【解決手段】本発明は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAであって、第1のRNA配列及び第2のRNA配列が実質的に相補性であり、第1のRNA配列が少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1と実質的に相補性である二本鎖RNAを提供する。前記二本鎖RNAは、ハンチンチンエクソン1の配列に対するRNAiを誘発することに使用するためにある。本発明の二本鎖RNAは、動物モデルにおいて、ニューロンの細胞死及びハンチンチン凝集塊を減少させることができた。
第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAであって、第1のRNA配列及び第2のRNA配列が実質的に相補性であり、第1のRNA配列が少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1と実質的に相補性である二本鎖RNA。
pre-miRNAスキャフォールド、pri-miRNAスキャフォールド、shRNA、又はsiRNA、好ましくはpre-miRNAスキャフォールドに含まれる、請求項1又は請求項2に記載の二本鎖RNA。
前記第1のRNA配列が少なくとも20ヌクレオチド、好ましくは少なくとも21ヌクレオチドの配列長を有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
前記第1の鎖が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7からなる群から選択される、請求項1から5のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
前記第1の鎖及び第2の鎖が、配列番号3と8;配列番号4と9;配列番号5と10;配列番号5と13;配列番号5と14;配列番号6と11;及び配列番号7と12の組合せからなる群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
医学的治療に使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA、請求項9に記載のDNA配列、請求項10又は請求項11に記載の発現カセット、請求項12又は請求項13に記載の遺伝子治療用ベクター。
ハンチントン病の治療で使用するための、請求項1から8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA、請求項9に記載のDNA配列、請求項10又は請求項11に記載の発現カセット、請求項12又は請求項13に記載の遺伝子治療用ベクター。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1A】ヒトハンチンチン(HTT)遺伝子及び標的配列。CAG拡大(黒色)を有するヒトHTT遺伝子(L27350.1)の概略図及びmiH1-H21に対する標的配列(薄いグレー)。
【
図1B】ヒトハンチンチン(HTT)遺伝子及び標的配列。HTT遺伝子のエクソン1のRNA配列(配列番号2)。CAG反復配列はnt.367〜429である。
【
図1C】ヒトハンチンチン(HTT)遺伝子及び標的配列。エクソン1について試験された標的配列の概略図(H1、185〜205;H2、186〜206;H3、189〜209;H4、191〜211;H5、194〜214;H6、196〜216;H7、250〜270;H8、261〜281、H9、310〜330;H10、311〜331、H11、339〜359、H12、345〜365、H13、454〜474;H14、459〜479;H15、477〜497;H16、486〜506;H17、492〜512;H18、498〜518;H19、549〜569;H20、557〜577;H21、558〜578、配列番号23〜43に対応するH1-H21)。描かれた配列はDNA配列である。番号は配列番号2における対応するRNAヌクレオチド配列を指す。配列番号2の対応するRNA標的配列は、該DNAが「t」をコードするときに、該RNAは「U」をコードすることを除いて、
図1Cに列挙した配列を有する。
【
図2A】二本鎖RNA及び発現カセットの例。miH12 pre-miH12-155(配列番号44)のためのpri-/pre-miRNAスキャフォールド及びmiH12ガイド(グレー)を含むpre-miH12-451スキャフォールド(配列番号45)の例を示す。
【
図2B】二本鎖RNA及び発現カセットの例。本発明による二本鎖RNAの概略を示し、それらがRNAi機構によってどのように処理されうるかを示す概略図。二本鎖RNAは、短いヘアピンRNA(1)であることもでき、又は拡張されたsiRNA(2)であることもできる。該ヘアピンRNA又は拡張されたsiRNAは、示した(1及びブラケットで示した)ように、近位の末端に第1のRNA配列を有する。短いヘアピンRNA又は拡張されたsiRNAは、細胞中でRNAi機構により処理されて、siRNA(3)を産生することができ、それも本発明による二本鎖RNAであることができ、第1のRNA配列を含むその1つの鎖を、RISC複合体(4)中に組み込むことができる。二本鎖RNAは、pri-miRNA配列(5)又はpre-miRNA配列(6)に含まれうる。pri-miRNAは、RNAi機構により処理されてpre-miRNAを、その後成熟miRNA二重鎖(7)を産生することができ、第1のRNA配列を含むその1つの鎖は、RISC複合体(4)中に組み込まれうる。pre-miRNA、pri-miRNA及びmiRNA二重鎖中における第1のRNA配列の位置は、1及びブラケットで示される。
【
図2C-1】
図2C。二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-CMV-miH12-155発現カセット(CMVプロモーター(1〜588)、間にはさまれた配列、緑色蛍光性タンパク質GFP配列(713〜1432)、5'pri-miRNAフランク(1433〜1514)、5'pre-miRNA、ガイド鎖(第1のRNA配列)(1520〜1540)、ループ配列、パッセンジャー鎖(第2のRNA配列)(1560〜1578)、3'pre-miRNA)3'pri-miRNAフランク(1584〜1704)、HS VTKポリAシグナル(1705〜1976)のDNA配列。
【
図2D-1】
図2D。二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-CAG-miH12-451(CAGプロモーター(43〜1715)、5'pri-miRNAフランク(1716〜2017)、5'pre-miRNA、ガイド鎖(第1のRNA配列)(2034〜2054)、第2のRNA配列及び3'pre-miRNA、3'pri-miRNAフランク(2090〜2320)、hGHポリAシグナル(2321〜2417)のDNA配列。
【
図2E】二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-PGK-miH12-451発現カセット(PGKプロモーター(23〜277)、5'pri-miRNAフランク(278〜794)、5'pre-miRNA、ガイド鎖(第1のRNA配列)(811〜831)、第2のRNA配列及び3'pre-miRNA、3'pri-miRNAフランク(867〜1097)、hGHポリAシグナル(1098〜1194)のDNA配列。
【
図2F】二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-CMV-miH12-155によりコードされるpri-miH12-155配列。
【
図2G】二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-CAG-miH12-451によりコードされるpri-miH12-451配列。
【
図2H】二本鎖RNA及び発現カセットの例。pVD-PGK-miH12-451によりコードされるpri-miH12-451配列。図(E)、図(F)及び図(G)について、フォントタイプは、対応するDNAのために上で使用したものと同じである。プロモーター配列は太字であり、緑色蛍光性タンパク質配列は下線が引かれた斜体であり(Cのみ)、pri-miRNA配列は標準フォントタイプを有し、ガイド鎖(第1のRNA配列)は太字の斜体であり、及びパッセンジャー鎖又は第2のRNA配列は斜体であり、pre-miRNA配列は下線が引かれており、ポリAシグナルは下線が引かれた太字である。
【
図3A】miH1-21のインビトロノックダウンの効力。エクソン1を標的とすることによる全HTTノックダウン。LucHTTを、Hek293T細胞にmiH1-miH21と共トランスフェクトした。ウミシイタケ及びホタルルシフェラーゼの蛍光を、トランスフェクション後48時間に測定した。miScr(対照)を陰性対照として使用して100%に設定した。miH12が最強のノックダウン効率を示した。
【
図3B】miH1-21のインビトロノックダウンの効力。LucHTTノックダウンは、19〜23ヌクレオチドの長さを有する合成siH12によって行なった。
【
図4A】異なるプロモーターを用いるmiH12-451のインビトロノックダウンの効力。LucHTTレポーターを、CAG-miH12又はPGK-miH12変形体と共トランスフェクトして、ノックダウン効力を決定し、上の
図3に記載した。
【
