【解決手段】径方向の内側に位置する内部コンタクト11と、径方向の外側に位置する外部コンタクト12と、内部および外部コンタクト11、12の間に位置するインシュレータ13とを備え、内部および外部コンタクト11、12のうち少なくとも一方が、軸線方向の一方側に、対応する相手側コンタクト22に対し所定の径方向接触圧で嵌合する嵌合部12fを有するコネクタであって、インシュレータ13が、軸線方向の一方側に露出する第1インシュレータ部31と、第1インシュレータ部31に対し軸線方向の他方側に位置する第2インシュレータ部32を有しており、第1インシュレータ部31が、第2インシュレータ部32よりも径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されている。
軸線方向に延びるとともに径方向の内側に位置する内部コンタクトと、前記軸線方向に延びるとともに前記径方向の外側に位置する外部コンタクトと、前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトの間に位置するインシュレータと、を備え、
前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトのうち少なくとも一方が、前記軸線方向の一方側に、対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する嵌合部を有するコネクタであって、
前記インシュレータが、前記軸線方向の一方側に露出する第1インシュレータ部と、前記第1インシュレータ部に対し前記軸線方向の他方側に位置する第2インシュレータ部と、を有しており、
前記第1インシュレータ部が、前記第2インシュレータ部よりも前記径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されていることを特徴とするコネクタ。
前記嵌合部が、前記軸線方向の一方側に位置する略分割筒状の複数の嵌合爪部分と、該複数の嵌合爪部分を複数のスリットを隔てて一体的に片持ち支持する支持筒部分と、を有し、
前記第1インシュレータ部が、前記支持筒部分より前記軸方向の一方側の範囲内に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のコネクタ。
前記複数のスリットのそれぞれの幅が、前記支持筒部分に支持される前記複数の嵌合爪部分の基端側で大きく、前記複数の嵌合爪部分の先端側で小さくなっていることを特徴とする請求項2に記載のコネクタ。
雌雄のコネクタ部材が、それぞれ、軸線方向に延びるとともに径方向の内側に位置する内部コンタクトと、前記軸線方向に延びるとともに前記径方向の外側に位置する外部コンタクトと、前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトの間に位置するインシュレータと、を備え、
前記雌雄のコネクタ部材のうち雄側のコネクタ部材が、それぞれ対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1および第2の雄側嵌合部を有する一方、
前記雌雄のコネクタ部材のうち雌側のコネクタ部材が、それぞれ対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1および第2の雌側嵌合部を有するコネクタであって、
前記雄側のコネクタ部材のインシュレータが、前記軸線方向の一方側に露出する第1インシュレータ部と、前記第1インシュレータ部に対し前記軸線方向の他方側に位置する第2インシュレータ部と、を有しており、
前記第1インシュレータ部が、前記第2インシュレータ部よりも前記径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されていることを特徴とするコネクタ。
前記雄側のコネクタ部材の前記第1インシュレータ部の一端が、前記雄側のコネクタ部材の前記外部コンタクトより前記軸線方向の一方側に突出していることを特徴とする請求項7に記載のコネクタ。
前記雄側のコネクタ部材の前記内部コンタクトが、前記雄側のコネクタ部材の前記第1インシュレータ部および前記外部コンタクトより前記軸線方向の一方側に突出して前記第1の雄側嵌合部を構成する一方、
