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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-137710(P2021-137710A)
(43)【公開日】2021年9月16日
(54)【発明の名称】水処理システム
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/44 20060101AFI20210820BHJP
   B01D 61/10 20060101ALI20210820BHJP
   B01D 61/12 20060101ALI20210820BHJP
   C02F 5/00 20060101ALI20210820BHJP
【FI】
   C02F1/44 A
   B01D61/10
   B01D61/12
   C02F1/44 C
   C02F5/00 610G
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-36200(P2020-36200)
(22)【出願日】2020年3月3日
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】岩本 健輔
(72)【発明者】
【氏名】松友 伸司
【テーマコード(参考)】
4D006
【Fターム(参考)】
4D006GA03
4D006JA57Z
4D006JA63Z
4D006JA64Z
4D006KA03
4D006KD02
4D006KD06
4D006KD26
4D006KD30
4D006KE04Q
4D006KE11P
4D006KE22Q
4D006KE30Q
4D006PB06
(57)【要約】
【課題】遊離塩素除去における還元剤の弊害を防ぎつつ、逆浸透膜におけるバイオフィルムの生成を抑制し、バイオフィルムの劣化を測ることが可能な水処理システムを提供する。
【解決手段】水処理システム1は、給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュール17と、給水W11の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定手段と、給水W11に還元剤を薬注する第1薬注手段6と、給水W11に安定化剤を薬注する第2薬注手段7と、所定濃度の塩素が残留するように、第1薬注手段6による還元剤の薬注を制御する還元剤薬注制御手段301とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ろ過処理された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
給水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定手段と、
給水に還元剤を薬注する第1薬注手段と、
給水に安定化剤を薬注する第2薬注手段と、
所定濃度の塩素が残留するように、前記第1薬注手段による還元剤の薬注を制御する還元剤薬注制御手段とを備える、水処理システム。
【請求項2】
前記還元剤薬注制御手段は、給水中の残留塩素と前記安定化剤との反応物の濃度が所定値となるように、前記所定濃度を段階的に調整する、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項3】
給水に他種殺菌剤を薬注する第3薬注手段を更に備える、請求項1に記載の水処理システム。
【請求項4】
給水中に塩素が残留しないように、前記第2薬注手段による安定化剤の薬注を制御する安定化剤薬注制御手段を更に備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項5】
ろ過処理された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、
給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、
前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、
前記濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、
給水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定手段と、
給水に還元剤を薬注する第1薬注手段と、
給水に安定化剤を薬注する第2薬注手段と、
通常時には前記還元剤を薬注し、殺菌処理時には前記還元剤の薬注を停止するように、前記第1薬注手段を制御する還元剤薬注制御手段と、
通常時には前記安定化剤の薬注を停止し、殺菌処理時には前記安定化剤を薬注するように、前記第2薬注手段を制御する安定化剤薬注制御手段と、
を備える、水処理システム。
【請求項6】
給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注手段と、
殺菌処理時において、前記残留塩素濃度が所定値未満の場合には前記塩素系酸化剤を薬注し前記残留塩素濃度が所定値以上の場合には前記塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止するように、前記第4薬注制御手段を制御する酸化剤薬注制御手段とを更に備える、請求項5に記載の水処理システム。
【請求項7】
前記安定化剤は、スルファミン酸系化合物を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の水処理システム。
【請求項8】
前記安定化剤は、更に臭素化合物を含む、請求項7に記載の水処理システム。
【請求項9】
前記安定化剤は、更に前記スルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含む、請求項7又は請求項8に記載の水処理システム。
【請求項10】
給水に対してスケール分散剤を薬注する第5薬注装置を更に備える、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載の水処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
逆浸透膜を用いた膜ろ過プロセスを実行する水処理システムにおいて、微生物の繁茂に由来するバイオフィルムの抑制のため、微生物を除去するための塩素系殺菌剤として次亜塩素酸ナトリウムが用いられることがある。
【0003】
例えば、特許文献1は、逆浸透膜を用いた造水方法であって、バイオフィルムの発生によるバイオファウリングの抑制のため、次亜塩素酸ナトリウムを水処理システム中の逆浸透膜に流入させる造水方法を開示している。
【0004】
塩素系酸化剤の添加や電気分解により遊離塩素を存在させた水を逆浸透膜で処理すると、逆浸透膜が酸化劣化を受ける。このため、例えば特許文献2で開示されるように、逆浸透膜の前段で、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)や亜硫酸ナトリウムなどの還元剤を添加して、遊離塩素を除去する技術が従来知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016−190214号公報