図4B】異なるプロモーターを用いるmiH12-451のインビトロノックダウンの効力。CAG又はPGKプロモーターから発現されたmiH12-451
*のパッセンジャー(
*)鎖活性を、特異的LucHTT
*レポーターで測定した。パッセンジャー鎖の活性は検出されなかった。
【
図5】AAV5で送達されたmiH12のインビボにおける効力。(A)実験の準備。マウスにAAV5-Luc73QHTTとAAV5-CMV-miScr-155又はAAV5-CMV-miH12-155とを1:5の比で共注射した。測定点は矢印で示す。(B)動物で、注射後6週間におけるAAV5-Luc73QHTTのノックダウンをIVISにより測定した。(C)AAV5-miH12の注射後6週間によるAAV5-Luc73QHTTのノックダウンの傾向。
【
図6A】ラットHD機構的モデルにおける概念のヒトHTTノックダウンの立証。実験の準備。
【
図6B】ラットHD機構的モデルにおける概念のヒトHTTノックダウンの立証。AAV5-CMV-miH12-155群におけるより少ない神経変性(DARP32)及びより少ない突然変異体Htt(EM48)凝集塊を示す脳の組織検査。
【
図6C】ラットHD機構的モデルにおける概念のヒトHTTノックダウンの立証。GFPの脳組織の検査。
【
図6D】ラットHD機構的モデルにおける概念のヒトHTTノックダウンの立証。Iba1免疫活性化マーカーによる脳組織の検査。
【
図7A】ヒト化Hu97/18HDマウスモデルにおけるヒトHTTのノックダウン。マウスの脳におけるAAV5-CMV-miH12-155の緩徐な線条体内注射、対流増強拡散(CED)による線条体内注射、又は脳室内(ICV)注射における形質導入の効率。GFP蛍光を注射後5週間観察した。
【
図7B】ヒト化Hu97/18HDマウスモデルにおけるヒトHTTのノックダウン。AAV5-miHTTを送達されたマウスの脳におけるヒトHTTのノックダウンを測定したウェスタンブロット。
【
図7C】ヒト化Hu97/18HDマウスモデルにおけるヒトHTTのノックダウン。HTTウェスタンブロットの定量化。
【
図8A】選択されたH12標的の先行技術の標的配列との比較。LucHTTを、Hek293T細胞に、指示されたsiRNAと共トランスフェクトした。ウミシイタケ及びホタルルシフェラーゼ蛍光を、トランスフェクション後48時間に測定した。siH12が最強のノックダウン効率を示した。
【
図8B】選択されたH12標的の先行技術の標的配列との比較。LucHTTを、Hek293T細胞に、指示されたmiRNA構築物と共トランスフェクトした。ウミシイタケ及びホタルルシフェラーゼ蛍光を、トランスフェクション後48時間に測定した。miH12が最強のノックダウン効率を示した。
【
図8C】選択されたH12標的の先行技術の標的配列との比較。LucHTTを、Hek293T細胞に、指示されたmiRNA構築物と共トランスフェクトした。ウミシイタケ及びホタルルシフェラーゼ蛍光を、トランスフェクション後48時間に測定した。miH12が最強のノックダウン効率を示した。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAであって、第1のRNA配列及び第2のRNA配列が実質的に相補性であり、第1のRNA配列が少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1と実質的に相補性である二本鎖RNAを提供する。
【0011】
配列番号1(5'-CUUCGAGUCCCUCAAGUCCUU-3')は、エクソン1のハンチンチン遺伝子の標的配列(配列番号2)に対応する。
図1Bに描かれたエクソン1は、ヌクレオチド367〜429に21回の反復CAG配列を有する。
図1Bに描かれたエクソン1の配列は、疾患と関係しない正常なハンチンチン遺伝子に対応する。
【0012】
ハンチントン病と関係する対応する突然変異体ハンチンチン遺伝子は、21回をはるかに超えるCAG反復配列を含む。前記のように、36から39回のCAG反復で、ヒトはハンチントン病の徴候及び症状を発症することもあるが、一方、40回以上の反復でヒトは殆ど常に該障害を発症する。標的配列の配列番号1は、CAG反復の数に関係なく、実質的に全てのエクソン1の配列に含まれる。
【0013】
配列番号1は、配列番号2のヌクレオチド345〜365に対応する。エクソン1中の18通りの異なる標的配列を、配列番号2の配列特異的阻害を誘発するように設計された二本鎖RNAを使用して標的とすることについて試験して(
図1及び
図3Aを参照されたい)、エクソン1からこの配列を特に標的とすることは、ハンチンチン遺伝子の発現を減少させることに有用であることが見いだされた。長さが変化するsiRNA、即ち、2個のヌクレオチドオーバーハングをその上有する、19、20、21、22、及び23個の連続した塩基対からなるsiRNAが、この配列と共に、ガイド配列位置において配列番号1と相補性の21ヌクレオチドの配列を担持する2つの別々のmiRNAスキャフォールドに対して効果的であることが見いだされた(
図3A、
図3B及び
図4を参照されたい)。それ故、ハンチンチン標的配列の配列番号1と実質的に相補性である第1のRNA配列は、少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有する。
【0014】
本発明による第1のRNA配列は、センス標的配列に対して相補性(「アンチ」)なので、アンチセンス鎖とも称される二本鎖RNAのガイド鎖中に含まれる。第2のRNA配列は、標的配列との実質的配列同一性を有するか又は同一であることもできるので、「センス鎖」とも称されるパッセンジャー鎖中に含まれる。第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、二本鎖RNA中に含まれて実質的に相補性である。本発明による前記二本鎖RNAは、RNA干渉を誘発することができ、それによりハンチンチン突然変異体の発現及び野性型遺伝子の発現の両方を減少させる。それ故、実質的に相補性とは、第1のRNA配列と第2のRNA配列の全てのヌクレオチドが塩基対を形成していること、即ち完全に相補性であること、又は第1のRNA配列と配列番号1の全てのヌクレオチドが塩基対を形成していることは必要でないことを意味すると理解される。二本鎖RNAがRNA干渉を誘発し、それにより配列番号1を含む配列を配列特異的に標的とすることができる限り、そのような実質的相補性は本発明で考慮される。
【0015】
それ故、一実施形態において、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAであって、第1のRNA配列及び第2のRNA配列が実質的に相補性であり、第1のRNA配列が少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1と実質的に相補性である本発明の二本鎖RNAは、RNA干渉を誘発して、配列特異的に配列番号1を含むRNA転写物の発現を減少させることができる。さらなる実施形態において、配列番号1を含むRNA転写物の発現を減少させる前記RNA干渉の誘発は、それがヒトハンチンチン遺伝子発現を減少させることができることを意味する。
【0016】
このことが事実であるかどうかは、標準的ルシフェラーゼレポーターアッセイ及び実施例に記載したような及び当技術分野において知られているような(Zhuangら、2006年Methods Mol Biol. 2006年;342:181〜7頁)適当な対照を使用することにより、容易に決定することができる。例えば、配列番号1を含むルシフェラーゼレポーターは、本発明による二本鎖RNAが配列特異的ノックダウンを行なうことができることを示すために使用することができる。更に、実施例の部で示すように、ハンチンチンの発現は、ノーザンブロット分析でRNA転写物の量を検出できるように、特異的抗体を用いて、ウェスタンブロット分析で発現の量を決定することができる。
【0017】
それ故、本発明による二本鎖RNAは、RNA干渉を誘発することに使用するためにある。本発明による二本鎖RNAは、例えば変化する数のCAG反復を有する配列番号2等の配列番号1を含む転写物の発現を減少させることに使用するためにある。
【0018】
前記のように、二本鎖RNAは、RNA干渉を誘発することができる。RNAiを誘発するために適当な二本鎖RNA構造は、当技術分野において周知である。例えば、低分子干渉RNA(siRNA)は2本の別のRNA鎖、即ち、第1のRNA配列を含む1つの鎖及び第2のRNA配列を含む他の鎖を含む。しばしば使用されるsiRNAの設計は、3'に2個のヌクレオチドオーバーハングを有する19個の連続した塩基対(
図2Aを参照されたい)を含む。この設計は、これらの特徴を有するsiRNAを生じるより大きい二本鎖RNAの観察されたダイサー処理に基づく。3'-オーバーハングは、第1のRNA配列に含まれうる。3'-オーバーハングは、第1のRNA配列に加わることができる。siRNAが構成されるその2本の鎖の長さは、19、20、21、22、23、24、25、26又は27個又はそれ以上のヌクレオチドであることもできる。2本の鎖の各々は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む。第1のRNA配列を含む鎖は、それらからなっていてもよい。第1のRNA配列を含む鎖は、第1のRNA配列及びオーバーハング配列からなることもできる。
【0019】
