ブラシ付きDCモータであって、上下に延びる中心軸を中心に回転するロータと、前記ロータの外周面の一部に設けられたコンミテータと、前記コンミテータと径方向に対向するブラシと、を備え、前記コンミテータは、複数の通電部と、前記通電部と同数の非通電部を周方向に交互に備え、前記通電部の軸方向一方側端部と軸方向他方側端部の周方向位置は異なり、前記ブラシは、前記通電部と径方向に接触し、前記ブラシと前記通電部の軸方向位置は互いに変更可能である、ブラシ付きDCモータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るブラシホルダについて説明する。
ブラシホルダは、ブラシ付きDCモータに設けられ、ブラシを保持する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0012】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。X軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1に示すブラシホルダ30の中心軸Jに対する周方向中心と中心軸Jとを結ぶ方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を−側とする。
【0013】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」又は「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側)を「リア側」又は「他方側」と呼ぶ。なお、リア側(他方側)及びフロント側(一方側)とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周り(θ方向)を単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。周方向において、
図1の矢印が指す側を+θ側(周方向一方側)、反対側を−θ側(周方向他方側)とする。
【0014】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。
【0015】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るブラシホルダを備えたモータの概略斜視図である。本実施形態のブラシホルダ30及び31は、モータ10に設けられる。
図2は、
図1のモータ10を、ブラシホルダ30の中心軸Jに対する周方向中心と中心軸Jとを結ぶ位置で破断して示す断面図である。
【0016】
モータ10は、
図2に示すように、モータハウジング21と、ロータ50と、モータシャフト41と、ステータ40と、ベアリング55a及び55bと、ブラシホルダ30及び31と、ブラシ45及び46と、コンミテータ52と、カバー部材32と、を有する。モータ10は、ブラシ付きDCモータであり、ロータ50がモータシャフト41の外周面に固定され、ステータ40がロータ50の径方向外側に位置する。ステータ40は、ロータ50と径方向に隙間を介して対向する。また、ベアリング55aは、モータシャフト41のリア側(−Z側)端部に配置され、ベアリング55bは、モータシャフト41のフロント側(+Z側)端部に配置され、ベアリング55a及び55bはモータシャフト41を回転可能に支持する。ベアリング55a及び55bの形状、構造等は、特に限定されず、いかなる公知のベアリングも用いることができる。
【0017】
ロータコア51は、モータシャフト41を軸周り(θ方向)に囲んで、モータシャフト41に固定される。ロータ50は、ロータコア43と、ロータコア43に巻き回されたコイル(不図示)と、を有する。絶縁性の部材である樹脂部材47は、モータシャフト41を軸周りに囲んで、モータシャフト41に固定される。樹脂部材47の外周面には、ロータコア43に巻き回されたコイルに接続されたコンミテータ52が配置される。コンミテータ52は、モータシャフト41の軸回りに配置される。ロータコア43、ロータコア43に巻き回されたコイル、樹脂部材47、及びコンミテータ52は、モータシャフト41とともに回転する。ロータ50は、コンミテータ52を含むものであってもよい。
【0018】
モータハウジング21は、軸方向一方側でベアリング55bを固定する有底の薄肉筒状である。モータハウジング21の内周面は、中心軸Jを中心とする筒形状である。モータハウジング21の内周面にはマグネット44が固定され、ステータ40を構成している。モータハウジング21の軸方向他方側にはカバー部材32が固定される。カバー部材32は、中心軸Jを中心とした板状の部材である。カバー部材32は、中心軸Jを中心とする円筒状であり、軸方向他方側に突出する凸部32aを有する。凸部32aの内周面には、ベアリング55aが固定される。本実施形態においては、円筒形状を挙げているが、これに限らず、角筒等も含む。
【0019】
