、予熱モード切替制御部140は、通水モードが一過通水モードのときに、予熱モード切替手段を予熱モードに設定し、通水停止モードのときに、予熱モード切替手段を予熱停止モードに設定してもよい。
これにより、例えば、給水W1として比較的温度が低いことが多い補給水Wを用いる一過通水モードでは、熱回収用熱交換器を積極的に活用する一方、給水W1として比較的温度が高いことが多い温水タンク60の貯留水を用いる循環通水モードでは、給水W1と熱源水W5の温度の関係に応じて、選択的に熱回収用熱交換器を活用することができる。
但し、様々な補給水温度と熱源水温度の状況下においても効率的な加温ができるよう、予熱モード切替制御部140は、通水モードが循環通水モードまたは一過通水モードのときに、予熱モード切替手段を各予熱モード間で切り替え可能に構成してもよい。
【0088】
信号入力部150は、一過通水モード、循環通水モード、通水停止モードのいずれかを指定する通水モード指定信号を受け付ける第1信号入力部151を備える。
通水モード切替制御部130は、第1信号入力部151に入力された通水モード指定信号に従い、一過通水モード、循環通水モードまたは通水停止モードを実行させるように通水モード切替手段を制御する。そして、通水モード切替制御部130は、循環通水モードまたは通水停止モードの実行時に、給水ポンプ21を制御するなどして、還流ラインL2の合流箇所に対する新たな水供給を停止する。
これにより、例えば、補給水ありの外部信号を利用して、システムCOPが最大となる一過通水モードで運転させることができる。また、補給水なしの外部信号を利用して、循環通水モードで貯留水の保温を行うことができる。
【0089】
信号入力部150は、給水予熱モード、予熱停止モードのいずれかを指定する予熱モード指定信号を受け付ける第2信号入力部152も備える。
予熱モード切替制御部140は、第2信号入力部152に入力された予熱モード指定信号に従い、給水予熱モードまたは予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する。
これにより、外部信号に従った他動予熱モード切替により、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0090】
記憶部160は、各種の閾値等、制御に必要な種々の情報を記憶する。
【0091】
次に、本実施形態の制御部100による制御の流れの一例について説明する。
【0092】
図6Bは、制御部100の目標過熱度設定部111による、目標過熱度の設定処理の流れの一例を示すフローチャートである。
【0093】
まず、システムが起動されると、目標過熱度設定部111は、ステップS1において、目標過熱度は高めの温度、例えば10℃に設定される。
【0094】
次に、ステップS2において、第2熱源温度センサ55の検知温度が安定しており、かつ所定の熱源温度閾値(例えば、60℃)以下であるか否かを判定する。第2熱源温度センサ55の検知温度が安定(ΔT≦ΔT0、
図3参照)しており、かつ所定の熱源温度閾値以下であると判定した場合は(ステップS2:YES)、ステップS3において、目標過熱度を小さい値、例えば5℃に設定する。一方、第2熱源温度センサ55の検知温度が安定していないと判定した場合、または所定の熱源温度閾値超過であると判定した場合は(ステップS2:NO)、ステップS1に戻り、引き続き目標過熱度を10℃で維持する。
【0095】
ステップS3で目標過熱度を5℃に設定した後、ステップS4において、第2熱源温度センサ55の検知温度の変動が大きい、または所定の熱源温度閾値超過であるか否か等を判定する。第2熱源温度センサ55の検知温度の変動が大きい(ΔT>ΔT0、
図3参照)と判定した場合、または所定の熱源温度閾値超過であると判定した場合は(ステップS4:YES)、ステップS5において、目標過熱度を大きくし、例えば10℃に設定する。一方、第2熱源温度センサ55の検知温度の変動が大きくなく、かつ所定の熱源温度閾値以下であると判定した場合は(ステップS4:NO)、ステップS3に戻り、引き続き目標過熱度を5℃に維持する。
これにより、熱源流体としての熱源水W5の温度が急変する状況が確認された場合であっても、安定的にヒートポンプ回路10を駆動することができる。
【0096】
次に、予熱モード切替制御について説明する。なお、通水モード切替制御については、上述した通りである(
図6A参照)。
図6Cは、制御部100の予熱モード切替制御部140による、給水予熱モードおよび予熱停止モードを切り替える予熱モード切替制御の流れの一例を示すフローチャートである。この例では、予熱モード切替制御部140は、第1給水温度センサ24(熱交換器流入前給水温度センサ)による第1検知温度(熱交換器流入前給水温度)と、第1熱源温度センサ54(熱交換器流入前熱源温度センサ)による第2検知温度(熱交換器流入前熱源温度)の検出結果に基づいて、予熱モードの切り替え制御を行っている。
【0097】
