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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-136740(P2021-136740A)
(43)【公開日】2021年9月13日
(54)【発明の名称】異常検出装置および異常検出方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20210816BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20210816BHJP
【FI】
   H02J7/00 Y
   H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-29824(P2020-29824)
(22)【出願日】2020年2月25日
(71)【出願人】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 雄大
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA07
5G503BA02
5G503BB01
5G503BB02
5G503BB05
5G503DA08
5G503DA18
5G503EA08
5G503FA06
5G503GD02
5G503GD03
5G503GD04
5H030AA10
5H030AS08
5H030FF41
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を適切に検出することができる異常検出装置および異常検出方法を提供する。
【解決手段】実施形態の一態様に係る異常検出装置においては、監視部と、検出部とを備える。監視部は、イグニッションスイッチのオンオフ状態を示す通信の受信信号と、イグニッションスイッチから電池パック内の第1入力部に入力されイグニッションスイッチのオンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号と、イグニッションスイッチから電池パック内の第2入力部に入力されイグニッションスイッチのオンオフ状態を示すポート入力信号とを監視する。検出部は、監視部による監視結果に基づいてイグニッションスイッチの信号線の異常を検出する。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を検出する異常検出装置であって、
前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示す通信の受信信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第1入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第2入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示すポート入力信号とを監視する監視部と、
前記監視部による監視結果に基づいて前記イグニッションスイッチの信号線の異常を検出する検出部と
を備えることを特徴とする異常検出装置。
【請求項2】
前記検出部は、
前記イグニッションスイッチの信号線の異常を検出する処理として、前記電池パック内において前記電圧信号の入力部分の異常を検出する第1検出処理と、前記電池パック内において前記ポート入力信号の入力部分の異常を検出する第2検出処理と、前記電池パック外の異常を検出する第3検出処理とを実行すること
を特徴とする請求項1に記載の異常検出装置。
【請求項3】
前記検出部は、
前記第1検出処理、前記第2検出処理および前記第3検出処理のうち、前記第3検出処理を最後に実行すること
を特徴とする請求項2に記載の異常検出装置。
【請求項4】
前記検出部は、
前記第1検出処理、前記第2検出処理の順で実行すること
を特徴とする請求項3に記載の異常検出装置。
【請求項5】
前記検出部よって前記イグニッションスイッチの信号線の異常が検出された場合、検出された異常の箇所に応じてユーザへ通知する通知内容を変更する通知部
を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の異常検出装置。
【請求項6】
電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を検出する異常検出方法であって、
前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示す通信の受信信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第1入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第2入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示すポート入力信号とを監視する監視工程と、