siRNAは、ダイサーの基質としても役に立つ。例えば、ダイサーの基質は、27個の連続した塩基対を有するRNAの2本の鎖からなる27量体であってもよい。第1のRNA配列は、27量体の二重鎖の3'末端に位置する。3'末端には、siRNAと同様に、2個のヌクレオチドオーバーハングがある。3'-オーバーハングは、第1のRNA配列に含まれうる。3'-オーバーハングは、第1のRNA配列に加わることもできる。第1のRNA配列から5'に追加の配列が含まれることも可能であり、それは配列番号1に隣接する標的配列に相補性であるか又はそうでないかのいずれである。siRNAダイサーの基質の他の末端は平滑末端である。このダイサーの基質の設計は、siRNAが上で記載したようなsiRNAの設計のように形成されて、19個の連続した塩基対及び両方の3'末端に2個のヌクレオチドオーバーハングを有するように、ダイサーにより処理される結果を好ましくもたらす。どのような場合にも、siRNA等は、2本の別のRNA鎖で構成されて(Fireら、1998年、Nature. 1998年2月19日;391(6669):806〜11頁)、各RNA鎖は、本発明による第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む又はそれらからなる。
【0020】
本発明による二本鎖RNAは、第1のRNA配列及び第2のRNA配列の両方が、2本の別の鎖に含まれることを必要としない。第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、例えば、shRNA等の単一のRNAの鎖中に含まれることも可能である。shRNAは、5'-第2のRNA配列-ループ配列-第1のRNA配列-任意選択の2個のヌクレオチドのオーバーハング配列-3'を含むことができる。或いは、shRNAは、5'-第1のRNA配列-ループ配列-第2のRNA配列-任意選択の2個のヌクレオチドのオーバーハング配列-3'を含むこともできる。そのようなRNA分子は、実質的に相補性の第1のRNA配列及び第2のRNA配列により分子内塩基対を形成する。適当なループ配列は、当技術分野において周知である(中でも、Dallasら、2012年、Nucleic Acids Res .2012年10月;40(18):9255〜71頁及びSchopmanら、Antiviral Res. 2010年5月;86(2):204〜11頁に示されるように)。
【0021】
ループ配列は、ステム-ループ配列であることもでき、それによりshRNAの二本鎖領域は延長されている。理論にとらわれず、上で記載したsiRNAダイサーの基質のように、shRNAは、通常ダイサーにより処理されて、例えば上で記載したようなsiRNAの設計を有する、例えば19個の連続した塩基対及び両方の3'末端に2個のヌクレオチドオーバーハングを有するsiRNAを得る。二本鎖RNAがダイサーにより処理され得る場合には、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を〜の末端に有することが好ましい。
【0022】
本発明による二本鎖RNAの末端を、pre-miRNA又はpri-mi-RNAスキャフォールドに組み込むことも可能である。マイクロRNA、即ちmiRNAは、例えば、哺乳動物細胞中で発現された二本鎖RNA分子に由来するガイド鎖である。miRNAは、pre-miRNA前駆体分子から、上で記載したようにRNAi機構により、shRNA又は拡張されたsiRNAの処理と同様に処理されて、活性化されたRNA誘導サイレンシング複合体(RISC)に組み込まれる(Tijsterman M、Plasterk RH. Dicers at RISC;the mechanism of RNAi. Cell. 2004年4月2日;117(1):1〜3頁)。理論にとらわれず、pre-miRNAは、最初にドローシャにより処理されてpre-miRNAヘアピン分子を形成する、例えばイントロンに含まれるより大きいRNA分子(pri-miRNA)の一部であることができるヘアピン分子である。pre-miRNA分子は、shRNA様分子であり、それは、その後、ダイサーにより処理されて、siRNA様の二本鎖を生じることができる。miRNA、即ちRNA二重鎖の一部であるガイド鎖は、その後、RISCに組み込まれる。天然に存在するようなRNA分子、即ちpri-miRNA、pre-miRNA又はmiRNA二重鎖は、選択の遺伝子を特異的に標的とする人工miRNAを製造するためのスキャフォールドとして使用することもできる。例えばm-foldソフトウェアを使用して予測されたRNA構造に基づいて、該RNA構造中に存在する天然miRNA配列(即ち、二重鎖、pre-miRNA又はpri-miRNA)、及び該構造中に存在するそれらと相補性である配列が除去されて、本発明による第1のRNA配列及び第2のRNA配列で置き換えられる。該第1のRNA配列及び該第2のRNA配列は、形成されるRNA構造、即ちpre-miRNA、pri-miRNA及び/又はmiRNA二重鎖が、対応する予測された元の配列と類似するように選択することができる。天然で見いだされるpre-miRNA、pri-miRNA及びmiRNA二重鎖(相補性塩基対形成によりハイブリダイズした2本の別のRNA鎖からなる)は、しばしば完全には塩基対を形成しておらず、即ち上で定義された第1の鎖及び第2の鎖と対応する全てのヌクレオチドが塩基対を形成しているとは限らず、第1の鎖及び第2の鎖は同じ長さでないことが多い。miRNA前駆体分子を、どのようにして任意の選択された標的配列及び実質的に相補性の第1のRNA配列のためのスキャフォールドとして使用するかは、例えば、Liu YP Nucleic Acids Res. 2008年5月;36(9):2811〜24頁に記載されている。
【0023】
上のことから明らかなように、任意の場合に、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAは、追加のヌクレオチド及び/又はヌクレオチド配列を含むことができる。該二本鎖RNAは、単一のRNA配列に含まれることもあり又は2本の別のRNA鎖に含まれることもある。理論にとらわれず、どのような設計が二本鎖RNAのために使用されるにしても、それは、本発明の第1のRNA配列を含むアンチセンス配列が、それがRISC複合体に組み込まれてその作用を有することができるように、RNAi機構により処理され得るように設計される。本発明の第1のRNA配列を含むか又はそれらからなる前記配列は、配列特異的に配列番号1を標的とすることができる。それ故、二本鎖RNAが、RNAiを誘発できる限り、そのような二本鎖RNAは本発明で考慮される。それ故、一実施形態において、本発明による二本鎖RNAは、pre-miRNAスキャフォールド、pri-miRNAスキャフォールド、shRNA、又はsiRNAに含まれる。
【0024】
相補性という用語は、本明細書では、更に別の核酸配列に水素結合により結合することができる核酸配列のヌクレオチド、即ち塩基対形成することができるヌクレオチドと定義する。RNAの構成ブロックであるリボヌクレオチドは、糖、ホスフェート及びプリン(グアニン、アデニン)又はピリミジン(ウラシル、シトシン)のいずれかである塩基を含有するモノマー(ヌクレオチド)で構成される。相補性RNA鎖は、二本鎖RNAを形成する。二本鎖RNAが、2本の別の相補性RNA鎖から形成されても、又は2本の相補性RNA鎖が、1本のRNA鎖に含まれてもよい。相補性RNA鎖では、ヌクレオチドのシトシンとグアニン(CとG)が塩基対を形成することができ、グアニンとウラシル(GとU)、並びにウラシルとアデニン(UとA)が塩基対を形成することができる。実質的相補性という用語は、第1のRNA配列及び第2のRNA配列を完全に相補性にするか、又は第1のRNA配列と配列番号1を完全に相補性にする必要はないことを意味する。例えば、
図2Aに示した第1のヌクレオチドと第2のヌクレオチドは実質的に相補性であって、完全な相補性ではない。
【0025】
一実施形態において、第1のRNA配列と配列番号1の間の実質的相補性は、ミスマッチがないか、ミスマッチしたヌクレオチドが1箇所か、又はミスマッチしたヌクレオチドが2箇所であることからなる。1箇所がミスマッチしたヌクレオチドとは、配列番号1と塩基対を形成する第1のRNA配列の全長を通じて1個のヌクレオチドが配列番号1と塩基対を形成していないことを意味すると理解される。ミスマッチかないとは、全てのヌクレオチドが配列番号1と塩基対を形成していることを意味し、2箇所のミスマッチがあるとは、2個のヌクレオチドが配列番号1と塩基対を形成していないことを意味する。第1のRNA配列は、21を超える長さのヌクレオチドであってもよく、この科学的モデルで、実質的相補性は配列番号1の全長を通して決定される。これは、この実施形態における配列番号1では、第1のRNA配列と塩基対を形成したときに、その全長を通して、ミスマッチがないか、1箇所又は2箇所であることを意味する。例えば、
図3B及び実施例で示したように、第1のヌクレオチド配列の長さが22及び23ヌクレオチドであるsiRNAを試験した。これらの第1のヌクレオチド配列では、ミスマッチがなくて、配列番号1と完全に相補性であった。第1のヌクレオチド配列と配列番号1の間に少しだけミスマッチがあることは、本発明による二本鎖RNAが、配列番号1を含むルシフェラーゼレポーター等の転写物の発現、又は例えば配列番号1を含む転写物を減少させることができる限り、本発明により許容され得る。この実施形態では、第1のRNA配列と配列番号1の間の実質的相補性は、第1のRNA配列又は配列番号1のどちらでも最短の全長を通してミスマッチがないか、1箇所又は2箇所であることからなる。
