(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-136979(P2021-136979A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】ウイルス分析用プライマーセット
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20210820BHJP
C12N 15/09 20060101ALN20210820BHJP
【FI】
C12Q1/6888 ZZNA
C12N15/09 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2020-53396(P2020-53396)
(22)【出願日】2020年3月6日
(71)【出願人】
【識別番号】520101683
【氏名又は名称】鈴木 彦有
(71)【出願人】
【識別番号】516279260
【氏名又は名称】株式会社日本バイオデータ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 彦有
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA13
4B063QA18
4B063QA19
4B063QQ10
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QR32
4B063QR35
4B063QR79
4B063QS16
4B063QS25
4B063QS32
4B063QS34
4B063QX01
4B063QX04
(57)【要約】 (修正有)
【課題】体の状態を悪化させるウイルスが存在しているか否か分析するためのプライマーセットを提供する。
【解決手段】特定の配列のプライマーから選択される2種のプライマーセットを含むウイルス分析用のプライマーセット。例えば、2種のプライマーセットのうち一方は、ある特定の配列塩基配列を有するプライマーであり、残りは、別の特定の配列で示される塩基配列を有するプライマーであることが好ましい。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号9〜23のプライマーから選択される2種のプライマーセットを含むウイルス分析用のプライマーセット
【請求項2】
請求項1に記載のウイルス分析用のプライマーセットと配列類似性が70%以上であるプライマーセット。
【請求項2】
請求項1に記載のウイルス分析用のプライマーセットであって,
前記2種のプライマーセットは,
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号11及び配列番号12で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号13及び配列番号14で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号15及び配列番号16で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号15及び配列番号17で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号18及び配列番号19で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号20及び配列番号21で示される塩基配列を有するプライマーセット,及び
配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列を有するプライマーセットから選択される
いずれかのプライマーセットであるウイルス分析用のプライマーセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,ウイルス分析用プライマーセットに関する。より詳しく説明すると,本発明は,特定のウイルスを効果的に検出・分類するためのウイルス分析用プライマーセットに関する。
【背景技術】
【0002】
特許5595612号公報には,肌分析用用プライマーセットが開示されている。このプライマーセットは,PCRを用いて,動物検体に由来する微生物種のDNAを増幅し,これを測定することで,特定の微生物種が混合しているか否かを検出するためのものである。このようにPCRに用いられるプライマーを見出すことができれば特定の生物又はウイルスが存在するか否かを判別できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5595612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
動物の体には,体の状態を悪化させるウイルスが存在する場合がある。このため,特定のウイルスが体に存在していることがわかれば,動物の状態を分析できる。このため,体の状態を悪化させるウイルスが体に存在しているか否かを解析するためのプライマーセットが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は,所定のウイルスが体に悪影響を及ぼすことを突き止め,そしてそのウイルスを特異的に検出するための特定のプライマーセットを見出したことに基づくものである。
【0006】
本発明は,ウイルス分析用のプライマーセットに関する。このプライマーセットは,配列番号9〜20のプライマーから選択される2種のプライマーセットを含む。2種のプライマーセットのうち一方は,配列番号9,11,13,15,18,20又は22で示される塩基配列を有するプライマーであり,残りは,配列番号10,12,14,16,17,19,21又は23で示される塩基配列を有するプライマーであることが好ましい。
【0007】
本発明の好ましい態様は,
前記2種のプライマーセットが,
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号11及び配列番号12で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号13及び配列番号14で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号15及び配列番号16で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号15及び配列番号17で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号18及び配列番号19で示される塩基配列を有するプライマーセット,
配列番号20及び配列番号21で示される塩基配列を有するプライマーセット,及び