前記監視工程による監視結果に基づいて前記イグニッションスイッチの信号線の異常を検出する検出工程と
を含むことを特徴とする異常検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常検出装置および異常検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばHEV(Hybrid Electric Vehicle)やEV(Electric Vehicle)には、リチウムイオン二次電池(LIB:Lithium-Ion rechargeable Battery)等を備えた電池パックが搭載されている。また、二次電池の充放電を制御する回路などの異常を検出する技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018−143014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電池パックには、イグニッションスイッチ(IGスイッチ)が接続される。また、電池パックには、例えばIGスイッチの信号線の断線などの異常を検出する異常検出装置が含まれる。
【0005】
しかしながら、従来技術にあっては、IGスイッチの信号線の異常が電池パック内で発生したものか、電池パック外で発生したものかを判別することができず、異常を適切に検出するという点で改善の余地があった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を適切に検出することができる異常検出装置および異常検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を検出する異常検出装置であって、監視部と、検出部とを備える。監視部は、前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示す通信の受信信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第1入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号と、前記イグニッションスイッチから前記電池パック内の第2入力部に入力され前記イグニッションスイッチのオンオフ状態を示すポート入力信号とを監視する。検出部は、前記監視部による監視結果に基づいて前記イグニッションスイッチの信号線の異常を検出する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電池パックに接続されるイグニッションスイッチの信号線の異常を適切に検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A図1Aは、実施形態に係る異常検出装置を含む電池システムの構成例を示すブロック図である。
図1B図1Bは、実施形態に係る異常検出装置が実行する異常検出方法の概要を示す図である。
図2図2は、実施形態に係る異常検出装置を含む電池システムの構成を示すブロック図である。
図3図3は、判定情報の一例を示す図である。
図4図4は、異常検出装置が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本願の開示する異常検出装置および異常検出方法の実施形態を詳細に説明する。なお、以下に示す実施形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
まず、図1Aおよび図1Bを用いて、実施形態に係る異常検出装置の異常検出方法の概要について説明する。図1Aは、実施形態に係る異常検出装置を含む電池システムの構成例を示すブロック図である。
【0012】
図1Aに示すように、電池システム1は、電池パック10と、発電機11と、スタータ12と、鉛バッテリ13と、IGスイッチ(イグニッションスイッチ)14と、上位ECU(Electronic Control Unit)100とを含む。電池パック10は、LIB15と、第1スイッチ16と、第2スイッチ17と、異常検出装置20とを備える。
【0013】
このように、電池システム1は、鉛バッテリ13およびLIB15の2つの電池を備える2電源システムである。なお、電池システム1は、電池を二重化した2電源システムに限定されるものではなく、電池の数は1つ、あるいは3つ以上であってもよい。
【0014】
発電機11は、エンジンEの回転を動力源として電力を生成する機器である。また、車両の減速時には回生ブレーキによる回生電力を生成する。なお、発電機11は、オルタネータやジェネレータとも呼ばれる。
【0015】
また、発電機11は、例えば上位ECU100からの指示に応じて電力を生成してもよい。そして、例えば発電した電力を鉛バッテリ13やLIB15へ供給することで、鉛バッテリ13やLIB15を充電する。