前記雌側のコネクタ部材の前記内部コンタクトが、前記第1の雄側嵌合部以上に前記軸線方向の長さが大きい第1の雌側嵌合部を有していることを特徴とする請求項7または8に記載のコネクタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、前述のような従来のコネクタでは、雌雄嵌合させる嵌合部に、各部品の寸法のばらつきや、嵌合する角度のばらつき等が発生すると、雌雄コネクタのインシュレータ同士の対向面間に隙間が生じることで、インシュレータ層の途切れによる誘電率の変化に起因して、伝送路に沿って一定に設定された特性インピーダンスに不整合が生じてしまい、伝送特性が悪化してしまうことが懸念される。
【0008】
そこで、本発明は、嵌合部における特性インピーダンスの悪化を有効に抑制し、良好な伝送特性を得ることのできるコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明は、上記目的達成のため、軸線方向に延びるとともに径方向の内側に位置する内部コンタクトと、前記軸線方向に延びるとともに前記径方向の外側に位置する外部コンタクトと、前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトの間に位置するインシュレータと、を備え、前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトのうち少なくとも一方が、前記軸線方向の一方側に、対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する嵌合部を有するコネクタであって、前記インシュレータが、前記軸線方向の一方側に露出する第1インシュレータ部と、前記第1インシュレータ部に対し前記軸線方向の他方側に位置する第2インシュレータ部と、を有しており、前記第1インシュレータ部が、前記第2インシュレータ部よりも前記径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されていることを特徴とする。
【0010】
この構成により、本発明では、内部コンタクトおよび外部コンタクトのうち少なくとも一方の嵌合部が対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合するとき、軸線方向の一方側に位置する第1インシュレータ部が容易に弾性変形可能である。したがって、嵌合部の相手側コンタクトとの嵌合のための弾性変形や弾性回復を容易化するとともに、弾性回復後のインシュレータと内部コンタクトおよび外部コンタクトとの間に隙間が生じるのを有効に抑制でき、隙間空間の発生による誘電率変化で特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制可能となる。
【0011】
(2)本発明においては、前記嵌合部が、前記軸線方向の一方側に位置する略分割筒状の複数の嵌合爪部分と、該複数の嵌合爪部分を複数のスリットを隔てて一体的に片持ち支持する支持筒部分と、を有し、前記第1インシュレータ部が、前記支持筒部分より前記軸方向の一方側の範囲内に配置されている構成とすることができる。
【0012】
このような構成で実施すると、嵌合部の嵌合に際し、複数の嵌合爪部分が径方向に撓んで第1インシュレータ部を圧縮させたり、第1インシュレータ部と共に弾性回復したりすることになる。したがって、嵌合操作を容易化できるとともに、インシュレータと内部コンタクトもしくは外部コンタクトとの間に隙間空間が生じるのをより有効に抑制できる。
【0013】
(3)本発明においては、前記複数のスリットのそれぞれの幅が、前記支持筒部分に支持される前記複数の嵌合爪部分の基端側で大きく、前記複数の嵌合爪部分の先端側で小さくなっている構成とすることもできる。
【0014】
このような構成で実施すると、複数の嵌合爪部分に応力集中を生じさせるような穴等を形成することなく、複数の嵌合爪部分の所要の撓み量および強度を確保することができるとともに、スリット幅の拡幅により第1インシュレータ部の径方向の弾性変形をさらに容易化でき、インシュレータと内部および外部コンタクトとの間に隙間空間が形成されるのをより有効に抑制可能となる。また、第2インシュレータ部側に荷重がかることがより有効に抑制可能となる。
【0015】
(4)本発明においては、前記第1インシュレータ部の一端面が、前記外部コンタクトまたは前記内部コンタクトよりも前記軸線方向の一方側に突出しており、前記内部コンタクトが、前記インシュレータを貫通する貫通部と、前記第1インシュレータ部よりも前記軸線方向の一方側に突出する突出端部と、前記貫通部から前記第1インシュレータ部に向って径方向に突起する突起部と、を有している構成とすることもできる。
【0016】