配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列を有するプライマーセットから選択されるいずれかのプライマーセットのものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のプライマーセットは,PCRにより,体を悪化させるウイルス由来のDNAを特異的に増幅させることができる。このため,本発明は,体の状態を悪化させるウイルスが体に生息しているか否か分析するためのプライマーセットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は,体の状態を悪化させるウイルスが存在していると考えられる体由来のサンプルについて配列番号9及び配列番号10からなるプライマーセットを用いて分析を行った結果を示す図面に替わるゲル電気泳動写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜修正したものも含む。
【0011】
本発明は,ウイルス分析用のプライマーセットに関する。このプライマーセットは,PCRにより以下の表1に示される塩基配列を有するDNA(配列番号1〜8で示される塩基配列を有するDNA)を増幅できる。
【0013】
本発明のプライマーセットは,配列番号9〜23のプライマーから選択される2種のプライマーセットを含む。2種のプライマーセットのうち一方は,配列番号9,11,13,15,18,20又は22で示される塩基配列を有するプライマーであり,残りは,配列番号10,12,14,16,17,19,21又は23で示される塩基配列を有するプライマーであることが好ましい。
【0014】
本発明の好ましい態様は,
2種のプライマーセットが,配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセット(配列番号9で示される塩基配列を有するプライマーと,配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーのセット,以下同様),配列番号11及び配列番号12で示される塩基配列を有するプライマーセット,配列番号13及び配列番号14で示される塩基配列を有するプライマーセット,配列番号15及び配列番号16で示される塩基配列を有するプライマーセット,配列番号15及び配列番号17で示される塩基配列を有するプライマーセット,配列番号18及び配列番号19で示される塩基配列を有するプライマーセット,配列番号20及び配列番号21で示される塩基配列を有するプライマーセット,及び配列番号22及び配列番号23で示される塩基配列を有するプライマーセットから選択されるいずれかのプライマーセットのものである。これらプライマーの塩基配列は,以下の表2に示されるとおりである。
【0016】
プライマーを用いて特定のDNA(DNA断片)を増幅し,対象となる生物が検体に含まれるか否かまた対象となる生物の存在量を評価することは,公知である。本発明においても,公知の方法を適宜採用できる。
【0017】
上記のプライマーは,DNA自動合成器を用いて支持体上でヌクレオチドを伸長し,適宜脱保護や支持体からの切断を行い,カラムクロマトグラフィー等公知の方法を用いて分離生成することで得ることができる。
【0018】
次に,上記したいずれかのウイルス分析用のプライマーセットを用いたウイルス分析方法について説明する。
【0019】
まず,検査対象に存在するウイルスを採取する。本発明の対象は,哺乳動物(例えばヒト)の体である。体の例は,喉の粘膜や痰である。そして,例えば,湿らせた綿棒で対象部位である痰をこする。
【0020】
次に綿棒に含まれるウイルスのゲノムに含まれるDNA断片を公知のキットを用いて取得する。この方法は,公知のキットを用いて,公知のキットの説明書に基づいて行えばよい。
【0021】
PCRは,公知のPCR装置を用いてPCR装置の解説書に基づいて行えばよい。PCRを行う際に,プライマーセットは,例えば,最終濃度が0.1μM以上1μMとなるように設定すればよく,0.2μM以上2μM以下でもよい。PCRにより,対象物に含まれるDNA断片が特異的に増幅する。PCR反応の条件の例は,以下のとおりである。
【0022】
二本鎖DNAの一本鎖への熱変性(ステップ1)二本鎖DNAの一本鎖への熱変性は,例えば,摂氏90度以上摂氏100度以下(又は摂氏94度以上摂氏98度以下)で3秒以上10秒以下(又は4秒以上7秒以下)により行う。
【0023】
アニーリング(ステップ2)アニーリングは,例えば,摂氏50度以上摂氏70度以下(又は摂氏55度以上摂氏65度以下)で3秒以上10秒以下(又は4秒以上7秒以下)により行う。
【0024】
DNA伸長反応(ステップ3)DNA伸長反応は,通常,通常アニーリング工程より高温にて行う。DNA伸長反応は,例えば,摂氏60度以上摂氏80度以下(又は摂氏63度以上摂氏73度以下)で5秒以上20秒以下(又は6秒以上12秒以下)により行う。
【0025】
PCRは,上記のステップ1〜ステップ3を複数サイクル行う。サイクル数の例は,10回以上100回以下である。サイクル数は,対象となるウイルス由来の増幅物が検出できる程度に増幅するまで行えばよい。
【0026】
次に,DNA断片の増幅産物を検出する。PCRで増幅されたDNA断片の検出方法は公知である。本発明においても公知の検出方法を適宜採用できる。DNA断片の増幅産物を検出する方法の例は,増幅産物をアがロースゲル電気泳動により分離し,核酸染色を行って可視化するものである。後述の実施例により示されたとおり,プライマーセットにより増幅される対象の菌に含まれるDNA断片の長さが実施例により見出された。よって,検出対象に,所定の長さのDNA断片が含まれるか(所定の長さ領域の部位にバンドが見えるか)を判断することで,対象となるウイルスが検体に存在するか否かを判断することができる。
【実施例】
【0027】
体に悪影響を与えるウイルスの調査
動物の体の状態が悪化する原因となる菌叢についての知見を得るため,被験者の協力のもと体に悪影響を及ぼすウイルス及びそのウイルスのDNAを調査した。具体的には,被験者は,その痰を綿棒でこすり,体に存在するウイルスを増幅させた。さらに,各被験者について,体の状況と体の変化とを記録した。各サンプルについて,大規模配列解析を行った。配列解析には,イルミナ社のHiSeq2000を用いた。
【0028】
その結果,体の状態が悪かったサンプルは,他のサンプルに比べて配列番号1,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8で示される塩基配列を有するDNAが多く含まれることがわかった。このため,配列番号1,配列番号2,配列番号3,配列番号4,配列番号5,配列番号6,配列番号7,配列番号8で示される塩基配列を有するDNAを有するウイルスの有無や量を測定することで,体の状態を分析できることがわかった。