【0016】
スタータ12は、例えば電気モータを備え、エンジンEを始動する始動装置である。なお、図1Aに示す例では、電池システム1がスタータ12と発電機11とを備える構成としたが、例えば、スタータ12および発電機11の代わりに、ISG(Integrated Starter Generator)を備えてもよい。
【0017】
鉛バッテリ13は、電極に鉛を用いた二次電池である。なお、鉛バッテリ13は、例えば車両に搭載される電気機器の主要な電源となる。
【0018】
IGスイッチ14は、車両の始動スイッチである。IGスイッチ14は、鉛バッテリ13と電池パック10との間(正確には、鉛バッテリ13と電池パック10の異常検出装置20との間)に接続される。IGスイッチ14は、例えば運転者の操作に応じて、車両の始動指示を示す信号を異常検出装置20を介して上位ECU100へ出力する。
【0019】
電池パック10のLIB15は、充電または放電を行う二次電池であって、例えば鉛バッテリ13の補助電源となる。なお、LIB15としては、鉄系のLIBを用いることができるが、これに限定されるものではない。また、LIB15は、電池の一例である。
【0020】
第1スイッチ16および第2スイッチ17は、回路の短絡と開放を制御する開閉器(リレー)である。第1スイッチ16は、鉛バッテリ13と発電機11(またはスタータ12)との間に接続される。第2スイッチ17は、LIB15と発電機11(またはスタータ12)との間に接続される。そして、第1スイッチ16および第2スイッチ17の開閉は、上記した上位ECU100によって制御される。
【0021】
上位ECU100は、電池パック10の上位ECUであり、車両状況等を随時取得し、かかる車両状況等に応じて電池パック10を制御する。例えば、上位ECU100は、車両状況、LIB15の状態に関する情報や鉛バッテリ13の状態に関する情報などを取得する。なお、LIB15の状態に関する情報は、例えばLIB15の充電状態(SOC:State Of Charge)の情報を含む。上記したSOCは、例えばLIB15の充電率(充電量)である。
【0022】
そして、上位ECU100は、車両状況、LIB15の状態(例えばSOC)や鉛バッテリ13の状態などに基づいて第1スイッチ16や第2スイッチ17を開閉動作させ、鉛バッテリ13およびLIB15の充電や放電を制御する。
【0023】
また、上位ECU100は、車両状況等に応じ、発電機11やスタータ12、図示しない補機など各種の電気機器の動作を制御する。例えば、上位ECU100は、IGスイッチ14から車両の始動指示を示す信号が入力されると、第1スイッチ16や第2スイッチ17を開閉動作させて鉛バッテリ13等からスタータ12へ電力を供給するとともに、スタータ12を動作させ、エンジンEを始動させる。
【0024】
異常検出装置20は、IGスイッチ14に関する異常を検出する。例えば、異常検出装置20は、IGスイッチ14の信号線の断線など、IGスイッチ14の信号線の異常を検出する。
【0025】
ところで、従来技術において、IGスイッチ14の信号線の異常は、IGスイッチ14のオンオフ状態を示す通信の受信信号と、IGスイッチ14から入力される電圧信号とに基づいて行われていた。例えば、従来技術では、通信の受信信号がIGスイッチ14のオン状態を示す信号であるにもかかわらず、IGスイッチ14からの電圧信号が所定値より低い値、具体的には0V付近を示す信号である場合、IGスイッチ14の信号線の断線などの異常を検出していた。
【0026】
しかしながら、従来技術にあっては、上記した信号線の異常が電池パック10内で発生したものか、電池パック10外で発生したものかを判別することができなかった。そのため、運転者や車両整備者を含むユーザは、IGスイッチ14の信号線の異常が検出されても、電池パック10の修理あるいは交換が必要か否かの判断が難しく、改善の余地があった。
【0027】
そこで、本実施形態に係る異常検出装置20にあっては、IGスイッチ14の信号線の異常を適切に検出することができるようにした。
【0028】
以下、図1Bを参照して具体的に説明する。図1Bは、実施形態に係る異常検出装置20が実行する異常検出方法の概要を示す図である。
【0029】
図1Bに示すように、本実施形態に係る異常検出装置20にあっては、上記したIGスイッチ14のオンオフ状態を示す通信の受信信号、IGスイッチ14から入力される電圧信号に加え、IGスイッチ14のオンオフ状態を示すポート入力信号を用いて、IGスイッチ14の信号線の異常検出を行うようにした。
【0030】
詳しくは、異常検出装置20は、例えばCAN(Controller Area Network)バス等の通信線を介してIGスイッチ14に接続され、IGスイッチ14のオンオフ状態を示すCAN通信の信号を受信することができる。
【0031】
