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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-136632(P2021-136632A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】受信装置、及び受信方法
(51)【国際特許分類】
   H04B 7/08 20060101AFI20210816BHJP
   H04B 1/16 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   H04B7/08 710
   H04B1/16 R
   H04B7/08 372A
   H04B7/08 420
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-32967(P2020-32967)
(22)【出願日】2020年2月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000001487
【氏名又は名称】フォルシアクラリオン・エレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】特許業務法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 英樹
(72)【発明者】
【氏名】高田 明彦
(72)【発明者】
【氏名】國井 壮志
(72)【発明者】
【氏名】松田 広志
【テーマコード(参考)】
5K061
【Fターム(参考)】
5K061AA11
5K061BB01
5K061BB12
5K061CC05
5K061CC18
5K061CC45
5K061FF12
5K061FF16
(57)【要約】
【課題】2つのチューナーの受信動作を、より適切に判定すること。
【解決手段】少なくとも2つのアンテナにそれぞれ接続された第1の受信部、及び第2の受信部と、前記第1の受信部が受信した信号の第1の電界強度、及び前記第2の受信部が受信した信号の第2の電界強度を取得する取得部と、前記第2の電界強度から前記第1の電界強度を引いた値である電界強度差DEを算出する演算部と、予め設定した電界強度閾値Lと、予め設定した第1の電界強度差閾値K1、及び第2の電界強度差閾値K2とを記憶する記憶部と、前記第1の電界強度と前記電界強度閾値Lとの比較、及び、前記電界強度差DEと前記第1の電界強度差閾値K1、または前記第2の電界強度差閾値K2との比較に基づいて、前記第1の受信部、及び前記第2の受信部の受信動作を制御する制御部56と、を備える受信装置を構成した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つのアンテナにそれぞれ接続された第1の受信部、及び第2の受信部と、
前記第1の受信部が受信した信号の第1の電界強度、及び前記第2の受信部が受信した信号の第2の電界強度を取得する取得部と、
前記第2の電界強度から前記第1の電界強度を引いた値である電界強度差を算出する演算部と、
予め設定した電界強度閾値と、予め設定した第1の電界強度差閾値、及び第2の電界強度差閾値とを記憶する記憶部と、
前記第1の電界強度と前記電界強度閾値との比較、及び、前記電界強度差と前記第1の電界強度差閾値、または前記第2の電界強度差閾値との比較に基づいて、前記第1の受信部、及び前記第2の受信部の受信動作を制御する制御部と、
を備える受信装置。
【請求項2】
前記受信動作は、
前記第1の受信部、及び前記第2の受信部が同じ周波数を受信するフェーズダイバーシティ受信動作である、
請求項1に記載の受信装置。
【請求項3】
前記受信動作は、
前記第1の受信部が放送を受信中に、当該第1の受信部が受信している放送局と異なる放送局の周波数を前記第2の受信部が受信するシーク動作である、
請求項2に記載の受信装置。
【請求項4】
前記シーク動作において、
前記第2の受信部は、複数の放送局の周波数のそれぞれを所定時間ごとに受信する
請求項3に記載の受信装置。
【請求項5】
前記第1の電界強度差閾値は、
前記第1の電界強度が前記電界強度閾値以下の場合に用いられ、
前記第2の電界強度差閾値は、
前記第1の電界強度が前記電界強度閾値を越えている場合に用いられ、かつ、前記第1の電界強度差閾値よりも大きな電界強度差が設定されている、
請求項1から4のいずれかに記載の受信装置。
【請求項6】
少なくとも2つのアンテナにそれぞれ接続された第1の受信部、及び第2の受信部を備えた受信装置の受信方法において、