【実施例1】
【0029】
配列番号9,10の塩基配列を基に,遊離のヌクレオチドをFmoc固相法によって結合し,次いでOPCカラムにより精製することによって,2種類のプライマーを作製した。合成されたプライマーは,使用直前まで−80℃にて保管し,融解後直ちに使用するようにし,凍結融解を3回以上繰り返さないようにした。
【0030】
上記2種類のプライマーを,使用前に蒸留水にて溶解し,被験DNA液を含む反応液に対し,それぞれの最終濃度が0.25μMとなるようにした。
【0031】
被験者の痰から, DNAを精製するキットであるDNeasy Blood&Tissuekit(QIAGEN社製)を用いてサンプルのDNAを精製した。上記精製したサンプルのDNAの濃度を測定し,滅菌水を加えて希釈し,被験DNA液(1ng/μl)に希釈した。それぞれの被験DNA液1μlに滅菌水及びPCR酵素バッファー混合液およびプライマーを,QIAGEN Fast Cycling PCR Kit(QIAGEN社製)のプロトコルに従って加え,総液量を20μlに調整してPCR反応を行った。
【0032】
PCR反応は,反応液が入った状態のチューブを95℃で5分保持した後,熱変性反応を96℃で5秒,アニーリング反応を60℃で5秒,DNA伸長反応を68℃で9秒行い,以上の反応を45サイクル繰り返し,最後に72℃で1分DNA伸長反応を行った。
【0033】
PCR反応終了後,得られたPCR産物を,4.0%アがロースゲル(インビトロジェン社製)を用いMupid―2(アドバンス社製)により,100V45分間電気泳動し,エチジウムブロマイド(1.0μg/ml)で5分間染色後,UVランプ下でバンドを撮影した。その結果を
図1に示す。
図1は,体を悪化させるウイルスが生息していると考えられるサンプルについて配列番号2及び配列番号3からなるプライマーセットを用いて分析を行った結果を示すゲル電気泳動写真である。
図1に示されるように,体の状態が良くないサンプルのみで,110bpのバンドが確認できた。
【0034】
このことから,配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたPCR法に基づいて体の状態を指弾する場合,110bp前後(例えば105bp以上115bp以下,又は108bp以上112bp以下)のバンドの有無を用いればよいことがわかる。すなわち,110bp前後のバンドが観測される対象は,体に悪影響を及ぼすウイルスが存在しているといえる。
【実施例2】
【0035】
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセットに代えて,配列番号11及び配列番号12で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いた以外は実施例1と同様にしてPCRに基づく体の状況解析を行った。その結果,体の状態が悪いサンプルのみで,103bpのバンドが確認できた。
【0036】
このことから,配列番号4及び配列番号5で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたPCR法に基づいて体の状態を分析する場合,103bp前後(例えば98bp以上108bp以下,又は101bp以上105bp以下)のバンドの有無を用いればよいことがわかる。
【実施例3】
【0037】
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセットに代えて,配列番号13及び配列番号14で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いた以外は実施例1と同様にしてPCRに基づく体の状況解析を行った。その結果,体の状態が悪いサンプルのみで,106bpのバンドが確認できた。
【0038】
このことから,配列番号13及び配列番号14で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたPCR法に基づいて体の状態を分析する場合,106bp前後(例えば101bp以上111bp以下,又は104bp以上108bp以下)のバンドの有無を用いればよいことがわかる。
【実施例4】
【0039】
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセットに代えて,配列番号15及び配列番号16で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いた以外は実施例1と同様にしてPCRに基づく体の状況解析を行った。その結果,体の状態が悪いサンプルのみで,425bpのバンドが確認できた。
【0040】
このことから,配列番号15及び配列番号16で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたPCR法に基づいて体の状態を分析する場合,425bp前後(例えば420bp以上430bp以下,又は423bp以上427bp以下)のバンドの有無を用いればよいことがわかる。
【実施例5】
【0041】
配列番号9及び配列番号10で示される塩基配列を有するプライマーセットに代えて,配列番号18及び配列番号19で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いた以外は実施例1と同様にしてPCRに基づく体の状況解析を行った。その結果,体の状態が悪いサンプルのみで,318bpのバンドが確認できた。
【0042】
このことから,配列番号18及び配列番号19で示される塩基配列を有するプライマーセットを用いたPCR法に基づいて体の状態を分析する場合,318bp前後(例えば313bp以上323bp以下,又は316bp以上320bp以下)のバンドの有無を用いればよいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は,医療のための機器を製造販売する製造業の分野で利用されうる。
【配列表フリーテキスト】
【0045】
配列番号1:合成DNA
配列番号2:合成DNA
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:プライマー
配列番号10:プライマー
配列番号11:プライマー
配列番号12:プライマー
配列番号13:プライマー
配列番号14:プライマー
配列番号15:プライマー
配列番号16:プライマー
配列番号17:プライマー
配列番号18:プライマー
配列番号19:プライマー
配列番号20:プライマー
配列番号21:プライマー
配列番号22:プライマー
配列番号23:プライマー
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]