【特許文献2】特開平7−308671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
塩素を残存させないため、還元剤を過剰に添加する方法が従来一般的であったが、還元剤を過剰に添加すると、還元剤添加後は酸化性殺菌剤が分解消失して殺菌成分が存在しない状態となり、また逆浸透膜装置の内部に還元剤が満たされる還元雰囲気となり、バイオフィルムの生成が助長される場合があった。
【0007】
また、還元剤による塩素除去は、還元剤の添加後の混合性や水温等によって変わるため、残留塩素濃度と当量付近の添加量とすると、塩素が残存し、逆浸透膜の劣化につながる懸念があった。
【0008】
また、亜硫酸水素ナトリウム(SBS)の添加に起因して、給水中の硫酸イオンが増加することにより、硫酸イオンを栄養源とする細菌が繁殖したり、処理水に未反応の亜硫酸が漏出し、処理水の水質が悪化したりする懸念があった。
【0009】
更に、酸化性殺菌剤は、還元剤で塩素を除去した後に添加するが、余剰の還元剤によって酸化性殺菌剤が分解消失するため、還元剤の余剰分だけ、酸化性殺菌剤を過剰に添加する必要があった。
【0010】
従って、本発明は、遊離塩素除去における還元剤の弊害を防ぎつつ、逆浸透膜におけるバイオフィルムの生成を抑制し、バイオフィルムの劣化を測ることが可能な水処理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ろ過処理された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、給水を前記逆浸透膜モジュールに供給する給水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、前記濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、給水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定手段と、給水に還元剤を薬注する第1薬注手段と、給水に安定化剤を薬注する第2薬注手段と、所定濃度の塩素が残留するように、前記第1薬注手段による還元剤の薬注を制御する還元剤薬注制御手段とを備える、水処理システムに関する。
【0012】
また、上記の水処理システムにおいて、前記還元剤薬注制御手段は、給水中の残留塩素と前記安定化剤との反応物の濃度が所定値となるように、前記所定濃度を段階的に調整することが好ましい。
【0013】
また、上記の水処理システムは、給水に他種殺菌剤を薬注する第3薬注手段を更に備えることが好ましい。
【0014】
また、上記の水処理システムは、給水中に塩素が残留しないように、前記第2薬注手段による安定化剤の薬注を制御する安定化剤薬注制御手段を更に備えることが好ましい。
【0015】
また本発明は、ろ過処理された給水を透過水と濃縮水とに分離する逆浸透膜モジュールと、給水を前記逆浸透膜モジュールに供給するろ過処理水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された透過水を送出する透過水ラインと、前記逆浸透膜モジュールで分離された濃縮水を送出する濃縮水ラインと、前記濃縮水の一部又は全部を濃縮排水として、系外に排出する濃縮排水ラインと、給水の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定手段と、給水に還元剤を薬注する第1薬注手段と、給水に安定化剤を薬注する第2薬注手段と、通常時には前記還元剤を薬注し、殺菌処理時には前記還元剤の薬注を停止するように、前記第1薬注制御手段を制御する還元剤薬注制御手段と、通常時には前記安定化剤の薬注を停止し、殺菌処理時には前記安定化剤を薬注するように、前記第2薬注制御手段を制御する安定化剤薬注制御手段と、を備える、水処理システムに関する。
【0016】
また、上記の水処理システムは、給水に塩素系酸化剤を薬注する第4薬注手段と、殺菌処理時において、前記残留塩素濃度が所定値未満の場合には前記塩素系酸化剤を薬注し前記残留塩素濃度が所定値以上の場合には前記塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止するように、前記第4薬注制御手段を制御する酸化剤薬注制御手段とを更に備えることが好ましい。
【0017】
また、上記の水処理システムにおいて、前記安定化剤は、スルファミン酸系化合物を含むことが好ましい。
【0018】
また、上記の水処理システムにおいて、前記安定化剤は、更に臭素化合物を含むことが好ましい。
【0019】
また、上記の水処理システムにおいて、前記安定化剤は、更に前記スルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含むことが好ましい。
【0020】
また、上記の水処理システムは、ろ過処理水に対してスケール分散剤を薬注する第5 薬注装置を更に備えることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の第1実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る水処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
図3】本発明の第2実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図4】本発明の第2実施形態に係る水処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
図5】本発明の第3実施形態に係る水処理システムの全体構成図である。
図6】本発明の第3実施形態に係る水処理システムに備わる制御部の機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
〔1 第1実施形態〕
〔1.1 全体構成〕
以下、本発明の第1実施形態である水処理システム1について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の水処理システム1の全体構成図である。
【0023】
図1に示すように、水処理システム1は、残留塩素濃度測定装置5と、第1薬剤添加装置6と、第2薬剤添加装置7と、第3薬剤添加装置8と、第4薬剤添加装置9と、加圧ポンプ15と、インバータ16と、逆浸透膜モジュール(以下、「RO膜モジュール」ともいう)17と、定流量弁18と、比例制御排水弁19と、制御部30と、を備える。なお、制御部30と被制御対象機器との電気的接続線の図示については、省略している。
【0024】
水処理システム1は、ラインとして、給水ラインL1と、透過水ラインL2と、濃縮水ラインL3と、循環水ラインL4と、濃縮排水ラインL5と、を備える。「ライン」とは、流路、経路、管路等の流体の流通が可能なラインの総称である。また、その由来(出所)やその水質によらず、給水ラインL1、濃縮水ラインL3又は循環水ラインL4を流通する水を、「給水」ともいい、濃縮水ラインL3、循環水ラインL4又は濃縮排水ラインL5を流通する水を、「濃縮水」ともいう。