前記第1の受信部が受信した信号の第1の電界強度、及び前記第2の受信部が受信した信号の第2の電界強度を取得する第1ステップと、
前記第2の電界強度から前記第1の電界強度を引いた値である電界強度差を算出する第2ステップと、
前記第1の電界強度と予め設定された電界強度閾値との比較、及び、前記電界強度差と予め設定された第1の電界強度差閾値、または第2の電界強度差閾値との比較に基づいて、前記第1の受信部、及び前記第2の受信部の受信動作を制御する第3ステップと、
を備える受信方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、受信装置、及び受信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フェーズダイバーシティ受信に関する技術として、特許文献1の技術が知られている。特許文献1の要約書には、「ラジオ受信装置は、メインアンテナ、サブアンテナにそれぞれ接続されたメインチューナー、サブチューナーと、メインチューナーおよびサブチューナーからの受信信号に基づきそれらの電界強度などから受信状態を判定する判定手段と、判定手段により受信状態が良好と判定されたとき、メインチューナーとサブチューナーをそれぞれ独立に動作可能とし、受信状態が不良と判定されたとき、メインチューナーとサブチューナーをフェーズダイバーシティ受信させる受信制御手段とを有する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−60624号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術は、メインチューナー、及びサブチューナーの受信動作の判定に関して改善の余地があった。
本発明は、2つのチューナーの受信動作を、より適切に判定できる受信装置、及び受信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、少なくとも2つのアンテナにそれぞれ接続された第1の受信部、及び第2の受信部と、前記第1の受信部が受信した信号の第1の電界強度、及び前記第2の受信部が受信した信号の第2の電界強度を取得する取得部と、前記第2の電界強度から前記第1の電界強度を引いた値である電界強度差を算出する演算部と、予め設定した電界強度閾値と、予め設定した第1の電界強度差閾値、及び第2の電界強度差閾値とを記憶する記憶部と、前記第1の電界強度と前記電界強度閾値との比較、及び、前記電界強度差と前記第1の電界強度差閾値、または前記第2の電界強度差閾値との比較に基づいて、前記第1の受信部、及び前記第2の受信部の受信動作を制御する制御部と、を備える受信装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、2つのチューナーの受信動作を、より適切に判定できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施形態に係る車載受信装置の概略構成を示すブロック図である。
図2】車載受信装置の動作を示すフローチャートである。
図3】車載受信装置の動作説明図である。
図4】受信動作判定処理のフローチャートである。
図5】メインチューナー、及びサブチューナーの入出力特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。本実施形態では、本発明の受信装置の一態様として車載受信装置を説明する。
図1は、本実施形態に係る車載受信装置1の概略構成を示すブロック図である。
車載受信装置1は、移動体の一例である車両に搭載され、RDS(ラジオ・データ・システム)方式の多重放送を受信する受信装置である。RDS方式は、送信側が放送信号Haに適宜の情報を示すデータHbを多重した放送電波Wを送信し、受信側が当該多重されたデータHbを放送電波Wから取り出す方式である。さらに、本実施形態の車載受信装置1は、同じ周波数の放送電波Wを複数のチューナーによって受信するフェーズダイバーシティ受信機能を備える。
【0009】
かかる車載受信装置1は、図1に示すように、メインアンテナ10M、及びサブアンテナ10Sと、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sと、DSP(Digital Signal Processor)14と、制御コンピュータ20と、を備える。DSP14の出力段には、車両に設けられたアンプ16、及びスピーカ18が接続される。
【0010】