このようにすると、第1インシュレータ部が相手側に弾性的に突き当てられても、内部コンタクトの突起部によって第1インシュレータ部の軸線方向変位が制限され、突当て部分に隙間が生じることがなく、しかも、第2インシュレータ部側に大きな荷重がかかることもない。
【0017】
(5)本発明においては、前記第1インシュレータ部が、前記第2インシュレータ部と同等の比誘電率を有する構成とすることもできる。
【0018】
この場合、嵌合部で特性インピーダンスが悪化することが有効に抑制可能となる。
【0019】
(6)本発明においては、第1インシュレータ部が前記第2インシュレータ部に対して一体に結合されている構成とすることもできる。
【0020】
このようにすると、インシュレータ部分に隙間を生じさせないよう、第1インシュレータ部を安定した位置および姿勢に配置できる。
【0021】
(7)本発明は、雌雄のコネクタ部材が、それぞれ、軸線方向に延びるとともに径方向の内側に位置する内部コンタクトと、前記軸線方向に延びるとともに前記径方向の外側に位置する外部コンタクトと、前記内部コンタクトおよび前記外部コンタクトの間に位置するインシュレータと、を備え、前記雌雄のコネクタ部材のうち雄側のコネクタ部材が、それぞれ対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1および第2の雄側嵌合部を有する一方、前記雌雄のコネクタ部材のうち雌側のコネクタ部材が、それぞれ対応する相手側コンタクトに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1および第2の雌側嵌合部を有するコネクタであって、前記雄側のコネクタ部材のインシュレータが、前記軸線方向の一方側に露出する第1インシュレータ部と、前記第1インシュレータ部に対し前記軸線方向の他方側に位置する第2インシュレータ部と、を有しており、前記第1インシュレータ部が、前記第2インシュレータ部よりも前記径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されている構成とすることもできる。
【0022】
この構成にすると、雌雄のコネクタ部材が嵌合するとき、雄側コネクタ部材の第1インシュレータ部が容易に弾性変形可能であることから、雌側コネクタの対応する相手側コンタクトとの嵌合のための弾性変形や弾性回復が容易化されるとともに、インシュレータと内部および外部コンタクトとの間に隙間が生じるのを有効に抑制でき、隙間空間の発生による誘電率変化で特性インピーダンスが悪化するのを抑制することができる。
【0023】
(8)本発明においては、前記雄側のコネクタ部材の前記第1インシュレータ部の一端が、前記雄側のコネクタ部材の前記外部コンタクトより前記軸線方向の一方側に突出している構成としてもよい。
【0024】
この場合、雄側コネクタ部材の第1インシュレータ部の一端が外部コンタクトよりも先に雌側コネクタのインシュレータに圧接することとなり、径方向のみならず、軸線方向においても、雌雄コネクタ部材のインシュレータが第1インシュレータ部を介して隙間なく接続状態に配置されることとなる。
【0025】
(9)本発明においては、前記雄側のコネクタ部材の前記内部コンタクトが、前記雄側のコネクタ部材の前記第1インシュレータ部および前記外部コンタクトより前記軸線方向の一方側に突出して前記第1の雄側嵌合部を構成する一方、前記雌側のコネクタ部材の前記内部コンタクトが、前記第1の雄側嵌合部以上に前記軸線方向の長さが大きい第1の雌側嵌合部を有している構成とすることもできる。
【0026】
このような構成を採用すると、雌雄のコネクタ部材の嵌合状態における第1インシュレータ部の形状および姿勢を安定確保できるとともに、両コネクタ部材の内部コンタクト同士、および外部コンタクト同士の接触を安定確保可能となる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、コネクタの嵌合部におけるインシュレータの潰れや逃げによりキャパシタが変化し、伝送路の特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0030】
(第1実施形態)
図1ないし
図6は、本発明の第1実施形態に係るコネクタを示している。
【0032】
図1に示すように、本実施形態のコネクタ1は、雌雄のコネクタ部材であるプラグ10およびレセプタクル20が、それぞれ