【0026】
一実施形態において、第1のRNA配列及び配列番号1は、塩基対を形成する少なくとも15、16、17、18、又は19個のヌクレオチドを有する。好ましくは、第1のRNA配列と配列番号1とは実質的に相補性であり、前記相補性は少なくとも19個の塩基対を含む。別の実施形態において、第1のRNA配列は、配列番号1の連続したヌクレオチドと塩基対を形成する少なくとも8、9、10、11、12、13又は14個の連続したヌクレオチドを有する。別の実施形態において、第1のRNA配列は、配列番号1の連続したヌクレオチドと塩基対を形成する少なくとも19個の連続したヌクレオチドを有する。別の実施形態において、第1のRNA配列は、配列番号1の19個の連続したヌクレオチドと塩基対を形成する少なくとも19個の連続したヌクレオチドを含む。更にまた別の実施形態において、第1のRNA配列は、配列番号1と塩基対を形成する少なくとも17個のヌクレオチドを有し、配列番号1の連続したヌクレオチドと塩基対を形成する少なくとも15個の連続したヌクレオチドを有する。第1のヌクレオチドの配列長は、最大で21、22、23、24、25、26、又は27ヌクレオチドである。
【0027】
前記のように、本発明によるミスマッチは、第1のRNA配列のヌクレオチドが、配列番号1と塩基対を形成しないことを意味する。塩基対を形成しないヌクレオチドは、AとC、CとU、又はAとGである。ミスマッチは、ヌクレオチドの欠失、又はヌクレオチドの挿入からも生じることもある。ミスマッチが第1のRNA配列中の欠失である場合、これは、第1のRNA配列の全長で比較したときに、配列番号1の1個のヌクレオチドが、第1のRNA配列と塩基対を形成していないことを意味する。塩基対を形成することができるヌクレオチドは、A-U、G-C及びG-Uである。G-U塩基対は、G-U揺らぎ、又は揺らぎ塩基対とも称される。一実施形態において、第1のRNA配列と配列番号1の間のG-U塩基対の数は、0、1又は2である。一実施形態において、第1のRNA配列と配列番号1の間のミスマッチがないこと及びG-U塩基対又はG-U対は許容される。好ましくは、第1のRNA配列と配列番号1の間にG-U塩基対がなく、又は第1のRNA配列と配列番号1はA-U又はG-Cである塩基対のみを有することもある。第1のRNA配列と配列番号1の間にG-U塩基対もミスマッチもないことが好ましい。それ故、本発明による二本鎖RNAの第1のRNA配列は、好ましくは、配列番号1に完全に相補性であり、前記相補性は、G-C及びA-U塩基対からなる。
【0028】
第1のヌクレオチド配列と配列番号1の間の完全な相補性(即ち完全な塩基対形成(ミスマッチのない)及びG-U塩基対がない)は必ずしも必要ではなく、それは、そのような第1のヌクレオチド配列は、それでも遺伝子発現の十分な抑制を可能にしうるからである。更に、完全な相補性を有さないことは、例えば、不正確な配列特異的遺伝子抑制を回避又は減少させながら配列番号1を含む転写物の配列特異的阻害を維持するために考慮されてもよい。しかしながら、完全な相補性を有することは、より強い阻害を生じうるので、好ましいといえる。理論にとらわれず、第1のRNA配列と配列番号1の間に完全な相補性を有することは、前記第1のRNA配列を含む活性化されたRISC複合体がその標的配列を切断することを可能にすることができ、それに対してミスマッチを有することは翻訳の阻害を可能にするだけで、後者は、それほど強くない阻害を生じる。
【0029】
一実施形態において、第1のRNA配列は、少なくとも19ヌクレオチド、好ましくは20ヌクレオチド、より好ましくは少なくとも21ヌクレオチドの配列長を有する。その配列長は、少なくとも22ヌクレオチド、又は少なくとも23ヌクレオチドであることもできる。本発明による第1のRNA配列は、配列番号3〜7から選択することができる。
【0031】
Table 1(表1)の第1のRNA配列は、実施例の部に記載される配列番号1を含む転写物を特異的に阻害することが示された。
【0032】
一実施形態において、本発明による二本鎖RNAの第1のヌクレオチド配列は、配列番号1と完全に相補性である。このことは、第1のRNA配列又は配列番号1のいずれかのどちらが最短であるにしても全長を通して、第1のRNA配列と配列番号1の間にミスマッチがないことを意味する。好ましくは、第1のヌクレオチド配列及び配列番号1は完全に相補性であり、G-C及びA-U塩基対のみを含む。好ましくは、第1のRNA配列は、配列番号1と完全に相補性である配列番号3〜7からなる群から選択される。最も好ましくは、第1のRNA配列は配列番号5である。第1のヌクレオチド配列が21ヌクレオチド以下である場合には(配列番号3、4及び5)、第1のヌクレオチド配列の全てのヌクレオチドが、配列番号1と塩基対を形成する。第1のヌクレオチド配列が21ヌクレオチドを超えて長い場合には(配列番号6と7)、配列番号1の全てのヌクレオチドが、第1のヌクレオチド配列と塩基対を形成する。第1のRNA配列に含まれる追加のヌクレオチドは、配列番号1と塩基対を形成しない。第1のヌクレオチド配列が21ヌクレオチドを超える長さであり、追加のヌクレオチドがガイド鎖の一部である場合には、好ましくは、追加のヌクレオチドは、配列番号2中に存在する配列番号1の配列のフランキング配列と相補性である。
【0033】
第2のRNA配列に関して、第2のRNA配列は、第1のRNA配列と実質的に相補性である。第1のRNA配列と組み合わされた第2のRNA配列は、二本鎖RNAを形成する。前記のように、これは、その標的の発現、即ちハンチンチン遺伝子発現を配列特異的に阻害することを目的として、第1のRNA配列から誘導されたガイド配列がRISC複合体に含まれるようにRNA干渉機構にとって適当な基質を形成することである。前記のように、そのような二本鎖RNAは、好ましくは、pre-miRNAスキャフォールド、pri-miRNAスキャフォールド、ashRNA又はsiRNAに含まれる。
【0034】
第2のRNA配列の配列は、標的配列と類似性を有する。しかしながら、第1のRNA配列との実質的相補性は、第1のRNA配列と配列番号1の間の実質的相補性と比較して小さい実質的相補性を有するように選択することもできる。それ故、第2のRNA配列は、0、1、2、3、4、又はそれ以上のミスマッチ、0、1、2、3、又はそれ以上のG-U揺らぎ塩基対を含んでもよく、0、1、2、3、4個のヌクレオチドの挿入及び/又は0、1、2、3、4個のヌクレオチドの欠失を含んでもよい。好ましくは第1のRNA配列及び第2のRNA配列は実質的に相補性であり、前記相補性は0、1、2又は3個のG-U塩基対を含み、及び/又はここで、前記相補性は少なくとも17個の塩基対を含む。
【0035】
これらのミスマッチ、G-U揺らぎ塩基対、挿入及び欠失は、第1のRNA配列に関し、即ち、第1のRNA配列と第2のRNA配列の間に形成される二本鎖領域に関する。第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、実質的に塩基対を形成することができる限り、配列番号1の配列特異的阻害を誘発することができて、そのような実質的相補性は本発明により許容される。第1のRNA配列と第2のRNA配列の間の実質的に相補性は、選択の二本鎖RNAの設計に依存しうることも理解される。それは、例えば、二本鎖RNAが組み込まれるように選択されるmiRNAスキャフォールドに依存しうる。
【0037】
一実施形態において、第2のRNA配列は、配列番号8〜14からなる群から選択される。Table 2(表2)に、本発明による前記第2のRNA配列の例が列挙されている。配列番号8、9、10、11及び12は、それらの全長を通して配列番号1と完全に相補性である。配列番号13と14は、その全長を通して配列番号1と相補性である21ヌクレオチドの配列番号5に対応する配列を有する第1のヌクレオチド配列と組み合わされることが可能である。配列番号13は、2箇所のヌクレオチド欠失を有して配列番号5と相補性であり、19個のヌクレオチド塩基対が形成される(結果として、配列番号5の対応する2個のヌクレオチドが塩基対を形成していない)。配列番号14は、2箇所のヌクレオチド欠失、2箇所のミスマッチを有する配列番号5と相補性であり、17個のヌクレオチド塩基対が形成される。配列番号5と配列番号13の組合せが、miH12_155中に存在し、配列番号5と配列番号14の組合せが、miH12_451a中に存在するので、相補性は
図2Bでも見ることができる。それ故、上のことから明らかなように、第2のRNA配列は、第1のRNA配列との相補性を必要とせず、配列番号1と比較して、ミスマッチを生じる欠失、挿入及び変異を含むことができる。
【0038】