【0025】
給水ラインL1は、給水W11及びW12を逆浸透膜モジュール17に向けて供給するラインである。給水ラインL1は、上流側から下流側に向けて、第1給水ラインL11と、第2給水ラインL12とを有する。
【0026】
第1給水ラインL11の上流側の端部は、給水W11の水源2に接続されている。第1給水ラインL11の下流側の端部は、接続部J1において、第2給水ラインL12及び循環水ラインL4に接続されている。第1給水ラインL11には、例として、残留塩素濃度測定装置5、第1薬剤添加装置6、第2薬剤添加装置7、第3薬剤添加装置8、第4薬剤添加装置9が、上流側から下流側に向けてこの順で設けられる。
【0027】
なお、給水W11は、ろ過装置(不図示)によってろ過処理された処理水でもよく、水道水でもよい。
【0028】
残留塩素濃度測定装置5は、給水W11中の残留塩素濃度を測定する。とりわけ、残留塩素濃度測定装置5は、残留塩素濃度として、給水W11中の遊離塩素の総量を測定する。また、残留塩素濃度測定装置5は、例えば特開2018−038942号公報で開示される塩素濃度センサと同様の構成を有することにより、残留塩素濃度を測定することが可能である。残留塩素濃度測定装置5は、制御部30と電気的に接続されている。
【0029】
第1薬剤添加装置6は、給水ラインL1に第1薬剤を添加する装置である。第1薬剤添加装置6は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第1薬剤添加装置6は、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第1薬剤として還元剤を添加する。第1薬剤の例としては、SBS(NaHSO3:重亜硫酸ソーダ)、亜硫酸ソーダ、チオ硫酸ソーダ、亜硫酸ガス等の還元剤が挙げられる。以下では説明の簡略化のため、第1薬剤がSBSである例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0030】
第2薬剤添加装置7は、給水ラインL1に第2薬剤を添加する装置である。第2薬剤添加装置7は、制御部30と電気的に接続されている。
【0031】
本実施形態において、第2薬剤添加装置7は、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第2薬剤として安定化剤を添加する。安定化剤の添加により、例えば給水W11に含まれる次亜塩素酸は、安定化次亜塩素酸になる。逆浸透膜モジュール17において、逆浸透膜の劣化を効果的に抑制可能なことから、第1薬剤の例としては、アミン系化合物、例えばスルファミン酸系化合物等の安定化剤が挙げられる。
【0032】
また、当該安定化剤は、更に臭素化合物を含んでもよい。この場合、安定化次亜臭素酸を生成することにより、安定化次亜塩素酸を生成する場合に比較して、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜へのダメージを少なくすることが可能となる。
【0033】
更に、当該安定化剤は、スルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含んでもよい。すなわち、安定化剤の中に、安定化ハロゲン形態の成分と、余剰分のスルファミン酸系化合物とを含んでいてもよい。これにより、安定化次亜塩素酸、安定化次亜臭素酸に加えて、安定化ハロゲン酸塩を殺菌剤として用いることが可能となる。
【0034】
以下では説明の簡略化のため、第2薬剤がスルファミン酸系化合物である例について説明するが、本発明はこれには限られない。
【0035】
第3薬剤添加装置8は、給水ラインL1に第3薬剤を添加する装置である。第3薬剤添加装置8は、制御部30と電気的に接続されている。
【0036】
本実施形態において、第3薬剤添加装置8は、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を防ぐために、第3薬剤として他種殺菌剤を添加する。ここで、「他種殺菌剤」とは、給水W11中の遊離塩素と第2薬剤としての安定化剤とが反応することにより生成される殺菌剤とは異なる殺菌剤のことである。第3薬剤の例としては、第1薬剤としての還元剤の影響を受ける成分としてイソチアゾリン等を含む殺菌剤が挙げられる。
【0037】
第4薬剤添加装置9は、給水ラインL1に第4薬剤を添加する装置である。第4薬剤添加装置9は、制御部30と電気的に接続されている。
【0038】
本実施形態において、第4薬剤添加装置9は、逆浸透膜モジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制するために、第4薬剤としてスケール分散剤を添加する。第4薬剤の例としては、金属イオンに対する封鎖、分散作用を有するキレート剤、及び/又は低分子ポリマーが挙げられる。
【0039】
第2給水ラインL12の上流側の端部は、接続部J1に接続されている。第2給水ラインL12の下流側の端部は、逆浸透膜モジュール17の一次側入口ポートに接続されている。第2給水ラインL12には、加圧ポンプ15が設けられる。
【0040】
加圧ポンプ15は、給水W11を吸入し、逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)する装置である。加圧ポンプ15には、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される。加圧ポンプ15は、供給(入力)された駆動電力の周波数(以下、「駆動周波数」ともいう)に応じた回転速度で駆動される。
【0041】
インバータ16は、加圧ポンプ15に、周波数が変換された駆動電力を供給する電気回路(又はその回路を持つ装置)である。インバータ16は、制御部30と電気的に接続されている。インバータ16には、制御部30から指令信号が入力される。インバータ16は、制御部30により入力された指令信号(電流値信号又は電圧値信号)に対応する駆動周波数の駆動電力を加圧ポンプ15に出力する。
【0042】
給水W12は、加圧ポンプ15を介して逆浸透膜モジュール17に供給される。また、給水W12は、給水W11及び循環水W40(後述)からなる。
【0043】
逆浸透膜モジュール17は、給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する設備である。詳細には、逆浸透膜モジュール17は、加圧ポンプ15から吐出された給水W12を、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理する設備である。逆浸透膜モジュール17は、単一又は複数の逆浸透膜エレメント(図示せず)を備える。逆浸透膜モジュール17は、これら逆浸透膜エレメントにより給水W12を膜分離処理し、透過水W20と濃縮水W30とを製造する。
【0044】