メインアンテナ10M、及びサブアンテナ10Sはそれぞれ、複数の放送局それぞれから放送される放送電波を受けて受信信号を出力する回路部品であり、フェーズダイバーシティ受信動作に適した態様で車両に設置される。メインアンテナ10Mは、メインチューナー12Mに接続され、当該メインチューナー12Mに受信信号を出力する。またサブアンテナ10Sは、サブチューナー12Sに接続され、当該サブチューナー12Sに受信信号を出力する。
【0011】
メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sは、制御コンピュータ20によって選択された放送局(以下、「選択局」という)の放送電波Wの放送信号Haを、メインアンテナ10M、及びサブアンテナ10Sの受信信号に基づいて受信する受信部(第1受信部、及び第2受信部)である。またメインチューナー12M、及びサブチューナー12Sはいずれも、上述したフェーズダイバーシティ受信動作を行う機能を備える。さらに本実施形態では、サブチューナー12Sが、放送信号Haの受信に加え、当該放送信号Haに多重されたデータHbを受信するRDS受信機能を備える。
【0012】
かかるメインチューナー12M、及びサブチューナー12Sはいずれも、図1に示すように、フロントエンド30と、検波回路32と、電界強度検出回路36と、を備える。
フロントエンド30は、選択局の受信周波数の受信信号を中間周波数の信号に変換して増幅する回路である。検波回路32は、選択局の周波数に基づいて、フロントエンド30で増幅された中間周波数の信号を検波し、放送信号Haを出力する回路である。電界強度検出回路36は、検波回路32から出力される放送信号Haに基づいて、選択局の放送電波Wの電界強度を検出し、当該電界強度を制御コンピュータ20に出力する。電界強度検出回路36は「Sメータ」とも称されている。なお、以下では、メインチューナー12Mが出力する電界強度には符号IMを付し、サブチューナー12Sが出力する電界強度には符号ISを付すことで、それぞれの電界強度を区別する。
【0013】
DSP14は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのそれぞれから出力される放送信号Haに基づき、放送のオーディオ信号を復調する音声復調回路を有する。当該オーディオ信号は、DSP14からアンプ16に出力され、当該アンプ16で増幅された後、スピーカ18に出力され、当該スピーカ18から車室内に放音される。
【0014】
また、DSP14は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sがフェーズダイバーシティ受信を行う場合、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのそれぞれの放送信号Haから得られるオーディオ信号を合成、又は選択的に切り替える公知、又は周知の適宜のフェーズダイバーシティ信号処理を実行する。これにより、メインアンテナ10Mによる受信状態が悪い場合でも、ノイズを抑えたオーディオ信号が得られる。
【0015】
本実施形態において、サブチューナー12Sは、上述の回路に加え、RDS受信動作するための構成として、検波回路32の放送信号HaからデータHbの成分のみのデータ信号Hbsを抽出してDSP14に出力するフィルタ回路38と、検波回路32の出力先をフィルタ回路38に切り替えるセレクタ回路39と、を備える。DSP14は、データ信号HbsからデータHbを復調するデータ復調回路を内蔵し、当該データ復調回路によって復調したデータHbを制御コンピュータ20に出力する。
【0016】
制御コンピュータ20は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの受信動作やDSP14の動作を制御する装置であり、本実施形態では、いわゆるマイクロコンピュータが用いられる。
制御コンピュータ20は、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro-Processing Unit)などのプロセッサと、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)などのメモリデバイス(主記憶装置とも呼ばれる)と、メインチューナー12Mやサブチューナー12S、DSP14などの回路を接続するためのインターフェース回路と、外部から入力され、又は自身が生成したクロック信号に基づいて経過時間を計時するタイマー回路と、を備え、プロセッサがメモリデバイスに記憶されているコンピュータプログラムを実行することで、各種の機能的構成を実現する。