モータハウジング21は、軸方向他方側の端部に切り欠き部21aを有する。切り欠き部21aは、モータハウジング21の周方向において180°の間隔で2か所に配置されている。カバー部材32は、径方向の端部に切り欠き部32b及び32cを有する。切り欠き部32bと切り欠き部32cとは、周方向において180°の間隔で配置されている。詳しくは後述するが、ブラシホルダ30は切り欠き部32b及び2つの切り欠き部21aの一方に嵌り固定され、ブラシホルダ31は切り欠き部32c及び2つの切り欠き部21aの他方に嵌り固定される。ブラシホルダ30は、ブラシ45を収容し、収容したブラシ45をコンミテータ52に押し付けて保持する。ブラシホルダ31は、ブラシ46を収容し、収容したブラシ46をコンミテータ52の外周面に押し付けて保持する。ブラシホルダ31は、ブラシホルダ30と同じ構造であるため、以下では、ブラシホルダ30について説明し、ブラシホルダ31の説明は省略する場合がある。また、ブラシ46は、ブラシ45と同じ構造である。
【0020】
ブラシホルダ30は、ブラシ45を収容する収容部34を有する。収容部34は、ブラシ45を収容して保持する保持孔36を有する。保持孔36は、径方向内側に開口し、径方向外側に延びる。本実施形態では、保持孔36の延びる方向は、モータシャフト41と直交する方向である。保持孔の延びる方向は、モータシャフト41と直交しない方向であってもよい。
【0021】
ブラシホルダ30は、端子部材35が挿入される保持部33を有する。端子部材35は、不図示のピグテールによってブラシ45と接続される。ブラシ45は、径方向外側の端部に、径方向外側に突出する凸部45bを有する。コイルばねであるばね部材42は、凸部45bに嵌る。ばね部材42は、ブラシ45と端子部材35との間に配置され、ブラシ45を、径方向内側すなわちコンミテータ52側に付勢する。端子部材35に通電すると、ピグテール、ブラシ45、及びコンミテータ52を介してコイルに通電される。
【0022】
図3は、モータ10からモータハウジング21を取り外した状態を+Y側から見た側面図であって、コンミテータ52の近傍を拡大して示す図である。
ブラシホルダ30は、周方向他方側に側孔36aを有する。ブラシ45は、周方向他方側にピグテール接続部45aを有する。保持孔36に収容されたブラシ45のピグテール接続部45aは、側孔36aによって外部に露出し、ピグテール接続部45aと端子部材35とがピグテールによって接続される。
【0023】
コンミテータ52は、複数の金属片を周方向に配置して構成される。本実施形態では、
図4〜
図7に示すように、コンミテータ52は、金属片52a、52b、52c、52d、52e、52f、及び52gの7つの金属片から構成される。
図4は、コンミテータ52、ブラシ45、及びブラシ46の配置状態を+Y側から見た側面図である。
図5は、コンミテータ52、ブラシ45、及びブラシ46の配置状態を−X側から見た側面図である。
図6は、コンミテータ52、ブラシ45、及びブラシ46の配置状態を−Y側から見た側面図である。
図7は、コンミテータ52、ブラシ45、及びブラシ46の配置状態を+X側から見た側面図である。
【0024】
金属片52a、52b、52c、52d、52e、52f、及び52gのそれぞれと、これらの金属片との間には、軸方向に対して斜めに溝部53が設けられている。溝部53は、隣接する金属片同士を電気的に絶縁する絶縁部として機能する。本実施形態では、溝部53は空間である。
溝部53は、空間であるものに限られず、例えば、樹脂部材47が溝部53の位置で径方向外側に突出し、隣接する金属片同士の間を埋め、樹脂部材47により金属片同士の絶縁を確保するものであってもよい。また、樹脂部材47以外の絶縁部材によって、隣接する金属片同士の間である溝部53を埋めるようにしてもよい。本実施形態では、溝部53は軸方向と平行ではない方向に延びる。
【0025】
コンミテータ52の外周面に押し付けられたブラシ45及び46は、ロータ50の回転に伴い、溝部53を乗り越えながら、金属片52a、52b、52c、52d、52e、52f、及び52gに順に接する。
【0026】
図8は、モータハウジング21の斜視図である。
図8では、内周面にマグネット44が固定された状態のモータハウジング21を示している。
図9は、ブラシホルダ30の斜視図である。
図10は、カバー部材32の斜視図である。
ブラシホルダ30の収容部34は、径方向に延びる挿入溝34aを有する。カバー部材32の切り欠き部32bの縁部が挿入溝34aに挿入されることで、ブラシホルダ30とカバー部材32とが固定される。
【0027】
ブラシホルダ30の保持部33は、モータハウジング21の切り欠き部21aに嵌る側面部33aを有する。また、保持部33は、端子部材35を軸方向に挿入する挿入孔34bを有する。
ブラシホルダ30をモータ10に取付ける際には、切り欠き部32bの縁部を挿入溝34aに圧入してブラシホルダ30とカバー部材32とを固定した状態で、側面部33aを切り欠き部21aに圧入する。また、カバー部材32の凸部32aの内周面にはベアリング55aが固定され、これにより、保持孔36に収容したブラシ45とコンミテータ52との位置決めがされる。
【0028】
図11は、
図9に示したブラシホルダ30を、
図9とは異なる向きから見た斜視図である。
図11は、ブラシホルダ30の保持孔36が見える向きでブラシホルダ30を示している。
保持孔36の縦方向長さは、保持孔36に挿入されるブラシ45の縦方向長さよりも長い。その為、ブラシ45は保持孔36の中で軸方向に移動することができる。
【0029】
本願のモータは、斜めのコンミテータとブラシホルダ30の保持孔36の中で軸方向に移動可能なブラシ45の軸方向位置を調整する構造をもつ。ブラシ45の軸方向位置の調整は、保持孔36とブラシ45の軸方向隙間にスペーサD1、D2を挿入しても良い。また、バネなどで軸方向に付勢しよもよい。また、ねじなどを設けて軸方向の位置を限定する方法などがある。