予熱モード切替制御部140は、ステップS11において、循環通水モードが実行されているか否かを判定する。循環通水モードが実行されている場合は(ステップS21:YES)、ステップS12において、第1給水温度センサ24による第1検知温度と、第1熱源温度センサ54による第2検知温度の検出結果を比較する。そして、第1検知温度が第2検知温度を下回っている場合には(ステップS12:YES)、ステップS13において、給水予熱モードを実行する。一方、第1検知温度が第2検知温度を下回っていない場合には(ステップS12:NO)、ステップS14において、予熱停止モードを実行する。
【0098】
なお、ステップS11において、一過通水モードまたは循環通水モードが実行されているか否かを判定し、一過通水モードまたは循環通水モードが実行されている場合は、ステップS12に移行する制御を採用してもよい。
【0099】
図7は、第1実施形態の給水加温システム1の変形例を模式的に示す図である。
本実施形態におけるヒートポンプ回路10の凝縮器12は、冷媒Rの凝縮および過冷却の機能を担っていた。しかしながら、本変形例に示すように、ヒートポンプ回路10の凝縮器は、主に冷媒Rの凝縮の機能を担う凝縮器12Aと、主に冷媒Rの過冷却の機能を担う過冷却器12Bとに分かれていてもよい。この場合、ヒートポンプ回路10の冷媒Rは、好適には、凝縮器12Aにおいて潜熱を放出し、過冷却器12Bにおいて顕熱を放出する。すなわち、凝縮器12Aにおいて、ガス冷媒Rは凝縮して液冷媒Rとなり、その液冷媒Rが過冷却器12Bに供給されて、過冷却器12Bにおいて、液冷媒Rはさらに冷却(過冷却)される。
過冷却器12Bは、凝縮器12Aに送られる給水W1と、凝縮器12Aから膨張弁13に流れる冷媒Rとの間の熱交換を行う間接熱交換器である。過冷却器12Bにより、凝縮器12Aへの給水W1を用いて凝縮器12Aから膨張弁13への冷媒Rの過冷却を行うことができると共に、凝縮器12Aから膨張弁13への冷媒Rを用いて凝縮器12Aへの給水W1を加温することができる。
このように、冷媒Rの凝縮用と過冷却用とで熱交換器を分けることで、熱交換器の設計が容易となり、コスト削減を図ることができる。また、汎用の熱交換器の利用も可能となる。
なお、本変形例においては、ヒートポンプ回路10の凝縮器12に流入する前の給水W1の温度を検知する給水温度センサとしての第2給水温度センサ26は、過冷却器12Bの上流側に配置されていることが好ましい。
【0100】
なお、温水需要箇所が蒸気ボイラの場合など、温水タンク60内の温水W2の温度の低下がある程度許容される場合は、熱回収用熱交換器40およびヒートポンプ回路10を介さずに、補給水タンク70から温水タンク60に直接給水を可能とするための不図示の補給水ラインを設けてもよい。この場合は、温水タンク60内の温水W2の水位が電極棒622よりも長い電極棒の検出位置よりも低下したときなどに、補給水ラインに設けた補給水ポンプを駆動することにより、補給水タンク70から温水タンク60に直接補給水Wを供給することが可能となる。
【0101】
なお、本実施形態においては、ヒートポンプ回路10の熱源流体として熱源水W5を用いているが、熱源流体としては、熱源水W5に限らず、空気や排ガスなど各種の流体を用いることができる。熱源流体は、熱回収用熱交換器40において給水W1に熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下し、蒸発器14においてヒートポンプ回路10の冷媒Rに熱(顕熱)を与えつつ自身は温度低下する流体とすることが好ましい。
【0102】
なお、ヒートポンプ回路10の圧縮機11の駆動源は、電気モータに限らない。例えば、圧縮機11は、蒸気を用いて動力を起こすスチームモータによって駆動されてもよいし、ガスエンジンによって駆動されてもよい。この場合は、スチームモータへの給蒸量や、ガスエンジンへの供給ガス量を調整するなどして圧縮機11の出力を調整し、冷媒流量を調整してもよい。
【0103】
以上説明した第1実施形態の給水加温システム1によれば、以下の(1A)〜(11A)に示されるような効果を奏する。
【0104】
(1A)本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒循環ラインL9により環状に接続され、圧縮機11の駆動により凝縮器12で温熱を取り出す蒸気圧縮式のヒートポンプ回路10と、熱回収用熱交換器40と、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源流体を流通させる熱源流体ラインL5と、熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に給水W1を流通させる給水ラインL1と、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの過熱度に基づいて制御され、冷媒流量を調整する冷媒流量調整手段と、凝縮器12から流出する給水W1の出湯温度に基づいて制御され、給水流量を調整する給水流量調整手段と、冷媒流量調整手段および給水流量調整手段を制御する制御手段と、を備える。