上のことから明らかなように、第1のRNA配列と第2のRNA配列の間の実質的相補性は、完全に相補性である(即ち完全に塩基対を形成している)第1のRNA配列及び第2のRNA配列に対して、ミスマッチ、欠失及び/又は挿入を含んでいてもよい。一実施形態において、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、少なくとも11個の連続した塩基対を有する。それ故、第1のRNA配列の少なくとも11個の連続したヌクレオチド及び第2のRNA配列の少なくとも11個の連続したヌクレオチドが完全に相補性である。別の実施形態において、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、塩基対を形成する少なくとも15個のヌクレオチドを有する。第1のRNA配列の少なくとも15個のヌクレオチドと第2のRNA配列の少なくとも15個のヌクレオチドの間の前記塩基対形成は、G-U、G-C及びA-U塩基対からなることもあり、又はG-C及びA-U塩基対からなることもある。更に別の実施形態では、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、塩基対を形成する少なくとも15個のヌクレオチドを有し、少なくとも11個の連続した塩基対を有する。更に別の実施形態では、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、実質的に相補性であり、そこで前記相補性は、少なくとも17個の塩基対を含む。前記17個の塩基対は、好ましくは17個の連続した塩基対であることもできて、前記塩基対形成はG-U、G-C及びA-U塩基対からなるか又はG-C及びA-U塩基対からなる。
【0039】
一実施形態において、第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列は、配列番号3と8;4と9;5と10;5と13;5と14;6と11;及び7と12の群から選択される。第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列のこれらの組合せは、siRNA又はmiRNAスキャフォールドに含まれた場合に効果的であることが示された。
【0040】
実質的に相補性である第1のヌクレオチド配列と第2のヌクレオチド配列は、好ましくは、30個の又はそれ以上の長さの連続した塩基対の二本鎖RNAを形成することはなく、それは、これらは二本鎖RNA(dsRNA)で活性化されたタンパク質キナーゼ経路により、自然免疫応答を誘発させうるからである。それ故、二本鎖RNAは、好ましくは30個未満の連続した塩基対である。好ましくは、本発明による二本鎖RNAを含むpre-miRNAスキャフォールド、pri-miRNAスキャフォールド、shRNA、又はsiRNAは、30個の連続した塩基対を含まない。
【0041】
好ましくは、本発明による二本鎖RNAは、pre-miRNAスキャフォールド又はpri-miRNAスキャフォールドに含まれる。pri-miRNAスキャフォールドは、pre-miRNAスキャフォールドを含む。pre-miRNAスキャフォールドは本発明の二本鎖RNA、即ち第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む。好ましくは、本発明による二本鎖DNAは、miR-451a(miR-451ともいわれる)又はmiR-155から誘導されたpri-miRNAスキャフォールドに含まれる。pre-miRNAスキャフォールドに含まれる本発明による二本鎖RNAの例は
図2Aに描いてある。これらのpre-miRNAの配列を下のTable 3(表3)に列挙する。
【0043】
配列番号15のpre-mRNA配列は、配列番号15のヌクレオチド1〜16に対応する5'アーム、配列番号15のヌクレオチド17〜37からの配列番号5に対応する第1のRNA配列、配列番号15のヌクレオチド38〜56からの配列番号14に対応する第2のRNA配列、及び配列番号15のヌクレオチド57〜72に対応する3'-アームからなる。本発明によるpre-miR451aスキャフォールドは、配列番号15のヌクレオチド1〜16に対応する5'-アーム、それに続く本発明による第1のヌクレオチド配列、本発明による第2のヌクレオチド配列、及び配列番号15のヌクレオチド57〜72に対応する3'-アームを含む。好ましくは、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、pri-miR451aスキャフォールドに含まれる場合に非常に似た又は
図2Bに示されたものと予測される構造が得られるように選択される。好ましくは第1のRNA配列と第2のRNA配列の間に形成される塩基対は、G-C、G-U及びA-U塩基対であり、好ましくは第1のRNA配列の配列長は、21ヌクレオチドであり、第2のRNA配列の長さは好ましくは19ヌクレオチドである。好ましくは第1のRNA配列と第2のRNA配列の間に形成される塩基対は、G-C及びA-U塩基対であり、好ましくは、第1のRNA配列の配列長は21ヌクレオチドであり、第2のRNA配列の長さは好ましくは19ヌクレオチドである。理論にとらわれず、このpri-R451aのスキャフォールドは、パッセンジャー鎖がRNAi機構により処理されてRISCに組み込まれる結果を生じないので好ましいといえる(Cheloufiら、2010年6月3日;465(7298):584〜9頁)。siRNA又はmiRNA二重鎖から、原則として両鎖がRISC中に組み込まれうる。パッセンジャー鎖(第2の配列に対応する)は、ハンチンチン転写物以外の転写物を標的とする結果を生じることもあるので、pri-miR451a又はpre-miR451aスキャフォールドを使用することで、そのような望ましくないものを標的とすることを避けることが可能になる場合がある。「パッセンジャー鎖」活性の可能性を試験したときに、pri-451aスキャフォールドで活性は検出されなかった(
図4A及び
図4Bを参照されたい)。pre-miRNAヘアピンの処理は、ダイサーによらずAgo 2により切断されると理解される(Yangら、Proc Natl Acad Sci USA. 2010年8月24日;107(34):15163〜8頁)。
【0044】
配列番号16のpre-mRNA配列は、配列番号16のヌクレオチド1〜5に対応する5'アーム、配列番号16のヌクレオチド6〜26からの配列番号5に対応する第1のRNA配列、配列番号16のヌクレオチド27〜45からのループ配列、配列番号16のヌクレオチド46〜64からの配列番号13に対応する第2のRNA配列、及び配列番号16のヌクレオチド65〜69に対応する3'-アームからなる。本発明による第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含むpre-155スキャフォールドは、配列番号16のヌクレオチド1〜5に対応する5'-アーム、第1のRNA配列、配列番号16のヌクレオチド27〜45に対応するループ配列、第2のRNA配列、及び配列番号16のヌクレオチド65〜69に対応する3'-アームを含む。好ましくは、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、pre-miR155スキャフォールド(又はpri-miRNAスキャフォールド)に含まれる場合には、
図2Bに示されたものと非常に似た予測される構造が得られるように選択される。好ましくは、第1のRNA配列と第2のRNA配列の間に形成される塩基対は、G-C又はA-U塩基対であり、好ましくは、第1のRNA配列の配列長は21ヌクレオチドであり、第2のRNA配列の長さは好ましくは19ヌクレオチドである。前記19ヌクレオチドは、好ましくは長さが21ヌクレオチドの第1のヌクレオチド配列のヌクレオチド2〜18と完全に相補性である。
【0045】
pre-miRNA配列は、より大きいRNA配列に含まれる場合には、ドローシャ認識及び切断を可能にする5'-及び3'-一本鎖のフランキング配列を必要とする。ドローシャ認識及び切断を可能にするために適した前記配列は、5'-pri-miRNA配列及び3'-pri-miRNA配列である。例えば、
図5Aに描かれたように発現されたpre-miH12_155配列は、発現ベクターCMV-miH12-155(
図2C)中でmiR155の5'-pri-miRNA及び3'-pri-miRNA配列に挟まれる。miRH12_155を含むpri-miRNA配列が、
図2Fに列挙されているが、5'-pri-miRNAはヌクレオチド1〜87に対応し、3'-pri-miRNAは147〜272に対応する。同様に、
図2D及び
図2Eにおけるそれらのそれぞれのベクターにより発現されたCAG-miH12-451pri-miRNA配列及びPGK-miH12-451pri-miRNA配列を
図2G及び
図2Hに示す。発現されたCAG-miH12-451RNAの5'-pri-miRNA及び3'-pri-miRNAは、ヌクレオチド1〜302及び375〜605に対応し、発現されたPGK-miH12-451RNAの5'-pri-miRNA及び3'-pri-miRNAは、ヌクレオチド1〜516及び589〜819にそれぞれ対応する。一本鎖のフランクの長さは変化しうるが、典型的には約80ヌクレオチドである(Zeng及びCullen、J Biol Chem. 2005年6月29日;280(30): 27595〜603頁;Cullen、Mol Cell. 2004年12月22日;16(6):861〜5頁)。一本鎖のフランクの最小長さは、短くなりすぎた場合には、ドローシャ処理が成功せず、配列特異的阻害が減少される又は起こらないことさえあるので、容易に決定することができる。一実施形態において、本発明による第1のRNA配列及び第2のRNA配列を担持するpri-miRNAスキャフォールドは、少なくとも50ヌクレオチドの予測されるpre-miRNA構造に対して5'配列のフランク及び3'配列のフランクを有する。pre-miRNA及びpri-miRNAから誘導される配列は、好ましくは全て同じ天然に生じるpri-miRNA配列から誘導される。
【0046】
配列番号15及び配列番号16のpre-miRNA配列は、
図2C(配列番号16)、
図2D(配列番号15)、及び
