【実施例1】
【0023】
実施例を説明する。本発明が以下の実施例に限定されるものではない。
ダクト部材11を14個用意し、これらを一列に連ねて、空調ダクト1のサンプルを作製した。
ダクト部材11の各壁部11aとしては、ポリイソシアヌレートフォーム(硬質発泡樹脂)からなる主部にアルミニウム箔13を被覆したボードを用いた。
前記ボードの厚みは20mmであった。
前記ボードの重さは1.0kg/m
2であった。
ダクト部材11の断面形状は正方形とした。
ダクト部材11の内面の高さは500mm、内面の幅は500mmであった。
ダクト部材11の長さは910mmであった。
14個のダクト部材11からなる空調ダクト1の長さは12740mmであった。
隣接するダクト部材11の内面に連接部材12(ニップル)を跨らせ、ダクト部材11の内面と連接部材12との間、及び前記隣接するダクト部材11の端面どうし間にはコーキング材を塗布した。更に隣接するダクト部材11の外面に跨るようにアルミ粘着テープ15を巻き付けた。
【0024】
このようにして作製した硬質発泡樹脂空調ダクト1の両端部を吊支点1aとして耐震支持構造を介して、鉄骨桁からなる天井材に吊支持させた。
両端の吊支点1aどうしの間隔は、12000mmであった。
耐震支持構造は、4つのアングル材で四角形に組まれた剛フレームと、3つのアングル材でコ字状に組まれた保持フレームとで構成した。空調ダクト1の端部を剛フレーム内に通すとともに該剛フレームの下フレーム材(支持梁23(
図2)に相当)の上面に載せた。さらに、保持フレームを空調ダクト1の上面及び両側面に宛がい、かつ該保持フレームの下端部を前記下フレーム材に連結して固定した。
両端の吊支点1a間に5つの中間支持構造30を2000mm間隔で設置し、各中間支持構造30の支持梁33に空調ダクト1を載せた。
【0025】
前記剛フレームは、天井材に対して、空調ダクト1の長さ方向と直交する横方向へ往復移動可能とし、該剛フレームの上フレーム材と天井材との間に加振機を介在させた。
加振機として、株式会社サンエス製永久磁石振動加振器SSV125LSを用いた。
吊区間1bの中央部1cには、変位計及び加速度計を設けた。
変位計として、オプテックス・エフエー株式会社製レーザー変位計CD5−W2000を用いた。
加速度計として、株式会社東京測器研究所製小型低容量加速度計ARF−100Aを用いた。
加振機、変位計及び加速度計の出力を記録する記録計として、株式会社キーエンス製データロガーNR−600を用いた。
【0026】
加振機によって、剛フレーム22をスイープ加振した。すなわち、吊支点1aに横方向の振動を入力し、その振動周波数を変化させた。
両端の加振機の位相及び振動周波数が互いに一致するように同期させた。
揺れの強さは、80galから260galまで、20gal置きに設定した。
振動周波数のスイープ範囲は表1の通りであった。
【0027】
吊区間1bの中央部1cにおける応答加速度を前記加速度計によって計測し、吊支点1aにおける入力加速度に対する応答倍率(応答加速度/入力加速度)を算出し、該加速度応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。
結果を表1及び
図3、
図5に示す。
【0028】
また、吊区間1bの中央部1cにおける応答変位を前記変位計によって計測し、吊支点1aにおける入力変位に対する応答倍率(応答変位/入力変位)を算出し、該変位応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。
結果を表1及び
図4〜
図5に示す。なお、260galにおいては、中央部1c付近のダクト部材が圧縮変形されてアルミテープ15の断裂が起きた。
【0029】
【表1】
【0030】
[比較例1]
比較例1として、グラスウールボード(厚み25mm)を主材とし、その内面をガラス不織布で覆い、外面をアルミニウム箔で覆ったグラスウール空調ダクトを用意した。グラスウール空調ダクトの断面形状は実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトと同じ正方形であり、内面の高さ寸法及び幅寸法は500mmであった。
グラスウール空調ダクトを、実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトと同様に、吊支持した状態でスイープ加振した。
そして、吊支点における入力加速度に対する吊区間の中央部における応答加速度の応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。結果を表2及び
図3に示す。
また、吊支点における入力変位に対する吊区間の中央部における応答変位の応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。結果を表2及び
図4に示す。なお、200gal以上の揺れになると、中央部付近で圧縮変形が起きてアルミテープの断裂が起きた。
実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトによれば、グラスウール空調ダクトより高い耐震性を有することが確認された。
【0031】
【表2】
【0032】
[比較例2]
比較例2として、亜鉛メッキ鋼板(厚み0.6mm)を主材とする鉄板空調ダクトを用意した。鉄板空調ダクトの断面形状は正方形であり、内面の高さ寸法及び幅寸法は500mmであった。
鉄板空調ダクトを、実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトと同様に、吊支持した状態でスイープ加振した。
そして、吊支点における入力加速度に対する吊区間の中央部における応答加速度の応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。結果を表3及び
図3に示す。
また、吊支点における入力変位に対する吊区間の中央部における応答変位の応答倍率が最大になる振動周波数を求めた。結果を表3及び
図4に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
比較例1、2のダクトにおいては、加速度応答倍率が最大となる振動周波数、及び変位応答倍率が最大となる振動周波数が共に1Hzから2Hzの間であり、一般的な建物の固有振動数に近く、揺れやすいと言える。
これに対し、実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトによれば、加速度応答倍率が最大となる振動周波数が約2.2Hz以上、変位応答倍率が最大となる振動周波数が約2.4Hz以上であり、一般的な建物の固有振動数(1Hz程度)から大きくずれており、揺れを抑えられることが確認された。さらに、
図5(a)及び同図(b)から明らかな通り、実施例1の硬質発泡樹脂空調ダクトにおいては、振動周波数が1.5Hz程度の場合、中央部1cの変位応答倍率は2以下であり、グラスウール空調ダクトの3分の1以下の変位に抑えられることが確認された。