【0017】
本実施形態の制御コンピュータ20は、機能的構成として、図1に示すように、電界強度取得部51と、フェーズダイバーシティ制御部52と、シーク動作制御部53と、を備える。
【0018】
電界強度取得部51は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのそれぞれから電界強度IM、ISを取得する。
フェーズダイバーシティ制御部52は、同じ周波数の放送電波Wをメインチューナー12Mとサブチューナー12Sの両方に受信させ、フェーズダイバーシティ受信動作させる。
シーク動作制御部53は、放送局のシーク動作を制御する。シーク動作は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sが受信対象の周波数を順次に変更し、変更後の周波数についての放送信号Haを順次に出力する受信動作である。かかるシーク動作制御は、例えば、所定の周波数帯域において、放送局が存在する周波数の検出に用いられる。
【0019】
また、シーク動作制御は、RDS受信機として動作するサブチューナー12Sによって複数の放送局のそれぞれからデータHbを取得する場合(以下、「各放送局データ取得動作」という)にも用いられる。この各放送局データ取得動作においては、シーク動作制御部53は、サブチューナー12Sが受信する周波数を次々に変更することで、当該サブチューナー12Sに各放送局の放送信号Haを順次に受信させ、各放送信号Haから得られるデータHbをDSP14から取得する。
各放送局データ取得動作は、各放送局が放送する番組の情報をリスト化した番組リストの作成などに用いられる。
なお、各放送局の周波数は、例えばメモリデバイスなどに予め記憶される。この場合において、放送局の周波数は、上記シーク動作制御によって検出された周波数であってもよいし、工場出荷時などにプリセットされた周波数でもよい。
【0020】
また本実施形態の制御コンピュータ20は、これらフェーズダイバーシティ制御部52、及びシーク動作制御部53を用いて、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの受信動作を制御する制御部56を備える。本実施形態において、受信動作は、フェーズダイバーシティ制御部52の制御によるフェーズダイバーシティ受信動作と、シーク制御部54によるシーク動作と、である。
【0021】
本実施形態の車載受信装置1では、メインチューナー12Mの電界強度IMに応じて、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sが行う受信動作が制御部56によって制御されている。制御コンピュータ20は、かかる制御のために、閾値記憶部60と、電界強度差演算部62と、判定部64と、を更に備えている。
【0022】
閾値記憶部60は、電界強度差閾値Kを予め記憶する。電界強度差閾値Kは、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sに行わせる受信動作を、電界強度差DEに基づいて判定するための閾値である。電界強度差DEは、サブチューナー12Sの電界強度ISからメインチューナー12Mの電界強度IMを引いた値(すなわち「電界強度IS−電界強度IM」)である。
また、閾値記憶部60には、複数(本実施形態では2つ)の電界強度差閾値Kと、メインチューナー12Mの電界強度IMについての電界強度閾値Lと、が予め記憶されている。これら複数の電界強度差閾値K、及び電界強度閾値Lについては後述する。
【0023】
電界強度差演算部62は、メインチューナー12M、及ぶサブチューナー12Sのそれぞれの電界強度IM、ISに基づいて電界強度差DEを算出する演算部である。
判定部64は、メインチューナー12Mの電界強度IMと電界強度閾値Lに基づいて、複数の電界強度差閾値Kの中から1つの電界強度差閾値Kを決定し、当該電界強度差閾値Kと電界強度差DEに基づいて、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sに行わせる受信動作を判定する。この判定によって、フェーズダイバーシティ受信動作と、シーク動作とのいずれかが、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sに行わせる受信動作として判定される。
制御部56は、判定部64の判定結果に基づいて、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの受信動作を制御し、フェーズダイバーシティ受信動作、又はシーク動作を行わせる。