図1の左右方向である軸線方向に延びており、それぞれの接続端側でプラグ10を雌側のコネクタ部材であるレセプタクル20にシェル嵌合深さLfの凹凸嵌合状態に係合させたり、レセプタクル20から非嵌合状態に離脱させたりすることができるようになっている。
【0033】
なお、本実施形態のコネクタ1は、雌雄のコネクタ部材の嵌合部の構造に特徴を有するものであり、同軸コネクタや同軸プラグ等として他の機器や基板、ケーブル等に接続・実装される端部(
図1中のプラグ10の右端部およびレセプタクル20の左端部)の構造は特に限定されるものでなく、従来知られている任意の接続・実装構造が採用可能である。したがって、ここでは、同軸ケーブルや機器側へ接続構造についての詳細な説明や図示は割愛するが、例えば公知のプリント基板への実装構造(例えば特開2017−41347号公報参照)、同軸ケーブルと機器基板間の接続構造(例えば特開2006−344491号公報参照)、面実装構造(例えば特開2009−16178号公報参照)、アンテナの外部接続構造(例えば特開2014−138375号公報参照)、精密機器への接続構造(例えば特開2015−225766号公報参照)等が適用可能である。
【0034】
図2および
図3に示すように、雄側のコネクタ部材であるプラグ10は、径方向の内側に位置する内部コンタクト11と、軸線方向に延びるとともに径方向の外側に位置する筒状のシェル形状をなす外部コンタクト12と、内部コンタクト11および外部コンタクト12の間に位置する厚肉の筒状のインシュレータ13と、を具備している。
【0035】
図3および
図5に示すように、プラグ10の内部コンタクト11は、線材状の導体からなるとともにインシュレータ13の中心を貫通する略円形断面の貫通部11aと、その貫通部11aより小径に形成されてインシュレータ13よりも軸線方向の一方側(
図1中の左側)に突出する第1の雄側嵌合部11b(突出端部)とを一体に有しており、第1の雄側嵌合部11bの先端は略円錐形状をなしている。ここで、内部コンタクト11は、外部コンタクト12より軸線方向の一方側に突出しており、第1インシュレータ部31の一端面31aは、プラグ10のレセプタクル20への嵌合時挿入方向(以下、単に嵌合方向という)において、内部コンタクト11の先端と外部コンタクト12の先端との間に位置している。
【0036】
図1および
図6に示すように、雌側のコネクタ部材であるレセプタクル20は、互いに同軸に配置された内部コンタクト21および外部コンタクト22と、内部コンタクト21および外部コンタクト22の間に位置する略厚肉円筒状の絶縁素材(誘電体)からなるインシュレータ23と、を具備している。
【0037】
内部コンタクト21は、プラグ10の内部コンタクト11の第1の雄側嵌合部11bに凹凸嵌合するすり割り付きのソケット状の第1の雌側嵌合部21bを有しており、インシュレータ23内に収納されている。
【0038】
また、外部コンタクト22は、内部コンタクト21に対し径方向の外側に位置するチューブ状(筒状)のシェル形状をなしており、内部コンタクト21およびインシュレータ23を取り囲みつつこれら双方より軸線方向の他方側(
図6(a)中の右側)に突出している。
【0039】
図1ないし
図4に示すように、雄側のコネクタ部材であるプラグ10の外部コンタクト12は、その嵌合方向の前端側であって、内部コンタクト11の第1の雄側嵌合部11bより嵌合方向の後方側(
図1中の右側)に、対応する相手側コンタクト22に対して所定の径方向接触圧で嵌合する第2の雄側嵌合部12fを有している。
【0040】
そして、雌側のコネクタ部材であるレセプタクル20は、プラグ10の内部コンタクト11および外部コンタクト12に対応する相手側コンタクトとして、内部コンタクト11の第1の雄側嵌合部11bに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1の雌側嵌合部21bとは別に、外部コンタクト12の第2の雄側嵌合部12fに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第2の雌側嵌合部22fを有している。
【0041】
本実施形態では、このように、雄側のコネクタ部材であるプラグ10は、内部コンタクト11および外部コンタクト12のうち少なくとも一方、例えば双方の軸線方向の一方側(
図1の左側)に、レセプタクル20の第1の雌側嵌合部21bおよび第2の雌側嵌合部22fにそれぞれ径方向接触圧で嵌合する第1の雄側嵌合部11bおよび第2の雄側嵌合部12fを有している。
【0042】
図1ないし