透過水ラインL2は、逆浸透膜モジュール17で分離された透過水W20を送出するラインである。透過水ラインL2の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続されている。透過水ラインL2の下流側の端部は、貯留タンク(図示せず)に接続されている。
【0045】
濃縮水ラインL3は、逆浸透膜モジュール17で分離された濃縮水W30が流通するラインである。濃縮水ラインL3の上流側の端部は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続されている。また、濃縮水ラインL3の下流側は、接続部J2において、循環水ラインL4及び濃縮排水ラインL5に分岐している。
【0046】
循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3に接続され、給水としての濃縮水(循環水W40)を給水ラインL1に返送するラインである。本実施形態においては、循環水ラインL4は、濃縮水ラインL3を流通する濃縮水W30を循環水W40として、給水ラインL1における加圧ポンプ15よりも上流側に返送(循環)させるラインである。循環水ラインL4の上流側の端部は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続されている。また、循環水ラインL4の下流側の端部は、接続部J1において、給水ラインL1に接続されている。循環水ラインL4には、定流量弁18が設けられる。
【0047】
定流量弁18は、循環水ラインL4を流通する循環水W40の流量を所定の一定流量値に保持するように調節する機器である。定流量弁18において保持される「一定流量値」とは、一定流量値に幅がある概念であり、定流量弁における目標流量値のみに限られない。例えば、定流量機構の特性(例えば、材質や構造に起因する温度特性等)を考慮して、定流量弁における目標流量値に対して、±10%程度の調節誤差を有するものを含む。定流量弁18は、補助動力や外部操作を必要とせずに一定流量値を保持するものであり、例えば、水ガバナの名称で呼ばれるものが挙げられる。なお、定流量弁18は、補助動力や外部操作により動作して、一定流量値を保持するものでもよい。
【0048】
濃縮排水ラインL5は、濃縮水ラインL3に接続され、濃縮排水W50としての濃縮水を系外へ排出するラインである。本実施形態においては、濃縮排水ラインL5は、接続部J2において濃縮水ラインL3に接続され、逆浸透膜モジュール17で分離された濃縮水W30を、濃縮排水W50として装置外(系外)に排出するラインである。濃縮排水ラインL5には、比例制御排水弁19が設けられる。
【0049】
比例制御排水弁19は、濃縮排水ラインL5から装置外に排出される濃縮排水W50の流量を調節する弁である。比例制御排水弁19は、制御部30と電気的に接続されている。比例制御排水弁19の弁開度は、制御部30から送信される駆動信号により制御される。制御部30から電流値信号(例えば、4〜20mA)を比例制御排水弁19に送信して、弁開度を制御することにより、濃縮排水W50の排水流量を調節することができる。
【0050】
制御部30は、CPU及びメモリを含むマイクロプロセッサ(図示せず)により構成される。制御部30において、マイクロプロセッサのCPUは、メモリから読み出した所定のプログラムに従って、水処理システム1に係る各種の制御を実行する。以下、制御部30の機能の一部について説明する。
【0051】
図2は、制御部30の機能ブロック図である。制御部30は、還元剤薬注制御部301と、安定化剤薬注制御部302と、他種殺菌剤薬注制御部303と、分散剤薬注制御部304とを備える。
【0052】
還元剤薬注制御部301は、残留塩素濃度測定装置5による測定値に基づいて、給水W11中に所定濃度の塩素が残留するように、第1薬剤添加装置6による給水W11への還元剤の薬注を制御する。
【0053】
安定化剤薬注制御部302は、給水W11中に塩素が残留しないように、第2薬剤添加装置7による給水W11への安定化剤の薬注を制御する。
【0054】
他種殺菌剤薬注制御部303は、第3薬剤添加装置8による給水W11への他種殺菌剤の薬注を制御する。
【0055】
分散剤薬注制御部304は、第4薬剤添加装置9による給水W11へのスケール分散剤の薬注を制御する。
【0056】
〔1.2 第1実施形態の動作〕
以下、第1実施形態に係る水処理システム1の動作について説明する。
水源2から給水W11が第1給水ラインL11に供給されると、最初に残留塩素濃度測定装置5により、給水W11中の残留塩素濃度が測定される。
【0057】
次に、給水W11に対して、還元剤薬注制御部301の制御により、第1薬剤添加装置6から、第1薬剤としての還元剤が添加される。このとき、還元剤薬注制御部301は、残留塩素濃度測定装置5によって測定された残留塩素濃度の測定値に基づいて、給水W11中に所定濃度の塩素が残留するように、還元剤の薬注を制御する。これにより、給水ラインL1において、第1薬剤添加装置6により添加された還元剤は、全量残留塩素と反応して酸化される。よって、還元剤を残存させることなく、給水W12を逆浸透膜モジュール17に供給できる。
【0058】
次に、給水W11に対して、安定化剤薬注制御部302の制御により、第2薬剤添加装置7から、第2薬剤としての安定化剤が添加される。このとき、安定化剤薬注制御部302は、給水W11中に塩素が残留しないように、第2薬剤添加装置7による給水W11への安定化剤の薬注を制御する。これにより、安定化剤薬注後の給水W11中に塩素が残留しないため、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を抑制することが可能となる。
【0059】
次に、給水W11に対して、他種殺菌剤薬注制御部303の制御により、第3薬剤添加装置8から、第3薬剤としての他種殺菌剤が添加される。これにより、遊離塩素と安定化剤とが反応することによって生成される殺菌剤に加えて、他種殺菌剤も併用することで、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜膜面へのバイオフィルム付着をより一層抑制することができる。
【0060】
次に、給水W11に対して、分散剤薬注制御部304の制御により、第4薬剤添加装置9から、第4薬剤としてのスケール分散剤が添加される。これにより、逆浸透膜モジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することができる。
【0061】
接続部J1において、第1給水ラインL11を流通する給水W11と、循環水ラインL4を流通する循環水W40が合流し、第2給水ラインL12に対して給水W12として流入する。
【0062】
給水W12は、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される加圧ポンプ15により、逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)される。
【0063】
逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)された給水W12は、逆浸透膜モジュール17において、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理される。
【0064】
逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された透過水W20は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される透過水ラインL2により送出される。
【0065】
一方、逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された濃縮水W30は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される濃縮水ラインL3に流入する。
【0066】
濃縮水ラインL3に流入した濃縮水W30は、接続部J2において、循環水ラインL4を流通する循環水W40と、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50とに分離する。
【0067】
循環水ラインL4に流入した循環水W40の流量は、定流量弁18により所定の一定流量値に保持される。定流量弁18を経由した循環水W40は、接続部J1まで返送される。
【0068】
濃縮排水ラインL5に流入した濃縮排水W50の流量は、比例制御排水弁19により調節される。比例制御排水弁19を経由した濃縮排水W50は、系外に排出される。
【0069】
〔1.3 第1実施形態の効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1によれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0070】
本発明の水処理システム1は、ろ過処理された給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュール17と、給水W11及びW12を逆浸透膜モジュール17に供給する給水ラインL1と、逆浸透膜モジュール17で分離された透過水W20を送出する透過水ラインL2と、逆浸透膜モジュール17で分離された濃縮水W30を送出する濃縮水ラインL3と、濃縮水W30の一部又は全部を濃縮排水W50として、系外に排出する濃縮排水ラインL5と、給水W11の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定装置5と、給水W11に還元剤を薬注する第1薬剤添加装置6と、給水W11に安定化剤を薬注する第2薬剤添加装置7と、所定濃度の塩素が残留するように、第1薬剤添加装置6による還元剤の薬注を制御する還元剤薬注制御部301とを備える。
【0071】
これにより、還元剤薬注制御部301に、給水ラインL1において所定濃度の塩素が残留するように還元剤の薬注を制御させた。このため、給水ラインL1において還元剤を残存させることなく給水W12を逆浸透膜モジュール17に供給できる。また、残留させた塩素と安定化剤とを反応させて殺菌作用のある反応物(安定化次亜塩素酸)を生成させられるので、逆浸透膜モジュール17内でのバイオフィルムの抑制が可能となる。とりわけ、従来は、過剰に入った還元剤が、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜を通過して、処理水の純度を悪化させる問題があった。また、還元剤としてのSBSが塩素と反応すると硫酸イオンが生成されるが、SBSを逆浸透膜モジュール17の前で添加するために、塩素を除却してから逆浸透膜の前までの間で、硫酸イオンを栄養源とする細菌が発生するという問題があった。給水ラインL1における還元剤の残留を防ぎ、また、未反応分の遊離塩素と安定化剤の反応により上記の反応物を生成することにより、このような細菌の発生を抑制することが可能となる。更に、還元剤の余剰分が発生しないため、逆浸透膜モジュール17内が還元剤で満たされる、還元雰囲気となることを防ぐことが可能となる。
【0072】
また、水処理システム1は、給水W11に他種殺菌剤を薬注する第3薬剤添加装置8を更に備える。
【0073】
これにより、上記の反応物(殺菌剤)に加えて他種殺菌剤も併用することで、逆浸透膜膜面へのバイオフィルム付着をより一層抑制することが可能となる。
【0074】
また、水処理システム1は、給水W11中に塩素が残留しないように、第2薬剤添加装置7による安定化剤の薬注を制御する安定化剤薬注制御部302を更に備える。
【0075】
これにより、安定化剤薬注後の給水W11中に塩素が残留しないことで、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を抑制することが可能となる。
【0076】
また、水処理システム1において、安定化剤はスルファミン酸系化合物を含む。
【0077】
これにより、安定化次亜塩素酸を生成することで、逆浸透膜モジュール17内でのバイオフィルム抑制が可能となる。
【0078】
また、水処理システム1において、安定化剤は、更に臭素化合物を含む。
【0079】
これにより、安定化次亜臭素酸を生成することで、安定化次亜塩素酸を生成する場合に比較して、逆浸透膜へのダメージを少なくすることが可能となる。
【0080】
また、水処理システム1において、安定化剤は、更にスルファミン酸系化合物と結合したハロゲンを含む。
【0081】
これにより、安定化次亜塩素酸、安定化次亜臭素酸に加えて、安定化ハロゲン酸塩を殺菌剤として用いることが可能となる。
【0082】
また、水処理システム1は、給水に対してスケール分散剤を薬注する第4薬剤添加装置9を更に備える。
【0083】
これにより、バイオフィルムに加えて、シリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することが可能となる。
【0084】
〔2 第2実施形態〕
〔2.1 全体構成〕
以下、本発明の第2実施形態である水処理システム1Aについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、説明の簡略化のため、第2実施形態に係る水処理システム1Aが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る水処理システム1が備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示し、主として、水処理システム1Aが水処理システム1と異なる点について説明する。
【0085】
図3は、本発明の水処理システム1Aの全体構成図である。水処理システム1Aは、水処理システム1とは異なり、第3薬剤添加装置8は備えず、その代わりに第5薬剤添加装置10を備える。
【0086】
第5薬剤添加装置10は、給水ラインL1に第5薬剤を添加する装置である。第5薬剤添加装置10は、制御部30と電気的に接続されている。