例えば、CAN通信による受信信号は、IGスイッチ14がオン状態の場合、ON信号を示す。他方、IGスイッチ14がオフ状態の場合、CAN通信自体が行われないため、CAN通信による受信信号は無い状態となる。なお、CAN通信は、通信の一例であり、異常検出装置20とIGスイッチ14とは、CAN以外の他のプロトコルで通信可能となるように接続されてもよい。
【0032】
また、異常検出装置20を含む電池パック10とIGスイッチ14とは、信号線18を介して接続される。例えば、IGスイッチ14は、オンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号を信号線18を介して異常検出装置20へ出力する。具体的には、IGスイッチ14がオン状態の場合、電圧信号は、IGスイッチ14に接続された鉛バッテリ13(図1A参照)の電圧に相当する信号を示す。また、IGスイッチ14がオフ状態の場合、電圧信号は、所定値より低い値、具体的には0V付近の信号を示す。なお、電圧信号は、アナログ信号である。
【0033】
また、電池パック10は、生成回路30を備える。生成回路30は、信号線18の電圧信号に基づいてポート入力信号を生成する。
【0034】
詳しくは、上記した信号線18は、電池パック10内で分岐される。以下、分岐された信号線を分岐信号線18aと記載する場合がある。生成回路30は、かかる分岐信号線18aに接続される。そして、生成回路30は、信号線18の電圧信号に基づいてポート入力信号を生成し、生成したポート入力信号を異常検出装置20へ出力する。
【0035】
例えば、生成回路30は、信号線18の電圧信号が鉛バッテリ13の電圧(以下、VPbと)に相当するような電圧信号である場合、言い換えると、IGスイッチ14がオン状態の場合、ポート入力信号としてHI信号を生成して出力する。
【0036】
また、例えば、生成回路30は、信号線18の電圧信号が所定値より低い値、具体的には0V付近の信号である場合、言い換えると、IGスイッチ14がオフ状態の場合、ポート入力信号としてLO信号を生成して出力する。なお、ポート入力信号は、デジタル信号である。
【0037】
異常検出装置20は、電圧信号入力部41と、ポート信号入力部42とを備える。電圧信号入力部41には、信号線18が接続され、電圧信号が入力される。ポート信号入力部42には、分岐信号線18aが接続され、ポート入力信号が入力される。
【0038】
本実施形態に係る異常検出装置20は、上記したIGスイッチ14のCAN通信の受信信号、IGスイッチ14の電圧信号、および、IGスイッチ14のポート入力信号の3つの信号に基づいて、IGスイッチ14の信号線18(分岐信号線18aを含む)の異常を検出する。
【0039】
具体的には、図1Bに示すように、異常検出装置20は、CAN通信の受信信号、電圧信号およびポート入力信号の各信号を監視する(ステップS1)。そして、異常検出装置20は、監視結果に基づいてIGスイッチ14の信号線18の異常を検出する(ステップS2)。
【0040】
ここで、異常検出の説明に入る前に、信号線18の正常時の各信号について説明する。信号線18の正常時、IGスイッチ14がオン状態では、CAN通信の受信信号は「ON」、電圧信号は「電圧VPbに相当する信号」、ポート入力信号は「HI」になる。他方、信号線18の正常時、IGスイッチ14がオフ状態では、CAN通信の受信信号は「信号なし」、電圧信号は「0V付近の信号」、ポート入力信号は「LO」になる。
【0041】
これらを前提に信号線18の異常検出について説明を続けると、異常検出装置20は、監視結果が、例えばCAN通信の受信信号は「ON」、電圧信号は「0V付近の信号」、ポート入力信号は「HI」の場合、電池パック10内において電圧信号の入力部分A点の異常を検出する。
【0042】
すなわち、CAN通信の受信信号は「ON」であるため、IGスイッチ14はオン状態である。IGスイッチ14はオン状態で、そのときのポート入力信号が「HI」であり、上記した正常時と同じ状態である。従って、異常検出装置20は、ポート入力信号の入力部分B点に異常はないと判定することができる。
【0043】
これに対し、IGスイッチ14はオン状態で、そのときの電圧信号は「0V付近の信号」である場合、異常検出装置20は、電池パック10内の信号線18であって、分岐信号線18aが分岐される分岐点より後段側、すなわち、電圧信号の入力部分A点に異常が発生したと判定することができる。
【0044】
異常検出装置20は、CAN通信の受信信号、電圧信号およびポート入力信号の監視結果により、上記した電圧信号の入力部分A点以外に、ポート入力信号の入力部分B点、電池パック10外の部分C点の異常を検出できるが、これについては図3等を参照して後述する。
【0045】
続いて、異常検出装置20は、信号線18の異常が検出された場合、検出された異常の箇所をユーザへ通知する(ステップS3)。上記の例では、異常検出装置20は、電池パック10内の電圧信号の入力部分A点に異常が検出されたことをユーザへ通知する。これにより、本実施形態にあっては、ユーザに対し、電池パック10の修理あるいは交換などを促すことができる。