【0024】
次いで、本実施形態の車載受信装置1の動作を説明する。
この動作説明では、車載受信装置1が、選択局の放送信号Haをメインチューナー12Mによって受信しオーディオ信号を出力している最中に、例えば番組リストの作成のために、サブチューナー12Sによって上述した各放送局データ取得動作をシーク動作として実行するときの動きを説明する。
【0025】
図2は、車載受信装置1の動作を示すフローチャートである。
各放送局の放送信号Haを順次に受信するために、先ず、制御部56が各放送局の周波数のリスト(以下、「周波数リスト」という)をメモリデバイス等から読み出す(ステップSa1)。
【0026】
次いで、シーク動作制御部53によるシーク動作制御に先立って、判定部64が受信動作判定処理を実行する(ステップSa2)。受信動作判定処理は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sに行わせる受信動作として、フェーズダイバーシティ受信動作、及び放送局データ取得動作(シーク動作)のいずれかを判定する処理である。
この受信動作判定処理では、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sをフェーズダイバーシティ受信動作することで、オーディオ信号について比較的大きなS/N比の改善が見込まれる場合、受信動作としてフェーズダイバーシティ受信動作が判定される。一方、S/N比の改善が小さい場合には、受信動作として放送局データ取得動作が判定される。なお、かかる受信動作判定処理の詳細は後述する。
【0027】
制御部56は、判定部64による受信動作判定処理の結果、受信動作として放送局データ取得動作が判定された場合(ステップSa3:A)、メインチューナー12Mには選択局の受信を継続させつつ、シーク動作制御部53を制御して、サブチューナー12Sに、いずれか1つの放送局の放送信号Haを受信させるシーク動作を行わせる(ステップSa4)。
具体的には、シーク動作制御部53は、周波数リストに基づいて、受信対象の放送局の周波数をサブチューナー12Sに指示し、サブチューナー12Sに当該周波数の放送信号Haを受信させる。
【0028】
そして、制御部56は、タイマー回路を用いて所定時間Aの経過を監視し、この所定時間Aが経過した場合(ステップSa5:Yes)、未受信の放送局があるときは(ステップSa6:Yes)、その放送局の放送信号Haをサブチューナー12Sに受信させるべく、処理手順をステップSa2に戻す。そして、このステップSa2において、再度、判定部64によって受信動作判定が行われる。
【0029】
ステップSa5における所定時間Aは、サブチューナー12Sが放送信号Haを受信し始めてから当該放送信号Haに多重されたデータHbをDSP14が出力するまでに要する所要時間に基づいて設定され、一般的には数十msの時間である。制御コンピュータ20は、DSP14からデータHbが出力されると、当該データHbを記憶したりする等の適宜の処理を適宜のタイミングで実行する。
【0030】
ステップSa3の受信動作判定処理の結果、受信動作としてフェーズダイバーシティ受信動作が判定された場合(ステップSa3:B)、制御部56は、フェーズダイバーシティ制御部52を制御して、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sをフェーズダイバーシティ受信動作させる(ステップSa7)。この処理により、各放送局データ取得動作(シーク動作)していたサブチューナー12Sがフェーズダイバーシティ受信動作に切り替わり、当該放送局データ取得動作が中断される。
【0031】
そして、制御部56は、所定時間Aの経過を監視し、所定時間Aが経過した場合(ステップSa5:Yes)、放送局データ取得動作の中断前の放送局について放送信号Haが未受信状態であるため(ステップSa6:Yes)、当該放送局の放送信号Haを受信すべく、処理手順をステップSa2に戻す。
【0032】
図3は、車載受信装置1の動作説明図であり、放送局データ取得動作中に車載受信装置1から出力されるオーディオ信号をメインチューナー12Mが出力するオーディオ信号とともに示す概略図である。
車載受信装置1が選択局の放送信号Haをメインチューナー12Mによって受信することで、同図に示すように、当該放送信号Haに基づくオーディオ信号が順次に出力される。
