【実施例】
【0021】
以下、実験例を示して本発明の詳細を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
各成分の定量
各サンプルにおける2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン、2−メトキシ−4−ビニルフェノール、1−ヘキサノールは、以下の方法にて定量した。
(1)2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン
力茶飲料中の2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンの分析は、液体クロマトグラフィータンデム型質量分析法(LC−MS/MS)を用いて行った。必要に応じて、緑茶飲料を減圧濃縮し、分析に供した。
LC−MS/MS測定条件
・カラム:TSKgel Amide-80, φ4.6mm×250mm, 粒径5μm
・移動相:水、アセトニトリル及び酢酸の混液
・流量:1.0ml/min
・カラム温度:40℃
・イオン化法:エレクトロスプレー(正イオン検出モード)
・設定質量数(m/z):326.0→163.8
(2)2−メトキシ−4−ビニルフェノール、1−ヘキサノール
試料液をそのまま、または高速液体クロマトグラフ用蒸留水(富士フィルム和光純薬社製)で適宜希釈した希釈液5mlを、ガラス製20ml容クリンプバイアル(直径18mm,AMR社製)に入れ、PTFE製セプタム付きクリンプキャップ(AMR社製)にて密栓し、固相マイクロ抽出法(SPME Arrow)にて香気成分の抽出を行った。定量は、GC/MSの分析結果からMS Rangeを設定してクロマトグラムを描画し、検出されたピークの面積を用いて、標準添加法または内部標準法にて行った。使用した機器及び条件を以下に示す。
ファイバー:SPME Arrow 1.1mm,Phase Carbon WR/PDMS,Thickness 120μm,Length 20mm,(パルシステム社製)
オートサンプラー:TriPlus RSH(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
分析待ちサンプルの冷却保管温度:1〜4℃
予備加温攪拌装置:Agitator
予備加温:45℃3分間
予備加温攪拌:300rpm
揮発性成分抽出装置:Heatex Stirrer
揮発性成分抽出:45℃20分間
揮発性成分抽出時の攪拌:800rpm
揮発性成分の脱着時間:2分間
揮発性成分の脱着時ファイバー深さ:50mm
GCオーブン:Trace1300(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
カラム:DB−WAX UI,60m×0.25mmi.d.×df=0.50μm(アジレントテクノロジーズ社製);ただし不活性化フューズドシリカチューブ(0.25mmi.d.,アジレントテクノロジーズ社製)をプレカラム部(長さ1.5m)、ポストカラム部(長さ1.0m)に接続
GC温度条件:40℃(5分間)→3℃/分→190℃→5℃/分→250℃(15分間)
平衡化待ち時間:0.5分間
キャリアーガス:ヘリウム,1.0ml/分,流量一定モード
インジェクション:スプリットレス法
インレット温度:250℃
クライオフォーカス機能:液体窒素冷却装置およびヒーター(PTVインジェクタを利用、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)をプレカラム部に設置
クライオフォーカス条件:−95℃(2.5分間)→14.5℃/分→250℃(分析終了まで)
質量分析装置:Q Exactive GC Orbitrap MS system(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
イオン化方式:EI(70eV)
測定方式:Orbitrapによるスキャン測定
Runtime:3.5〜80.0分
Polatiry:positive
Resolution:60000
AGC target:3e6
スキャンレンジ:m/z35〜500
定量イオンは以下に示すイオンから、検出感度、ピーク形状、及びピーク分離が良好な
ものを選択する。2−メトキシ−4−ビニルフェノール m/z150.06753、135.04406、又は107.04914;1−ヘキサノール m/z69.06988、55.05423、又は56.06205。MS Rangeは5〜10ppmとし、質量のずれがある場合は、上記定量イオンのm/zを適宜シフトさせることができる。なお、上記イオンのいずれを用いてもピーク形状又は感度が良好でない場合は、AGC targetの変更や、SIMモードを用いてもよい。
【0022】
実験1:緑茶飲料の製造と評価(参考例)
20gの緑茶葉(煎茶)に対し熱水(70〜80℃)1000mLを用いて5分間抽出処理を行った後、茶葉を分離し、さらに200メッシュを通液させ、粉砕組織や茶粒子などの固形分を除去して、緑茶抽出液を得た。この緑茶抽出液が47.5mg/100mLとなるように水を加え緑茶飲料を得た(サンプル1−1)。次いで、2−メトキシ−4−ビニルフェノール含有量が0.01〜1ppbとなるように、サンプル1−1に2−メトキシ−4−ビニルフェノール(Toronto Research Chemicals社製、純度97%)を加えて緑茶飲料を調整した(サンプル1−2〜1−5)。
【0023】
得られた緑茶飲料のオフフレーバー(異質な風味)について、専門パネル5名にて評価を実施した。評価サンプルの温度は、25℃とした。評価基準は下記のとおりである。
・×:5名全員が、サンプル1−1(対照)と比較してオフフレーバーを感じた場合
・△:3〜4名がオフフレーバーを感じた場合
・○:オフフレーバーを感じたパネルが2名以下だった場合(専門パネル全員が対象と変わらないと評価した場合を含む)
【0024】
官能評価結果を表1に示す。緑茶飲料中の2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が0.02ppb以上であるとパネルの過半数がオフフレーバーがあると評価し、2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度が0.03ppb以上ではパネル全員がオフフレーバーがあると評価した。