図3に示すように、プラグ10側のインシュレータ13は、軸線方向の一方側に露出する略厚肉円筒状の第1インシュレータ部31と、第1インシュレータ部31に対し軸線方向の他方側に位置する略同一径の厚肉円筒状の第2インシュレータ部32と、を有している。
【0043】
第1インシュレータ部31の一端面31aは、外部コンタクト12よりも軸線方向の一方側に突出しており、レセプタクル20側の厚肉円筒状のインシュレータ23の端面23aおよび内部コンタクト21の端面21aに所定の軸線方向接触圧で突当て係合状態に面接触している。
【0044】
また、第1インシュレータ部31は、樹脂製絶縁部である第2インシュレータ部32と同等の比誘電率、例えば比誘電率2〜5程度の範囲内で設定された特定の比誘電率を有するとともに、第2インシュレータ部32に容易に固着または一体成形可能な素材で形成されている。
【0045】
さらに、第1インシュレータ部31は、第2インシュレータ部32に対して、少なくとも略円筒状の径方向に弾性変形し易い弾性素材で形成されている。
【0046】
より具体的には、第1インシュレータ部31は、例えば第2インシュレータ部32に対してLIM(Liquid Injection Molding)成形により一体化状態に成形可能なシリコンゴム等のエラストマーで形成されているか、単体部品として略円筒状に成形された後に第2インシュレータ部32に対し公知の接着剤で接着固定可能なエラストマー等の合成樹脂製弾性素材で形成されている。この場合、第2インシュレータ部32は、LIM成形に適した素材、例えばポリカーボネイトで形成されている。
【0047】
図1ないし
図4に示すように、プラグ10の外部コンタクト12における第2の雄側嵌合部12fは、プラグ10の軸線方向の一方側に位置する略分割筒状の複数の嵌合爪部分12aと、それら複数の嵌合爪部分12aを複数のスリット12cを隔てて一体的に片持ち支持する支持筒部分12bとを有している。そして、第1インシュレータ部31は、外部コンタクト12の支持筒部分12bより軸方向の一方側の範囲内に配置されるとともに、複数の嵌合爪部分12aの基端側で、第2インシュレータ部32の一端面32aに固着されている。
【0048】
第2の雄側嵌合部12fの複数の嵌合爪部分12aには、それぞれの先端側であって軸線方向の同一範囲内に、等角度間隔に径方向外側に突出する複数の突起部12dが設けられており、これら複数の突起部12dが、全体として略環状で前後テーパガイドを有する突起形状をなすことで、複数の嵌合爪部分12aは、第2の雌側嵌合部22fの内径に応じて縮径方向に所定量だけ撓み得るようになっている。
【0049】
図5(a)に示すように、第1インシュレータ部31は、一端面31aの近傍で中心穴31bを縮径させる内突部31cを有しており、
図5(b)に示すように、プラグ10の内部コンタクト11の貫通部11aと第1の雄側嵌合部11bとの間の段付き部11cが、第1インシュレータ部31の内突部31cに突き当てられた状態で、第1インシュレータ部31が内部コンタクト11に嵌着されている。
【0050】
また、第1インシュレータ部31が外部コンタクト12の第2の雄側嵌合部12fの内径Dよりわずかに大径となる自由形状を有することで、第2の雄側嵌合部12fの複数の嵌合爪部分12aが第2の雌側嵌合部22f内に嵌入されるとき、第1インシュレータ部31の一端面31aの近傍部分が内部コンタクト11の段付き部11cに突き当てられたり、第1インシュレータ部31が第2の雄側嵌合部12fの先端側や複数のスリット12c内に膨出したりすることで、第1インシュレータ部31から第2インシュレータ部32に対して軸線方向の圧縮荷重が作用することが抑制されるようになっている。
【0051】
さらに、第2インシュレータ部32の一端面32aは、外部コンタクト12の第2の雄側嵌合部12fにおける支持筒部分12bから、嵌合方向である軸線方向の一方側に、複数の嵌合爪部分12aの基端側から先端側までの長さLm(
図4(a)参照)より十分に小さい突出長さLa(
図3(a)、(b)参照)だけ突出している。
【0052】
また、第1インシュレータ部31の軸線方向長さLb(
図5(a)参照)は、レセプタクル20に対するプラグ10の外部コンタクト12の嵌合深さLfと同一かそれよりわずかに大きい値に設定されており、第1インシュレータ部31の一端面31aが外部コンタクト12よりも軸線方向の一方側に突出するようになっている。
【0053】