【0030】
また、回転方向によりロータの軸方向位置を変えることで、切り替えタイミングを変更する事もできる。例えば、ウォームギヤ軸の駆動では、回転方向によって要求される回転数、トルクが異なると同時に軸方向への負荷の向きも異なる。ロータにかかる軸方向の負荷によりロータが軸方向に移動することで、斜めのコンミテータとブラシの位置関係が変わり通電の切り替えタイミングが変化し、速度とスピードを好適に合わせることが出来る。
【0031】
DCモータの特性は、ステータマグネットに対してロータへの通電切り替えを行うタイミングで異なる。ロータへの通電切り替えのタイミングを、ステータマグネットの位置に対して早くすると高速回転するが、低速で低いトルクとなる。逆にタイミングを遅くすると最大回転数は下がるが低速で高いトルクとなる。
【0032】
ロータへの通電切り替えは、ロータと共に回転するコンミテータと、コンミテータと接触して通電するブラシによって行われる。コンミテータは複数の通電部と絶縁部が周方向に交互に配置され、更にそれぞれの通電部はロータのそれぞれの巻線と電気的に繋がれている。各通電部に通電する事で通電されるロータ巻線が異なる。ブラシは周方向に回転するコンミテータと径方向に接触する。ロータの回転に伴い接触する通電部が変わることで通電切り替えを行うことが出来る。
【0033】
ロータは軸受けで回転自在に保持されている。また、熱膨張や使用する部品の軸方向長さのバラツキを吸収するために、ロータは軸受けで軸方向に移動可能な隙間を設けている。
通電部は軸方向と平行に設ける事で、ロータが軸方向に移動しても特性への影響を抑えることができる。
【0034】
図12の例では、ばね部材42の付勢により、ブラシ45は、保持孔36内でコンミテータ側に不正されている。当時に、保持孔34とブラシ45の軸方向に挿入したスペーサD1、D2によって、保持孔34の中で軸方向一方側の位置に保持されている。
【0035】
<コンミテータとブラシホルダの作用・効果>
次に、コンミテータとブラシホルダ、およびスペーサの作用・効果について説明する。
【0036】
上述の実施形態に係る発明においては、斜めに溝が設けられたコンミテータと、保持孔36内でスペーサD1、D2により軸方向一方側に保持されたブラシ45によって、ロータへの電流切り替えのタイミングを設定する事で、モータ特性を好適に設定可能である。また、スペーサD1の枚数や厚さ、および、スペーサD2の枚数や厚さを変更する事で、モータ特性を変更する事ができる。
【0037】
本願のブラシ付きDCモータは、上下に延びる中心軸を中心に回転するロータと、前記ロータの外周面の一部に設けられたコンミテータと、前記コンミテータと径方向に対向するブラシと、を備えている。前記コンミテータは、複数の通電部と、前記通電部と同数の非通電部を周方向に交互に備え、前記通電部の軸方向一方側端部と軸方向他方側端部の周方向位置は異なり、前記ブラシは、前記通電部と径方向に接触し、前記ブラシと前記通電部の軸方向位置は互いに変更可能である。
【0038】
この様なブラシ付きDCモータは、巻線への通電切り替え通電の切り替えタイミングを変更できるので、モータの特性の調整が可能である。
【0039】
また、ブラシ付きDCモータでは、前記ブラシホルダに設けられた、前記ブラシの挿入部の軸方向長さは、前記ブラシの軸方向長さよりも長い。
【0040】
この様なブラシ付きDCモータでは、ブラシは、ブラシホルダ内で軸方向の位置を調整することができる。また、軸方向に調整する事で、巻線への通電切り替え通電の切り替えタイミングを変更できるので、モータの特性の調整が可能である。
【0041】
また、ブラシ付きDCモータは、前記ブラシを周方向に固定するブラシホルダを備える。
【0042】
この様なブラシ付きDCモータは、回転する通電部に対してブラシの位置を固定できるので、調整した巻線への通電切り替え通電の切り替えタイミングを維持できる。
【0043】
また、ブラシ付きDCモータは、前記ブラシホルダに設けられた、前記ブラシの挿入部の軸方向長さは、前記通電部の軸方向長さよりも長い。
【0044】
この様なブラシ付きDCモータは、個体により通電部の軸方向位置が異なっても、ブラシの挿入部の軸方向上または下側にスペーサを入れることで軸方向位置を調整できる。
【0045】
また、ブラシ付きDCモータでは、前記ブラシは、軸方向一方側から他方側に付勢されている。
【0046】
この様なブラシ付きDCモータは、他方側の位置を調整する事で軸方向位置を変更する事ができる。
【0047】
また、ブラシ付きDCモータは、前記ロータは、回転方向により、軸方向に異なる方向に移動可能である。
【0048】
この様なブラシ付きDCモータは、回転方向により異なる特性を得ることが出来る。例えば、ハスバ歯車やウォームギヤを使用する事で、モータの回転により軸方向の力が加わり、ロータと共に通電部を軸方向に移動できる。
【0049】
上述した実施形態のブラシホルダの用途は、特に限定されない。上述した実施形態のブラシホルダは、例えば、ブラシ付きDCモータに設けられる。また、上述した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることができる。
【0050】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。