本実施形態において、第5薬剤添加装置10は、逆浸透膜モジュール17におけるバイオフィルムの析出を抑制するために、第5薬剤として酸化剤を添加することにより、給水W11中の塩素濃度を調整する。とりわけ、本実施形態においては、給水W11中の残留塩素濃度が所定値未満の場合に、いったんは所定濃度まで残留塩素濃度を高め、所定量以上の遊離塩素と安定化剤との反応物である安定化次亜塩素酸を生成するために、第5薬剤が添加される。
【0087】
逆浸透膜モジュール17において、逆浸透膜の表面にバイオフィルムが付着することを効果的に抑制可能なことから、第5薬剤の例として、次亜塩素酸ソーダ等の塩素系酸化剤が挙げられる。以下では説明の簡略化のため、第5薬剤が次亜塩素酸ソーダである例について説明するが、本発明はこれには限られない。他の塩素系酸化剤として、例えば、液化塩素、さらし粉、塩素化イソシアヌル酸等を用いてもよい。
【0088】
図4は、制御部30Aの機能ブロック図である。制御部30Aは、還元剤薬注制御部301Aと、安定化剤薬注制御部302Aと、分散剤薬注制御部304と、酸化剤薬注制御部305とを備える。
【0089】
還元剤薬注制御部301Aは、水処理システム1Aにおける通常運転時には、第1薬剤添加装置6により還元剤を薬注し、水処理システム1Aにおける殺菌処理時には、第1薬剤添加装置6による還元剤の薬注を停止するよう、第1薬剤添加装置6を制御する。
【0090】
安定化剤薬注制御部302Aは、水処理システム1Aにおける通常運転時には、第2薬剤添加装置7による安定化剤の薬注を停止し、水処理システム1Aにおける殺菌処理時には、第2薬剤添加装置7により安定化剤を薬注する。
【0091】
還元剤薬注制御部301A及び安定化剤薬注制御部302Aにより、水処理システム1Aにおいて、通常運転時には還元剤が薬注される一方で、安定化剤の薬注は停止させられる。一方で、殺菌処理時には、還元剤の薬注が停止させられる一方で、安定化剤が薬注される。
【0092】
酸化剤薬注制御部305は、殺菌処理時において、残留塩素濃度測定装置5によって測定される残留塩素濃度が所定値未満の場合には、塩素系酸化剤を薬注し、残留塩素濃度が所定値以上の場合には、塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止するよう、第5薬剤添加装置10を制御する。
【0093】
これにより、殺菌処理時において残留塩素濃度が低すぎる場合に、いったんは所定濃度まで残留塩素濃度を高めることで、所定量以上の遊離塩素と安定化剤との反応物(安定化次亜塩素酸:殺菌剤)を生成し、殺菌効果を確保することができる。また、残留塩素濃度が高い場合には、塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止することで、過剰な塩素系酸化剤の添加を防げる。
【0094】
〔2.2 第2実施形態の動作〕
以下、第2実施形態に係る水処理システム1Aの動作について、通常動作時と殺菌処理時とに分けて説明する。
【0095】
〔2.2.1 通常動作時〕
図3に示す構成においては、第1給水ラインL11の最上流に、第5薬剤としての酸化剤を添加する第5薬剤添加装置10が設置されるが、通常動作時においては、第5薬剤添加装置10は機能しない。
【0096】
水源2から給水W11が第1給水ラインL11に供給されると、最初に残留塩素濃度測定装置5により、給水W11中の残留塩素濃度が測定される。
【0097】
次に、給水W11に対して、還元剤薬注制御部301Aの制御により、第1薬剤添加装置6から、第1薬剤としての還元剤が添加される。
【0098】
次に、給水W11は、第2薬剤としての安定化剤を添加する第2薬剤添加装置7による添加箇所を経由するが、安定化剤薬注制御部302Aの制御により、第2薬剤添加装置7から、第2薬剤としての安定化剤の添加は停止されている。これら、還元剤薬注制御部301Aと安定化剤薬注制御部302Aの制御により、通常動作時には還元剤により遊離塩素を反応させることで逆浸透膜モジュール17への遊離塩素の影響を抑制できる。
【0099】
次に、給水W11に対して、分散剤薬注制御部304の制御により、第4薬剤添加装置9から、第4薬剤としてのスケール分散剤が添加される。これにより、逆浸透膜モジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することができる。
【0100】
接続部J1において、第1給水ラインL11を流通する給水W11と、循環水ラインL4を流通する循環水W40が合流し、第2給水ラインL12に対して給水W12として流入する。
【0101】
給水W12は、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される加圧ポンプ15により、逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)される。
【0102】
逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)された給水W12は、逆浸透膜モジュール17において、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理される。
【0103】
逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された透過水W20は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される透過水ラインL2により送出される。
【0104】
一方、逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された濃縮水W30は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される濃縮水ラインL3に流入する。
【0105】
濃縮水ラインL3に流入した濃縮水W30は、接続部J2において、循環水ラインL4を流通する循環水W40と、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50とに分離する。
【0106】
循環水ラインL4に流入した循環水W40の流量は、定流量弁18により所定の一定流量値に保持される。定流量弁18を経由した循環水W40は、接続部J1まで返送される。
【0107】
濃縮排水ラインL5に流入した濃縮排水W50の流量は、比例制御排水弁19により調節される。比例制御排水弁19を経由した濃縮排水W50は、系外に排出される。
【0108】
〔2.2.2 殺菌処理時〕
水処理システム1Aにおいては、所定のタイミングで逆浸透膜モジュール17の殺菌処理を実行する。なお、当該殺菌処理は、定期的に殺菌処理を実行してもよく、あるいは、逆浸透膜モジュール17が閉塞傾向にある場合に、殺菌処理を実行してもよい。
【0109】
水源2から給水W11が第1給水ラインL11に供給されると、後述の残留塩素濃度測定装置5により測定される残留塩素濃度が所定値未満の場合には、最初に、給水W11に対して、酸化剤薬注制御部305の制御により、第5薬剤添加装置10から、第5薬剤としての酸化剤が添加される。これにより、給水W11中の残留塩素濃度は所定濃度まで高まる。
【0110】