そして、そのような第1インシュレータ部31の形状および寸法設定により、第2の雄側嵌合部12fの複数の嵌合爪部分12aが第2の雌側嵌合部22f内に嵌入されるとき、第2インシュレータ部32を径方向に圧縮させることなく、第1インシュレータ部31を径方向および軸線方向に圧縮させた後、複数の嵌合爪部分12aに追従して弾性回復させたり複数の嵌合爪部分12aの間の複数のスリット12c内に膨出させたりすることができるようになっている。
【0054】
なお、本実施形態では、複数の嵌合爪部分12aおよび複数のスリット12cがそれぞれ4本となる90度分割(四分割)の略分割筒状としているが、複数に分割されていればその分割数は任意である。
【0055】
図4(a)に示すように、プラグ10の外部コンタクト12の周方向における複数のスリット12cのそれぞれの幅wは、互いに等しく、かつ、支持筒部分12bに支持される複数の嵌合爪部分12aの基端側から先端側までの長さLmの範囲内で略一定になっている。勿論、外部コンタクト12の複数のスリット12cの幅Wは,互いに非同一であってもよいし、複数の嵌合爪部分12aの基端側から先端側まで一定でなくてもよい。
【0056】
プラグ10およびレセプタクル20は、このように、嵌合深さLfだけ凹凸嵌合する第2の雄側嵌合部12fおよび第2の雌側嵌合部22fを外部コンタクト12、22側に有するとともに、その嵌合深さLfよりレセプタクル20の内奥側で凹凸嵌合する第1の雄側嵌合部11bおよび第1の雌側嵌合部21bを、内部コンタクト11、21側に有している。また、レセプタクル20の第1の雌側嵌合部21bは、プラグ10の第1の雄側嵌合部11bの長さより大きい凹状深さを有するとともに、第1の雄側嵌合部11bの外径よりわずかに大きい内径を有している。
【0058】
上述のように構成された本実施形態においては、レセプタクル20に対するプラグ10の嵌合方向への挿入初期に、レセプタクル20の第2の雌側嵌合部22fに最初に嵌合するプラグ10の外部コンタクト12が、径方向の撓みを生じる。
【0059】
このとき、第1インシュレータ部31が容易に弾性変形可能であることから、外部コンタクト12の相手側コンタクトとの嵌合のための弾性変形や弾性回復が容易化されるとともに、外部コンタクト12の弾性回復後のインシュレータ13と内部コンタクト11および外部コンタクト12との間に隙間が生じるのが有効に抑制される。その結果、隙間空間の発生による誘電率変化で特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制可能となる。
【0060】
また、本実施形態では、プラグ10の第2の雄側嵌合部12fとレセプタクル20の第2の雌側嵌合部22fが嵌合するとき、複数の嵌合爪部分12aが径方向に撓んで第1インシュレータ部31を圧縮させたり、第1インシュレータ部31と共に弾性回復したりすることになるから、プラグ10のレセプタクル20に対する嵌合操作を容易化できるとともに、インシュレータ13と内部コンタクト11もしくは外部コンタクト12との間に誘電率変化を惹起するような隙間空間が生じるのをより有効に抑制できることになる。
【0061】
さらに、本実施形態では、第1インシュレータ部31が第2インシュレータ部32と同等の比誘電率を有しているので、コネクタ1のプラグ10およびレセプタクル20の嵌合部で特性インピーダンスが悪化することが有効に抑制可能となる。
【0062】
加えて、本実施形態では、第1インシュレータ部31が第2インシュレータ部32に対して一体に結合されているので、インシュレータ層に隙間を生じさせないように、第1インシュレータ部31を第2インシュレータ部32や内部コンタクト11および外部コンタクト12に対して、安定した位置および姿勢にかつ所要の充填形状に配置できることとなる。
【0063】
また、プラグ10の第1インシュレータ部31の一端面31aが、プラグ10の外部コンタクト12より軸線方向の一方側に突出しているので、その第1インシュレータ部31の一端面31aが外部コンタクト12よりも先にレセプタクル20のインシュレータ23に圧接することとなり、径方向のみならず、軸線方向においても、プラグ10およびレセプタクル20のインシュレータ13、23が第1インシュレータ部31を介して隙間なく接続状態に配置されることとなる。
【0064】
このように、本実施形態においては、雌雄の嵌合状態における第1インシュレータ部31の形状および姿勢を安定確保できるとともに、プラグ10およびレセプタクル20の内部コンタクト11、21同士、および外部コンタクト12、22同士の接触を安定確保可能となる。よって、嵌合部におけるインシュレータ13、23の潰れや逃げによりキャパシタが変化し、伝送路の特性インピーダンスが悪化することが、有効に抑制可能となる。