そして、車両の走行に伴い受信環境が変化する等して、ある期間Caにおいてメインチューナー12Mから出力されるオーディオ信号のノイズが比較的多く、フェーズダイバーシティ受信動作によってオーディオ信号のS/N比の改善が見込まれるとする。
この場合には、判定部64が上記ステップSa3の受信動作判定処理により、受信動作としてフェーズダイバーシティ受信動作を判定するため、この期間Caの間、フェーズダイバーシティ受信動作が行われ、ノイズが抑えられたオーディオ信号が車載受信装置1から出力される。
一方、期間Ca以外では、判定部64が上記ステップSa3の受信動作判定処理により、受信動作として放送局データ取得動作(シーク動作)を判定し、これにより、放送局のデータHbが順次に取得されることとなる。
【0033】
ところで、各放送局データ取得動作中(シーク動作中)においては、1つの放送局あたりのサブチューナー12Sの受信時間は大凡上述の所定時間Aであり、この所定時間Aは、数十msという比較的短い時間に設定されている。したがって、シーク動作中にサブチューナー12Sが受信する放送局数が例えば1局だけであり、このシーク動作後に、速やかにメインチューナー12M、及びサブチューナー12Sがフェーズダイバーシティ受信動作を行う場合には、シーク動作によってノイズが出力される時間は数十ms程度である。
この場合、ノイズが非常に短時間であるため、乗員はノイズに気がつき難く、ノイズが耳障りになるケースは少ない。
【0034】
しかしながら、各放送局データ取得動作中は、複数の放送局についてサブチューナー12Sが受信動作を行うため、受信対象の放送局の数に応じた時間に亘って継続的にノイズが出力されることとなり、何ら対策を施さなければ、ノイズが耳障りになってしまう。
これに対し、本実施形態によれば、各放送局データ取得動作中であっても、サブチューナー12Sが放送局の放送信号Haを受信前に、判定部64が毎回、受信動作を判定し、フェーズダイバーシティ受信動作によってオーディオ信号のS/N比の改善が見込まれる場合には、受信動作としてフェーズダイバーシティ受信動作を判定する。
これにより、各放送局データ取得動作中であっても、所定時間Aよりも長くノイズが出力されることがなく、耳障りなノイズの出力が確実に抑えられる。
【0035】
次いで、上述した受信動作判定処理について詳述する。
図4は、受信動作判定処理のフローチャートである。
制御コンピュータ20において、先ず、電界強度取得部51がメインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのそれぞれから電界強度IM、ISを取得する(ステップSb1)。次いで、電界強度差演算部62が、これら電界強度IM、ISに基づいて、上述した電界強度差DEを算出する(ステップSb2)。
【0036】
次いで、判定部64は、閾値記憶部60に記憶されている複数の電界強度差閾値Kの中から、メインチューナー12Mの電界強度IMに基づいて1つを決定する(ステップSb3)。そして、判定部64は、電界強度差DEと電界強度差閾値Kとを比較し、電界強度差DEが電界強度差閾値K以下である場合(ステップSb4:Yes)、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのうち、当該サブチューナー12Sに行わせる受信動作として各放送局データ取得動作(シーク動作)を判定する(ステップSb5)。一方、電界強度差DEが電界強度差閾値Kを越えている場合(ステップSb4:No)、判定部64は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sに行わせる受信動作として、フェーズダイバーシティ受信動作を判定する(ステップSb6)。
【0037】
電界強度差閾値Kは、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sをフェーズダイバーシティ受信動作させることで、オーディオ信号について比較的大きなS/Nの改善が見込まれる電界強度差DEを示す値である。
以下、かかる電界強度差閾値Kについて詳述する。
【0038】
図5は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの入出力特性を示す図である。
同図に示すように、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの入出力特性においては、電界強度が大きくなるほど、放送信号Ha(図中、「Signal」)の出力レベルは増加し、その一方で、ノイズ(図中、「Noise」)の出力レベルは低下する傾向がある。