【0046】
このように、本実施形態に係る異常検出装置20にあっては、CAN通信の受信信号、電圧信号およびポート入力信号を監視し、その監視結果を用いることで、IGスイッチ14の信号線18の異常を適切に検出することができる。
【0047】
次に、図2を参照して、実施形態に係る異常検出装置20を含む電池システム1の構成について詳しく説明する。図2は、実施形態に係る異常検出装置20を含む電池システム1の構成を示すブロック図である。なお、図2では、本実施形態の特徴を説明するために必要な構成要素のみを機能ブロックで表しており、一般的な構成要素についての記載を省略している。
【0048】
換言すれば、図2に図示される各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。例えば、各機能ブロックの分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することが可能である。
【0049】
図2に示すように、電池システム1は、上記した鉛バッテリ13と、IGスイッチ14と、電池パック10とを備える。電池パック10は、異常検出装置20と、生成回路30とを備える。
【0050】
鉛バッテリ13は、IGスイッチ14に接続される。IGスイッチ14は、電池パック10に信号線18を介して接続される。例えば、IGスイッチ14は、オンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号を信号線18を介して電池パック10の異常検出装置20へ出力する。
【0051】
IGスイッチ14は、オンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号を信号線18を介して電池パック10の異常検出装置20へ出力する。信号線18は、電池パック10内で分岐信号線18aに分岐し、分岐信号線18aには、生成回路30が接続される。生成回路30は、上記したように、信号線18の電圧信号に基づいてポート入力信号を生成し、異常検出装置20へ出力する。また、IGスイッチ14は、オンオフ状態を示すCAN通信の信号を異常検出装置20へ出力する。
【0052】
異常検出装置20は、電圧信号入力部41と、ポート信号入力部42とを備える。異常検出装置20は、電池パック10に含まれることから、電圧信号入力部41およびポート信号入力部42は、電池パック10内に設けられる。
【0053】
電圧信号入力部41には、信号線18が接続され、IGスイッチ14から電圧信号が入力される。電圧信号入力部41は、入力された電圧信号を制御部50に出力する。なお、電圧信号入力部41は、第1入力部の一例である。
【0054】
ポート信号入力部42は、分岐信号線18aが接続され、IGスイッチ14からポート入力信号(正確には、IGスイッチ14からの電圧信号に基づいて生成回路30で生成されたポート入力信号)が入力される。ポート信号入力部42は、入力されたポート入力信号を制御部50へ出力する。ポート信号入力部42は、第2入力部の一例である。
【0055】
また、異常検出装置20は、制御部50と、記憶部60とを備える。制御部50は、受信部51と、監視部52と、検出部53と、通知部54とを備える。
【0056】
制御部50は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、入出力ポートなどを有するコンピュータや各種の回路を含む。
【0057】
コンピュータのCPUは、例えば、ROMに記憶されたプログラムを読み出して実行することによって、制御部50の受信部51、監視部52、検出部53および通知部54として機能する。
【0058】
また、制御部50の受信部51、監視部52、検出部53および通知部54の少なくともいずれか一部または全部をASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアで構成することもできる。
【0059】
また、記憶部60は、例えば、データフラッシュや不揮発性メモリ、レジスタといった記憶デバイスである。記憶部60は、判定情報61を記憶する。
【0060】
判定情報61は、IGスイッチ14の信号線18や分岐信号線18aに異常が発生したと判定する条件、言い換えると、異常を検出する条件を示す情報を含む。
【0061】
図3は、判定情報61の一例を示す図である。判定情報61には、「CAN通信の受信信号」、「ポート入力信号」、「電圧信号」、「異常確定時間」および「異常箇所」等の項目が含まれ、これら各項目の情報は互いに関連付けられている。
【0062】
「CAN通信の受信信号」は、IGスイッチ14のオンオフ状態を示すCAN通信の受信信号の情報である。「ポート入力信号」は、異常検出装置20に入力されるポート入力信号の情報である。
【0063】