【0065】
(実施例1)
上述の第1実施形態の構成を有し、第1インシュレータ部31をシリコンゴムとしてインシュレータ13の第1インシュレータ部31および第2インシュレータ部32を一体にLIM成形し、プラグ10のインシュレータ13およびレセプタクル20のインシュレータ23の比誘電率を共に3.5に、特性インピーダンスZを50Ωにそれぞれ設定したコネクタ1を作製して、TDR(時間領域反射率測定)による伝播遅延の測定を行った。
【0066】
図7はその結果を、インピーダンス[Ω]を縦軸、遅延時間[ps]を横軸とするグラフで示しており、同図中の点線が実施例1を、実線がプラグ側のインシュレータを実施例1の第2インシュレータ部32と同一の絶縁素材のみで形成し、外部コンタクト12の第2の雄側嵌合部12fの内周面付近にプラグ挿入時の撓みを許容するのに必要な隙間を形成した比較例1を、それぞれ示している。
【0067】
同図から明らかなように、比較例1および実施例1共に、その伝送路長さに対応する伝播遅延時間領域において、コネクタ嵌合部に対応する遅延区間以外では、特性インピーダンスが略50Ω付近のインピーダンス値を示しているのに対して、コネクタ嵌合部に対応する区間では、反射に起因する特性インピーダンスの増加が、特に比較例1の場合には顕著な増加が生じている。一方、実施例1の場合には、特性インピーダンスの増加が比較例1の場合に比べ1/2未満に抑えられている。
【0068】
よって、第2インシュレータ部32に対し径方向の弾性変形が容易な第1インシュレータ部31を有する実施例1の場合に、伝送路の特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制することができるコネクタとなることがわかる。
【0069】
(第2実施形態)
図8および
図9は、本発明の第2実施形態に係るコネクタを示している。
【0070】
両図に示すように、第2実施形態は、前述の第1実施形態のコネクタ1と略同様な構成を有しているものの、プラグ10の外部コンタクト12における第2の雄側嵌合部12fの構成が前述の第1実施形態の場合とは相違するものである。
【0071】
なお、雌側のコネクタ部材であるレセプタクル20は、内部コンタクト11の第1の雄側嵌合部11bに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第1の雌側嵌合部21bと、外部コンタクト12の第2の雄側嵌合部12fに対し所定の径方向接触圧で嵌合する第2の雌側嵌合部22fとを、対応する相手側のコンタクトとして有している。
【0072】
図8および
図9に示すように、本実施形態においては、外部コンタクト12における第2の雄側嵌合部12fにおいて、複数のスリット12eのそれぞれの幅が、支持筒部分12bに支持される複数の嵌合爪部分12aの基端側では大きい幅w2に、複数の嵌合爪部分12aの先端側では小さい幅w1となっている。
【0073】
本実施形態においても、第1インシュレータ部31が第2インシュレータ部32に比し容易に弾性変形可能であるから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0074】
しかも、本実施形態では、第2の雄側嵌合部12fの複数の嵌合爪部分12aに応力集中を生じさせるような穴等を形成することなく、複数の嵌合爪部分12aの所要の撓み量および強度を確保することができる。また、複数の嵌合爪部分12aが第1インシュレータ部31を圧縮するよう径方向に撓むとき、第1インシュレータ部31を部分的に複数の嵌合爪部分12aの基端側のスリット12e内に膨出させることができるので、複数の嵌合爪部分12aの所要の撓みを確実に許容しつつ、インシュレータ13と内部および外部コンタクト11、12との間に隙間空間が形成されるのをより有効に抑制可能となる。また、第2インシュレータ部32側に荷重がかかるのをより有効に抑制可能となる。
【0075】
(第3実施形態)
図10ないし
図12は、本発明の第3実施形態に係るコネクタを示している。
【0076】
これらの図に示すように、第3実施形態は、前述の第2実施形態のコネクタ1と略同様な構成を有しているものの、プラグ10の内部コンタクト11の構成が前述の第1、第2実施形態のいずれとも相違し、外部コンタクト12が前述の第1実施形態の場合とは相違し、第2実施形態とは略同様のものである。なお、雌側のコネクタ部材であるレセプタクル20の構成は、第1、第2実施形態と同様である。