そして、電界強度がある程度大きくなる中強電界強度範囲Ra(図示例では、電界強度が大凡20(dBuV)以上の範囲)では、放送信号Haの出力レベルが大凡一定となり、電界強度の増減に対するS/N比の変化も緩やかになる傾向がある。
一方、中強電界強度範囲Raよりも電界強度が低い弱電界強度範囲Rbでは、電界強度の増減に対して放送信号Ha、及びノイズの出力レベルが安定せず、電界強度の増減の対するS/N比の変化も大きくなる傾向がある。
【0039】
例えば、同図において、弱電界強度範囲Rbに属するポイント(I)とポイント(II)、及び、中強電界強度範囲Raに属するポイント(III)とポイント(IV)は、いずれも電界強度差DEは同じ5(dBuV)のポイントである。しかしながら、ポイント(I)とポイント(II)のS/N比の差は、ポイント(III)とポイント(IV)のS/N比の差よりも大きく、同じ電界強度差DEであっても、中強電界強度範囲Raと弱電界強度範囲Rbとでは、S/N比に大きな差が生じる。
換言すれば、中強電界強度範囲Raでは、弱電界強度範囲Rbと同程度のS/N比の変動を生じさせる電界強度差DEは、当該弱電界強度範囲Rbに比べて大きい。
したがって、弱電界強度範囲Rbでは、フェーズダイバーシティ受信動作によってオーディオ信号のS/N比が大きく向上する電界強度差DEであっても、中強電界強度範囲Raでは、フェーズダイバーシティ受信動作させてもS/N比は然程向上しないことになる。
【0040】
そこで本実施形態では、弱電界強度範囲Rbにおいて、フェーズダイバーシティ受信動作させる電界強度差DEの電界強度差閾値K(以下、「第1の電界強度差閾値K1」という)に比べ、中強電界強度範囲Raについての電界強度差閾値K(以下、「第2の電界強度差閾値K2」という)には、大きな値が設定されている。
これにより、中強電界強度範囲Raにおいては、メインチューナー12Mとサブチューナー12Sとの間に、より大きな電界強度差DEが生じ、フェーズダイバーシティ受信動作によりS/N比の向上が見込まれるようになるまで、当該フェーズダイバーシティ受信動作が抑えられため、サブチューナー12Sがフェーズダイバーシティ受信動作に拘束されることなくシーク動作を行う期間を延ばすことができる。
【0041】
閾値記憶部60には、かかる第1の電界強度差閾値K1と、当該第1の電界強度差閾値K1よりも大きな電界強度差DEが設定された第2の電界強度差閾値K2と、の2つが電界強度差閾値Kとして予め記憶されている。
また、メインチューナー12Mの電界強度IMが中強電界強度範囲Raと弱電界強度範囲Rbのどちらに属するかを判定するための電界強度閾値Lも閾値記憶部60に記憶されている。
メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの入出力特性が図5に示す例である場合、例えば、第1の電界強度差閾値K1には5(dBuV)が設定され、第2の電界強度差閾値K2には7(dBuV)が設定され、また電界強度閾値Lには20(dBuV)が設定される。
【0042】
そして、上述した受信動作判定処理のステップSb3においては、判定部64は、メインチューナー12Mの電界強度IMと電界強度閾値Lとを比較し、電界強度IMが電界強度閾値Kを越えているいか否かに基づいて、当該電界強度IMが中強電界強度範囲Ra、及び弱電界強度範囲Rbのどちらに属するか否かを判定する。電界強度IMが中強電界強度範囲Raに属する場合、判定部64は、電界強度差閾値Kとして第2の電界強度差閾値K2を選択する。また電界強度IMが弱電界強度範囲Rbに属する場合、判定部64は、電界強度差閾値Kとして第1の電界強度差閾値K1を選択する。
【0043】
このようにして選択された電界強度差閾値KがステップSb4の判定における電界強度差DEとの比較に用いられることで、中強電界強度範囲Raにおいては、電界強度差DEが多少大きくても、オーディオ信号のS/N比の大きな改善が見込まれない場合は、受信動作として、フェーズダイバーシティ受信動作ではなく、各放送局データ取得動作が判定される。
これにより、オーディオ信号のS/N比の向上に然程効果が無いフェーズダイバーシティ受信動作の回数を減らすことができる。また、各放送局データ取得動作中において、フェーズダイバーシティ受信動作の回数が減ることで、当該各放送局データ取得動作を、より速く完了することもできる。
【0044】
本実施形態によれば、次の効果を奏する。
【0045】
本実施形態の車載受信装置1では、メインチューナー12Mの電界強度IM(第1の電界強度)と電界強度閾値Lとの比較、及び、電界強度差DEと第1の電界強度差閾値K1、または第2の電界強度差閾値K2との比較に基づいて、制御部56が、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの受信動作を制御する。