図2E(配列番号15)に描かれたDNA配列によりコードされる。前記pre-miRNA配列を含むPri-miRNA配列は、
図2F(配列番号16)、
図2G(配列番号15)及び
図2H(配列番号15)に描かれている。CMV-miH12-155によりコードされるpri-miRNAは、
図2Cのヌクレオチド1433〜1704に対応し、CAG-miH12-451では
図2Dのヌクレオチド1716〜2320に対応し、及びPGK-miH12-451では
図2Eのヌクレオチド278〜1097に対応する。同様に、第1のRNA配列及び第2のRNA配列は、pre-miRNAについて上で記載したように組み込まれうる。
【0047】
siRNA、shRNA、pri-mRNAスキャフォールド又はpre-miRNAスキャフォールドに組み込まれた本発明による二本鎖RNAは、リポフェクション、トランスフェクション等の当技術分野において知られた方法を使用して、又はそのための任意の他の適当な手段を使用して、細胞に提供することができる。本発明による二本鎖RNAは、合成二本鎖RNAであっても天然二本鎖RNAであってもよい。合成二本鎖RNAは、天然ヌクレオチドの知られた類似体を含有する核酸を含むこともできる。前記二本鎖RNAは、それらの天然の対応するものと比較して同様な性質を有し、非合成二本鎖RNAから完全になる二本鎖RNAと同様な又はそれを超える改善されたRNA干渉活性を有する。例えば、合成siRNAは、それらの設計に、ロックされた核酸(2'-Oと4'-C原子の間がメチレン架橋(橙色)により接続されているリボース環)、ホスホチオエート、2'-O-Me、2'-O-アリル及び2'-デオキシ-フルオロウリジンを含むヌクレオチド等の修飾されたヌクレオチドの使用を含むこともある。二本鎖RNA、例えばsiRNAは、塩基対が形成された及び塩基対が形成されていない両方の位置で有意の失活なしに非常に多数の改変を受け入れることができることは周知である。好ましくは、本発明の二本鎖RNAは、二本鎖RNAの発現から得られたもの等の天然ヌクレオチドからなる二本鎖RNAである。
【0048】
それ故、一実施形態において、本発明の前記二本鎖RNAは、DNA配列によりコードされている。例えば、siRNA、shRNA、pri-mRNAスキャフォールド又はpre-miRNAスキャフォールドに含まれる前記二本鎖RNAをコードする前記DNA配列は、発現カセットに含まれる。二本鎖RNAが、例えば2本のRNA鎖からなるsiRNAである場合には、2つの発現カセットが必要であることは理解される。第1のRNA配列を含むRNA鎖をコードする一方のカセット、第1のRNA鎖を含むRNA鎖をコードする他方のカセットである。二本鎖RNAが例えばshRNA、pre-miRNA又はpri-miRNAをコードする単一のRNA分子に含まれる場合には、1つの発現カセットで十分でありうる。pol II発現カセットは、プロモーター配列、ポリアデニル化配列に続いて発現されるべきRNAをコードする配列を含むこともできる。発現された二本鎖RNAがpri-miRNAスキャフォールドを含む場合には、コードされたRNA配列は、イントロン配列及びエクソン配列及び3'-UTR'及び3'-UTRをコードしうる。pol III発現カセットは一般的に、プロモーター配列、それに続いてRNA(例えばshRNA配列、pre-miRNA、又は例えばsiRNA又は拡張されたsiRNAに含まれるべき二本鎖RNAの鎖)をコードするDNA配列を含む。pol I発現カセットは、pol Iプロモーター、それに続いてRNAをコードする配列及び3'ボックスを含むことができる。二本鎖RNAのための発現カセットは当技術分野において周知であり、どのようなタイプの発現カセットでもよく、例えば、pol IIIプロモーター、pol IIプロモーター又はpol Iプロモーターが使用されうる(中でも、ter Brakeら、Mol Ther. 2008年3月;16(3):557〜64頁、Maczugaら、BMC Biotechnol. 2012年7月24日;12:42頁)。本発明による二本鎖RNAを発現する発現カセットの例が
図2C〜
図2Eに描かれている。
【0049】
好ましくは、PGKプロモーター、CBAプロモーター又はCMVプロモーター等のpol IIプロモーターが使用される(
図2C〜
図2Dを参照されたい)。ハンチントン病はニューロンに悪影響を及ぼすので、神経特異的プロモーターを使用することは特に有用でありうる。適当な神経特異的プロモーターの例は、ニューロン特異的エノラーゼ(NSE)、ヒトシナプシン1、caMKキナーゼ及びチューブリンである。考慮されうる他の適当なプロモーターは、誘発性プロモーター、即ち宿主細胞がある特定の刺激に曝されたときにのみ、転写を開始させるプロモーターである。
【0050】
本発明による前記発現カセットは、例えばトランスフェクション法を使用して細胞に移すことができる。どのような適当な手段でも、本発明による発現カセットを移すために十分でありうる。好ましくは、上で記載したようにハンチンチン遺伝子の配列特異的阻害を誘発する二本鎖RNAの安定な発現が達成できるように、該発現カセットを細胞に安定に移す遺伝子治療用ベクターが使用される。適当なベクターは、レンチウイルスベクター、レトロトランスポゾンに基づくベクター系、又はAAVベクターであってもよい。例えばレンチウイルスベクターはRNAゲノムを担持しており、該RNAゲノムは、細胞の形質導入後に、前記DNA配列及び前記発現カセットが形成されるように前記発現カセットをコードするであろうと理解される。好ましくは、AAV等のウイルスベクターが使用される。好ましくは、使用されるAAVベクターは血清型5のAAVベクターである。血清型5のAAVは、実施例で示すように、ニューロンを形質導入するために特に有用でありうる。目的の任意の発現カセットを含むAAVベクターの産生は;WO2007/046703、WO2007/148971、WO2009/014445、WO2009/104964、WO2011/122950、WO2013/036118に十分記載されており、これらの特許は全体として本明細書に組み込まれる。
【0051】
例えば昆虫又は哺乳動物の細胞株で産生されるAAVベクターの産生のために本発明で使用されうるAAV配列は、任意のAAV血清型のゲノムから誘導することができる。一般的に、AAV血清型は、アミノ酸及び核酸レベルで有意の相同性のゲノム配列を有し、同一のひと組の遺伝的機能を提供し、本質的に物理的に及び機能的に等価のウイルス粒子を産生し、事実上同一の機構により複製されて集合する。種々のAAV血清型のゲノム配列及びゲノム類似性の概要については、例えば、GenBank受入番号U89790;GenBank受入番号J01901;GenBank受入番号AF043303;GenBank受入番号AF085716;Chloriniら(1997年、J. Vir. 71:6823〜33頁);Srivastavaら(1983年、J. Vir. 45:555〜64頁);Chloriniら(1999年、J. Vir. 73:1309〜1319頁);Rutledgeら(1998年、J. Vir. 72:309〜319頁);及びWuら(2000年、J. Vir. 74:8635〜47頁)を参照されたい。AAV血清型1、2、3、4及び5は、本発明の文脈において使用するために好ましいAAVヌクレオチド配列の供給源である。好ましくは、本発明の文脈において使用するためのAAV ITR配列は、AAV1、AAV2、及び/又はAAV5から誘導される。同様に、Rep52、Rep40、Rep78及び/又はRep68をコードする配列は、好ましくは、AAV1、AAV2及びAAV5から誘導される。しかしながら、本発明の文脈において使用するためのVP1、VP2、及びVP3カプシドタンパク質をコードする配列は、知られている42種の血清型の任意のものから、より好ましくはAAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8又はAAV9又は例えばカプシドシャフリング技法により及びAAVカプシドライブラリーにより得られた新しく開発されたAAV様粒子から得ることができる。
【0052】
別の実施形態において、宿主細胞は、前記DNA配列、又は本発明による前記発現カセット含んで提供される。例えば、前記発現カセット又はDNA配列は、細菌中に含有されるプラスミドに含まれることもある。前記発現カセット又はDNA配列は、例えばウイルスベクターを産生する産生細胞中に含まれていることもある。
【0053】
実施例の部で示すように、及び上で説明したように、本発明による二本鎖RNA、本発明によるDNA配列、本発明による発現カセット及び本発明による遺伝子治療用ベクターは、医学的治療で使用するため、特にハンチントン病の治療で使用するためのものである。前記医学的治療は、AAVベクターを使用する場合(又は遺伝子治療用ベクターについても同様に)、本発明のAAVベクターの脳中への直接注入を含む。さらなる実施形態における前記直接注入は、ベクターの脳脊髄液中への髄腔内注入を含む。そのような髄腔内注入は、遺伝子治療用ベクターをCNSに送達してニューロンを標的とする効率的な方法の典型を表す。好ましくは、線条体の構造及び皮質の構造は、線条体中への注射によるAAVベクターの線条体内の対流増強拡散(CED)送達による標的とされる。より好ましくは、CNSへの到達範囲をより大きくするために、注射は、線条体中に、更に視床中にもなされる。それ故、AAVベクターは、線条体における、又は線条体及び視床における対流増強拡散(CED)注射により、線条体内に送達され、又は線条体内及び視床内に送達される。そのような注射は、好ましくは、MRIガイド下の注射により実施される。前記治療方法は、ハンチントン病を有するヒト対象のために特に有用である。ハンチントン病の治療は、ハンチントン病を発症する遺伝的素因を有する、該疾患の徴候を未だ示さないヒト対象を含むハンチントン病を有するヒト対象を含むと理解される。それ故、ハンチントン病を有するヒト対象の治療は、35回を超えるCAG反復を有するハンチンチン対立遺伝子を有する任意のヒト対象の治療を含む。