【0077】
図10および
図11に示すように、本実施形態においては、プラグ10の内部コンタクト11が、インシュレータ13を貫通する貫通部11aと、第1インシュレータ部よりも軸線方向の一方側に突出する第1の雄側嵌合部11bと、貫通部11aと第1の雄側嵌合部11bとの間の段付き部11cとを有しているのに加えて、段付き部11cに対して第1の雄側嵌合部11bから離れる側に、貫通部11aから第1インシュレータ部31に向って径方向に突起する突起部11dを有している。
【0078】
本実施形態においても、第1インシュレータ部31が第2インシュレータ部32に比し容易に弾性変形可能であるから、第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0079】
しかも、本実施形態では、第2の雄側嵌合部12fの複数の嵌合爪部分12aが第2の雌側嵌合部22f内に嵌入されるとき、第1インシュレータ部31が相手側であるレセプタクル20側のインシュレータ23に弾性的に突き当てられても、第1、第2実施形態と同様に、第1インシュレータ部31の一端面31aの近傍部分が内部コンタクト11の段付き部11cに突当て保持される等するのに加えて、内部コンタクト11の突起部11dによって第1インシュレータ部31の軸線方向変位が制限される。したがって、インシュレータ13、23の突当て部分等に隙間が生じることがなく、しかも、第2インシュレータ部32側に大きな荷重がかることもない。
【0080】
(実施例2)
上述の第3実施形態の構成を有し、第1インシュレータ部31をシリコンゴムとしてインシュレータ13の第1インシュレータ部31および第2インシュレータ部32を一体にLIM成形し、プラグ10のインシュレータ13およびレセプタクル20のインシュレータ23の比誘電率を共に3.5に、特性インピーダンスZを50Ωにそれぞれ設定したコネクタ1を作製して、TDR(時間領域反射率測定)による伝播遅延の測定を行った。
【0081】
図12はその結果を、インピーダンス[Ω]を縦軸、遅延時間[ps]を横軸として示すグラフで、前述の比較例1および実施例1と比較しており、同図中の一点鎖線が実施例2の結果を示している。
【0082】
同図から明らかなように、比較例1、実施例1および実施例2共に、その伝送路長さに対応する伝播遅延時間領域において、コネクタ嵌合部に対応する遅延区間以外では、特性インピーダンスが略50Ω付近のインピーダンス値を示しているのに対して、コネクタ嵌合部に対応する区間では、前述の通り、反射に起因する特性インピーダンスの増加が、特に比較例1の場合には顕著に生じ、実施例1の場合には比較例1の場合に比べ1/2未満に抑えられており、実施例2の場合には、比較例1の場合に比べ1/5程度(実施例1の1/2程度)に抑えられている。
【0083】
よって、実施例2の場合にも、伝送路の特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制できるコネクタとなることがわかる。
【0084】
なお、前述の各実施形態においては、プラグ10のインシュレータ13に第1インシュレータ部31を設けるものとしたが、レセプタクル20のインシュレータ23にプラグ10側に露出する弾性素材からなる第1インシュレータ部とそれに対しプラグ10側から離れる第2インシュレータ部とを設けてもよい、その場合、レセプタクルの第1インシュレータ部の露出端面が内部コンタクトよりも嵌合方向側(軸線方向の片側)に突出するものとすることも考えられる。
【0085】
また、内部コンタクトおよび外部コンタクトの双方が筒状であるような場合、それらの間に装填される第1インシュレータ部の端面は、軸線方向で端面位置が異なる内部コンタクトおよび外部コンタクトのうち嵌合方向で後方側に位置するコンタクトより嵌合方向の先端側に突出していればよい。
【0086】
さらに、内部コンタクトや外部コンタクトの横断面形状が円形の場合で例示したが、非円形の横断面でもよいことや、第1インシュレータ部31の材料や断面形状、第2インシュレータ部32の材料等が特に限定されるものでないことは、勿論である。
【0087】
以上説明したように、本発明は、コネクタの嵌合部におけるインシュレータの潰れや逃げによりキャパシタが変化し、伝送路の特性インピーダンスが悪化するのを有効に抑制することができるコネクタを提供できるものである、このような本発明は、伝送路を構成する内外の配線とそれら配線間のインシュレータとを有するコネクタ全般に有用である。