特開2021-136083(P2021-136083A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021136083-X線管 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-136083(P2021-136083A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】X線管
(51)【国際特許分類】
   H01J 35/06 20060101AFI20210816BHJP
   H01J 35/08 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   H01J35/06 E
   H01J35/06 H
   H01J35/06 C
   H01J35/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2020-29358(P2020-29358)
(22)【出願日】2020年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】503382542
【氏名又は名称】キヤノン電子管デバイス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】特許業務法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小澤 辰光
(57)【要約】
【課題】本実施形態の目的は、分析精度を向上することができるX線管を提供することにある。
【解決手段】本実施形態のX線管は、X線を透過する出力窓が設けられた真空外囲器と、前記真空外囲器内に設けられ、前記出力窓に対向する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを囲むように設けられた収束電極と、前記収束電極の外側に設けられ、前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極フィラメントと、を備え、前記収束電極において、前記陽極ターゲットに面する内周面は、前記陽極ターゲットと同じ材質のコーティング層でコーティングされている。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を透過する出力窓が設けられた真空外囲器と、
前記真空外囲器内に設けられ、前記出力窓に対向する陽極ターゲットと、
前記陽極ターゲットを囲むように設けられた収束電極と、
前記収束電極の外側に設けられ、前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極フィラメントと、を備え、
前記収束電極において、前記陽極ターゲットに面する内周面は、前記陽極ターゲットと同じ材質のコーティング層でコーティングされている、X線管。
【請求項2】
前記コーティング層は、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)のいずれかによって形成されている、請求項1に記載のX線管。
【請求項3】
さらに、前記陰極フィラメントを支持する陰極支持体を備え、
前記収束電極は、円筒状に形成されるとともに、その一部に切欠部を有し、
前記陰極支持体は、前記切欠部に設けられ、
前記収束電極と前記陰極支持体との間に絶縁材が介在している、請求項1に記載のX線管。
【請求項4】
さらに、前記陽極ターゲットを支持する陽極支持体を備え、
前記収束電極の印加電圧は、前記陰極フィラメント及び前記陰極支持体の印加電圧より高く、前記陽極支持体の印加電圧より低い、請求項3に記載のX線管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、X線管に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、X線管では、陰極フィラメントから放出された電子を陽極ターゲットに衝突させて、X線を発生させている。発生したX線は、真空外囲器の出力窓から出力される。陽極ターゲットでは、電子が衝突すると、X線を発生すると同時に2次電子が発生し、この2次電子が陽極ターゲット以外の部分に衝突して不純線を励起する場合がある。
特に、分析用X線管においては、高純度のX線を出力し、分析精度を向上することが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−135718号公報
【特許文献2】特開平9−82252号公報
【特許文献3】特開平11−224626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本実施形態の目的は、分析精度を向上することができるX線管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態のX線管は、
X線を透過する出力窓が設けられた真空外囲器と、前記真空外囲器内に設けられ、前記出力窓に対向する陽極ターゲットと、前記陽極ターゲットを囲むように設けられた収束電極と、前記収束電極の外側に設けられ、前記陽極ターゲットに照射する電子を放出する陰極フィラメントと、を備え、前記収束電極において、前記陽極ターゲットに面する内周面は、前記陽極ターゲットと同じ材質のコーティング層でコーティングされている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1図1は、本実施形態のX線管1の一構成を概略的に示す断面図である。
図2図2は、図1に示したX線管1の内部構造を示す斜視図である。
図3図3は、図1に示したX線管1の内部構造を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一又は類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0008】
図1は、本実施形態のX線管1の一構成を概略的に示す断面図である。ここで説明するX線管1は、例えば分析用X線管である。
【0009】