このように、熱源流体としての熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで熱回収用熱交換器40の熱出力がアップし、給水W1の予熱量が増える。熱源水温度が高いほど熱出力を高める効果が大きい。熱回収用熱交換器40の熱回収量が増えるので、相対的にヒートポンプ回路10の熱回収量を減らすことができる。蒸発器14および熱回収用熱交換器40の順で熱源水W5を流す場合と同じシステム熱出力を得る場合、圧縮機11の出力を下げてヒートポンプ回路10の電力消費量を低減することができる。
このとき、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで蒸発器14に流入する熱源水W5の温度は低下するが、さらなる制御の追加、すなわち、過熱度に基づく冷媒流量の調整と、出湯温度に基づく給水流量の調整の組み合わせによる多重効果により、例えば、低い過熱度設定に応じた冷媒流量の調整による蒸発器14の熱入力アップと、低い出湯温度設定に応じた給水流量の調整による熱回収用熱交換器40の更なる熱出力アップおよび蒸発器14の熱出力アップの多重効果により、熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流す構成において、システムのCOPを大幅に高めることができる。
【0105】
(2A)本実施形態の給水加温システム1の熱源流体ラインL5は、熱回収用熱交換器40で熱源流体と給水W1をカウンターフローで熱交換させた後、蒸発器14で熱源流体と液冷媒Rをカウンターフローで熱交換させる接続構成である。
このように、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源水W5を流し、かつ熱回収用熱交換器40と蒸発器14のそれぞれで給水W1の流れ方向に対してカウンターフローで流すことにより、熱回収量の最大化を図ることができる。
【0106】
(3A)本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの吸込温度を検知する吸込温度センサ17と、蒸発器14から流出するガス冷媒Rの蒸気圧力を検知する蒸気圧力センサ18と、凝縮器12から流出する給水W1の出湯温度を検知する出湯温度センサ27と、を備え、制御手段は、蒸気圧力センサ18の検知圧力から液冷媒Rの蒸発温度を求めると共に、吸込温度センサ17の検知温度から蒸発温度を差し引いてガス冷媒Rの過熱度を算出し、当該算出過熱度が目標過熱度になるように冷媒流量調整手段を制御し、出湯温度センサ27の検知温度が目標出湯温度になるように給水流量調整手段を制御する。
このように、ガス冷媒Rの過熱度を正確に算出し、さらにその値を一定に保つことにより、予熱後の給水W1に対する凝縮器12の熱出力が安定する。これにより、温水流量の変動が少なくなる。また、例えば目標出湯温度の設定値により給水流量を適切に増やし、その流量を一定範囲に保つことにより、高い熱出力を維持することができる。
【0107】
(4A)本実施形態の給水加温システム1は、蒸発器14に流入する前の熱源流体の温度を検知する熱源温度センサを備え、制御手段は、熱源温度センサの検知温度に応じて目標過熱度を設定する。
このように、熱源流体の温度に応じて適切な目標過熱度を設定することで、液圧縮による圧縮機11の破損を防止しつつ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
例えば、熱源水温度が低い場合には目標過熱度を低く設定することにより冷媒循環流量が増加する。これにより、低温の熱源水W5であっても熱回収量を増やすことができる。目標過熱度の下限値を例えば5℃にすることで、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。また、目標過熱度の上限値を例えば10℃にすることで、冷媒循環流量を所定流量以上に維持し、熱回収量の低下を防止することができる。
【0108】
(5A)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、熱源温度センサの検知温度の変動が大きいと判定した場合、目標過熱度を大きくする。
これにより、熱源流体の温度が急変する状況が確認された場合であっても、安定的にヒートポンプ回路10を駆動することができる。
例えば、熱源流体の温度が急激に低下した場合であっても、目標過熱度を高い値に設定することにより蒸発器14で冷媒を確実に気化させることができるため、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。
【0109】
(6A)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、熱源温度センサの検知温度が安定していると判定した場合、目標過熱度を小さくする。