【0054】
実施形態
1. 第1のRNA配列及び第2のRNA配列を含む二本鎖RNAであって、
第1のRNA配列及び第2のRNA配列とは実質的に相補性であり、第1のRNA配列は少なくとも19ヌクレオチドの配列長を有し、配列番号1と実質的に相補性である二本鎖RNA。
【0055】
2. 前記二本鎖RNAがハンチンチン遺伝子発現を減少することができる、実施形態1に記載の二本鎖RNA。
【0056】
3. 二本鎖RNAが、pre-miRNAスキャフォールド、pri-miRNAスキャフォールド、shRNA、又はsiRNA、好ましくはpre-miRNAスキャフォールドに含まれる、実施形態1又は実施形態2に記載の二本鎖RNA。
【0057】
4. 第1のRNA配列が少なくとも20ヌクレオチド、好ましくは少なくとも21ヌクレオチドの配列長を有する、実施形態1〜3のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
【0058】
5. 第1のRNA配列が配列番号1と完全に相補性である、実施形態1〜4のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
【0059】
6. 第1の鎖が、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号7からなる群から選択される、実施形態1〜5のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
【0060】
7. 第1の鎖及び第2の鎖が、配列番号3と8;配列番号4と9;配列番号5と10;配列番号5と13;配列番号5と14;配列番号6と11;及び配列番号7と12の組合せからなる群から選択される、実施形態1〜6のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
【0061】
8. 二本鎖RNAが、miR-451a又はmiR-155から誘導されたpre-miRNAスキャフォールドに含まれる、実施形態1〜7のいずれか一項に記載の二本鎖RNA。
【0062】
9. 実施形態1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNAをコードするDNA配列。
【0063】
10. 実施形態1〜9のいずれか一項に規定の二本鎖RNAをコードする発現カセット。
【0064】
11. 発現カセットがPGKプロモーター、CMVプロモーター、神経特異的プロモーター又はCBAプロモーターを含む、実施形態10に記載の発現カセット。
【0065】
12. 実施形態10又は11に記載の発現カセットを含む遺伝子治療用ベクター。
【0066】
13. AAVベクター、好ましくは血清型5のAAVベクターである、実施形態12に記載の遺伝子治療用ベクター。
【0067】
14. 実施形態9に記載のDNA配列を含む宿主細胞又は実施形態10若しくは実施形態11に記載の発現カセット。
【0068】
15. 医学的治療に使用するための、実施形態1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA、実施形態9に記載のDNA配列、実施形態10又は実施形態11に記載の発現カセット、実施形態12又は実施形態13に記載の遺伝子治療用ベクター。
【0069】
16. ハンチントン病の治療で使用するための、実施形態1〜8のいずれか一項に記載の二本鎖RNA、実施形態9に記載のDNA配列、実施形態10又は実施形態11に記載の発現カセット、実施形態12又は実施形態13に記載の遺伝子治療用ベクター。
【実施例】
【0070】
miRNAスキャフォールドの発現構造及びsiRNA
miR155に基づいてmiRNAスキャフォールドベクターを創るために、
図1に示されたHTT中の選択された標的配列と完全に相補性の21ヌクレオチドの(bp)配列を、pcDNA6.2-GW/EmGFP-miR(Invitrogen社、Carlsbad、カリフォルニア州)のpri-mir-155骨格中に埋め込むと、pVD-CMV-miHTT-155が生じた(発現カセット配列の例は、
図2Cに描かれ、発現されたRNAに含まれるpre-miRNA及びpri-miRNA配列は
図2B及び
図2Fに、それぞれ描かれている)。pri-mir-155の構造は、Invitrogen社により提供された使用説明書(BLOCK-iT、Pol II miR RNAi発現ベクターキット、バージョンE、6月22日、2007年、25-0857)に基づいて、pcDNA6.2-GW/emGFP-mir155のBsalサイトで合成二本鎖オリゴヌクレオチドをアニールすることにより設計した。miHtt構造によりコードされる全ての人工pre-miRNAの構造を、Mfoldソフトウェア(Nucleic Acids Res. 31(13)、3406〜15頁、(2003年)、mfoldバージョン3.5を使用して、オンラインで利用可能、http://mfold.rna.albany.edu/?q=mfold)を使用して検証した。配列番号5と対応する配列を担持するpre-miRNA-155スキャフォールドの予測される構造を
図2Bに示す。選択された第1の配列として配列番号5を有するpri-miRNA-155スキャフォールドのための発現構造をコードするDNA配列を
図2C(配列番号17)に列挙するが、この構造はmiH12及びその標的H12にも相当する。他の20種の選択された標的配列について、それらの配列は
図1に描かれた標的配列と完全に相補性であるように設計される。
図2Bに描かれた同じ構造的特徴を有するmiRNAスキャフォールド、即ち該スキャフォールドに埋め込まれた第2のRNA配列は、選択された第1のRNA配列が完全に相補性である配列に対応するが、中心に2個のヌクレオチド欠失を有する。同様に対照として、スクランブルされたRNA配列を第1のRNA配列として使用して、上のように、第2のRNA配列は、ベクターpVD-CMV-miScr-155を創るために設計した。該構築物は、インビトロ及びインビボでmiRNA発現及び形質導入の可視化の両方を可能にするためにGFPを含有した。
【0071】
miR451aに基づくmiRNAスキャフォールドベクターを創出した。該pri-miR-451スキャフォールドをコードするDNA配列は、予測される成熟mir-451配列に基づいて合成し、H12を標的とする配列、即ち第1のRNA配列としての配列番号5により置き換えた。第2のRNA配列は、第1のRNA配列のヌクレオチド2〜18と完全に相補性であるように設計した。第2のRNA配列は、該人工pre-miRNA配列の予測されるRNA構造が元の野生型構造と同様な構造を採用するように選択した。該構造によりコードされるpre-miRNAの構造を、Mfoldソフトウェア(Nucleic Acids Res. 31(13)、3406〜15頁(2003年)、mfoldバージョン3.5使用して、オンラインで利用可能、http://mfold.rna.albany.edu/?q=mfold)を使用して検証した。配列番号5を使用して予測される構造を
図2Bに示す。2つの異なるmiR451aスキャフォールドを発現するベクターを作製した。該発現構造のDNA配列が
図2D及び
図2Eに描かれており、発現されたRNAに含まれる対応するそれぞれのpri-miRNAスキャフォールド配列を、
図2G及び
図2Hに列挙する。
図2Dは、CAGプロモーターを含むmiRNAスキャフォールドを発現するpVD-CAG-miH12-451の発現カセットのDNA配列を示し、
図2Eには、PGKプロモーターを使用するpVD-PGK-miH12-451の発現カセットのDNA配列を示す。
【0072】
miH12標的でHTTを標的とする合成siRNA、即ち配列番号1を、19〜23bpの長さで設計した(Table 1(表1))。該siRNAは、配列番号3と8;4と9;5と10;6と11;及び7と12に対応する第1のヌクレオチド配列及び第2のヌクレオチド配列を含んだ。該siRNAは、3'-UUオーバーハングを両鎖で有するように設計した。
【0073】
レポーター構造
完全なHTTエクソン1の配列を含有するpsiCheck-2構造LucHTTを設計して、Promega社(siCHECK(商標)ベクター、C8011、Promega社、Benelux b.v.、Leiden、オランダ)により提供された使用説明書に従ってクローニングした。LucHTTは、配列番号1及び配列番号2中に存在するそのフランキング配列を含む(
図1Bを参照されたい)。LucH12_451aレポーターは、pVD-CAG-miH12-451及びpVD-PGK-miH12-451により発現されるべく設計された第2のRNA配列と相補性の配列を含む。全ての構築物の配列を決定して正しい配列を検証した。全てのmiRNAスキャフォールド及びsiRNAのノックダウンの効力をインビトロで、特異的ルシフェラーゼレポーターで決定した。Hek293T細胞にmiHttを該ルシフェラーゼレポーターと1:1の比(miR-155、PGK-miH12-451)、又は1:10の比で共トランスフェクトした(CAG-miH12-451、即ち該CAGプロモーターは非常に強い)。ウミシイタケルシフェラーゼのノックダウンをトランスフェクション後(p.t)48時間に測定し、ホタルを内部対照として測定した。miScrを陰性対照として使用して100%とした。