【0025】
【表1】
【0026】
実験2:緑茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1−5(2−メトキシ−4−ビニルフェノール濃度:1ppb)に、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン含有量が表2の通りになるように2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン(GAL-DNJ、機能性植物研究所製、純度98%)を配合して緑茶飲料を製造した。
【0027】
得られた緑茶飲料のオフフレーバーの強さについて、専門パネル5名にて、1〜5点の5段階評価法にて官能評価した。評価サンプルの温度は、25℃とした。2−メトキシ−4−ビニルフェノールを1ppb含んでおり、かつ2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンが含まれていないサンプル1−5を1点とし、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含まないサンプル1−1を5点として評価した。下記の基準に基づいて各専門パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で表記した。
・5点:オフフレーバーを感じない(サンプル1−1と同等)
・4点:オフフレーバーを僅かに感じる
・3点:オフフレーバーをやや感じる
・2点:オフフレーバーをとても感じる
・1点:オフフレーバーを非常に感じる(サンプル1−5と同等)
【0028】
官能評価結果を表2に示す。表から明らかなとおり、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを緑茶飲料0.2ppm以上、好ましくは0.7ppm以上配合することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーを抑制することができた。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
【0029】
また、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンの含有量が22ppmであるサンプル2−15は、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーのマスキング効果はあるものの、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン自体の雑味をやや感じると評価したパネルがいた。
【0030】
【表2】
【0031】
実験3:緑茶飲料の製造と評価
実験1で得られたサンプル1−1に、2−メトキシ−4−ビニルフェノール(Toronto Research Chemicals社製、純度97%)と2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン(機能性植物研究所製、純度98%)を配合し、表3に示す配合の緑茶飲料を製造した。
【0032】
得られた緑茶飲料のオフフレーバーについて、専門パネル5名にて、1〜5点の5段階評価法にて官能評価した。評価サンプルの温度は、25℃とした。同量の2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含むサンプルにおいて、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを添加していないサンプルを1点とし、サンプル1−1を5点として評価を行った。下記の基準に基づいて各専門パネルが評価した結果を再度全員で自由討議し、全員の合意のもとに整数値で評価した。
・5点:オフフレーバーを感じない(サンプル1−1と同等)
・4点:オフフレーバーを僅かに感じる
・3点:オフフレーバーをやや感じる
・2点:オフフレーバーをとても感じる
・1点:オフフレーバーを非常に感じる(各実施例の2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン無添加サンプルと同等)
【0033】
官能評価結果を表3に示す。緑茶飲料に2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを添加することにより、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーが抑制された。その結果、グリーンノートが増強して感じられた。
サンプル3−3と3−4は、いずれもオフフレーバーの官能評価が5点であったが、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンの多いサンプル3−4の方が雑味をわずかに感じると評価するパネルがいた。
【0034】
【表3】
【0035】
実験4:緑茶飲料の製造と評価
オフフレーバーが感じられる市販の加熱殺菌済容器詰緑茶飲料を分析したところ、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを含有することが分かった。これらの容器詰緑茶飲料に表4の通り2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシン(機能性植物研究所製、純度98%)を添加して緑茶飲料を調製し、2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを添加していない緑茶飲料を対照としてオフフレーバーを評価した(緑茶飲料のpH:約6.0)。評価基準は下記のとおりであり、評価サンプルの温度は、25℃とした。
・± :2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを添加していない緑茶飲料(対照)とオフフレーバーが同等に感じられる場合
・+ :オフフレーバーがわずかに感じられる場合
・++:オフフレーバーが感じられない場合
表4から明らかなとおり、市販されている容器詰緑茶飲料においても2−O−α−D−ガラクトピラノシル−1−デオキシノジリマイシンを添加することで、2−メトキシ−4−ビニルフェノールに起因するオフフレーバーを抑制することが示された。
【0036】
【表4】