これにより、熱源流体の温度が安定しているときは、目標過熱度を低い値に設定することにより冷媒循環流量を増加させ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
【0110】
(7A)本実施形態の給水加温システム1は、凝縮器12に流入する前の給水の温度を検知する給水温度センサを備え、制御手段は、給水温度センサの検知温度に応じて目標出湯温度を設定する。
このように、給水の温度に応じて適切な目標出湯温度を設定することで、凝縮器12での過冷却不足、給水流量過多等の発生を防止することができる。
【0111】
(8A)本実施形態の給水加温システム1は、凝縮器12に流入する前の給水の温度を検知する給水温度センサを備え、目標出湯温度は、上限値と下限値の間の値に設定可能であり、下限値は、給水温度センサの検知温度に所定値を加えた値であって、給水温度センサの検知温度が高くなるほど高い値である。
このように、給水温度に応じて設定可能な目標出湯温度の範囲の下限値を設定することで、確実に凝縮器12での過冷却不足を防止して、蒸発器14での熱回収量を安定させることができる。また、給水流量が過多になるのを防止して、給水ポンプ21の過負荷による劣化を抑制することができる。
【0112】
(9A)本実施形態の給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパス、および/または、熱回収用熱交換器40に対して熱源流体をバイパスさせる1本ないし2本のバイパスラインと、給水W1および熱源流体を同時に熱回収用熱交換器40に流通させる給水予熱モードと、給水W1および熱源流体の少なくとも一方をバイパスラインに流通させる予熱停止モードと、を切り替える予熱モード切替手段と、を備える。
これにより、熱回収用熱交換器40の効力を発揮できない条件では熱回収用熱交換器40をバイパスさせることで、給水W1および/または熱源水W5の圧力損失を低減させ、給水ポンプ21や熱源供給ポンプ53を含むシステムCOPを向上させることができる。
【0113】
(10A)本実施形態の給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40に流入する前の給水W1の温度を検知する熱交換器流入前給水温度センサ24と、熱回収用熱交換器40に流入する前の熱源流体の温度を検知する熱交換器流入前熱源温度センサ54と、を備え、制御手段は、熱交換器流入前給水温度センサ24による第1検知温度と、熱交換器流入前熱源温度センサ54による第2検知温度と、を比較し、第1検知温度が第2検知温度を下回っている場合には、給水予熱モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御し、第1検知温度が第2検知温度を上回っている場合には、予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する。
このような給水温度と熱源水温度に応じた自動予熱モード切替により、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0114】
(11A)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、給水予熱モードまたは予熱停止モードの種別を指定する予熱モード指定信号を受け付ける信号入力部150と、信号入力部150に入力された予熱モード指定信号に従い、給水予熱モードまたは予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する予熱モード切替制御部140と、を有する。
このような外部信号に従った他動予熱モード切替により、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0115】
また、以上説明した第1実施形態の給水加温システム1によれば、以下の(1B)〜(8B)に示されるような効果も奏する。
【0116】
(1B)本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒循環ラインL9により環状に接続され、圧縮機11の駆動により凝縮器12で温熱を取り出す蒸気圧縮式のヒートポンプ回路10と、熱回収用熱交換器40と、熱回収用熱交換器40および蒸発器14に熱源流体を流通させる熱源流体ラインL5と、熱回収用熱交換器40および凝縮器12の順に給水W1を流通させる給水ラインL1と、凝縮器12で生成された温水W2を貯留する温水タンク60と、温水タンク60内の温水W2を熱回収用熱交換器40よりも上流側に還流させる還流ラインL2と、還流ラインL2に温水W2を流通させずに凝縮器12に通水する一過通水モードと、還流ラインL2に温水W2を流通させながら凝縮器12に通水する循環通水モードと、凝縮器12への通水を停止する通水停止モードと、を切り替える通水モード切替手段と、通水モード切替手段を制御する制御手段と、を備える。