「電圧信号」は、異常検出装置20に入力される電圧信号の情報である。なお、「電圧信号」において「0.1[V]以下」は、電圧信号が所定値より低い値、具体的には0V付近を示す信号であるという条件を示している。また、「電圧信号」において「4.9[V]以上」は、電圧信号が上限の電圧値付近を示す信号であるという条件を示し、言い換えると、上限側の異常値を示す信号であるという条件を示している。
【0064】
また、「電圧信号」において「VPb/2[V]以上」は、電圧信号が鉛バッテリ13の電圧VPbの1/2以上を示す信号であるという条件を示しており、これは、上記した鉛バッテリ13の電圧VPbに相当する信号であるという条件を示している。すなわち、鉛バッテリ13の電圧VPbは、鉛バッテリ13の充電状態によって変化するため、電圧信号の閾値を、一定の値ではなく、鉛バッテリ13の電圧VPbに応じて変わる値とした。これにより、異常検出装置20は、電圧信号が鉛バッテリ13の電圧VPbに相当する信号であることを、鉛バッテリ13の充電状態に応じて精度良く判定することができる。なお、電圧信号が鉛バッテリ13の電圧VPbに相当する信号となるのは、CAN通信の受信信号が「ON」で、電圧信号の入力部分A点に異常がない場合等である。
【0065】
また、「電圧信号」において「VPb/2[V]未満」は、電圧信号が鉛バッテリ13の電圧VPbの1/2未満を示す信号であるという条件を示しており、これは、上記した所定値より低い値、具体的には0V付近を示す信号であるという条件を示している。すなわち、ここでも電圧信号の閾値を、一定の値ではなく、鉛バッテリ13の電圧VPbに応じて変わる値とした。これにより、異常検出装置20は、電圧信号が0V付近を示す信号であることを、鉛バッテリ13の充電状態に応じて精度良く判定することができる。
【0066】
「異常確定時間」は、異常検出装置20において、異常が発生したという判定を確定させるのに要する時間である。すなわち、異常検出装置20は、CAN通信の受信信号、ポート入力信号および電圧信号がそれぞれ、判定情報61の左欄の対応する状態になってから異常確定時間継続した場合に、異常が発生したという判定を確定させる、逆に言えば、かかる異常確定時間が経過するまでは、異常が発生したという判定を確定させない。
【0067】
「異常箇所」は、IGスイッチ14の信号線18において異常が検出された場所を示す情報である。なお、判定情報61の具体的な内容については、後述する。
【0068】
図2の説明に戻ると、制御部50の受信部51は、IGスイッチ14からのCAN通信の信号を受信する。受信部51は、受信されたCAN通信の受信信号を監視部52へ出力する。
【0069】
監視部52は、受信部51から入力されたCAN通信の受信信号を監視する。例えば、監視部52は、IGスイッチ14がオン状態でCAN通信の受信信号がON信号か、IGスイッチ14がオフ状態で、受信信号は無い状態かを監視する。
【0070】
また、監視部52は、電圧信号入力部41から入力された電圧信号を監視する。また、監視部52は、ポート信号入力部42から入力されたポート入力信号を監視する。そして、監視部52は、CAN通信の受信信号、電圧信号およびポート入力信号の監視結果を検出部53へ出力する。
【0071】
検出部53は、監視部52による監視結果に基づいてIGスイッチ14の信号線18や分岐信号線18aの異常を検出する。ここで、検出部53における異常検出処理について、図2および図3を参照しつつ説明する。
【0072】
検出部53は、異常検出処理として、第1検出処理と、第2検出処理と、第3検出処理とを実行する。第1検出処理は、電池パック10内において電圧信号の入力部分A点の異常を検出する処理である。第2検出処理は、電池パック10内においてポート入力信号の入力部分B点の異常を検出する処理である。第3検出処理は、電池パック10外のC点の異常を検出する処理である。
【0073】
これにより、検出部53は、IGスイッチ14の信号線18等の異常が電池パック10内で発生したものか、電池パック10外で発生したものかを特定でき、よって異常をより適切に検出することができる。
【0074】
具体的には、検出部53は、第1検出処理、第2検出処理および第3検出処理の順で実行する。詳しくは、検出部53は、第1検出処理において電圧信号の入力部分A点の異常が検出された場合、以降の第2検出処理を実行しない。
【0075】
検出部53は、第1検出処理において電圧信号の入力部分A点の異常が検出されない場合、第2検出処理を実行する。これは、第2検出処理にあっては、電圧信号の入力部分A点の異常がない場合の方が、ポート入力信号の入力部分B点の異常を精度良く検出できるためである。なお、検出部53は、第2検出処理においてポート入力信号の入力部分B点の異常が検出された場合、第3検出処理を実行しない。
【0076】
検出部53は、第1検出処理および第2検出処理において異常が検出されない場合、言い換えると、電池パック10内に異常が検出されない場合に、第3検出処理を実行する。これは、第3検出処理にあっては、電池パック10内に異常が検出されない場合の方が、電池パック10外のC点の異常を精度良く検出できるためである。