【0074】
インビトロの結果
エクソン1を標的とするmiH1-miH21構造の中で、miH12が最強のルシフェラーゼレポーターのノックダウンを誘発し、75〜80%減少させた(
図3A)。H12を標的とするsiRNA、即ち配列番号1は、全て同様なノックダウン効率を有することが示され、用量を増加するとより強いノックダウンを示した。19及び21個の塩基対のSiRNAは、試験された他のsiRNAと比較して若干強い阻害を示した。pVD-CMV-miHTT-155から発現されたRNAの次世代の配列決定(NGS)分析を実施して、miRNAスキャフォールドの一部であるべく設計された第1のRNA及び第2のRNA配列に対応するガイド鎖及びパッセンジャー鎖における優先(preference)を示した(例えば
図2B(7)を参照されたい)。pVD-CAG-miH12-451及びpVD-PGK-miH12-451は、LucHTT及びLucH12_451aの両方を標的とすることについて試験した。CAG構造及びPGK構造は両方とも配列特異的阻害を示したが(
図4A)、Lucレポーターは、該構造の第2のRNA配列に完全に相補性の配列を含んでおり低下しなかった。
【0075】
マウスにおけるAAVベクターを使用するインビボのノックダウン
pVD-CMV-miHTT-155からの発現構造CMV-miH12-155を、AAV5ベクター骨格及びバキュロウイルス産生系を使用して産生されたAAV5中でクローニングした。対照としてCMV-miScr-155もAAV5骨格中に組み込んで陰性対照として役立てた。脳への形質導入の効率をモニターするために、該発現カセットはGFPを含有した(
図5A)。AAV-5ベクターは、標的配列の配列番号1(即ち、73回のCAG反復を有する完全なHTTエクソン1の配列)及び配列番号2中に存在するそれらのフランキング配列(
図1Bを参照されたい)を含むルシフェラーゼレポーター構造、Luc73QHTTを担持する。Balb/6マウス(N5)の線条体内に、2μlのAAV5-Luc73QHtt/SNP(3.6×10
12gc/ml)及びAAV5-miScr(1.8×10
13gc/ml)又はAAV5-miH12(1.8×10
13gc/ml)を1:5の比で共注射した。別の群には、AAV5-Luc73QHtt/SNP及びPBSを注射した。ルシフェラーゼ発現を、注射の2、4、及び6週間後にMSによりモニターした。注射後1週間で、すでにmiScr及びLuc19QHtt/wtのみの動物と比較して、miH12によるLuc19QHtt/wtの明確なノックダウンがあった(
図7b及び
図7c)。経時的なルシフェラーゼレポーター発現において有意の低下を示す傾向が示され、発現は対照群と比較して、脳において、殆ど検出不可能であり(miH12 #1及び#2)、CMV-miH12-155によるHTT標的の強いノックダウンが示された。実験の終末では、CMV-miH12-155群におけるLuc73QHtt/SNPの蛍光は、miScrと比較して約1桁低かった。
【0076】
HD動物モデルでAAVベクターを使用するインビボノックダウン
AAV5-CMV-miH12-155をLV-171-82QHDラットモデルで試験した(Drouetら、2009年、Ann Neurol. 2009年3月;65(3):276〜85頁)。該モデルは、SNPC/Tを含有するエクソン67のフラグメントに連結した82回のCAG反復を有するHTT変異体フラグメントの第1の171アミノ酸の線条体の過剰発現に基づく。HDラットにAAV5-CMV-miH12-155又は対照のAAV5-CMV-miScr-155を注射した(
図6A)。ラットの線条体内にLV-171-82Qを注射して1週間後にAAV5-CMV-miH12-155又はAAV5-CMV-miScr-155を注射した。AAV5-CMV-miH12-155の神経保護効果を、初期及び後期の時点でHDラット脳切片の組織染色(DARP32、EM48、GFP及びIba1)に基づいて決定した(
図6B、
図6C及び
図6D、注射後2週間)。DARP32病変(
図6B、上のパネル)は、神経変性を示し、脳切片で白色斑点として観察することができる。パネルは、AAV5-CMV-miH12-155ラットの脳切片には、ニューロンの死が少なく、それ故白色斑点がないことを明確に示す。脳切片を、スライド上で小さい褐色の小斑点として見られる突然変異体HTT凝集塊を求めて染色した(EM48、
図6B)。AAV5-CMV-miH12-155を注射されたHDラットでは、対照群と比較して、神経変性及び突然変異体HTT凝集塊は明らかに少なかった(
図6B、中央及び下のパネル)。同様な結果が、注射後8週間の後期の時点でも得られた(データ掲載せず)。GFP組織検査(褐色染色)の結果は、本研究で使用された全てのベクターで、効率的な線条体の形質導入を示した(
図6C)。それに加えて、Iba1染色に基づいて、注射後8週間で免疫応答は殆ど検出されなかった(
図6D)。
【0077】
その後、AAV5-CMV-miH12-155を、ヒト化Hu97/18HDマウスモデルで更に試験した(Southwellら、2013年、Hum Mol Genet. 2013年1月1日;22(1):18〜34頁)。このモデルは、マウスのHdh遺伝子がヒトHTTの2通りのコピーによって置き換えられており、1方は97回、他方は18回のCAG反復を担持する。Hu97/18マウスモデルにおける、疾患進行の結果としての運動の、精神医学的、認識の、電気生理学的、神経病理学的及び生化学的変化の詳細なキャラクタリゼーション実施された。AAV5-CMV-miH12-155を、月齢2ヵ月のヒト化Hu97/18HDマウスモデルに、線条体における対流増強拡散(IC-CED)による脳内送達又は線条体における緩徐な送達(IC-低速送達)又は脳室における脳室内送達(ICV)による送達により注射した。GFP蛍光は、緩徐なCED送達でマウス線条体の完全な形質導入を示した(
図7A)。ヒトHTTのウェスタンブロット分析は、CED送達が適用されたときの線条体におけるAAV5-CMV-miH12-155によるノックダウンを示した(
図7B)。
【0078】
H12と先行技術の標的配列との比較
H12配列と近似した先行技術からの標的配列をH12配列と比較した。siRNAスキャフォールド及びmiRNAスキャフォールドを構築して、上で記載したようにルシフェラーゼレポーター系を使用して、直接比較を実施した。結果を偏らせる不正確な効果を回避するために、低濃度のsiRNAを3連でトランスフェクトした(0.25nM)。完全に相補性のガイド鎖及びパッセンジャー鎖(G-C及びA-U塩基対)を有し、両鎖でUU-3'オーバーハングを有するsiRNAを作製した。スクランブルされたsiRNAを対照として使用し、対照と比較して値を測定した。H12 siRNAは、最強の阻害を示した(
図8Aを参照されたい)。同様に、miRNAスキャフォールドを、miR-155に基づいて、上で記載したようにInvitrogen社の使用説明書に従って作製して、同様に直接比較した。R6.1標的配列及びR6.2標的配列と完全に相補性の19ヌクレオチド及び18ヌクレオチドをInvitrogen社からの操作されたmiR-155スキャフォールドのガイド配列中に置き換えることにより、R6.1スキャフォールド及びR6.2スキャフォールドを作製した。それ故、ダイサーによるpre-miRNA処理に依存して、処理されたR6ガイド鎖は、配列の末端でmiR-155スキャフォールドからのヌクレオチドを含有することもできる。miRNAスキャフォールドは、上で記載したように、miRNA構造とレポーターの間の異なる比(miRNAスキャフォールド構造:ルシフェラーゼレポーター)を使用してトランスフェクトした。スクランブルされたmiRNA構造を対照として使用して、値を対照と比較して測定した。
図8Bは、1:1の比を示し、それに対して
図8Cは1:10の比を示す。H12miRNAスキャフォールドは、最強の阻害を示した。H12は、siRNA及びmiRNAの両方について、特にインビボ適用に対して最も関係のあると考えられる低濃度で、著しく強い阻害を示した。
【0079】
【表4】
【0080】
Table 4(表4)。H12と比較した先行技術からの標的。標的配列を示す。H12標的配列との同一性を有する標的ヌクレオチドには、下線を引いた。(SI.は配列番号を示す;L.はヌクレオチドの長さを示し、Id.はH12との同一性を有するヌクレオチドの数を示す)。(R1は、Rodriguez-Lebronら、2005年、Mol Ther. 12巻4号:618〜633頁によるsiRNA siHUNT-2から誘導され、R2は、Franichら、2008年、Mol Ther、16巻5号;947〜956頁により発現されたshRNA shD2から誘導される)、R3は、US20080015158によるsiRNA-Dエクソンlから誘導され、R4は、WO2008134646によるHDAS 07から誘導され、R6.1及びR6.2は、ハンチンチン遺伝子を標的とするように設計された約1750通りの推測に基づくsiRNAのリストから誘導される(WO2005105995)。