これにより、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sの受信動作を、より適切に制御することができる。
【0046】
本実施形態の車載受信装置1では、制御部56は、受信動作として、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sが同じ周波数を受信するフェーズダイバーシティ受信動作を制御する。
したがって、オーディオ信号(出力信号)のS/N比の向上が見込まれる適切なタイミングで、制御部56が、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sにフェーズダイバーシティ受信動作を行わせることができる。
【0047】
本実施形態の車載受信装置1では、制御部56は、受信動作として、メインチューナー12Mが選択局の放送を受信中に、当該選択局の周波数とは異なる放送局の周波数をサブチューナー12Sが受信するシーク動作を制御する。
したがって、オーディオ信号(出力信号)のS/N比の大きな向上が見込まれないタイミングにおいて、制御部56は、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sのうち、当該サブチューナー12Sにシーク動作を行わせることができる。
【0048】
本実施形態の車載受信装置1では、シーク動作において、サブチューナー12Sは、複数の放送局の周波数のそれぞれを所定時間Aごとに受信する。
これにより、例えば上述した各放送局の番組リスト作成などを、良好なS/N比を維持し、ノイズの発生を回避しながら効率良く行うことができる。
【0049】
本実施形態の車載受信装置1では、第1の電界強度差閾値K1は、メインチューナー12Mの電界強度IMが電界強度閾値L以下の場合に用いられる。一方、第2の電界強度差閾値K2は、メインチューナー12Mの電界強度IMが電界強度閾値Lを越えている場合に用いられ、かつ、第1の電界強度差閾値K1よりも大きな電界強度差DEが設定されている。
これにより、メインチューナー12Mの電界強度IMに応じた適切な大きさの電界強度差DEが、第1の電界強度差閾値K1、及び第2の電界強度差閾値K2のそれぞれに設定され、これらの第1の電界強度差閾値K1、及び第2の電界強度差閾値K2を用いて受信動作を、より正確に判定することができる。
【0050】
上述した実施形態は、あくまでも本発明の一態様を例示したものであって、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、任意に変形、及び応用が可能である。
【0051】
上述した実施形態において、車載受信装置1は、3つ以上のアンテナを備え、それぞれに受信部であるチューナーが接続されてもよい。
【0052】
上述した実施形態において、メインチューナー12Mが、サブチューナー12Sと同様に、放送信号Haに多重されたデータHbを受信する機能を備えてもよい。すなわち、メインチューナー12M、及びサブチューナー12Sは同じ構成であってもよい。
【0053】
本発明に係る受信装置は、車両に限らず、モバイル型電子機器などの適宜の移動体に搭載することができる。
【0054】
また図1に示す機能ブロックは、本願発明を理解容易にするために、構成要素を主な処理内容に応じて分類して示した概略図であり、各構成要素は、処理内容に応じて、さらに多くの構成要素に分類することもできる。また、1つの構成要素がさらに多くの処理を実行するように分類することもできる。
【符号の説明】
【0055】
1 車載受信装置(受信装置)
10M メインアンテナ(アンテナ)
10S サブアンテナ(アンテナ)
12M メインチューナー(第1の受信部)
12S サブチューナー(第2の受信部)
20 制御コンピュータ(コンピュータ)
36 電界強度検出回路
51 電界強度取得部
52 フェーズダイバーシティ制御部
53 シーク動作制御部
54 シーク制御部
56 制御部
60 閾値記憶部(記憶部)
62 電界強度差演算部(演算部)
Ca 期間
DE 電界強度差
Ha 放送信号
Hb データ
Hbs データ信号
IM 電界強度(第1の電界強度)
IS 電界強度(第2の電界強度)
K 電界強度差閾値
K1 第1の電界強度差閾値
K2 第2の電界強度差閾値
L 電界強度閾値
Ra 中強電界強度範囲
Rb 弱電界強度範囲
W 放送電波
図1
図2
図3
図4
図5