次に、給水W11は、第1薬剤としての還元剤を添加する第1薬剤添加装置7による添加箇所を経由するが、還元剤薬注制御部301Aの制御により、第1薬剤添加装置6から、第1薬剤としての還元剤の添加は停止されている。
【0111】
次に、給水W11は、安定化剤薬注制御部302Aの制御により、第2薬剤添加装置7から、第2薬剤としての安定化剤が添加される。これら還元剤薬注制御部301Aと安定化剤薬注制御部302Aの制御により、殺菌処理時には、遊離塩素と安定化剤とを反応させて殺菌作用のある反応物(安定化次亜塩素酸)を生成させられるので、逆浸透膜モジュール17内でのバイオフィルムの抑制が可能となる。また、上記の反応物(殺菌剤)が間欠的に逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜に供給されることにより、逆浸透膜の膜面へのバイオフィルム付着の抑制や、付着したバイオフィルムの剥離を図ることが可能となる。
【0112】
次に、給水W11に対して、分散剤薬注制御部304の制御により、第4薬剤添加装置9から、第4薬剤としてのスケール分散剤が添加される。これにより、逆浸透膜モジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することができる。
【0113】
接続部J1において、第1給水ラインL11を流通する給水W11と、循環水ラインL4を流通する循環水W40が合流し、第2給水ラインL12に対して給水W12として流入する。
【0114】
給水W12は、インバータ16から周波数が変換された駆動電力が供給される加圧ポンプ15により、逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)される。
【0115】
逆浸透膜モジュール17に向けて圧送(吐出)された給水W12は、逆浸透膜モジュール17において、溶存塩類が除去された透過水W20と、溶存塩類が濃縮された濃縮水W30とに膜分離処理される。
【0116】
逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された透過水W20は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される透過水ラインL2により送出される。
【0117】
一方、逆浸透膜モジュール17で膜分離処理された濃縮水W30は、逆浸透膜モジュール17の二次側ポートに接続される濃縮水ラインL3に流入する。
【0118】
濃縮水ラインL3に流入した濃縮水W30は、接続部J2において、循環水ラインL4を流通する循環水W40と、濃縮排水ラインL5を流通する濃縮排水W50とに分離する。
【0119】
循環水ラインL4に流入した循環水W40の流量は、定流量弁18により所定の一定流量値に保持される。定流量弁18を経由した循環水W40は、接続部J1まで返送される。
【0120】
濃縮排水ラインL5に流入した濃縮排水W50の流量は、比例制御排水弁19により調節される。比例制御排水弁19を経由した濃縮排水W50は、系外に排出される。
【0121】
〔2.3 第2実施形態の効果〕
上述した本実施形態に係る水処理システム1Aによれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0122】
本発明の水処理システム1Aは、ろ過処理された給水W12を透過水W20と濃縮水W30とに分離する逆浸透膜モジュール17と、給水W11及びW12を逆浸透膜モジュール17に供給する給水ラインL1と、逆浸透膜モジュール17で分離された透過水W20を送出する透過水ラインL2と、逆浸透膜モジュール17で分離された濃縮水W30を送出する濃縮水ラインL3と、濃縮水W30の一部又は全部を濃縮排水W50として、系外に排出する濃縮排水ラインL5と、給水W12の残留塩素濃度を測定する残留塩素濃度測定装置5と、給水W11に還元剤を薬注する第1薬剤添加装置6と、給水W11に安定化剤を薬注する第2薬剤添加装置7と、通常時には還元剤を薬注し、殺菌処理時には還元剤の薬注を停止するように、第1薬剤添加装置6を制御する還元剤薬注制御部301Aと、通常時には安定化剤の薬注を停止し、殺菌処理時には安定化剤を薬注するように、第2薬剤添加装置7を制御する安定化剤薬注制御部302Aと、を備える。
【0123】
これにより、還元剤薬注制御部301Aに、給水ラインL1において通常時には還元剤を薬注し、殺菌処理時には還元剤の薬注を停止するように第1薬剤添加装置6を制御させ、安定化剤薬注制御部302Aに、給水ラインL1において通常時には安定化剤の薬注を停止し、殺菌処理時には安定化剤を薬注するように第2薬剤添加装置7を制御させた。これにより、給水ラインL1において、通常時には還元剤により遊離塩素を反応させることで逆浸透膜モジュール17への遊離塩素の影響を抑制でき、殺菌処理時には、遊離塩素と安定化剤とを反応させて殺菌作用のある反応物(安定化次亜塩素酸)を生成させられるので、逆浸透膜モジュール17内でのバイオフィルムの抑制が可能となる。また、上記の反応物(殺菌剤)が間欠的に逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜に供給されることにより、逆浸透膜の膜面へのバイオフィルム付着の抑制や、付着したバイオフィルムの剥離を図ることが可能となる。
【0124】
また、水処理システム1Aは、給水W11に塩素系酸化剤を薬注する第5薬剤添加装置10と、殺菌処理時において、残留塩素濃度が所定値未満の場合には塩素系酸化剤を薬注し、残留塩素濃度が所定値以上の場合には塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止するように、第5薬剤添加装置10を制御する酸化剤薬注制御部305とを更に備える。
【0125】
これにより、殺菌処理時において残留塩素濃度が低すぎる場合に、いったんは所定濃度まで残留塩素濃度を高めることで、所定量以上の遊離塩素と安定化剤との反応物(安定化次亜塩素酸:殺菌剤)を生成し、殺菌効果を確保することができる。また、残留塩素濃度が高い場合には、塩素系酸化剤の薬注量を減少させる又は薬注を停止することで、過剰な塩素系酸化剤の添加を防げる。
【0126】
〔3 第3実施形態〕
〔3.1 全体構成〕
以下、本発明の第3実施形態である水処理システム1Bについて、図面を参照しながら説明する。なお、以下では、説明の簡略化のため、第3実施形態に係る水処理システム1Bが備える構成要素のうち、第1実施形態に係る水処理システム1が備える構成要素と同一の構成要素については同一の符号を用いて示し、主として、水処理システム1Bが水処理システム1と異なる点について説明する。
【0127】
図5は、本発明の水処理システム1Bの全体構成図である。水処理システム1Bは、水処理システム1とは異なり、第3薬剤添加装置8は備えず、その代わりに反応物濃度測定装置11を備える。
【0128】
反応物濃度測定装置11は、給水ラインL1を流通する給水W11中の、遊離塩素と安定化剤との反応物の濃度を測定する装置である。具体的には、第2薬剤添加装置7によって薬注される安定化剤に臭素化合物が含まれない場合、反応物濃度測定装置11は、給水W11中の安定化次亜塩素酸濃度を測定する。一方で、第2薬剤添加装置7によって薬注される安定化剤に臭素化合物が含まれる場合、反応物濃度測定装置11は、給水W11中の安定化次亜臭素酸濃度を測定する。