【0077】
以下、第1〜第3検出処理について詳説する。図3に示すように、判定情報61において、第1検出処理の上段側は、電池パック10内において電圧信号の入力部分A点で地絡の異常が発生したと判定する条件である。なお、ここでの地絡は、例えば電圧信号の入力部分A点がグランド(GND)基準の経路とショートした状態である。
【0078】
例えば、CAN通信の受信信号が「ON」であるため、IGスイッチ14はオン状態である。ポート入力信号が「HI」であり、正常時と同じ状態である。これにより、ポート入力信号の入力部分B点に異常はないと判定できることは既に述べた通りである。そして、電圧信号が「0.1[V]以下」、すなわち、正常時とは異なる0V付近であり、かかる状態が500[ms]継続した場合、検出部53は、電圧信号の入力部分A点での地絡の異常を検出することができる。
【0079】
次に、判定情報61において、第1検出処理の下段側は、電池パック10内において電圧信号の入力部分A点で天絡の異常が発生したと判定する条件である。なお、ここでの天絡は、例えば電圧信号の入力部分A点がリファレンス電圧基準の経路とショートした状態である。
【0080】
例えば、CAN通信の受信信号、および、ポート入力信号は、いかなる信号であっても関係がなく、電圧信号が「4.9[V]以上」、すなわち、上限側の異常値を示す信号であり、かかる状態が500[ms]継続した場合、検出部53は、電圧信号の入力部分A点での天絡の異常を検出することができる。
【0081】
次に、第2検出処理について説明する。ここでは、電圧信号の入力部分A点に異常がなく、電圧信号が信頼できる信号であることを前提とするが、これに限定されるものではない。判定情報61において、第2検出処理の上段側は、電池パック10内においてポート入力信号の入力部分B点で地絡の異常が発生したと判定する条件である。
【0082】
例えば、CAN通信の受信信号が「ON」であるため、IGスイッチ14はオン状態である。電圧信号は、「VPb/2[V]以上」であって、鉛バッテリ13の電圧VPbに相当する信号であり、正常時と同じ状態である。このとき、ポート入力信号が、正常時とは異なる「LO」であり、かかる状態が1000[ms]継続した場合、ポート入力信号の入力部分B点で地絡の異常を検出することができる。
【0083】
次に、判定情報61において、第2検出処理の下段側は、電池パック10内においてポート入力信号の入力部分B点で天絡の異常が発生したと判定する条件である。例えば、CAN通信の受信信号が無いため、IGスイッチ14はオフ状態である。電圧信号は、「VPb/2[V]未満」、具体的には0V付近を示す信号であり、正常時と同じ状態である。このとき、ポート入力信号が、正常時とは異なる「HI」であり、かかる状態が1000[ms]継続した場合、ポート入力信号の入力部分B点で天絡の異常を検出することができる。
【0084】
次に、第3検出処理について説明する。ここでは、電圧信号の入力部分A点、ポート入力信号の入力部分B点に異常がない、すなわち、電池パック10内に異常が検出されず、電圧信号およびポート入力信号が信頼できる信号であることを前提とするが、これに限定されるものではない。判定情報61において、第3検出処理は、電池パック10外のC点に異常が発生したと判定する条件である。
【0085】
例えば、CAN通信の受信信号が「ON」であるため、IGスイッチ14はオン状態である。電圧信号は、いかなる信号であっても関係がなく、ポート入力信号が、正常時とは異なる「LO」であり、かかる状態が1200[ms]継続した場合、電池パック10外のC点で断線などの異常を検出することができる。
【0086】
このように、本実施形態にあっては、第1検出処理、第2検出処理の順で実行するようにした。これにより、本実施形態においては、先ず電池パック10内に異常が発生しているか否かを精度良く判定することができる。
【0087】
そして、本実施形態にあっては、第3検出処理を最後に実行するようにした。このように、本実施形態においては、電池パック10内に異常がないと判定された後に、第3検出処理で電池パック10内に異常が発生しているか否かを判定するようにしたことから、IGスイッチ14の信号線18等の異常が電池パック10内で発生したものか、電池パック10外で発生したものかを特定でき、よって異常を適切に検出することができる。
【0088】
また、判定情報61において、異常確定時間は、第1検出処理、第2検出処理、第3検出処理の順で長くなるように設定されることから、第1〜第3検出処理を同じようなタイミングで開始するような場合であっても、例えば第1検出処理で異常が確定する前に、第3検出処理で異常が確定してしまうことを効果的に抑制することができる。
【0089】
図2の説明を続けると、検出部53は、第1〜第3検出処理において、IGスイッチ14の信号線18等の異常が検出された場合、異常箇所を示す情報を通知部54へ出力する。