このように、一過通水モードに加えて循環通水モードでの運転を可能とすることで、必要に応じて温水タンク60の循環加温を行って貯湯温度を維持することができる。循環通水モードでは、熱回収用熱交換器40の手前に貯留水を流入させる構成であるので、貯留水温度<熱源水温度になっているときは、効率のよい加温ができる。
【0117】
(2B)本実施形態の給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40に対して給水W1をバイパス、および/または、熱回収用熱交換器40に対して熱源流体をバイパスさせる1本ないし2本のバイパスラインと、給水W1および熱源流体を同時に熱回収用熱交換器40に流通させる給水予熱モードと、給水W1および熱源流体の少なくとも一方をバイパスラインに流通させる予熱停止モードと、を切り替える予熱モード切替手段と、を備える。
これにより、熱回収用熱交換器40を、状況に応じて選択的に利用することができる。
【0118】
(3B)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、少なくとも循環通水モードのときに、予熱モード切替手段を、給水予熱モードと、予熱停止モードとに切り替え可能である。
これにより、例えば、一過通水モードでは熱回収用熱交換器40を積極的に活用し、循環通水モードでは選択的に熱回収用熱交換器40を活用することができる。
【0119】
(4B)本実施形態の給水加温システム1の熱源流体ラインL5は、熱回収用熱交換器40および蒸発器14の順に熱源流体を流通させる接続構成である。
これにより、熱源流体としての熱源水W5を先に熱回収用熱交換器40に流すことで給水W1の予熱量を増やし、熱回収用熱交換器40の熱出力をアップさせることができる。熱源水温度が高いほど熱出力を高める効果が大きい。
【0120】
(5B)本実施形態の給水加温システム1は、温水タンク60内の温水W2の温度を検知する温水温度センサ61を備え、制御手段は、還流ラインL2の合流箇所に対して新たな水供給が実行されている場合には、一過通水モードを実行させるように通水モード切替手段を制御し、合流箇所に対する新たな水供給が停止され、かつ温水温度センサ61の検知温度が設定温度を下回っている場合には、循環通水モードを実行させるように通水モード切替手段を制御し、合流箇所に対する新たな水供給が停止され、かつ温水温度センサ61の検知温度が設定温度を上回っている場合には、通水停止モードを実行させるように通水モード切替手段を制御する。
これにより、温水需要が十分にあり補給水Wの供給が必要である時は、システムCOPが最大となる一過通水モードで運転させることができる。また、温水需要が小さく補給水Wの供給が必要でない時は、温水タンク60内の貯留水の温度低下時に、循環通水モードで貯留水の昇温を行うことができる。
【0121】
(6B)本実施形態の給水加温システム1は、熱回収用熱交換器40に流入させる前の給水W1の温度を検知する熱交換器流入前給水温度センサ24と、熱回収用熱交換器40に流入させる前の熱源流体の温度を検知する熱交換器流入前熱源温度センサ54と、を備え、制御手段は、熱交換器流入前給水温度センサ24による第1検知温度と、熱交換器流入前熱源温度センサ54による第2検知温度と、を比較し、第1検知温度が第2検知温度を下回っている場合には、給水予熱モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御し、第1検知温度が第2検知温度を上回っている場合には、予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する。
このような給水温度と熱源水温度に応じた自動予熱モード切替により、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0122】
(7B)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、一過通水モード、循環通水モード、通水停止モードのいずれかを指定する通水モード指定信号を受け付ける第1信号入力部151と、第1信号入力部151に入力された通水モード指定信号に従い、一過通水モード、循環通水モードまたは通水停止モードを実行させるように通水モード切替手段を制御する通水モード切替制御部130と、を有し、通水モード切替制御部130は、循環通水モードまたは通水停止モードの実行時に、還流ラインL2の合流箇所に対する新たな水供給を停止する。
これにより、例えば補給水の供給ありの外部信号を利用して、システムCOPが最大となる一過流通モードで運転させることができる。また、補給水の供給なしの外部信号を利用して、循環モードで貯留水の保温を行うことができる。
【0123】
(8B)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、給水予熱モード、予熱停止モードのいずれかを指定する予熱モード指定信号を受け付ける第2信号入力部152と、第2信号入力部152に入力された予熱モード指定信号に従い、給水予熱モードまたは予熱停止モードを実行させるように予熱モード切替手段を制御する予熱モード切替制御部140と、を有する。