【0129】
反応物濃度測定装置11は、給水ラインL1に接続されている。また、反応物濃度測定装置11は、制御部30Bと電気的に接続されている。反応物濃度測定装置11で測定された給水W11中の反応物濃度は(以下、「測定反応物濃度」ともいう)は、制御部30Bへ検出信号として送信される。反応物濃度測定装置11としては、例えば比色式のセンサを用いることが可能である。
【0130】
図6は、制御部30Bの機能ブロック図である。制御部30Bは、還元剤薬注制御部301Bと、安定化剤薬注制御部302と、分散剤薬注制御部304とを備える。
【0131】
還元剤薬注制御部301Bは、所定濃度の塩素が残留するように、第1薬剤添加装置6による還元剤の薬注を制御する際、反応物濃度測定装置11によって測定される遊離塩素と安定化剤との反応物の濃度が所定値となるように、当該所定濃度を段階的に調整する。
【0132】
〔3.2 第3実施形態の動作〕
以下、第3実施形態に係る水処理システム1Bの動作について説明する。
水源2から給水W11が第1給水ラインL11に供給されると、最初に残留塩素濃度測定装置5により、給水W11中の残留塩素濃度が測定される。
【0133】
次に、給水W11に対して、還元剤薬注制御部301Bの制御により、第1薬剤添加装置6から、第1薬剤としての還元剤が添加される。このとき、還元剤薬注制御部301Bは、残留塩素濃度測定装置5によって測定された残留塩素濃度の測定値に基づいて、給水W11中に所定濃度の塩素が残留するように、還元剤の薬注を制御する。この際、還元剤薬注制御部301Bは、反応物濃度測定装置11によって測定される遊離塩素と安定化剤との反応物の濃度が所定値となるように、当該所定濃度を段階的に調整する。これにより、上記の反応物(殺菌剤)の濃度を管理することで、逆浸透膜膜面へのバイオフィルム付着の抑制や、付着したバイオフィルムの剥離を図ることが可能となる。とりわけ、普段は低い濃度で管理しているものを段階的に高い濃度とすることにより、細菌の殺菌剤に対する耐性の問題に有効となる。
【0134】
次に、給水W11に対して、安定化剤薬注制御部302の制御により、第2薬剤添加装置7から、第2薬剤としての安定化剤が添加される。このとき、安定化剤薬注制御部302は、給水W11中に塩素が残留しないように、第2薬剤添加装置7による給水W11への安定化剤の薬注を制御する。これにより、安定化剤薬注後の給水W11中に塩素が残留しないため、逆浸透膜モジュール17に備わる逆浸透膜の劣化を抑制することが可能となる。
【0135】
次に、給水W11に対して、分散剤薬注制御部304の制御により、第4薬剤添加装置9から、第4薬剤としてのスケール分散剤が添加される。これにより、逆浸透膜モジュール17におけるシリカ・硬度成分等のスケールの生成を抑制することができる。
【0136】
また、上記のように、反応物濃度測定装置11により、給水W11中の反応物濃度が測定される。測定された反応物濃度(測定反応物濃度)は、制御部30Bへ検出信号として送信され、上記のように、還元剤薬注制御部301Bで、第1薬剤添加装置6による還元剤の薬注の制御に用いられる。
【0137】
〔3.3 第3実施形態の効果〕
上述した第3実施形態に係る水処理システム1Bによれば、例えば、以下のような効果が奏される。
【0138】
水処理システム1Bにおいて、還元剤薬注制御部301Bは、給水中の遊離塩素と前記安定化剤との反応物の濃度が所定値となるように、上記の所定濃度を段階的に調整する。
【0139】
これにより、上記の反応物(殺菌剤)の濃度を管理することで、逆浸透膜膜面へのバイオフィルム付着の抑制や、付着したバイオフィルムの剥離を測ることが可能となる。とりわけ、普段は低い濃度で管理しているものを段階的に高い濃度とすることにより、細菌の殺菌剤に対する耐性の問題に有効となる。
【0140】
〔4 変形例〕
〔4.1 変形例1〕
上記の実施形態においては、第1薬剤添加装置6により還元剤を添加し、第2薬剤添加装置7により安定化剤を添加していた。すなわち、上記の実施形態においては、還元剤と安定化剤とを個別に添加していたが、これには限定されない。例えば、とりわけ第1実施形態において、還元剤と安定化剤とを一剤化してもよい。なお、この場合、残留塩素濃度測定装置5により測定される給水W11中の残留塩素濃度に応じて、薬剤中の還元剤と安定化剤の比率を変更してもよい。
【0141】
〔4.2 変形例2〕
上記の実施形態においては、水源2から供給される給水W11に対して、還元剤や安定化剤が薬注される構成となっていたが、これには限定されない。例えば、水処理システム1〜1Bは、ろ過装置及び/又は軟水装置を備え、これらろ過装置及び/又は軟水装置によって処理された処理水に対し、還元剤や安定化剤を薬注してもよい。
【0142】
〔4.3 変形例3〕
上記の実施形態においては、残留塩素濃度測定装置5により、自動的に給水W11中の残留塩素濃度を測定することを想定しているが、これには限定されない。例えば、水処理システム1、1A、1Bの管理者が手作業で残留塩素濃度を測定してもよく、残留塩素濃度が一定であるとして、当該一定値を制御部30、30A、30Bに入力してもよい。
【0143】
〔4.4 変形例4〕
第1実施形態に係る水処理システム1においては、給水ラインL11の上流から下流に向かって、残留塩素濃度測定装置5、第1薬剤添加装置6、第2薬剤添加装置7、第3薬剤添加装置8、第4薬剤添加装置9の順に設置されていた。また、第2実施形態に係る水処理システム1Aにおいては、給水ラインL11の上流から下流に向かって、第5薬剤添加装置10、残留塩素濃度測定装置5、第1薬剤添加装置6、第2薬剤添加装置7、第4薬剤添加装置9の順に設置されていた。更に、第3実施形態に係る水処理システム1Bにおいては、給水ラインL11の上流から下流に向かって、残留塩素濃度測定装置5、第1薬剤添加装置6、第2薬剤添加装置7、第4薬剤添加装置9、及び反応物濃度測定装置11の順に設置されていた。しかし、これらの並び順や設置箇所はあくまで一例であって、これらには限定されない。
【0144】
〔4.5 変形例5〕
第1実施形態に係る水処理システム1、第2実施形態に係る水処理システム1A、及び第3実施形態に係る水処理システム1Bは、循環水ラインL4を備えるが、これには限定されない。例えば、大型設備等の場合、循環水ラインL4を備えない構成としてもよい。
【符号の説明】
【0145】
1、1A、1B 水処理システム
5 残留塩素濃度測定装置
6 第1薬剤添加装置(第1薬注手段)
7 第2薬剤添加装置(第2薬注手段)
8 第3薬剤添加装置(第3薬注手段)
9 第4薬剤添加装置(第5薬注手段)
10 第5薬剤添加装置(第4薬注手段)
11 反応物濃度測定装置
15 加圧ポンプ
17 逆浸透膜モジュール
30、30A、30B 制御部(薬注制御部)
L1 給水ライン
L2 透過水ライン
L3 濃縮水ライン
L4 循環水ライン
L5 濃縮排水ライン、
L11 第1給水ライン
L22 第2給水ライン
図1
図2
図3
図4
図5
図6