【0090】
通知部54は、異常の箇所を示す情報をユーザへ通知する。例えば、通知部54は、図示しない車両内の表示ランプやスピーカなどを介して、IGスイッチ14の信号線18等の異常が検出された旨、および、異常の箇所を示す情報をユーザへ通知する。
【0091】
また、通知部54は、検出された異常の箇所に応じてユーザへ通知する通知内容を変更してもよい。例えば、通知部54は、異常の箇所が電池パック10内である場合、ユーザに対し、電池パック10内の異常を通知するとともに、電池パック10の修理あるいは交換などを促すように通知する。
【0092】
他方、通知部54は、異常の箇所が電池パック10外である場合、ユーザに対し、電池パック10外の異常を通知するとともに、電池パック10の故障ではない、すなわち、電池パック10の修理あるいは交換などは不要であり、電池パック10外の修理などを促すように通知する。これにより、ユーザは、異常の箇所に応じた修理など適切な対応を取ることが可能になる。
【0093】
次に、図4を用いて実施形態に係る異常検出装置20が実行する処理手順について説明する。図4は、異常検出装置20が実行する処理手順を示すフローチャートである。
【0094】
図4に示すように、異常検出装置20の制御部50は先ず、IGスイッチ14のオンオフ状態を示すCAN通信の受信信号、電圧信号およびポート入力信号の各信号を監視する(ステップS10)。
【0095】
次いで、制御部50は、各信号の監視結果に基づいて、第1検出処理を実行する(ステップS11)。続いて、制御部50は、第1検出処理で異常が検出されたか否かを判定する(ステップS12)、言い換えると、電池パック10内において電圧信号の入力部分A点に異常が検出されたか否かを判定する。
【0096】
制御部50は、第1検出処理で異常が検出されたと判定された場合(ステップS12,Yes)、電池パック10内でIGスイッチ14の信号線18等の異常が検出されたことをユーザへ通知する(ステップS13)。
【0097】
他方、制御部50は、第1検出処理で異常が検出されていないと判定された場合(ステップS12,No)、第2検出処理を実行する(ステップS14)。続いて、制御部50は、第2検出処理で異常が検出されたか否かを判定する(ステップS15)、言い換えると、電池パック10内においてポート入力信号の入力部分B点に異常が検出されたか否かを判定する。
【0098】
制御部50は、第2検出処理で異常が検出されたと判定された場合(ステップS15,Yes)、ステップS13に進み、電池パック10内でIGスイッチ14の信号線18等の異常が検出されたことをユーザへ通知する。
【0099】
一方、制御部50は、第2検出処理で異常が検出されていないと判定された場合(ステップS15,No)、第3検出処理を実行する(ステップS16)。次いで、制御部50は、第3検出処理で異常が検出されたか否かを判定する(ステップS17)、言い換えると、電池パック10外の部分C点に異常が検出されたか否かを判定する(ステップS17)。
【0100】
制御部50は、第3検出処理で異常が検出されたと判定された場合(ステップS17,Yes)、電池パック10外でIGスイッチ14の信号線18等の異常が検出されたことをユーザへ通知する(ステップS18)。
【0101】
一方、制御部50は、第3検出処理で異常が検出されていないと判定された場合(ステップS17,No)、そのまま処理を終了する。
【0102】
上述してきたように、実施形態に係る異常検出装置20は、電池パック10に接続されるIGスイッチ(イグニッションスイッチ)14の信号線18の異常を検出する。異常検出装置20は、監視部52と、検出部53とを備える。監視部52は、IGスイッチ14のオンオフ状態を示す通信の受信信号と、IGスイッチ14から電池パック10内の電圧信号入力部41(第1入力部の一例)に入力されIGスイッチ14のオンオフ状態に応じた電圧を示す電圧信号と、IGスイッチ14から電池パック10内のポート信号入力部42(第2入力部の一例)に入力されIGスイッチ14のオンオフ状態を示すポート入力信号とを監視する。検出部53は、監視部52による監視結果に基づいてIGスイッチ14の信号線の異常を検出する。これにより、電池パック10に接続されるIGスイッチ14の信号線18の異常を適切に検出することができる。
【0103】
なお、上記では、検出部53は、第1検出処理、第2検出処理および第3検出処理の順で実行するようにしたが、これに限定されるものではなく、例えば、第2検出処理、第1検出処理および第3検出処理など、その他の順番で実行してもよい。
【0104】
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0105】
1 電池システム
10 電池パック
20 異常検出装置
41 電圧信号入力部
42 ポート信号入力部
51 受信部
52 監視部
53 検出部
54 通知部
図1A
図1B
図2
図3
図4