これにより、例えば外部信号に従った他動予熱モード切替も可能となり、システムCOPの最大化を図ることができる。
【0124】
また、以上説明した第1実施形態の給水加温システム1によれば、以下の(1C)〜(7C)に示されるような効果も奏する。
【0125】
(1C)本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11、凝縮器12、膨張弁13および蒸発器14が冷媒循環ラインL9により環状に接続され、圧縮機11の駆動により凝縮器12で温熱を取り出す蒸気圧縮式のヒートポンプ回路10と、ヒートポンプ回路10を流れる冷媒Rの流量を調整する冷媒流量調整手段と、蒸発器14で冷媒Rとの間で熱交換を行う熱源流体の温度を検知する熱源温度センサと、冷媒流量調整手段を制御する制御手段と、を備え、制御手段は、熱源温度センサの検知温度に応じて目標過熱度を設定し、圧縮機11に流入する冷媒Rの過熱度が目標過熱度になるように冷媒流量調整手段を制御する。
このように、熱源流体の温度に応じて適切な目標過熱度を設定することで、液圧縮による圧縮機11の破損を防止しつつ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
例えば、熱源水温度が低い場合には目標過熱度を低く設定することにより冷媒循環流量が増加する。これにより、熱源流体が低温の熱源水W5であっても熱回収量を増やすことができる。目標過熱度の下限値を例えば5℃にすることで、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。また、目標過熱度の上限値を例えば10℃にすることで、冷媒循環流量を所定流量以上に維持し、熱回収量の低下を防止することができる。
【0126】
(2C)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、熱源温度センサの検知温度の変動が大きいと判定した場合、目標過熱度を大きくする。
これにより、熱源流体の温度が急変する状況が確認された場合であっても、安定的にヒートポンプ回路10が駆動することができる。
例えば、熱源流体の温度が急激に低下した場合であっても、目標過熱度を高い値に設定することにより蒸発器14で冷媒を確実に気化させることができるため、液圧縮による圧縮機11の破損を防止することができる。
【0127】
(3C)本実施形態の給水加温システム1の制御手段は、熱源温度センサの検知温度が安定していると判定した場合、目標過熱度を小さくする。
これにより、熱源流体の温度が安定しているときは、目標過熱度を低い値に設定することにより冷媒循環流量を増加させ、蒸発器14での熱回収量を増加させることができる。
【0128】
(4C)本実施形態の給水加温システム1は、圧縮機11に流入するガス冷媒Rの吸込温度を検知する吸込温度センサ17と、蒸発器14から流出するガス冷媒Rの蒸気圧力を検知する蒸気圧力センサ18と、を備え、制御手段は、蒸気圧力センサ18の検知圧力から液冷媒Rの蒸発温度を求めると共に、吸込温度センサ17の検知温度から蒸発温度を差し引いてガス冷媒Rの過熱度を算出し、当該算出過熱度が目標過熱度になるように冷媒流量調整手段を制御する。
このように、ガス冷媒Rの過熱度を正確に算出し、さらにその値を一定に保つことにより、予熱後の給水W1に対する凝縮器12の熱出力が安定する。これにより、温水流量の変動が少なくなる。
【0129】
(5C)本実施形態の給水加温システム1は、凝縮器12を流通する給水流量を調整する給水流量調整手段と、凝縮器12から流出する給水W1の出湯温度を検知する出湯温度センサ27を備え、制御手段は、出湯温度センサ27の検知温度が目標出湯温度になるように給水流量調整手段を制御する。
これにより、給水W1を常に所望の温度に加温して出湯することができる。
【0130】
(6C)本実施形態の給水加温システム1は、凝縮器12に流入する前の給水W1の温度を検知する給水温度センサを備え、制御手段は、給水温度センサの検知温度に応じて目標出湯温度を設定する。
このように、給水W1の温度に応じて適切な目標出湯温度を設定することで、凝縮器12での過冷却不足、給水流量過多等の発生を防止することができる。
【0131】
(7C)本実施形態の給水加温システム1は、凝縮器12に流入する前の給水W1の温度を検知する給水温度センサを備え、目標出湯温度は、上限値と下限値の間の値に設定可能であり、下限値は、給水温度センサの検知温度に所定値を加えた値であって、給水温度センサの検知温度が高くなるほど高い値である。
このように、給水温度に応じて設定可能な目標出湯温度の範囲の下限値を設定することで、確実に凝縮器12での過冷却不足を防止して、蒸発器14での熱回収量を安定させることができる。また、給水流量が過多になるのを防止して、給水ポンプ21の過負荷による劣化を抑制することができる。
【0132】
以上、本発明の給水加温システムの好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。