X線管1は、真空外囲器2と、陽極ターゲット3と、陽極支持体4と、収束電極5と、陰極フィラメント6と、陰極支持体7と、を備えている。
【0010】
真空外囲器2は、先端部分の外径が徐々に細くなっており、先端は平坦になっている。X線を透過する出力窓8は、真空外囲器2の平坦な部分が設けられている。出力窓8は、X線の減衰が少ない材料、例えばBe(ベリリウム)で形成されており、また、数10〜数100μmの厚さを有している。
【0011】
陽極ターゲット3、陽極支持体4、収束電極5、陰極フィラメント6、陰極支持体7などは、真空外囲器2の内部に設けられている。
【0012】
陽極ターゲット3は、出力窓8に対向するように配置されている。陽極ターゲット3は、円板状に形成されており、例えば、Rh(ロジウム)、W(タングステン)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)等で形成されている。陽極支持体4は、全体的に先端ほど細くなるように形成されており、例えばCu(銅)で形成されている。陽極支持体4は、その先端において陽極ターゲット3を支持している。
【0013】
収束電極5は、陽極ターゲット3を囲むように設けられている。収束電極5は、陽極ターゲット3とは異なる材料で形成されており、例えば、鉄(Fe)、ステンレス等で形成されている。陰極フィラメント6は、収束電極5の外側に設けられ、陽極ターゲット3に照射する電子9を放出するものである。陰極支持体7は、収束電極5の外側に設けられ、陰極フィラメント6を支持している。陰極支持体7は、例えばステンレスで形成されている。
【0014】
収束電極5において、陽極ターゲット3に面する内周面5Aは、陽極ターゲット3と同じ材質のコーティング層10でコーティングされている。コーティング層10は、ロジウム(Rh)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、クロム(Cr)等で形成されている。例えば、陽極ターゲット3がRh(ロジウム)で形成された場合には、同じRhのコーティング層10が適用され、陽極ターゲット3がW(タングステン)で形成された場合には、同じWのコーティング層10が適用される。コーティング方法としては、メッキ、溶射、蒸着等が適用可能である。
【0015】
なお、X線管1の外側において、出力窓8の前方には、測定資料20及び検出器21が配置されている。出力窓8を透過したX線22が測定資料20に照射されることで、測定資料20は蛍光X線23を励起し、励起された蛍光X線23はスリットや分光結晶等の機構を通して検出器21で検出される。そして、検出器21では、検出された蛍光X線23に基づき、測定資料20を構成する物質が分析される。
【0016】
図2は、図1に示したX線管1の内部構造を示す斜視図である。図3は、図1に示したX線管1の内部構造を示す平面図である。
収束電極5は、円筒状に形成され、その一部に切欠部5Bを有している。内周面5Aは、円筒状に形成され、陽極ターゲット3のほぼ全周(陰極フィラメント6と対向する一部分を除いて)を囲んでいる。コーティング層10は、内周面5Aのほぼ全体に亘って形成されている。
陰極支持体7は、切欠部5Bに設けられ、収束電極5とは電気的に絶縁されている。すなわち、図3に示すように、収束電極5と陰極支持体7との間には、絶縁材30が介在している。絶縁材30は、例えばセラミックスで形成されている。
収束電極5の印加電圧は、陰極フィラメント6及び陰極支持体7の印加電圧より高く、陽極支持体4の印加電圧より低い。
【0017】
次に、本実施形態にかかるX線管1の作用・効果について説明する。
図1に示すように、X線管1の動作状態では、陰極フィラメント6から電子9が発生する。電子9は、陰極フィラメント6と陽極ターゲット3との間の電位差の電圧で加速されると共に、収束電極5によって収束され、陽極ターゲット3に衝突して、X線22を発生する。陽極ターゲット3で発生したX線22は、そのほとんどが出力窓8の方向に出射される。発生したX線22は、出力窓8を透過して、測定資料20に照射される。
【0018】
一方、陽極ターゲット3では、電子9が衝突したときに、X線22と同時に2次電子24を発生する。2次電子24は、陽極ターゲット3の全周方向へ散乱し、一部の2次電子24は、収束電極5の内周面5Aに衝突する。収束電極5は、陽極ターゲット3とは異なる金属材料によって形成されているため、2次電子24が収束電極5に直接衝突した場合、本来必要とされるX線22とは異なる波長のX線(不純線)が励起される。このような不純線は、分析精度の悪化を招く一因となる。
【0019】
本実施形態では、収束電極5の印加電圧が、陰極フィラメント6及び陰極支持体7の印加電圧より高く、陽極支持体4の印加電圧より低いため、陽極ターゲット3で発生した2次電子24は、収束電極5に吸収される。これにより、不純線を発生し得る部分、例えば陽極支持体4などへの2次電子24の衝突を抑制することができる。
また、収束電極5の内周面5Aには、陽極ターゲット3と同じ材質のコーティング層10がコーティングされている。収束電極5に向かって散乱した2次電子24が内周面5Aのコーティング層10に衝突した際、X線が励起される。コーティング層10で発生したX線は、陽極ターゲット3で発生するX線22と同等波長の真正なX線である。
したがって、X線管内での不純線の発生を抑制することができる。
【0020】
これにより、陽極ターゲット3で発生したX線22のみならず、コーティング層10で発生したX線も、測定資料20の分析に利用することができ、高強度のX線出力を得ることができる。また、不純線が低減されるため、高純度のX線出力を得ることができる。
以上説明した本実施形態によれば、分析精度を向上することができるX線管を提供することができる。
【0021】
なお、この発明は、上記実施形態そのものに限定されるものではなく、その実施の段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合せてもよい。
【符号の説明】
【0022】
1…X線管 2…真空外囲器 3…陽極ターゲット 4…陽極支持体
5…収束電極 5A…内周面 5B…切欠部
6…陰極フィラメント 7…陰極支持体 8…出力窓8
10…コーティング層
30…絶縁材
図1
図2
図3